JPH0793550B2 - デジタルフィルタ - Google Patents

デジタルフィルタ

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JPH0793550B2
JPH0793550B2 JP14677693A JP14677693A JPH0793550B2 JP H0793550 B2 JPH0793550 B2 JP H0793550B2 JP 14677693 A JP14677693 A JP 14677693A JP 14677693 A JP14677693 A JP 14677693A JP H0793550 B2 JPH0793550 B2 JP H0793550B2
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喜久治 田中
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】この発明は時系列データをデジタル
的にフィルタリング処理するデジタルフィルタに関し、
特にデジタルフィルタにおけるあふれ(オーバーフロ
ー、アンダーフロー)処理技術に関する。
【0002】
【従来技術とその問題点】一般に、デジタルフィルタに
おいてはその処理データが有限長のビットで実現される
ため、それによって表現可能な大きさの範囲は有限であ
り、その限界を越えるとオーバーフローやアンダーフロ
ー(以下、まとめて、単にオーバーフローということに
する)が生じる。特に固定小数点表現のデータの場合に
は、表現可能な大きさの範囲が制約されるため、オーバ
ーフローが生じやすい。浮動小数点方式の場合はオーバ
ーフローはほとんど生じないが演算処理や演算回路が複
雑化することを避けられない。オーバーフロー対策でと
られる通常の手段は、オーバーフローが生じたときに、
そのデータをデジタルフィルタのシステムで表現可能な
最大値にクリップすることである。従来技術において、
このようなクリップ手段は、オーバーフローが生じる可
能性のあるすべての箇所に設けられる。一例として、図
7に2次のIIR(無限インパルス応答)デジタルフィ
ルタの基本構成を示す。時系列を成す入力信号のサンプ
ルが与えられると、係数乗算器20でそのサンプルをK
倍し、その結果を入力加算器40で、遅延素子60、8
0からの遅延サンプルに基づくフィードバック値(巡回
成分)に加算する。フィードバック値は直前遅延素子6
0の出力を係数乗算器100でB1倍したものと、2つ
前の遅延素子80の出力を係数乗算器120でB2倍し
たものとを加算器140で加算することで得られる。こ
のフィードバック値と入力信号の現サンプルとの加算結
果は加算器220にて遅延素子60と80の出力に基づ
くフォーワード値と加算され、その結果がデジタルフィ
ルタの出力信号を形成する。フィードバック値は遅延素
子60からの1遅延時間前のデータを係数乗算器160
でC1倍したものと、遅延素子80からの2遅延時間前
のデータを係数乗算器180でC2倍したものとを加算
器200で加算することによって得られる。加算器40
の出力である入力信号の現サンプルとフィードバック値
との和は遅延素子60に入力され、遅延素子60にあっ
たデータは遅延素子80に移される。図7に示すデジタ
ルフィルタの場合、そのフィードバックループ(伝達関
数の分母)に係る巡回部分(要素20、40、60、8
0、100、120、140に係る部分)におけるオー
バーフローについて考慮する必要がある。図7のデジタ
ルフィルタが発振を起こさない条件(システム安定条
件)を満たすためには、z平面上においてフィルタの極
(伝達関数の分母の根)が、単位円内になければならな
いので、これから係数K、B1、B2の取り得る範囲
が、 0<K<1 −2<B1<2 −1<B2<0 に制限される。この範囲内で、オーバーフローの可能性
を検討すると、その箇所は係数乗算器100の出力、加
算器14の出力、加算器40の出力ということになる。
この点に鑑み、従来技術では第8図に示すように2次I
IRデジタルフィルタを構成する。図8において、係数
乗算器2、加算器4、遅延素子6、8、係数乗算器1
0、12、加算器14は、基本構成図(第7図)におけ
る、係数乗算器20、加算器40、遅延素子60、8
0、係数乗算器100、120、加算器140に夫々、
対応するように配置される。上述したオーバーフローの
防止のため、係数乗算器16の出力、加算器14の出
力、加算器4の出力に、夫々、クリップ回路16、1
8、20が挿入される。また、基本構成の2次IIRデ
ジタルフィルタ(図7)のフォーワード部分(要素6
0、80、160、180、200、220から成る非
巡回部)において、加算処理や係数C1、C2の値次第
によってその径路上にオーバーフローが生じる可能性を
除くため、2つ前の遅延素子6の出力をそのまま、加算
器22にて、加算器4よりクリッパ20を通ったデータ
と加算し、その加算結果をシフト回路24で1/2にす
るとともに、1つ前の遅延素子6の出力をそのまま加算
器26でシフト回路24からの出力と加算し、その結果
をシフト回路28で1/2にしている。このフォーワー
ド部(伝達関数の分子部)の構成は、基本構成(図7)
のフォーワード部において、係数C1=2、係数C2=
1としたものに相当する。従来技術の欠点は、図8に例
示されるように、オーバーフロー対策のために、その可
能性のあるすべての箇所にクリッパを設けなければなら
ず、その数が比較的多くてコスト高になってしまうこと
である。別案としてオーバーフローが発生しにくいよう
にデータのダイナミックレンジを広くとることも考えら
れるが、クリッパを不要とする代りに、演算器やバスの
サイズの増大という犠牲を払わなくてはならない。
【0003】
【発明の目的】したがって、この発明の目的は、デジタ
ルフィルタの回路規模をコンパクトにしつつ、特に、使
用するクリップ手段の個数を低域しながら有効なオーバ
ーフロー対策をとることができるデジタルフィルタを提
供することである。
【0004】
【発明の構成、作用】この発明によれば、巡回ループ上
において、信号を遅延する少なくとも1つの遅延手段
と、信号にフィードバック係数を乗算する少なくとも1
つのフィードバック用係数乗算手段と、信号同士を加算
する少なくとも1つの加算手段とを備え、固定小数点の
デジタルデータで表現される入力信号をフィルタリング
処理して出力信号を生成する無限インパルス応答型のデ
ジタルフィルタにおいて、上記入力信号を上記巡回ルー
プで生成したフィードバック信号と加算する入力加算手
段の出力信号がオーバーフローするときにその信号を所
定値にクリップするクリップ手段を設けるとともに、上
記フィードバック用係数乗算手段の出力信号におけるオ
ーバーフローの発生の可能性を除去する除去手段とを設
けたことを特徴とするデジタルフィルタが提供される。
この構成によれば、フィードバック用係数乗算手段の出
力側においてオーバーフローは発生しないのでそこにク
リップ手段を設ける必要はなくなり、デジタルフィルタ
の構成が簡素化できる。好ましくは、上記除去手段は上
記フィードバック用係数乗算手段で使用するフィードバ
ック係数の取り得る範囲をオーバーフロー発生レベルに
対応する値より低い範囲に制限する係数範囲制限手段で
構成される。一般に、フィードバック係数の範囲を1以
下に制限すれば、その範囲内のフィードバック係数で信
号を乗算してもオーバーフローを発生することはない。
更に、フィードバック用係数の取り得る範囲を小さく制
限すれば、複数のフィードバック係数乗算器の出力を加
算する加算手段の出力におけるオーバーフローの可能性
も除去可能である。例えば、2つの信号を加算する2入
力加算器の場合、その2つの信号の大きさが、数値表現
可能な最大値の1/2以下であれば加算結果にオーバー
フローは生じない。したがって、2次の無限応答型デジ
タルフィルタにおいて第1と第2のフィードバック用係
数乗算手段におけるフィードバック係数を1/2より小
さくすれば、この2つのフィードバック用係数乗算手段
の出力同士を加算する加算手段の出力側にもクリップ手
段は不要になる。一般に、N個のフィードバック用係数
乗算手段の出力の和をとってフィードバック信号(デジ
タルフィルタの入力信号に加算される信号)を形成する
N次巡回形デジタルフィルタにおいては、各フィードバ
ック用係数乗算手段の係数範囲を1/Nより小さくする
ことにより、フィードバック用係数乗算手段の出力の和
をとっても、オーバーフローは発生しなくなる。更に、
この発明のもう1つの特徴として、上記入力加算手段の
出力側に上記係数範囲制限手段のフィードバック係数の
制限に依るフィルタの特性(デジタルフィルタの伝達関
数)の変化を補償する補償手段を設けることができる。
例えば、ある伝達関数を表現するために、b1、b2、
……bNのフィードバック係数を使用するデジタルフィ
ルタを基準構成として想定する。ここで、フィードバッ
ク係数乗算手段の各出力にオーバーフローの可能性と、
フィードバック係数乗算手段の各出力の和のオーバーフ
ローの可能性を除去するため、各フィードバック係数乗
算手段の各フィードバック係数を1/Mに制限したとす
る。即ち、b1、b2……bNの代りに、b1/M、b
2/M……bN/Mを使用するわけである。これにより
得られるデジタルフィルタの伝達関数は基準となるデジ
タルフィルタの伝達関数とは明らかに異なるものとな
り、詳細には、分母のz-1、z-2……z-Nの項にb1/
M、b2/M……bN/Mの係数が付いたものになる。
そこでこの発明の上記特徴に従い、入力加算手段の出力
側に、M倍の乗算器のような補償手段を設けると、上記
分母のz-1、z-2……z-Nの項はb1、b2……bNに
補償される。見方をかえると、入力加算手段の出力→N
個の遅延手段→N個のフィードバック係数乗算手段→
(N−1)個の2入力形フィードバック乗算出力加算手
段→入力加算手段を一巡して形成されるN個の巡回ルー
プについて、各巡回ループI(I=1〜N)を通る信号
に着目すると、その信号はフィードバック係数乗算手段
でbI/M倍されるが、入力加算手段の出力に設けたM
倍乗算手段によってM倍されるので、結果、巡回ループ
を巡る都度、bI倍されることになり、これは、基準構
成のデジタルフィルタの場合と同様になる。このこと
は、両デジタルフィルタの特性が類似したものになるこ
とにほかならない。もっとも、入力加算手段の出力ライ
ンは、デジタルフィルタの入力信号がダイレクトに通る
径路(入力径路、ダイレクト径路)でもあるので、補償
用のM倍乗算手段により、入力径路を通る入力信号はM
倍されることになり、これは結果として、基準のデジタ
ルフィルタの出力をM倍したものになる。これについて
も、基準のデジタルフィルタの出力レベルに一致させた
いのであれば、入力径路上のなかで巡回ループ以外のと
ころに出力レベル補償用の1/M倍乗算手段を設ければ
よい。好ましくは、入力加算手段の入力ラインに1/M
倍乗算手段を設けるのがよく、これにより、デジタルフ
ィルタの主要部におけるデータ長やデータバスサイズを
最小化できる。
【0005】
【実施例】以下、図面を参照してこの発明の実施例を説
明する。図1は本実施例の構成であり、この発明を2次
のIIRデジタルフィルタに適用した例である。比較し
やすいように、図8の従来構成と図1の本構成におい
て、同様な素子には同様の参照番号を付してある。第1
に注目すべき差異はクリッパの数が減少している点であ
る。即ち、本実施例の場合、クリッパは32で示すよう
に、入力信号とフィードバック値とを加算する加算器4
の出力側に1つ設けられるだけである。第2に、フィー
ドバック用の係数乗算器の係数が変更されている点であ
る。即ち、従来構成(図8)ではフィードバック係数乗
算器10の係数はB1であり、その取り得る範囲は−2
<B1<2であり、フィードバック係数乗算器12の係
数はB2であり、その取り得る範囲は−1<B2<1で
ある。これに対し、本実施例(図1)では、10に対応
する係数乗算器36の係数b1はb1=B1/4であ
り、したがってその取り得る範囲は−1/2<b1<1
/2であり、12に対応する係数乗算器38の係数b2
はb2=B2/4であり、したがって、その取り得る範
囲は−1/4<b2<1/4に縮少化されている。更
に、異なる点として、係数乗算器2の前段に、入力信号
を1/4に縮少するシフト回路30が設けられ、クリッ
プ32の出力段に信号を4倍に拡大するシフト回路34
が設けられる。
【0006】後述するように、本実施例(図1)の構成
は、オーバーフローが多くの箇所で起きないように工夫
したものであり、特に、フィードバックループにおける
係数乗算器36の出力、加算器14の出力においてオー
バーフローが生じないようにしている。
【0007】なお図1では、各バスのサイズを数字で付
してある。数字に従うと、第1図の2次IIRデジタル
フィルタは16ビットの入力信号を処理して16ビット
の出力信号を生成する。内部バスは基本的には18ビッ
トサイズであり、加算器4、22、26の出力では正し
い加算結果の必要性、あるいはクリッパでのオーバーフ
ローの判定のために一時的に19ビットになる。また、
基本演算の形式は固定小数点方式になっている。
【0008】詳細に説明すると、シフト回路30は16
ビットの入力データを1/4倍にして18ビットのデー
タを生成する。図2は、2の補数表現の2進データを想
定した場合において、正の2進入力データ16ビットに
対するシフト回路30の動作を例示したものである。便
宜上、小数点の位置は入力データの最下位ビットの右に
位置すると想定してある。固定小数点方式なので、1/
4倍後の18ビット2進データの小数点位置はビット1
とビット2の間に位置することになる(ビット0とビッ
ト1が小数以下の桁であると考えて)。正数なので、1
/4倍処理の結果、符号ビット17=0に続けて、ビッ
ト16=ビット15に0のように2つゼロビットが続く
ことになる。これは、1/4シフタ30の出力データが
図1のデジタルフィルタシステムで表現可能な数値範囲
の1/4以内にあることを表わす(図6の(A)、
(B)、(C)参照)。
【0009】1/4シフタ30の出力は係数乗算器2で
K倍されるが0<K<1なので、乗算器2の出力も、図
6(C)に示すように、依然として、数値表現可能な範
囲の1/4以内に収まる。
【0010】K倍係数乗算器2を経た入力信号(18ビ
ット)は加算器14からのフィードバック信号(18ビ
ット)と加算され、19ビットの加算結果をもたらす。
加算器4における加算例を図3の(A)、(B)、
(C)に示す。この例ではK出力もフィードバックも共
に比較的大きな正数であり、加算結果の符号ビット18
=“0”に続く上位3ビット(ビット17〜15)のな
かに、“1”が含まれている(図の例ではビット15=
“1”)。このため、これをそのままシフタ34で4倍
したとすると、18ビット固定小数点方式のデジタルフ
ィルタシステムで表現可能な正の最大値(2N−1=2
17−1:ここではビット0の重みを20=1としてい
る)を超えてしまう。したがって、潜在的にオーバーフ
ローが発生していることになる。この場合、クリッパ3
2と4倍シフタ34により4倍シフタ出力が、デジタル
フィルタシステムで数値表現可能な正の最大値(理想的
には217−1であるが、単純な右シフト×2の4倍シフ
タの場合にシフト後の下位2ビットがゼロになるとする
と217−4となるが、実質上理論最大値に等しい)にな
るように処理する。即ち、クリッパ32では加算結果が
デジタルフィルタシステムで表現可能な数値範囲の1/
4以内にあるかどうかを調べ、1/4範囲外にあること
を検出した場合には、システムで表現可能な最大値の1
/4にクリップし、例えば正側で1/4範囲外に出たと
きには、図3(D)に示すように、18ビットデータの
上位3ビット(ビット15〜17)をゼロとし、下位1
5ビット(ビット0〜14)をオール1とする正クリッ
プデータを生成し、4倍シフタ34を通したときにシス
テムで表現可能な最大値(図3(E)参照)が得られる
ようにする。
【0011】一方、図4(A)に例示するように、加算
器4の出力が4倍シフタ34で4倍した場合にシステム
で表現可能な範囲内に収まるような場合(正のときは加
算結果19ビットのうち上位4ビットがオール“0”、
負のときには上位4ビットがオール“1”)には、クリ
ッパ32は、加算結果から最上位ビット18を除いたも
のをそのまま通し(図4(B))、それが、シフタ34
で4倍される。結果は加算器4の出力が表現する値を4
倍したものとなる。
【0012】以上の点は図6を参照すると更によく理解
できる。図6(C)に示すように、K出力はシステムで
表現可能な数値範囲の1/4以内(−2N-2〜2N-2
1)に収まるが、同図D)に示すように、加算器14の
出力範囲(フィードバック値の範囲)はシステムで表現
可能な数値範囲(−2N〜2N−1)をとるので、両デー
タの値いかんによっては、図6(E)のOFで示すよう
に、両者を加算した場合に上述した潜在的なオーバーフ
ローが生じる。右方のオーバーフロー(正のオーバーフ
ロー)は、代表的には正値のK出力と正値のフィードバ
ック値との加算で生じる可能性があり、左方のオーバー
フロー(負のオーバーフロー、即ちアンダーフロー)は
負値のK出力と負値のフィードバック値との加算で生じ
る可能性がある。そこで加算結果の4倍が正のオーバー
フローの範囲内になったときは、クリッパ32と4倍シ
フタとで正の最大値にクリップし、負のオーバーフロー
の範囲内になったときは負の最大値にクリップしたもの
を、加算結果の4倍とみなし(図6(F))、加算結果
が正常な範囲NORM内にあるときには、単にその値を
4倍にする。
【0013】この実施例の場合、いずれのフィードバッ
ク用係数乗算器36、38もその係数が1/2未満にな
る(−1/2<B1/4<1/2、−1/4<B2/4
<1/4)ので、いずれの係数乗算器36、38の出力
側でもオーバーフローは生じない。一方、従来例(図
8)の場合は、係数乗算器12の方はその係数B2範囲
が−1<B2<1なのでオーバーフローは生じないが、
係数乗算器10の方は、その係数B1の絶対値が1を超
える可能性があるため、オーバーフローが生じることが
ある。更に、係数乗算器36、38の各係数が1/2未
満であることから、この2つの係数乗算器36、38の
出力の和をとる加算器14においても、加算結果にオー
バーフローが生じないことになる。一方、従来例(図
8)の場合は、この加算器14の加算動作によっても、
オーバーフローの可能性が生じる。1次あるいは3次以
上のIIRデジタルフィルタに拡張して説明すると、そ
のN個(N=1またはN≧3)のフィードバック用係数
乗算器における係数の絶対値を1/Nより小さくなるよ
うにすれば、いずれのフィードバック用係数乗算器にお
いてもオーバーフローの出力は発生せず、かつ、フィー
ドバック用係数乗算器の出力の和をとる加算器でもその
加算結果にオーバーフローは発生しなくなる。
【0014】更に、本実施例によれば、従来例(図8)
に示すデジタルフィルタの伝達関数(フィルタ特性)と
同様の特性をもたせるための工夫を施している。まず、
遅延素子6、8を含む2つの巡回ループ、即ち加算器4
からクリッパ32、4倍シフタ34、遅延素子6、フィ
ードバック用係数乗算器36、加算器14を通って加算
器4に戻る第1の巡回ループと、加算器4から、クリッ
プ32、4倍シフタ34、遅延素子6、遅延素子8、フ
ィードバック用係数乗算器12、加算器14を通って加
算器4に戻る第2の巡回ループについて、その利得(各
巡回ループ信号にかかる重み)を求めると、第1の巡回
ループの利得は4×B1/4=B1、第2の巡回ループ
の利得は4×B2/4=B2となる。これは、従来例
(第8図)における対応する第1の巡回ループ(4→2
0→6→16→14→18→4)の利得B1、第2の巡
回ループ(4→20→6→8→12→14→18→4)
の利得B2と一致する。次に、入力信号径路(1/4倍
シフタ30、K倍シフタ2、加算器4、クリップ32、
4倍シフタ34を通る径路)の利得を求めると1/4×
K×4=Kとなり、これは、従来例(図8)において対
応する入力信号径路(K倍シフタ2、加算器4、クリッ
パ20を通る径路)の利得Kに等しい。実施例(図1)
を従来例(図8)に関する残りの構成は明らかに同一で
ある。したがって、ノーマル状態において、実施例のデ
ジタルフィルタの特性ないし伝達関数と従来例のデジタ
ルフィルタの特性ないし伝達関数は一致する。即ち、共
通の伝達関数H(z)は、
【数1】で与えられ、入力X(z)と出力Y(z)の関
係は、 Y(z)=H(z)×X(z) である。
【0015】上述したように一般のN次のIIRデジタ
ルフィルタにおいてクリッパの数を、入力信号とフィー
ドバック信号の和をとる入力加算器の出力段に1つとい
うように減少させるためには、各フィードバック用係数
乗算器の係数を1/N未満にすればよい。更に、デジタ
ルフィルタの伝達関数の特性は保存するためには、入力
加算器の出力ライン上の巡回ループ内にN倍の乗算器も
しくはシフタを設け(これにより巡回ループ利得が保存
される)、巡回ループ外の入力径路上に1/N倍の乗算
器もしくはシフタを設ければよい(これにより、入力信
号のダイレクトパスの利得が保存される)。ダイレクト
パス(入力径路)の全体は、第1図でいえば入力信号→
1/4倍シフタ30→K倍乗算器2→加算器4→クリッ
パ32→4倍シフタ34→加算器22→1/2倍シフタ
→加算器20→1/2倍シフタ28の径路であり、その
利得はK/4である。もっとも、巡回ループ外の入力径
路上の1/N倍乗算器は単に、デジタルフィルタの出力
をそれがない場合の大きさの1/N倍の大きさにスケー
リングするだけであり、本質的な伝達関数の特性は変わ
らない(1/N倍乗算器がないとすると、元の伝達関数
にNの乗数がつくだけである)。
【0016】図1の実施例では、デジタルフィルタの固
定小数点の演算において基本となるデータ長を18ビッ
トとしたときに、各部のデータバスのサイズが最小化さ
れるような位置に1/4倍シフタ30(拡張説明におけ
る1/N倍乗算器)を置いている。即ち、入力加算器4
の入力ライン上に1/4倍シフタ30を置いている。ま
た、クリッパ32と4倍シフタも、この順序で、巡回ル
ープ内の入力径路(ダイレクトパス)上に置かれてい
る。この順序を逆にすると、4倍シフタの後のデータ長
は一時的に加算結果のビット数+2=19+2=21ビ
ットとなり、クリッパを通した後に18ビットに戻され
る。したがって中間的生成データも含めて、データサイ
ズの最小化が図れている。
【0017】以上で実施例の説明を終えるが、この発明
の範囲内で種々の変形、変更が可能である。例えば、デ
ジタルフィルタを実現する上でのデバイスレベルは任意
のレベルでよく、例えば時分割多重方式(TDM)によ
り、図1の係数乗算器2、36、38とシフタ30、3
4を各係数データを記憶する係数メモリと、所定のタイ
ミングで係数データと信号とを乗算する単一の乗算器と
で構成し、遅延素子6、8を信号の時系列を記憶するR
AM等で構成し、加算器4、14、22、26を各タイ
ミングで所要の加算を行う単一の加算回路で構成したよ
うな演算素子共用型の信号処理プロセッサ(DSP)で
第1図のデジタルフィルタを実現してもよいし、図示の
ように論理レベルで表現した各素子を専用のデバイスで
構成してもよい。
【0018】
【発明の効果】]最後に、特許請求の範囲の請求項に記
載する構成の効果について述べる。請求項1によれば、
フィードバック用係数乗算手段の出力側においてオーバ
ーフローの発生の可能性がなくなるので、従来、これら
の箇所に必要であったクリップ手段を省略することがで
き、デジタルフィルタの構成の簡素化につながる。請求
項2によれば、フィードバック用係数乗算手段で使用す
るフィードバック係数の取り得る範囲を制限することに
より、請求項1と同様の効果を得ることができる。更
に、請求項3によれば、フィードバック係数が取り得る
範囲を制限したことに依って生じる目的のデジタルフィ
ルタ特性からのずれを補償する補償手段を入力加算手段
の出力側に設けたので、所望のフィルタ特性を維持しつ
つ、クリッパ手段を削減することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例に係る2次無限インパルス
応答型デジタルフィルタの論理構成図である。
【図2】図1の1/4倍シフタ30の作用を説明する図
である。
【図3】図1のデジタルフィルタの巡回ループにおける
入力加算器4、クリッパ32、4倍シフタ34の作用を
説明するもので信号のオーバーフローのためにクリップ
された例を示す図である。
【図4】図3と同様であるが信号のオーバーフローなし
のためクリップされなかった例を示す図である。
【図5】図1のデジタルフィルタの巡回ループにおける
フィードバック係数乗算器36、38、加算器14の作
用を説明するもので、これらの演算要素の出力でオーバ
ーフローが発生しないことを示す図である。
【図6】図1のデジタルフィルタの巡回ループを巡回す
る信号の大きさの範囲を示したもので、本実施例におけ
るオーバーフローの発生のメカニズムを説明する図であ
る。
【図7】2次無限インパルス応答型のデジタルフィルタ
の基本的な論理構成図である。
【図8】オーバーフロー対策のためにとられる従来の2
次無限インパルス応答型デジタルフィルタの論理構成図
である。
【符号の説明】
4 入力加算器 6、8 遅延素子 32 クリッパ 34 4倍シフタ(フィルタ特性補償用) 36、38 フィードバック用係数乗算器(係数範囲制
限) 14 加算器 4、32、34、6、36、14、4及び4、32、3
4、6、8、38、14、4 巡回ループ構成
【表1】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−5339(JP,A) 特開 昭58−38023(JP,A) 実開 昭61−14532(JP,U) 特公 昭61−16110(JP,B2) 特公 昭63−66450(JP,B2)

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】巡回ループ上において、信号を遅延する少
    なくとも1つの遅延手段と、信号にフィードバック係数
    を乗算する少なくとも1つのフィードバック用係数乗算
    手段と、信号同士を加算する少なくとも1つの加算手段
    とを備え、固定小数点のデジタルデータで表現される入
    力信号をフィルタリング処理して出力信号を生成する無
    限インパルス応答型のデジタルフィルタにおいて、 上記入力信号を上記巡回ループで生成したフィードバッ
    ク信号と加算する入力加算手段の出力信号がオーバーフ
    ローするときにその信号を所定値にクリップするクリッ
    プ手段を設けるとともに、上記フィードバック用係数乗
    算手段の出力信号におけるオーバーフローの発生の可能
    性を除去する除去手段とを設けたことを特徴とするデジ
    タルフィルタ。
  2. 【請求項2】請求項1記載のデジタルフィルタにおい
    て、上記除去手段は、上記フィードバック用係数乗算手
    段で使用するフィードバック係数の取り得る範囲をオー
    バーフロー発生レベルより低く制限する係数範囲制限手
    段を有することを特徴とするデジタルフィルタ。
  3. 【請求項3】請求項2記載のデジタルフィルタにおい
    て、上記入力加算手段の出力側に、上記係数範囲制限手
    段のフィードバック係数の制限に依るデジタルフィルタ
    の伝達関数の変化を補償する補償手段を設けたことを特
    徴とするデジタルフィルタ。
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