JPH08121369A - ロータリ圧縮機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明の目的は、圧縮機構部の摩耗を低減し、
信頼性を向上させたロータリ圧縮機を提供することにあ
る。 【構成】密閉容器内の上部に電動機部、下部に圧縮機構
部を有し、電動部は回転子及び固定子で構成され、電動
機部とクランク軸で連結される圧縮機構部は、上軸受、
シリンダ、下軸受が重ね合わされた構成で、シリンダ内
では、クランク軸に嵌入され偏心回動するローラと、ロ
ーラに追従して往復動するベーンが具備され、シリンダ
内に吸い込んだ冷媒ガスを圧縮するロータリ圧縮機にお
いて、クランク軸の偏心部にローラ内周を押し付ける部
材を設け、また同時に下軸受に偏心部を設けることによ
りクランク軸回転角度に応じ部材をローラ内径に離着自
在にしたロータリ圧縮機。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、主として空調機、冷蔵
庫等の冷凍機に使用されるロータリ圧縮機に係り、信頼
性を向上させるのに好適なロータリ圧縮機に関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】一般的なロータリ圧縮機は、例えば特開
昭６２−６７２９２号公報記載の如き構造になってい
る。そのロータリ圧縮機の構成と作用を、図６および図
７を参照して説明する。

【０００３】図６は、従来のロータリ圧縮機の縦断面
図、図７は、図６のＢ−Ｂ矢視断面図である。

【０００４】図６，７に示すロータリ圧縮機は、冷凍機
油１０を貯溜した密閉容器１内の上部に、回転子８およ
び固定子９からなる電動機を収納し、密閉容器１内の下
部に前記電動機にクランク軸４を介して連結された圧縮
機構部を収納している。この圧縮機構部は、シリンダ２
と該シリンダ２の両端を閉塞する上軸受６および下軸受
７とで形成された圧縮室１１と、この圧縮室１１に前記
上軸受６および下軸受７に支持されたクランク軸４によ
って偏心回転するローラ３と、このローラ３の外周に当
接し前記ローラ３の偏心回転に追従して往復運動し前記
圧縮室１１を低圧部と高圧部とに仕切るベーン５とをそ
なえたものである。

【０００５】冷凍機油１０は、通常、シリンダ２が前記
冷凍機油１０内に充分に浸かる量（シリンダ２の上面高
さ）まで封入されている。

【０００６】ここで、ロータリ圧縮機における冷凍機油
の動きを図７を参照して説明する。図７中の太い矢印は
クランク軸４の回転方向を示し、実線の矢印は冷凍機油
１０の動きを示している。

【０００７】クランク軸４の回転に伴う遠心力によって
クランク軸４内を上昇した冷凍機油１０は、クランク軸
４の横孔から吐出され、さらに圧力差によってローラ３
の上下方向の隙間を通過し、圧縮室１１および吸込室１
２に至る。圧縮室１１側に漏れた冷凍機油１０は、シリ
ンダ２とローラ３の半径方向の隙間やベーン５上下方向
の隙間を通過して吸込室１２側に至る。一方、ベーン５
の背面の空間５ａは、冷凍機油１０によって満たされて
いるので、ベーン５側面とシリンダ２のベーンスロット
２ａとの隙間を圧力差によって冷凍機油１０が通過す
る。

【０００８】ロータリ圧縮機では、前記のように各隙間
を冷凍機油が通過することにより、油膜が形成され、冷
媒の吹き抜けが防止されて効率が高められていると共
に、油膜によって摺動部における金属接触が防止され、
信頼性が高められている。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】従来の技術において、
ベーン先端部とローラ外周の当接部に油膜を形成する手
段は特に配慮されておらず、封入した冷凍機油、もしく
は循環する冷媒に混入している冷凍機油を、差圧を利用
して各部の隙間から給油し油膜を形成していた。しか
し、従来のロータリ圧縮機では、ベーン先端部とローラ
外周の当接部に確実に油膜を形成して摩耗を抑えること
は困難であった。

【００１０】また図４にローラとベーンの当接部におけ
る摺動形態の例を示す。図４中の太い帯は表面に付着し
た油膜を示す。また太い矢印はクランク軸回転方向を示
し、細い実線矢印はベーンに対するローラの摺動方向を
示す。Ａの形態のようにローラがベーンに対しクランク
軸回転方向と同方向に摺動している場合には、当接部に
油を保持することができ、摩耗の進行を抑えることがで
きる。しかしＡからＢの形態に移行した際、ローラがベ
ーンに対しクランク軸回転方向と逆方向に摺動しローラ
外周の油がベーンに拭いとられた面が直接ベーンに接触
する形となり摩耗が進行すると考えられる。

【００１１】また図５にベーンに対するローラの相対摺
動速度を示す。クランク軸回転角度が略９０°から略２
７０°の範囲でローラはベーンに対し逆方向に摺動して
いる。前記回転角度の時に当接部近傍から油を排除する
形となり易い。

【００１２】さらに、現在空調器や冷凍機用の冷媒とし
て用いられているＣＦＣ，ＨＣＦＣに対して、塩素を含
まない代替冷媒、例えばＨＦＣ１３４ａ，ＨＦＣ３２，
ＨＦＣ１２５等の混合冷媒を用いた場合、圧縮機内で摺
動部を潤滑する冷凍機油の油膜が切れた場合に、従来の
塩素を含む冷媒の場合には塩素の局圧効果による潤滑が
期待できたが、塩素を含まないため局圧効果がなく著し
く潤滑性が低下するため、充分な冷凍機油をシリンダ
内、特にローラ、ベーン当接部に供給する必要がある
が、前記の給油方法ではシリンダ内の冷凍機油量が少な
く、特に油膜のできにくいローラ、ベーン間で摩耗を生
じやすいという問題が有った。

【００１３】本発明は、上記従来技術の問題点を解決す
るためになされたもので、ローラとベーンの当接部の摺
動形態における油排除の形態を無くし、ローラ、ベーン
当接部に常に油膜を形成し信頼性を向上することにあ
る。

【００１４】さらに、本発明の目的は、塩素を含まない
冷媒を用いた場合でも高い信頼性の圧縮機及びそれを搭
載する空調機，冷凍機を提供することにある。

【００１５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係るロータリ圧縮機の構成は、冷凍機油を
密閉容器下部に貯溜し、その密閉容器上部に電動機部を
収納し、この電動機部にクランク軸で連結された圧縮機
構部を前記電動機部の下部に収納し、前記圧縮機構部
は、シリンダと該シリンダの両端面を閉塞する上軸受お
よび下軸受都で形成された圧縮室と、この圧縮室内に前
記上軸受および下軸受に支持されたクランク軸の偏心部
に遊合され偏心回転するローラと、このローラの外周に
当接し前記ローラの偏心回転に追従して往復運動し前記
圧縮室を低圧部と高圧部とに仕切るベーンとからなり、
前記クランク軸内に、一端が冷凍機油内に開口した給油
経路を形成してなるロータリ圧縮機において、前記クラ
ンク軸の偏心部にローラ内周に押し付けクランク軸に対
するローラの滑りを制御する部材を設け、常にローラが
ベーンに対し一定方向に摺動可能とすることにより、油
が排除されると考えられる摺動形態を無くしローラ外周
に付着した油が常にローラとベーンの当接部に供給され
るようにしたものである。

【００１６】

【作用】上記技術手段による働きを以下に述べる。

【００１７】本発明では、クランク軸の偏心部にローラ
内周に押し付ける部材を設け、また下軸受に偏心部を設
けることにより、この部材をローラとベーンの当接部か
ら油が排除されると考えられる回転角度でのみローラ内
周に押し付けローラ内周とクランク軸偏心部間の摩擦力
を増加させローラをベーンに対しクランク軸回転方向と
同方向に摺動させることにより油が排除される摺動形態
を無くしローラ外周に付着した冷媒に混入した油や各部
の隙間から差圧により供給された油が常にローラとベー
ンの当接部に供給されるようにし摩耗を低減することが
できる。

【００１８】

【実施例】本発明の実施例を図１、図２、図３を用いて
説明する。

【００１９】図１は本発明の一実施例に係るロータリ圧
縮機の縦断面図、図２は図１のロータリ圧縮機の圧縮機
構部の要部拡大図、図３は図１のＡ−Ａ矢視断面図であ
る。これらの図中、従来技術について説明した図６、図
７と同一符号のものは、同等の働きをする構成部品であ
る。

【００２０】図１に示すロータリ圧縮機は、冷凍機油１
０を貯溜した密閉容器１内の上部に電動機を収納し、密
閉容器１内の下部に、前記電動機部にクランク軸４を介
して連結された圧縮機構部を収納している。

【００２１】電動機部は、密閉容器１に焼嵌等で固定さ
れた固定子９と、クランク軸４を嵌着した回転子８とで
構成されている。

【００２２】圧縮機構部は、シリンダ２と該シリンダ２
の両端面を閉塞する上軸受６および下軸受７とで圧縮室
１１を構成している。クランク軸４は偏心部４ａを有し
該偏心部４ａに遊合されたローラ３がシリンダ２内を偏
心回転するようになっている。

【００２３】また、シリンダ２内には、図３の如く圧縮
室１１と吸込室１２に仕切るベーン５が設けられてお
り、ローラ３の偏心回転に追従してベーン５が往復運動
し、冷媒ガスを圧縮する構成になっている。圧縮された
冷媒ガスは、下軸受７に設置された吐出弁（図示せず）
から下方に吐出される。なお、下軸受７はサイレンサカ
バー１３で覆われており、吐出弁から出た冷媒ガスは、
下軸受７、シリンダ２、上軸受６に設けられた貫通穴
（図示せず）を通過し、上軸受６の上面から吐出され
る。

【００２４】本実施例の特徴点であるローラの回転方向
制御について説明する。

【００２５】図１、図２、図３、図４の各図において、
１６はクランク軸偏心部４ａに設けた前記ローラ３内周
を押し付けるブッシュ、４ｃはこのブッシュ１６が収ま
り摺動する溝、７ａは下軸受に設けたカムである。また
図３の二点鎖線は前記カム７ａの輪郭である。前記ブッ
シュ１６は、ローラ３内周を押し摩擦力を上げるパッド
１６ａ、前記パッド１６ａを支えるガイド１６ｂ、パッ
ド１６ａとガイド１６ｂの間に入りパッドを押し付ける
押しバネ１６ｃおよび下軸受のカム７ａにブッシュ１６
を引き付ける引きバネ１６ｄで構成されている。図３に
おいてブッシュ１６がクランク軸偏心部４ａに設けた溝
４ｃに上端部を嵌入しクランク軸４と共に回転する。こ
こでブッシュ１６を設置する位置は運転中常に油で満た
されているためブッシュ１６と摺動するクランク軸４、
ローラ３内周、下軸受に設けたカム７ａの摩耗は問題無
い。また同時に下軸受に設けたカム７ａにブッシュ１６
下部が摺動していることによりクランク軸回転角度がベ
ーン配置位置を０°としてクランク軸回転方向に略９０
°から略２７０°のときブッシュ１６がローラ３内周に
押し付けられローラ３がベーン５に対しクランク軸回転
方向と同方向に摺動し、油が排除されると考えられる摺
動形態を無くし、ローラ３外周に付着した油が常にロー
ラ３とベーン５の当接部に供給され、摩耗を低減させる
ことができる。

【００２６】特に、塩素を含まない代替冷媒、例えばＨ
ＦＣ３２，ＨＦＣ１３４ａを３０：７０の比率で混合し
た場合や、ＨＦＣ３２，ＨＦＣ１２５，ＨＦＣ１３４ａ
を３０：１０：６０，２３：２５：５２の比率で混合し
た冷媒を使用した場合に、ローラ３外周に付着した油が
常にローラ３とベーン５の当接部に供給されるように
し、摩耗を低減させることができ、圧縮機の信頼性を向
上させることができる。

【００２７】

【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
れば、ベーン先端とローラ外周との当接部に安定した給
油を行なうことができ、塩素を含まない冷媒を用いた場
合でも、信頼性の高いロータリ圧縮機及び、それを搭載
する空調機や冷凍機を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例に係るロータリ圧縮機の縦断
面図である。

【図２】図１のロータリ圧縮機の圧縮機下部の要部拡大
図である。

【図３】図１のＡ−Ａ矢視断面図である。

【図４】ローラ、ベーンの摺動形態の例を示す図であ
る。

【図５】ローラ、ベーン間の相対摺動速度の例を示す図
である。

【図６】従来の密閉型回転式圧縮機の縦断面図である。

【図７】図６のＢ−Ｂ矢視断面図である。

【符号の説明】

１…密閉容器、 ２…シリンダ、 ２ａ…ベーンスロット、 ３…ローラ、 ４…クランク軸、 ４ａ…クランク軸偏心部、 ４ｂ…給油通路、 ５…ベーン、 ６…上軸受、 ７…下軸受、 ７ａ…カム、 ８…回転子、 ９…固定子、 １０…冷凍機油、 １１…圧縮室、 １２…吸込室、 １３…サイレンサカバー、 １４…給油ピース、 １５…給油用ひねり板、 １６…ブッシュ、 １６ａ…パッド、 １６ｂ…ガイド、 １６ｃ…押しバネ、 １６ｄ…引きバネ。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】密閉容器内の上部に電動機部、下部に圧縮
   機構部を有し、前記電動部は回転子及び固定子で構成さ
   れ、電動機部とクランク軸で連結される圧縮機構部は、
   上軸受、シリンダ、下軸受が重ね合わされた構成で、前
   記シリンダ内では、クランク軸に嵌入され偏心回動する
   ローラと、該ローラに追従して往復動するベーンが具備
   され、シリンダ内に吸い込んだ冷媒ガスを圧縮するロー
   タリ圧縮機において、前記クランク軸の偏心部にローラ
   内周を押し付ける部材を設け、また同時に下軸受に偏心
   部を設けることによりクランク軸回転角度に応じ前記部
   材をローラ内径に離着自在にしたことを特徴とするロー
   タリ圧縮機。
2. 【請求項２】ベーンに対しローラがクランク軸回転方向
   と逆方向に摺動する角度範囲でのみローラの滑りを制御
   することを特徴とする請求項１記載のロータリ圧縮機。
3. 【請求項３】塩素を含まない冷媒を用いて運転すること
   を特徴とする請求項１又は２記載のロータリ圧縮機。