JPH078113Y2 - エンジン組付用治具 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 考案の目的 （産業上の利用分野） この考案は、エンジンのシリンダブロック内にピストン
を挿入し、そのピストンから延びるコネクチングロッド
上にクランクシャフトを組付ける際、前記シリンダブロ
ックを支持するために使用されるエンジン組付用治具に
関するものである。

（従来の技術） 従来、この種の治具を使用してエンジンの組付けを行う
場合には、エンジン組付用治具にシリンダブロックを支
持し、そのシリンダブロック内の各シリンダに複数のピ
ストンを挿入して、各ピストンから延びるコネクチング
ロッド上にクランクシャフトを載置すると共に、各コネ
クチングロッドにそのロッドとの間でクランクシャフト
を挟持するようにコネクチングロッドキャップを被着
し、各キャップをボルト及びナットによりナットランナ
などを用いて締付け固定していた。

（考案が解決しようとする問題点） ところが、この従来のエンジン組付用治具はシリンダブ
ロックを支持する機能のみを有するものであるため、前
記ナットランナによるナットの締付け時に、シリンダ内
のピストンを作業者が下方から保持して、ピストンの移
動を阻止する必要があり、その作業が非常に煩雑である
という問題があった。

又、このようにナットランナによるナットの締付け時
に、作業者がピストンを保持していても、人力で保持し
ている限りピストンを所定の位置で正確に位置決めした
り、ピストンを移動を完全に防止することはできず、そ
のピストンのシリンダ内移動に伴いクランクシャフト７
の位置が定まらず、第３図に示すようにコネクチングロ
ッド６が傾動して、ナットランナ10側のナット11とコネ
チングロッドキャップ８上のボルト９との間に軸線ずれ
が生じやすく、ナット締付け不良や締付けミスを発生し
たり、ボルト９とナット11とが確実に螺合しないことに
基づくそのボルト９とナット11との衝突又は不完全螺合
により、時にはピストンがシリンダから押出され、ピス
トンに嵌着されたピストンリングがシリンダブロックか
らはみ出して、ピストンが破損したりする恐れもあると
いう問題があった。特にナット締付不良状態でエンジン
が稼動されると異常振動が生じたり、時にはエンジン自
体が損傷したりする事態になる恐れがある。

この発明は、前記のような問題点に着目してなされたも
のであって、その目的は、コネクチングロッドに対する
クランクシャフトの組付け時に、ピストンがシリンダブ
ロック内で移動するのを阻止し、作業を容易にすると共
に、コネクチングロッドの傾動でナットランナ等による
組付け不良やミスが発生したり、ピストンリングがシリ
ンダブロックからはみだして、ピストンが破損したりす
る恐れを防止することができるエンジン組付用治具を提
供することにある。

考案の構成 （問題点を解決するための手段） この考案は、前記目的を達成するために、エンジンのシ
リンダブロック内にピストンを挿入し、そのピストンか
ら延びるコネクチングロッド上にクランクシャフトを組
付ける際、前記ピストンの上方にコネクチングロッドが
延びるように前記シリンダブロックを下方から支持する
ために使用されるエンジン組付用治具において、前記ピ
ストンのヘッド側の端面に下方から係合してそのピスト
ンから延びるコネクチングロッドをシリンダブロックに
対する所定位置に保持するようにした保持部材を治具本
体に設け、前記保持部材を、前記端面に係合する係合位
置と、端面から下方へ離間した待避位置とに切り換え配
置可能に構成したものである。

（作用） さて、この考案のエンジン組付用治具を使用すれば、シ
リンダブロックのシリンダ内に挿入されたピストンから
延びるコネクチングロッドを組付ける際、保持部材のピ
ストンのヘッド側端面に係合する係合位置への移動によ
り、ピストンがシリンダブロック内の所定位置に保持さ
れて、そのピストン及びコネクチングロッドの移動が確
実に阻止される。

従って、この考案のエンジン組付用治具によれば、ナッ
トランナ等を使用してコネクチングロッド上にクランク
シャフトを組付ける際、作業者がピストンを保持すると
いう煩雑な操作を必要とせず、作業を容易に行うことが
でき、しかも、ピストンの移動に伴いコネクチングロッ
ドが傾動して、組付け不良や組付けミスが発生する恐れ
を防止することができると共に、ピストンリングがシリ
ンダブロックからはみ出して、ピストンが破損する恐れ
を防止することもできる。又、ピストンを保持する保持
部材はシリンダブロックを支持する治具本体に設けられ
ているため、シリンダブロックに対する保持部材の位置
決めが容易であり、その結果、シリンダブロックとピス
トン，ココネクチングロッドとの位置精度が向上する。
又、コネクチングロッド上にクランクシャフトを組付け
る作業が完了した際には、保持部材をピストンのヘッド
側から下方へ離間した待避位置に移動配置すれば、組付
完了後のシリンダブロックを治具本体から取り出す作業
及び次に行なうシリンダブロックの治具本体への取り付
け作業のときに、シリンダブロックやピストンに保持部
材が干渉することがないため、シリンダブロックやピス
トンに傷が付いたり破損したりする恐れがない。

（実施例） 以下、この考案を具体化したエンジン組付用治具の一実
施例を図面に従って詳細に説明する。

第１図に示すように、基板２を有する治具本体１の上端
にはエンジンのシリンダブロック３をシリンダヘッド側
を下にして嵌挿支持するための支持部材４が設けられて
いる。そして、エンジンの組付けに際し、この治具本体
１の支持部材４にエンジンのシリンダブロック３が支持
され、そのシリンダブロック３の各シリンダ3a内にそれ
ぞれ複数のピストン５が挿入される。そして、これら治
具本体1,基板２及び支持部材４により本考案の治具本体
が構成されている。又、各ピストン５から上方に延びる
コネクチングロッド６上にはクランクシャフト７が載置
されると共に、各コネクチングロッド６にはクランクシ
ャフト７を挟持するようにコネクチングロッドキャップ
８が被着され、各コネクチングロッド６からコネクチン
グロッドキャップ８を貫通してそのキャップ８上に複数
のボルト９が突出される。

ナットランナ10は前記治具本体１の上方に上下動可能に
配設され、その下部にはナット11を担持した状態で回転
される複数の締付体12が設けられている。そして、この
ナットランナ10が下降されながら締付体12が回転される
ことにより、前記コネクチングロッドキャップ８上の各
ボルト９にナット11が螺合されて、コネクチングロッド
キャップ８がコネクチングロッド６に締付け固定され
る。

複数の保持部材12はエンジン組付時に前記シリンダ3a内
の上死点（図面では下側）に位置するピストン５とそれ
ぞれ対応するように、中央部において支軸14により治具
本体１に回動可能に支持されている。各保持部材13の内
端にはピストン５の下面に係合接触可能な球状の接触体
15が全方向回転可能に取付けられ、外端には係合ローラ
16が回転可能に取付けられている。

エアシリンダ17は前記ナットランナ10に対応して治具本
体１の側方に配設され、そのピストンロッド18の上端に
は前記各保持部材13の係合ローラ16に係合可能な押圧板
19が取付けられている。

そして、前記ナットランナ10の作動によりコネクチング
ロッドキャップ８上のボルト９にナット11が締付けられ
る際、それと同時にエアシリンダ17にエアが供給され
て、押圧板19が下降され、押圧板19と係合ローラ16との
係合を介して各保持部材13が第１図に鎖線で示す不作用
位置から実線で示す作用位置に回動されて、その保持部
材13に対応するピストン５がシリンダブロック３内の所
定高さ位置すなわち上死点位置に保持される。

従って、ナットランナ10によりコネクチングロッド６上
にクランクシャフト７が組付けられる際には、クランク
シャフト７がシリンダブロック３の軸支部に支持される
ために、クランクシャフト７が所定位置に定まる。この
ため、クランクシャフト７を介して他のピストン５が下
死点位置等の所定位置に保持され、結果的にコネクチン
グロッド６及びボルト９が垂直線上に傾くことなく位置
した状態で保持される。従って、ナットランナ10側のナ
ット11とコネクチングロッドキャップ８上のボルト９と
の間に軸線のずれが生じることはなく、ナット11はボル
ト９に確実に螺合されて、ナット11の締付け不良や締付
けミスが発生する恐れを防止することができ、エンジン
稼働にともなう異常振動の発生やエンジン損傷を防止で
きる。又、ナット11とボルト９との軸線にずれを生じた
まま、ナットランナ10の締付体12が下降されることはな
く、ピストン５の外周に嵌着されたピストンリング5aが
シリンダブロック３からはみ出して、ピストン５が破損
する恐れも全くない。

なお、この実施例では保持部材13に内端に球状の接触体
15が全方向回転可能に設けられているため、シリンダブ
ロック３が支持部材４内で所定位置に正確に位置決めさ
れていなくても、この接触体15がピストン５の下面に確
実に接触し、ピストン５が所定の高さ位置に正確に保持
される。又、保持部材13の外端には係合ローラ16が設け
られているため、治具本体１及びそれに支持されたシリ
ンダブロック３等が移動される際、各保持部材13の係合
ローラ16が押圧板19の下面に接触しながら回転され、治
具本体１等の移動が円滑に行われる。そして、前記ナッ
トランナ10によるナット11の締付け終了後は、エアシリ
ンダ17が逆に作動されて押圧板19が上昇され、保持部材
13が第１図に鎖線で示す不作用位置に回動されて、ピス
トン５の保持が解放される。

なお、この考案は前記実施例に限定されるものではな
く、例えば第２図に示すようにシリンダブロック３内に
挿入された各ピストン５の下方における基板２上にエア
シリンダ17をそれぞれ対向配置し、このエアシリンダ17
のピストンロッド18の上端に全方向回転可能な接触体15
を設けて、このピストンロッド18を保持部材としてピス
トン５の下面を直接保持するように構成したり、エンジ
ン組付時に下死点に位置するピストン５を保持できるよ
うに上死点のピストン５を保持する接触体15よりも高い
位置の接触体15を有する保持部材13を設けて例えば全ピ
ストン５を保持できるように構成したり（このように構
成すれば、一層確実にピストン保持を行うことができ
る）、下死点に位置するピストン５のみを保持するよう
に構成したりする等、この考案の趣旨から逸脱しない範
囲で各部の構成を任意に変更して具体化することも可能
である。

考案の効果 以上詳述したようにこの考案によれば、次のような優れ
た効果を奏する。

ナットランナ等を使用してコネクチングロッド上にクラ
ンクシャフトを組付ける際、保持部材をピストンのヘッ
ド側端面に係合する係合位置へ移動配置すれば、ピスト
ンがシリンダブロック内の所定位置に保持されて、その
ピストンの移動が確実に阻止されるので、作業者がピス
トンを保持するという煩雑な操作を必要とせず、組付作
業を容易に行なうことができる。

又、ピストンの移動に伴いコネクチングロッドが傾動し
て、組付け不良や組付けミスが発生する恐れを防止する
ことができる共に、ピストンリングがシリンダブロック
からはみ出して、ピストンが破損する恐れを防止するこ
ともできる。

更に、ピストンを保持する保持部材はシリンダブロック
を支持する治具本体に設けられているため、シリンダブ
ロックに対する保持部材の位置決めが容易であり、その
結果、シリンダブロックとピストン，コネクチングロッ
ドとの位置精度が向上する。

更に又、コネクチングロッド上にクランクシャフトを組
付ける作業が完了した際には、保持部材をピストンのヘ
ッド側から下方へ離間した待避位置に移動配置すれば、
組付完了後のシリンダブロックを治具本体から取り出す
作業及び次に行なうシリンダブロックの治具本体への取
り付け作業のときに、シリンダブロックやピストンに保
持部材が干渉することがないため、シリンダブロックや
ピストンに傷が付いたり破損したりする恐れを防止する
ことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案を具体化したエンジン組付用治具の一
実施例を使用状態で示す要部断面図、第２図は同じく別
の実施例を示す要部断面図、第３図は従来の問題点を説
明するための部分断面図である。 1,2,4……治具本体を構成する治具本体，基板及び支持
部材、３……シリンダブロック、５……ピストン、６…
…コネクチングロッド、７……クランクシャフト、８…
…コネクチングロッドキャップ、９……ボルト、10……
ナットランナ、11……ナット、13……保持部材。

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】エンジンのシリンダブロック内にピストン
   を挿入し、そのピストンから延びるコネクチングロッド
   上にクランクシャフトを組付ける際、前記ピストンの上
   方にコネクチングロッドが延びるように前記シリンダブ
   ロックを下方から支持するために使用されるエンジン組
   付用治具において、 前記ピストンのヘッド側の端面に下方から係合してその
   ピストンから延びるコネクチングロッドをシリンダブロ
   ックに対する所定位置に保持するようにした保持部材を
   治具本体に設け、前記保持部材を、前記端面に係合する
   係合位置と、端面から下方へ離間した待避位置とに切り
   換え配置可能に構成したエンジン組付用治具。
2. 【請求項２】前記保持部材は、エアシリンダにより前記
   ２位置の間を移動する実用新案登録請求の範囲第１項に
   記載のエンジン組付用治具。
3. 【請求項３】保持部材は回転可能な球状接触体を有し、
   その球状接触体においてピストンに係合する実用新案登
   録請求の範囲第１項又は第２項に記載のエンジン組付用
   治具。