JP4187316B2 - 逆浸透膜分離装置および逆浸透膜分離方法 - Google Patents
逆浸透膜分離装置および逆浸透膜分離方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高濃度溶液を逆浸透分離するための新規な逆浸透膜分離装置および高濃度溶液の逆浸透膜分離方法に関するものである。本発明によって、高濃度溶液から高い収率、少ないエネルギー、費用で低濃度溶液を得ることができ、一方では濃縮液を従来の逆浸透法より一層高い濃度、少ないエネルギー、費用で得ることができる装置および分離方法を提供することができる。本発明の装置および方法は特にかん水の脱塩、海水の淡水化、また排水の処理、有用物の回収に用いることができる。特に高濃度の溶液から低濃度溶液を得る場合や、高濃度溶液をさらに高い濃度に濃縮する場合に効果が大きい。
【0002】
【従来の技術】
混合物の分離に関して、溶媒(例えば水)に溶解した物質(例えば塩類)を除くための技術には様々なものがあるが、近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして膜分離法が利用されてきている。膜分離法のなかには、精密濾過(MF;Microfiltration)法、限外濾過(UF;Ultrafiltration)法、逆浸透(RO;Reverse Osmosis)法がある。
【0003】
さらに近年になって、逆浸透と限外濾過の中間に位置する膜分離(ルースROあるいはNF;Nanofiltration)という概念の膜分離法も現われ使用されるようになってきた。例えば逆浸透法は海水または低濃度の塩水(かん水)を脱塩して工業用、農業用または家庭用の水を提供することに利用されている。逆浸透法によれば、塩分を含んだ水を浸透圧以上の圧力をもって逆浸透膜を透過させることで、脱塩された水を製造することができる。この技術は例えば海水、かん水、有害物を含んだ水から飲料水を得ることも可能であるし、また、工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収などにも用いられてきた。
【0004】
特に逆浸透膜による海水淡水化は、蒸発のような相変化がないという特徴を有しており、エネルギー的に有利である上に運転管理が容易であり、広く普及を始めている。
【0005】
逆浸透膜で溶液を分離する場合は、溶液の溶質濃度によって定まる溶液自身の持つ化学ポテンシャル(これを浸透圧で表わすことができる)以上の圧力で溶液を逆浸透膜面に供給する必要があり、たとえば海水を逆浸透膜モジュールで分離する場合は、最低3.0MPa程度以上、実用性を考慮すると少なくとも5.0MPa程度以上の圧力が必要となり、これ以上の圧力に加圧されないと充分な逆浸透分離性能は発現されない。
【0006】
逆浸透膜による海水淡水化の場合を例にとると、通常の海水淡水化技術では海水から真水を回収する割合(収率)は高々40%であり、海水供給量に対して40%相当量の真水が膜を透過して得られる結果、逆浸透膜モジュールの中で海水濃度が3.5%から6%程度にまで濃縮されることになる。このように海水から収率40%の真水を得るという逆浸透分離操作を行うためには、濃縮水の濃度に対応する浸透圧(海水濃縮水濃度6%に対しては約4.5MPa)以上の圧力が必要である。実際には、逆浸透膜を真水が透過する際に生じる膜面塩濃度上昇(いわゆる濃度分極現象)するため、さらに高い圧力が必要とされる。この点も考え併せると、真水の水質がいわゆる飲料水レベルに対応でき、かつ充分な水量を得るためには、実際には、濃縮水濃度に対応する浸透圧よりも約2.0MPa(この圧力を有効圧力と呼ぶ)程度高めの圧力を逆浸透膜に加えることが必要であり、海水淡水化用逆浸透膜モジュールは6.0から6.5MPa程度の圧力をかけて収率40%という条件で運転されるのがふつうであった。
【0007】
海水供給量に対する真水の収率は、直接コストに寄与するものであり、収率は高いほど好ましいが、実際に収率を上げることについては限度があった。すなわち、収率を上げると、非常に高い圧力が必要であるという理由は言うまでもないが、濃縮水中の海水成分の濃度が高くなり、ある収率以上では炭酸カルシウムや硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウムなどの塩、いわゆるスケール成分濃度が溶解度以上になって逆浸透膜の膜面に析出して膜の目つまりを生じさせる問題がある。
【0008】
現在の(最高収率として広く認識されている)収率40%程度においては、これらのスケール成分の析出の心配は小さく特に対応は不要であるが、それ以上の収率で逆浸透膜の運転操作を行おうとすると、これらのスケール成分の析出防止のために、塩の溶解性を高めるスケール防止剤を添加することが必要となる。しかしながら、スケール防止剤を添加したとしても上記のスケール成分の析出を抑制できるのは濃縮水濃度で10から11%程度である。このため、塩水濃度3.5%の海水を淡水化する場合では、物質収支的に収率は65から68%程度が限度であり、また原海水の変動異種成分の影響などを考慮すると、逆浸透膜海水淡水化プラントを安定に運転できうる可能性のある実際の収率限度は60%程度であると認識される。
【0009】
実用的に海水淡水化を行う場合は、前述のように、濃縮水濃度によって決まる濃縮水浸透圧よりも2.0MPa程度高い圧力を逆浸透膜モジュールに付与することが重要である。海水濃度3.5%の場合の、収率60%に相当する濃縮水濃度は8.8%であり、この浸透圧は約7.0MPaとなる。その結果、逆浸透膜には9.0MPa程度の圧力を付与することが重要である。
【0010】
逆浸透膜エレメントは、通常複数本の逆浸透膜のエレメントを1本の圧力容器(エレメントを装填するための耐圧容器)に直列に装填した状態(これをモジュールと称す)で使用され、実際のプラントではこのモジュールを多数本並列に設置して使用される。海水淡水化の収率というのは、プラント全体に供給される全供給海水に対する全透過水量の割合であり、通常の条件では、モジュールが並列に設置されているので、モジュール1本あたりの供給量とモジュール1本から得られる透過水量の割合(モジュール内の各エレメントからの透過水量の合計)と一致する。ここで、モジュール内部の各エレメントから得られる透過水は、例えば1モジュールが逆浸透膜エレメント6本から構成され、1モジュールに198m3 /日の海水を供給し、合計78m3 /日の真水が得られる場合(収率40%)は、実際に起こっている現象をシミュレーションしてみると、1本目のエレメントで18から19m3 /日、2本目のエレメントで15から17m3 /日、3本目からも徐々に減っていき、合計して78m3 /日の透過水となる。このように、各エレメントからの透過水収率は小さいがモジュール全体の透過水の総量としては、供給水に対して40%と大きな収率が達成されることになる。
【0011】
一方、逆浸透膜分離装置の運転条件設定について考慮する必要のある事項としては、ファウリング(膜面汚れ)の防止と濃度分極の防止がある。ファウリングの防止は、具体的には1本の逆浸透膜エレメントから得られる透過水量をある値(耐ファウリング許容Flux)以上にしないということで、この値を越えて透過水を採取すると、そのエレメントの膜面汚れが加速されることになり好ましくない。この耐ファウリング許容Fluxは膜素材やエレメント構造によっても異なるが、通常、高性能の逆浸透膜の場合では、0.75m3 /m2 ・日程度であり、有効膜面積26.5m2 の逆浸透膜エレメント(以下、全て逆浸透膜エレメントの有効膜面積は26.5m2 を適用して話を進める)では20m3 /日に相当する。すなわち、ファウリング防止のために、1エレメントの透過水量は20m3 /日以下に保つことが重要である。
【0012】
ここでいう濃度分極の防止というのは、主にモジュール内部で上流側エレメントから下流側エレメントに向かうに従って供給水の量が低下しており、最終のエレメントに流れる供給水の膜面流速が低下することによる濃度分極の防止である。濃度分極が生じると膜性能を十分に発揮できないばかりでなく、ファウリングの発生を加速し、逆浸透膜エレメントの寿命低下を引き起こす。このため、最終エレメント(有効膜面積26.5m2 の場合)の濃縮水流量は50m3 /日程度以上に保つことが重要である。
【0013】
逆浸透膜海水淡水化装置を従来の最高収率レベルの約40%で運転する場合は、単にモジュールを複数本並列に配列させて圧力6.5MPa(温度20℃の場合)で運転し、透過水の全量に対して供給海水量を2.5倍に設定することで、上記のファウリングおよび濃度分極の防止条件は十分に満足されており、安定な運転が行われてきた。また、特にモジュール内部の各エレメントの透過水のバランスや濃縮水のスケール成分析出などを考慮することなどは必要なかった。
【0014】
また、逆浸透膜海水淡水化装置の淡水化コストの更なるコスト低減をめざしていく場合は、収率を高めることが非常に重要であり、前述のように、海水濃度3.5%の海水淡水化収率としては60%程度まで高めることが望ましく、適量のスケール防止剤の添加を前提として、運転圧力としては、濃縮水の浸透圧よりも約2.0MPa高い9.0MPaの圧力で運転することが重要となる。
【0015】
一方、スケール防止剤は水処理施設や蒸発法の淡水化装置などを始め逆浸透膜装置においても使用されているが、その目的は主にシリカ、金属塩類などのスケール物質の装置内での析出を抑制することであり、特にシリカスケール成分の多い水を処理する際に用いられてきた。
【0016】
例えば、特開昭53−30482号公報には、あらかじめ供給液をキレート樹脂に接触させてカルシウムやマグネシウムなどを低減した後逆浸透処理を行なうことで逆浸透膜の寿命が延びることが、特開昭52−151670号公報、特開平4−4022号公報には、燐酸塩を添加して逆浸透装置内のスケール発生を防止する方法が開示されている。また、特開昭63−218773号公報、特開平4−99199号公報、特公平5−14039号公報には、電着塗料や銅メッキの廃水にキレート剤を添加して逆浸透濃縮することで塗料や銅の回収を行なう方法が開示されている。さらに、特開昭63−69586号公報および特開平2−293027号公報では、塩素、あるいは酸化剤と燐酸塩を添加した溶液を供給して逆浸透膜装置の殺菌と安定運転を行なう方法が開示されている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のように、同一の圧力容器内部に複数本の逆浸透膜エレメントを直列に配列させたモジュールを、複数本並列に配置した状態で9.0MPaの圧力をかけて、淡水化収率60%の運転を行おうとすると、モジュール内部の上流側のエレメント(1本目または2本目のエレメント)から得られる透過水量が許容値以上に大きくなりすぎて、これらのエレメントに濃度分極およびファウリングという現象が生じてエレメントの目つまりや寿命低下が生じ、その結果、長期にわたる逆浸透膜装置の安定運転を行うことが非常にむずかしくなる。
【0018】
淡水収率60%の海水淡水化では、モジュールの入り口から出口にかけては、物質収支的に海水濃度は3.5%から8.8%にまで、浸透圧は2.6MPaから7.0MPaにまで変化している。
【0019】
一方、操作圧力は入り口から出口にかけて、9.0MPaでほぼ一定であるために、真水を透過させるのに必要な有効圧力(操作圧力と浸透圧の差)は6.4MPaから2.0MPaまでと大きく変化している。すなわち、モジュール内部の1番目と最後段エレメントとの透過水量の比率はこの有効圧比率の64:20と同程度となる。すなわち、一本目のエレメントの透過水量が激増し、耐ファウリング許容値である0.75m3 /m2 ・日を軽く越える透過水量が得られ、ファウリングが非常に生じ易くなるという問題があった。
【0020】
しかし、収率60%という条件では操作圧力9.0MPaというのは必須であるために操作圧力を低下させることができず、結局、収率60%の運転を行うことは適当ではなく、もし、無理矢理運転したとしても、ファウリングが加速されるという問題が生じるために長期の安定運転は不可能であった。また、どうしても収率60%運転を行おうとすれば、エレメント1本の透過水量を低下させた低性能エレメントをあえて使用して、エレメント数を増加させて運転するなどという、非経済的な方向を指向した運転条件を選定せざるを得なかった。
【0021】
また、上記内容は、簡単のためにスパイラル型逆浸透膜エレメントを例にとり説明しているが、中空糸膜型モジュールの場合でも内部では同様の現象と同様の問題が生ずる。
【0022】
本発明は、高濃度溶液から高い収率で、少ないエネルギーで、より安価に、高効率に低濃度溶液をより安定に得ることができる装置および分離方法を提供することにあり、特に、海水から60%という高い収率で、かつ少ないエネルギーで真水を効率的に、かつ安定的に得るための逆浸透膜分離装置および逆浸透膜分離方法を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は下記の構成を有する。すなわち、「海水または塩分濃度1%以上の高濃度かん水を逆浸透分離するための逆浸透膜分離装置であって、供給水昇圧用加圧ポンプの下流に、逆浸透膜モジュールユニットが多段に配置され、前段の逆浸透膜モジュールユニットからの濃縮液流路が次段の逆浸透膜モジュールユニットの供給液流路に連通されているとともに、該逆浸透膜モジュールユニットの最終段以外の全ての逆浸透膜モジュールユニットにおいて、その逆浸透膜モジュールユニットからの濃縮液流路から次段の逆浸透膜モジュールユニットへの供給液流路には昇圧手段を設けることなく、少なくとも1段目の逆浸透膜モジュールユニットの透過水流路には透過水圧力もしくは透過水流量を調節するための手段が設けられていることを特徴とする逆浸透膜分離装置。」である。
【0024】
【発明の実施の形態】
かかる本発明の構成は、該逆浸透膜分離装置が3段以上の場合、特定の2段の間で満足されるものであるが、すべての段の間で満足されることは必須ではない。
【0025】
本発明において、逆浸透膜分離装置は、少なくとも供給液の取水部分、逆浸透膜部分からなるものである。逆浸透膜部分は造水、濃縮、分離などの目的で被処理液を加圧下で逆浸透膜モジュールに供給し、透過液と濃縮液に分離するための部分をいい、通常は逆浸透膜エレメントと耐圧容器からなる逆浸透膜モジュール、加圧ポンプなどで構成される。
【0026】
上記の逆浸透膜部分に供給される被分離液は前処理部分で通常、殺菌剤、凝集剤、さらに還元剤、pH調整剤などの薬液添加と、砂濾過、活性炭濾過、保安フィルターなどによる前処理(濁質成分の除去)が行なわれる。例えば、海水の脱塩の場合には、取水部分で海水を取込んだ後、沈殿池で粒子などを分離し、またここで殺菌剤を添加して殺菌を行なう。さらに、塩化鉄などの凝集剤を添加して砂濾過を行なう。
【0027】
ろ液は貯槽に貯められ、硫酸などでpHを調整した後、高圧ポンプに送られる。この送液中に亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤を添加して逆浸透膜素材を劣化させる原因となる殺菌剤を消去し、保安フィルターを透過した後、高圧ポンプで昇圧されて逆浸透モジュールに供給されることもしばしば行われる。ただし、これらの前処理は、用いる供給液の種類、用途に応じて適宜採用される。
【0028】
ここで逆浸透膜は、被分離混合液中の一部の成分、例えば溶媒を透過させ他の成分を透過させない半透性の膜である。その素材には酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材がよく使用されている。またその膜構造は膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い活性層を有する複合膜がある。膜形態には中空糸、平膜がある。しかし、本発明の方法は、逆浸透膜の素材、膜構造や膜形態によらず利用することができ、いづれも効果がある。代表的な逆浸透膜としては、例えば酢酸セルロース系やポリアミド系の非対称膜およびポリアミド系、ポリ尿素系の活性層を有する複合膜などがあげられる。これらのなかでも、酢酸セルロース系の非対称膜、ポリアミド系の複合膜に本発明の方法が有効であり、さらに芳香族系のポリアミド複合膜では効果が大きい。
【0029】
逆浸透膜エレメントは、上記逆浸透膜を実際に使用するために形態化したものであり、平膜は、スパイラル、チューブラー、プレート・アンド・フレームのエレメントに組み込んで、また中空糸は、束ねた上でエレメントに組み込んで使用することができるが、本発明はこれらの逆浸透膜エレメントの形態に左右されるものではない。
【0030】
逆浸透膜モジュールユニットは、上述の逆浸透膜エレメントを1〜数本圧力容器の中に収めたモジュールを並列に配置したもので、その組合せ、本数、配列は目的に応じて任意に行なうことができる。
【0031】
本発明においては、前記逆浸透膜モジュールユニットを複数用いることと、その配列に特徴がある。該逆浸透膜モジュールユニットの配列は、供給液あるいは濃縮液の流れが直列であることが重要であり、すなわちひとつの逆浸透膜モジュールユニットの濃縮液が次の逆浸透膜モジュールユニットの供給液となる。
【0032】
ここで、本発明の逆浸透分離装置の基本的な構成の例を図1に基づいて説明する。
【0033】
図1は、本発明の技術を採用した海水淡水化プラントの例であり、濃度3.5%の通常海水から60%という非常に高い収率で真水を得るための設備であり、2基の逆浸透膜モジュールユニット2、10と1台の加圧ポンプ1、1台の透過水圧力調節手段(図1の例では圧力調節弁7)、および1台の圧力エネルギー回収装置5aからなる逆浸透分離装置を模式的に示したものである。
【0034】
供給液(海水)6は、前処理(図示されていない)で濁質成分を除去された後、加圧ポンプ1によって9.0MPaに加圧され、1段目の逆浸透膜モジュールユニット2に供給される。1段目の逆浸透膜モジュールユニット2で、供給液6は膜を透過した低濃度の透過液と膜を透過しない高濃度の濃縮液とに分離されるが、図1に示す装置では、透過水圧力調節弁7によって、供給液の圧力に対して透過水の圧力を調節することによって、これまで行われている方法で問題とされていた1段目の膜モジュールユニット2において透過水量が大きくなりすぎてしまう、すなわち、前述したようなファウリングが生じるという問題を解決することが可能となる。
【0035】
さらに具体的に述べると、従来方法では、供給液にかけられた圧力9.0MPaが逆浸透膜の圧力差としてかかるため、前述したように、1段目の膜モジュールユニット2では、3.5%の海水に対して、浸透圧を差し引いたおよそ6.4MPaの有効圧力がかかり、耐ファウリング許容範囲を超える透過水量が得られてしまい、ファウリングを避けられない。
【0036】
一方、本発明の透過水の圧力調節手段7を適用することによって、透過水側に例えば、4.4MPaの圧力がかかるようにすれば、供給液圧力から浸透圧と透過水圧力を引いた有効圧力は2.0MPa程度に抑えられ、ファウリングを防止することが可能となる。次に、透過液3はそのまま利用されるが、濃縮液4は供給液の圧力である9.0MPa(簡単のために圧力損失を無視する)が保たれたまま、2段目の逆浸透膜モジュールユニット10に供給される。2段目の逆浸透膜モジュールユニット10の供給水は、1段目で透過水が得られた分だけ濃縮されており、その結果浸透圧が高くなっているため、供給液の圧力が9.0MPaであっても、前述したような淡水収率60%における最終濃縮液濃度8.8%の浸透圧を差し引いた有効圧力は、2.0MPa程度となり、2段目の逆浸透膜モジュールユニット10においてもファウリングの生成を防止しながら透過水量も十分に得ることができる。
【0037】
ここで、逆浸透膜プラントの供給水の総量と1段目透過液と2段目の透過液の合計との比率(ここで示した場合では60%)が淡水収率である。
【0038】
ここで、エネルギー回収装置は、本装置の運転にとって必須のものではないが、エネルギー効率的な面から考えた場合、透過水や最終段の濃縮水12は圧力を持っているため、圧力エネルギー回収装置5a,5bによって、エネルギー回収を行うことが好ましい。また、ここで回収したエネルギーの利用については特に制約を受けるものではないが、加圧ポンプ1のエネルギーとして利用する方法が自己循環で好ましい方法である。ここで、エネルギー回収装置の設置位置については、調節すべき圧力がモジュール出口近傍であるため、圧力センサー8を最もモジュール近傍に設置し、つづいてエネルギー回収装置5a、圧力調節弁7の順で設置する方法が好ましい。2段目では、透過水が透過水ライン11から得られ、濃縮水は濃縮水ライン12から、圧力エネルギー回収装置5bを通しながら、濃縮水の圧力調節弁9を通って系外へ排出される。ここで、エネルギー回収装置の設置については、濃縮水12が非常に大きな圧力エネルギーを有していることから、エネルギー回収装置を設置する効果が非常に大きい。また、透過水に関しては、濃縮水に比較して圧力は小さいので、エネルギー回収装置の設備コストなどを考慮した上で、設置すべきかどうか決定することが好ましい。
【0039】
ところで、図1は、2段の逆浸透膜モジュールユニットと1台の加圧ポンプ、1台の透過水圧力調節手段、および1台の圧力エネルギー回収装置が組み合わされた逆浸透分離装置(濃縮水昇圧2段法とよぶ)であるが、段数、ポンプの数については、請求項1および7の記載の要件満たす限りにおいては特に限定されず、任意に設定することができる。
【0040】
収率については、特に60%程度という理論限界の値に近い領域であれば本発明の効果が著しく発揮されるが、特にこの限りではなく、現状の40%回収の条件においても適用することができる。しかし、装置全体のエネルギーコスト低減を考慮すると、50%以上が好ましく、より好ましくは55%以上である。
【0041】
2段または複数段の逆浸透膜モジュールユニットへの供給原水を加圧する場合、1台の加圧ポンプと、1台または複数台の透過水圧力調節手段、および1台の圧力エネルギー回収装置が使用される。
【0042】
加圧ポンプは供給原水を供給原水の浸透圧以上に加圧するためのもので、汎用の高圧ポンプと呼ばれるものである。圧力は供給原水の浸透圧(厳密には供給原水の浸透圧と透過水の浸透圧との「浸透圧差」であるが、簡単のために「浸透圧」で表現する)より大きいことが重要であり、より好ましくは、逆浸透膜モジュールユニットの濃縮水浸透圧よりも2.0MPa程度高い圧力に設定し、さらに該浸透圧よりも5.0MPa以下であることが好ましい。また、1段目モジュールユニットにおける浸透圧と2段目における逆浸透膜モジュールユニット入口浸透圧の差の分だけ1段目モジュールユニットの透過水に圧力を与えることがもっとも好ましい。
【0043】
したがって、供給液の操作圧力としては、収率をR%とするとき、供給液濃度の100/(100−R)倍における浸透圧に約2.0MPa以上高い圧力にすることが好ましく、さらに、逆浸透膜エレメントの透過側の流路に障害を与えることなく運転するためには、圧力は約12.0MPa(浸透圧+5.0MPa))以下であることが好ましい。収率60%の海水淡水化の場合はコストを考慮すると供給水の操作圧力としては、9.0MPa前後が好ましい。この場合、海水淡水化の場合では総合的な電力コストを考慮すると、1段目における透過水圧力は、1.4MPa以上4.4MPa以下であることが好ましく、最も効率的な範囲としては、1.8MPa以上3.0MPa以下であることが好ましい。
【0044】
濃度が高いために超高脱塩率膜(結果的に透過水量が小さくなる傾向にある)を使用する場合なども考慮すると更に圧力を高めることも可能である。また、モジュールユニット段数を多段にして、有効圧力を透過水圧力調節手段で少しづつ昇圧することもエネルギーコスト低減に効果が大きく、任意に設定することができる。ここにおいて、本発明者らは淡水化コストを低減しうる多段昇圧式の海水淡水化システムの検討を行った結果、モジュールユニット各段における供給液圧力から透過水圧力を差し引いた操作圧力差については、n段目の操作圧力差P(n)とn+1段目の操作圧力差P(n+1)との間に、
「1.15≦P(n+1)/P(n)≦1.8、」という関係があることが好ましく、また、より好ましくは、
「1.3≦P(n+1)/P(n)≦1.6」という関係があることを見出した。
【0045】
もちろん、本発明において、n段目とn+1段目との関係が限定されている場合、すべての段から選ばれる少なくとも1つの任意のn段目について当てはまれば充分である。
【0046】
これまでの図1の説明として透過水の圧力を調節する方法について述べてきたが、透過水圧力調節の代わりに、透過水流量を調節する手段を用いることによっても本発明の目的を達成することができる。
【0047】
すなわち、本発明にかかる問題であるところのスケール生成は、1エレメントあたりの透過水量を抑えることによって防止することができるのである。透過水圧力と透過水流量のどちらを制御因子として選択するかは、いずれにしても同様の効果を得ることができるため、特にどちらを選択しても問題はなく、両方を制御因子として用いても差し支えない。とくに、プラント装置設計の面からは透過水流路の耐圧性や流量に対するキャパシティを考慮した場合、片方を基本的な制御因子としてもう片方を制限因子として制御する方法がより適当である。具体的には、例えば、透過水流量が一定となるような調節を行いながら、透過水圧力の上下限値を設定し、上下限値に達したらアラームを発生するなどの異常処理を行うといった方法である。
【0048】
ここで、本発明に用いられる透過水圧力を調節する手段としては、透過水が設定した圧力に維持される能力を有していれば特に制限されるものではないが、最も、簡便な方法としては、ある一定圧力以上で放圧し、それ以下で閉じるような圧力調節弁が挙げられる。また、流量を調節する場合も同様で、一般に存在する流量調節弁を透過水流路に設置する方法が挙げられる。さらに、圧力および流量を調節する機構として、エネルギー回収装置を用いることも可能である。圧力センサーや流量センサーに連動した可変負荷式のエネルギー回収装置を使用すれば、前記の圧力調節手段や流量調節手段として用いることが可能である。もちろん、エネルギー回収装置を備えた上で、圧力調節弁や流量調節弁によって調節を行うことも可能である。
【0049】
本発明におけるエネルギー回収装置としては、タービン、水車などによって、機械的、電気的に代表されるエネルギー回収を行い、システムにおけるエネルギー負荷低減を行う方法が挙げられる。しかしながら、回収エネルギーを余らせることなく活用するためには、供給液の加圧ポンプに直結するエネルギー回収タービンに直接戻して同加圧ポンプのエネルギーを回収する方式が最良である。
【0050】
また、本発明において最終段の逆浸透膜モジュールユニットからの濃縮水も同様に圧力エネルギーを持っているため、このエネルギーも回収して再使用することが好ましい。これらのエネルギー回収手段を供給液の加圧ポンプのエネルギー回収に活用した装置の例を図3に示す。
【0051】
基本的なフローは、図1と同じであるが、2基のエネルギー回収装置5が加圧ポンプ1に直結した構造になっている。
【0052】
ところで、本発明の逆浸透膜分離装置に供給される供給液としては、特に限定しないが、比較的高濃度で高い浸透圧を有する液体である程本発明の効果が発揮される。
【0053】
溶質の濃度についても特に限定しないが、溶質濃度として0.5重量%以上であることが好ましい。また、特に好ましくは、高い浸透圧を有している海水または塩分濃度1%程度以上の高濃度かん水を供給した場合に特に本発明の効果が発揮される。
【0054】
本発明においては複数の逆浸透膜モジュールユニットを設けることができるが、段数については前述のとおり任意に設定することができる。また、特にコスト面を考慮するとモジュールユニットの数は、2段または3段であることが最も好ましい。
【0055】
多段の逆浸透膜モジュールユニットを設けた場合、各段の供給液に対して濃縮液の流量は減少しているので、同じ有効膜面積のモジュールユニットを設置する場合は、後段になるほど有効膜面積あたりの供給水量が少なくなって濃度分極が生じ易くなるので、各段のユニットを構成するモジュールの有効膜面積は、段数に従って減らしていき、有効膜面積あたりの供給水流量が極端に小さくなることを防止することが好ましい。多段に配置した逆浸透膜モジュールにおいて、特に好ましくは、次段の有効膜面積は、前段の40%から60%の範囲になるように低減させることである。また、この点に関しては、一般にモジュールサイズは変えないので、この場合、次段のモジュール本数を前段より少なくすることが好ましい。
【0056】
また、各段の透過水量についても同様の理由により減少させていくことがプラント全体のバランスを保つ上で好ましい。各段のモジュール本数が決定されていても各段における透過水圧力や透過水流量をそれぞれ選ぶことで透過水量を広く設定することが可能であるが、装置全体のエネルギーコストの低減を考慮すると、多段に配置した逆浸透膜モジュール装置において次段の透過水量は前段の30%から70%の範囲で低減させることが最も好ましい。
【0057】
本発明ではモジュールユニットを多段にして、後段のモジュール数を最適に低減させていくことによって、逆浸透膜モジュールの供給側膜面流速の急激な低下を防止することができる。膜面流速にも最適値が存在しており、各段によって膜面流速に大きな差異があることは好ましくない。各段のモジュールユニットを流れる海水の膜面流速の差異を小さくして、濃度分極を起こさない安定運転を行うためには、各段の逆浸透膜モジュールユニットの濃縮水の膜面流速について、最も大きい膜面流速を有するモジュールユニットの濃縮水膜面流速(最大濃縮水膜面流速)と、最も小さい膜面流速を有するモジュールユニットの濃縮水膜面流速(最小濃縮水膜面流速)とが、
「最大濃縮水膜面流速/最小濃縮水膜面流速≦1.5」という関係になるように運転することが好ましく、
「最大濃縮水膜面流速/最小濃縮水膜面流速≦1.3」という関係になるように運転することが最も好ましい。
【0058】
本発明は、特に高収率の海水淡水化をめざしており、安定運転のためには、スケール防止剤の添加が有用である。
【0059】
また、本発明におけるスケール防止手段は、逆浸透装置の前処理部分で行うのが一般的であり、これによって逆浸透装置全体におけるスケール生成を防止することができる。ただし、スケールが生成しやすいのは、供給液が高濃度になる後段部分であるので、後段の逆浸透膜における直前で添加することも可能である。ただし、この場合は、スケール防止手段にも耐圧性が必要になる場合があり注意を要する。本発明のスケール防止剤とは、溶液中の金属、金属イオンなどと錯体を形成し、金属あるいは金属塩を可溶化させるもので、有機や無機のイオン性のポリマーあるいはモノマーが使用できる。イオン性のポリマーとしてはポリアクリル酸、スルホン化ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリアリルアミンなどの合成ポリマーやカルボキシメチルセルロース、キトサン、アルギン酸などの天然高分子が使用できる。
【0060】
有機系のモノマーとしてはエチレンジアミン四酢酸などが使用できる。無機系スケール防止剤としてはポリ燐酸塩などが使用できる。これらのスケール防止剤の中では入手のしやすさ、溶解性など操作のしやすさ、価格の点から特にポリ燐酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)が本発明において好適に用いられる。ポリ燐酸塩とはヘキサメタ燐酸ナトリウムを代表とする分子内に2個以上の燐原子を有し、アルカリ金属、アルカリ土類金属と燐酸原子などにより結合した重合無機燐酸系物質をいう。代表的なポリ燐酸塩としては、ピロ燐酸4ナトリウム、ピロ燐酸2ナトリウム、トリポリ燐酸ナトリウム、テトラポリ燐酸ナトリウム、ヘプタポリ燐酸ナトリウム、デカポリ燐酸ナトリウム、メタ燐酸ナトリウム、ヘキサメタ燐酸ナトリウム、およびこれらのカリウム塩などがあげられる。
【0061】
また、これらスケール防止剤の添加濃度は供給液中の少なくともスケール成分を取込める量であれば充分であるが、費用や溶解にかかる時間などの操作性を考慮すると一般的には0.01〜100ppmであり、正確には供給水の水質に依存するが通常、海水の場合では0.1〜50ppmが好ましく、さらに好ましくは1〜20ppmである。添加量が0.01ppmよりも少ない場合にはスケールの発生を充分に抑制できないため、膜性能の劣化が起こる。また、100ppmを越えるとスケール防止剤自体が膜表面に吸着して造水量を低下させたり、水質を悪化させるため好ましくない。ただし、多量にスケール物質や金属類を含む供給液では数十〜数百ppmの添加が必要な場合もある。
【0062】
本発明においては、従来の単純一段法では困難であった海水淡水化の高収率運転が可能となり、淡水化コストの大幅削減と運転の安定化の向上が期待されるが、多段に配列させたモジュールユニットの供給水をあらかじめ超清澄化させておくことによって、一層の運転安定化が図られる。すなわち、本発明者らは、鋭意検討の結果、洗浄可能な中空糸膜濾過装置による海水の処理が、海水淡水化前処理水の超清澄化手段として非常に大きな効果を持つことを見出した。これは、海水を多数の中空糸膜を束ねてなる中空糸膜モジュールで濾過して清澄海水を得るものであるが、中空糸膜表面の汚れを物理洗浄手段によって除去しつつ、長期にわたって使用できるような中空糸膜を使用することが前提である。中空糸膜の物理洗浄手段としては、濾過水の逆方向流水洗浄や空気によるエアーフラッシング、またはスクラビング洗浄などを採用することができる。
【0063】
本発明で使用する中空糸膜モジュールとしては、中空糸膜束の端部を接着剤で固めた後で切断により中空糸膜内部を開孔させてなる中空糸膜モジュールであり、特に構造は問わないが、物理洗浄の手段と組み合わせて最適形状を採用することができる。特に、タンク形状の容器の中に、複数本の中空糸膜エレメントを装填した形状のモジュールが大容量化に適しており、最も好ましい。中空糸膜モジュールを構成する中空糸膜としては、多孔質の中空糸膜であれば特に限定しないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、セルロースアセテート、ポリアクリロニトリル、その他の材質を選定することができる。この中で特に好ましい中空糸膜素材としては、アクリロニトリルを少なくとも一成分とする重合体からなる中空糸膜が適当である。アクリロニトリル系重合体の中でも最も好ましいものとしては、アクリロニトリルを少なくとも50モル%以上、好ましくは60モル%以上と該アクリロニトリルに対して共重合性を有するビニル化合物一種または二種以上を50%以下、好ましくは0から40モル%とからなるアクリロニトリル系共重合体である。また、これらアクリロニトリル系重合体二種以上、さらに他の重合体との混合物でも良い。上記ビニル化合物としては、アクリロニトリルに対して共重合性を有する公知の化合物であれば良く、特に限定されないが、好ましい共重合成分としては、アクリル酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、アリルスルホン酸ソーダ、p−スチレンスルホン酸ソーダ等を例示することができる。
【0064】
ところで、本発明における逆浸透膜エレメントを装填する圧力容器に関しては、特に制限されるものではないが、海水淡水化の場合かなりの高圧に耐える必要がある。とくに本発明における60%回収を行う場合、前述したように浸透圧7.0MPaよりも大きな圧力をかける必要があることから、実質的には、8.0MPa以上の耐圧性を有する必要がある。
【0065】
なお、本発明は海水淡水化以外の多くの逆浸透膜分離操作、例えば化学プロセス用途、食品分離用途などに広く適用できる。
【0066】
【実施例】
実施例1
標準条件(圧力5.5MPa、3.5%海水、温度25℃、収率12%)で脱塩率99.5%、造水量3.75m3 /日の性能を有した膜面積6.6m2 のポリアミド系逆浸透膜を使用し、これを1つの圧力容器内に6本入れたモジュールを並列に4本組込んだ第1段目のモジュールユニットと、同モジュールを2本組込んだ第2段目のモジュールユニットと、供給水である海水を昇圧して1段目のモジュールユニットに供給する加圧ポンプと、第1段目の透過水圧力の調節弁を有した図1に示す逆浸透膜分離装置を製作し、海水淡水化実験を行った。1段目透過水および2段目濃縮水は1段目の高圧ポンプに直結したエネルギー回収タービンに戻してエネルギー回収を行った。1段目高圧ポンプで汲み上げた海水を9.0MPaにまで加圧して1段目の逆浸透膜モジュールに供給し、1段目透過水圧力2.2MPaに制御しながら、1段目の濃縮水(供給圧力8.9MPa)を2段目に供給した。この結果、海水供給量200m3 /日に対して、1段目透過水量81m3 /日、2段目透過水量39m3 /日、合計120m3 /日の飲料水基準を満足する真水を得た。収率は60%であった。このとき1段目モジュールユニットの最上流側のエレメントの透過水量は0.71m3 /m2 ・日であり、透過水1m3 あたりの電力消費量は4.7kWhであった。
【0067】
比較例1
実施例1と同じ逆浸透膜エレメントを1本の圧力容器内に6エレメント装填したモジュール6本からなる逆浸透膜モジュールユニットと、海水を昇圧してモジュールユニットに供給する加圧ポンプ,濃縮水の圧力を回収するためのエネルギー回収装置からなる図2に示す逆浸透膜分離装置を製作し、海水淡水化実験を行った。加圧ポンプ圧力9.0MPaにおいて、透過水量143m3 /日の真水を収率60%で得ることができた。最上流側のエレメントの透過水量は、0.85m3 /m2 ・日と耐ファウリング許容値を越えており、長期にわたる使用は不適当な状態であることがわかった。透過水1m3 あたりの電力消費量は、5.0kWhであった。
【0068】
実施例2
外径680μm、内径400μmのポリアクリロニトリル中空糸膜3700本をU字状に束ねた中空糸膜束からなる膜面積12m2 の中空糸膜モジュール19本を1台のステンレス容器に収納してなる中空糸膜モジュールユニットに1パスで海水を通水し、濾過処理を行った。濾過流量は、200m3 /日であり、平均濾過操作圧力は35kPaであった。濾過処理前の海水の濁度は3.0、膜の目詰まり度を表す指標のFI(ファウリングインデックス)値は、測定不能(FI≧6.5)であったが、濾過処理後の海水の濁度は0.1、FI値は1以下であった。この海水を供給液として用いる他は、実施例1と同じ逆浸透膜分離装置を用いて、実施例1と同じ条件で海水淡水化の連続運転を実施した。この結果、海水から実施例1と同量の透過水120m3 /日を収率60%で得ることができた。2000時間の連続運転によっても、この条件において透過水が得られる量(25度C換算値)は変化が認められなかった。
【0069】
比較例2
前処理に中空糸膜モジュールユニットを使用する代わりに、凝集砂濾過装置を使用した以外は実施例2と同等の海水淡水化実験を実施した。凝集砂濾過装置は凝集剤として塩化第二鉄を添加しており、濾過処理後の水質は、濁度0.6、FI値は4.5であった。実施例2と同じ条件で2000時間連続運転した結果、同じ操作条件で透過水量は、116m3 /日と、約3%の低下が認められた。
【0070】
【発明の効果】
本発明により、高濃度溶液から高い収率、少ないエネルギー、より安価に高効率に低濃度溶液をより安定に得ることが可能な逆浸透膜分離装置および逆浸透膜分離方法が提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る逆浸透膜分離装置の一例を示すフロー図である。
【図2】従来の逆浸透膜装置の一例を示すフロー図である。
【図3】本発明に係る加圧ポンプのエネルギー回収装置を具備した逆浸透膜分離装置の一例を示すフロー図である。
【符号の説明】
1:加圧ポンプ
2:1段目逆浸透膜モジュールユニット
3:1段目透過水
4:1段目濃縮液
5:エネルギー回収装置
6:供給液
7:透過水圧力調節弁
8:透過水圧力センサー
9:濃縮液流量調節弁
10:2段目逆浸透膜モジュールユニット
11:2段目透過水
12:2段目濃縮液
Claims (14)
- 海水または塩分濃度1%以上の高濃度かん水を逆浸透分離するための逆浸透膜分離装置であって、供給水昇圧用加圧ポンプの下流に、逆浸透膜モジュールユニットが多段に配置され、前段の逆浸透膜モジュールユニットからの濃縮液流路が次段の逆浸透膜モジュールユニットの供給液流路に連通されているとともに、該逆浸透膜モジュールユニットの最終段以外の全ての逆浸透膜モジュールユニットにおいて、その逆浸透膜モジュールユニットからの濃縮液流路から次段の逆浸透膜モジュールユニットへの供給液流路には昇圧手段を設けることなく、少なくとも1段目の逆浸透膜モジュールユニットの透過水流路には透過水圧力もしくは透過水流量を調節するための手段が設けられていることを特徴とする逆浸透膜分離装置。
- 透過水圧力もしくは透過水流量を調節するための手段が、透過水流路に設けられた圧力調節弁、流量調節弁、圧力エネルギー回収装置のうち少なくとも1つからなることを特徴とする請求項1に記載の逆浸透膜分離装置。
- 透過水および/または最終段の逆浸透膜モジュールユニットの濃縮水の圧力エネルギーを回収する装置を備え、該圧力エネルギーの回収装置を、1段目の逆浸透膜モジュールユニットの供給水昇圧用加圧ポンプに連結していることを特徴とする請求項1または2に記載の逆浸透膜分離装置。
- スケール防止剤の添加手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の逆浸透膜分離装置。
- 1段目の逆浸透膜モジュールユニットの上流側に、前処理としての膜濾過装置を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の逆浸透膜分離装置。
- 少なくとも1段目の逆浸透膜モジュールユニットの透過水流路の耐圧性が2.0MPa以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の逆浸透膜分離装置。
- 多段に配置した逆浸透膜モジュールユニットを用いて海水または塩分濃度1%以上の高濃度かん水を逆浸透分離する逆浸透膜分離方法であって、前段の逆浸透膜モジュールユニットからの濃縮液流路を次段の逆浸透膜モジュールユニットの供給液流路へ連通させるとともに、該逆浸透膜モジュールユニットの最終段以外の全ての逆浸透膜モジュールユニットにおいて、その逆浸透膜モジュールユニットからの濃縮液流路から次段の逆浸透膜モジュールユニットへの供給液流路を昇圧させることなく、少なくとも1段目の逆浸透膜モジュールユニットの透過水圧力もしくは透過水流量を調節することを特徴とする逆浸透膜分離方法。
- 各段の逆浸透膜モジュールユニットの濃縮水の膜面流速について、最も大きい膜面流速を有する逆浸透膜モジュールユニットの濃縮水膜面流速(最大濃縮水膜面流速)と、最も小さい膜面流速を有する逆浸透膜モジュールユニットの濃縮水膜面流速(最小濃縮水膜面流速)とが、下記の関係になるように運転することを特徴とする請求項7に記載の逆浸透膜分離方法。
最大濃縮水膜面流速/最小濃縮水膜面流速≦1.5 - 逆浸透膜モジュールユニット各段から得られる透過水の合計量が、1段目の逆浸透膜モジュールユニットの供給水の50%以上であることを特徴とする請求項7または8のいずれかに記載の逆浸透膜分離方法。
- 逆浸透膜の膜面積あたりの透過流束を0.75m3/m2・日以下とすることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の逆浸透膜分離方法。
- 1段目の逆浸透膜モジュールユニットと最終段の逆浸透膜モジュールユニットにおいて膜面積あたりの標準条件における透過流束が、下記の関係にあることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の逆浸透膜分離方法。
1.0≦第1段目透過流束/最終段透過流束≦1.2 - 透過水および/または最終段の逆浸透膜モジュールユニットの濃縮水の圧力エネルギーを回収して1段目の逆浸透膜モジュールユニットの供給水を加圧するのに用いることを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の逆浸透膜分離方法。
- 少なくとも最終段の逆浸透膜モジュールユニットの供給水に、スケール防止剤、スケール防止剤の錯体、または複合体を含むことを特徴とする請求項7〜12のいずれかに記載の逆浸透膜分離方法。
- 膜濾過装置の透過液を前記1段目の逆浸透膜モジュールユニットの供給液とすることを特徴とする請求項7〜13のいずれかに記載の逆浸透膜分離方法。
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