JPH0790518A - 耳率の低い成形加工用アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents

耳率の低い成形加工用アルミニウム合金板の製造方法

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JPH0790518A
JPH0790518A JP25642193A JP25642193A JPH0790518A JP H0790518 A JPH0790518 A JP H0790518A JP 25642193 A JP25642193 A JP 25642193A JP 25642193 A JP25642193 A JP 25642193A JP H0790518 A JPH0790518 A JP H0790518A
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cold rolling
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Application number
JP25642193A
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Inventor
Toshio Komatsubara
小松原俊雄
Masaichi Shiina
椎名昌市
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Sky Aluminium Co Ltd
Original Assignee
Sky Aluminium Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 Mg:0.5-2.0%、Mn:0.5-1.8%、Fe:0.1-0.7%と、T
i:0.005-0.2%、B:0.0001-0.05%の1種以上と、Si:0.05-
0.5%、Cu:0.05-1.0%、Cr:0.05-0.3%、Zn:0.1-0.5%の1種以
上、残部Alおよび不可避的不純物よりなるアルミニウ
ム合金を、予備焼鈍として1℃/s以上の加熱速度で30
0-420℃に30分以内保持する焼鈍を施し、次いで圧延率1
0-30%の冷間圧延を施した後、再結晶焼鈍として1℃/
s以下の加熱速度で到達温度が300-420℃の焼鈍を施
し、さらに450-620℃に10分以下加熱保持し、1℃/s
以上の冷却速度で250℃以下まで冷却する焼鈍を施し、
その後圧延率40%以上の最終冷間圧延を施し、かつ該最
終冷間圧延後の表面ミクロ組織において、圧延方向に対
して直角方向の最大結晶粒径が25-60μmであることと
する。 【効果】 DI缶胴材として好適な深絞り耳が低く成形
加工性に優れ塗装焼付け処理後に高強度が得られるアル
ミニウム板の製造方法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は耳率・強度及び成形加
工性に優れたアルミニウム板の製造方法に関するもので
あり、更に詳しく述べるなら2ピースアルミニウム缶
(DI缶)胴材などのような塗装焼付け処理が施される用
途に好適な深絞り耳が低く、高強度が得られ成形性に優
れているAl−Mn−Mg系アルミニウム合金板の製造
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年より缶材として多く用いられている
アルミニウム合金板は、さらなる薄肉化を図って材料コ
ストの低減することが強く望まれており、DI缶の缶胴
材料についても薄肉でも充分な強度が得られるように、
より高強度化を図ることが強く望まれている。従来、D
I缶胴材としてはJIS3004合金硬質板が広く用い
られている。この3004合金は強度を高めるために高
圧延率の冷間圧延を施した場合でも比較的良好な成形性
を示すところからDI缶胴材に好適であるとされてい
る。この合金を用いて缶胴材を製造にあたっては、常法
に従ってDC鋳造、均質化処理を施した後熱間圧延し、
次いで冷間圧延を施してからあるいは冷間圧延を施さず
に再結晶焼鈍を行ない、その後最終冷間圧延を行なう工
程を適用するのが一般的である。このような製造工程に
おいて、再結晶焼鈍としては従来は箱型焼鈍炉を用いて
300〜400℃で30分〜3時間程度のバッチ焼鈍を
行なうのが一般的であり、この場合は再結晶焼鈍後の最
終冷間圧延率を70%以上の高い圧延率としなければ必
要な強度を確保することが困難であるが、深絞り耳率の
点からはバッチ焼鈍を適用すれば上述のような高圧延率
でもさほど耳率が大きくなることはないという利点があ
る。一方、最近ではコイルを連続的に繰り出しながら焼
鈍する連続焼鈍炉(CAL)が普及しつつあり、この連
続焼鈍炉を用いて再結晶焼鈍を施せば高温に急速加熱し
て急速冷却することができ、それによる溶体化効果を利
用すれば比較的最終冷間圧延率が低くても高強度を得る
ことが可能となる。但しこのような連続焼鈍炉を用いた
プロセスでは、最終冷間圧延率が高くなれば深絞り耳率
も大きくなってしまうという問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一般にアルミニウムD
I缶の製造においては缶胴用の薄板材料を用いてしごき
加工を含むDI成形を行なって缶胴とし、その後塗装焼
付処理を行なってからネッキング加工(口絞り加工)、フ
ランジング加工(つば出し加工)を行ない、その後缶蓋
(缶エンド)を合わせてシーミング加工(巻締め)を行
なうのが通常である。このようなDI缶の製造において
は前述のように薄肉化を図るために高強度が要求される
ばかりでなく、DI成形時における深絞り耳率が低いこ
とが材料歩留りの点から必要であり、またDI成形性が
良好であること、またDI缶胴に成形して塗装焼付処理
を行なった後のネッキング加工、フランジング加工、シ
ーミング加工での成形性が良好であることも要求され
る。ところで前述のような従来の3004合金硬質板を
用いてDI缶を製造するにあたって、再結晶焼鈍に連続
焼鈍を適用した場合その連続焼鈍において溶体化効果が
得られることから成分組成を適切に定めることによって
塗装焼付処理時における時効析出硬化を期待することが
でき、その結果塗装焼付処理時の強度低下を少なくする
ことができる。従ってDI成形前の材料強度を若干抑え
ておいても塗装焼付処理後に充分な強度を得ることがで
きることから、DI成形時において成形性を良好にする
ことができるという利点がある。しかしながら再結晶焼
鈍に連続焼鈍炉を適用した場合、最終冷間圧延率を大き
くするとDI成形時における深絞り耳率が大きくなって
しまうという問題がある。従って最終冷間圧延率を小さ
くする必要があるが、そのためには最終板厚の薄肉化に
対応して連続焼鈍炉で処理する前の段階で板厚を薄肉化
しなければならず、その結果、連続焼鈍炉の通板面積が
増大するという問題がある。本発明は以上の事情を背景
としてなされたもので、連続焼鈍炉を用いた再結晶焼鈍
を施しても耳率が低く、かつ再結晶焼鈍板厚を厚くして
最終冷間圧延で大きな圧延率で圧延したとしても諸要求
を満たし得る材料を提供することにより連続焼鈍炉の処
理量を増大させることが可能となるDI缶胴用アルミニ
ウム合金板の製造方法を提供することを目的とするもの
である。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明においては、前記
のような目的を達成するため、製造工程中の加工熱処理
パターンを適切に選定し、これによってDI成形時の耳
率の低減に有利な結晶方位となるように集合組織を制御
し、かつ缶胴材として充分な強度を付与し、さらに外観
特性をも良好にしたものである。すなわち本発明は、重
量%でMg:0.5〜2.0%、Mn:0.5〜1.8
%、Fe:0.1〜0.7%を含有し、かつTi:0.
005〜0.2%、B:0.0001〜0.05%のう
ちの1種または2種以上を含有し、さらにSi:0.0
5〜0.5%、Cu:0.05〜1.0%、Cr:0.
05〜0.3%、Zn:0.1〜0.5%のうちの1種
または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不
純物よりなるアルミニウム合金を、常法により鋳造し、
その鋳塊を常法に従って均熱、熱間圧延および必要に応
じて冷間圧延を施した後、予備焼鈍として1℃/s以上
の加熱速度で300℃〜420℃に加熱し保持無しある
いは30min以内保持する焼鈍を施し、次いで圧延率
10〜30%の冷間圧延を施した後、再結晶焼鈍として
1℃/s以下の加熱速度で到達温度が300℃〜420
℃の焼鈍を施しさらに450℃〜620℃に加熱し保持
無しあるいは10min以下保持し1℃/s以上の冷却
速度で250℃以下まで冷却する焼鈍を施し、その後圧
延率40%以上の最終冷間圧延を施し、かつ該最終冷間
圧延後の表面ミクロ組織において、圧延方向に対して直
角方向の最大結晶粒径が25〜60μmであることを特
徴とする耳率の低い成形加工用アルミニウム合金板の製
造方法である。
【0005】
【作用】先ず、本発明の合金成分組成について説明す
る。缶胴材としては3004、3104合金などのAl
−Mn−Mg系合金が一般に広く用いられており本発明
の製造方法を行使するにあたり基本的にAl−Mn−M
g系合金であれば問題はない。この合金系では強度、耳
率や成形性の制御を目的として種々の元素が添加される
のは一般的だが、本発明の合金元素の添加量は下記の通
りである。
【0006】Mg: Mgの添加は、SiやCuとの共
存によってMg2 SiあるいはAl−Cu−Mg相の析
出による時効硬化を図ることができ、本発明のごとく溶
体化効果を持たせた再結晶焼鈍を施す場合、特に塗装焼
付処理時の時効硬化によって塗装焼付処理後の強度低下
を抑えるのに効果がある。さらにMgは単独でも固溶強
化の効果がある元素である。このようにMgは強度向上
に不可欠な元素であるが、Mg量が0.5%未満ではそ
の効果が少なく、一方2.0%を超えて添加した場合に
は、絞り成形上は問題がないが、加工硬化しやすくなる
ために、DI成形時の再絞り性やしごき性を悪くする。
したがってMgの範囲は0.5〜2.0%とする。
【0007】Mn: Mnは強度向上に寄与するととも
に成形性向上に有効な元素である。特に本発明において
目指している用途である缶胴材ではDI成形時にしごき
加工を施すため、とりわけMnは重要となる。アルミニ
ウム板のしごき加工においては通常エマルジョンタイプ
の潤滑剤が用いられているが、Mn系晶出物が少ない場
合にはエマルジョンタイプ潤滑剤だけでは潤滑能が不足
し、ゴーリングと呼ばれる擦り疵や焼付きなどの外観不
良が発生することがある。この現象は晶出物の大きさ、
量、種類に影響されることが知られており、Mnはその
晶出物を形成することによりゴーリングを防止するため
に不可欠な元素である。Mn量が0.5%未満では、M
n化合物による固体潤滑的な効果が得られず、一方Mn
量が1.8%を超えるとMnAl6 の初晶巨大金属間化
合物が発生して著しく成形性を損う。そこでMnの範囲
は0.5〜1.8%とする。
【0008】Fe: FeはMnの晶出や析出を促進
し、アルミニウム基地中のMn固溶量やMn系不溶性化
合物の分散状態を制御するために必要な元素である。適
正な化合物分散状態を得るためには、Mn添加量に応じ
てFeを添加することが必要であり、Mn量が0.5%
以上である本願発明においてはFe量が0.1%未満で
は適正な化合物分散状態を得ることが困難であり、一方
Fe量が0.7%を超えてはMn添加に伴なって初晶巨
大化合物が発生しやすくなり、成形性を著しく損う。そ
こでFeの範囲は0.1〜0.7%とする。
【0009】Ti,B:通常のアルミニウム合金におい
ては鋳塊結晶粒の微細化・安定化のためにTiおよびB
を微量添加することが行なわれており、本発明において
も微量のTi、もしくはTiおよびBを添加する。但
し、Ti量が0.005%未満ではその効果が得られ
ず、0.20%を超えれば初晶TiAl3 が晶出して成
形性を阻害する。従ってTi量は0.005〜0.20
%の範囲とした。またTiとともにBを添加すると鋳塊
結晶粒微細化の効果がさらに向上する。但しTiと併せ
てBを添加する場合、B量が0.0001%未満ではそ
の効果がなく、0.05%を超えればTiB2 の粗大粒
子が混入して成形性を害することからBは0.0001
〜0.05%の範囲とする。
【0010】Cu,Si,Cr,Zn: これらはいず
れも強度向上に寄与する元素であり、本発明ではこれら
のうちから選ばれた1種または2種以上を添加する。こ
れらの各元素についてさらに説明する。
【0011】Cu: Cuの添加は本発明では再結晶焼
鈍においてCuを溶体化させ塗装焼付処理時のAl−C
u−Mg系析出物の析出過程で起る時効硬化を利用した
強度向上に寄与する。Cu量が0.05%未満ではその
効果が得られず、一方Cuを1.0%を超えて添加した
場合には時効硬化は容易に得られるものの硬くなりすぎ
て成形性を阻害する。そこでCuの範囲は0.05〜
1.0%とすることが望ましい。
【0012】Si: Siの添加はMg2 Si系化合物
の析出による時効硬化に寄与する。Si量が0.05%
未満ではその効果が得られず、0.5%を超えると時効
硬化は容易に得られるものの材料が硬くなりすぎて成形
性を阻害する。そこでSiの範囲は0.05〜0.5%
とする。
【0013】Cr: Crも強度向上に効果的な元素で
あるが、Cr量が0.05%未満ではその効果が少な
く、0.3%を超えると巨大晶出物生成によって成形性
の低下を招くため、好ましくない。そこでCrの範囲は
0.05〜0.3%とする。
【0014】Zn: Znの添加はMg2Zn3Al2
時効析出による強度向上に寄与するが、0.1%未満で
はその効果が得られず、0.5%を超えると強度への寄
与については問題ないが、耐食性を劣化させる。そこで
Znの範囲は0.1〜0.5%とする。
【0015】以上の各成分の残部は、Alおよび不可避
的不純物とする。
【0016】次にこの発明における製造プロセスおよび
組織の限定理由をその作用とともに説明する。
【0017】鋳造・均熱: 先ず前述の合金組成を有す
るアルミニウム合金鋳塊を常法に従ってDC鋳造法(半
連続鋳造法)により鋳造する。次いでその鋳塊に対し
て、均質化処理としての加熱を施した後に熱間圧延前の
予備加熱を施すか、または均質化処理を兼ねた熱間圧延
前予備加熱を施し、引き続き熱間圧延を行なう。この際
の均質化処理条件は、常法に従って500〜620℃の
温度で1時間以上の保持とすれば良い。
【0018】熱間圧延: 熱間圧延の条件は特に規制し
ないが、熱間圧延性を考慮すると580℃〜200℃の
温度域で圧延することが好ましい。熱間圧延のみでは所
要の板厚とならない場合は、熱間圧延後に必要に応じて
所要の板厚となるまで冷間圧延を施す。
【0019】予備焼鈍: 本発明においてはこの熱処理
が極めて重要である。この予備焼鈍の目的は完全再結晶
させるのではなく部分再結晶にとどめ、高耳成分として
嫌われるR方位粒のみの再結晶化を促進させることに特
徴がある。本発明において対象としているAl−Mn−
Mg系合金では通常数μm程度の大きさの晶出化合物が
多数存在しており、圧延によりこの晶出物近傍に歪が蓄
積され、そこが再結晶しやすくなっている。したがって
加熱速度が1℃/s以上、到達温度300〜420℃、
該温度域で保持される時間が30分以内とする焼鈍を施
すことにより、この晶出物近傍から優先的にR方位を有
する再結晶が開始する。なお再結晶率は10〜80%の
範囲とすることが好ましい。加熱速度が1℃/s未満の
場合、昇温過程でMg2 Si、Al2 CuMgおよびα
AlMnSiまたはAl6 Mnの析出が起こり、その後
にほどこされる再結晶焼鈍時にCube方位を有する結
晶の成長が抑制されるので好ましくない。焼鈍温度が3
00℃未満では十分にR方位結晶粒の再結晶化が進ま
ず、また420℃を超える温度ではほとんど再結晶化し
てしまい好ましくない。したがって、焼鈍温度は300
〜420℃、好ましくは320〜380℃とする。また
30minを超える保持は再結晶化が進みすぎて好まし
くない。
【0020】冷間圧延: 上記予備焼鈍(部分再結晶焼
鈍)後、10〜30%の圧延率の冷間圧延を施し、予備
焼鈍により再結晶した部分に軽度の歪を加え、次工程の
再結晶焼鈍におけるCube方位成長を促すものであ
る。圧延率が10%未満では与える歪は十分ではなく、
また30%を超えると再結晶領域に強度の歪が加わるた
めに次工程の再結晶焼鈍時に、晶出物近傍での再結晶化
が再度R方位となりCube方位の優先生成・成長が得
られない。したがって圧延率は10〜30%とする。
【0021】再結晶焼鈍: 予備焼鈍との組合わせで極
めて重要な工程である。予備焼鈍により晶出物近傍の歪
は少なくなっているために、この再結晶焼鈍においては
晶出物近傍は容易には再結晶核とはなりえず、かわって
前工程の冷間圧延により導入されたマトリクス中の転位
の集積部から優先的にCube方位粒の再結晶化が進
む。このCube方位粒は0−90°耳を促進し、その
後の冷間圧延で形成される45°耳を相殺する効果があ
り、その結果最終板の低耳化に極めて有効である。すな
わち再結晶焼鈍時にCube方位の再結晶粒が優先生成
して、再結晶化しきれない晶出物近傍まで成長包含して
しまい、その結果、全体的にCube方位の多い再結晶
組織となるため全体として耳率の低い組織を得ることが
できる。このときの加熱速度がCube方位の再結晶粒
とR方位の再結晶粒との生成、成長のバランスを決定し
ている。すなわち、1℃/s以下の加熱速度で300〜
420℃まで加熱することによりR方位の再結晶粒の生
成が生じる前にCube方位の再結晶粒を形成して優先
成長させ、結果としてCube方位粒の比率を多くし最
終板の耳率を低くする。加熱速度が1℃/sを超えると
Cube方位の再結晶粒が優先成長するに足るだけのサ
イズになる前にR方位の再結晶粒の生成が優先的に生じ
るためCube方位粒の比率はそれほど多くならない。
【0022】この状態で耳率に関しては缶胴材として充
分であるが強度面では最適な高強度が得られないため、
さらに再度450℃〜620℃に加熱しCu、Mg、S
i等の析出硬化元素の固溶による溶体化効果による強度
向上をはかる必要がある。すなわち、DI成形時の強度
をあまり強くない程度に抑えておき、塗装焼付け処理を
施した時に固溶元素の時効硬化により強度を確保するこ
とにより強度低下を少なくしたアルミニウム合金板を得
ることができる。これにより、DI成形時の強度がそれ
ほど高くないことから良好な成形性が得られるととも
に、塗装焼付後の強度低下が少ないことからDI成形時
の強度はバッチタイプの焼鈍材より低くともDI成形時
の強度を維持するため最終的には十分な強度を有するア
ルミニウム合金板が得られる。
【0023】到達温度が450℃未満では十分な溶体化
効果が得られず、また高温である方がより溶体化効果に
よる強度向上が望めるものの620℃を超えて高温にな
ると共晶融解による軟化等の製造上の不都合が生じ、ま
た部分融解により製品の外観を損なう恐れがある。した
がって到達温度は450〜620℃とする。
【0024】また、450℃より高温では表面酸化が進
行するため、450℃以上の保持時間を少なくする必要
がある。10分を超えて長時間となると、表面に形成さ
れた酸化皮膜が焼鈍終了後の冷間圧延性や製品外観を損
ねる。従って加熱、保持、冷却期間を合わせて450〜
620℃の温度範囲に晒される時間は10分以内とす
る。溶体化処理とは言っても析出硬化元素の添加量は比
較的少ないので、上記温度に到達した後、保持なしで直
ちに冷却してもよい。
【0025】冷却速度は1℃/sより遅いと固溶した合
金元素が冷却過程で析出してしまい、溶体化効果による
強度向上の程度が少なくなる。したがって、析出が進行
する250℃までの温度域においては1℃/s以上の冷
却速度で急速に冷却する必要がある。
【0026】最終冷間圧延: 上述の予備焼鈍、冷間圧
延、Cube方位の成長を図る低温側の焼鈍と合金元素
の固溶を図る高温側の焼鈍とを組み合わせた加工熱処理
を行なった後、強度を得るために圧延率が40%以上の
冷間圧延を行う。圧延率が40%未満では必要強度を確
保することができない。
【0027】結晶粒サイズ: 冷間圧延後の表面ミクロ
組織において圧延方向に対して直角方向の最大結晶粒径
はDI成形性やDI缶外観に大きな影響を及ぼす。上述
の結晶粒径が25μm未満ではカッピング時のリューダ
ースマークの発生が促進されDI成形時の缶切れが発生
しやすくなり、また60μmを超えると成形性が低下す
るとともにDI缶外観を劣化させる。そこで冷間圧延後
の表面ミクロ組織において圧延方向に対して直角方向の
最大結晶粒径は25〜60μmであることとする。
【0028】最終焼鈍: なお最終冷間圧延を行なった
後、そのままDI成形等の成形に供しても良いが、必要
に応じて100〜200℃程度の最終焼鈍を施すことに
より、深絞り性の一層の改善を図ることができる。10
0℃未満では焼鈍の効果が無く、一方200℃を超える
と強度が低下し、またCu,Siなど析出硬化元素を多
く含む場合には延性が低下する。この時の保持時間は3
0分〜5時間が工業的に一般的である。
【0029】
【実施例】表1に示す組成のJIS3004アルミニウ
ム合金を常法に従いDC鋳造、均質化処理(600℃x
8h)した後、熱間圧延を施した。これを表2のような
中間加工熱処理を行ない最終板厚0.3mmtの冷延板
とした。なお、表2の「再結晶焼鈍」欄の「BAF」と
はバッチ焼鈍炉を用いたもので加熱速度は0.01℃/
sであり、また「CAL」とは連続焼鈍炉を用いたもの
で加熱冷却速度は約20℃/sである。これらの材料に
ついて元板および塗装焼付を想定した200℃x20分
の熱処理を行なった時(「ベーク後」欄)の機械的性
質、元板のカップ耳率(カッピング条件:ポンチφ50
mm、ブランクφ90mm、クリアランス30%)、D
I成形性を評価した。DI成形性の指標としてはA:ボ
ディメーカーの2nd Ironingダイスをはずし
て通常よりも苛酷なしごき成形条件として連続1000
0缶の成形を行なった時の破断缶発生状況による缶切れ
性、B:4段Necking後の口拡げ性、C:4段N
ecking後のシーミング性、D:DI缶の外観欠陥
を○〜×で相対評価した。その結果を表3に示す。なお
「最大粒径」はLT方向の最大粒径(μm)を示したも
のである。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】表3に示す通り発明例Aは元板強度に優れ
るとともに塗装焼付後の強度が特に優れて、また耳率も
1.0と極めて低く優れている。さらに成形性について
も、A:缶切れ性、B:口拡げ性、C:シーミング性、
D:外観欠陥のいずれにおいても優れた結果を示してい
る。また発明例A’は再結晶焼鈍の2段目の保持時間を
30秒としたもので、同様にいずれの特性においても優
れた結果を示している。これに対して、従来例Bは焼鈍
後の圧延率が低いため強度が低く、また口拡げ性・シー
ミング性が劣っている。また従来例Cは再結晶焼鈍がバ
ッチ焼鈍1段のみであるため析出硬化がなくベーキング
後の耐力が劣り、また元板強度が高いため缶切れしやす
い。比較例Dは予備焼鈍温度が低いため再結晶率が低
く、その結果耳率が高くなっている。一方比較例Eは予
備焼鈍温度が高いため再結晶率が高く、耳率も高くなっ
ている。これは予備焼鈍の段階でR方位とともにCub
e方位の再結晶化が進み、従って再結晶焼鈍時のCub
e方位の比率が少なくなったためである。また比較例F
は発明例とは再結晶焼鈍条件がCAL1段のみと異なる
もので、かなり良い結果を示しているものの耳率が高い
値となっている。比較例Gは予備焼鈍後の圧延率が大き
いもので、予備焼鈍では本発明と同様に適量のR方位が
再結晶したものの圧延率が大きすぎるために再結晶焼鈍
において再度R方位の成長が生じてしまい、その結果耳
率が大きくなっており、また再結晶焼鈍後の冷間圧延に
おける圧延率が小さいために強度が低下しており、口拡
げ性やシーミング性に劣るものとなっている。比較例H
は再結晶焼鈍温度が高すぎるため結晶粒が粗大化し、さ
らに部分溶融に伴う晶出物の粗大化も生じ、その結果強
度は優れているものの破断缶が多数でき、また外観も劣
るものとなっている。以上のように本発明による製造方
法においては強度、特にベーク後の強度、伸びに優れ、
また耳率が非常に小さく極めて優れた値を示しており、
また成形性においても缶切れも無く口拡げ性・シーミン
グ性も良く、また外観も良好な結果となっている。これ
に対して従来例・比較例は強度あるいは成形性において
問題があり、またいずれも耳率が高い値となっている。
【0034】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明のアルミニ
ウム合金板の製造方法によれば、合金成分組成を適切に
選定するとともに、予備焼鈍・Cube方位を成長させ
る焼鈍・合金元素を固溶させる焼鈍の各中間焼鈍条件な
らびに中間・最終冷間圧延条件を適切に設定することに
よって、中間焼鈍工程において深絞り耳率の低減に有効
なCube方位の再結晶粒を優先的に成長させるととも
に、塗装焼付処理時における時効硬化に寄与する元素を
固溶させる溶体化効果をもたらすことができる。その結
果DI成形時における深絞り耳を低減して材料歩留りを
向上させることができる。同時に、塗装焼付処理時にお
ける時効硬化を利用して塗装焼付処理前後の強度低下を
少なくすることができ、その結果、必要な缶胴強度を得
るためにDI成形前の元板の強度をさほど高めておく必
要がなくなることからDI成形性も良好となる。さらに
は冷間圧延率を高めても深絞り耳率を低く抑えることが
できるため、最終冷間圧延率を高めることによりDI成
形におけるしごき加工での圧下率の増分を相対的に少な
くし、これによってDI成形後の缶胴フランジ部のネッ
キング加工、フランジング加工、シーミング加工におけ
る成形性も良好とすることができる。以上のように本発
明の方法によれば、DI缶として必要な高強度を有する
とともに、DI成形時における深絞り耳率が低く、かつ
DI成形時における成形性と、その後のフランジング加
工、ネッキング加工、シーミング加工における成形性と
の両者を良好にすることができるなど顕著な効果を得る
ことができる。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mg:0.5〜2.0%(重量%、以下
    同じ)、Mn:0.5〜1.8%、Fe:0.1〜0.
    7%を含有し、かつTi:0.005〜0.2%、B:
    0.0001〜0.05%のうちの1種または2種以上
    を含有し、さらにSi:0.05〜0.5%、Cu:
    0.05〜1.0%、Cr:0.05〜0.3%、Z
    n:0.1〜0.5%のうちの1種または2種以上を含
    有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミ
    ニウム合金を、常法により鋳造し、その鋳塊を常法に従
    って均熱、熱間圧延および必要に応じて冷間圧延を施し
    た後、予備焼鈍として1℃/s以上の加熱速度で300
    ℃〜420℃に加熱し保持無しあるいは30min以内
    保持する焼鈍を施し、次いで圧延率10〜30%の冷間
    圧延を施した後、再結晶焼鈍として1℃/s以下の加熱
    速度で到達温度が300℃〜420℃の焼鈍を施しさら
    に450℃〜620℃に加熱し保持無しあるいは10m
    in以下保持し1℃/s以上の冷却速度で250℃以下
    まで冷却する焼鈍を施し、その後圧延率40%以上の最
    終冷間圧延を施し、かつ該最終冷間圧延後の表面ミクロ
    組織において、圧延方向に対して直角方向の最大結晶粒
    径が25〜60μmであることを特徴とする耳率の低い
    成形加工用アルミニウム合金板の製造方法。
JP25642193A 1993-09-20 1993-09-20 耳率の低い成形加工用アルミニウム合金板の製造方法 Pending JPH0790518A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007191760A (ja) * 2006-01-19 2007-08-02 Kobe Steel Ltd Ppキャップ用アルミニウム合金板およびその製造方法
JP2011219870A (ja) * 2011-06-06 2011-11-04 Kobe Steel Ltd Ppキャップ用アルミニウム合金板

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JP2007191760A (ja) * 2006-01-19 2007-08-02 Kobe Steel Ltd Ppキャップ用アルミニウム合金板およびその製造方法
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