JP3600021B2 - 深絞り成形用アルミニウム基合金板の製造方法 - Google Patents

深絞り成形用アルミニウム基合金板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高強度および高延展性を有し、アルミニウム基合金製の缶などの深絞り成形に際して耳率を著しく低減できる深絞り成形用アルミニウム基合金板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
缶入り飲料などの需要増大に伴い、最近ではその容器として好適なアルミニウム基合金製のいわゆるDI(Deep drawing & Ironing)缶が大量に生産されるようになっている。このアルミニウム基合金製DI缶の本体の一般的な製造方法としては、アルミニウム基合金板を多段に深絞り加工し、さらにしごき加工を行って缶本体を成形し、焼付け塗装後に、耐圧強度の向上や比較的高価な蓋部材の材料の使用量を削減するために縮径するネック加工を行う。ここで使用するアルミニウム基合金板には、製缶後の十分な強度と、多段深絞りやしごきに耐える成形性とが共に要求される。
【0003】
一般に、深絞り用アルミニウム基合金としては、Al−Mn−Mg系の、例えば米国アルミニウム協会標準(A.A)3004合金などが広く用いられている。この合金から深絞り用アルミニウム基合金板を製造するには、(a)先ずこの合金の鋳塊を熱間圧延し、次に(b)冷間圧延して適度な板厚の板材とし、この冷間圧延後の板材に(c)中間焼鈍を施し、さらに要求される強度に応じて(d)冷間圧延による硬化処理が行われる。
【0004】
この深絞り成形用アルミニウム基合金板の製造工程において、板材の強度を向上させるためには前記(d)の冷間圧延における冷間圧延率を高くする必要がある。しかし冷間圧延度を上げると、いわゆる圧延集合組織が発達し、塑性変形に際して異方性が顕著に現れるようになり、深絞り成形したときの板材の圧延方向に応じて成形した缶本体の上縁の高さが山谷状に変化する現象が起こる。
この山谷状に変形した部分は通常、「耳」と呼ばれている。深絞り成形後の缶体は、次いでしごき加工を行った後に、蓋部材を取付けるために開口部を水平に切断し缶高を揃えるトリム加工が行われる。このトリム加工の際には耳も除去されるので、耳の高さが高いと、除去すべき板材の量割合(以下「耳率」という)が増大し、歩留まりが低下して製造コストが上昇するという問題があった。そこで、低耳率となる板材が求められていた。
【0005】
一般にアルミニウム基合金板を冷間圧延すると、圧延方向に対して45〜60゜の方向に耳の山となる圧延集合組織が発達する傾向がある。そこで、耳率を低下させるためには圧延集合組織の発達を抑制する必要がある。これは冷間圧延前の板材における再結晶集合組織の生成状態を制御することによって達成できることがわかっている。すなわち、一般には、冷間圧延以前に、0−90゜の方向に深絞り耳を生じるような、「立方体方位」と呼ばれる再結晶集合組織を発達させる方法が用いられる。
立方体方位が発達すると0−90゜方向の耳を生じることになるが、その後の冷間圧延によってこの方向の耳はあまり発達せず、一方、45゜耳を生成する圧延集合組織の発達も抑制され、結果として開口部周縁における耳の山が均一化されることになる。この方法によって、圧延度80%以上の冷間圧延の後に僅かな0−90゜耳と45゜耳とが混在する低耳性板材が得られるようになった。
【0006】
前記の立方体方位の再結晶集合組織を発達させる具体的な方法としては、熱間圧延時の諸条件を調節し、熱間圧延後に巻き取ったコイルが冷却するまでの間、あるいは巻き取ったコイルを焼鈍する際に生じる再結晶を制御する方法(特開平5−125500号公報)が知られている。この方法では、前記(b)冷間圧延、または(b)冷間圧延と(c)中間焼鈍とを行わず、再結晶した熱間圧延板に前記(d)冷間圧延を施す。現在、DI缶用として主に用いられている板材の厚さは約0.3mm程度であるので、この方法を適用して最終の冷間圧延率を80〜90%とする場合には、熱間圧延により板厚が1.5〜3mmとなるように圧延する必要がある。そこで普通、リバース式熱間圧延機を用いて圧延した後にさらにタンデム式の仕上用熱間圧延機または圧延機の両側にコイル巻取り装置を装備したリバース式熱間仕上圧延機を用いて圧延する方法が用いられる。しかしこれらの熱間仕上圧延機は大規模でかつ高価であり、これを用いることによる製造コスト上の負担が大きい。
更に、缶用素材の薄肉化に伴い、圧延ロールやパス間での温度低下の影響が大きくなり、適切な熱間圧延条件を維持するためには設備能力を更に増大させる必要があって一層コストが嵩む傾向にあった。
【0007】
そこで、熱間圧延の全工程にシングルミルのリバース式熱間粗圧延機のみを用いる方法が検討された。しかしこの粗圧延機を用いて薄肉の板材を製造しようとすると、パス間での温度低下が著しく、熱間圧延板の再結晶を制御するための熱間圧延条件を維持することがきわめて困難になる。この問題を解決する手段として、アルミニウム基合金に時効硬化性を与える元素を添加し、前記(b)の冷間圧延後、前記(c)の中間焼鈍を比較的高温で行うことにより溶体化し、前記(d)の冷間圧延の圧延度を小さくしても十分な強度が得られる方法が提案された(特公昭60−35242号公報)。
【0008】
この方法によれば、DI缶本体を成形した後の焼付け塗装の加熱により結晶が析出するので、焼付け時の加熱による軟化が抑制され、冷間圧延率を小さくしても十分な強度が得られるようになった。従って、前記(c)中間焼鈍の後に立方体集合組織が十分発達していなくても冷間圧延の圧延率を小さくできるので圧延集合組織の発達も軽度となり、耳率が比較的低い実用レベルのDI缶が得られるようになった。この方法は、仕上用熱間圧延機を用いた場合より耳率が若干高く、従ってトリム量も多くなるのではあるが、設備費が高価な仕上用の熱間圧延機を用いずに適用できるので、結果的に有利な方法となっている。
【0009】
しかし、最近、経済的およびデザイン的な要求からDI缶における蓋部材の直径を小さくする要求が高まり、このためネックの縮径率が増大するようになってきた。ところがネックの縮径率を増大させると、このネック成形工程においても深絞り成形の場合と同様に素材の異方性により開口部において缶高が変化し耳が発生するという新たな問題が生じた。このネック成形によって生じる開口部の高さ変動部を「ネック耳」と称する。
缶本体の開口部は、ネック成形を行った後にフランジ成形され、このフランジが蓋部材との巻き締めに使われるのであるが、ネック耳が大きいとフランジ幅が方向により異なったり、ネック部の形状が方向により変化するなどの問題が起こり、加工工程が煩雑になると共に外観上にも悪影響が現れる。そこで、ネックの縮径率を大きくしてもネック耳が生じにくい深絞り成形用アルミニウム基合金板が求められていた。
【0010】
このような背景から本発明者らは、特願平9−138994号においてシングルミルの粗圧延・仕上圧延兼用のリバース式熱間圧延機を用い、深絞り成形時やネック成形時にネック耳が生じにくい深絞り成形用アルミニウム合金板の製造方法について特許出願している。
この特許出願に係る技術によれば、均熱工程と熱間圧延工程と第一冷間圧延工程と第一中間焼鈍工程と第二冷間圧延工程と第二中間焼鈍工程と最終冷間圧延工程とを順次施してアルミニウム基合金板を製造する際に、特に、
熱間圧延終了温度を280〜350℃の範囲内とし、引き続き60〜90%の第一冷間圧延を施し、250〜280℃の温度範囲において2〜24時間の第一中間焼鈍を施すことが要件とされていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前記熱間終了温度を280〜350℃とするのは、熱間圧延後再結晶しないようにするためであるが、この温度範囲を外れた場合、引き続き行われる第一冷間圧延での加工硬化が大きく、60%以上の高い圧延率の冷間圧延を行う過程で、アルミニウム基合金板の両サイドにクラックが発生しやすく、クラックを除去するために両サイドをトリムする必要があり、歩留まりが低下する問題があった。そこで本発明者らは、前述の製造条件の見直しを行うことで熱間終了温度を280〜350℃の範囲より広くしてもクラックを生じない製造条件を見い出し、本発明に到達した。
【0012】
また、前述の第一中間焼鈍は、第一冷間圧延加工して加工硬化したコイルを半軟化の状態まで焼鈍するための工程であるが、どの程度まで軟化させるかにより耳率が変化するため、耳率のばらつきを小さくするためには、加熱温度や時間を厳格に管理する必要があるので、この加熱温度や時間の管理を緩和できるような製造条件について研究したところ本発明に到達した。
更に、第一中間焼鈍は通常バッチ式と称される焼鈍炉で行ない、ここではアルミニウム基合金板をコイル状に巻き付けてコイルの状態で炉内に搬入して焼鈍を行うが、バッチ式焼鈍炉では、このコイルの幅や条件によって加熱速度が異なるために、即ち、コイル重量が異なると温度を一定に管理できないために、同一の加熱温度と時間にするためにはコイルの寸法に応じて炉の操業条件を変更する必要があり、コイルの寸法管理が繁雑な問題があった。即ち、多数のコイルを同時に同一炉に搬入して処理する場合に、大きさの異なるコイル毎に加熱、冷却条件が異なってしまう問題があるので、全てのコイルの寸法を同一にする必要があった。
このため、製造するコイルの寸法に応じて別々に焼鈍を行う必要があり、生産時期の調整のために中間製品の在庫量が増大してしまう問題があった。
【0013】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、素材強度の高いものを歩留まり低下を引き起こす事なく製造することができるとともに深絞り成形後の耳率を大幅に低減することができる深絞り成形用アルミニウム基合金板の製造方法を提供することにある。
更に、連続焼鈍炉を用いて第1中間焼鈍を行うことでアルミニウム基合金板に個々に所望の条件で焼鈍を行うことができ、熱間圧延工程の温度条件と第二冷間圧延工程の圧延率の条件を緩和することができるアルミニウム基合金板の製造方法を提供することを目的とする。
また、ネック成形時の縮径率を大きくしてもネック耳を生じにくいとともに、アルミニウム基合金の幅や大きさ、コイルとした場合のコイルの寸法に左右されずに生産時期を選択することができ、中間製品の在庫量を削減できるアルミニウム基合金板の製造方法の提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために本発明は、アルミニウム基合金の鋳塊からアルミニウム基合金板を製造するに際して、順次(1)均熱工程において、前記アルミニウム基合金鋳塊を、520〜610℃の範囲内の均質化温度に加熱して均質化し、(2)熱間圧延工程において、前記の均質化されたアルミニウム基合金鋳塊を熱間圧延して板材を形成し、熱間圧延終了時の板材温度を、280〜480℃の温度範囲に調節し、前記熱間圧延の全工程にシングルミルのリバース式熱間粗圧延機を用いるとともに、(3)第一冷間圧延工程において、前記熱間圧延終了後の板材を、圧延率が60〜90%の範囲内となるように冷間圧延し、
(4)第一中間焼鈍工程において、連続焼鈍装置を用いて10〜200℃/sの範囲の加熱速度で280〜380℃の温度範囲まで加熱し、この温度範囲で1〜30秒間保持し、次いで10〜200℃/sの範囲の冷却速度で冷却して焼鈍し、(5)第二冷間圧延工程において、前記第一中間焼鈍後の板材を、圧延率が5〜40%の範囲内となるように冷間圧延し、(6)第二中間焼鈍工程において、前記第二冷間圧延後の板材を、焼鈍温度が270〜400℃の温度範囲内、焼鈍時間が2〜24時間の範囲内で焼鈍し、次いで(7)最終冷間圧延工程において、前記第二中間焼鈍後の板材を、圧延率が70〜90%の範囲内となるように冷間圧延することを特徴とする。
【0015】
前記のアルミニウム基合金は、Si:0.1〜0.4重量%、Fe:0.3〜0.6重量%、Cu:0.05〜0.4重量%、Mn:0.8〜1.5重量%およびMg:0.8〜1.5重量%を含有し、残りがAlと不可避不純物からなる組成を有するものであることが好ましい。
このアルミニウム基合金は、さらに前記の元素に加えてCr:0.25重量%以下、Zn:0.05〜0.25重量%、Ti:0.2重量%以下を含有するものであることが好ましい。
【0016】
前記の(1)均熱工程において、均質化加熱速度は100℃/時以下とし、かつ均質化時間は1時間以上とすることが好ましい。
前記の(2)熱間圧延工程においては、熱間圧延の全工程にシングルミルのリバース式熱間粗圧延機を用いることを要する。またこの工程で、熱間圧延開始温度は500℃以上、熱間圧延最終パスの開始温度は400℃以上とすることが好ましい。熱間圧延最終パスの圧延率は50%以上とすることが好ましい。
前記の(5)第二冷間圧延工程においては、前記第一中間焼鈍後の板材を、圧延率が10〜20%の範囲内となるように冷間圧延することが好ましい。
前記の(6)第二中間焼鈍工程においては、前記第二冷間圧延後の板材を、270〜320℃の範囲内の焼鈍温度に1〜24時間保持する第1段焼鈍を行い、次いで340〜400℃の範囲内の焼鈍温度に2〜24時間保持する第2段焼鈍を行うことが好ましい。
更に、前記(6)第二中間焼鈍工程後の耐力を100〜250MPaの範囲とすることが好ましい。この範囲の耐力(Yield strength:YS)とすることで、第二中間焼鈍後に0-90゜耳が高くなり、この範囲内においても130〜200MPaの範囲であるならば、より高い0-90゜耳が得られる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明に係る深絞り成形用アルミニウム基合金板の製造方法は、基本的に、アルミニウム基合金の鋳塊を素材とし、それぞれ特定の条件に設定された次の各工程、
▲1▼均熱工程、 ▲2▼熱間圧延工程、 ▲3▼第一冷間圧延工程、 ▲4▼第一中間焼鈍工程、 ▲5▼第二冷間圧延工程、 ▲6▼第二中間焼鈍工程、および ▲7▼最終冷間圧延工程を順次経由することにより構成される。
【0018】
本発明の製造方法によれば、熱間圧延工程の全工程にシングルミルのリバース式熱間粗圧延機を用い、しかも強度と成形性とが両立したアルミニウム基合金板が得られ、例えばDI缶などの深絞り缶を製造する板材として用いるとき耳率が従来の板材に比べて低減し、ネック縮径率を大きくしたDI缶を成形する際にもネック耳が減少し、缶体の変形を防止し歩留りを向上させることができる。
【0019】
本発明に係る製造方法に用いるアルミニウム基合金としては、基本的にAlを基とし、Siを0.1〜0.4重量%、Feを0.3〜0.6重量%、Cuを0.05〜0.4重量%、Mnを0.8〜1.5重量%およびMgを0.8〜1.5重量%含むものが用いられる。この基本的な組成自体は特殊なものではなく、現在大量に用いられている種々のアルミニウム缶用合金の組成の範囲内のものであるから、本製法は、リサイクルされたアルミニウム缶を原料として経済的にかつ効率よく本合金板を製造するのに適している。
【0020】
これらの元素のうちSiは、同時に含有するMgと化合物を形成し易く、固溶硬化作用、分散硬化作用および析出硬化作用を有する他、Al、Mn、Feなどと化合物を形成し、しごき成形時のダイスに対する焼き付きを防止する効果がある。Siの含有量は、0.1重量%未満では所望の潤滑特性を確保することができず、また0.4重量%を越えると加工性が劣化して不都合である。
Feは、結晶の微細化およびしごき成形時のダイスに対する焼付きを防止する効果がある。その含有量は、0.3重量%未満では所望の効果が得られず、0.6重量%を越えると加工性を劣化させる。
【0021】
Cuは、Mgと化合物を形成し易く、固溶硬化、分散硬化および析出硬化に寄与する。その含有量は、0.05重量%未満では所望の効果が得られず、0.4重量%を越えると加工性を劣化させる。
Mnは、Fe、Si、Alなどと化合物を形成し易く、晶出相および分散相となって分散硬化作用を現すと共にしごき成形時のダイスに対する焼付きを防止する効果がある。その含有量は、0.8重量%未満では所望の硬化特性が得られず、1.5重量%を越えると加工性が劣化する。
またMgは、固溶体強化作用を有し、圧延による加工硬化性を高めると共に、前記SiやCuと共存することによって分散硬化と析出硬化作用を現す。その含有量は、0.8重量%未満では所望の効果が得られず、1.5重量%を越えると再びその効果が低下するようになる。
【0022】
本発明で用いるアルミニウム基合金は、前記のSi、Fe、Cu、MnおよびMgに加えて、さらに、Crを0.25重量%以下、Znを0.05〜0.25重量%、Tiを0.2重量%以下の範囲内で含んでいてもよい。
このうちCrは、熱間圧延後の再結晶を抑制する作用を有する。ただしその含有量が0.25重量%を越えるとかえってこの作用が低下する。
Znは、Mg、Si、Cuの析出物を微細化する作用を有する。その含有量は、0.05重量%未満では所望の効果が得られず、0.25重量%を越えると耐食性を劣化させる。
Tiは、結晶粒を微細化して加工性を改善する効果がある。ただしその含有量が0.2重量%を越えると粗大な化合物を生成しかえって加工性を劣化させる。
【0023】
前述の各種組成の合金から本願発明に係る合金板を製造するに際し、先ず常法に従って本組成物の溶湯から鋳塊を鋳造する。このときの凝固速度は通常5〜20℃/秒とされる。鋳塊の寸法は、例えば1.5m×0.5m×4〜5mである。次に面削を行い、鋳塊の表面を1〜25mm程度研削して、表面が平滑化された面削体を作成する。
【0024】
この面削体は、次に本発明の▲1▼均熱工程に送られる。
この▲1▼均熱工程は一般に、溶湯の凝固によって生じたミクロ偏析の均質化、過飽和固溶元素の析出、凝固によって形成された準安定相の平衡相への転移などのために行われる。
この▲1▼均熱工程においては、均質化温度を520〜610℃の範囲内とすることが重要である。均質化温度が520℃未満では、後工程の▲6▼第二中間焼鈍の効果が得られず耳率が高くなる。また610℃を越える均質化温度にすると、鋳塊が溶融するおそれがある。
【0025】
また前記の▲1▼均熱工程において、面削体は100℃/時以下の加熱速度で均質化温度まで加熱することが好ましい。加熱速度が100℃/時を越えると、部分的に溶融を生じる惧れがある。しかし加熱速度は、遅すぎると生産効率が低下する。この観点から、好ましい加熱速度は、10〜100℃/時の範囲内である。
【0026】
また前記の▲1▼均熱工程において、均質化温度に保持する時間(均質化時間)は1時間以上とすることが好ましい。均質化時間が1時間未満では均質化が十分に進行しない場合がある。しかし長すぎても効果はなく生産効率が低下する。この観点から、好ましい均質化時間は1〜24時間の範囲内である。この▲1▼均熱工程は均質化時間が比較的長いので通常、バッチ方式で炉中に置いて行われる。
【0027】
▲2▼熱間圧延工程は、前記の均質化されたアルミニウム基合金鋳塊を熱間圧延して板材を形成するために行われる。本発明は、この▲2▼熱間圧延工程を、シングルミルのリバース式熱間粗圧延機を用いて行う。この圧延機は、単基式の熱圧延ロールの前後に受座が設けられ、この熱圧延ロールの間に鋳塊を往復繰り返し通過させることで次第に薄板化する、従来から熱間粗圧延機として一般に用いられている装置である。
【0028】
この▲2▼熱間圧延工程においては、圧延終了後にコイルとして巻き取られたアルミニウム板材の再結晶が、生じないか、一部生じたとしてもできるだけ少ないようにすることが特に重要である。このため熱間圧延終了直後のコイルの温度が280〜480℃の範囲内となるように調節する。
この仕上げ温度が280℃未満となるまで冷却すると板材が硬質となり、引き続き行う冷間圧延時にクラックが生じ易くなる。また、コイル巻き取り後に350℃を越えると、巻き取られた板材に一部再結晶が生じるが、後述する▲4▼第一中間焼鈍工程における好ましい条件の連続焼鈍により、この再結晶による悪影響を480℃までは緩和して解消できるので、この温度範囲とすることができる。即ち、この熱間圧延終了直後の温度を480℃まで高くしても、特願平9−138994号特許で得られる耳率1.5〜2.8と同等の耳率を得ることができる。更に、熱間圧延終了直後のコイルの温度を400℃以上に高くすると、その後の第一冷間圧延で60〜90%の圧延率としてもクラックをほとんど生じないようにできるので、著しく歩留まりを改善できる。
【0029】
前記の▲2▼熱間圧延工程において、圧延開始温度は500℃以上とすることが好ましい。圧延開始温度が500℃未満では、圧延荷重が大となり所要パス数が増加し効率が低下すると共に、前記の熱間圧延終了直後の許容温度範囲を維持することが困難になる。
最終パスの開始温度は400℃以上とすることが好ましい。また、この熱間圧延工程の最終パスにおける圧延率は50%以上、歪み速度は1〜50sec−1 の範囲内とすることが好ましい。熱間圧延最終パスの開始温度、圧延率および歪み速度は、いずれも高いほど生産効率は向上するが、熱間圧延直後の板材温度が規定温度より高くなる場合が生じる。この場合には、熱間圧延終了直後のコイルに巻取られた板材の温度が280〜480℃の範囲内となるように、圧延ロールとコイル巻取り機との間で板材を強制的に冷却することが好ましい。
【0030】
▲3▼第一冷間圧延工程は、前記の熱間圧延工程終了後の冷却した板材を、圧延率が60〜90%の範囲内となるように冷間圧延する。この工程における圧延率が60%未満では耳率が大となる。圧延率は、高いほど後述の▲5▼第二中間焼鈍工程において0−90゜耳となる立方体方位組織が多く生成する。ただし圧延率が90%を越えると耳率は逆に高くなりサイドクラックも起こるようになる。この観点から、圧延率は75〜90%の範囲内とすることがより好ましい。
【0031】
▲4▼第一中間焼鈍工程は、前記冷間圧延後の板材に対し、図1に基本構成を示す連続焼鈍装置を用いて加熱速度10〜200℃/sの範囲(10℃/s以上、200℃/s以下の範囲)で加熱し、保持温度280〜380℃の範囲(280℃以上、380℃以下の範囲)に1〜30s(1s以上、30s以下)保持し、冷却速度10〜200℃/sの範囲(10℃以上、200℃以下の範囲)で冷却するものとする。
図1に連続焼鈍装置(Continuous Annealing Line:略称CAL)の基本構成例を示すが、この例の連続焼鈍装置Aは、供給ロール1から長尺のアルミニウム基合金板材2を引き出して緩衝装置3を介して100m程度の長い炉本体4に供給し、この炉本体4内で移動中に上記条件で焼鈍し、焼鈍後に炉本体4から引き出し、緩衝装置6を介して巻取ロール7に巻き取ることができる装置である。この連続焼鈍装置Aによれば、炉本体4を通過するアルミニウム基合金板材2を連続単体処理できるために、バッチ式の焼鈍炉よりもより正確な加熱条件と冷却条件で焼鈍処理を行うことができる。
そして、連続焼鈍装置Aならば、アルミニウム基合金板材2を供給ロール1に巻き付けたコイルの幅や径が異なっても、換言するとアルミニウム基合金板材2の幅や厚さ、処理するべき長さが異なっていても、製造したい順番に焼鈍処理できるために、同一の大きさのコイルのみを焼鈍炉に搬入して焼鈍していたバッチ式の焼鈍炉の場合に比べて中間在庫の増加を抑えることができる。
【0032】
この焼鈍工程は、アルミニウム基合金板材を半軟化状態にもたらすものであって、焼鈍後の耐力;YS(Yield strength)を100〜250MPaの範囲、より好ましくは130〜200MPaの範囲とすることが好ましい。耐力がこの範囲になるように焼鈍するならば、後述の第二中間焼鈍後に0−90゜耳となる立方体方位組織が多く生成する。
焼鈍温度が280℃未満または保持時間が1s未満では十分な軟化が得られず結果的に耳率が高くなる。焼鈍温度が380℃を越えまたは保持時間が30sを越えると軟化が過剰となって耳率が高くなる。
【0033】
▲5▼第二冷間圧延工程は、前記の▲4▼第一中間焼鈍後の板材に対し、圧延率5〜40%の範囲内となるように冷間圧延する工程である。実際上、圧延率を10〜20%の範囲内にするならば、耳率を低く抑えた状態で後述する最終冷間圧延工程において最終圧延率を90%と高くにすることが可能となる。また、ここでの圧延率を5%以上、10%未満の範囲、あるいは20を越えて40%以下の範囲とすると、最終冷間圧延工程において耳率を低く抑えた状態で可能な最終圧延率は低くなる傾向があり、圧延率70〜90%の範囲内であっても、70%に近い範囲になる。
また、圧延率が5%未満では工程全体としての圧延パス数が増大して生産効率が低下する可能性があり好ましくない。圧延率が40%を越えると、耳率が高くなり、本発明の製造方法を用いる理由がなくなる。
【0034】
ここで特願平9−138994号特許の技術では、第1中間焼鈍と第2中間焼鈍の間に行う第二冷間圧延の圧延率を5〜30%の範囲とする必要があり、この範囲の中でも最終的な製品の耳率をできるだけ低くするためには、好ましくは、10〜20%の範囲の圧延率とする必要があった。しかし、通常、工業的には、シングルスタンドのミルであっても、1パスで30〜60%もの圧延を行うのが普通であり、10〜20%の低圧下率の冷間圧延を行うことはパス数の増加の原因となるので好ましくない。しかし、本発明方法では、▲4▼第一中間焼鈍工程を連続焼鈍装置Aで行うので、熱間圧延終了直後のコイルの温度を400℃以下とした場合は、第二冷間圧延の圧延率を20〜40%と高くしても、特願平9−138994号特許の技術で得られた耳率1.5〜2.8と同等の耳率を得ることができる。従ってパス数の増加を抑えることができる。
【0035】
▲6▼第二中間焼鈍工程は、前記の▲5▼第二冷間圧延工程を経た板材を、焼鈍温度が270〜400℃の範囲内、焼鈍時間が2〜24時間の範囲内で焼鈍する工程である。この工程は、前記▲1▼から▲5▼の工程を順次施した板材を完全に再結晶させ、立方体方位組織を十分に発達させ、高い0−90゜耳が発生する軟質材を得る工程である。
【0036】
この際、▲5▼第二冷間圧延工程を経た板材を、先ず270〜320℃の範囲内で1〜24時間保持する第1段階の焼鈍処理を施した後、更に340〜400℃の範囲内の、できるだけ高い温度範囲で2〜24時間保持する第2段階の焼鈍処理を行う。即ち、2段階焼鈍することにより、耳率を低く抑えたままで最終圧延工程の圧延率を90%あるいは90%に近い圧延率にできることがわかった。
焼鈍温度の下限270℃に達するまでの加熱速度は、150℃から270℃まで平均で10〜25℃/時とすることが好ましい。
焼鈍温度が270℃未満または焼鈍時間が1時間未満では焼鈍の効果が不十分であり、耳率改善効果が得られない。第1段階の焼鈍温度が320℃を越えても耳率は改善されない。第2段階の焼鈍処理温度を340℃未満としても、また、焼鈍温度が400℃を越え、または焼鈍時間が24時間を越えても、耳率は更には改善されず、生産効率が低下する他、表面酸化などの弊害が生じ易くなる。
【0037】
▲7▼最終冷間圧延工程では、前記の▲6▼第二中間焼鈍後の板材を、所定の板厚となるように、圧延率が70〜90%の範囲内で冷間圧延する。この工程を経た後に板材は所定の板厚の本合金板としてコイルに巻き取られ製品化される。
この工程における圧延率が70%未満では、生産効率は高まるが缶体成形時やネック成形時に加工硬化を生じ易くなる。圧延率が90%を越えると耳率が高くなる。
そして、耳率を適正化するためには、この最終冷間圧延工程での圧延率が制限されてしまう。この点において、先の2段階熱処理を行うならば、前述した如く耳率を低く抑えた状態で90%に近い圧延率にすることができる。逆に、前記第二中間焼鈍工程で1段階の焼鈍を行うならば、90%近い圧延率での最終冷間圧延は耳率を高めてしまう。
【0038】
以上説明の順に、▲1▼均熱工程と▲2▼熱間圧延工程と▲3▼第一冷間圧延工程と▲4▼第一中間焼鈍工程と▲5▼第二冷間圧延工程と▲6▼第二中間焼鈍工程および▲7▼最終冷間圧延工程を施してアルミニウム基合金板を製造することにより、図2に示すようにアルミ缶を製造するためにカップ状とした場合に、耳率の少ないものを得ることができる。
なお、図2においてカップ8の底のアルミニウム基合金板の圧延方向を矢印で記載したが、この圧延方向を基準として、カップ8の周方向の位置を表す。このカップ8の上部(筒体を構成するアルミニウム基合金板ではサイド部)に〇印で示した箇所に生成されるものが0−90゜耳であり、前述の工程のうち、最初の圧延加工では0−90゜の位置に耳が生じ易く、圧延処理を重ねることにより×印で示した45゜方向にも耳が生じやすくなる傾向がある。本発明の製造方法によればこのアルミニウム基合金のサイド部、即ちアルミニウム基合金板材を筒状に加工したものにあっては筒体開口部に現れる耳の耳率を抑えることができる。
【0039】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に詳しく説明する。
以下の実施例および比較例において、原料のアルミニウム基合金としては表1に示す4種類の組成のものを、それぞれ合金A,B,C,D,Eとして用いた。
【0040】
【表1】
Figure 0003600021
【0041】
前記のそれぞれの合金の溶湯から半連続鋳造により重量6t、厚さ550mmの鋳塊を鋳造し、12.5mmの面削を行い面削鋳塊の試料を作製した。
この試料のそれぞれについて、表2〜表5に示す条件において順次、▲1▼均熱工程、▲2▼熱間圧延工程、▲3▼第一冷間圧延工程、▲4▼第一中間焼鈍工程、▲5▼第二冷間圧延工程、▲6▼第二中間焼鈍工程および▲7▼最終冷間圧延工程を施し、深絞り成形用アルミニウム基合金板を製造した。表記以外の各工程の条件は全試料共通に下記の通りとした。
【0042】
▲1▼均熱工程:加熱速度は平均50℃/時、均質化温度は570℃±3℃とし、こ の温度範囲に8〜10時間保持して均質化を行った。
▲2▼熱間圧延工程:前記の均熱工程終了直後の試料について、シングルミルのリバース式熱間粗圧延機のみを用いて行った。熱間圧延最終パスの開始温度は450℃、圧下量は62%とした。表2,表3の「熱延巻取直後温度」は最終パス終了後コイルに巻取った直後の温度であり、これは圧延速度により調節した(圧延速度が遅いほど仕上げ温度が低くなる)。
なお、熱間圧延終了後、コイルに巻き取る直前に板幅方向両端に発生したサイドクラックを除去するため、各20mm両端部をトリムした。
【0043】
▲4▼第一中間焼鈍工程:長さ20mの炉本体を備えた連続焼鈍装置を用い、加熱速度15℃/s、保持温度、保持時間を後述の表2に示す温度に、冷却速度30℃/sに設定した。
表4と表5に示す比較例においては、上記と同じ連続焼鈍装置を用いた場合(方法C’)の外に、バッチ式焼鈍炉を用い、(焼鈍設定温度−100℃)から(焼鈍設定温度−10℃)までの平均加熱速度を14〜17℃/時間とし、保持温度、時間を表4に示す条件とし、冷却は実体温度が250℃となるまでは炉冷とし、以降は大気中で冷却した場合(方法B’)の例も記載した。
なお、第一中間焼鈍直前に、サイドクラックを除去するために、各20mm両端部をトリムした。
▲6▼第二中間焼鈍工程:バッチ式焼鈍炉を用い、(焼鈍設定温度−100℃)から(焼鈍設定温度−10℃)までの平均加熱速度は14〜17℃/時とした。焼鈍終了後の冷却は実体温度が約250℃となるまでは炉中で冷却し、以後は大気中で放冷した。
▲7▼最終冷間圧延工程:表2,表3の「最終冷延率」によって、板厚0.28mmの深絞り成形用アルミニウム基合金板を製造した。
【0044】
上記の深絞り成形用アルミニウム基合金板を用いて深絞り試験を行った。
「耳率」は、深絞り加工によって絞られたカップについて、下式
耳率=耳の高さ÷カップ高さ×100(%)
により計算した。
耐力は、前記の深絞り成形用アルミニウム基合金板を焼付塗装の焼付け条件に相当する210℃で10分間の加熱を行った後、JIS5号引張り試験片に加工し、JIS B7771に従って0.2%耐力を求めた。
これらの結果を表2、表3(実施例)および表4、表5(比較例)に示す。
【0045】
【表2】
Figure 0003600021
【0046】
【表3】
Figure 0003600021
【0047】
【表4】
Figure 0003600021
【0048】
【表5】
Figure 0003600021
【0049】
上記表2および表3の結果から、本発明の条件を充たす実施例の深絞り成形用アルミニウム基合金板は、いずれも優れた耐力を維持したまま1.1〜1.9%の低い耳率を示した。
【0050】
また、表3の最終冷間圧延率が90%の実施例12では最終冷間圧延途中に、長さ1mm以上のサイドクラックが発生したため、各20mm両端部をトリムしたが、その他の実施例1〜11では第1中間焼鈍直前に1回トリムを行うだけで最終板厚まで圧延可能であった。
【0051】
これに対し、表4と表5において、▲3▼第一冷間圧延工程における「第一冷間圧延率」と、▲7▼最終冷間圧延工程の圧延率が本発明の条件から外れた比較例18、▲4▼第一中間焼鈍工程における保持温度が本発明の条件から外れ、結果として、第一中間焼鈍後の耐力が本発明範囲から外れた比較例14、15および第一中間焼鈍後の耐力は、本発明範囲に入るが、第一中間焼鈍をバッチ焼鈍で行った比較例13、19、20、▲5▼第二冷間圧延工程における「第二冷間圧延率」が本発明の範囲から外れた比較例17、▲6▼第二中間焼鈍工程における保持温度が本発明条件から外れた比較例16は、いずれも耳率が高く、比較例18では耐力も低くなった。
また、比較例21では、耳率および耐力は良好であるが、熱間圧延巻取温度が本発明範囲内で低く、かつ、第一冷間圧延率が高いために、第一冷間圧延途中に長さ1mm以上のサイドクラックが発生したためトリムを行った。このため、第一中間焼鈍直前のトリムを略したが、最終冷間圧延途中に再度長さ1mm以上のサイドクラックが発生し、再トリムが必要となった。
【0052】
【発明の効果】
本発明の深絞り成形用アルミニウム基合金板の製造方法は、均熱工程の加熱温度を520〜610℃に管理することと、熱間圧延工程の熱間圧延終了時の板材温度を280〜480℃に管理し、熱間圧延の全工程にシングルミルのリバース式熱間粗圧延機を用いることと、第一冷間圧延工程において圧延率を60〜90%に管理することと、第一中間焼鈍工程における保持温度を280〜380℃に管理することと焼鈍後の耐力を100〜250MPaに管理することと、第二冷間圧延工程の圧延率を5〜40%に管理することと、第二中間焼鈍工程の焼鈍温度を270〜400℃に管理することと、最終冷間圧延工程の圧延率を70〜90%に管理することにしたので、深絞り成形時に耳率を大幅に低減できるばかりでなく、製缶時にネックの縮径率を大きくしてもネック耳が生じにくい深絞り成形用アルミニウム基合金板を製造することができ、DI缶などを製造する際の製造コストを低減しかつ歩留まりを大幅に向上させることができる。
【0053】
次に、第一中間焼鈍工程を連続焼鈍装置を用い、保持温度280〜380℃で行い、焼鈍後の耐力を100〜250MPaとするならば、熱間圧延工程の熱間圧延終了時の板材温度管理幅を280〜480℃に広く範囲に設定することができる。
更に、第2中間焼鈍工程を2段階焼鈍で行い、第1段階を270〜320℃で行い、第2段階を340〜400℃で行うことで、最終冷間圧延加工時の加工率を低い耳率で90%近くまで向上させることができ、良好なアルミニウム基合金板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明製造方法の実施に用いる連続焼鈍装置の一例を示す概略構成図。
【図2】本発明製造方法で得られたアルミニウム基合金板を加工して得られるアルミ缶用筒体の斜視図。
【符号の説明】
A・・・連続焼鈍装置、1・・・供給ロール、2・・・アルミニウム基合金板材、3、6・・・緩衝装置、4・・・炉本体、7・・・巻取ロール、8・・・筒体。

Claims (9)

  1. アルミニウム基合金の鋳塊からアルミニウム基合金板を製造するに際して、順次、
    (1)均熱工程において、前記アルミニウム基合金鋳塊を、520〜610℃の範囲内の均質化温度に加熱して均質化し、
    (2)熱間圧延工程において、前記の均質化されたアルミニウム基合金鋳塊を熱間圧延して板材を形成し、熱間圧延終了時の板材温度を、280〜480℃の温度範囲に調節し、
    前記熱間圧延の全工程にシングルミルのリバース式熱間粗圧延機を用いるとともに、
    (3)第一冷間圧延工程において、前記熱間圧延終了後の板材を、圧延率が60〜90%の範囲内となるように冷間圧延し、
    (4)第一中間焼鈍工程において、連続焼鈍装置を用いて10〜200℃/sの範囲の加熱速度で280〜380℃の温度範囲まで加熱し、この温度範囲で1〜30秒間保持し、次いで10〜200℃/sの範囲の冷却速度で冷却して焼鈍し、
    (5)第二冷間圧延工程において、前記第一中間焼鈍後の板材を、圧延率が5〜40%の範囲内となるように冷間圧延し、
    (6)第二中間焼鈍工程において、前記第二冷間圧延後の板材を、焼鈍温度が270〜400℃の範囲内、焼鈍時間が2〜24時間の範囲内で焼鈍し、次いで
    (7)最終冷間圧延工程において、前記第二中間焼鈍後の板材を、圧延率が70〜90%の範囲内となるように冷間圧延する
    ことを特徴とする深絞り成形用アルミニウム基合金板の製造方法。
  2. 前記のアルミニウム基合金が、
    Si:0.1〜0.4重量%、
    Fe:0.3〜0.6重量%、
    Cu:0.05〜0.4重量%、
    Mn:0.8〜1.5重量%および
    Mg:0.8〜1.5重量%
    を含有し、残りがAlと不可避不純物とからなる組成を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の深絞り成形用アルミニウム基合金板の製造方法。
  3. 前記のアルミニウム基合金が、
    Si:0.1〜0.4重量%、
    Fe:0.3〜0.6重量%、
    Cu:0.05〜0.4重量%、
    Mn:0.8〜1.5重量%および
    Mg:0.8〜1.5重量%
    を含有し、さらに、
    Cr:0.25重量%以下
    Zn:0.05〜0.25重量%、
    Ti:0.2重量%以下
    のうち1種または2種以上を含有し、残りがAlと不可避不純物とからなる組成を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の深絞り成形用アルミニウム基合金板の製造方法。
  4. 前記(1)均熱工程において、均質化加熱速度を100℃/時以下とし、かつ均質化時間を1時間以上とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の深絞り成形用アルミニウム基合金板の製造方法。
  5. 前記(2)熱間圧延工程において、熱間圧延の開始温度を500℃以上とし、かつ熱間圧延最終パスの開始温度を400℃以上とすることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の深絞り成形用アルミニウム基合金板の製造方法。
  6. 前記(2)熱間圧延工程において、熱間圧延最終パスの圧延率を50%以上とすることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の深絞り成形用アルミニウム基合金板の製造方法。
  7. 前記(5)第二冷間圧延工程において、前記第一中間焼鈍後の板材を、圧延率が10〜20%の範囲内となるように冷間圧延することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の深絞り成形用アルミニウム基合金板の製造方法。
  8. 前記(6)第二中間焼鈍工程において、前記第二冷間圧延後の板材を、270〜320℃の範囲内の焼鈍温度に1〜24時間保持する第1段焼鈍を行い、次いで340〜400℃の範囲内の焼鈍温度に2〜24時間保持する第2段焼鈍を行うことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の深絞り成形用アルミニウム基合金板の製造方法。
  9. 前記(6)第二中間焼鈍工程後の耐力を100〜250MPaの範囲とすることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の深絞り成形用アルミニウム基合金板の製造方法。
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