JPH07770A

JPH07770A - 中空糸膜ろ過装置およびその洗浄方法

Info

Publication number: JPH07770A
Application number: JP14582393A
Authority: JP
Inventors: Kiyoshi Ito; 喜与志伊藤
Original assignee: Toshiba Corp
Current assignee: Toshiba Corp
Priority date: 1993-06-17
Filing date: 1993-06-17
Publication date: 1995-01-06
Anticipated expiration: 2017-04-08
Also published as: JP3273665B2

Abstract

(57)【要約】【目的】差圧回復率が高く、中空糸膜の使用寿命が延
び、難ろ過性の水質でも対応できる。【構成】ろ過器４内を管板５で処理水室６とろ過水室７
に区画する。管板５に中空糸膜２を多数本束ねた中空糸
膜モジュール１を懸架する。処理水室６内を仕切板10に
より上室８と下室９とに区画する。仕切板10に中空糸膜
モジュール１を保護する保護筒３を固定する。保護筒３
の下方に気泡噴出ノズル12を設ける。上室８と連通し保
護筒３の上端部から中空糸膜モジュール１の長さの１／
２前後の水頭差Ｈを有するヘッドタンク13を設ける。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は原子力発電所や火力発電
所の復水処理や産業廃水処理等において酸化鉄クラッド
等微粒子を除去するために用いる中空糸膜ろ過装置およ
びその洗浄方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】中空糸膜を用いたろ過器は微細孔を多数
有する中空糸膜を多数本束ねて中空糸膜モジュールを形
成し、この中空糸膜モジュールの多数本をろ過器に横設
した管板に懸架したものである。

【０００３】そのろ過工程は管板で区画した１次側に原
水を供給することにより、中空糸膜の外側から内側へ原
水を通過させて、各中空糸膜の外側で原水中の微粒子を
捕捉し、中空糸膜の内側から得るろ過水を管板で区画し
た２次側に集合してろ過器から流出させる。

【０００４】このようなろ過工程を行うことにより、原
水中に含まれるクラッド等の微粒子が中空糸膜の外表面
に付着するため、ろ過処理時間の経過に伴い、微粒子の
付着量が増加し、次第にろ過効率が低下する問題があ
る。

【０００５】そこで、このような問題に対処するため、
中空糸膜の内側に加圧気体を導入して、ろ過水または洗
浄水を中空糸膜の内側から外側へ噴出させると共に、前
記中空糸膜ろ過器の下方から多数の気泡を上方へ向けて
噴出させて中空糸膜の外表面に付着した付着物を逆洗洗
浄する方法が例えば特開昭60-19002号公報において提案
されている。

【０００６】これに類する中空糸膜ろ過装置の逆洗洗浄
方法は多数提案されているが、これらの方法では、一旦
ろ過したろ過水を逆方向に流し、せっかくろ過したろ過
水を元に戻している。従って、この方法は全体としてろ
過効率を低下させることになり、不経済なものと言わざ
るを得ない。

【０００７】また、大容量のろ過器ではろ過水を押し出
すための加圧気体も一度に大量に必要となるため、大容
量の逆洗空気貯槽や、その空気は中空糸膜内面に晒され
るため、中空糸膜内面からの目詰まり防止上から空気ろ
過器の設置や、これら空気逆洗設備を構成する空気流量
制御装置も備える必要がある。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】上述したような中空糸
膜ろ過装置で結晶状の微粒子、例えば結晶鉄クラッドな
どを含んだ復水を処理した場合は長期間処理しても、ろ
過差圧はそれほど上昇せず、程よい間隔で前記気体およ
び水を用いる洗浄方法で実施しても何ら支障はなかっ
た。

【０００９】しかしながら、復水中に非結晶鉄クラッド
が存在すると、この非晶鉄は結晶鉄に比べて粒子が細か
く、粘結性が高いため、中空糸膜表面をべったりと覆う
ように圧密化し、ろ過通水を妨げ、ろ過差圧上昇が短期
間の処理で発生する。

【００１０】また、前記気体や水を用いる方法では逆洗
洗浄効果がきかず、差圧が元に戻らず、短期間のうちに
中空糸膜の寿命に至り、その結果、中空糸膜モジュール
を再び用いることができない。

【００１１】したがって、かかる状態、すなわち非晶鉄
で汚染された中空糸膜モジュールを適当な洗浄薬液で除
去することが考えられるが、原子力発電所の復水のごと
く放射性物質も含む酸化鉄の除去を対象とした中空糸膜
モジュールを用いるろ過器においては前述の薬液による
洗浄排液は放射性廃棄物処理の対象となる。

【００１２】しかし、洗浄排液中に含まれる還元剤や酸
を中和して生ずる塩等が放射性廃棄物処理の際の固形物
を増加させるという点で好ましくない。薬液洗浄排液の
発生は原子力以外の火力でも産業廃水処理上、環境保護
の観点から中和処理などが必要であり、好ましくない課
題がある。

【００１３】したがって、非結晶鉄の性状、つまり、粘
結性が高く、べったりとした結晶性を持たない懸濁物を
含む原水であっても中空糸の膜面に付着した付着物を効
果的に除去するとともに、しかも、その洗浄排液中に当
該除去した付着物以外の固形物を増加させないような中
空糸膜ろ過装置およびその洗浄方法の確立が要望されて
いる。

【００１４】本発明は上記課題を解決するためになされ
たもので、中空糸膜モジュールを用いるろ過器におい
て、従来の中空糸膜の内側に加圧気体を導入してろ過水
の押し逆洗し、中空糸膜モジュールの下方から多数の気
泡を供給して洗浄する方法を行っても容易に剥離できな
いような、中空糸の膜面に強固に付着している非結晶状
の鉄酸化物や懸濁物であっても効果的に除去できるとと
もに、しかもその洗浄排液中に鉄酸化物以外の固形物も
増加させることがない中空糸膜ろ過装置およびその洗浄
方法を提供することにある。

【００１５】

【課題を解決するための手段】本願第１の発明は、中空
糸膜を用いるろ過器内を１次側と２次側に区画する管板
に中空糸膜を多数本束ねて形成した中空糸膜モジュール
を懸架してなるろ過器の１次側に上室と下室に区画する
仕切板と、この仕切板に上下端を開口して中空糸膜を保
護する保護筒の外側中間部を固定し、前記保護筒の下部
に気泡噴出ノズルの先端を格納され、前記仕切板上室と
連通するヘッドタンクを設けたことを特徴とするもので
ある。

【００１６】また本願第２の発明は、前記ろ過器および
前記ヘッドタンク内に水を満たし、前記仕切板の下側の
水を前記保護筒の水封が切れない位置まで水位を下げ
て、前記仕切板下側の下室上部に空気溜りを形成して、
前記保護筒下部の気泡噴出ノズルから気泡を供給する
と、水中に存する各中空糸膜の近傍の水を気泡の上昇流
により、撹拌され気泡は保護筒内を上昇し、仕切板の上
室に達し、空気溜りを形成して上室の水位を下降せし
め、保護筒内の水位も同時に下降すると仕切板下室の水
位は上昇して、下室上部の空気溜りを圧縮する工程と気
泡の連続供給により、前記仕切板上室の空気溜りはヘッ
ドタンクに連通する管路に到達し、ヘッドタンクへ抜
け、上室の空気溜りの圧力は急激に下がり、仕切板の下
室内の圧縮された空気溜りは膨張して、保護筒内の水位
を上昇させる空気の膨張工程とが交互に作用することに
より、保護筒内に気泡を同拌した上昇流と下降流を交互
に発生させて各中空糸膜を揺らし、中空糸膜の外面に捕
捉された微粒子を剥離させることを特徴とする中空糸膜
ろ過装置の洗浄方法である。

【００１７】さらに本願第３の発明は、前記中空糸膜ろ
過装置のろ過器およびヘッドタンク内を満水にして、ろ
過器入口ノズルとヘッドタンク出口ノズル間にポンプを
設けた管路においてろ過器およびヘッドタンク内の水の
強制循環と各中空糸膜の保護筒内に気泡を供給して気液
混相流により各中空糸膜を揺らし、中空糸膜の外面に捕
捉された微粒子を剥離させることを特徴とする中空糸膜
ろ過装置の洗浄方法である。

【００１８】本願第４の発明は前記中空糸膜ろ過装置に
おいて、ヘッドタンク内に過酸化水素水溶液や硫酸水溶
液等の薬品を注入し、各中空糸膜の保護筒内に気泡を供
給しながら強制循環洗浄することを特徴とする中空糸膜
ろ過装置の洗浄方法である。

【００１９】

【作用】本発明の作用は、従来から行っている中空糸膜
内面からの水逆洗操作は行わず、ろ過器内の処理水室を
仕切板により、上室と下室に区画して、その仕切板に各
中空糸膜モジュールの保護筒を上下開口して設け、上室
側に中空糸膜モジュール長さの１／２相当の水頭圧を作
用させて下室側の水を保護管の水封が切れない位置まで
下降させて仕切板下室に負圧状態を作る。

【００２０】この状態で水封された保護筒下部に気泡を
連続供給すると、仕切板上室に空気溜りができ、上室の
圧力が高まり、仕切板上室の水位も保護筒の水位も下が
る。

【００２１】さらに、連続して気泡を供給すると仕切板
上部の空気溜りはヘッドタンクの連通管路に到達し、空
気溜りの空気の一部がヘッドタンクへ抜けて、仕切板上
部の圧力は急激に下がると同時に仕切板下部の圧縮され
た空気は膨張し、保護筒内の水位を上げる。

【００２２】このように気泡供給を継続すると、保護筒
内に交互に気液混相流が上昇および下降して中空糸膜を
揺さぶり、さらに中空糸膜束の中にも気泡が導入され
る。従来の方法では気泡が導入されても保護筒上部には
大気開放されており、中空糸膜モジュールの中空糸膜束
の中までは気泡が導入されなかったが、本発明では中空
糸膜束全体を洗浄できる。

【００２３】また、保護筒の上下端を開放したことによ
り、保護管内を強制的に洗浄水を循環させることがで
き、また、同時に気泡供給により、気液混相流が作れる
ので、一層効果的な洗浄が可能となる。

【００２４】さらには、前記洗浄水を過酸化水素水溶液
や硫酸水溶液等の薬品の水溶液に置き換えて、気液混相
流による強制循環洗浄ができるので、より一層効果的な
洗浄が可能となる。

【００２５】また、強制循環ポンプの吸込側に再付着防
止フィルタを設けると、洗浄により中空糸膜表面から剥
離した付着物が捕捉され、中空糸膜への再付着が防止さ
れ、さらにより一層効果的な洗浄が可能となる。

【００２６】

【実施例】本発明に係る中空糸膜ろ過装置の第１の実施
例を図１により説明する。図１は本発明に用いる中空糸
膜ろ過装置の断面図である。図１において、符号１は中
空糸膜モジュールで、この中空糸膜モジュール１は中空
糸膜２を多数本束ねて形成したものである。

【００２７】中空糸膜モジュール１は上下両端開口の保
護筒３で保護される。ろ過器４の上方部に管板５を設
け、ろ過器４内を処理水室６とろ過水室７に区画し、管
板５に多数本中空糸膜モジュール１を懸架する。

【００２８】また、ろ過器４の処理水室６を上室８と下
室９を区画する仕切板10を設け、この仕切板10には多数
本の中空糸膜モジュール１を各々保護する保護筒３の中
間部を固定し、仕切板10により処理水室６の上室８と下
室９とを各々気密に隔離する。なお、保護筒３の上下両
端は各々開口している。

【００２９】また、ろ過器４内の下方、すなわち処理水
室６の下室９内に気泡分配管11を配置する。この気泡分
配管11には中空糸膜モジュール１および保護筒３の直下
に気泡噴出ノズル12を対応させ、この気泡噴出ノズル12
の先端が保護筒３内に格納されるように構成する。

【００３０】一方、処理水室６の上室８には保護筒３の
上端面と中空糸膜モジュール１の長さの１／２程度の水
頭差Ｈを設けたヘッドタンク13と連通するベント管路14
と、上室８内の水を流出ドレンノズル15および上室８の
空気を吐出するエアベントノズル16を各々設ける。

【００３１】なお、処理水室６の下室９には、下室９内
のエアベントノズル17を設け、ろ過器４の最下部にはド
レンも兼用する処理水入口ノズル18を設けて、入口ノズ
ル18の上部にバッフルプレート19を配置する。

【００３２】また、ろ過器４の上部にはろ過水流出ノズ
ル20とろ過水ドレンノズル21を設ける。一方、ヘッドタ
ンク13の下部側面には上室８と連通したベント管路14に
接続するノズル22を連通弁23を介して設けるとともに、
底面に出口ノズル24を上部側面にオーバーノズル25Ａ，
25Ｂを設けている。

【００３３】上記構成の中空糸膜ろ過装置を用いて処理
対象として非結晶鉄酸化物を含む復水を処理水の例とし
てろ過方法および洗浄方法を説明する。

【００３４】ろ過工程において、処理水は処理水入口ノ
ズル18から処理水室６の下室９に流入し、中空糸膜モジ
ュール１により処理水中の非結晶鉄を含む酸化鉄をろ過
し、ろ過水はろ過水室７で集合し、ろ過水流出ノズル20
から流出する。

【００３５】中空糸膜２によりろ過された酸化鉄は図２
に示したように中空糸膜２の表面上に非結晶鉄を含む酸
化鉄付着層28と酸化鉄付着層29を形成する。なお、図２
中矢印線は処理水の流入方向を示している。

【００３６】ここで、酸化鉄付着層28は非結晶性で粘結
性が高く、比較的強く付着している微細な酸化鉄からな
る緻密な付着層であり、十分な洗浄を行わなければ剥離
し難い付着層であり、ろ過と洗浄を繰り返すたびに徐々
に蓄積され、通常、この蓄積が洗浄後のろ過差圧を上昇
させる大きな因子となる。さらに、酸化鉄付着層29は酸
化鉄付着層28の外側に比較的弱く付着している比較的大
きな酸化鉄からなる粗い付着層であり、比較的容易に剥
離できる。

【００３７】本実施例に係るろ過装置においては非結晶
性で粘結性が高く、比較的強く付着している微細な酸化
鉄からなる緻密な酸化鉄付着層28でも容易に剥離でき
る。

【００３８】すなわち、ろ過を続行することにより、ろ
過器４の差圧が規定の値に達した際には、ろ過を停止
し、中空糸膜表面に形成された酸化鉄付着層を除去する
ための洗浄工程が行われる。

【００３９】次に本発明に係る第２の実施例として中空
糸膜ろ過装置の洗浄方法を図３から図10までの工程フロ
ー図により説明する。なお、本実施例では図１に示した
ろ過装置を使用する。

【００４０】ろ過工程により、ろ過器４の差圧が規定の
値に達した際にはろ過を停止するため、図３に示すよう
に処理水入口弁31を閉め、ろ過水出口弁32を閉じ、ろ過
器４をろ過工程から隔離する（工程１）。

【００４１】次に図４に示したようにドームドレン工程
としてろ過水室７内の圧抜きのためろ過水出口弁32およ
び圧抜き弁33を開け、ろ過水をドームドレン弁34を開き
ドレンする（工程２）。この工程２の際、ろ過水は排出
せず、ろ過水室７の圧抜き操作だけでも洗浄効果には支
障ない。

【００４２】次に図５に示したように洗浄水を処理水入
口弁31を開き、ろ過器４の処理水室６を介してヘッドタ
ンク13との連通弁23を開け、ヘッドタンク13のオーバー
フローノズル25Ｂまで水張りを行う（工程３）。

【００４３】次に処理水室６の下室９内の上部空間に負
圧状態の空気溜りを形成するため図６に示したように処
理水入口ノズル18と兼用した洗浄廃水弁35を開き、水抜
き（工程４）を保護筒３下端の水封が切れない水位まで
行う。

【００４４】ヘッドタンク13への連通弁23を開状態とし
て処理水室６の下方の気泡分離管11の空気入口弁36を開
にして、圧縮空気を気泡噴出ノズル12から保護筒３内に
気泡を供給する。

【００４５】すると、気泡は上方に移動し、保護筒３内
で水中に存する各中空糸膜２の近傍の水は気泡の上昇流
に撹拌され、気泡は保護筒３内を上昇し、仕切板10の上
室８に達し、徐々に空気溜りを形成する。

【００４６】空気が圧縮されると、図７に示したように
上室８内の水位が下降し始める。同時に保護筒３内の水
位も下降し、仕切板10の下室９内の水位が上昇して、下
室９の上部の空気溜りを圧縮する工程（工程５）が形成
される。

【００４７】さらに、気泡の供給を継続すると仕切板10
の上室８内の空気溜りはヘッドタンク13に連通するベン
ト管路14に到達し、気泡はベント管路14内を呼吸するよ
うにして図８に示したようにヘッドタンク13へ抜け、大
気へ開放される。

【００４８】すると、仕切板10の上室８の空気溜りの圧
力は急激に下がると同時に下室９内上部に圧縮された空
気溜りは膨張して、保護筒３内の水位を上昇させる空気
の膨張工程（工程６）が生じる。

【００４９】この工程５と工程６が気泡の連続供給によ
り交互に作用することにより、図９に示したように保護
筒３内に気泡を同拌した上昇流と下降流を交互に発生さ
せて、各中空糸膜２を揺らし、中空糸膜の外面に付着し
た酸化鉄付着層28，29を剥離させる洗浄工程（工程７）
を行う。

【００５０】十分にスクラビングを行った後、空気入口
弁36を閉じて圧縮空気の供給を中止し、弁37，38を開口
したまま、洗浄廃水を処理水室６の上室８からは弁39を
開口し、下室９からは弁35を開口し、剥離した微粒子も
含む洗浄廃水を排出する。

【００５１】一方、図10に示したようにヘッドタンク13
内の洗浄廃水も弁40を開口して排出する工程を行う（工
程８）。

【００５２】本発明に係る第３の実施例を図11により説
明する。前述した図１に示す中空糸膜ろ過装置におい
て、ろ過器４の処理水入口配管48にヘッドタンク13の洗
浄水出口配管としての強制循環管路49とのライン上に洗
浄水を強制循環するためのポンプ46を設ける。

【００５３】このように構成した中空糸膜ろ過装置でヘ
ッドタンク13に洗浄水を入れてろ過器４内の処理水室６
を仕切板10によって上室８と下室９に区画されることに
より、中空糸膜モジュール１を格納した保護筒３内を洗
浄水が循環する。

【００５４】洗浄水を循環させると同時に弁36を開口し
て圧縮された空気を空気分配管11に供給すると気泡噴出
ノズル12から気泡が保護筒３内に吹き出し、洗浄水の強
制装置により、気液混相流となって、各中空糸膜を激し
く揺らして洗浄を行う。

【００５５】この場合でも、ヘッドタンク13に水頭圧を
作用させているため、保護筒３内の気泡も出難く、各中
空糸膜の束内に溜る効果があり、各中空糸膜の外面に付
着した酸化鉄の微粒子を剥離させることができる。

【００５６】本発明による第４の実施例は第３の実施例
において洗浄水の代りに過酸化水素水溶液や硫酸水溶液
等の薬品を注入して、強制循環するとともに、圧縮空気
も気泡噴出ノズル12から連続供給して、気液混相流を作
り、各中空糸膜の外面に付着した酸化鉄の微粒子を溶解
して剥離させる中空糸膜モジュール１の洗浄方法であ
る。

【００５７】本発明による第５の実施例を図12により説
明する。本発明は第３の実施例および第４の実施例にお
いて洗浄水がろ過器４の入口から処理水室６を通り、ヘ
ッドタンク13に入り、ポンプ46に戻る強制循環管路49で
ポンプ46の入口に再付着防止フィルタ47を設けて、各中
空糸膜モジュール１から除去した酸化鉄の微粒子を捕捉
し、中空糸膜モジュール１に再付着防止を図る洗浄方法
である。

【００５８】上述した本発明の実施例２〜５において共
通してスクラビング工程の前後にろ過水流出ノズル20に
図示しない圧縮空気流入管を接続して、圧縮空気を流入
してろ過水室７に存在するろ過水を各中空糸膜２の内側
から外側に逆流させる逆洗を実施することもできる。

【００５９】次に本発明の効果をより明確にするための
具体化例を説明する。具体例内径 0.3mm、外径 0.4mm、長さ 860mmの中空糸膜10,000
本を束ねた直径80mmの中空糸膜モジュール（ろ過総面積
13ｍ²）１本を実機大ろ過器において非結晶鉄を含む復
水の実液テストを実施した。各中空糸膜の外側から内側
へ通す外圧型として 2.6ｍ³／Ｈでろ過した。本実液テ
ストの結果、図13に示すようなろ過差圧挙動を示した。

【００６０】まず、最初の６サイクルでは従来の洗浄方
法による気体および水の逆流による洗浄再生を行ったと
ころ、３サイクル目でろ過札が上昇し始め、４サイク
ル、５サイクルでは急上昇し、６サイクル目では逆洗し
ても差圧が戻らず、運転不能となった。

【００６１】これを本発明の中空糸膜ろ過装置に中空糸
膜モジュールを装着して逆洗洗浄したところ、約80％の
差圧回復率であった。この後、14サイクルまで続行した
が、一度目詰まった中空糸膜モジュールであったため、
逆洗のサイクルは縮まったが逆洗による差圧回復は良好
であった。

【００６２】なお、本発明に係る洗浄方法を新しい中空
糸膜を使用した場合でのろ過差圧の挙動、つまり新膜の
回復状態の様子を図14に示す。横軸はサイクル数で、縦
軸はろ過差圧（Kg／cm²）である。

【００６３】図14から通水および洗浄サイクルは等イン
ターバルで実施され、逆洗洗浄による差圧回復状態は良
好であることが認められた。また、同一条件で実施した
従来方法では図15に示すごとく、第３サイクルがろ過差
圧が上昇し、第４サイクルでは逆洗洗浄による差圧回復
も僅かとなり、差圧の急上昇を招き、運転不能となっ
た。

【００６４】

【発明の効果】本発明のろ過装置によれば、単なる気泡
の振動または気体，水等の逆流では容易に剥離できない
ような中空糸膜の膜面に強固に付着した非結晶性の酸化
鉄でも容易に剥離させることができる。

【００６５】また、本発明の洗浄方法によれば、還元剤
や酸等の固形物を増加させるような薬剤を使用しなくと
もろ過差圧の回復ができ、原子力発電所のように洗浄排
液をさらに放射性廃棄物処理をしなければならないよう
な場合には有効である。

【００６６】一方、薬剤を使用しても支障のない産業分
野では気液混相流による強制循環洗浄はより一層の効果
が期待でき、中空糸膜ろ過装置の適用範囲の拡大が可能
となる。

【００６７】さらに、ろ過水を各々の中空糸膜の内側か
ら逆流させる逆洗空気貯槽や空気流量設備を設ける必要
がなく、復水処理のような大容量の浄化設備に導入した
場合、経済的な効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る中空糸膜ろ過装置の一実施例を示
す縦断面図。

【図２】図１におけるろ過中の中空糸膜の状態を拡大し
て示す部分断面図。

【図３】本発明の第２の実施例において、中空糸膜ろ過
装置の洗浄方法の工程１（ろ過停止）を示す概略的断面
図。

【図４】図３において、工程２（ドームドレン）を示す
概略的断面図。

【図５】図３において、工程３（洗浄水水張り）を示す
概略的断面図。

【図６】図３において、工程４（水抜き、処理水室下室
空気溜り形成（負圧状態））を示す概略的断面図。

【図７】図３において、工程５（処理水室上室空気溜り
形成（空気圧縮））を示す概略的断面図。

【図８】図３において、工程６（処理水室下室空気膨
張）を示す概略的断面図。

【図９】図３において、工程７（洗浄工程）を示す概略
的断面図。

【図１０】図３において、工程８（洗浄排液水ドレン）
を概略的に示す概略的断面図。

【図１１】本発明の第３の実施例において、強制循環方
式による洗浄方法のフローを示す概略的断面図。

【図１２】本発明の第５の実施例において、強制循環管
路に再付着防止フィルタを設けた例を示す概略的断面
図。

【図１３】本発明の具体例において、逆洗サイクルによ
るろ過差圧の回復状態を示す波形図。

【図１４】本発明に係る洗浄方法におけるろ過差圧の挙
動を示す波形図。

【図１５】従来の中空糸膜ろ過装置の洗浄方法における
ろ過差圧回復状態を示す波形図。

【符号の説明】

１…中空糸膜モジュール、２…中空糸膜、３…保護筒、
４…ろ過器、５…管板、６…処理水室、７…ろ過水室、
８…上室、９…下室、10…仕切板、11…気泡分配管、12
…気泡噴出ノズル、13…ヘッドタンク、14…ベント管
路、15…ドレンノズル、16，17…エアベントノズル、18
…処理水入口ノズル、19…バッフルプレート、20…ろ過
水流出ノズル、21…ろ過水ドレンノズル、22…ノズル、
23…連通弁、24…出口ノズル、25Ａ，25Ｂ…オーバーフ
ローノズル、28，29…酸化鉄付着層、31…処理水入口
弁、32…ろ過水出口弁、33〜45…弁、46…ポンプ、47…
再付着防止フィルタ、48…処理水入口配管、49…強制循
環管路。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】ろ過器内を管板により処理水室とろ過水
室に区画し、前記管板に中空糸膜を多数本束ねて形成し
た中空糸膜モジュールを懸架し、前記処理水室内を仕切
板により上室と下室を区画し、前記仕切板に上下端を開
口して前記中空糸膜モジュールを保護する保護筒の外側
中間部を固定し、前記保護筒の下方に気泡噴出ノズルを
設け、前記上室と連通するヘッドタンクを設けてなるこ
とを特徴とする中空糸膜ろ過装置。
【請求項２】請求項１記載の中空糸膜ろ過装置の洗浄
方法において、前記ろ過器および前記ヘッドタンク内に
水を満たし、前記仕切板下側の水位を前記保護筒の水封
が切れない位置まで下げ、前記仕切板下側の下室上部に
空気溜りを形成して前記保護筒下部の気泡噴出ノズルか
ら気泡を供給し、水中に存する前記各中空糸膜近傍の水
を気泡の上昇流により撹拌し、前記気泡を前記保護筒内
を上昇させて前記仕切板の上室に到達させ、前記上室の
水位を下降させて前記保護筒内の水位を下降させ、前記
仕切板下室の水位を上昇させて前記空気溜りを圧縮し、
前記気泡の連続供給により前記仕切板上室の空気溜りを
ヘッドタンクに連通する管路に到達させ、前記保護筒内
に気泡を同拌した上昇流と下降流を交互に発生させて前
記各中空糸膜を揺らし、前記中空糸膜の外面に捕捉され
た微粒子を剥離させることを特徴とする中空糸膜ろ過装
置の洗浄方法。
【請求項３】前記ろ過器およびヘッドタンク内を満水
にして、前記ろ過器入口ノズルと前記ヘッドタンク出口
ノズル間にポンプを設けた管路に前記ろ過器および前記
ヘッドタンク内の水の強制循環と前記各中空糸膜の保護
筒内に気泡を供給して気液混相流により前記各中空糸膜
を揺らすことを特徴とする請求項２記載の中空糸膜ろ過
装置の洗浄方法。
【請求項４】前記ヘッドタンク内に過酸化水素水溶液
や硫酸水溶液等の薬品を注入し、各中空糸膜の保護筒内
に気泡を供給しながら強制循環洗浄することを特徴とす
る請求項２または請求項３記載の中空糸膜ろ過装置の洗
浄方法。