JPH0810642B2 - 正特性サーミスタ装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は正特性サーミスタ装置に係り、特に放熱フィ
ンを用いた正特性サーミスタ装置の改良に関する。

［従来の技術］ 従来、この種の正特性サーミスタ装置としては、第９
図に示すように、正特性サーミスタ基板１の対向主面に
対向電極３を溶射、イオンプレーティングもしくは印刷
等によって例えば10μｍ程度の厚さで形成し、帯状の金
属薄板を波形に形成したコルゲートフィン５の両側の山
部をフィンカバー７で固定するとともに、それらの片方
のフィンカバー７を各々対向電極３に電気的に導通した
状態で接着剤（図示せず）によって固定した構成を有し
ていた。

また、第10図に示すように、対向主面に対向電極３を
形成した正特性サーミスタ基板１を間に置いて放熱フィ
ン９で挟み、これら放熱フィン９をねじ11で緊締して正
特性サーミスタ基板１を挟持してなる構成も知られてい
る。なお、符号13はナットである。

そして、これらの正特性サーミスタ装置は、対向する
放熱フィン５や９の両端に交流電圧を印加して正特性サ
ーミスタ基板１を発熱させ、発熱装置として使用され
る。

［発明が解決しようとする課題］ このような構成の正特性サーミスタ装置では、放熱フ
ィン５、９が接着剤やねじ11によって対向電極３に圧着
されているから、対向電極３から放熱フィン５、９への
熱伝導が不十分で、発熱量を増加させるために改良すべ
き余地がある。

本発明はこのような状況の下になされたもので、放熱
フィンを用いた構成において良好な発熱量が得られ、安
価かつ信頼性の高い正特性サーミスタ装置の提供を目的
とする。

［課題を解決しようとする手段］ このような課題を解決するために本発明の正特性サー
ミスタ装置は、正特性サーミスタ基板の対向主面に厚さ
50μｍ〜300μｍの対向電極をで密着形成し、金属薄板
から成形されるとともに複数の尖頭部を有する放熱フィ
ンを、それら尖頭部をその対向電極にろう付けもしくは
溶接にて固定して構成されている。

そして、その正特性サーミスタ基板の対向主面には、
表面中心線の平均粗さで深さ２μｍ〜30μｍの凹凸を形
成して構成することが可能である。

また、その放熱フィンはアルミニウム、銅、鉄、これ
らを主成分とした合金、又は鋼板に亜鉛、ニッケル、ア
ルミニウムもしくは錫をメッキした材料にて形成し、そ
の対向電極はアルミニウム、銅、亜鉛、ニッケルもしく
はこれらを主成分とした合金材料から形成するとよい。

さらに、上記正特性サーミスタ基板の端面を膨出形成
してもよい。

［作用］ このような手段を備えた本発明は、対向電極が従来の
構成に比べて厚く形成されているので放熱フィンへの熱
伝導率が良好となるし、放熱フィンの尖頭部が対向電極
に固定されて対向電極の大部分が空気に触れることとな
って対向電極自体も放熱機能を有する。

また、放熱フィンの尖頭部が対向電極に固定されてい
るから、放熱フィンの熱膨張率に差があっても、放熱フ
ィンがそれらの熱膨張による変形を吸収可能となり、加
熱冷却サイクル時における放熱フィンと対向電極間の固
定強度を維持し易い。

もっとも、対向電極が厚くなると、対向電極と正特性
サーミスタ基板の熱膨張率の差が顕著になって対向電極
の剥離強度が問題となるおそれがあるが、正特性サーミ
スタ基板の対向主面に凹凸を形成すると対向電極と正特
性サーミスタ基板との固着強度が向上する。

［実施例］ 以下本発明の実施例を図面を参照して説明する。

第１図は本発明に係る正特性サーミスタ装置の一実施
例を示す断面図である。

図において、長方形の正特性サーミスタ基板15は従来
公知の材料、例えばチタン酸バリウム系の正特性セラミ
ック材料から形成されており、アルミニウム材料を溶射
してその両主面に厚み100μｍの対向電極17が形成され
ている。

この対向電極17には、略一定幅の金属薄板、例えばア
ルミニウム帯板を波型に屈曲形成した第２図のようなコ
ルゲートフィン19が一方の山部をろう付けして固定され
ており、そのコルゲートフィン19における山部間にはコ
字状に切り起したルーバー21が形成されている。

なお、本発明におけるろう付けには狭義の半田付けを
含むものであり、符号23はろう材である。

各コルゲートフィン19の他方の山部には、アルミニウ
ム板からなるフィンカバー25がろう付けによって固定さ
れており、第３図の外観図で示すように、各フィンカバ
ー25の端部には端子板27が取り付けられている。

そして、対向電極17、コルゲートフィン19およびフィ
ンカバー25を同時にろう付けすると、量産性に寄与す
る。

このように構成された本発明の正特性サーミスタ装置
では、対向電極17が厚み100μｍと厚く形成されている
ので、熱伝導率が良好となって正特性サーミスタ基板15
からの発熱が良好にコルゲートフィン19に伝導され、高
い発熱量を得ることができる。

また、コルゲートフィン19の山部が対向電極17に固定
され、対向電極19において山部間すなわち対向電極17の
大部分が空気に触れることとなり、対向電極17も放熱板
として機能して発熱量の増大に寄与する。

本発明者の実験によれば、ピッチ２〜5mmのコルゲー
トフィン19を用いた第１図の構成において、縦24mm、横
15mm、厚み2.5mmの正特性サーミスタ基板15に種々の厚
みの対向電極17を形成して発熱量を測定したところ、第
４図に示すように、略100W程度の発熱量を得るのに50μ
ｍ以上必要であり、300μｍ以上は必要でないことが分
かった。

さらに、屈曲したコルゲートフィン19の山部が対向電
極17に飛び飛びに固定されているから、コルゲートフィ
ン19、対向電極17および正特性サーミスタ基板15の熱膨
張率に差があっても、コルゲートフィン19がそのピッチ
を変化させて熱膨張による変形を吸収するから、加熱冷
却を繰り返す温度サイクル時において、コルゲートフィ
ン19と対向電極17間の剥離が生じ難い。

上述した本発明におけるコルゲートフィン19は一例で
あり、これに限定されない。

例えば、第５図Ａに示すようにアルミニウム帯をジグ
ザグ状に折り曲げて放熱フィン29を形成してその尖頭部
を正特性サーミスタ基板15の対向電極17に固定する構成
や、同図Ｂに示すようにアルミニウム帯を矩形状に折り
曲げて形成した放熱フィン31の頭部を対向電極17に固定
する構成、更には、アルミニウム帯から所定の間隔を置
いて複数のアルミニウム片33aを立設させて放熱フィン3
3を形成し、そのアルミニウム片33aの尖頭部を対向電極
17にろう付けする構成も実施可能であり、第４図と同様
な発熱特性が得られる。

要は、尖頭部を有する放熱フィンのその尖頭部を対向
電極17にろう付けで固定すれば本発明の目的達成が可能
であり、放熱フィンの尖頭部とは第１図や第５図Ａ〜Ｃ
のように先端が尖ったものの他に台形状や曲面状の頭部
も含むものである。

そして、ろう付けに当たり、良好な作業性および固着
強度を確保する観点から、放熱フィンを構成する材料は
アルミニウムに限らず銅、鉄、これらを主成分とした合
金、又は鋼板に亜鉛、ニッケル、アルミニウムもしくは
錫をメッキした材料が好適し、対向電極17を構成する材
料もアルミニウム以外に銅、亜鉛、ニッケルもしくはこ
れらを主成分とした合金材料が好適し、これらの材料に
合わせてろう材（半田材）を選定すればよい。ろう付け
以外に溶接も実施可能である。

ところで、本発明のような正特性サーミスタ装置は、
量産性を確保する観点から、対向電極17を形成した正特
性サーミスタ基板15を複数個並べてコルゲートフィン19
をろう付けすることが行なわれるが、正特性サーミスタ
基板15を並べてろう付けすると、毛細管現象によってろ
う材23が正特性サーミスタ基板15の端面にたれ流れて対
向電極17間をショートさせるおそれがある。

そこで、正特性サーミスタ基板15の端面部を、第６図
Ａ〜Ｄのように断面角型、断面台形状、断面凸状、断面
半円状等に膨出形成するとよい。具体的には第６図Ａ破
線のように正特性サーミスタ基板15の角部を切削する。

また、第３図のような構成において、正特性サーミス
タ基板15、コルゲートフィン19、フィンカバー25および
フィンカバー25と端子板27の接続点を含めて、例えばシ
リコーン系もしくはフロン系の耐熱性および絶縁性塗料
で全体をコーティングすると、万一コルゲートフィン19
やフィンカバー25に触れてもショートもしくは感電し易
い。

上述した構成においても対向電極17の厚みを厚くする
と、正特性サーミスタ基板15と対向電極17の熱膨張率の
差に基づいて正特性サーミスタ基板15の発熱サイクル時
に対向電極17が正特性サーミスタ基板15から剥離かる心
配がないわけではないが、第７図に示す構成を用いるこ
とによって容易に解消される。

すなわち、正特性サーミスタ基板15の対向主面には、
その表面中心線の平均粗さで深さ２μｍ〜30μｍの凹凸
35が複数形成されており、正特性サーミスタ基板15の対
向主面にはその凹凸35にも充填されるように対向電極17
がアルミニウム材料にて溶射によって密着形成されてい
る。

このように、正特性サーミスタ基板15の対向主面に凹
凸35を形成して対向電極17を密着形成すれば、密着強度
が向上して対向電極17が正特性サーミスタ基板15から剥
離し難くなる。

本発明者は、正特性サーミスタ基板15の原料粉末の粒
度や焼成条件等を変化させたり、その表面にサンドブラ
ストを吹き付けて正特性サーミスタ基板15の表面中心線
の平均粗さ（Ra）を変化させ、その表面にアルミニウム
材料を溶射して対向電極17を形成し、その引っ張り強度
を調べた。

その結果、第８図に示すように、好ましいとされる引
っ張り強度（0.8Kg/mm²）以上の引っ張り強度を得るた
めには、表面中心線の平均粗さで深さ２μｍ以上の凹凸
35があればよく、30μｍを越えるとその上に形成される
対向電極17の放熱効果の低下を招き易いから、好ましく
ないことが分かり、上述した構成の有用なことが確かめ
られた。

［発明の効果］ 以上説明したように本発明は、正特性サーミスタ基板
の対向主面に厚さ50μｍ〜300μｍの対向電極を形成し
て放熱フィンの尖頭部を固定したから、対向電極からの
放熱フィンへの良好な熱伝導が確保されるとともに、対
向電極のかなりの部分が露出して放熱機能を有するか
ら、良好な発熱量が得られる。

また、その正特性サーミスタ基板の対向主面に、表面
中心線の平均粗さで深さ２μｍ〜30μｍの凹凸を形成す
れば、放熱フィンの尖頭部を対向電極に固定する構成と
あいまって、対向電極を厚くしても、特に、その対向電
極の正特性サーミスタ基板からの剥離を抑えて良好な発
熱や機械的強度を確保できる。

さらに、放熱フィンをアルミニウム、銅、鉄、これら
を主成分とした合金、又は鋼板に亜鉛、ニッケル、アル
ミニウムもしくは錫をメッキした材料にて形成し、その
対向電極をアルミニウム、銅、亜鉛、ニッケルもしくは
これらを主成分とした合金材料から形成する構成では、
ろう付けや溶接加工が容易で熱伝導率も良好であり、安
価である。

さらにまた、上記正特性サーミスタ基板の端面を膨出
形成する構成では、製品の量産時に対向電極の短絡を生
じ難く、製造歩留まりが向上する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る正特性サーミスタ装置の一実施例
を示す断面図、第２図は第１図の放熱フィンを示す斜視
図、第３図は本発明の正特性サーミスタ装置の概観を示
す斜視図、第４図は対向電極の厚みと発熱電力の関係を
示す特性図、第５図Ａ〜Ｃは本発明における放熱フィン
の他の実施例を示す要部斜視図、第６図Ａ〜Ｄは本発明
における正特性サーミスタ基板の他の実施例を示す要部
断面図、第７図は本発明の他の実施例を示す要部断面
図、第８図は第７図における凹凸の深さと発熱電力特性
を示す図、第９図および第10図は従来の正特性サーミス
タ装置を示す断面図である。 １、15……正特性サーミスタ基板 ３、17……対向電極 ５、19……放熱フィン（コルゲートフィン） ７、25……フィンカバー ９、29、31、33……放熱フィン 11……ねじ 21……ルーバー 23……ろう材 27……端子板 35……凹凸

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】正特性サーミスタ基板と、 この正特性サーミスタ基板の対向主面に厚さ50μｍ〜30
   0μｍで密着形成された対向電極と、 金属薄板から成形されるとともに複数の尖頭部を有して
   なりそれら尖頭部を前記対向電極にろう付けもしくは溶
   接にて固定されてなる放熱フィンと、 を具備してなることを特徴とする正特性サーミスタ装
   置。
2. 【請求項２】前記正特性サーミスタ基板の対向主面に表
   面中心線の平均粗さで深さ２μｍ〜30μｍの凹凸が形成
   され、前記対向電極が前記対向主面に密着形成されてな
   る請求項１記載の正特性サーミスタ装置。
3. 【請求項３】前記放熱フィンがアルミニウム、銅、鉄、
   これらを主成分とした合金、又は鋼板に亜鉛、ニッケ
   ル、アルミニウムもしくは錫をメッキした材料からな
   り、前記対向電極がアルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル
   もしくはこれらを主成分とした合金材料からなる請求項
   １もしくは２記載の正特性サーミスタ装置。
4. 【請求項４】前記正特性サーミスタ基板の端面が膨出さ
   れてなる請求項１もしくは２記載の正特性サーミスタ装
   置。