JP4261633B2 - 一方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トランス等の鉄心として使用される製品厚の厚い一方向性電磁鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一方向性電磁綱板は、主にトランスその他の電気機器の鉄心材料として使用されており、励磁特性、鉄損特性等の磁気特性に優れていることが、機器の小型化、エネルギー損失の減少のために要求される。励磁特性を表す特性値として、磁場の強さ800A/mにおける磁束密度B8がJISで規格化されて通常使用される。又、エネルギ一損失を示す特性値としては、周波数50Hzで1.7テスラー(T)まで磁化したときの鋼板1kg当たりのエネルギー損失(鉄損)W17/50 もJISで規格化されている。
【0003】
磁束密度は鉄損の最大支配因子であり、一般的に磁束密度が高い(大きい)ほど鉄損特性が良好になる。又、一般的に磁束密度が高くなると二次再結晶粒が大きくなり、鉄損が悪化する場合がある。この場合は、既に広く知られているように、磁区を制御することにより、二次再結晶の粒径に拘らず鉄損を改善することができる。
【0004】
この一方向性電磁鋼板は、最終仕上焼鈍工程で二次再結晶を起こさせ、鋼板表面に{110}、圧延方向に〈001〉軸をもったいわゆるゴス組織を有している。良好な磁気特性を得るためには、磁化容易軸である〈001〉を圧延方向に高度に揃えることが必要である。
このような高磁束密度一方向性電磁鋼板の製造技術は古くから開発され、わが国ではいわゆるインヒビターとしてMnS,AlNを用いる方法(特開昭40−15644号公報)、MnS,MnSe,Sb等を用いる方法(特開昭51−13469号公報)等がある。これらの場合は、熱延板段階でのインヒビターの完全固溶が求められ、実際の熱間圧廷時は鋼塊(スラブ)の加熱温度を1350℃以上にすることが必要である。
【0005】
この高温度の加熱には数々の不利、不便な点がある。このため、この熱延時の鋼塊(スラブ)の加熱温度を下げる試みが行われている。その一つを開示したものとして特開昭59−56522号公報がある。この技術の発展として多くの発明がなされ、インヒビター形成のために脱炭焼鈍から最終仕上焼鈍の昇温過程で窒化を行う方法(特開昭62−45285号公報、特開昭60−179855号公報)、更にはストリップを走行せしめる状熊下での水素、窒素、アンモニアの混合ガスを用いた窒化処理を行う方法(寺開平2−77525号公報、特開平1−82400号公報、特開平3−180460号公報、特開平6−317592号公報)が提案された。
【0006】
又、脱炭焼鈍時の一次再結晶完了後から最終仕上焼鈍時の二次再結晶完了前までの途中段階での一次再結晶粒怪を制御する方法(特開平9−294425号公報、特開平2−96275号公報、特開平2−59020号公報、特開平1−82393号公報)も堤案された。
ところで、一方向性電磁鋼板は、主に変圧器の鉄心として積層して使用される。特に大型のパワートランスは、その鉄心の積層作業は、手作業となるので、一方向性電磁鋼板の板厚が厚い程、作業性(生産性)が向上する。このため厚手(例えば0.40mm超)で、磁気特性が優れた一方向性電磁鋼板の製造が強く求められていた。しかし、一方向性電磁鋼坂の製造においては、製鋼段階で炭素をある程度含有させることが従来の技術では必須であった。炭素を含有させる自的は高温度(1150℃以上)のスラブ加熱の場合には1)スラブ加熱時の異常粒成長の防止、2)一次再結晶の集合組織調整のための変態相の確保、3)インヒビターの固溶量確保等がある。この場合、連続鋳造のままでスラブを製造する条件下では、C量は0.060%以上必要であった。また、本発明のように1230℃未満でのスラプ加熱でストリップを走行せしめる状態での窒化処理をする場合でも上記1)、2)の目的のため炭素をある程度含有することが求められている。この場合は、Cは、0.040%を越えて必要である。
【0007】
一方、一方向性電磁鋼板の最終製品に炭素が30ppm以上存在すると磁気時効が生じ商品価値が無くなる。このため脱炭焼鈍工程で強制的に炭素含有量を30ppm以下とする。この場合、板厚が厚いと脱炭に時間を要し、生産性が著しく低下し、引いては、コスト高となる。このため現在、一方向性電磁鋼板の製品厚は0.35mmを最大としてJIS等で規格されている。又、炭素含有量を減ずる方法として上記の代替として、熱延加熱前に一度プレローリーング(ブレイクダウン)という結晶粒を細かくする方法が採用されている。しかしこの場合もコストアップが必然的に生じる。従って、低C化には限界があった。
【0008】
また、特開平4−323号および特開平4−324号公報においては、厚手一方向性電磁鋼板の熱延板焼鈍をしない場合の熱間圧延時の条件を規定している。もちろんこの方法によっても厚い一方向性電滋鋼板は製造可能である。この場合は、一方向性電磁鋼板の製造における一次再結晶集合組織の改質のみを行なっているのであるが、インヒビターの調整は熱間圧延工程のみで行っており磁気特性の安定性及び鉄損の向上に限界があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように一方向性電磁鋼板の製造においては必然的に脱炭工程が存在するため、厚手材(板厚0.35mm以上)の場合は、脱炭焼鈍前の炭素舎有量を極力減ずることがその生産性向上に重要となる。本発明は磁気特性を確保してこの様な脱炭焼鈍での負荷を軽減するために炭素含有量を減ずる方法を提供するものである。
【0010】
よく知られている様に、一方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍工程は連続的に行なわれ次の3つの機能を有している。すなわち、(1)一次再結晶、(2)脱炭、(3)表面酸化層の形成の3つの機能である。これら3つの機能をうまく働かせるためには、注意深い操業が必要となる。本発明の様に製品厚が厚い場合は、従来(2)と(3)を経済的に両立させることが困難であった。
【0011】
即ち、板厚が厚い場合は、脱炭に要する時間が長くなる(近似的に脱炭時間は、厚みの2乗に比例して長くなる)。一方、脱炭雰囲気(酸化性雰囲気)に長く鋼板を滞留させると表面の酸化層が厚くなり脱炭性が減じて残存炭素を30ppm以下とすることは非常に困難となる。また表面の酸化層が著しく厚くなると、2次再結晶焼鈍後の一次皮膜(フォルステライトを主成分とする皮膜)に欠陥が生じ商品価値が著しく減じる。このため脱炭焼鈍前の炭素含有量を減ずることが必要となる。
【0012】
更に、求められることは、磁気特性のうち磁束密度のみでなく鉄損も良好な厚手一方向性電磁鋼板を得ることを低炭素含有量素材で製造することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討したところ、スラブ加熱温度が1280℃未満で、脱炭焼鈍後にストリップを走行せしめる状態下で窒化処理を行なうことを主要技術とする一方向性電磁鋼板の製造方法において、熱間圧延の仕上げの全圧下率と最終冷間圧延率の関係を規定することにより炭素含有量が従来より低くても良好な磁性を有する一方向性電磁鋼板が製造可能となることを見い出した。
【0014】
その要旨は以下のとおりである。
重量比で、
C:0.010〜0.040%、
Si:2.5〜4.0%、
酸可溶性Al:0.020〜0.040%、
N:0.005〜0.010%、
S、Seの少なくとも1種を0.005〜0.015%、
Mn:0.05〜0.3%、
を含有し、
SnまたはSb:0.02〜0.30%
を含有し、更に
Cr:0.02〜0.30%、
Cu:0.03〜0.5%、
Ni:0.03〜0.3%
の1種または2種以上を含有し、
残部がFe及び不可避的不純物からなるスラブを1280℃未満の温度で加熱し、熱間圧延の仕上げ入口温度を950〜1150℃、仕上げ出口温度を800〜1050℃、巻き取り温度を500〜650℃とする熱間圧延を行ない、熱延板焼鈍を行ない、その後のデスケリーング後、1回の冷間圧延を行ない、脱炭焼純後ストリップを走行せしめる状態下で水素、窒素、アンモニアの混合ガス中て窒化処理を行ない、次いでMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して最終仕上焼鈍を施す一方向性電磁鋼板の製造方法において、熱延での仕上げ全圧下率(Hf :真歪み)と最終冷延率(Cr :真歪み)の関係が、
−0.25Hf+2.6≦Cr≦−0.25Hf+3.6
2.079≦Hf≦3.912
であり、前記製品板厚が0.35mm〜0.65mmであることを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
先ず、本発明において炭素(C)の含有量の範囲を制限する理由を述べる。前述のように、一方向性電磁鋼板の製造においては、Cのある程度の含有が必須である。本発明においては、この目的は、1)一次再結晶の集合組織調整のための変態相の存在、2)γ層中でのインヒビターの固溶量確保である。本発明においては、この目的を従来のC含有量より少ない範囲で良好な磁気特性を得るために熱延での仕上げスタンドの全圧下率及び冷間圧延率を規定する。しかし1)、2)の変態相の存在のためには0.01%以上のCが必要となる。更に上限値は磁気特性の立場からは0.10%の炭素まで含有しても何ら問題は生じない。しかし本発明のように、製品板厚が比較的厚い場合は、脱炭焼鈍での脱炭時間が著しく長くなり工業生産に適していない。このため上限は0.04%とする。
【0016】
以下実験結果に基づいて説明する。
図1は、熱間圧延の仕上げスタンドの全圧下率(真歪み)、最終冷延率(真歪み)と磁性(B8 )の関係を示す。この場合の条件は次の通りである。C:0.035〜0.038%、Si:2.9〜3.10%、酸可溶性Al:0.026〜0.028%、N:0.0078〜0.083%、Sを0.0065〜0.0075%、Mn:0.08〜0.1.1%、残部がFe及び不可避的不純物からなるスラブを1140〜1160℃の温度で加熱し、熱延を行なった。その後、1120℃で120秒の熱延板焼鈍を行ない、その後30℃/秒の早さで冷却し、デスケリーング後、180〜230℃に2分間以上2パス保持する1回の冷延を行ない、脱脂後、830〜850℃で90〜200秒の脱炭焼鈍後、ストリップを走行せしめる状態下で水素、窒素、アンモニアの混合ガス中で窒化後全窒素の量が0.019〜0.022%となるような窒化処理を行ない、次いでMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、N2 =25%,H2 =75%の雰囲気下で、10〜20℃/時間で650℃〜1200℃まで昇温し、その後1200℃で20時間以上、H2 =100%で純化焼鈍行った。その後、通常用いられる絶縁張力コーティングの塗布と平滑化処理を行った。この場合,粗バー厚み(ti :仕上げ入り口厚み)を30,50,70,90,110,130mmとし、仕上げ出口厚み(to :熱延鋼帯厚み)を1.6、2.0、2.4、3.0、4.0、5.0、6.0mmとし最終製品厚みを0.35mmとした。図1に示したように、最終冷延率(真歪み):Crは、仕上冷延全圧下率(真歪み):Hfに大きく影響され、実験結果からB8 が1.86(T)以上を達成する範囲を数式化すると、−0.25Hf+2.6≦Cr≦−0.25Hf+3.6の式で求められることが分った。なお、Hfは2.079≦Hf≦3.912であることが実験結果から求められ、前述の各式で求められた範囲が製品板厚が厚い0.30〜0.65mmの場合でも確実にB8 ≧1.86以上を達成できることになる。
【0017】
次に、冷間圧延における最終圧延率について述べる。
そもそも、一方向性電磁鋼板の製造において良好な磁気特性(方向性の良好なGoss方位を有する2次再結晶集合組織)を得るためには、脱炭焼鈍後の一次再結晶集合組織の適正化及びインヒビター強度の確保が必要である。従来から一方向性電磁鋼板の製造において一次再結晶集合組織を適正化するためには、熱間圧延後最終冷間圧延の間にある程度の変態相が必要とされていた。このために炭素を含有させている。ところが、1280℃未満のスラブ加熱法においては一次再結晶集合組織の適正化の程度が少なくても良いことを見い出した。この適正化程度は定量的には原勢らの対応粒界理論(例えば特公平1−26155、日本金属学会誌第59号、第9号(1995)917−924)によって評価できる。即ちGoss方位粒({110}〈001〉)とΣ9対応方位粒がある少量でも存在しその値が全Σ9方位関係の分布の中で一番大きい(強い)と良好なGoss方位が2次再結晶する。しかし、このGoss方位発現の安定性及びシャープさはインヒビターの強度に依存する。
【0018】
本発明による方法では、このインヒビター強度を任意にストリップ窒化として制御できるため良好なGoss方位粒のみを選択的に発現できることを見い出した。このGoss方位粒に対するΣ9値を全分布で最大とする方法としては、主に冷間圧延前集合組織、粒サイズ、及び冷間圧延率がある。
一次再結晶集合組織に大きな影響を及ぼす因子は、熱延での全仕上げ圧延率と最終冷間圧延率である。本発明者らは冷間圧延前集合組織を適正化することにより、冷間圧延率も低減できることを見い出した。冷間圧延前集合組織は、成分、熱延条件に大きく影響されることは周知である。本発明の重要な要素は上記原理に基づいて、熱間圧延での仕上げ全圧下率を規定することにより冷間圧延率を低減できることを見い出したことである。
【0019】
次に、板厚を制限する理由を述べる。製品板厚が0.35mm未満の場含C含有量を0.040%以上としても0.070%以下であれば、脱炭焼鈍において30ppm以下の炭素までの脱炭は律速的でなく表面酸化層形成が律速的であり、低炭素とするメリッ卜は少ない。このため板厚は、0.35mm以上とする。また板厚が0.35mm未満であれば炭素量が少ないと一次再結晶集合組織を充分に適正にしないと、2次再結晶焼鈍時のインヒビター(主にAlN)の劣化度が速くなり良好なGoss方位粒が得られなくなる。もちろん、2次再結晶時の雰囲気を制御してインヒビターの分解を抑制し、良好なGoss方位粒を得ることは可能であるが、この場合フォルステライトを主成分とする一次皮膜に欠陥が多発して歩留が著しく低下する。
【0020】
一方、板厚の上限の0.65mmは、これ以上の板厚では、生産性を確保するためにはC合有量を0.010%未満としなければならないためである。C含有量を0.010%未満とすると、フォルステライ卜を主成分とする一次皮膜の形成を良好に行なわしめてかつ良好なGoss方位の2次再結晶を安定化することは困難である。
【0021】
次に熱間圧延時の温度について述べる。本発明では、スラブの加熱温度が1280℃未満と低く、このためAlN等いわゆるインヒビターの大部分は析出している。この析出を更に行なわしめるためには、仕上入口温度を950〜1150℃、仕上げ出口温度を800〜1050℃、巻き取り温度を500〜650℃とする必要がある。望ましくは、仕上入口温度は975〜1015℃、仕上げ出ロ温度は850〜975℃、巻き取り温度は525〜600℃である。
【0022】
次に,本発明において出発材とする電磁鋼スラブの成分組成の限定理由は、以下のとおりである。
Cは、0.010〜0.040%とした。0.010%未満の場合は前述した。また0.040%を越えると脱炭工程での生産性が著しく阻害され本発明の目的から外れる。
【0023】
Siはその含有量が2.5%未満になると、良好な鉄損が得られない。また4.0%を超えると、脆性のために冷間圧延等室温での鋼板処理が困難になる。S及びSeは、0.015%以下、望ましくは0.013%以下である。1280℃以下のスラブ加熱温度で熱延板を製造し、その後熱延板焼鈍、冷間圧延の後での、ストリップ窒化等による脱炭焼鈍工程以降のインヒビターの作り込みで製造する一方向性電磁鋼板では、多量のS、Seは一次再結晶粒の粒成長を妨げ有害であるためである。0,005%未満では、熱延での繰業上の不可避的変動要素(スキッド上及び間の温度履歴差、圧延速度の加速による熱延温度の変動等)により、一次再結晶粒の粒成長に場所的変動が生じ易くなり工業的に安定的に製品が製造できない。
【0024】
AlはNと結合してAlNを形成するが、本発明においては、後工程即ち一次再結晶完了後に鋼を窒化することにより(Al,Si)Nを形成せしめることを必須としているから、フリーのAlが一定量以上必要である。そのため、酸可溶性Alとして0.020〜0.040%添加する。
Mnは、その含有量が少な過ぎると二次再結晶が不安定となり、一方、多過ぎると一次皮膜(フォルステライトを主成分とするいわゆるグラス皮膜)の欠陥率が高くなる。適正な含有量は0.05〜0.8%である。好ましくは、0.070〜0.3%である。
【0025】
Nは0.005%未満では二次再結晶粒の発達が悪くなる。一方0.010%を超えるとブリスターと呼ばれる鋼板のふくれが発生する。
Pは、一次再結晶集合組織を改善する効果が報告されている。低Pでは、この効果が少なく、また製鋼コス卜的にコストアップになるので下限は0.02%とする。上限については、0.30%を超えるとPは粒界偏析して脆性破壊を起しやすくなり、工業的な生産が困難になる。好ましくは0.30%以下である。
【0026】
Sn,Sbは従来からいわれている如く、一次再結晶集合組織において{110}〈001〉方位粒を増加させる効果があるとともに、硫化物を均一に析出する効果がある。従って、本発明では、Cu−S,Mn―Sの如き硫化物の析出を均一に制御する効果が増長される。更に、Sn,Sbを多く添加すると、脱炭焼鈍時の酸化がされ難く、また―次再結晶粒成長し離くなる傾向かある。このため、脱炭焼鈍温度を従来の820〜840℃より20℃程度上げざるを得ない。このことは、一方向性電磁鋼板の一次被膜形成を容易ならしめる方向である。また、Sb,Sn添加により二次再結晶粒径が小さくなるため、添加なしと比べて鉄損(特に低磁場鉄損)が良好となる。一方、Sb又はSnが0.02%未満であると、二次再結晶粒があまり小さくならない。また、Sb又はSnが0.30%を超えると、脱炭焼鈍後の窒化処理が困難となり、工業生産に適していない。
【0027】
Crは、フォルステライト皮膜形成に必要な脱炭焼鈍後の酸素量を確保するために添加される。0.02%より少ないと酸素量が極端に少なくなる。また0.30%を超えると酸素量が極端に増加し、良好なフォルステライトが形成されなくなる。また磁束密度も低下する。
Cuが0.03%未満であると磁気特性の向上効果が少ない。また0.5%を超えると、Cu−Sの柝出物が粗大化して、効果が減じる。更に、熱間圧延時に、いわゆる“Cuヘゲ”という庇の発生頻度が急激に増大する。好ましくは、0.05〜0.10%である。
【0028】
Niは0.03%未満だと効果が少なく0.3%を超えても特開平5−306410号公報に示されているように効果はあるが、高価となる。CrとNiの添加は、本発現の効果を更に向上させるものであり、コスト的に見合う量だけの添加で良い。
次に熱延板焼鈍の必要性について述べる。既に述べたように、特開平4−323号公報および特開平4−324号公報においては、熱延板焼鈍を施さない場合の熱延条件を規定している。この場合、熱延で、熱延板焼鈍を代替させている。しかし、この場合、一次再結晶集合組織的にはGoss方位が少なく、対応粒界理論によると最終製品の粒径が大きくなり鉄損が劣る傾向がある。―次再結晶集合組織でのGoss方位粒の量を確保し、最終製品の粒径を小さくし、鉄損を向上させるのに有効な手段は、熱延板焼鈍を行なうことである。事実、上述の両特許公報においては磁束密度は向上するとの記載が有るが、鉄損向上に関する記載はない。
【0029】
【実施例】
次に本発明の実施例を示す。
表1に示す成分の鋼塊を通常の方法で製造し1100〜1175℃でスラブを加熱後、仕上げ入口温度を975〜1125℃、仕上げ圧延での全圧下率を真歪みで1.764〜4.030とし、仕上げ出口温度を825〜1025℃、巻き取り温度を525〜625℃とした熱間圧延で厚み1.6〜6.0mmに仕上げた。
【0030】
その後、1120℃x2分の熱延板焼鈍を行ない、酸洗後180〜220℃で最低2パスの温間圧延を行なって0.22〜0.65mmに冷間圧延した。その後、一次再結晶平均粒径を22〜24μmとするために,820〜850℃で、N2 :25%、H2 :75%の雰囲気ガス中で、露点62℃で70秒〜150秒の脱炭一次再結晶焼鈍を行なった。
その後、全窒素含有量を195〜210ppm とするストリップ窒化処理を行ないMgOを主成分とする暁鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍を行なった。この仕上焼鈍は10〜20℃/時間で昇温し、雰囲気は、N2 :25%、H2 :75%とした。
【0031】
その後、1200℃で20時間、H2:100%の純化焼鈍を行った。
その後、通常用いられる張力コーティングの塗布と平滑化処理を行なった。本発明実施例で得た磁気特性を、熱延条件、板厚、冷延条件とともに表2に示した。本発明の方法によるものは、いずれも良好な磁気特性を示している。
【表1】
【表2】
【0032】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は熱延での仕上げ全圧下率(Hf:真歪み)と最終冷延率(Cr:真歪み)の関係を実験式で求めた特定の範囲で操業することにより製品板厚が0.35〜0.65mmと厚い場合においてもC含有量を低減することができ、一方向性電磁鋼板の製品コストを低減できることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱間圧延仕上げスタンドの全圧下率(Hf:真歪み)、最終冷延率(Cr:真歪み)と磁束密度(B8 )の関係を示す図である。
Claims (1)
- 重量比で、
C:0.010〜0.040%、
Si:2.5〜4.0%、
酸可溶性Al:0.020〜0.040%、
N:0.005〜0.010%、
S、Seの少なくとも1種を0.005〜0.015%、
Mn:0.05〜0.3%、
を含有し、
SnまたはSb:0.02〜0.30%
を含有し、更に
Cr:0.02〜0.30%、
Cu:0.03〜0.5%、
Ni:0.03〜0.3%
の1種または2種以上を含有し、
残部がFe及び不可避的不純物からなるスラブを1280℃未満の温度で加熱し、熱間圧延の仕上げ入口温度を950〜1150℃、仕上げ出口温度を800〜1050℃、巻き取り温度を500〜650℃とする熱間圧延を行ない、熱延板焼鈍を行ない、その後のデスケリーング後、1回の冷間圧延を行ない、脱炭焼純後ストリップを走行せしめる状態下で水素、窒素、アンモニアの混合ガス中て窒化処理を行ない、次いでMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して最終仕上焼鈍を施す一方向性電磁鋼板の製造方法において、熱延での仕上げ全圧下率(Hf :真歪み)と最終冷延率(Cr :真歪み)の関係が、
−0.25Hf+2.6≦Cr≦−0.25Hf+3.6
2.079≦Hf≦3.912
であり、前記製品板厚が0.35mm〜0.65mm
であることを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
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JPH11323437A (ja) | 1999-11-26 |
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