JPH08109678A - 大屋根の施工法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 揚重作業簡易，架構完成に伴なう手当て作業
簡易なる無支保工大屋根の施工法を提供する。 【構成】 屋根骨組が一方向に架けわたされる梁や立体
トラス等で構成されると共に両端の支持構造部のうち少
なくとも一方がピンヒンジ固定が可能な大空間を覆う大
屋根構造体において、当該大屋根構造体の屋根部所定部
位１２にて２分割した前記ピンヒンジ１１固定側の大屋
根構造体分割部１４を傾倒姿勢のもとで地上付近で屋根
仕上材１５や天井１６等を屋根骨組に取付けて仕上げる
と共に、他方の分割部１９をも立ち上げ仕上げし、しか
る後、前記ピンヒンジ１１固定側の大屋根構造体分割部
１４棟端を揚重したうえ両分割部１４，１９を接合させ
て架構を完成するとして、簡易揚重，簡易架構完成手当
ての施工法を実現した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、大屋根の施工法に関
し、詳しくは屋根骨組が一方向に架けわたされた梁や立
体トラス等で構成された大空間を覆う大屋根構造体の構
築方法である。

【０００２】

【従来の技術】例えば、野球場またはそれに類する競技
場の如き大規模建築物上にドーム形屋根を構築する場合
や、プール場などにカマボコ形屋根を構築する場合に
は、従来、屋根の全域にわたる大規模な支保工を構築
し、その上にクレーンで鉄骨を揚重して組立てる方法に
よって構築されていたが、これでは、仮設支柱が数多く
必要で莫大な資材、労務、工費を要し、また、構築のた
めの準備作業が長くなり高所作業も多いため、多大の落
下養生、安全施設を必要とするなどの問題がある。

【０００３】そこで、屋根骨組と屋根を支持する構造体
を別個に構築し、屋根骨組に取り付けるべき屋根仕上材
料や天井等を地上付近で取付けた後に、屋根全体を押し
上げ、若しくは吊り上げ、屋根を支持する構造体の所定
の位置に設置する、いわゆるプッシュアップ工法若しく
はリフトアップ工法が特開昭５８−１５３８４６号，特
開平６−２６１０３号等に提案されている。すなわち、
特開昭５８−１５３８４６号，特開平６−２６１０３号
にあっては、屋根骨組をこれを支持する構造体を含めて
ピン結合のリンク一体物に地組みしておいて、この全体
をリフトアップ若しくはプッシュアップして所定姿勢に
持ち上げてから各枢点を剛に固定して完成するとしてい
る。これによって、屋根構造材を地上に近いレベルで設
置した状態で屋根の施工および仕上加工までの工程を行
えるために、従来の如く支持構造材を棟上げしつつ屋根
を構築する場合に比べて仮設支柱などの支保工が不要と
なり、作業足場や落下養生も極く一部ですむため、仮設
工事が大幅に低減でき、また高所作業も低減するため省
力化が可能となる。

【０００４】叙上施工法は屋根骨組が一方向に架けわた
された梁や立体トラス等で構成された大空間を覆う大屋
根という一方向両端にのみ支持構造を配するものの場合
にあっても当然適用し得る。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかるに、叙上の従来
の施工法にあっては、被リフトアップ若しくはプッシュ
アップ体はリフト若しくはプッシュの支持点のみで支え
られながら揚重されるものであって、その左右でバラン
スが確保されていることが前提要件であり、左右の反力
を均等化しながら揚重する必要があり、屋根面の骨組が
均質な場合の施工法として適しているが、荷重が左右で
アンバランスとなる屋根には適しないという制約を受け
る。そして、リフトアップ若しくはプッシュアップ点の
バランス調整が極めて煩らわしく、左右非対称形の屋根
の場合には実施が極めて困難である。また、揚重の動き
に対応した逃げを確保の複雑構成の関節点を多設せざる
を得ず、リフトアップ若しくはプッシュアップ後の現場
接合箇所は、２箇所以上発生し、現場接合作業が終了す
るまでの構造体が不安定な時期が長いという欠点があ
る。

【０００６】本発明は、従来の技術の有するこのような
問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすると
ころは、屋根骨組が一方向に架けわたされた梁や立体ト
ラス等で構成された大空間を覆う大屋根構造体を構築す
る場合の無支保工の大屋根の施工において、揚重点での
バランス調整が不要で、揚重後の現場接合も僅少で済
み、構造体不安定が短期な簡易迅速性に優れる大屋根の
施工法を提供しようとするものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明における大屋根の施工法は、屋根骨組が一方
向に架けわたされる梁や立体トラス等で構成されると共
に両端の支持構造部のうち少なくとも一方がピンヒンジ
固定が可能な大空間を覆う大屋根構造体において、当該
大屋根構造体の屋根部所定部位にて２分割した前記ピン
ヒンジ固定側の大屋根構造体分割部を傾倒姿勢のもとで
地上付近で屋根仕上材や天井等を屋根骨組に取付けて仕
上げると共に、他方の分割部をも立ち上げ仕上げし、し
かる後、前記ピンヒンジ固定側の大屋根構造体分割部棟
端を揚重したうえ両分割部を接合させて架構を完成する
としたものである。

【０００８】

【作用】棟端を揚重されるピンヒンジ支持側の大屋根構
造体分割部は、すべて地組みにて仕上げ完成されるの
で、工期短縮と高所作業低減による安全性が確保され
る。他方の分割部の立ち上げについては、大屋根構造体
の一部であると共に対の分割部と接合して初めて架構体
としての強度を発現すれば良い仮設的なものであるの
で、現場施工でもさして仮設設備を要することなくして
小規模構造物として簡単に施工出来るし、プレキャスト
にして持ち込むとしても良く、簡易に同時施行にてなし
得る。

【０００９】ピンヒンジで固定された状態で棟端を揚重
される前記の分割部は、単に当該ピンヒンジを固定枢点
として回動させればよいので、バランス調整など一切無
関係にプッシュアップ若しくはリフトアップさえすれば
よい極めて簡単な揚重作業となる。両分割部の接合を吊
り足場等で行なうと共に該ピンヒンジを固定処理すると
いう僅かな２点の部位を固めるだけで剛な架構が完了し
てしまうので、簡易、迅速性に優れる。

【００１０】

【実施例】実施例について図１〜６を参照して説明する
と、図１，図５はいずれも屋根骨組が一方向に架けわた
される梁や立体トラス等で構成され、両端支持構造部の
うち少なくとも一方をピンヒンジ固定にて仮設が可能な
形に設計の大屋根構造体の例を示し、図１の建物８は一
方向梁１，…を有する大面積平屋根２を支持構造躯体壁
３、３′間に架けわたした箱状の建物で、当該支持構造
躯体壁３、３′に隣接する壁４、４′には別段構造強度
を要求しないタイプのものである。

【００１１】また、図５の建物９は、一方向立体トラス
５、…を有したシエル構造の大面積屋根６を地面に被ぶ
せる態様で支持させた軒先をほとんど接地させた形態の
競技用建物で、両側の壁７，７′には別段構造強度を要
求しないタイプのものである。上記の建物８の支持構造
躯体壁３、３′の基部はいずれも直状でピンヒンジ固定
設計が可能であり、また、建物９の一方の接地軒先１０
は直状にカットされていてピンヒンジ固定設計が可能で
ある。建物８について本発明施工法を適用すると図２〜
図４の如くである。すなわち、一方の支持構造躯体３の
基部をピンヒンジ１１止め処理すると共に当該支持構造
躯体３から連らなる大面積平屋根２を過半部位１２にて
カットして分割したところの過半部１３を、支持構造躯
体３と一体に地組み施工する。

【００１２】しかして、この分割部１４は、図２ａに示
す如くプッシュアップ装置１７に棟端を支持させた傾倒
姿勢にて屋根仕上材１５や天井１６を取付ける仕上げが
施こされる。一方、残りの支持構造躯体３′とこれから
連らなる残途部１８から成る他方の分割部１９は仮設の
小規模構造体の要領で現場施工若しくはプレキャスト持
ち込みにて、同じく仕上げを施こされて立ち上げられ
る。図２０は分割部１９をサポートする仮設用控えトラ
スを示す。しかる後、プッシュアップ装置１７を作動さ
せて分割部１４の棟端を所定のレベルに持ち上げ、両分
割部１４、１９の接合部２１を図示省略の吊り足場等を
用いてジョイントして架構を完成する（図３）。架構が
完成したので、プッシュアップ装置１７を撤去し、接合
部２１周辺の屋根仕上材１５や天井１６等のダメ工事を
行ない、役目を終えたピンヒンジ１１をコンクリートの
根巻き２２で固定し、仮設用控えトラス２０を撤去する
（図４）。

【００１３】建物９について本発明施工法を適用すると
図６の如くである。すなわち、建方用クレーン２３、…
を用いてベント構台２４、…を組立て、ピンヒンジ（図
示省略）が配される一方の接地軒先１０を有するシエル
構造の大面積屋根６の大分割部２５並びに残余の小分割
部２６を夫々施工する（ａ，ｂ）。共に仕上げまでとり
行なわれ、大分割部２５はグランドレベルの基礎２７上
に支持され、小分割部２６はグランドレベルよりやや立
ち上がった支持躯体２９上に支持されて立ち上げられ
る。ベント構台２４の棟端を撤去した大分割部２５をベ
ント構台２４でサポートしたままの小分割部２６上に配
したウインチ２８でリフトアップし（プッシュアップで
も良い）、接合部のジョイント処理を行なう（ｃ）。こ
の例の如く、ピンヒンジを枢点に回動揚重される地組躯
体が大きな高さを有するものとなり揚重機械の使用高さ
範囲が限定される航空法による高さ制限があるような場
合、本発明はこの要件を容易にクリアし得る利点を奏す
る。

【００１４】

【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成され
ているので、以下に記載されるような効果を奏する。 （１）施工時の高所作業が少なくなり、安全性が高くな
る。 （２）構造体が不安定な施工時の期間および、施工期間
の短縮がはかれる。 （３）施工コストが安くなる。 （４）屋根の荷重が左右でアンバランスの場合でも適用
可能である。 （５）また、上方に機材が突き出ることのないプッシュ
アップ装置等で施工する場合は、施工時の施工機械の使
用高さ範囲が限定される航空法による高さ制限がある地
域で有効な施工法である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明が適用される建物の全体図である。

【図２】ａ，ｂは図１に示す建物についての本発明の施
工手順を示す正，平面図である。

【図３】同じく施工手順を示す正面図である。

【図４】ａ，ｂは同じく施工手順を示す正，平面図であ
る。

【図５】本発明が適用される建物の全体図である。

【図６】ａ，ｂ，ｃは図５に示す建物についての本発明
の施工手順説明図である。

【符号の説明】

１ 一方向梁 ２ 大面積平屋根 ３、３′ 支持構造躯体壁 ４、４′ 壁 ５ 一方向立体トラス ６ 大面積屋根 ７、７′ 壁 ８ 建物 ９ 建物 １０ 接地軒先 １１ ピンヒンジ １２ 過半部位 １３ 過半部 １４ 分割部 １５ 屋根仕上材 １６ 天井 １７ プッシュアップ装置 １８ 残途部 １９ 分割部 ２０ 仮設用控えトラス ２１ 接合部 ２２ コンクリートの根巻き ２３ 建方用クレーン ２４ ベント構台 ２５ 大分割部 ２６ 小分割部 ２７ グランドレベルの基礎 ２８ ウインチ ２９ 支持躯体

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 油川 真広 東京都中央区銀座八丁目21番１号 株式会 社竹中工務店東京本店内 (72)発明者 山本 秀一 東京都中央区銀座八丁目21番１号 株式会 社竹中工務店東京本店内 (72)発明者 高村 光夫 札幌市中央区大通西四丁目１番地 株式会 社竹中工務店北海道支店内 (72)発明者 小田 信一 札幌市中央区大通西四丁目１番地 株式会 社竹中工務店北海道支店内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 屋根骨組が一方向に架けわたされる梁や
   立体トラス等で構成されると共に両端の支持構造部のう
   ち少なくとも一方がピンヒンジ固定が可能な大空間を覆
   う大屋根構造体において、当該大屋根構造体の屋根部所
   定部位にて２分割した前記ピンヒンジ固定側の大屋根構
   造体分割部を傾倒姿勢のもとで地上付近で屋根仕上材や
   天井等を屋根骨組に取付けて仕上げると共に、他方の分
   割部をも立ち上げ仕上げし、しかる後、前記ピンヒンジ
   固定側の大屋根構造体分割部棟端を揚重したうえ両分割
   部を接合させて架構を完成するとしたことを特徴とする
   大屋根の施工法。
2. 【請求項２】 大屋根構造体が平屋根を支持構造躯体壁
   が支える建物である請求項１記載の大屋根の施工法。
3. 【請求項３】 大屋根構造体がシエル構造の如く支持構
   造部の軒先をほとんど接地させる態様の建物である請求
   項１記載の大屋根の施工法。