JP3247447B2 - 耳率の低い成形用アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents

耳率の低い成形用アルミニウム合金板の製造方法

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JP3247447B2 JP26306592A JP26306592A JP3247447B2 JP 3247447 B2 JP3247447 B2 JP 3247447B2 JP 26306592 A JP26306592 A JP 26306592A JP 26306592 A JP26306592 A JP 26306592A JP 3247447 B2 JP3247447 B2 JP 3247447B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、耳率・強度及び成形
加工性に優れたアルミニウム板の製造方法に関するもの
であり、更に詳しく述べるなら2ピースアルミニウム缶
(DI缶)胴用のAl−Mn−Mg系アルミニウム合金
板の製造方法に関するものである。本発明に係る製造方
法により製造された成形加工用アルミニウム硬質板は、
特に缶材などのような塗装焼付け処理が施される用途に
適しており、深絞り耳が低く、高強度が得られ成形性に
も優れている。
【0002】
【従来の技術】缶材として用いられているアルミニウム
合金板は近年より薄肉化を図って材料コストの低減を図
ることが強く望まれており、そこでDI缶の缶胴材料に
ついても、薄肉で充分な強度が得られるように、より高
強度化を図ることが強く望まれている。
【0003】従来のDI缶胴材としては、JIS 30
04合金硬質板が広く用いられている。この3004合
金は、強度を高めるために高圧延率の冷間圧延を施した
場合でも比較的良好な成形性を示すところから、DI缶
胴材に好適であるとされている。このような3004合
金硬質板の製造にあたっては、均質化処理を施した後、
常法に従って熱間圧延し、次いで冷間圧延を施してから
あるいは冷間圧延を施さずに中間焼鈍を行ない、その後
最終冷間圧延を行なう工程を適用するのが一般的であ
る。このような製造工程において、中間焼鈍としては従
来は箱型焼鈍炉を用いて300〜400℃で30分〜3
時間程度のバッチ焼鈍を行なうのが一般的であり、この
場合は中間焼鈍後の最終冷間圧延率を70%以上の高い
圧延率としなければ必要な強度を確保することが困難で
あるが、深絞り耳率の点からは、バッチ焼鈍を適用すれ
ば上述のような高圧延率でもさほど耳率が大きくなるこ
とはないという利点がある。最近ではコイルを連続的に
繰り出しながら焼鈍する連続焼鈍炉(CAL)が普及し
つつあり、この連続焼鈍炉を用いて中間焼鈍を施せば、
高温に急速加熱して急速冷却することができ、それによ
る溶体化効果を利用すれば、比較的最終冷間圧延率が低
くても高強度を得ることが可能となる。但しこのような
連続焼鈍炉を用いたプロセスでは、最終冷間圧延率が高
くなれば深絞り耳率も大きくなってしまうという問題が
ある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一般にアルミニウムD
I缶の製造においては、缶胴用の薄板材料を用いて、し
ごき加工を含むDI成形を行なって缶胴とし、その後塗
装焼付処理を行なってから、ネッキング加工(口絞り加
工)、フランジング加工(つば出し加工)を行ない、そ
の後缶蓋(缶エンド)を合せてシーミング加工(巻締
め)を行なうのが通常である。このようなDI缶の製造
においては、前述のように薄肉化を図るために高強度が
要求されるばかりでなく、DI成形時における深絞り耳
率が低いことが材料歩留りの点から必要であり、またD
I成形性が良好であること、またDI缶胴に成形して塗
装焼付処理を行なった後のネッキング加工、フランジン
グ加工、シーミング加工での成形性が良好であることも
要求される。
【0005】ところで前述のような従来の3004合金
硬質板を用いてDI缶を製造するにあたって中間焼鈍に
連続焼鈍を適用した場合、その連続焼鈍において溶体化
効果が得られることから成分組成を適切に定めることに
よって塗装焼付処理時における時効析出硬化を期待する
ことができ、その結果塗装焼付処理時の強度低下を少な
くすることができる。したがって、DI成形前の材料強
度を若干抑えておいても塗装焼付処理後に充分な強度を
得ることができ、DI成形時において成形性を良好にす
ることができるという利点がある。しかしながら中間焼
鈍に連続焼鈍炉を適用した場合、最終冷間圧延率を大き
くするとDI成形時における深絞り耳率が大きくなって
しまうという問題がある。従って、最終冷間圧延率を小
さくするためには、最終板厚の薄肉化に対応して連続焼
鈍炉で処理する前の段階で板厚を薄肉化しなければなら
ず、その結果連続焼鈍炉の通板面積が増大するという問
題がある。
【0006】本発明は以上の事情を背景としてなされた
もので、連続焼鈍炉による中間焼鈍を施しても耳率が低
い材料を提供するだけでなく、中間焼鈍板厚を厚くして
最終冷間圧延で大きな圧延率で圧延したとしても諸要求
を満たし得る材料を提供することにより連続焼鈍炉の処
理量を増大させることが可能となるDI缶胴用アルミニ
ウム合金板の製造方法を提供することを目的とするもの
である。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明においては、前記
のような目的を達成するため、基本的には、合金の成分
組成を適切に選定すると同時に、連続焼鈍炉による中間
焼鈍の加熱パターンを適切に選定し、これによって溶体
化効果を付与するとともにDI成形時の耳率の低減に有
利な結晶方位となるように制御したものである。
【0008】すなわち本発明は、Mg:0.5〜2.0
%、Mn:0.5〜1.8%、Fe:0.1〜0.7%
を含有し、かつTi:0.005〜0.2%を単独でも
しくはB:0.0001〜0.05%と組合せて含有
し、さらにSi:0.05〜0.5%、Cu:0.05
〜0.5%、Cr:0.05〜0.3%、Zn:0.1
〜0.5%のうちの1種または2種以上を含有し、残部
がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金
を鋳造した後、その鋳塊を常法に従って均熱、熱間圧延
および必要に応じて冷間圧延を施した後、中間焼鈍とし
て、到達温度T1が300℃以上400℃以下の範囲内
で、焼鈍開始温度から(T1−15℃)の間の平均昇温
速度が3℃/s以上で、しかも(T1−15℃)からT
1までの温度範囲に5秒以上保持する1段目の焼鈍を施
し、該1段目の焼鈍に引続いてもしくは一旦1℃/s以
上の冷却速度で150℃以下に冷却した後、到達温度T
2が400℃以上600℃以下の範囲内で、T2の温度
に到達後直ちにまたは400℃を超える範囲の温度に曝
される時間が10分以内となるように保持した後、1℃
/s以上の冷却速度で冷却する2段目の焼鈍を行ない、
その後圧延率40%以上の冷間圧延を施し、かつ該冷間
圧延後における表面ミクロ組織が、圧延方向に対して直
角方向の最大結晶粒の短径が25〜60μmであること
を特徴とする強度、成形性に優れ耳率の低い成形用アル
ミニウム合金板の製造方法である。
【0009】
【作用】先ず、本発明の合金成分組成の限定理由につい
て説明する。下記合金成分は、アルミニウムの強度を高
めると共に、耳率や成形性の制御を目的として添加する
ものである。
【0010】Mg:Mgの添加は、SiやCuとの共存
によってMg2 SiあるいはAl−Cu−Mg相の析出
による時効硬化を期待することができ、本発明のように
溶体化効果を持たせた中間焼鈍を施す場合、特に塗装焼
付処理時の時効硬化によって塗装焼付処理後の強度低下
を抑えるのに効果がある。さらにMgは、単独でも固溶
強化の効果がある元素である。このようにMgは強度向
上に不可欠な元素であるが、Mg量が0.5%未満では
その効果が少なく、一方2.0%を超えて添加した場合
には、絞り成形上は問題がないが、加工硬化しやすくな
るために、DI成形時の再絞り性やしごき性を悪くす
る。したがってMgの範囲は0.5〜2.0%とした。
【0011】Mn:Mnは強度向上に寄与するとともに
成形性向上に有効な元素である。特に本発明において目
指している用途である缶胴材では、DI成形時にしごき
加工されるため、とりわけMnは重要となる。アルミニ
ウム板のしごき加工においては、通常エマルジョンタイ
プの潤滑剤が用いられているが、Mn系晶出物が少ない
場合には、同程度の強度を有していてもエマルジョンタ
イプ潤滑剤だけでは潤滑能が不足し、ゴーリングと呼ば
れる擦り疵や焼付きなどの外観不良が発生するおそれが
ある。この現象は、晶出物の大きさ、量、種類に影響さ
れることが知られており、Mnはその晶出物を形成する
ために不可欠な元素である。Mn量が0.5%未満で
は、Mn化合物による固体潤滑的な効果が得られず、M
n量が1.8%を超えると、MnAl6 の初晶巨大金属
間化合物が発生し、著しく成形性を損う。そこでMnの
範囲は0.5〜1.8%とした。
【0012】Fe:FeはMnの晶出や析出を促進し、
アルミニウム基地中のMn固溶量やMn系不溶性化合物
の分散状態を制御するために必要な元素である。適正な
化合物分散状態を得るためには、Mn添加量に応じてF
eを添加することが必要である。Fe量が0.1%未満
ではMn量が0.5%以上の本願発明においては適正な
化合物分散状態を得ることが困難であり、一方Fe量が
0.7%を超えてはMn添加に伴なって初晶巨大化合物
が発生しやすくなり、成形性を著しく損う。そこでFe
の範囲は0.1〜0.7%とした。
【0013】Ti,B:通常のアルミニウム合金におい
ては、鋳塊結晶粒微細化・安定化のためにTiおよびB
を微量添加することが行なわれており、本発明において
も微量のTi、もしくはTiおよびBを添加する。但
し、Ti量が0.005%未満ではその効果が得られ
ず、0.20%を超えれば初晶TiAl3 が晶出して成
形性を阻害する。そこでTi量は0.005〜0.20
%の範囲とした。またTiとともにBを添加すれば、鋳
塊結晶粒微細化の効果が向上する。但しTiと併せてB
を添加する場合、B量が0.0001%未満ではその効
果がなく、0.05%を超えればTiB2 の粗大粒子が
混入して成形性を害することから、Bは0.0001〜
0.05%の範囲とした。
【0014】Cu,Si,Cr,Zn:これらはいずれ
も強度向上に寄与する元素であり、本発明ではこれらの
うちから選ばれた1種または2種以上が添加される。こ
れらの各元素についてさらに説明する。
【0015】Si:Siの添加はMg2 Si系化合物の
析出による時効硬化に寄与する。Si量が0.05%未
満ではその効果が得られず、0.5%を超えると時効硬
化は容易に得られるものの材料が硬くなりすぎて成形性
を阻害する。そこでSiの範囲は0.05〜0.5%と
した。
【0016】Cu:Cuの添加は本発明では中間焼鈍に
おいてCuを溶体化させ塗装焼付処理時のAl−Cu−
Mg系析出物の析出過程で起る時効硬化を利用した強度
向上に寄与する。Cu量が0.05%未満ではその効果
が得られず、一方Cuを0.5%を超えて添加した場合
には、時効硬化は容易に得られるものの、硬くなりすぎ
て成形性を阻害する。そこでCuの範囲は0.05〜
0.5%とした。
【0017】Cr:Crも強度向上に効果的な元素であ
るが、Cr量が0.05%未満ではその効果が少なく、
0.3%を超えると巨大晶出物生成によって成形性の低
下を招くため、好ましくない。そこでCrの範囲は0.
05〜0.3%とした。
【0018】Zn:Znの添加はMg2 Zn3 Al2
時効析出による強度向上に寄与するが、0.1%未満で
はその効果が得られず、0.5%を超えると強度への寄
与については問題ないが、耐食性を劣化させる。そこで
Znの範囲は0.1〜0.5%とした。
【0019】以上の各成分の残部は、Alおよび不可避
的不純物とすれば良い。
【0020】次にこの発明における製造プロセスを、そ
の作用とともに説明する。
【0021】鋳造・均熱:先ず前述のような合金組成を
有するアルミニウム合金鋳塊を、常法に従ってDC鋳造
法(半連続鋳造法)により鋳造する。次いでその鋳塊に
対して、均質化処理としての加熱を施した後に熱間圧延
前の予備加熱を施すか、または均質化処理を兼ねた熱間
圧延前予備加熱を施し、引き続き熱間圧延を行なう。こ
の際の均質化処理条件は、常法に従って500〜620
℃の温度で1時間以上の保持とすれば良い。
【0022】熱間圧延:熱間圧延の条件は特に規制しな
いが、熱間圧延性を考慮するとその終了温度(上り温
度)が230℃以上とすることが好ましい。熱間圧延
後、熱間圧延のみでは所要の板厚とならない場合は、必
要に応じて所要の板厚となるまで冷間圧延を施す。
【0023】1段目の焼鈍:この焼鈍においては深絞り
耳の低減に有効な低耳成分である結晶方位(Cube方
位)を優先的に生成・成長させる。本発明の合金成分で
は、通常のDC鋳造により得られる圧延材では比較的粗
大な晶出物が多く、このため再結晶の初期には晶出物近
傍から高耳成分のR方位と呼ばれる再結晶粒が生成成長
する。一方の低耳成分であるCube方位の結晶粒は、
その生成はR方位より遅いが成長速度が速いことから、
再結晶の進行の遅い条件下では優先的に成長する特性が
あり。このことから本発明においてはこのCube方位
の生成成長を促すような焼鈍条件とする。すなわち、昇
温速度は焼鈍開始温度から(到達温度T1−15℃)の
間の平均昇温速度が3℃/s以上であることとする。こ
れより遅い昇温速度では昇温過程で微細な析出物が生成
して、所定温度に到達した後の再結晶進行時にR方位だ
けでなくCube方位の再結晶粒の成長をも抑制するの
でこの条件とする。また到達温度T1は300℃〜40
0℃の範囲内で、かつ(到達温度T1−15℃)から到
達温度T1までの温度範囲に少なくとも5秒以上保持す
ることとする。到達温度が400℃より高温では昇温過
程でほぼ再結晶が終了してしまいCube方位の少ない
再結晶粒となり、一方300℃より低温では再結晶が進
行しにくく焼鈍過程の間に微細な析出物が生成してCu
be方位の成長を抑制することになるため低耳効果は少
なくなる。従って到達温度は300℃〜400℃の温度
範囲とする。到達温度が本条件下では保持中に再結晶が
進行し、Cube方位の比率が上昇する。この温度範囲
の高温になるほど到達保持時間は短くてよいが低耳効果
は少なくなる。低温側ではその温度保持時間は長時間が
必要であるが、その分Cube方位の比率は増加して低
耳効果が増大する。いずれにしても、少なくとも5秒以
上の保持を行わないとその効果が得られない。なお再結
晶終了温度は一般には加熱昇温速度によって決定され、
加熱昇温速度が遅くなれば再結晶終了温度は低くなり、
加熱昇温速度が速くなれば再結晶終了温度は高くなる。
したがって第1段目の焼鈍の到達温度は、実際には昇温
速度との兼ね合いで300〜400℃の範囲内の適切な
温度に定めれば良い。1段目の焼鈍が終了した時点で、
再結晶がほぼ完了していることが望ましいが、この時点
でCube方位の再結晶の芽が生成してさえいれば2段
目の完全焼鈍時にCube方位粒の比率が通常材より多
くなることから1段目の焼鈍で再結晶が完了していなく
ともさしつかえは無い。このようにして耳を低くする成
分であるCube方位の再結晶粒もしくはその芽を得た
後に、さらに高温での2段目の焼鈍過程を行う。2段目
の焼鈍に移行する際には、そのまま常温近くまで冷却す
ることなく引続き2段目の焼鈍を行っもよいし、一旦冷
却した後に改めて加熱し2段目の焼鈍を行ってもよい。
一旦冷却する場合は冷却過程での析出を抑え、また冷却
後の析出の進行を遅くさせるために150℃以下まで1
℃/s以上の冷却速度で冷却することが必要である。
【0024】2段目の焼鈍:2段目の焼鈍は、400〜
600℃の範囲内の到達温度T2まで加熱し、かつ40
0℃以上の温度(600℃以下)に曝される時間を10
分以内とし、その後1℃/s以上の冷却速度で冷却す
る。到達温度T2が400℃以上でないとCu、Mg、
Si等の金属元素の固溶が充分に進まず、したがってそ
の後の塗装焼付け処理時の時効硬化が望めなくなり、強
度向上を図れなくなる。また上限は600℃とする。高
温である方がより溶体化効果による強度向上が望める
が、600℃より高温になると共晶融解が生じて製造上
の不都合をきたすとともに製品の外観品質を損なうおそ
れがある。昇温時の平均昇温速度は1℃/s以上が好ま
しく、これより遅いと昇温過程で合金元素の析出が進み
析出物が粗大化してしまい、高温での加熱保持によって
も析出物を固溶させるのに時間がかかる。400〜60
0℃の範囲の温度に曝される時間は所定の温度T2に到
達後直ちに冷却するか、もしくは10分以内の保持とな
るようにする。10分より長時間となると、表面の酸化
皮膜の形成により焼鈍終了後の冷間圧延性を損なったり
製品の外観品質を損なったりする。さらに到達温度から
の冷却は、1℃/s以上の冷却速度とする。これより遅
いと折角固溶した合金元素が析出してしまい、その後の
塗装焼付け処理時の溶体化効果による強度向上の程度が
少なくなる。
【0025】以上のように本発明に係る焼鈍は、300
〜400℃の到達温度T1で焼鈍開始温度から(T1−
15℃)の間の平均昇温速度を3℃/s以上とし(T1
−15℃)〜T1の温度範囲に5秒以上保持することと
した1段目の焼鈍を施して耳率の低減に有効なCube
方位の再結晶粒を生成・優先成長させ、その後400〜
600℃の到達温度で保持なしまたは400℃を超える
温度範囲にある時間を10分以内とし1℃/s以上で急
冷する2段目焼鈍を適用することによって溶体化効果を
与えその後の塗装焼付処理において時効硬化による強度
向上を得ることができるのである。このような加熱パタ
ーンの焼鈍は、連続焼鈍炉を2回使用することにより行
ってもよいが、連続焼鈍炉の加熱速度(加熱温度)をゾ
ーン(加熱帯)ごとに個別に制御することによっても達
成することができる。
【0026】上記焼鈍を施すことにより、Cube方位
が優先成長することから、焼鈍終了後の最大再結晶粒の
大きさは25〜60μmとなる。その後の冷間圧延等に
より加工を受けると結晶粒は圧延方向に延びるが幅方向
の大きさはほとんど変化しない。従って本発明では冷間
圧延後のミクロ組織で規定するものとする。冷間圧延後
における表面ミクロ組織において、圧延方向に対して直
角方向の最大結晶粒の短径が25μm以上ではカッピン
グ時のリューダースマークの発生が抑制され、DI成形
時の缶切れを少なくするが、60μmを超えると成形性
が低下する。そこで、冷間圧延後における表面ミクロ組
織において、圧延方向に対して直角方向の最大結晶粒の
短径が25〜60μmであることとする。
【0027】冷間圧延:上述のようにして2段階の中間
焼鈍を行なった後、圧延率が40%以上の冷間圧延を行
う。圧延率が40%未満では必要強度を確保することが
できない。
【0028】最終焼鈍:なお、このように最終冷間圧延
を行なった後は、そのままDI成形等の成形に供しても
良いが、必要に応じて100〜200℃程度の最終焼鈍
を施すことにより、深絞り性の一層の改善を図ることが
できる。
【0029】
【実施例】表1に示す合金記号A、B(本発明の成分範
囲に入るもの)および合金記号C(従来材の5052合
金に相当し、本発明の成分範囲に対してMg、Mn量が
外れるもの)について、常法に従ってDC鋳造し、その
後表2に示すような条件で処理した。すなわち鋳塊に対
し先ず表2中に示す条件で均質化処理を施し、熱間圧延
を行い、さらに冷間圧延を行い表2に示す板厚とし、一
部のものは連続して昇温させる1段階の中間焼鈍とし他
のものは表2に示す条件で1段目の焼鈍「中間焼鈍1」
と2段目の焼鈍「中間焼鈍2」の2段階の中間焼鈍を施
した。なお、表2において中間焼鈍1の冷却の欄の「徐
冷」は35℃/h(約0.01℃/s)、「急冷」は2
5℃/sであり、加熱の欄は焼鈍開始温度〜(T1(到
達温度)−15℃)までの平均昇温温度、到達の欄は
(T1−15℃)〜T1の温度範囲での保持時間を示す
が、No1,4および10では保持は行わないので代わ
りに300〜400℃の温度範囲の通過時間を「3−4
00」として示してある。また、中間焼鈍2の加熱の欄
は中間焼鈍1から中間焼鈍2への加熱の昇温速度を示し
たものであり、到達の欄で保持時間が「0」となってい
るものは温度到達後直ちに(保持無しで)冷却に移った
ことを示す。
【0030】各々について説明すると、No1は合金A
を用いて従来通りの1段階の焼鈍を施した従来例であ
る。No2は合金Aを用いて1段目の焼鈍後に一旦冷却
しその後第2段目の焼鈍を行った発明例であり、No3
は合金Aを用いて1段目の焼鈍後に冷却せずに連続して
第2段目の焼鈍を行った発明例である。No4は合金B
を用いて通常の1段階の焼鈍を施した比較例であり、N
o5は合金Bを用いNo3より低温で1段目の焼鈍を行
い最終焼鈍も行った発明例であり、No6はNo5に対
して1段目の到達温度が本発明の範囲より低い比較例で
あり、No7はNo5に対して1段目の到達温度が本発
明の範囲より高い比較例であり、No8は2段目の焼鈍
がバッチ焼鈍であり加熱・冷却速度ならびに保持時間が
本発明から外れる比較例であり、No9は1段目の焼鈍
がバッチ焼鈍であり昇温速度が本発明から外れる比較例
である。No10は合金成分が本発明から外れる合金C
を用いて従来の1段階の中間焼鈍を行った比較例であ
る。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】以上のようにして得られた試料について2
00℃×20分の加熱による塗装焼付(ベーキング)相
当の熱処理を行なった。元板(すなわち塗装焼付相当処
理を行なわない状態のもの)および上記熱処理を施した
ものについて、引張強さ(TS:N/mm2 )、耐力
(YS:N/mm2 )、伸び(EL:%)を測定した。
また元板について実際に38mmφ、肩R=2.5mm
のポンチを用いて66mmφのサークルをクリアランス
30%で深絞りを行って耳率(%)を測定した。また実
際のDI成形を行って、連続成形性およびDI缶の外観
を観察し、ゴーリング(縦疵)による缶切れが発生した
場合に連続成形の欄を×印、カップリューダースマーク
が発生してDI成形時に1万缶に1缶以上缶切れを起こ
したものを△印、1万缶以上連続成形しても缶切れを起
こさなかったものを○印とした。また外観の観察で缶側
壁の圧延目に沿ったフローライン状の外観欠陥および黒
筋焼付き等の外観欠陥のない場合に○印を、外観欠陥が
存在する場合に×印をDI缶外観の欄に付した。その結
果を表3に示す。
【0034】
【表3】
【0035】表3に示されるように、本発明例のNo
2,3,5の場合は、いずれもDI成形時における深絞
り耳率は2〜3%と低く良好な値を示している。また、
塗装焼付処理時の強度の低下は少なく耐力も278N/
mm2 以上と強く、さらにDI成形性が良好で外観不良
も発生していない。1段目の焼鈍後に一旦冷却したもの
(No2)も、冷却せずに連続して2段目の焼鈍を行っ
たもの(No3)もいずれも同等の性能を示している。
またMg量を少なくしZnのかわりにCrを添加した合
金Bを用いたもの(No5)でも、到達温度を適宜選定
することによりNo2,3に比べて耳率はやや高いもの
の伸びが5%と良好であり、他の性能もほぼ同等の性能
を得ることができる。これに対しNo1は、合金Aを用
いて従来通りの1段階の焼鈍を施した従来例であり、塗
装焼付処理時の強度ならびにDI成形性は良いものの耳
率が4%と大きくなってしまっている。またNo4は、
No5と同じ合金Bを用いて従来通りの1段階の焼鈍を
施したものであり、この場合も耳率が高くなってしまっ
ている。さらにNo6は、No5に対して1段目の焼鈍
の到達温度が本発明の範囲より低い比較例であり、耳率
が5%とかなり悪くなっている。No7は、No6とは
逆に1段目の焼鈍の到達温度が高い比較例であり、この
場合も耳率が悪くなっている。No8は、2段目の焼鈍
がバッチ焼鈍である比較例であり、この場合は中間焼鈍
の2段目の焼鈍において高温に曝される時間が長いた
め、DI缶外観に劣り、また中間焼鈍後の冷却が徐冷と
なって溶体化効果が充分に得られず、元板強度を高くせ
ざるを得ず、それでも塗装焼付け後の強度は耐力が27
0N/mm2 と低い値になっている。No9は、1段目
の焼鈍がバッチ焼鈍であり2段目は発明例と同じ条件の
焼鈍を行った比較例であり、元板の強度は低めで成形性
は良好であるが、耳率が6%と極めて悪いものとなって
いる。No10は、Mn量が少ないかわりにMg量の多
い合金Cを用いたものであり、元板強度が高すぎ、また
Fe,Mn系晶出物が少なかったためと思われるがゴー
リングによる缶切れが発生してDI缶の連続成形ができ
なかった。そして、耳率も4%と悪く、塗装焼付け後の
強度も耐力で270N/mm2 とDI缶胴材に適さない
性能となっている。
【0036】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明のDI缶用
アルミニウム合金板の製造方法によれば、合金成分組成
を適切に選定するとともに、中間焼鈍条件を適切に設定
することによって、中間焼鈍工程において、深絞り耳率
の低減に有効な方位の再結晶粒を優先的に成長させると
ともに、塗装焼付処理時における時効硬化に寄与する元
素を固溶させる溶体化効果をもたらすことができる。そ
の結果DI成形時における深絞り耳を低減して、材料歩
留りを向上させることができると同時に、塗装焼付処理
時における時効硬化を利用して塗装焼付処理前後の強度
低下を少なくすることができ、そのため必要な缶胴強度
を得るためにDI成形前の元板の強度をさほど高めてお
く必要がないことからDI成形性も良好となり、さらに
は冷間圧延率を高めても深絞り耳率を低く抑えることが
できるため、最終冷間圧延率を高めることによりDI成
形におけるしごき加工での圧下率の増分を相対的に少な
くし、これによってDI成形後の缶胴フランジ部のネッ
キング加工、フランジング加工、シーミング加工におけ
る成形性も良好とすることができる。以上のように本発
明の方法によれば、DI缶として必要な高強度を有する
とともに、DI成形時における深絞り耳率が低く、かつ
DI成形時における成形性と、その後のフランジング加
工、ネッキング加工、シーミング加工における成形性と
の両者を良好にすることができるなど、顕著な効果を得
ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22F 1/00 686 C22F 1/00 686Z 691 691A 691B 693 693A 693B

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mg:0.5〜2.0%(重量%、以下
    同じ)、Mn:0.5〜1.8%、Fe:0.1〜0.
    7%を含有し、かつTi:0.005〜0.2%を単独
    でもしくはB:0.0001〜0.05%と組合せて含
    有し、さらにSi:0.05〜0.5%、Cu:0.0
    5〜0.5%、Cr:0.05〜0.3%、Zn:0.
    1〜0.5%のうちの1種または2種以上を含有し、残
    部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合
    金を鋳造した後、その鋳塊を常法に従って均熱、熱間圧
    延および必要に応じて冷間圧延を施した後、中間焼鈍と
    して、到達温度T1が300℃以上400℃以下の範囲
    内で、焼鈍開始温度から(T1−15℃)の間の平均昇
    温速度が3℃/s以上で、しかも(T1−15℃)から
    T1までの温度範囲に5秒以上保持する1段目の焼鈍を
    施し、該1段目の焼鈍に引続いてもしくは一旦1℃/s
    以上の冷却速度で150℃以下に冷却した後、到達温度
    T2が400℃以上600℃以下の範囲内で、T2の温
    度に到達後直ちにまたは400℃を超える範囲の温度に
    曝される時間が10分以内となるように保持した後、1
    ℃/s以上の冷却速度で冷却する2段目の焼鈍を行な
    い、その後圧延率40%以上の冷間圧延を施し、かつ該
    冷間圧延後における表面ミクロ組織が、圧延方向に対し
    て直角方向の最大結晶粒の短径が25〜60μmである
    ことを特徴とする強度、成形性に優れ耳率の低い成形用
    アルミニウム合金板の製造方法。
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