JPH08117561A - 逆浸透膜分離装置及び逆浸透分離方法 - Google Patents

逆浸透膜分離装置及び逆浸透分離方法

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JPH08117561A
JPH08117561A JP25556594A JP25556594A JPH08117561A JP H08117561 A JPH08117561 A JP H08117561A JP 25556594 A JP25556594 A JP 25556594A JP 25556594 A JP25556594 A JP 25556594A JP H08117561 A JPH08117561 A JP H08117561A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高濃度溶液から高い収率、少ないエネルギ
ー、より安価に高効率に低濃度溶液をより安定に得るこ
とが可能な装置および分離方法を提供する。 【構成】 多数の逆浸透膜エレメントからなる逆浸透膜
法分離装置において、多数のモジュールを構成する逆浸
透膜エレメントは、膜透過流束と脱塩率の異なる複数の
逆浸透膜が組み込まれている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高濃度溶液を逆浸透分
離するための新規な逆浸透膜分離装置及び高濃度溶液の
逆浸透分離方法に関するものである。本発明によって、
逆浸透膜エレメントの汚れトラブルが激減し、安定運転
性が一段と向上する。本発明の装置および方法は特にか
ん水の脱塩、海水の淡水化、また排水の処理、有用物の
回収に用いることができる。
【0002】
【従来の技術】混合物の分離に関して、溶媒(例えば
水)に溶解した物質(例えば塩類)を除くための技術に
は様々なものがあるが、近年、省エネルギーおよび省資
源のためのプロセスとして膜分離法が利用されてきてい
る。膜分離法のなかには、精密濾過(MF;Microfiltr
ation )法、限外濾過(UF;Ultra filtration)法、
逆浸透(RO;Reverse Osmosis )法がある。さらに近
年になって逆浸透と限外濾過の中間に位置する膜分離
(ルースROあるいはNF;Nanofiltration)という概
念の膜分離法も現われ使用されるようになってきた。例
えば逆浸透法は海水または低濃度の塩水(かん水)を脱
塩して工業用、農業用または家庭用の水を提供すること
に利用されている。逆浸透法によれば、塩分を含んだ水
を浸透圧以上の圧力をもって逆浸透膜を透過させること
で、脱塩された水を製造することができる。この技術は
例えば海水、かん水、有害物を含んだ水から飲料水を得
ることも可能であるし、また、工業用超純水の製造、排
水処理、有価物の回収などにも用いられてきた。
【0003】特に逆浸透膜による海水淡水化は、蒸発の
ような相変化がないという特徴を有しており、エネルギ
ー的に有利である上に運転管理が容易であり、広く普及
を始めている。
【0004】逆浸透膜で溶液を分離する場合は、溶液の
溶質濃度によって定まる溶液自身の持つ化学ポテンシャ
ル(これを浸透圧で表わすことができる)以上の圧力で
溶液を逆浸透膜面に供給する必要があり、たとえば海水
を逆浸透膜モジュールで分離する場合は、最低30at
m程度以上、実用性を考慮すると少なくとも50atm
程度以上の圧力が必要となり、供給液は加圧ポンプでこ
れ以上の圧力に加圧されないと充分な逆浸透分離性能は
発現されない。
【0005】逆浸透膜による海水淡水化の場合を例にと
ると、通常の海水淡水化技術では海水から真水を回収す
る割合(収率)は高々40%であり、海水供給量に対し
て40%相当量の真水が膜を透過して得られる結果、逆
浸透膜モジュールの中で海水濃度が3.5%から6%程
度にまで濃縮されることになる。このように海水から収
率40%の真水を得るという逆浸透分離操作を行うため
には、濃縮水の濃度に対応する浸透圧(海水濃縮水濃度
6%に対しては約45atm)以上の圧力が必要であ
る。真水の水質がいわゆる飲料水レベルに対応でき、か
つ充分な水量を得るためには、実際には、濃縮水濃度に
対応する浸透圧よりも約20atm(この圧力を有効圧
力と呼ぶ)程度高めの圧力を逆浸透膜に加えることが必
要であり、海水淡水化用逆浸透膜モジュールは60から
65atm程度の圧力をかけて収率40%という条件で
運転されるのがふつうであった。
【0006】海水供給量に対する真水の収率は、直接コ
ストに寄与するものであり、収率は高いほど好ましい
が、実際に収率を上げることについては運転操作面で限
度があった。すなわち、収率を上げると濃縮水中の海水
成分の濃度が高くなり、ある収率以上では炭酸カルシウ
ムや硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウムなどの塩、い
わゆるスケール成分濃度が溶解度以上になって逆浸透膜
の膜面に析出して膜の目つまりを生じさせる問題があ
る。
【0007】現在の(最高収率として広く認識されてい
る)収率40%程度においては、これらのスケール成分
の析出の心配は小さく特に対応は不要であるが、それ以
上の収率で逆浸透膜の運転操作を行おうとすると、これ
らのスケール成分の析出防止のために、塩の溶解性を高
めるスケール防止剤を添加することが必要となる。しか
しながら、スケール防止剤を添加したとしても上記のス
ケール成分の析出を抑制できるのは濃縮水濃度で10か
ら11%程度である。このため、海水濃度3.5%の海
水を海水淡水化する場合では、物質収支的に収率は65
から68%程度が限度であり、また原海水の変動異種成
分の影響などを考慮すると、逆浸透膜海水淡水化プラン
トを安定に運転できうる可能性のある実際の収率限度は
60%程度であると認識される。
【0008】実用的に海水淡水化を行う場合は、前述の
ように、濃縮水濃度によって決まる濃縮水浸透圧よりも
20atm程度高い圧力を逆浸透膜モジュールに付与す
る必要がある。海水濃度3.5%の場合の、収率60%
に相当する濃縮水濃度は8.8%であり、この浸透圧は
約70atmとなる。その結果、逆浸透膜には90at
m程度の圧力を付与する必要がある。
【0009】逆浸透膜エレメントは、通常複数本の逆浸
透膜のエレメントを1本の圧力容器に直列に装填した状
態(これをモジュールと称す)で使用され、実際のプラ
ントではこのモジュールを多数本並列に設置して使用さ
れる。海水淡水化の収率というのは、プラント全体に供
給される全供給海水に対する全透過水量の割合であり、
通常の条件では、モジュールが並列に設置されているの
で、モジュール1本あたりの供給量とモジュール1本か
ら得られる透過水量の割合(モジュール内の各エレメン
トからの透過水量の合計)と一致する。ここで、モジュ
ール内部の各エレメントから得られる透過水は、例えば
1モジュールが逆浸透膜エレメント6本から構成され、
1モジュールに198m/日の海水を供給し、合計7
8m/日の真水が得られる場合(収率40%)は、1
本目のエレメントで18m/日、2本目のエレメント
で16m/日、3本目から6本目までそれぞれ14、
12、10、8m/日となり、各エレメントからの透
過水収率は小さいが全エレメントからの透過水の総量と
しては、供給水に対して40%と大きな収率が達成され
ることになる。
【0010】一方、逆浸透膜分離装置の運転条件設定に
ついて考慮する必要のある事項としては、ファウリング
(膜面汚れ)の防止と濃度分極の防止がある。ファウリ
ングの防止は、具体的には1本の逆浸透膜エレメントか
ら得られる透過水量をある値(耐ファウリング許容フラ
ックス)以上にしないということで、この値を越えて透
過水を採取すると、そのエレメントの膜面汚れが加速さ
れることになり好ましくない。この耐ファウリング許容
フラックスは膜素材やエレメント構造によっても異なる
が、通常、高性能の逆浸透膜の場合では、0.75m
/m・日 程度であり、膜面積26.5mの逆浸透
膜エレメント(以下、全て逆浸透膜エレメントの膜面積
は26.4mを適用して話を進める)では20m
日に相当する。すなわち、ファウリング防止のために、
1エレメントの透過水量は20m/日以下に保つこと
が必要である。
【0011】ここでいう濃度分極の防止というのは、主
にモジュール内部で上流側エレメントから下流側エレメ
ントに向かうに従って供給水の量が低下しており、最終
のエレメントに流れる供給水の膜面流速が低下すること
による濃度分極の防止である。濃度分極が生じると膜性
能を十分に発揮できないばかりでなく、ファウリングの
発生を加速し、逆浸透膜エレメントの寿命低下を引き起
こす。このため、最終エレメント(膜面積26.5m
の場合)の濃縮水流量は50m/日程度以上に保って
置く必要がある。
【0012】逆浸透膜海水淡水化装置を従来の最高収率
レベルの約40%で運転する場合は、単にモジュールを
複数本並列に配列させて圧力65atm(温度20℃の
場合)で運転し、透過水の全量に対して供給海水量を
2.5倍に設定することで、上記のファウリングおよび
濃度分極の防止条件は十分に満足されており、安定な運
転が行われてきた。また、特にモジュール内部の各エレ
メントの透過水のバランスや濃縮水のスケール成分析出
などを考慮することなどは必要なかった。
【0013】また、逆浸透膜海水淡水化装置の淡水化コ
ストの更なるコスト低減をめざしていく場合は、収率を
高めることが非常に重要であり、前述のように、海水濃
度3.5%の海水淡水化収率としては60%程度まで高
めることが望ましく、適量のスケール防止剤の添加を前
提として、運転圧力としては、濃縮水の浸透圧よりも約
20atm高い90atmの圧力で運転することが必要
となる。
【0014】一方、スケール防止剤は水処理施設や蒸発
法の淡水化装置などを始め逆浸透膜装置においても使用
されているがその目的は主にシリカ、金属塩類などのス
ケール物質の装置内での析出を抑制することであり、特
にシリカスケール成分の多い水を処理する際に用いられ
てきた。
【0015】例えば、特開昭53−30482号公報に
はあらかじめ供給液をキレート樹脂に接触させてカルシ
ウムやマグネシウムなどを低減した後逆浸透処理を行な
うことで逆浸透膜の寿命が延びることが、特開昭52−
151670号公報、特開平4−4022号公報には燐
酸塩を添加して逆浸透装置内のスケール発生を防止する
方法が開示されている。また、特開昭63−21877
3号公報、特開平4−99199号公報、特公平5−1
4039号公報には電着塗料や銅メッキの廃水にキレー
ト剤を添加して逆浸透濃縮することで塗料や銅の回収を
行なう方法が開示されている。さらに、特開昭63−6
9586号公報および特開平2−293027号公報で
は塩素、あるいは酸化剤と燐酸塩を添加した溶液を供給
して逆浸透膜装置の殺菌と安定運転を行なう方法が開示
されている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、例えば
従来のように、同一の圧力容器内部に複数本の逆浸透膜
エレメントを直列に配列させたモジュールを、複数本並
列に配置した状態で90atmの圧力をかけて、淡水化
収率60%の運転を行おうとすると、モジュール内部の
上流側のエレメント(1本目または2本目のエレメン
ト)から得られる透過水量が許容値以上に大きくなりす
ぎて、これらのエレメントに濃度分極およびファウリン
グという現象が生じてエレメントの目つまりや寿命低下
が生じ、その結果、長期にわたる逆浸透膜装置の安定運
転を行うことが非常にむずかしくなる。淡水収率60%
の海水淡水化では、モジュールの入り口から出口にかけ
ては、物質収支的に海水濃度は3.5%から8.8%に
まで、浸透圧は26atmから70atmにまで変化し
ている。一方、操作圧力は入り口から出口にかけて、9
0atmでほぼ一定であるために、真水を透過させるの
に必要な有効圧力(操作圧力と浸透圧の差)は64at
mから20atmまでと大きく変化している。すなわ
ち、モジュール内部の1番目と最後段エレメントとの透
過水量の比率はこの有効圧比率の64:20と同程度と
なる。すなわち一本目のエレメントの透過水量が激増
し、耐ファウリング許容値である20m/日を軽く越
える透過水量が得られ、ファウリングが非常に生じ易く
なるという問題があった。しかし、収率60%という条
件では操作圧力90atmというのは必須であるために
操作圧力を低下させることができず、結局、収率60%
の運転を行うことは適当ではなく、もし、無理矢理運転
したとしても、ファウリングが加速されるという問題が
生じるために長期の安定運転は不可能であった。
【0017】また、上記内容は、簡単のためにスパイラ
ル型逆浸透膜エレメントを例にとり説明しているが、中
空糸膜型モジュールの場合は、モジュール内部でエレメ
ントに細分化が行われていないものの、内部では同様の
現象と同様の問題が生じている。
【0018】本発明は、高濃度溶液から高い収率、少な
いエネルギー、より安価に高効率に低濃度溶液をより安
定に得ることができる装置および分離方法を提供するこ
とにあり、特に、海水から50から60%という高い収
率で、少ないエネルギーで真水を効率的に、かつ安定的
に得るための装置および分離方法を提供することを目的
とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明は下記の構成を有
する。すなわち、「膜透過流束と膜脱塩率の異なる複数
の逆浸透膜エレメントを使用する逆浸透膜分離装置、お
よび膜透過流束と膜脱塩率の異なる複数の逆浸透膜エレ
メントを使用して逆浸透膜分離を行うことを特徴とする
逆浸透膜分離方法。」である。
【0020】本発明において、逆浸透膜分離装置とは供
給液の取水部分、逆浸透膜部分から少なくともなる。逆
浸透膜部分は造水、濃縮、分離などの目的で被処理液を
加圧下で逆浸透膜モジュールに供給し、透過液と濃縮液
に分離するための部分をいい、通常は逆浸透膜エレメン
トと耐圧容器からなる逆浸透膜モジュール、加圧ポンプ
などで構成される。該逆浸透膜部分に供給される被分離
液は前処理部分で通常、殺菌剤、凝集剤、さらに還元
剤、pH調整剤などの薬液添加と砂濾過、活性炭濾過、
保安フィルターなどによる前処理(濁質成分の除去)が
行なわれる。例えば、海水の脱塩の場合には、取水部分
で海水を取込んだ後、沈殿池で粒子などを分離し、また
ここで殺菌剤を添加して殺菌を行なう。さらに、塩化鉄
などの凝集剤を添加して砂濾過を行なう。ろ液は貯槽に
貯められ、硫酸などでpHを調整した後高圧ポンプに送
られる。この送液中に亜硫酸水素ナトリウムなどの還元
剤を添加して逆浸透膜素材を劣化させる原因となる殺菌
剤を消去し、保安フィルターを透過した後、高圧ポンプ
で昇圧されて逆浸透モジュールに供給されることもしば
しば行われる。ただし、これらの前処理は、用いる供給
液の種類、用途に応じて適宜採用される。
【0021】ここで逆浸透膜とは、被分離混合液中の一
部の成分、例えば溶媒を透過させ他の成分を透過させな
い半透性の膜である。その素材には酢酸セルロース系ポ
リマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニ
ルポリマーなどの高分子素材がよく使用されている。ま
たその膜構造は膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻
密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大
きな孔径の微細孔を有する非対称膜、非対称膜の緻密層
の上に別の素材で形成された非常に薄い活性層を有する
複合膜がある。膜形態には中空糸、平膜がある。しか
し、本発明の方法は、逆浸透膜の素材、膜構造や膜形態
によらず利用することができいづれも効果がある。代表
的な逆浸透膜としては、例えば酢酸セルロース系やポリ
アミド系の非対称膜およびポリアミド系、ポリ尿素系の
活性層を有する複合膜などがあげられる。これらのなか
でも、酢酸セルロース系の非対称膜、ポリアミド系の複
合膜に本発明の方法が有効であり、さらに芳香族系のポ
リアミド複合膜では効果が大きい。
【0022】かかる逆浸透膜の性能は、特に限定される
ものではないが、本発明のような技術分野においては、
最大の膜透過流束を有する逆浸透膜、最小の膜透過流束
を有する逆浸透膜、最大の脱塩率を有する逆浸透膜、乃
至は最小の脱塩率を有する逆浸透膜の少なくとも1つに
ついて、逆浸透膜の膜透過流束は好ましくは0.4〜
1.0m/m・日、より好ましくは0.45〜0.
8m/m・日である。また、逆浸透膜の脱塩率は好
ましくは99.0〜99.9%、より好ましくは99.
4〜99.9%である。
【0023】逆浸透膜エレメントとは上記逆浸透膜を実
際に使用するために形態化したものであり平膜は、スパ
イラル、チューブラー、プレート・アンド・フレームの
エレメントに組み込んで、また中空糸は束ねた上でエレ
メントに組み込んで使用することができるが、本発明は
これらの逆浸透膜エレメントの形態に左右されるもので
はない。
【0024】逆浸透膜モジュールユニットとは上述の逆
浸透膜エレメントを1〜数本圧力容器の中に収めたモジ
ュールを並列に配置したものでその組合せ、本数、配列
は目的に応じて任意に行なうことができる。
【0025】本発明においては該逆浸透膜モジュール内
に装填される逆浸透膜エレメントの膜性能レベル(すな
わち膜透過流束と膜脱塩率)および、モジュールユニッ
トごとに使用される逆浸透膜エレメントの膜性能レベル
(同)が異なるように調整されているに特徴がある。こ
こでは、本発明の技術を採用した逆浸透膜海水淡水化装
置を例にとり内容を説明する。例示する海水淡水化装置
は、濃度3.5%の通常海水から50%という高い収率
で真水を得る為の設備であり、逆浸透膜6本を1本の圧
力容器に内蔵してなる逆浸透膜モジュール10本を並列
に配置している。供給海水は高圧ポンプで80atmに
加圧されて逆浸透膜モジュールユニットに供給され、逆
浸透膜モジュールユニットによって淡水(透過水)と濃
縮水に分けられる。ここで特徴はモジュールを構成する
逆浸透膜エレメントの配列と性能の関係である。すなわ
ち、各モジュールは6本のエレメントを直列に配置させ
た形状であるが、上流側から1本目および2本目は、標
準条件において膜透過流束0.45m/m・日、膜
脱塩率99.55%という性能レベルの膜を組み込んだ
逆浸透膜エレメント(膜面積26.5m)を使用して
おり、3本目および4本目は標準条件において透過流束
0.50m/m・日、膜脱塩率99.55%の性能
レベルの膜を、また、5本目および6本目は膜透過流束
0.55m/m・日、膜脱塩率99.70%の性能
レベルの逆浸透膜を組み込んだエレメントがそれぞれ使
用されている。前述のように、上流側エレメントは操作
圧力と浸透圧との差(有効圧)が大きいために高圧運転
時には透過水が過度に流れてファウィリングを生じさせ
やすくなるが、本発明のように上流側エレメントとして
透過流束をあえて低位に保った逆浸透膜を使用したエレ
メントを使用することにより、上流側エレメントから過
度の透過水が得られることなく、ファウリングが生じに
くい条件で運転することが可能となる。
【0026】ここで膜透過流束というのは、逆浸透膜エ
レメントを構成する逆浸透膜を標準条件で運転した時の
逆浸透膜単位面積当たりの透過水量を(m/m
日)の単位で表したものであり、膜造水量、フラックス
または膜フラックスなどと呼ばれることもある。膜透過
流束を測定する標準条件は、原水海水塩濃度3.5%
(全溶解性物質量,Total Disolbed Solid:TDS)、
圧力56atm、温度25℃、である。標準条件が変わ
ると膜透過流束の値が変化するが、標準条件として採用
した条件が一定でありさえすれば、膜相互の膜透過流束
の大小について比較論議するための支障はない。
【0027】逆浸透膜の性能レベルについては、膜透過
流束、脱塩率ともに、実際の製造面を考慮すると、一定
の生産管理条件の範囲で性能分布が生じることがある
が、本発明でいう性能レベルというのは、膜性能の平均
値を念頭においているものであり、例えば、本発明で最
大値と最小値を比較するというような記載がある場合
は、最大値および最小値ともに該当するエレメント膜性
能の平均値を意味している。
【0028】ここで、装置全体のバランスを考慮する
と、最大の膜透過流束を有する逆浸透膜エレメントの膜
透過流束(最大透過流束)と最小の膜透過流束を有する
逆浸透膜エレメントの膜透過流束(最小透過流束)と
は、「最大膜透過流束/最小膜透過流束≧1.05」の
関係にあることが好ましく、また、最も好ましくは「最
大膜透過流束/最小膜透過流束≧1.1」が良いが、エ
レメント配列などを特定した各論については、下記のよ
うなことが言える。
【0029】まず第一に、特に逆浸透膜を直列に配列さ
せて使用する場合においては、例えば海水淡水化の高収
率運転や非常に良い透過水水質を得ようとする場合など
を例に挙げることができるが、このような場合は比較的
高い操作圧での運転を行うことになり、特に上流側のエ
レメントの透過水量が多くなる傾向(ファウリングが生
じやすくなる傾向)は否めない。また、このような場合
はいわゆる「透過水のとりすぎ」となる結果、最下流側
エレメントの濃縮水流速が小さくなりここにおいての濃
度分極を生じやすくなる。しかし、本発明のように上流
側エレメントとして膜透過流束の小さい膜を使用したエ
レメントを、下流側に膜透過流束の大きい膜を使用した
エレメントを設置した逆浸透膜装置であれば、このよう
な上流側エレメントの透過水量が多くなる現象や最下流
側エレメントの濃度分極現象などを防止することが可能
となり、運転の安定性向上という大きな効果がもたらさ
れる。このように、複数本の逆浸透膜エレメントが直列
に接続されているケースにおいて、最下流側のエレメン
トの膜透過流束よりも最上流側のエレメントの膜透過流
束が小さいことが良く、最適な数値範囲としては、「最
下流側エレメントの膜透過流束/最上流側エレメントの
膜透過流束≧1.1」であることが好ましい。
【0030】脱塩率については、脱塩率が大きいほど同
じ原水から良い水質の透過水を得ることができるが、膜
性能が同じ逆浸透膜エレメントを複数本使用した装置で
は下流側の逆浸透膜エレメントほど供給水濃度が大きく
なる結果、下流側ほど水質が低下する。このため、下流
側エレメントの膜脱塩率を高くすることによって水質レ
ベルを著しく高めることが可能となる。すなわち、直列
に配列された逆浸透膜エレメントにおいて、最上流側エ
レメントの膜脱塩率(最上流側膜脱塩率)よりも最下流
側エレメントの膜脱塩率(最下流側膜脱塩率)が大きい
ことが良く、また、最も好ましくは下記の関係にあるこ
とが望ましい。
【0031】「(100−最上流側膜脱塩率)/(10
0−最下流側膜脱塩率)≧1.2」 最大の脱塩率を有する膜使用したエレメントを最下流側
に設けることが最も効果的な方法であるが、水質向上効
果を若干犠牲にすることを許容するならば、最大脱塩率
を有する膜を使用したエレメントを最下流側以外の場所
で使用することができるが、この場合も、最大の脱塩率
を有するエレメントの膜脱塩率(最大膜脱塩率)と最小
の脱塩率を有するエレメントの膜脱塩率(最小膜脱塩
率)とは、「(100−最小膜脱塩率)/(100−最
大膜脱塩率)≧1.2」の関係にあることが好ましく、
最も好ましくは、「(100−最小膜脱塩率)/(10
0−最大膜脱塩率)≧1.8」が良い。
【0032】また、以上は逆浸透膜エレメントを直列に
配列させた場合を述べているが、逆浸透膜モジュールを
複数本並列に配置させてなるモジュールユニットを多段
に配置させた逆浸透膜装置の場合にも膜透過流束と膜脱
塩率の異なる複数の逆浸透膜を使用した場合において
も、各モジュールユニットを構成するモジュール内部で
膜透過流束や脱塩率の異なるエレメントを使用できるこ
とはもちろんであるが、各モジュールユニット毎に、膜
透過流束や脱塩率の異なるエレメントを使用することが
できる。通常は多段のモジュールユニットからなる逆浸
透膜装置の場合は、前段ユニットの濃縮水がそのままの
圧力または若干の圧力損失分が低下した状態で次段ユニ
ットの供給水となる。このような場合にも前述のエレメ
ントを直列にした場合と同様に、上流側に膜透過流束の
小さいエレメントを、下流側に膜透過流束の大きいエレ
メントを使用する本発明技術を使用することができる。
【0033】ここで、多段の改良された新技術の装置に
おいても膜性能の異なるエレメントを最適に使用するこ
とが可能である。すなわち、多段の逆浸透膜モジュール
ユニットからなる逆浸透膜装置において、本発明者らは
鋭意検討の結果、濃縮水昇圧型の多段モジュールユニッ
トシステムを開発している。これは、通常の多段とは異
なり、前段の濃縮水をブースターポンプなどで昇圧した
後に次段の供給水として使用する技術であり、例えば特
に海水を収率60%という非常に厳しい(高圧が要求さ
れる)条件で使用する場合に、1段目のモジュールユニ
ットを操作圧65atmで運転し、1段目の濃縮水を9
0atmまで昇圧して2段目の供給水として使用する結
果、非常に省エネルギー的な海水淡水化が達成されると
いうものである。このような改良型多段モジュールユニ
ットからなる逆浸透膜装置においては、前段の操作圧を
次段の操作圧よりも小さくでき、その圧力レベルも任意
に設定できるという特徴がある。このような場合は、最
上流側エレメントにかかる操作圧力が小さくできるので
必然的に透過水流量がファウリング許容フラックス値の
0.75m/m・日よりも充分小さくなるためにフ
ァウリングの影響をあまり考慮しなくて良い状態とな
る。しかしこのことは、低圧運転において最上流側エレ
メントの透過水量をファウリング許容フラックス値を越
えない範囲で増加させることができること、すなわち上
流側の膜透過流束を大きくすることができることを示し
ている。本発明者らの検討の結果、多段昇圧法において
は1段目モジュールユニットの膜透過流束(1段目膜透
過流束)と最終段モジュールユニットの膜透過流束(最
終段膜透過流束)は、「1.05≦1段目膜透過流束/
最終段膜透過流束≦1.5」であることが良く、特に好
ましくは、「1.1≦1段目膜透過流束/最終段膜透過
流束≦1.3」であることが良いことを見いだした。ま
た、同様に、膜脱塩率についても、最終段モジュールユ
ニットの膜脱塩率が1段目モジュールユニットの膜脱塩
率よりも大きいことが好ましく、特に、「(100−1
段目膜脱塩率)/(100−最終段膜脱塩率)≧1.
2」の関係にあることが最も好ましいことを見いだして
いる。
【0034】本発明に供給する供給水は特に限定するも
のではないが、溶質濃度0.5%以上であること、また
特に好ましくは供給水が海水または高濃度かん水である
ことが望ましい。
【0035】また、圧損やファウリングの問題等を考慮
すると、操作圧力(操作圧力は、圧損の影響も計算され
た上での値である)に関しては、以下の点も指摘でき
る。すなわち、直列に配列された逆浸透膜エレメントに
おける最下流側エレメントにかかる操作圧力(最下流側
操作圧力)と最上流側エレメントにかかる操作圧力(最
上流側操作圧力)の比(最下流側操作圧力/最上流側操
作圧力)、または、最終段モジュールユニットにかかる
操作圧力(最終段操作圧力)と1段目モジュールユニッ
トにかかる操作圧力(1段目操作圧力)の比(最終段操
作圧力/1段目操作圧力)は、特に前者について、0.
8以上であることが好ましく、より好ましくは0.9以
上、さらに好ましくは0.95以上である。
【0036】さらに複数モジュールを用いる場合、後段
により高い圧力をかけることにより、収率が向上し、n
段目の操作圧力をP(n)とすると 1.15≦P(n+1)/P(n)≦1.8 であることが好ましく、さらに好ましくは、 1.3 ≦P(n+1)/P(n)≦1.6 である。例えば、2段モジュールの場合について例示す
るならば、前段が65atmならば、後段は、約75〜
117atmが好ましく、より好ましくは約85〜10
4atmであると試算することができるが、何等これら
に限定されるものでない。
【0037】
【実施例】
実施例1 ポリアミド系スパイラル型逆浸透膜エレメント(膜面積
26.5m)6本を1本の圧力容器に組み込んだモジ
ュール1本と、供給水である海水を加圧して逆浸透膜モ
ジュールに供給する高圧ポンプとからなる逆浸透膜分離
装置を製作した。使用した逆浸透膜エレメントは上流側
から1、2本目は標準条件(圧力56atm、3.5%
海水、温度25℃、収率12%)で脱塩率99.5%、
造水量12m/日、また、3、4本目は同条件で脱塩
率99.5%、造水量14m/日、また、5、6本目
は同条件で脱塩率99.5%、造水量16m/日、で
あった。また、透過水はモジュールから両端取水構造で
取り出せるようにしており、1本目エレメントと2〜6
本目エレメントを別々に取り出せる構造とした。この装
置を操作圧力90atm、収率60%で運転した結果、
モジュール全体で透過水量80m/日、濃度230p
pmの淡水が得られた。1本目エレメントの透過水量は
0.68m/m・日(18m/日)であり、ファ
ウリング許容フラックスの0.75m/m・日を下
回っていたので、長期間の運転に適している結果が得ら
れた。
【0038】実施例2 上流側から5、6本目のエレメントの性能が脱塩率9
9.8%、造水量16m/日である以外は実施例1と
同じ条件で海水淡水化運転を行った。この結果、実施例
1と同じ運転条件で透過水量80m/日、水質200
ppmの淡水が得られた。
【0039】比較例1 逆浸透膜の性能がすべて脱塩率99.5%、造水量16
である以外は実施例1と同じ条件で海水淡水化実験
を行った。90atm、収率60%の条件で、透過水量
90m/日、水質240ppmの淡水が得られた。し
かし、1本目エレメントの透過水量は、0.83m
日(22m/日)であり、ファウリング許容フラック
スの0.75m/m・日を上回っていたので、長期
間の運転にてきしておらず、トータルコストが悪い結果
が得られた。
【0040】
【発明の効果】本発明により、高濃度溶液から高い収
率、少ないエネルギー、より安価に高効率に低濃度溶液
をより安定に得ることが可能な装置および分離方法が提
供されうる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C02F 1/44 G 9538−4D

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 膜透過流束または/および膜脱塩率の異
    なる複数の逆浸透膜エレメントを使用することを特徴と
    する逆浸透膜分離装置。
  2. 【請求項2】 最大の膜透過流束を有する逆浸透膜エレ
    メントの膜透過流束(最大膜透過流束)と最小の膜透過
    流束を有する逆浸透膜エレメントの膜透過流束(最小膜
    透過流束)とが下記の関係にあることを特徴とする請求
    項1記載の逆浸透膜分離装置。 最大膜透過流束/最小膜透過流束≧1.05
  3. 【請求項3】 最大の膜透過流束を有する逆浸透膜エレ
    メントの膜透過流束(最大膜透過流束)と最小の膜透過
    流束を有する逆浸透膜エレメントの膜透過流束(最小膜
    透過流束)とが下記の関係にあることを特徴とする請求
    項1記載の逆浸透膜分離装置。 最大膜透過流束/最小膜透過流束≧1.1
  4. 【請求項4】 最大の脱塩率を有する逆浸透膜エレメン
    トの膜脱塩率(最大膜脱塩率)と最小の脱塩率を有する
    逆浸透膜エレメントの膜脱塩率(最小膜脱塩率)とが下
    記の関係にあることを特徴とする請求項1記載の逆浸透
    膜分離装置。 (100−最小膜脱塩率)/(100−最大膜脱塩率)
    ≧1.2 (ただし、脱塩率はパーセント値、以下同様)
  5. 【請求項5】 最大の脱塩率を有する逆浸透膜エレメン
    トの膜脱塩率(最大膜脱塩率)と最小の脱塩率を有する
    逆浸透膜エレメントの膜脱塩率(最小膜脱塩率)とが下
    記の関係にあることを特徴とする請求項1記載の逆浸透
    膜分離装置。 (100−最小膜脱塩率)/(100−最大膜脱塩率)
    ≧1.8
  6. 【請求項6】 直列に配列された逆浸透膜エレメントに
    おいて、最上流側エレメントの膜透過流束よりも最下流
    側エレメントの膜透過流束が大きいことを特徴とする請
    求項1記載の逆浸透膜分離装置。
  7. 【請求項7】 直列に配列された逆浸透膜エレメントに
    おいて、最上流側エレメントの膜透過流束と最下流側エ
    レメントの膜透過流束とが、下記の関係にあることを特
    徴とする請求項1記載の逆浸透膜分離装置。 最下流側膜透過流束/最上流側膜透過流束≧1.1
  8. 【請求項8】 直列に配列された逆浸透膜エレメントに
    おいて、最上流側エレメントの膜脱塩率よりも最下流側
    エレメントの膜脱塩率が大きいことを特徴とする請求項
    1記載の逆浸透膜分離装置。
  9. 【請求項9】 直列に配列された逆浸透膜エレメントに
    おいて、最上流側エレメントの膜脱塩率(最上流側膜脱
    塩率)と最下流側エレメントの膜脱塩率(最下流側膜脱
    塩率)とが、下記の関係にあることを特徴とする請求項
    1記載の逆浸透膜分離装置。 (100−最上流側膜脱塩率)/(100−最下流側膜
    脱塩率)≧1.2
  10. 【請求項10】 多段に配置した逆浸透膜モジュールユ
    ニットにおいて、前段と後段で膜透過流束およびまたは
    膜脱塩率の異なる逆浸透膜を使用したことを特徴とする
    逆浸透膜分離装置。
  11. 【請求項11】 前段の濃縮水を昇圧して次段の供給水
    とするための濃縮水昇圧手段を設けたことを特徴とする
    請求項10記載の逆浸透膜分離装置。
  12. 【請求項12】 1段目モジュールユニットの逆浸透膜
    透過流束と最終段モジュールユニットの逆浸透膜透過流
    束とが、下記の関係にあることを特徴とする請求項11
    に記載の逆浸透膜分離装置。 1.05≦1段目膜透過流束/最終段膜透過流束≦1.
  13. 【請求項13】 1段目モジュールユニットの逆浸透膜
    透過流束(1段目膜透過流束)と最終段モジュールユニ
    ットの逆浸透膜透過流束(最終段膜透過流束)とが、下
    記の関係にあることを特徴とする請求項11に記載の逆
    浸透膜分離装置。 1.1≦1段目膜透過流束/最終
    段膜透過流束≦1.2
  14. 【請求項14】 1段目モジュールユニットの逆浸透膜
    の膜脱塩率よりも最終段モジュールユニットの逆浸透膜
    の膜脱塩率が大きいことを特徴とする請求項11に記載
    の逆浸透膜分離装置。
  15. 【請求項15】 1段目モジュールユニットの逆浸透膜
    の膜脱塩率(1段目膜脱塩率)と最終段モジュールユニ
    ットの逆浸透膜の脱塩率(最終段膜脱塩率)とが、下記
    の関係にあることを特徴とする請求項11に記載の逆浸
    透膜分離装置。 (100−1段目膜脱塩率)/(1
    00−最終段膜脱塩率)≧1.2
  16. 【請求項16】 膜透過流束と膜脱塩率の異なる複数の
    逆浸透膜エレメントを使用して逆浸透膜分離を行うこと
    を特徴とする逆浸透膜分離方法。
  17. 【請求項17】 供給水が溶質濃度0.5%以上の水溶
    液であることを特徴とする請求項16記載の逆浸透膜分
    離方法。
  18. 【請求項18】 供給水が海水または高濃度かん水であ
    ることを特徴とする請求項16記載の逆浸透膜分離方
    法。
  19. 【請求項19】 直列に配列された逆浸透膜エレメント
    において、最上流側エレメントにかかる有効圧力(最上
    流側有効圧力)と最下流側エレメントにかかる有効圧力
    (最下流側有効圧力)とが、下記の関係にあることを特
    徴とする請求項16記載の逆浸透膜分離方法。 最下流側有効圧力/最上流側有効圧力≧0.8
  20. 【請求項20】 1段目モジュールユニットにかかる有
    効圧力(1段目有効圧力)と最終段モジュールユニット
    にかかる有効圧力(最終段有効圧力)とが、下記の関係
    にあることを特徴とする請求項16記載の逆浸透膜分離
    方法。 最終段有効圧力/1段目有効圧力≧0.8
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WO2016036125A1 (ko) * 2014-09-02 2016-03-10 현대건설주식회사 하이브리드 cnt-ro막 압력용기

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