JPH0789916A - N−ビニルカルボン酸アミドの精製方法 - Google Patents

N−ビニルカルボン酸アミドの精製方法

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JPH0789916A
JPH0789916A JP23682493A JP23682493A JPH0789916A JP H0789916 A JPH0789916 A JP H0789916A JP 23682493 A JP23682493 A JP 23682493A JP 23682493 A JP23682493 A JP 23682493A JP H0789916 A JPH0789916 A JP H0789916A
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村 仁 至 中
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田 雄 市 松
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明の目的は、粗N-ビニルカルボン酸アミ
ドから高純度で重合性に優れたN-ビニルカルボン酸アミ
ドを容易に効率よく精製する方法を提供することであ
る。 【構成】 本発明によれば、粗N-ビニルカルボン酸アミ
ドから高純度のN-ビニルカルボン酸アミドを分離精製す
る際に、(a)粗N-ビニルカルボン酸アミドから圧力晶析
法にてN-ビニルカルボン酸アミドの結晶を析出せしめた
のち、N-ビニルカルボン酸アミドの結晶と液相とを分離
して高純度のN-ビニルカルボン酸アミドを得る第一工程
と、(b)第一工程で分離された液相から第一工程より低
温で、圧力晶析法にてN-ビニルカルボン酸アミドの第2
晶を得るか、あるいは冷却晶析法にてN-ビニルカルボン
酸アミドの第2晶を得る第二工程と、(c)第二工程で得
られた第2晶を第一工程における粗N-ビニルカルボン酸
アミドに添加して再利用する第三工程とからなることを
特徴とするN-ビニルカルボン酸アミドの精製方法が提供
される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はN-ビニルカルボン酸アミ
ドの精製方法に関し、さらに詳しくはN-ビニルカルボン
酸アミドを含む粗N-ビニルカルボン酸アミドから高純度
で重合性に優れたN-ビニルカルボン酸アミドを得る方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】N-ビニルカルボン酸アミドは、カルボン
酸アミド、アセトアルデヒドおよびアルコールからN-(1
-アルコキシエチル)カルボン酸アミドを合成し、これを
熱分解または接触分解することによって製造しうること
が知られている。しかし、N-ビニルカルボン酸アミドと
未反応のカルボン酸アミドあるいはN-(1-アルコキシエ
チル)カルボン酸アミドの物性、特に沸点や溶解性が極
めて近く、その分離は容易ではなく、これまでいくつか
の方法が提案されている。
【0003】例えば、特開昭61−286069号公報
によれば、蒸留ではN-ビニルホルムアミドへの未反応原
料であるホルムアミドの混入は避けられないため、水と
芳香族炭化水素による抽出分離が開示されている。
【0004】一方、N-ビニルカルボン酸アミドのもう一
つの有力な製造法として、アセトアルデヒドとカルボン
酸アミドからエチリデンビスカルボン酸アミドを合成
し、これをカルボン酸アミドとN-ビニルカルボン酸アミ
ドとに分解することによって得られることが知られてい
る。しかし、このようにしてN-ビニルカルボン酸アミド
を製造しようとすると、物性が類似したカルボン酸アミ
ドとN-ビニルカルボン酸アミドとが等モル生成し、これ
らを分離することは非常に困難となり、特開昭63−1
32868号公報には混合有機溶媒からの冷却晶析によ
る方法、特開平2−188560号公報には無機塩水溶
液と芳香族炭化水素を用いた抽出による方法、米国特許
4401516号明細書には多価アルコールを用いた抽
出蒸留による方法などが開示されている。
【0005】しかし、いずれの場合もこれらの方法では
充分な純度のN-ビニルカルボン酸アミドを得ることは困
難である。さらに、抽出法では高価な有機溶媒が必要で
あり、これらを回収、精製する設備が必要である。ま
た、N-ビニルカルボン酸アミドは水に対して比較的不安
定であるため、抽出操作中にN-ビニルカルボン酸アミド
の加水分解を引き起こす恐れがあり、工業的に満足ので
きる方法ではない。また有機溶媒を用いた冷却晶析によ
る方法は、抽出法と同様に有機溶媒を用いることによる
問題に加えて、乾燥工程が必要となり、しかもN-ビニル
カルボン酸アミドが熱重合する可能性があるという問題
点がある。さらに抽出蒸留法は、有機溶媒を使用するた
め、必要な精留効果を得るには還流比を上げる必要があ
り、このため長時間にわたってN-ビニルカルボン酸アミ
ドを加熱しなければならない。
【0006】一方、特公昭56−41282号公報に
は、混合物を高圧に加圧することにより一部の成分を析
出せしめ、加圧下において存在する液相と結晶とを分離
する、いわゆる、圧力晶析法が開示されている。このよ
うな圧力晶析法は、特開昭62−209034号公報、
特開平1−250329号公報、特開平4−12002
7号公報などに開示されているように、キシレン、ナフ
タレン類、クレゾールなど位置異性体の分離、あるいは
フェノール類のアルキル化反応液からのアルキル化フェ
ノール類の分離などに用いることができることが知られ
ている。しかし、圧力晶析法を、N-ビニルカルボン酸ア
ミドに優れた重合性を付与するとの観点から、ビニル化
合物、特にN-ビニルカルボン酸アミドなどの精製に用い
ることは開示されていなかった。
【0007】
【発明の目的】本発明は、粗N-ビニルカルボン酸アミド
から不純物を除去することによって、高純度で優れた重
合性を有するN-ビニルカルボン酸アミドを効率よく製造
しうるようなN-ビニルカルボン酸アミドの精製方法を提
供することを目的としている。
【0008】
【発明の概要】本発明によれば、粗N-ビニルカルボン酸
アミドから高純度のN-ビニルカルボン酸アミドを分離精
製する際に、(a)粗N-ビニルカルボン酸アミドから圧力
晶析法にてN-ビニルカルボン酸アミドの結晶を析出せし
めたのち、N-ビニルカルボン酸アミドの結晶と液相とを
分離して高純度のN-ビニルカルボン酸アミドを得る第一
工程と、(b)第一工程で分離された液相から第一工程よ
り低温で、圧力晶析法にてN-ビニルカルボン酸アミドの
第2晶を得るか、あるいは冷却晶析法にてN-ビニルカル
ボン酸アミドの第2晶を得る第二工程と、(c)第二工程
で得られた第2晶を第一工程における粗N-ビニルカルボ
ン酸アミドに添加して再利用する第三工程とからなるこ
とを特徴とするN-ビニルカルボン酸アミドの精製方法が
提供される。
【0009】
【発明の具体的説明】以下、本発明に係るN-ビニルカル
ボン酸アミドの精製方法について具体的に説明する。第一工程 本発明に係るN-ビニルカルボン酸アミドの精製方法で
は、まず第一工程においては、生成したN-ビニルカルボ
ン酸アミドと、未反応物質(例えば、カルボン酸アミ
ド、N-(1-アルコキシエチル)カルボン酸アミド)などが
含まれたN-ビニルカルボン酸アミド(以下、粗N-ビニル
カルボン酸アミドという。)を圧力晶析法にて処理し、
N-ビニルカルボン酸アミド結晶と液相とを分離すること
により高純度のN-ビニルカルボン酸アミドを得ている。
【0010】本発明で用いられる粗N-ビニルカルボン酸
アミド化合物としては、N-ビニルアセトアミド、N-ビニ
ル-N-メチルアセトアミド、N-ビニルホルムアミド、N-
メチル-N-ビニルホルムアミドなどが挙げられ、特にN-
ビニルアセトアミドが好ましい。
【0011】先ず、第一工程では、粗N-ビニルカルボン
酸アミドから圧力晶析法にてN-ビニルカルボン酸アミド
が分離される。第一工程で用いられる粗N-ビニルカルボ
ン酸アミドには、N-ビニルカルボン酸アミドが50重量
%以上、好ましくは70重量%以上の量で含まれている
ことが望ましい。粗N-ビニルカルボン酸アミドに含まれ
る他の成分としては特に制限はないが、炭素数5以下の
アルコール、カルボン酸アミド、N-(1-アルコキシエチ
ル)カルボン酸アミドまたはエチリデンビスカルボン酸
アミドなどが挙げられる。粗N-ビニルカルボン酸アミド
中に含まれるN-ビニルカルボン酸アミドが50重量%未
満の量では、N-ビニルカルボン酸アミドの回収率が悪
く、また、得られたN-ビニルカルボン酸アミドの純度も
低く、優れた重合性を示さない。
【0012】粗N-ビニルカルボン酸アミドは、たとえ
ば、特開昭61−106546号公報(エチリデンビス
アセトアミドの熱分解法)、特開昭50−76015号
公報(2級N-ビニルカルボン酸アミドの製法)などに記
載された方法にて得られるが、得られた粗N-ビニルカル
ボン酸アミド中のN-ビニルカルボン酸アミドの含量が5
0重量%以上であればこれらの方法の熱分解生成物をそ
のまま粗N-ビニルカルボン酸アミドとして用いても良い
し、蒸留操作でN-ビニルカルボン酸アミドを濃縮、ある
いは留出してN-ビニルカルボン酸アミドの含量を上げた
ものを用いてもよい。これらの精製操作を行った粗N-ビ
ニルカルボン酸アミドを用いて圧力晶析操作を行うと、
当然N-ビニルカルボン酸アミドの回収率が向上するし、
純度、重合性も向上するので望ましい。
【0013】N-ビニルカルボン酸アミドは、水に対して
不安定であり、空気中の水分を吸湿して徐々に分解す
る。したがって、N-ビニルカルボン酸アミドの精製の際
には、加圧分離装置および原料槽を含めた圧力晶析装置
さらに製品容器、濾液槽などの付帯設備は、窒素や乾燥
空気などの雰囲気下に保つことが望ましい。また、N-ビ
ニルカルボン酸アミドの加水分解反応を防ぐために、粗
N-ビニルカルボン酸アミドに少量の硫酸マグネシウムな
どの乾燥剤を添加してもよい。
【0014】また、N-ビニルカルボン酸アミドは酸が存
在すると極めて不安定であり、水の共存下で容易に加水
分解されてしまう。第一工程においては、圧力晶析を行
う際には、粗N-ビニルカルボン酸アミドに塩基性化合物
を添加することが好ましい。
【0015】このような塩基性化合物としては、炭酸ナ
トリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、燐
酸(水素)ナトリウム、酢酸ナトリウムなどのナトリウ
ム塩、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウ
ム、燐酸(水素)カリウム、酢酸カリウムなどのカリウ
ム塩、N-フェニル-α-ナフチルアミン、4,4'-ビス(α、
α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N-フェニル-
N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、N-フ
ェニル-N'-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N-フ
ェニル-N'-(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミ
ン、N-フェニル-N'-シクロヘキシル-p-フェニレンジア
ミン、N,N'-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N'-
ジ-β-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N,N'-ビス(1,4
-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N,N'-ビス
(1-エチル-3-メチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、
N,N'-ビス(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン、
N-フェニル-N'-(p-トルエンスルホニル)-p-フェニレン
ジアミンなどの芳香族アミン類が挙げられ、これらのう
ちではナトリウム塩が好ましく、特に炭酸水素ナトリウ
ムが好ましい。
【0016】このような塩基性化合物は、粗N-ビニルカ
ルボン酸アミド中に、通常、10000〜1ppm、好ま
しくは、1000〜10ppmの量で用いられることが望
ましい。10000ppm以上の量で用いても、無機塩類
の場合には十分に溶解されず、実際上添加に応じた効果
は期待できない。また、塩基性化合物として芳香族アミ
ン類を用いてこの量が10000ppm以上である場合
には、精製工程で芳香族アミンを完全に除去するのが困
難となり、N-ビニルカルボン酸アミドの重合性がかえっ
て低下してしまう。また、これら塩基性化合物を1ppm
以下の量で用いても、安定剤としての効果がほとんど見
られない。
【0017】第一工程における晶析圧力は500〜30
00気圧であり、特に1000〜2000気圧が好まし
い。晶析圧力が500気圧より低いと、得られるN-ビニ
ルカルボン酸アミドの重合度は大幅には向上せずに1回
の晶析操作によって得られる結晶量が少なくて生産性が
低いために経済的に不利となる。一方、3000気圧よ
り高い圧力で晶析操作を行っても大幅な晶析量の増加は
得られず、また得られるN-ビニルカルボン酸アミドの純
度が低下し重合性の向上も小さくなる。また、このよう
な高圧に耐えうるような装置は大型となり高価である。
【0018】一般に、粗N-ビニルカルボン酸アミドの圧
力晶析操作を効率よく行うためには、粗N-ビニルカルボ
ン酸アミドを低温にすると低い圧力で行うことができる
が、高温にすると高い圧力が必要となる。
【0019】第一工程においては、粗N-ビニルカルボン
酸アミドを予め0〜100℃好ましくは10〜70℃に
調整した後、粗N-ビニルカルボン酸アミドを圧力晶析装
置(加圧筒)に導入する。圧力晶析装置の加圧筒の温度
は、粗N-ビニルカルボン酸アミドを加圧すると断熱圧縮
と晶析熱とによってわずかに上昇するが、この温度上昇
を考慮してN-ビニルカルボン酸アミドの晶析温度を設定
するとよい。晶析温度が0℃より低いと、粗N-ビニルカ
ルボン酸アミドの濃度が高くなりすぎて流動性が低下
し、粗N-ビニルカルボン酸アミドを加圧筒に導入するの
が困難になる。一方粗N-ビニルカルボン酸アミドを10
0℃より高く加熱すると、N-ビニルカルボン酸アミドの
熱重合や変質が起こり始め、品質や収量低下を引き起こ
す。
【0020】第一工程において加圧筒に導入される粗N-
ビニルカルボン酸アミドは液体であってもよく、また種
晶を含むスラリーであってもよいが、以下の理由から種
晶を含むスラリーが好ましい。すなわち圧力晶析装置の
加圧筒に圧力を加えると、粗N-ビニルカルボン酸アミド
は急速に圧力を高められ、しかも、圧力エネルギーは液
相を均一に音速で伝わる。したがって、加圧筒に供給さ
れた粗N-ビニルカルボン酸アミド中に種晶が含まれてい
ないと、加圧してもN-ビニルカルボン酸アミドは過飽和
の状態となり、充分に結晶が生成しないことがある。そ
のため、圧力晶析に先だって粗N-ビニルカルボン酸アミ
ドを種晶の生成に充分な温度と時間に保って予めN-ビニ
ルカルボン酸アミドの結晶を生成させておくか、または
粗N-ビニルカルボン酸アミドの一部を分流させ、これを
冷却して結晶を生じさせ、この結晶を含んだ粗N-ビニル
カルボン酸アミドと、粗N-ビニルカルボン酸アミドとを
混合するか、あるいは外部から粗N-ビニルカルボン酸ア
ミドに種晶を添加することが望ましい。
【0021】一般に圧力晶析では冷却晶析に比べて晶析
速度が大きく、平衡に近い状態に達するまでの時間は短
く、1回の加圧当たりの晶析量を最大にするため完全に
平衡状態に至るまで加圧状態を保持することが好まし
い。N-ビニルカルボン酸アミドは比較的結晶性が高いの
で、加圧状態での保持時間は0〜5分、好ましくは0〜
3分以内である。
【0022】第一工程においては、加圧下において固相
(結晶)として析出したN-ビニルカルボン酸アミドと、
重合阻害物質(不純物)が濃縮された液相とを分離する
ことによって、優れた重合性を有するN-ビニルカルボン
酸アミドが得られるが、固相と液相とを分解する際の圧
力は500〜1500気圧が好ましく、晶析圧力より1
000気圧低い圧力で分離される。この過程で結晶の一
部が残存している母液に溶解、発汗し、N-ビニルカルボ
ン酸アミドの結晶中に含まれる不純物が母液中に排出さ
れるため、得られるN-ビニルカルボン酸アミドは、高純
度となる。
【0023】第一工程で得られる液相(母液)には、N-
ビニルカルボン酸アミドの合成原料であるカルボン酸ア
ミド、N-(1-アルコキシエチル)カルボン酸アミドまたは
エチリデンビスカルボン酸アミドなどが含まれている。
したがって、次の第二工程ではこの液相(母液)からさ
らに圧力晶析法にてN-ビニルカルボン酸アミドを回収す
る。第二工程 第二工程では、(イ)第一工程で分離された液相(圧力晶
析廃液I)から、第一工程より低温で圧力晶析法にてN-
ビニルカルボン酸アミドの結晶(第2晶)を得るか、あ
るいは、(ロ)第一工程で分離された液相(圧力晶析廃液
I)から、冷却晶析法にてN-ビニルカルボン酸アミドの
結晶(第2晶)を得る。
【0024】(イ) 第一工程で分離された液相(圧力晶析
廃液I)から、第一工程より低温で圧力晶析法にてN-ビ
ニルカルボン酸アミドの結晶(第2晶)を得る方法につ
いて説明すると、この第二工程では、圧力晶析操作は、
晶析温度を除いて、第一工程とほぼ同様な操作条件下に
行われる。すなわち、第二工程で用いられる圧力晶析廃
液I中のN-ビニルカルボン酸アミドの濃度は、第一工程
で用いられた粗N-ビニルカルボン酸アミドの場合よりも
低いため、第一工程より低い温度で圧力晶析を行う。す
なわち、第二工程においては圧力晶析廃液Iを、予め−
10〜80℃、好ましくは0〜50℃に調整した後、圧
力晶析廃液Iを圧力晶析装置(加圧筒)に導入すること
が望ましい。
【0025】第二工程にて圧力晶析廃液Iの圧力晶析を
行い、N-ビニルカルボン酸アミドの結晶(第2晶)と分
離された廃液(圧力晶析廃液II)には少量のN-ビニル
カルボン酸アミドが含有されており、この廃液(液相)
からさらにN-ビニルカルボン酸アミドを回収してもよい
が、その含有量が少ないためさらに低温で圧力晶析を行
わねばならず、分離効率はさらに低下する。したがっ
て、第二工程において圧力晶析を行ったあとの液相(圧
力晶析廃液II)は廃棄してもよい。
【0026】第二工程で用いられる晶析装置としては連
続式、回分式のいずれでもよく、また、晶析方法は、冷
媒との熱交換による方法でもよく、溶媒の蒸発による液
相濃縮と冷却による方法でもよく、構造様式に厳密な条
件はない。
【0027】結晶の濾過装置としては、真空圧や加圧を
利用するもの、重力や遠心力を利用するものなど特に制
限はなく、例えば高濃度のスラリーを濾過する場合には
ローゼンムンドフィルターのような自動ヌッチェフィル
ターが好ましく用いられる。
【0028】(ロ) 次に、冷却晶析法について説明する
と、第一工程で分離された液相(圧力晶析廃液I)か
ら、冷却晶析法にてN-ビニルカルボン酸アミドの結晶
(第2晶)を得る場合には、圧力晶析廃液I中のN-ビニ
ルカルボン酸アミドの濃度が低いため、比較的低い温
度、すなわち、−10〜80℃、好ましくは0〜50℃
まで圧力晶析廃液Iを冷却してN-ビニルカルボン酸アミ
ドの晶析を行うことが好ましい。
【0029】このような冷却晶析法により第二工程を行
う場合には、第一工程で結晶から分離された液相(圧力
晶析廃液I)をそのまま上記の温度に冷却してもよい
が、N-ビニルカルボン酸アミドとの反応性がなく、適度
な溶解能を有する再結晶溶媒を用いてもよい。このよう
な再結晶溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、
キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、シクロヘキ
サンなどの炭化水素、クロロホルムなどのハロゲン化炭
化水素、ジエチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチ
ルなどのエステル類などが挙げられる。
【0030】その他の点については、上記第二工程の圧
力晶析法(イ)と同様にすればよい。第三工程 第三工程では、第二工程で得られた第2晶を第一工程に
おける粗N-ビニルカルボン酸アミドに添加して再利用す
る。このように第一工程における粗N-ビニルカルボン酸
アミド(前工程液)に添加される第2晶の量が粗N-ビニ
ルカルボン酸アミド量に比べて少なく、温度が低くない
ときは第2晶は粗N-ビニルカルボン酸アミドに速やかに
溶解し、容易に均一溶液となる。第2晶の温度が低く第
二晶が粗N-ビニルカルボン酸アミドに溶解しにくいよう
な場合には、第一工程で用いられる粗N-ビニルカルボン
酸アミドと第2晶との混合物を均一になるまで加熱して
も良く、またこのまま、第2晶をスラリー状態で第一工
程に送って種結晶として用いてもよい。このように第2
晶を種結晶として第一工程で用いる場合には、第2晶を
予め破砕した後、第一工程の粗N-ビニルカルボン酸アミ
ドと混合することが望ましい。
【0031】次に本発明に係るN-ビニルカルボン酸アミ
ドの精製方法について、図1を参照しつつさらに具体的
に説明する。図1には、アセトアルデヒドとメタノール
からジメチルセタールを合成したのち精製し、このジメ
チルセタールとアセトアミドとを反応させて得られる、
親水性ポリマーの原料であるN-ビニルアセトアミドを分
離する場合が示されている。
【0032】図1においてAは反応蒸留塔、Bは蒸留
塔、Cは向流抽出塔、Dはエーテルアミド化反応器、E
はアセタール回収蒸留塔、Fはメタノール回収蒸留塔、
Gはエーテルアミド分解反応器、HはN-ビニルアセトア
ミド減圧蒸留塔、Iは圧力晶析装置、Jは圧力晶析装置
または冷却晶析装置を示し、実線および1〜19は物質
の流れを表す。
【0033】アセタール合成工程;反応蒸留塔Aの下部
には、必要量の原料アセトアルデヒド1が導入され、ま
た反応蒸留塔Aの上部から塔A中には向流抽出塔Cから
回収される少量のアセタールと水を含むメタノール2に
N-ビニルアセトアミド減圧蒸留塔Hから回収されるメタ
ノール3を加えたものが連続的に導入される。このメタ
ノールには必要量の酸触媒を溶解混合する。予め原料ア
セトアルデヒドに含まれていた水および反応過程で生成
した水5は塔底部より排出される。この水には触媒量の
酸が溶解しているため、必要に応じて適当な中和、排水
処理を行ったのち廃棄される。
【0034】アセタール分離工程;メタノールとジメチ
ルアセタールからなる反応液4と脱メタノール蒸留塔
(メタノール回収蒸留塔)Fから回収されるメタノール
−ジメチルアセタール共沸混合物15は、微量のジメチ
ルアセタールを含むノルマルヘキサンからなる向流抽出
塔Cの軽液6とともに蒸留塔Bに導入され、常圧下で蒸
留分離され、塔底部より高純度アセタール8が得られ
る。メタノールはノルマルヘキサン−メタノール−ジメ
チルアセタールの3成分共沸物7として塔頂より留出さ
れる。ノルマルヘキサンはノルマルヘキサン−メタノー
ル−ジメチルアセタールの3成分共沸を作るのに必要な
量となるように供給される。
【0035】ヘキサン回収工程;蒸留塔Bの塔頂部より
抜きだしたノルマルヘキサン−メタノール−ジメチルア
セタールの3成分共沸物7を向流抽出塔Cで少量の水9
と向流接触させる。ほぼ全量のメタノールと大部分のジ
メチルアセタールを軽液より抽出してなる重液2は塔底
部より抜き出されてアセタール合成工程の反応蒸留の原
料の一部として回収される。実際上ノルマルヘキサンか
らなる軽液6は塔頂部より回収され、アセタール分離工
程のエントレーナーとして再使用される。
【0036】α-メトキシエチルアセトアミド合成工
程;α-メトキシエチルアセトアミド(以下MEAと呼
ぶ)は以下の公知の方法(たとえば、米国特許4554
377号)により合成される。すなわち、下記化学式1
に示すようにジメチルアセタールとアセトアミドの交換
反応によりMEAを合成する。
【0037】
【化1】
【0038】この際、MEAと等モルのメタノールが副
生する。アセトアミドとMEAの蒸気圧はきわめて近
く、種々の溶媒に対する溶解性も似ているため蒸留や再
結晶による分離は困難である。したがって、アセトアミ
ドの転化率はできるだけ高く保つことが好ましく、たと
えば、95%以上が望ましい。このようにアセトアミド
の転化率を高く保つには、アセトアミドに対してジメチ
ルアセタールは、モル比でおよそ20倍の量で用いられ
ることが望ましい。約20倍を下回る量でジメチルアセ
タールを用いると、アセトアミドの転化率が充分に上が
らないことがある。20倍を大きく上回るような量でジ
メチルアセタールを用いると、生産性が低下するが、大
きなアセトアミド転化率の向上が得られないことがあ
る。さらにこの反応系に少量のメタノールを加えること
が好ましい。この反応は平衡反応であるため平衡関係か
らはメタノールの添加は好ましくない。しかしながら、
MEAがさらにアセトアミドと反応するとジメチルアセ
タールに対する溶解性がきわめて低いエチリデンビスア
セトアミド(EBA)を生成してしまう。ここでもしメ
タノールが存在しないとこのEBAは系から析出してこ
の平衡反応に関与しなくなり、この平衡反応が右に傾い
て、MEA収率は低下してしまう。したがって、下記化
学式2で微量に副生したEBAを溶解させ、平衡反応に
関与させるにはアセトアミドに対してメタノールをモル
比でおよそ3倍量で加えることが望ましい。
【0039】
【化2】
【0040】すなわち、アセトアミド/ジメチルアセタ
ール/メタノールのモル比を1/20/3にして反応原
料液とすることが好ましい。アンバーリストなど強酸性
イオン交換樹脂を充填したエーテルアミド化反応器Dに
蒸留塔Bの塔底部より得られた高純度アセタール8と脱
メタノール蒸留塔Fの塔底部より得られた少量のメタノ
ールを含むジメチルアセタール14およびアセトアミド
10を供給し、MEA合成反応を行う。エーテルアミド
化反応器Dの出口からはMEA、未反応のジメチルアセ
タール、反応によって生成したメタノールと微量の未反
応アセトアミドからなる反応液11が得られる。
【0041】アセタール回収工程;エーテルアミド化反
応器Dの出口から得られた反応液11はアセタール回収
蒸留塔Eに導入され、単蒸留により軽沸分として塔頂部
より少量のメタノールを含むジメチルアセタール留分1
2と重沸分として塔底部より得られるMEA留分13に
分けられる。
【0042】メタノール回収工程;アセタール回収蒸留
塔Eの塔頂部より得られる少量のメタノールを含むジメ
チルアセタール留分12をメタノール回収蒸留塔Fに供
給し、塔頂部からはメタノール−ジメチルアセタール共
沸留分15を得、アセタール精製工程へ送り、高純度ジ
メチルアセタールに精製する。メタノール回収蒸留塔F
の塔底部より得られるより少量のメタノールを含むジメ
チルアセタール留分14はエーテルアミド化反応器Dへ
送られ、エーテルアミド化反応の原料として再使用され
る。
【0043】N-ビニルアセトアミド合成工程;アセター
ル回収蒸留塔Eの塔底部より得られたMEA留分13は
エーテルアミド分解反応器Gで熱分解あるいは酸触媒を
用いた接触分解によりN-ビニルアセトアミドとメタノー
ルに分解され、エーテルアミド分解反応器G出口よりN-
ビニルアセトアミドのメタノール溶液16が得られる。
【0044】N-ビニルアセトアミド濃縮工程;エーテル
アミド分解反応器出口より得られたN-ビニルアセトアミ
ドのメタノール溶液16はN-ビニルアセトアミド減圧蒸
留塔Hで減圧蒸留によりメタノール3と粗N-ビニルアセ
トアミド17に分離される。塔頂部より得られるメタノ
ール3はアセタール合成工程の反応蒸留塔Aで再使用さ
れる。
【0045】第一工程(N-ビニルアセトアミド精製工
程);N-ビニルアセトアミド濃縮工程の減圧蒸留塔Hの
塔底部より得られる粗N-ビニルアセトアミド17を圧力
晶析装置Iにより精製して、高純度の精製N-ビニルアセ
トアミド19と第一工程廃液18とに分離される。
【0046】第二工程(N-ビニルアセトアミド回収工
程);N-ビニルアセトアミド精製工程で得られる第一工
程廃液18は圧力晶析装置Jにより粗N-ビニルカルボン
酸アミド20と第二工程廃液21に分離される。
【0047】また、第二工程(N-ビニルアセトアミド回
収工程)を冷却晶析法にて行う場合には、次のように行
えばよい。すなわち、N-ビニルアセトアミド精製工程で
得られる第一工程廃液18を、冷却晶析装置J(図1の
Jの位置に対応する)に導入し、粗N-ビニルカルボン酸
アミドを析出させ、続いて固液分離器(図示せず)によ
り粗N-ビニルアセトアミド20と第二工程廃液21に分
離される。
【0048】第三工程(回収N-ビニルカルボン酸アミド
の再利用工程);粗N-ビニルカルボン酸アミド20は、
N-ビニルアセトアミド濃縮工程の減圧蒸留塔Hの塔底部
より得られる粗N-ビニルカルボン酸アミド17と合流さ
れて、第一工程(N-ビニルアセトアミド精製工程)の圧
力晶析装置Iに送られ、高純度の精製N-ビニルアセトア
ミドを得るための粗N-ビニルカルボン酸アミドとして再
利用される。
【0049】なお、本発明に係るN-ビニルカルボン酸ア
ミドの精製方法によって得られるN-ビニルカルボン酸ア
ミドが高純度であり、しかも重合性に優れる理由は明か
でないが、圧力晶析による発汗作用の他に加圧下の共晶
点が冷却晶析の際の共晶点と比べてN-ビニルカルボン酸
アミドの晶析に有利であること、比較的低温で短時間の
分離処理を行うため熱によるN-ビニルカルボン酸アミド
の劣化が起こらないこと、得られた結晶が円筒形に固め
られ表面積が小さいために吸湿などによる劣化がされに
くいことなどが考えられる。
【0050】このようにして得られたN-ビニルカルボン
酸アミドを重合させるか、あるいは他のモノマーと共重
合させることにより水溶性ポリマーであるポリN-ビニル
カルボン酸アミドあるいは共重合体を得ることができ
る。
【0051】
【発明の効果】本発明によれば、高純度で高重合性のN-
ビニルカルボン酸アミドが容易に効率よく分離される。
【0052】
【実施例】以下、本発明の実施例と比較例を挙げてさら
に詳しく説明するが、本発明は下記の例によって何ら限
定されるものではない。
【0053】
【実施例1】 [アセタール合成工程]25段のガラス製オルダーショ
ー型精留塔の上から5段目に0.5重量%の硫酸を含む
メタノールを毎時180gで導入し、上から15段目に
アセトアルデヒドを毎時72gで導入した。精留塔の下
部には水100gを入れた500mlフラスコを設けて1
00℃に加熱し、フラスコ内容物を毎時29gで抜きだ
した。フラスコ抜き出し液には、実質上有機物が含まれ
ていなかった。塔頂からは還流比2で221g/hのジ
メチルアセタール−メタノール混合物を抜きだした。留
出液には実質上水、アセトアルデヒドは含まれていなか
った。アセトアルデヒド転化率100%、ジメチルアセ
タール収率100%であった。 [アセタール分離工程]25段のガラス製オルダーショ
ー型精留塔の上から1段目にノルマルヘキサンを毎時5
6gで導入し、上から10段目に28重量%のメタノー
ルを含むジメチルアセタールを毎時71gで導入した。
還流比が6となり、かつ塔頂の温度が50℃を維持する
ように加熱を行った。精留塔の下部にはジメチルアセタ
ールを100gを入れた500mlフラスコを設けて11
0℃の油浴に浸して加熱し、フラスコ内容部を毎時47
gで抜きだした。フラスコ抜きだし液は実質上ノルマル
ヘキサンを含まず、メタノールを0.3%含むジメチル
アセタールであった。塔頂からは80g/hのジメチル
アセタール−メタノール−ノルマルヘキサン混合物を抜
きだした。留出液、缶出液共に実質上水、アセトアルデ
ヒドが含まれていなかった。 [ヘキサン分離工程]バッフル板30枚を25mm間隔で
取り付けたカラム内径50mmの上下動式液−液向流抽出
装置に、軽液としてアセタール分離工程の留出液を抽出
塔の下部から毎時2370g、重液として水を抽出塔の
上部から毎時13g供給し、向流抽出を行った。バッフ
ル板は12.5mmのストロークで150サイクル上下往
復運動を行った。抽出後の軽液には水、メタノールがほ
とんど含まれず、ジメチルアセタールを3重量%含んだ
ノルマルヘキサンであった。重液はメタノール80重量
%、ジメチルアセタール5重量%、ノルマルヘキサン1
重量%でその他は水であった。 [α-メトキシエチルアセトアミド合成工程]アセター
ル分離工程で得られた高純度ジメチルアセタールとメタ
ノール回収工程で得られたメタノールを含むジメチルア
セタールを混合し、これに乾燥したアセトアミドを溶解
してアセトアミド/ジメチルアセタール/メタノールの
モル比1/20/3の反応原料液を調製した。強酸性イ
オン交換樹脂アンバーリスト15を60ml充填した内径
40mmの反応管下部からこの液を毎時5mlで導入した。
反応管のジャケットには55℃の温水を流し、反応温度
を55℃に制御した。反応器上部の出口から得られた反
応液を定量分析すると反応液のモル組成はおよそアセト
アミド/ジメチルアセタール/メタノール/MEAで0
/19/4/0.9であり、アセトアミドの転化率は9
8%であり、α-メトキシエチルアセトアミド(ME
A)の収率は90%であった。 [アセタール回収工程]α-メトキシエチルアセトアミ
ド合成工程で得られた反応液を、100mmHgに減圧した
伝熱面積0.04m2のジャケット付き薄膜式連続フラッ
シュエバポレーターに毎時600gで供給した。ジャケ
ットには90℃の熱媒を循環させた。実際上α-メトキ
シエチルアセトアミドからなる蒸発残分が毎時17gで
得られた。メタノール7重量%を含むジメチルアセター
ルからなる揮発成分を凝縮した液は毎時583g得られ
た。 [メタノール回収工程]25段のガラス製オルダーショ
ー型精留塔の上から10段目に、アセタール回収工程で
得られる7重量%のメタノールを含むジメチルアセター
ル留分を毎時200gで導入した。還流比6で塔頂の温
度が58℃を維持するように加熱を行った。精留塔の下
部に500mlフラスコを設けて110℃の油浴に浸して
加熱し、フラスコ内容物を毎時185gで抜きだした。
フラスコ抜き出し液はメタノールを5.6重量%含むジ
メチルアセタールであった。塔頂からは毎時15gのジ
メチルアセタール−メタノール共沸混合物(メタノール
24重量%)を抜きだした。 [N-ビニルアセトアミド合成工程]アセタール回収工程
で得られた実際上α-メトキシエチルアセトアミドから
なる液を毎分20mlで450℃に加熱し、40mmHgに減
圧した内径20mm、全長2mのステンレス反応管に供給
した。反応管出口に設けられた冷却器で熱分解反応で生
成したN-ビニルアセトアミドとメタノールの混合物を凝
縮し、回収した。α-メトキシエチルアセトアミドの転
化率は95%であった。 [N-ビニルアセトアミド濃縮工程]10段のガラス製オ
ルダーショー型精留塔の上から10段目に、N-ビニルア
セトアミド合成工程で得られた反応液を毎時200gで
導入した。減圧度は200mmHg、還流比2で塔頂の温度
が40℃を維持するように加熱を行った。精留塔の下部
に500mlフラスコを設けて80℃の油浴に浸して加熱
し、フラスコ内容物を毎時155gで抜きだした。フラ
スコ抜き出し液はN-ビニルアセトアミドを94重量%含
む粗N-ビニルアセトアミド溶液であった。塔頂からは毎
時45gのメタノールを抜きだした。 [第一工程]N-ビニルアセトアミド合成工程で得られた
濃縮液21.3gを50℃に調整し、高圧容器内で18
00kg/cm2に加圧し、5分間保持して、N-ビニルアセ
トアミドの結晶を析出させ、この結晶を50℃で液相
(母液)から分離した。このようにして純度99.6%
のN-ビニルアセトアミドが8.1g、廃液が13.1g
得られた。N-ビニルアセトアミドの回収率は47%であ
り、廃液の組成はN-ビニルアセトアミド:74%、α-
メトキシエチルアセトアミド:16%、アセトアミド:
10%であった。このN-ビニルアセトアミドの重合性を
評価するため、水を加えて20重量%にし、V−50
(N,N'-アゾビス-(2-アミジノプロパン)2塩酸塩を6
00ppm加え、45℃恒温水槽に浸した。10分後、水
で10重量%に希釈しBL型粘度計を用いて、30℃回
転数30RPMで粘度を測定したところ150cpsであっ
た。 [第二工程]第一工程の廃液21.3gを25℃に調整
し、高圧容器内で1800kg/cm2に加圧し、5分間保
持して、N-ビニルアセトアミドの結晶(第2晶)を析出
させ、この結晶を25℃で母液から分離した。純度9
9.4%のN-ビニルアセトアミドが5.7g、廃液が1
5.6g得られた。N-ビニルアセトアミドの回収率は3
6%、廃液の組成はN-ビニルアセトアミド:59%、α
-メトキシエチルアセトアミド:22%、アセトアミ
ド:13%であった。このN-ビニルアセトアミドの重合
性を上と同様に評価したところ粘度は63cpsであっ
た。 [第2晶をリサイクルした第一工程]N-ビニルアセトア
ミド合成工程で得られた濃縮液14.8gと第二工程で
得られた第2晶(結晶)6.4gとを混合し、第2晶を
濃縮液に溶解した。得られた混合液を50℃に調整し、
高圧容器内で1800kg/cm2に加圧し、5分間保持し
てN-ビニルアセトアミドの結晶を析出させ、この結晶を
50℃で母液から分離した。このようにして純度99.
8%のN-ビニルアセトアミドが10.3g、廃液が1
0.5g得られた。N-ビニルアセトアミドの回収率は5
6%、廃液の組成はN-ビニルアセトアミド:74%、α
-メトキシエチルアセトアミド:15%、アセトアミ
ド:8%であった。このN-ビニルアセトアミドの重合性
を上と同様に評価したところ粘度は133cpsであっ
た。
【0054】[第二工程]と[第2晶をリサイクルした
第一工程]を3回繰り返したところ取得結晶量と廃液組
成などがほぼ定常状態となり、その時のN-ビニルアセト
アミド合成工程で得られた濃縮液中N-ビニルアセトアミ
ド基準のN-ビニルアセトアミド回収率は70%であっ
た。
【0055】
【比較例1】10段のガラス製オルダーショー型精留塔
の上から10段目に、実施例4のN-ビニルアセトアミド
合成工程で得られた反応液を毎時200gで導入した。
減圧度は200mmHg、還流比2で塔頂の温度が40℃を
維持するように加熱を行った。精留塔の下部に500ml
フラスコを設けて80℃の油浴に浸して加熱し、フラス
コ内容物を毎時155gで抜きだした。フラスコ抜き出
し液はN-ビニルアセトアミドを94重量%含むメタノー
ル溶液であった。塔頂からは毎時45gのメタノールを
抜きだした。さらに理論段数20段を有する5mmスルー
ザー型充填材を充填した精留塔の上から10段目に、先
のフラスコ抜き出し液(N-ビニルアセトアミドを94重
量%含むメタノール溶液)を毎時155gで導入した。
減圧度は2mmHg、還流比3で精留塔の下部に500mlフ
ラスコを設けて105℃の油浴に浸して加熱を行った。
フラスコ内容物を毎時140gで抜きだした。フラスコ
抜き出し液はN-ビニルアセトアミドであった。塔頂から
は毎時15gの少量のアセトアミドを含むメタノールを
抜きだした。得られたN-ビニルアセトアミドについて実
施例1と同様にして重合性評価試験を行ったところ、粘
度は5cpsであった。
【0056】
【実施例2】温度計およびドライアイス−エタノールト
ラップを具備した三つ口フラスコ(200ml)にアセト
アミド5.9g(0.1モル)、イソプロピルアルコール
40g(0.67モル)、エチリデンビスアセトアミド
2.16g(15ミリモル)、アセトアルデヒドジイソ
プロピルアセタール14.6g(0.1モル)を加え、4
5〜48℃で均一になるまで攪拌、溶解した。濃硫酸
0.43g(仕込み量に対して0.1重量%)をイソプロ
ピルアルコール2g(33ミリモル)に溶解(以下の実
施例も同様)した液を加え攪拌後、アセトアルデヒド1
7.6g(0.4モル)を滴下ロートで3分かけて加え
た。滴下終了後50℃で3時間反応を行い触媒を中和し
た後、ガスクロマトグラフィーで定量したところ、アセ
トアミド転化率は88%であり、N-(α-プロポキシエ
チル)アセトアミドの選択率は94%であり、副生物の
エチリデンビスアセトアミドの選択率は5.3%であっ
た。アセタールの生成量の増減は反応30分〜3時間の
範囲で添加量の1ミリモル減少し、エチリデンビスアセ
トアミドは平衡になった。
【0057】得られた反応液から減圧蒸留でN-(α-プ
ロポキシエチル)アセトアミドを得、450℃、滞留時
間1秒でN-ビニルアセトアミドをイソプロピルアルコー
ルに熱分解した。
【0058】この分解液[I]を20℃に冷却し、高圧容
器内で1800kg/cm2、20℃に保ち、N-ビニルアセ
トアミドの結晶を析出させ、得られたN-ビニルアセトア
ミドの結晶を液相(母液)から分離した。このようにし
て純度99.9%のN-ビニルアセトアミドが得られた。
得られた廃液の30%を熱分解液と混合し、1回目と同
じ条件で圧力晶析を行った。得られたN-ビニルアセトア
ミドの重合性を評価するため、水を加えて20重量%に
し、V−50(N,N'-アゾビス-(2-アミジノプロパン)
2塩酸塩を600ppm加え、45℃恒温水槽に浸した。
10分後、水で10重量%に希釈しBL型粘度計を用い
て、30℃回転数30RPMで粘度を測定したところ13
0cpsであった。
【0059】
【比較例2】実施例2で得られた熱分解液[I]を20段
のオールダーショー型精留装置を用いて還流比2、3to
rrで減圧蒸留し、純度97.5%のN-ビニルアセトアミ
ドが得られた。得られたN-ビニルアセトアミドについ
て、実施例2と同様にして重合性評価試験を行ったとこ
ろ、粘度は40cpsであった。
【0060】
【実施例3】第二工程を次に示すように行った他は実施
例1と全く同様に行った。 [第二工程]実施例1の第一工程の廃液21.0gを1
0℃に冷却し、200メッシュのステンレス製金網で濾
過した。ケーキを100kg/cm2 に加圧し、5分間保持
して母液を絞った。純度99.4%のN-ビニルアセトア
ミドが4.8g得られ、廃液が16.2g得られた。N-ビ
ニルアセトアミドの回収率は31%であり、廃液の組成
はN-ビニルアセトアミド:66%、α-メトキシエチル
アセトアミド:21%、アセトアミド:13%であっ
た。このN-ビニルアセトアミドの重合性を上と同様に評
価したところ粘度は43cpsであった。 [第2晶をリサイクルした第一工程]N-ビニルアセトア
ミド合成工程で得られた濃縮液14.8gと第二工程の
結晶6.4gを混合し、濃縮液に結晶を溶解した。この
混合液を50℃に調整し、高圧容器内で1800kg/cm
2 に加圧し、5分間保持して、N-ビニルアセトアミドの
結晶を析出指せ、この結晶を50℃で母液から分離し
た。このようにして純度99.7%のN-ビニルアセトア
ミドが10.2g得られ、廃液が10.5g得られた。N-
ビニルアセトアミドの回収率は55%であり、廃液の組
成はN-ビニルアセトアミド:70%、α-メトキシエチ
ルアセトアミド:15%、アセトアミド:8%であっ
た。このN-ビニルアセトアミドの重合性を上と同様に評
価したところ粘度は121cpsであった。
【0061】[第二工程]と[第2晶をリサイクルした
第一工程]を3回繰り返したところ取得結晶量と廃液組
成などがほぼ定常状態となり、その時のN-ビニルアセト
アミド合成工程で得られた濃縮液中N-ビニルアセトアミ
ド基準のN-ビニルアセトアミド回収率は68%であっ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はN-ビニルアセトアミドの製造工程、精製
工程の概念図を示す。
【符号の説明】
図1においてAは反応蒸留塔、Bは蒸留塔、Cは向流抽
出塔、Dはエーテルアミド化反応器、Eはアセタール回
収蒸留塔、Fはメタノール回収蒸留塔、Gはエーテルア
ミド分解反応器、HはN-ビニルアセトアミド減圧蒸留
塔、Iは圧力晶析装置、Jは圧力晶析装置または冷却晶
析装置を示し、実線および1〜21は物質の流れを表
す。
フロントページの続き (72)発明者 中 村 仁 至 大分県大分市大字中の洲2 昭和電工株式 会社大分研究所内 (72)発明者 松 田 雄 市 兵庫県神戸市中央区脇浜町1丁目3番18号 株式会社神戸製鋼所神戸本社内 (72)発明者 吉 田 紳 吾 兵庫県神戸市中央区脇浜町1丁目3番18号 株式会社神戸製鋼所神戸本社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粗N-ビニルカルボン酸アミドから高純度
    のN-ビニルカルボン酸アミドを分離精製するに際し、
    (a)粗N-ビニルカルボン酸アミドから圧力晶析法にてN-
    ビニルカルボン酸アミドの結晶を析出せしめたのち、N-
    ビニルカルボン酸アミドの結晶と液相とを分離して高純
    度のN-ビニルカルボン酸アミドを得る第一工程と、(b)
    第一工程で分離された液相から第一工程より低温で圧力
    晶析法にてN-ビニルカルボン酸アミドの第2晶を得る第
    二工程と、(c)第二工程で得られた第2晶を第一工程に
    おける粗N-ビニルカルボン酸アミドに添加して再利用す
    る第三工程とからなることを特徴とするN-ビニルカルボ
    ン酸アミドの精製方法。
  2. 【請求項2】 粗N-ビニルカルボン酸アミドから高純度
    のN-ビニルカルボン酸アミドを分離精製するに際し、
    (a)粗N-ビニルカルボン酸アミドから圧力晶析法にてN-
    ビニルカルボン酸アミドの結晶を析出せしめたのち、N-
    ビニルカルボン酸アミドの結晶と液相とを分離して高純
    度のN-ビニルカルボン酸アミドを得る第一工程と、(b)
    第一工程で分離された液相から冷却晶析法にてN-ビニル
    カルボン酸アミドの第2晶を得る第二工程と、(c)第二
    工程で得られた第2晶を第一工程における粗N-ビニルカ
    ルボン酸アミドに添加して再利用する第三工程とからな
    ることを特徴とするN-ビニルカルボン酸アミドの精製方
    法。
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