JPH0776734A - 磁束密度の高い方向性珪素鋼板の製造方法 - Google Patents

磁束密度の高い方向性珪素鋼板の製造方法

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JPH0776734A
JPH0776734A JP5161164A JP16116493A JPH0776734A JP H0776734 A JPH0776734 A JP H0776734A JP 5161164 A JP5161164 A JP 5161164A JP 16116493 A JP16116493 A JP 16116493A JP H0776734 A JPH0776734 A JP H0776734A
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和志 石山
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靖 田中
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 短時間の最終焼鈍で安定したGoss組織を形成
することができる磁束密度の高い方向性珪素鋼板の製造
方法を提供することを目的とする。 【構成】 重量%で、C:0.01% 以下、Si:2.5〜7%、S:0.
01% 以下、Al: 0.01% 以下、N:0.01% 以下、Cu:0.01%以
下、Nb:5ppm 以下、Sn:10ppm以下、Ti:20ppm以下であ
り、かつ、[Nb]+ 0.5×[Sn]+0.25[Ti]≦8を満足し、
残部Fe及びその他不可避的不純物からなる鋼材を1000
℃以上に保持した後、仕上温度が700 〜950℃の熱間圧
延を施し、次いで、圧延率30〜85%の一次冷間圧延を施
した後、600〜900 ℃の温度で焼鈍し、さらに圧延率40
〜80%の二次冷間圧延を施し、その後600 〜900 ℃の温
度で焼鈍し、さらに圧延率50〜75%の三次冷間圧延を施
した後、水素のような還元性雰囲気中1000〜1300℃の温
度で10分間以下の間焼鈍して磁束密度の高い方向性珪
素鋼板を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、Goss 方位に集積し
た結晶方位を有する磁束密度の高い方向性珪素鋼板を経
済的に短時間で安定して製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】方向性珪素鋼板は、無方向性珪素鋼板よ
りも良好な磁気特性を有しており、主としてトランスの
鉄心として使用されている。Gossによる{110}<0
01>方位に揃った結晶粒を持つ方向性珪素鋼板の製造
方法の発明以来、このようなGoss 組織を有する方向性
珪素鋼板の製造方法が数多く提案されている。これらの
提案を大別すると以下の3つに要約される。
【0003】第一の方法は、2回冷圧法と呼ばれる方法
である。この方法はGoss法を改良した方法であり、製鋼
段階でMn,Sb,S,Se等を添加し、これらの元素
およびその微細析出物による結晶粒成長抑制作用を利用
して2次再結晶を行わせるもである。具体的には、C:
0.02〜0.08wt%、Si:2.0〜4.0wt
%、Mn:0.2wt%程度、S:0.005〜0.0
5wt%の成分を持つ鋼塊を溶製し熱間圧延によって板
厚2.0〜3.0mmに圧延後、熱延板焼鈍を施し、次
いで圧延率70%程度の冷間圧延を施し、引き続き85
0〜1050℃の中間焼鈍を施し、さらに圧延率60〜
70%で冷間圧延を施し、800〜850℃で脱炭焼鈍
後、1100℃以上の温度で5〜50時間焼鈍して2次
再結晶及びインヒビターの除去(純化焼鈍)を行い、Go
ss粒を成長させる(例えば、特公昭51−13469
号)。
【0004】第二の方法は1回冷圧法と呼ばれる方法で
ある。この方法は冷間圧延回数を1回にした方法で、2
回冷圧法よりもGoss粒の集積度が高いことで知られてい
る。具体的には、C:0.02〜0.08wt%、S
i:2.0〜4.0wt%、Mn:0.2wt%程度、
N:0.01〜0.05wt%、Al:0.1wt%程
度の成分を持つ鋼塊を溶製し熱間圧延によって板厚2.
0〜3.0mmに圧延後、熱延板焼鈍を施してAlN析
出処理を施し、次いで圧延率80〜95%の冷間圧延を
行った後、脱炭焼鈍を施し、しかる後、1200℃で2
0時間の高温焼鈍によって2次再結晶及びインヒビター
の除去(純化焼鈍)を行い、Goss粒を成長させる(例え
ば、特公昭40−15644号)。
【0005】第三の方法は、インヒビターを用いずにGo
ss組織を形成する方法である(例えば、特開昭64−5
5339号、特開平2−57635号等)。この方法
は、単純に特定条件の圧延と熱処理とを組み合わせるこ
とによりGoss粒を発達させるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述したように第一、
第二の方法は脱炭焼鈍、純化焼鈍が必須であるため、高
温長時間の焼鈍が不可欠である。このため製造コスト、
設備コストが高くなることが避けられない。
【0007】また、鉄損を低減するために最終板厚を
0.20mm以下にしようとすると2次再結晶現象が不
安定となり、全面Goss粒で占めることは困難となる。こ
のため現状では板厚0.23mm程度のものが製造限界
となっている。
【0008】上記第三の方法では脱炭焼鈍、純化焼鈍が
不要であるために製造コスト上は上記第一、第二の方法
に比べて有利である。しかしながら、本願発明者らによ
って特開昭64−55339号、特開平2−57635
号に開示されている方法の追試を行ったところ、そのGo
ss粒成長機構は極めて不安定であって、必ずしも常に全
面Goss粒で覆われた材料が得られる訳ではなく、安定し
た品質を得ることが難しいことが判った。安定したGoss
粒生成は実用上方向性珪素鋼板には必須であり、Goss粒
以外の箇所を除いて使用するにしても歩留の低下に伴う
コスト高を招いてしまう。
【0009】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
ものであって、インヒビターを用いない製造方法を前提
とし、短時間焼鈍で安定したGoss組織を形成することが
できる磁束密度の高い方向性珪素鋼板の製造方法を提供
することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明は、第1
に、C:0.01wt%以下、Si:2.5〜7wt
%、S:0.01wt%以下、Al:0.01wt%以
下、N:0.01wt%以下、Cu:0.01wt%以
下、Nb:5ppm 以下、Sn:10ppm 以下、Ti:2
0ppm であり、かつ、 [Nb]+0.5×[Sn]+0.25[Ti]≦8
(ただし、各元素の濃度はppm である。)を満足し、残
部Fe及びその他不可避的不純物からなる鋼材を準備
し、この鋼材を1000℃以上に保持した後、仕上温度
が700〜950℃の熱間圧延を施し、次いで、圧延率
30〜85%の一次冷間圧延を施した後、600〜90
0℃の温度で焼鈍し、さらに圧延率40〜80%の二次
冷間圧延を施し、その後600〜900℃の温度で焼鈍
し、さらに圧延率50〜75%の三次冷間圧延を施した
後、還元性雰囲気若しくは酸素分圧が0.5Pa以下の
非酸化性雰囲気、又は酸素分圧が0.5Pa以下の真空
中において1000〜1300℃の温度で10分間以下
の間焼鈍することを特徴とする磁束密度の高い方向性珪
素鋼板の製造方法を提供する。
【0011】本願発明者らは、先に、3%Siで特定の
組成を有する鋼板に対して、インヒビターを用いず冷間
圧延を1回から3回施し、最終焼鈍として雰囲気中の酸
素濃度をコントロールし、結晶方位がGoss方位に集積し
た方向性珪素鋼板を製造する方法について出願した(特
願平4−185374号、特願平4−185375号、
特願平4−185376号)。これらの方法は従来のイ
ンヒビターを用いない方向性珪素鋼板の製造方法とは異
なり、これらの方法を用いることにより従来よりもGoss
組織を安定して形成することができる。これらの出願で
は、最終焼鈍時間が3分間以上あれば問題ないとしてい
るが、本願発明者らのその後の実験によれば、その時間
が1時間よりも短時間側では、最終的に得られる磁束密
度にばらつきが生じる傾向があり、Goss組織が必ずしも
安定して得られないことが判明した。これらの方法によ
っても最終焼鈍時間が1時間以上であれば十分に安定し
てGoss組織が得られるが、これでは製造に要する時間が
長くなるのみならず、高効率の製造を可能にする連続焼
鈍を適用することが実質的に困難である。
【0012】そこで、本願発明者らは連続焼鈍の適用が
可能な短時間の焼鈍により安定してGoss組織が得られる
方法について研究を行った。最終焼鈍時間の目標は、連
続焼鈍の限界と考えられる10分間以内に設定した。
【0013】最終焼鈍において短時間で安定したGoss組
織を形成するためには、焼鈍中に{110}〈001〉
方位又はそれに近い方位を持つ結晶粒の粒界移動を促進
させればよく、その方法を種々検討した。その結果、最
終焼鈍時における粒界移動の初期段階では、Goss組織を
有する結晶粒のみが表面エネルギーの助けを借りて粗大
化し、Goss方位以外の方位を有する比較的小さな結晶粒
を少しずつ蚕食するという粒成長の現象を示し、このよ
うな粒成長を妨げる因子を取り除けば上記結晶粒の粒界
移動が促進されるという知見を得た。このようなことを
考慮し、従来不可避的不純物と考えられていた元素につ
いて、粒界移動に与える影響を把握する試験を行った。
その結果、Nb,Sn,Tiを一定量以下に減少させれ
ば {110}〈001〉方位又はそれに近い方位を
持つ結晶粒の粒界移動が促進され、10分間以下の短時
間の最終焼鈍によりGoss組織が安定して形成されること
を見出し、上記構成を有する本願発明を完成するに至っ
たのである。
【0014】以下、本発明について詳細に説明する。本
願発明は、上記先行出願のうち、3回冷間圧延を前提と
する特願平4−185374号を基本とするものであ
る。
【0015】まず、本願発明における化学成分の限定理
由について説明する。Cは製鋼段階でできるだけ低減し
ておくことが磁気特性上好ましい。Cが0.01wt%
を超えると磁気特性が著しく劣化する。このためCの上
限を0.01wt%に規定する。
【0016】Siは、電気抵抗を高める作用と、2.5
wt%以上の含有により金属学的変態点をなくし鋼をα
単相にする作用を有している。また、6.5wt%付近
では磁歪がゼロとなるため極めて優れた軟磁気特性が得
られる。しかし、7wt%を超えると磁歪が再び増大し
磁気特性が悪化するとともに、極めて脆くなるため実用
的ではない。このためSiの含有量を2.5〜7wt%
の範囲に規定する。
【0017】S,Nは通常の鋼中に含まれる代表的な元
素であるが、これらの元素は、固溶した状態でも析出物
の形態を採った状態でも粒成長性を阻害するため、でき
る限り低減することが好ましい。但し、製鋼段階で極端
な低減を行うとコスト増の原因となるため、粒成長性を
阻害しない範囲としてこれらの含有量の上限をそれぞれ
0.01wt%に規定する。
【0018】Alはα鉄への固溶度が広く、かつ酸素と
の親和力が強い元素である。従って、最終的な熱処理に
よりGoss組織を形成する際に、熱処理雰囲気中の微量酸
素と反応して鋼板表面に酸化物層を形成してしまうた
め、表面エネルギーによる結晶粒成長が阻害されてしま
う。このため、Alの含有量をこのような不都合が生じ
ない0.01wt%以下に規定する。Al含有量のさら
に好ましい範囲は0.005wt%以下である。Alは
脱酸剤として通常添加されるものであるため、特に厳密
に制御する必要がある。
【0019】Cuはα鉄への固溶度が小さな元素であ
り、最終的な熱処理によりGoss組織を形成する際の結晶
粒成長を著しく阻害する元素である。また、Cuは製鋼
段階で0.05wt%程度含有される。従って、その含
有量を上述のような不都合が生じない0.01wt%以
下に減じることが必要である。好ましくは0.005w
t%以下である。ただし、Cuは融点が1083℃であ
り、1000℃程度以上の熱処理により揮発する成分で
あるため、0.01wt%よりも多く含有されていても
比較的長時間の熱処理により0.01wt%以下にする
ことが可能である。しかし、工程の効率化の観点からは
熱処理時間の延長は好ましくない。
【0020】Nb、Sn、Tiは通常不純物元素として
含有されるものであるが、いずれも最終焼鈍時のGoss粒
の粒成長を遅滞させる効果が強く、10分間以下の短時
間の最終焼鈍によりGoss組織をばらつきなく安定して形
成するためには、製鋼時成分調整後、Nbを5ppm 以
下、Snを10ppm 以下、Tiを20ppm 以下にする必
要がある。
【0021】また、これらは同じ作用を有するので、こ
れらが同時に含まれる場合には、これらの合計で規定す
る必要があり、これらの作用の度合いを考慮すれば、
[Nb]+0.5×[Sn]+0.25[Ti]≦8
(ただし、各元素の濃度はppm である。)を満足するこ
とが要求される。上記含有量及びこの式を満足すれば最
終焼鈍時の粒成長を10分間以下の短時間でばらつきな
く終了させることができる。
【0022】これらの元素を上記範囲に規定するために
は溶銑段階から十分名成分管理を行い、製鋼段階におい
ても投入するスクラップを厳密に管理することが肝要で
ある。
【0023】なお、上記Nb、Sn、Tiとともに鋼中
不純物として混入される成分のうち、Mn,Cr,Ni
についても実験を行ったが、これらは含有量を増減させ
ても、最終焼鈍時の粒成長への影響は少なく、他の特性
を考慮しても、不可避的不純物あるいは通常不純物とし
て考えられる量(0.01〜0.05wt%)程度の量
であれば許容されることが確認された。
【0024】これら元素以外の不可避不純物元素につい
ても通常の鋼に含有される程度の量は許容される。しか
し、磁気特性等をより向上させる観点からは少ないほう
が好ましい。また、α鉄への固溶度が広く、かつ酸素と
の親和力が強いV,Zn等は、Alと同様に表面エネル
ギーによる結晶粒成長を阻害する作用を有するため、そ
の含有量が0.01wt%以下、好ましくは0.005
wt%以下になるように注意する必要がある。さらに、
鋼中のOは3次再結晶挙動に影響を与えるため、極力低
いことが望ましく0.008wt%以下であることが好
ましい。
【0025】このような組成を有する溶解された鋼は、
基本的に特願平4−185374号に記載された方法と
同様の製造方法により鋼板にされる。すなわち、先ずこ
のような組成を有する鋼はインゴットに鋳造されるか或
いは連続鋳造法によりスラブとされ、次いで、このイン
ゴット又はスラブは1000℃以上の温度に保持され、
熱間圧延に供される。熱間圧延前の保持温度を1000
℃以上に規定したのは、粗圧延機あるいは仕上げ熱間圧
延機前段での熱延中の再結晶の促進と、700〜950
℃の熱延仕上げ温度を確保するためである。なお、熱間
圧延は、インゴット又はスラブを加熱炉にて1000℃
以上に加熱してから行ってもよいし、直接圧延により連
続鋳造の後スラブ温度を1000℃以上に保持したまま
行ってもよい。
【0026】また、熱間圧延の仕上温度は700〜95
0℃の範囲であることが必要である。仕上温度が700
℃未満では熱間圧延の圧延負荷が大きくなり過ぎ製造上
好ましくない上に、最終的なGoss粒の成長にも悪影響を
及ぼす。また、仕上温度を950℃超にするにはインゴ
ット又はスラブの初期温度を高目に設定する必要があ
り、製造コスト上不利となる。
【0027】熱延板の板厚は最終製品の所望板厚によっ
て異なるが、概ね1.6mm程度から5.0mm程度と
なる。このようにして製造された熱延板は常法に従って
巻き取られるが、その巻取温度は560〜800℃とす
ることが好ましい。巻取温度が560℃未満では、熱延
終了後のランアウトテーブル上での冷却が実際上困難で
あるため実用性に欠け、一方、巻取温度が800℃を超
えると、巻取冷却中の表面酸化により酸洗性が悪化し、
実用的ではない。
【0028】なお、巻き取られた熱延コイルを、必要に
応じて連続炉或いはバッチ炉で熱延板焼鈍してもよい。
このときの熱延板焼鈍温度は700〜1100℃である
ことが好ましい。熱延板焼鈍温度が700℃未満では、
熱延時に形成された加工組織を消滅させることができな
いため、その効果が実質的に現われず、一方、熱延板焼
鈍温度が1100℃を超えると、操業上のコスト高の原
因となるために実用上問題となる。
【0029】このようにして作製された熱延板は常法に
従って一次冷間圧延される。このときの冷間圧延率は3
0〜85%とする。圧延率が30%未満の場合又は85
%を超える場合には、三次焼鈍の際の結晶粒の選択的粒
成長によるGoss粒の成長に好ましい集合組織が適切に形
成されず、最終焼鈍(三次焼鈍)後に十分成長したGoss
粒が得られない。この際の高い磁束密度を得るための最
適冷間圧延率は、熱延板の仕上温度及び巻取温度に応じ
て形成される熱延組織によって変化する。例えば、仕上
温度が低め(750℃程度)の場合には、熱延による圧
延加工組織が発達しているために、一次圧延の圧延率は
低めでよい。一方、仕上げ温度が高め(850℃程度)
の場合には加工組織よりも再結晶組織のほうが発達して
いるために、一次圧延の圧延率は高く設定される。な
お、通常、冷間圧延は潤滑材を使用するが、潤滑材を使
用せず無潤滑で圧延を行っても同様の効果が得られる。
【0030】一次冷延板は600〜900℃の温度で焼
鈍(一次焼鈍)される。焼鈍温度が600℃未満では、
焼鈍による完全再結晶を行わせることができない。一
方、焼鈍温度が900℃を超えると、再結晶は達成され
るが、焼鈍コストが不可避的に高くなってしまう。ま
た、短時間で再結晶を行わせ、かつ経済性をも確保する
には、特に680〜800℃の温度で焼鈍することが好
ましい。この焼鈍では、鋼板表面が若干酸化されたとし
ても、後に行われる冷間圧延前の酸洗によりその除去が
可能であるため、三次焼鈍(最終焼鈍)時の結晶方位の
Goss方位への集積を確保するという面では大きな問題は
ない。しかし、酸化膜を過度に生成しないようにすると
いう観点から、極力酸素分圧の低い非酸化性雰囲気また
は真空中で行うことが好ましい。また、焼鈍時間は通常
2分以上であれば問題はない。このような焼鈍処理は箱
型炉によるバッチ焼鈍又は連続焼鈍にて実施することが
できる。
【0031】焼鈍処理における加熱条件は、連続焼鈍で
は加熱速度200〜500℃/分、保持時間が2〜5分
間程度が適当であり、バッチ焼鈍では加熱速度4〜20
℃/分、保持時間が1〜10時間が適当である。冷却速
度は、熱収縮による歪みが鋼板内に残留しない限りにお
いて、通常採用される冷却速度で構わない。例えば、6
00℃まで13.5℃/秒、300℃まで12℃/秒の
冷却速度が採用される。
【0032】上記一次焼鈍が施された鋼板は、圧延率4
0〜80%で二次冷間圧延される。圧延率が40%未満
あるいは80%超では、上述した一次冷間圧延の場合と
同様な理由で最終的なGOSS 粒の集積が十分でない。こ
の冷間圧延は、一次冷間圧延と同様、無潤滑、潤滑のい
ずれでも実施可能である。
【0033】このようにして得られた二次冷延板は、再
び600〜900℃の温度で焼鈍される(二次焼鈍)。
焼鈍温度が600℃未満では、焼鈍による完全再結晶を
行わせることができない。一方、焼鈍温度が900℃を
超えると、再結晶は達成されるが、焼鈍コストが不可避
的に高くなってしまう。また、短時間で再結晶を行わ
せ、かつ経済性をも確保するには、特に680〜800
℃の温度で焼鈍することが好ましい。この二次焼鈍でも
一次焼鈍と同様の理由で鋼板表面の若干の酸化が許容さ
れるが、この場合も酸化膜を過度に生成しないようにす
るという観点から、極力酸素分圧の低い非酸化性雰囲気
または真空中で行うことが好ましい。この二次焼鈍時間
も一次焼鈍と同様に通常2分以上であれば問題はない。
この二次焼鈍処理も箱型炉によるバッチ焼鈍又は連続焼
鈍にて実施することができる。
【0034】なお、一次冷間圧延及び二次冷間圧延の後
に夫々実施される上述のような中間焼鈍の温度は、後述
する三次焼鈍後の鋼板の磁束密度特性に影響を与える。
従って、中間焼鈍としての一次焼鈍及び二次焼鈍の温度
を適切に規定する必要がある。
【0035】二次焼鈍が施された鋼板は、さらに圧延率
50〜75%で三次冷間圧延される。圧延率が50%未
満あるいは75%超では、上述した一次および二次冷間
圧延と同様な理由で最終的なGoss粒の集積が十分でな
い。この冷間圧延も、一次および二次冷間圧延と同様、
無潤滑、潤滑のいずれでも実施可能である。
【0036】このようにして得られた三次冷延板は、さ
らに1000〜1300℃の温度で焼鈍される(三次焼
鈍)。これにより表面エネルギーを利用した結晶粒成長
が生じ、Goss粒が成長する。焼鈍温度が1000℃未満
では、表面エネルギーを利用した結晶粒成長の駆動力が
十分でないため所望のGoss組織を得ることはできない。
一方、焼鈍温度が1300℃を超えると、実質的にこの
ような高温加熱のために必要なエネルギーコストが大き
くなり過ぎ、実用上の問題を生じる。
【0037】この三次焼鈍(最終焼鈍)は、水素が必要
量以上含まれている実質的に還元性を有する雰囲気中
か、実質的に窒素、Ar等の不活性ガスを主体とし酸素
分圧が0.5Pa以下の非酸化性雰囲気又は酸素分圧が
0.5Pa以下の真空中で行う必要がある。これは、結
晶方位のGoss方位への集積を阻害する鋼板表面に対する
酸化膜の形成を防止するためである。真空雰囲気中又は
不活性ガス雰囲気中に酸素分圧が0.5Paを超える程
度に酸素が含有される場合には、鋼板表面に酸化膜が形
成され、上記のような効果は得られない。この三次焼鈍
時間は10分間以下とする。すなわち、特願平4−18
5374号の方法では、上述したように十分に安定した
Goss組織を形成するためには1時間以上の焼鈍時間が必
要であるが、本発明ではNb、Sn、Tiの量を特定の
範囲に規定したので十分に安定したGoss組織を形成する
ための焼鈍時間は10分間以下であればよい。なお、こ
の三次焼鈍の温度によってNb、Sn、Tiの作用は当
然異なり、その温度が高ければより短時間で粒成長が終
了するが、本発明では三次焼鈍の温度範囲である100
0〜1300℃において温度を問わず10分間以下の焼
鈍時間で十分に安定したGoss組織を得ることができるの
である。そして、下限は特に規定されないが、3分間程
度でも十分なGoss組織を形成することができる。
【0038】本発明の方法で得られた鋼板は上述のよう
に短時間の最終焼鈍でもGoss粒が十分に安定して成長
し、3%Siの組成において、直流で800A/mの磁
界を印加したときの磁束密度B8 が1.9T以上と優れ
た磁気特性を示す。B8 が1.9T未満であると電気機
器に適用した場合に鉄心が大型化し、また鉄損の増大を
招く虞がある。
【0039】このように本発明のような短時間の最終焼
鈍によって優れた特性を有する鋼板が製造できるのは、
特定の組成の鋼に対し、一次冷圧、一次焼鈍、二次冷
圧、二次焼鈍、三次冷圧を特定条件で行うことにより好
ましい集合組織が形成され、最終次焼鈍による表面エネ
ルギーを利用したGoss粒の選択的粒成長が速やかに生じ
ることによる。
【0040】
【実施例】
[実施例1]表1に示すNbを変化させた化学成分の鋼
を溶製した後スラブとなし、仕上温度830℃にて板厚
2.0mmまで熱間圧延を行った。酸洗により表面のス
ケール層を除去した後、板厚0.6mmまで一次冷間圧
延を行った(圧下率70%)。次いで、この鋼板に対し
て窒素雰囲気中において800℃で2分間の一次焼鈍処
理を施した。その後、一次焼鈍後の鋼板に対して板厚
0.3mmまで二次冷間圧延を行った(圧下率50
%)。引き続き一次焼鈍と同様の条件にて二次焼鈍処理
を施した。その後、二次焼鈍後の鋼板に対して板厚0.
1mmまで三次冷間圧延を行い(圧下率66.7%)、
露点−50℃、酸素濃度1.5ppmの水素雰囲気中
で、加熱速度200℃/分にて1200℃で7分間及び
10分間の三次焼鈍を行った。
【0041】
【表1】
【0042】これらの試料を幅10mm、長さ100m
mに切断し、切断歪みを除去するために窒素雰囲気中に
て800℃で2分間の熱処理を施し、磁気測定に供し
た。ここでは、反磁界補正後の800A/mの直流磁場
を印加した磁束密度B8 を求めた。その結果を表2に示
す。
【0043】
【表2】
【0044】表2に示すようにNbが0.0005%以
下、すなわち5.0ppm以下であれば、最終焼鈍が7
分間及び10分間と短時間であっても、1.90T以上
の高いB8 が得られることが確認された。このように高
い磁束密度が得られたのは、Goss組織が安定して形成さ
れたためである。 [実施例2]表3に示すSnを変化させた化学成分の鋼
を溶製した後スラブとなし、仕上温度800℃にて板厚
2.5mmまで熱間圧延を行った。酸洗により表面のス
ケール層を除去した後、板厚0.7mmまで一次冷間圧
延を行った(圧下率72%)。次いで、この鋼板に対し
て窒素雰囲気中において800℃で2分間の一次焼鈍処
理を施した。その後、一次焼鈍後の鋼板に対して板厚
0.3mmまで二次冷間圧延を行った(圧下率57
%)。引き続き一次焼鈍と同様の条件にて二次焼鈍処理
を施した。その後、二次焼鈍後の鋼板に対して板厚0.
12mmまで三次冷間圧延を行い(圧下率60%)、露
点−50℃、酸素濃度2.5ppmの水素雰囲気中で、
加熱速度400℃/分にて1180℃で7分間及び10
分間の三次焼鈍を行った。
【0045】
【表3】
【0046】これらの試料を幅10mm、長さ100m
mに切断し、切断歪みを除去するために窒素雰囲気中に
て800℃で2分間の熱処理を施し、磁気測定に供し、
反磁界補正後のB8 を求めた。その結果を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】表4に示すようにSnが0.0010%以
下、すなわち10ppm以下であれば、最終焼鈍が7分
間及び10分間と短時間であっても、1.90T以上の
高いB8 が得られることが確認された。このように高い
磁束密度が得られたのは、Goss組織が安定して形成され
たためである。 [実施例3]表5に示すTiを変化させた化学成分の鋼
を溶製した後スラブとなし、仕上温度850℃にて板厚
2.0mmまで熱間圧延を行った。酸洗により表面のス
ケール層を除去した後、板厚0.5mmまで一次冷間圧
延を行った(圧下率75%)。次いで、この鋼板に対し
て窒素雰囲気中において800℃で2分間の一次焼鈍処
理を施した。その後、一次焼鈍後の鋼板に対して板厚
0.25mmまで二次冷間圧延を行った(圧下率50
%)。引き続き一次焼鈍と同様の条件にて二次焼鈍処理
を施した。その後、二次焼鈍後の鋼板に対して板厚0.
1mmまで三次冷間圧延を行い(圧下率60%)、露点
−50℃、酸素濃度1.5ppmの水素雰囲気中で、加
熱速度400℃/分にて1200℃で7分間及び10分
間の三次焼鈍を行った。
【0049】
【表5】
【0050】これらの試料を幅10mm、長さ100m
mに切断し、切断歪みを除去するために窒素雰囲気中に
て800℃で2分間の熱処理を施し、磁気測定に供し、
反磁界補正後のB8 を求めた。その結果を表6に示す。
【0051】
【表6】
【0052】表6に示すようにTiが0.0020%以
下、すなわち20ppm以下であれば、最終焼鈍が7分
間及び10分間と短時間であっても、1.90T以上の
高いB8 が得られることが確認された。このように高い
磁束密度が得られたのは、Goss組織が安定して形成され
たためである。 [実施例4]表7に示すNb,Sn,Tiの2種を含有
した化学成分の鋼を溶製した後スラブとなし、仕上温度
780℃にて板厚2.0mmまで熱間圧延を行った。酸
洗により表面のスケール層を除去した後、板厚0.55
mmまで一次冷間圧延を行った(圧下率72.5%)。
次いで、この鋼板に対して窒素雰囲気中において800
℃で2分間の一次焼鈍処理を施した。その後、一次焼鈍
後の鋼板に対して板厚0.3mmまで二次冷間圧延を行
った(圧下率45.6%)。引き続き一次焼鈍と同様の
条件にて二次焼鈍処理を施した。その後、二次焼鈍後の
鋼板に対して板厚0.1mmまで三次冷間圧延を行い
(圧下率66.7%)、露点−50℃、酸素濃度1.5
ppmの水素雰囲気中で、加熱速度200℃/分にて1
200℃で7分間及び10分間の三次焼鈍を行った。
【0053】
【表7】
【0054】これらの試料を幅10mm、長さ100m
mに切断し、切断歪みを除去するために窒素雰囲気中に
て800℃で2分間の熱処理を施し、磁気測定に供し、
反磁界補正後のB8 を求めた。その結果を[Nb]+
0.5[Sn]+0.25[Ti](ppm)で整理し
た結果を表8に示す。
【0055】
【表8】
【0056】表8に示すように、[Nb]+0.5[S
n]+0.25[Ti]が8以下であれば、最終焼鈍が
7分間及び10分間と短時間であっても、1.90T以
上の高いB8 が得られることが確認された。このように
高い磁束密度が得られたのは、Goss組織が安定して形成
されたためである。
【0057】また、実施例1〜4までの結果を[Nb]
+0.5[Sn]+0.25[Ti]と磁束密度B8
の関係でまとめたものを図1に示す。この図から、N
b,Sn,Tiが単独で含まれていても、複合的に含ま
れていても、[Nb]+0.5[Sn]+0.25[T
i]≦8であれば、最終焼鈍が10分間と短時間であっ
ても1.90T以上の高いB8 が得られることがわか
る。 [実施例5]表9に示すMn,Cr,Niを変化させた
化学成分の鋼を溶製した後スラブとなし、仕上温度85
0℃にて板厚2.0mmまで熱間圧延を行った。酸洗に
より表面のスケール層を除去した後、板厚0.6mmま
で一次冷間圧延を行った(圧下率70%)。次いで、こ
の鋼板に対して窒素雰囲気中において800℃で2分間
の一次焼鈍処理を施した。その後、一次焼鈍後の鋼板に
対して板厚0.2mmまで二次冷間圧延を行った(圧下
率66.7%)。引き続き一次焼鈍と同様の条件にて二
次焼鈍処理を施した。その後、二次焼鈍後の鋼板に対し
て板厚0.08mmまで三次冷間圧延を行い(圧下率6
0%)、露点−50℃、酸素濃度1.5ppmの水素雰
囲気中で、加熱速度400℃/分にて1200℃で10
分間の三次焼鈍を行った。
【0058】
【表9】
【0059】これらの試料を幅10mm、長さ100m
mに切断し、切断歪みを除去するために窒素雰囲気中に
て800℃で2分間の熱処理を施し、磁気測定に供し、
反磁界補正後のB8 を求めた。その結果を表10に示
す。
【0060】
【表10】
【0061】表10に示すように、不純物として含まれ
るMn,Cr,Niは含有量が変化しても磁束密度がほ
とんど変化しないことが確認された。すなわち、これら
の元素はGoss組織形成に悪影響を及ぼさないことが判明
した。
【0062】
【発明の効果】この発明によれば、10分間以下の短時
間の最終焼鈍で安定したGoss組織を形成することがで
き、結果として高い磁束密度を有する方向性珪素鋼板の
製造方法が提供される。最終焼鈍を短時間化することが
できるので、最終焼鈍を連続焼鈍で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】[Nb]+0.5[Sn]+0.25[Ti]
の値と磁束密度B8 との関係を示す図。
フロントページの続き (72)発明者 田中 靖 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 日裏 昭 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.01wt%以下、Si:2.5
    〜7wt%、S:0.01wt%以下、Al:0.01
    wt%以下、N:0.01wt%以下、 Cu:0.0
    1wt%以下、Nb:5ppm 以下、Sn:10ppm 以
    下、Ti:20ppm であり、かつ、 [Nb]+0.5×[Sn]+0.25[Ti]≦8
    (ただし、各元素の濃度はppm である。)を満足し、残
    部Fe及びその他不可避的不純物からなる鋼材を準備
    し、この鋼材を1000℃以上に保持した後、仕上温度
    が700〜950℃の熱間圧延を施し、次いで、圧延率
    30〜85%の一次冷間圧延を施した後、600〜90
    0℃の温度で焼鈍し、さらに圧延率40〜80%の二次
    冷間圧延を施し、その後600〜900℃の温度で焼鈍
    し、さらに圧延率50〜75%の三次冷間圧延を施した
    後、還元性雰囲気若しくは酸素分圧が0.5Pa以下の
    非酸化性雰囲気、又は酸素分圧が0.5Pa以下の真空
    中において1000〜1300℃の温度で10分間以下
    の間焼鈍することを特徴とする磁束密度の高い方向性珪
    素鋼板の製造方法。
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