JPH0768790A - インクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録装置

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Publication number
JPH0768790A
JPH0768790A JP24206593A JP24206593A JPH0768790A JP H0768790 A JPH0768790 A JP H0768790A JP 24206593 A JP24206593 A JP 24206593A JP 24206593 A JP24206593 A JP 24206593A JP H0768790 A JPH0768790 A JP H0768790A
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JP
Japan
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ink
recording
bubbles
ejection
liquid chamber
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Application number
JP24206593A
Other languages
English (en)
Inventor
Kiichiro Takahashi
喜一郎 高橋
Hitoshi Sugimoto
仁 杉本
Miyuki Matsubara
美由紀 松原
Hiromitsu Hirabayashi
弘光 平林
Shigeyasu Nagoshi
重泰 名越
Kentaro Yano
健太郎 矢野
Naoji Otsuka
尚次 大塚
Osamu Iwasaki
督 岩崎
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Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
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Publication date
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Publication of JPH0768790A publication Critical patent/JPH0768790A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【目的】色の異なる複数の記録ヘッドでも1つのポンプ
で吸引回復することを可能にし、ポンプ復動時のインク
逆流を防止し、吸引回復時の初期圧力を記録ヘッドごと
に所望の値に制御することを可能にし、各記録ヘッドご
との適切な吸引回復動作を実現して無駄なインク消費を
無くす。 【構成】各記録ヘッド9にインクを一時貯留する共通液
室83を設け、各記録ヘッド9のキャップ26と吸引ポ
ンプ53との間に吸引動作のタイミングを各記録ヘッド
ごとに個別に制御するバルブ機構54を設ける。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、記録手段から被記録材
へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置
に関する。
【0002】
【従来の技術】プリンター、複写機、ファクシミリ等の
機能を有する記録装置、あるいはコンピューターやワー
ドプロセッサ等を含む複合機やワークステーションの出
力機器として用いられる記録装置は、画像情報に基づい
て用紙やプラスチック薄板(OHPなど)等の被記録材
(記録媒体)に画像(文字や記号なども含む)を記録し
ていくように構成されている。前記記録装置は、使用す
る記録手段の記録方式により、インクジェット式、ワイ
ヤドット式、感熱式、熱転写式、レーザービーム式等に
分けることができる。
【0003】被記録材の搬送方向(副走査方向)と交叉
する方向に主走査する記録方式を採るシリアルタイプの
記録装置においては、被記録材を所定の記録位置にセッ
トした後、被記録材に沿って移動(主走査)するキャリ
ッジ上に搭載した記録手段(記録ヘッド)によって画像
(文字や記号等を含む)を記録し、1行分の記録を終了
した後に所定量の紙送り(副走査)を行ない、その後に
次の行の画像を記録(主走査)するという動作を繰り返
すことにより、被記録材の所望範囲に画像が記録され
る。一方、被記録材を搬送方向に送る副走査のみで記録
するラインタイプの記録装置においては、被記録材を所
定の記録位置にセットし、一括して1行分の記録を連続
的に行ないながら所定量の紙送り(ピッチ送り)を行な
い、被記録材の全体に画像が記録される。
【0004】そのうち、インクジェット式(インクジェ
ット記録装置)は、記録手段(記録ヘッド)から被記録
材にインクを吐出して記録を行なうものであり、記録手
段のコンパクト化が容易であり、高精細な画像を高速で
記録することができ、普通紙に特別の処理を必要とせず
に記録することができ、ランニングコストが安く、ノン
インパクト方式であるため騒音が少なく、しかも、多色
のインクを使用してカラー画像を記録するのが容易であ
るなどの利点を有している。
【0005】特に、熱エネルギーを利用してインクを吐
出するインクジェット式の記録手段(記録ヘッド)は、
エッチング、蒸着、スパッタリング等の半導体製造プロ
セスを経て、基板上に製膜された電気熱変換体、電極、
液路壁、天板などを形成することにより、高密度の液路
配置(吐出口配置)を有するものを容易に製造すること
ができ、一層のコンパクト化を図ることができる。ま
た、IC技術やマイクロ加工技術の長所を活用すること
により、記録手段の長尺化や面状化(2次元化)が容易
であり、記録手段のフルマルチ化および高密度実装化も
容易である。一方、被記録材の材質に対する要求も様々
なものがあり、近年では、通常の被記録材である紙や樹
脂薄板(OHP等)などの他に、薄紙や加工紙(ファイ
リング用のパンチ孔付き紙やミシン目付き紙、任意な形
状の紙など)などを使用ことが要求されるようになって
きた。
【0006】図1はインクジェット記録装置に用いられ
る記録手段(記録ヘッド)の一例を示す図であり、
(A)は記録ヘッドの模式的分解斜視図、(B)は天板
を裏面から見た模式的斜視図である。図1において、イ
ンクジェット記録ヘッドは、図示のように、インクの吐
出口1を有する吐出口プレート2と、各吐出口1に連通
する液路を形成するための溝3と各溝3にインクを供給
するインク溜まりとなる共通液室4とを形成する溝付き
天板5と、前記液路3に設けられインクを吐出するため
の熱エネルギーを発生する熱エネルギー素子としての電
気熱変換体(発熱部)6を有するヒータボード7と、を
具備している。符号8は前記共通液室4および前記液路
3へのインク供給口である。
【0007】上記のようなインクジェットヘッドを用い
るインクジェット記録装置においては、吐出口1からイ
ンクを吸引して吐出不良を解消する吸引回復動作を行う
際に使用するため、並びに、吐出口1におけるインクの
乾燥を防止するために、吐出口1を密封(キャッピン
グ)するためのキャップが設けられている。また、イン
ク吐出を繰り返すに従って、消泡しきれなかった気泡が
蓄積される場合がある。気泡は必ずしも悪影響を及ぼす
ものではないが、気泡が多く入り過ぎたり、気泡の体積
が大き過ぎたりした場合には、吐出口1を塞いでしまう
など、インク供給路が確保されなくなるという弊害を引
き起こすことがある。前記気泡を取り除くためにも吸引
回復動作を行うことが多い。
【0008】また、上記のようなインクジェット記録ヘ
ッドにあっては、記録する画像や文字等に応じた記録デ
ータによっては1つの吐出口から連続して吐出を行う場
合が多々有り、このような連続吐出を行った場合に、最
初の吐出の次の吐出によって被記録材上に形成されるド
ットが適正に形成されず、記録品位を低下させることが
ある。具体的には、例えば2ドットで形成される縦ライ
ンを記録する場合、本来は図2の(A)のように記録さ
れるべきところ、図2の(B)に示すように2ドット目
のインク滴が適正に形成されずに小滴の集まりのような
画像になってしまう。このような問題を解決する技術と
して、吐出用ヒータもしくは該ヒータと同様に基体に一
体的に作り込まれた加熱手段による気泡生成手段によ
り、共通液室4内に所望の気泡を形成し、該気泡をバッ
ファとして機能させることにより2回目の吐出の前のリ
フィル時間が特に長くなることを防止し、2ドット目の
ドット形成不良を解決する技術が提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従来、吸引回復動作を
行う場合には、インクの重力によらずにピストンの移動
を利用して水平配置でも確実にインクを回収できるシリ
ンダポンプが用いられている。このシリンダポンプは、
キャップ等のインク受け部材から廃インクを回収するた
めの開孔をピストン表面で開閉し、該ピストンの軸側に
設けられた廃インク移動経路を介して、前記廃インクを
前記インク受け部材よりも収容能力の高い廃インク収納
部へ移動させる構成となっている。
【0010】しかしながら、従来例では、吸引後にピス
トンが戻る際に廃インクが逆流してしまう場合がある。
その場合、記録ヘッドがキャッピングされていると、逆
流インクにより吐出口に影響が生じて記録不良を引き起
こす可能性がある。特に、複数の記録ヘッドを用いるカ
ラーインクジェット記録装置の場合にその影響が大きく
なる。カラーインクジェット記録装置の回復系として、
複数の記録ヘッドそれぞれにシリンダポンプを設ける構
成もあるが、低コスト化の面から1つのシリンダポンプ
により複数の記録ヘッドの吸引回復動作を行う構成の方
が有利であることは当然である。しかし、従来例では、
後者の構成を採用すると、前記逆流により異なる色同士
が混色してしまい、正常な色味が失われてしまうという
弊害がある。
【0011】請求項1〜請求項6の発明は、このような
技術課題を解決し、色の異なる複数の記録手段でも1つ
のポンプで順次吸引回復することができ、ポンプのピス
トンが戻る時のインクの逆流を防止して高画質の記録を
可能にし、吸引回復時の初期圧力を記録手段ごとに適正
値に制御することができ、各記録手段に適した吸引回復
動作を実現するとともに無駄なインク吸引を防いでイン
クを効率よく使用することができるインクジェット記録
装置を提供することを目的とする。
【0012】また、従来のインクジェット記録装置にあ
っては、連続吐出を行うと、2ドット目(2パルス目)
のドットが適正に形成されず、記録品位が低下してしま
うことがある。2パルス目のドットが適正に形成されな
い理由は次のとおりである。
【0013】第1に、記録信号に従ってヒータ(電気熱
変換体)6が加熱されると、その熱エネルギーによって
溝付き天板5で形成された液路3内のインク中で発泡が
起こる。この発泡のエネルギーは、ヒータ6の中央部を
境に、吐出口1側へインクを押しやるエネルギーと共通
液室4側へインクを押しやるエネルギーとに分けられ
る。ここで、吐出口1側にインクを押しやるエネルギー
は吐出エネルギーとしてインクを吐出口1から飛翔させ
ることに使用される。該飛翔されたインクはインク自体
の表面張力によって球形となり吐出ドットを形成する。
インクを吐出した吐出口1近傍の液路3内では、吐出に
よってインクが無くなるが、次の瞬間には毛管力によっ
てインクがリフィルされる。
【0014】インクがリフィルされる時間は、ヒータ6
の中央部を起点にして、インク全体が吐出口1側に流れ
ようとする力と共通液室4側へ戻ろうとする力によって
定まる。通常の連続吐出時には、インク全体が吐出口部
へ向かって動いているので、インクが吐出口部へ向かう
力は該インクの慣性力と前記毛管力であり、共通液室4
側に戻ろうとする力は前記吐出に使われなかった発泡エ
ネルギー(発泡時に共通液室4側へインクを押しやるエ
ネルギー)とインクタンクがインクを保持し続けようと
するタンク負圧(詳細は後述)とになる。したがって、
吐出口側へインクを流す力は〔毛管力〕+〔慣性力〕−
〔共通液室側発泡エネルギー〕−〔タンク負圧〕とな
り、この合力によってインクのリフィル時間が決定され
る。
【0015】しかし、第1ドット目の吐出時に限って
は、上記合力のようにはならない。この時は、インクが
静止している状態で発泡を起こし、吐出口部へ向かうイ
ンク全体の流れが無いところで発泡を起こすことにな
る。そのため、吐出口側へインクを流す力は、〔毛管
力〕−〔共通液室側発泡エネルギー〕−〔タンク負圧〕
となる。これから明らかなように、共通液室4から液路
3へのインク供給特性(吐出口側へインクを流す力)
は、第1ドット目の吐出時の方が弱いため、インクのリ
フィル時間は第1ドット目の方が長くかかる。すなわ
ち、1ドット目の吐出後のリフィルのみ時間が長めに必
要となるために、2ドット目の主滴が適正に形成されな
いことになる。
【0016】画像的には、例えば2ドットで形成される
縦ラインを記録する場合、図2の(A)に示すように記
録されるべきところが、図2の(B)に示すように2ド
ット目の主滴が目的どおりに形成されずに小滴の集まり
のような画像になってしまう。
【0017】このような問題を解決する従来技術とし
て、例えば「液室バッファ」を設ける手段が提案されて
いる。この「液室バッファ」とは、共通液室内にインク
が周り込まない(周り込み難い)箇所を設けておき、共
通液室内の一部に常に気体(空気)が満たされているよ
うに構成することである。この液室バッファの効果によ
り、2ドット目のリフィルを助けることができる。その
原理は、液室バッファ内の気体が膨張収縮することによ
り、共通液室側にインクを押しやる発泡エネルギー(吐
出に使われない発泡エネルギー)を吸収するためであ
る。
【0018】しかし、共通液室内に上記液室バッファを
設けると、次のような2つの点で問題が発生する。第1
には、液室バッファにインクが万遍なく周り込んでしま
っては効果が得られないので、インクが容易に周り込ま
ないような複雑な構成にする必要があり、作り難い構成
になってしまう。第2には、ポンピングに代表される吐
出回復動作(インク排出手段)を使用した後に、安定し
て液室バッファを生かすためには、バッファ室容積をあ
る程度大きく取っておく必要がある。すなわち、吐出回
復時、あるいはインクを引き上げるための前記インク排
出手段作動時に必要なインク排出量(吸引量)は、バッ
ファ室を含めた共通液室および流路の容積以上であるの
で、インクの排出量を大きく設定する必要があり、吐出
に使われずに無駄に消費されるインク量が多くなるのを
妥協しなければならない。
【0019】これらの問題があることから、記録速度を
1ドット目吐出後のリフィルに合わせて遅く設定する
か、2ドット目のドット形成が不良になるのを割り切っ
て記録速度を速く設定するか、あるいは、共通液室の構
成が複雑になることや廃インク量が多くなってしまうこ
とを妥協して液室バッファを設けるか、のいずれかを選
択せざるを得なかった。
【0020】請求項7〜請求項10の発明は、以上のよ
うな技術課題を解決し、特別な液室バッファを設けるこ
となく、かつ1ドット目吐出後のリフィルの遅延を抑え
ることができるインクジェット記録装置を提供すること
を目的とする。
【0021】さらに、既提案のインクジェット記録装置
における2ドット目のドット形成不良を解決する技術に
あっては、次のような解決すべき課題があった。第1に
は、吐出用ヒータ等で気泡を形成することは、該ヒータ
の寿命を短くすることになり、高頻度で使用されること
が想定される記録装置では実施困難である。第2には、
インクジェット記録装置では、その原理上、記録ヘッド
の蓄熱具合によって1ドットの吐出量が変化してしまう
ため、気泡形成に要する加熱量を大きく設定する必要の
ある記録ヘッドの構成の場合や、気泡形成手段が頻繁に
動作される場合には、気泡形成の前後で1ドット当たり
の吐出量の差異により画像品位が異なってしまうことが
ある。第3には、共通液室内に充分に気泡が存在してい
るにも関わらず、気泡形成が繰り返された場合に、共通
液室内に必要以上の気泡が集積し、本来のインク吐出に
悪影響を及ぼすことがある。
【0022】以上のように、吐出用ヒータ等による気泡
形成が頻繁に繰り返された場合には上記のような弊害が
生じる可能性が内在している。請求項11〜請求項13
の発明は、以上のような技術課題に鑑みてなされたもの
であり、吐出用ヒータの寿命低下、蓄熱による吐出量変
動、共通液室内の気泡過多などの問題を解消または低減
することを目的とする。
【0023】
【課題解決のための手段】請求項1の発明は、記録手段
から被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェ
ット記録装置において、吐出用インクを一時的に貯える
共通液室を記録手段ごとに設け、各記録手段を覆うキャ
ップと吸引回復用のシリンダポンプとの間に吸引回復動
作のタイミングを制御するためのバルブ機構を設け、複
数の記録手段を単一のシリンダポンプで吸引回復動作可
能にする構成とすることにより、色の異なる複数の記録
手段でも1つのポンプで順次吸引回復することができ、
ポンプのピストンが戻る時のインクの逆流を防止して高
画質の記録を可能にし、吸引回復時の初期圧力を記録手
段ごとに適正値に制御することができ、各記録手段に適
した吸引回復動作を実現するとともに無駄なインク吸引
を防いでインクを効率よく使用することができるインク
ジェット記録装置を提供するものである。
【0024】請求項2〜請求項6の発明は、上記構成に
加えて、インクの強制排出手段を有し、前記バルブ機構
を制御して吸引回復動作時のインク逆流を防ぐ構成、イ
ンクの強制排出手段を有し、前記バルブ機構を制御して
吸引回復動作時の初期圧力を記録手段の状態に合わせて
可変にし、吸引回復時の過度の流速上昇を抑える構成、
インクの強制排出手段を有し、各記録手段に応じて初期
圧力を設定する構成、前記記録手段がインクを吐出する
ために利用される熱エネルギーを発生する電気熱変換体
を備えているインクジェット記録手段である構成、ある
いは前記記録手段が前記電気熱変換体が発生する熱エネ
ルギーによりインクに生じる膜沸騰を利用して吐出口よ
りインクを吐出させる構成とすることにより、一層効率
よく、上記目的を達成するものである。
【0025】請求項7〜請求項10の発明は、吐出ヒー
タ上で繰り返される発泡・消泡エネルギーのうちの吐出
に使われないエネルギー、すなわち共通液室側へのエネ
ルギーを吸収することによりインクのリフィルを助ける
には、共通液室内の泡が有効であり、この共通液室内の
泡が上記液室バッファと同様な優れた特性を有すること
に着目して完成されたものである。
【0026】請求項7の発明は、記録手段から被記録材
へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置
において、吐出用インクを一時的に貯える共通液室を記
録手段に設け、該共通液室に気泡を入れる泡入れ手段を
設ける構成とすることにより、特別な液室バッファを設
けることなく、かつ1ドット目吐出後のリフィルの遅延
を抑えることができるインクジェット記録装置を提供す
るものである。
【0027】請求項8〜請求項10の発明は、上記構成
に加えて、記録手段の温度を測定する温度測定手段を設
け、該温度測定手段によりヒータ加熱の熱特性を検出
し、その検出結果に応じて前記泡入れ手段を制御する構
成、前記記録手段がインクを吐出するために利用される
熱エネルギーを発生する電気熱変換体を備えているイン
クジェット記録手段である構成、あるいは前記記録手段
が前記電気熱変換体が発生する熱エネルギーによりイン
クに生じる膜沸騰を利用して吐出口よりインクを吐出さ
せる構成とすることにより、一層効率よく、特別な液室
バッファを設けることなく、かつ1ドット目吐出後のリ
フィルの遅延を抑えることができるインクジェット記録
装置を提供するものである。
【0028】請求項11の発明は、記録手段から被記録
材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装
置において、記録手段内に吐出用インクを一時的に貯え
るインク貯留部を設け、該インク貯留部に気泡を混入さ
せる泡生成手段を設け、前記インク貯留部に気泡を混入
させる必要があるか否かを記録装置の記録条件および放
置時間より判別し、この判別結果に応じて前記泡生成手
段を制御する構成とすることにより、インク貯留部内に
常に適正量の気泡を混入させることができ、吐出用ヒー
タの寿命低下、蓄熱による吐出量変動、共通液室内の気
泡過多などの問題を解決するものである。
【0029】請求項12および請求項13の発明は、上
記構成に加えて、前記記録手段がインクを吐出するため
に利用される熱エネルギーを発生する電気熱変換体を備
えているインクジェット記録手段である構成、あるいは
前記記録手段が前記電気熱変換体が発生する熱エネルギ
ーによりインクに生じる膜沸騰を利用して吐出口よりイ
ンクを吐出させる構成とすることにより、一層効率よ
く、上記目的を達成し得るインクジェット記録装置を提
供するものである。
【0030】
【作用】請求項1〜請求項6の発明によれば、バルブ機
構の開閉制御により、1つのシリンダポンプで複数の記
録手段の吸引回復を行うことができ、吸引回復動作時の
インクの逆流が防止され、バルブ機構の独自の制御によ
り吸引回復時の初期圧力の制御も可能になる。
【0031】請求項7〜請求項11の発明によれば、共
通液室内にインク吐出に悪影響の無い適正量の気泡を常
に混入させておくことが可能となり、該気泡がダンパー
となって、吐出発泡時の共通液室側への発泡エネルギー
(圧力波)は前記気泡が膨張収縮することで吸収され、
インクタンク側へのインクの流れが阻止される。すなわ
ち、共通液室内の気泡により、1ドット目の吐出後のイ
ンクのリフィル遅延が防止される。
【0032】請求項11〜請求項13の発明によれば、
気泡生成手段として吐出ヒータを使用することによる弊
害、すなわち該ヒータの寿命低下、蓄熱によるインク吐
出量の変動、共通液室内の気泡過多などの弊害を解決す
ることが可能になる。
【0033】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明
する。なお、各図面において、同一符号で表示する部分
はそれぞれ同一または対応する部分を示すものとする。
図3は請求項1〜請求項6の発明を適用したインクジェ
ット記録装置の一実施例の要部構成を示す模式的斜視図
である。図3はカラー記録用のインクジェット記録装置
を示し、複数(4個)のヘッドカートリッジ9B、9
C、9M、9Yを備えている。これらのヘッドカートリ
ッジはキャリッジ10に交換可能に位置決め搭載されて
いる。
【0034】各ヘッドカートリッジ(記録手段または記
録ヘッド)9B、9C、9M、9Yで用いるインクの色
としては、例えば、記録ヘッド9Bではブラック、記録
ヘッド9Cではシアン、記録ヘッド9Mではマゼンタ、
記録ヘッド9Yではイエローがそれぞれ選定される。な
お、これらの記録ヘッド9B、9C、9M、9Yの全体
またはいずれか任意の一つを指す場合は単に記録手段
(記録ヘッドまたはヘッドカートリッジ)9と称するこ
とにする。図4は各記録ヘッド9を示す斜視図であり、
この記録ヘッド9は記録ヘッド部11とインクタンク部
12を一体化した交換可能なヘッドカートリッジとして
構成されている。
【0035】図3において、記録ヘッド9を搭載したキ
ャリッジ10はガイドレール16に沿って左右方向(主
走査方向)に往復移動可能に案内支持されている。そし
て、このキャリッジ10は、主走査モータ21により、
モータプーリ22、従動プーリ23およびタイミングベ
ルト24を介して駆動され、その位置および移動を制御
される。用紙やプラスチック薄板等の被記録材15は、
2組の搬送ローラ対17、18および19、20の間で
挟持され、これらの搬送ローラの回転により記録ヘッド
9の吐出口面81と対向する位置(記録部)を通して搬
送(紙送り)される。なお、被記録材15は、記録部に
おいて平坦な記録面を形成するように、その裏面をプラ
テン(不図示)により支持されることもある。
【0036】また、キャリッジ10には、記録ヘッド9
に対して駆動用の信号パルス電流やヘッド温調用電流を
流すためのフレキシブルケーブル(不図示)が接続され
ており、該フレキシブルケーブルの他端部は、プリンタ
コントロール用の電気回路を具備したプリント板(不図
示)に接続されている。
【0037】前記記録ヘッド(記録手段)9は、熱エネ
ルギーを利用してインクを吐出するインクジェット記録
ヘッドであって、熱エネルギーを発生するための電気熱
変換体を備えたものである。また、前記記録ヘッド9
は、前記電気熱変換体により印加される熱エネルギーに
よってインク内に膜沸騰を生じさせ、その時に生じる気
泡の成長、収縮による圧力変化を利用して吐出口よりイ
ンクを吐出させ、記録を行うものである。
【0038】図5は、前記記録ヘッド9のインク吐出部
の構造を模式的に示す部分斜視図である。図5におい
て、被記録材15と所定の隙間(例えば、約0.5〜
2.0ミリ程度) をおいて対面する吐出口面81には、
所定のピッチで複数の吐出口82が形成され、共通液室
83と各吐出口82とを連通する各液路84の壁面に沿
ってインク吐出用のエネルギーを発生するための電気熱
変換体(発熱抵抗体など)85が配設されている。本例
においては、記録ヘッド9は、前記吐出口82がキャリ
ッジ10の主走査方向と交叉する方向に並ぶような位置
関係で、該キャリッジ10に搭載されている。こうし
て、画像信号または吐出信号に基づいて対応する電気熱
変換体85を駆動(通電)して、液路84内のインクを
膜沸騰させ、その時に発生する圧力によって吐出口82
からインクを吐出させる記録ヘッド9が構成されてい
る。
【0039】図3において、記録装置の左側に設置され
た記録ヘッド9(キャリッジ10)のホームポジション
には、回復系ユニット25が配設されている。回復系ユ
ニット25は、各ヘッドカートリッジ9のインク吐出部
(記録ヘッド部)11のそれぞれに対応して配置された
複数(4個)のキャップ26を有するキャップユニット
27と、各キャップ26にチューブ28等で接続された
ポンプユニット29とを備えている。前記キャップユニ
ット(各キャップ26)は、キャリッジ10が接近して
きた時にその移動に伴って上下方向に昇降可能であり、
キャリッジ10がホームポジションにある時に各記録ヘ
ッド9の吐出口面81に密着して吐出口82を密封(キ
ャッピング)するように構成されている。このキャッピ
ングにより、吐出口82内のインクの蒸発による増粘ま
たは固着が防止され、また、吸引による吐出回復動作が
行われ、それによって吐出不良の発生防止が行なわれて
いる。
【0040】記録ヘッド9が万一吐出不良になった時に
は、上記キャッピング状態のもとで前記ポンプユニット
29を作動して負圧を発生させ、この負圧吸引力で吐出
口82からインクを吸い出すことにより吐出性能を回復
させる動作、すなわち吸引回復処理が行なわれる。さら
に、前記回復系ユニット25にはクリーニングブレード
30が設けられている。このクリーニングブレード30
は、前記キャップ26と被記録材搬送部との間の位置
で、ブレードホルダー31に保持されている。前記ブレ
ード30は、ゴム状弾性材で形成されたワイピング部材
であり、キャリッジ10の移動を利用して吐出口面81
を拭き取り清掃するためのものである。
【0041】図6は記録ヘッド9の詳細構造を示す模式
的縦断面図である。図6において、支持体32の上面に
半導体製造プロセスにより形成されたヒータボード33
が設けられている。このヒータボード33に、同様の半
導体製造プロセスにより形成された温調用ヒータ(昇温
用ヒータ)34が設けられている。この温調用ヒータ3
4は、記録ヘッド9を保温し、温調するためのものであ
る。前記支持体32上には配線基板35で配設されてい
る。この配線基板35には、前記温調用ヒータ34や吐
出用ヒータ(メインヒータ=電気熱変換体)85がワイ
ヤボンディング等により配線されている。また、温調用
ヒータ34は、前記ヒータボード33とは別のプロセス
により形成されたヒータ部材を支持体32等に貼り付け
たもので構成してもよい。
【0042】図6において、36は吐出用ヒータ85の
加熱により発生したバブル(気泡)であり、37は吐出
口82から吐出されたインク滴であり、83は吐出用の
インクを記録ヘッド部11内で一時的に貯留するための
共通液室であり、15は被記録材である。
【0043】図7〜図10は図3中のポンプユニット2
9の吸引ポンプ部を形成するシリンダポンプ53の構成
および動作を示す模式的縦断面図である。これらの図に
おいて、ピストン軸38の先端部にはピストン押圧ロー
ラ39が取り付けられており、タイミングギア(不図
示)の回転によりピストンカムセット(不図示)が前記
ピストン押圧ローラ39を押すと、ピストン軸38は図
7に示すように矢印H方向に移動する。そして、ピスト
ン40はピストン押さえ41により押圧されて矢印H方
向に移動し、シリンダ42内のポンプ室43は負圧状態
になる。この場合、ピストン40の外周および該ピスト
ンのピストン押さえ41との接触面にはスキン層がある
ので、インクが発泡材の連通孔を通して漏洩することは
ない。また、シリンダ42のインク流路44はピストン
40により閉塞されているので、ポンプ室43の負圧が
高まるのみでピストン40は移動可能な状態である。
【0044】記録ヘッド9をキャッピングした後、図7
に示すようにインク流路44を開き、この状態で数秒間
保持しておく。この時、記録ヘッド9から排出されたイ
ンクがキャップ26の吸引口を通して吸引される。吸引
されたインクは、キャップレバー45の内部に形成され
たインク流路46を通り、さらにシリンダ42のインク
流路44を通ってポンプ室43内へ導入され、該ポンプ
室43内の負圧が緩和される。
【0045】さらにタイミングギアが回転すると、キャ
ップカムにより再びキャップ26が吐出口面81から若
干離れ、図8に示すようにピストン軸38がさらに矢印
H方向に移動することにより、吐出口面81、キャップ
26および吸引口からインク流路44までの残インクが
吸引され、これらの部分のインク残留が無くなる。この
時、インク流路44までの残インクを除去するために、
ポンプ室43内の負圧を高める必要があり、そのために
は、ピストン40の矢印H方向への移動速度を高める方
が効率的に良い。
【0046】次にタイミングギアを逆方向に回転させる
と、ピストンリセットカムがピストン復帰ローラを引っ
張り、図9および図10に示すように、ピストン軸38
は矢印J方向に移動する。この場合、ピストン40はピ
ストン軸38のピストン受け47に当接してから移動す
るので、該ピストン40の端面48とピストン押さえ4
1との間に隙間aが生じる。しかし、ピストン軸38お
よびピストン40の移動により、ポンプ室43内に吸引
されている廃インクは前記隙間aを通り、ピストン軸3
8の溝49を通り、シリンダ42のインク流路50を通
り、さらに廃インク吸収体51の中央付近に排出され
る。
【0047】しかしながら、従来のインクジェット記録
装置にあっては、ピストン軸38が矢印J方向に移動す
る時、ポンプ室43内にある廃インク量がポンプ室43
内のほぼ全体に溜まっていた場合には、大部分の廃イン
クは前述のようにシリンダ42のインク流路44を通
り、さらに廃インク管52を通って排出されるが、一部
の廃インクは、インク流路44を通ってキャップ26の
吸引口より逆流し、キャップ26内にインクが溜まると
いう不都合が生じることがあった。本発明はこのような
廃インクの逆流を防止することができるインクジェット
記録装置を提供するものである。
【0048】図11は請求項1の発明を適用したインク
ジェット記録装置の第1実施例のシリンダポンプとキャ
ップとバルブ機構を含む吸引回復機構の構成を示す模式
図である。本実施例では、前述の廃インクの逆流を防止
するために、キャップ26とシリンダポンプ53との間
にバルブ機構54を設け、1個のバルブ機構54だけ
で、複数の記録ヘッド9に対応する複数のキャップ26
のそれぞれを、単独に(個別に)シリンダポンプ53に
連通(接続)するように制御可能に構成されている。図
11において、通常、待機中のシリンダポンプ53では
ピストン40がA位置に止まっている。
【0049】吸引回復の信号があると、ピストン40は
キャッピング終了時またはキャッピング動作中にB位置
まで移動する。この時の体積変化(初期体積変化)によ
り吸引の初期圧力が決定される。この初期圧力は、−
〔キャップ流路体積〕/〔キャップ流路体積+初期体積
変化〕で与えられる。ただし、この時のキャップ流路体
積はキャップ26の内容積も含む。
【0050】初期圧力が発生している状態でバルブ54
を制御してキャップ(第1のキャップ)26に接続し、
ピストン40がB位置からC位置へと移動するに従っ
て、第1のキャップ26からインクを引き込んでシリン
ダ42内に吸引する。この時の吸引量はピストン40の
移動による体積の総変化量で決まる。本実施例では、各
キャップ26からシリンダポンプ53までの流路の長さ
は等しく、流路抵抗差がないように構成されている。こ
れは、一度の吸引回復動作により、全ての記録ヘッド9
で同程度の吸引量が得られるようにするためである。
【0051】ピストン40が位置Cから位置Aに戻る際
に、シリンダ42内に吸引したインクを廃インク吸収体
や廃インクタンク等の廃インク収納部に排出する。吸引
終了後または吸引途中でバルブ54を制御して、第1の
キャップ26との接続を遮断し、ピストン40が位置A
に戻る時にはバルブ54が必ず閉じており、廃インクが
第1のキャップ26側に流れ込まないようにする。図1
2は図11の吸引回復機構のピストン40が戻る時の状
態を示す模式図である。もし、ピストン40が戻る際に
バルブ機構54による逆流防止が行われずに廃インクが
逆流してキャップ26や記録ヘッド9にまで到達してし
まうと、画像不良を引き起こす場合があり、異なる色の
複数の記録ヘッド9を用いるカラーインクジェット記録
装置においては、特にその影響が大きい。
【0052】第1のキャップ26からの吸引動作を終了
してピストン40が定常状態の位置に戻った後、再び初
期圧力を発生させてから次のキャップ(第2のキャッ
プ)26にバルブ54を接続し、上記の吸引動作を繰り
返すことにより、次の記録ヘッド9の吸引回復動作が行
われる。このようにして、複数のキャップ26にバルブ
54を個別に順次接続しながら、複数の記録ヘッド9の
吸引回復動作を個別に順次実行することができる。
【0053】また、吸引回復動作は必ずしも全ての記録
ヘッド9について実行する必要はなく、1個または一部
の記録ヘッド9に限って実行してもよい。例えば、ブラ
ックインクは他のインクに比べて染料濃度が高く、大気
中でも乾燥しやすく、吐出口82やその近傍にインクの
固着物が生成しやすい。そのため、他のインクの記録ヘ
ッドに比べて、必要となる吸引回復の回数が多くなって
しまう。常に全ての記録ヘッドについて順次吸引回復動
作を行うと、吸引回復の必要のない記録ヘッドまで吸引
してしまい、インク消費および処理時間に無駄が生じる
ことになる。したがって、ある特定の記録ヘッドに限っ
て吸引回復する限定モードを持たせることが好ましい。
【0054】さらに、上記バルブ機構54の動作を制御
して、各キャップ26ごとにシリンダポンプ53への接
続タイミングを制御することにより、各記録ヘッドごと
に吸引回復の初期圧力を制御することも可能である。図
11において、ピストン40を位置Aから移動させるこ
とにより初期圧力を発生させるが、この時にバルブ54
を閉じておき、どのキャップとも接続しない状態にして
おく。そして、ピストン40が位置Bを通過し、さらに
位置Cまで到達した時点で、初めてバルブ54を開いて
所定のキャップ26をシリンダポンプ53に接続する。
このように制御することにより、位置Bで接続する通常
の場合に比べ、より大きな初期圧力を得ることができ
る。ただし、この場合、シリンダポンプ53とバルブ機
構54とを接続する流路はできるだけ短くすることが好
ましい。
【0055】次に、請求項1の発明を適用したインクジ
ェット記録装置の第2実施例について説明する。本実施
例は、バルブ機構54を制御して、吸引回復の初期圧力
を記録ヘッドごとに変化させることを特徴とするもので
ある。吸引回復動作を行う際の複数の記録ヘッド9は全
て同じ状態ではなく、各記録ヘッドにより様々である。
【0056】図13はインク供給流路に泡溜めフィルタ
55が設けられたヘッドカートリッジ(記録ヘッド)9
を示す模式的断面図であり、図14は図13中の泡溜め
フィルタ55を通過するインクおよび泡の状態を示す模
式図である。図13および図14において、記録ヘッド
9のインク供給流路に泡溜めフィルタ55がある場合、
インクの流速が大き過ぎると泡56がフィルタ55を通
り抜けてしまう。インクの流速は初期圧力により決定さ
れる。記録や放置によって、吐出口82やその近傍に固
着物が生成されたり、液路84や共通液室83内に気泡
が堆積することがあり、通常、吸引回復時には、これら
の固着物や気泡の除去性を向上させるため、前記初期圧
力は高めに設定される。一方、定常状態では、インクタ
ンク12からの泡がフィルタ55をすり抜けない程度の
初期圧力に設定される。そのため、図11において、位
置Bでキャップ26を連通させるのではなく、バルブ機
構54により位置Cまたは位置Bと位置Cとの中間でキ
ャップ26を連通させて吸引を開始するように設定され
る。
【0057】しかし、記録終了直後などでは、インク温
度が上昇してインク粘度が低下し、泡56が動き易い状
態となる。その場合、同じ初期圧力で吸引しても流速が
上がり、泡56がフィルタ55を通り抜けてしまう。泡
56がフィルタ55を通り抜けると、液路84または共
通液室84内に堆積して、記録泡や放置泡と同じように
液路84を塞ぎ、吐出不良やインク落ちの原因となる。
【0058】そこで、本実施例では、インク温度じ高い
場合、インクタンク12内の泡がフィルタ55を通り抜
けることがないように、通常より初期圧力を小さくして
流速が上昇しないように制御される。具体的には、バル
ブ54によるキャップ26の連通タイミングを早目に
し、ピストン40の位置B付近の位置で、初期圧力が小
さい状態でシリンダポンプ53とキャップ26とを連通
させてしまう。このように初期圧力を低くすることによ
り、固着物や気泡の除去性は低下するが、吸引によって
インクタンク12から泡を取り込む現象が生じ難い状態
に設定することができる。また、初期圧力を下げても、
吸引量そのものは変わらないので、吸引不良の直接的な
原因とはならない。
【0059】次に、請求項1の発明を適用したインクジ
ェット記録装置の第3実施例について説明する。本実施
例は、複数の記録ヘッド9のそれぞれについて、キャッ
プ26からの流路体積を変化させることにより、各記録
ヘッド9に適した吸引回復を実行することを特徴とする
ものである。図15は本実施例による吸引回復機構の構
成および動作を示す模式図である。効率のよい吸引回復
を行うためには初期圧力をなるべく高く設定すればよい
が、初期圧力を決定する要因の一つにキャップ26から
バルブ機構54へ至る流路の体積(キャップ流路体積)
があり、このキャップ流路体積は小さくすることが好ま
しい。
【0060】しかし、図11のように全てのキャップ流
路体積を同じにした構成では、その最小値には限度があ
り、各記録ヘッド9の位置に合わせるために流路(チュ
ーブ等)を引き回す必要があり、無駄に長い流路すなわ
ち無駄に大きなキャップ流路体積を持つことになる。こ
れに対して、本実施例では、同一平面内にキャップ面を
合わせて、複数(4個)の記録ヘッド9のそれぞれの流
路長さ(流路体積)に大小を持たせている。このように
それぞれの記録ヘッド9でキャップ流路体積を異ならせ
ることにより、記録ヘッド9ごとに初期圧力を好適な値
に設定することができる。
【0061】ブラックインク(B)は他のインクに比べ
て染料濃度が高く、大気中でも乾燥しやすいので、吐出
口82やその近傍にインクの固着物が生成しやすい。そ
のため、1回の吸引回復をより効果的に行うために、ブ
ラックインクの記録ヘッドにおける吸引回復時の初期圧
力は他のインクの記録ヘッドに比べて高めに設定され
る。したがって、初期圧力が最も高くなるキャップ
(B)をブラックインクの記録ヘッド9Bに対応させる
ように設計する。また、逆に、イエローインク(Y)は
他のインクに比べて吸引しやすく、ある程度の初期圧力
で充分である。そのため、イエローインクの記録ヘッド
では、キャップ流路体積が大きくなり、流路抵抗が大き
くなってもよい。したがって、最も長い流路(最も大き
なキャップ流路体積)を有するキャップ(Y)がイエロ
ーの記録ヘッド9Yに対応するように構成される。図1
5の第3実施例では、以上のように各インク色の記録ヘ
ッド9ごとにキャップ流路体積を変化させることによ
り、それぞれの記録ヘッド9に適した初期圧力で吸引回
復を行うように構成されている。
【0062】図16は請求項7〜請求項13の発明を適
用するのに好適なインクジェット記録装置IJRAの一
実施例を示す模式的斜視図であり、図17は図16中の
インクジェットカートリッジIJCを示す斜視図であ
り、図18は図17のインクジェットカートリッジIJ
CがインクジェットユニットIJUおよびインクタンク
ITを一体化して構成されかつインクジェットユニット
IJUの一部でインクジェットヘッドIJHが構成され
ることを示す分解斜視図であり、図19はインクタンク
ITを示す斜視図であり、図20はインクジェットカー
トリッジIJCを搭載するキャリッジHCを示す断面図
である。
【0063】本実施例におけるインクジェットカートリ
ッジIJCは、図17に示すように、インク収納割合が
大きい構造になっており、インクタンクITの前方面よ
りも僅かにインクジェットユニットIJUの先端部が突
出した構成になっている。このインクジェットカートリ
ッジIJCは、図20に示すように、インクジェット記
録装置IJRAに往復移動可能に案内支持されたキャリ
ッジHCに対して、位置決め手段および電気的接点など
によって着脱可能に固定支持されている。すなわち、こ
のインクジェットカートリッジIJCはディスポーザブ
ルタイプのものである。
【0064】先ず上記インクジェットユニットIJUの
構成について説明する。インクジェットユニットIJU
は、電気信号に応じてインク内に膜沸騰を生じさせるた
めの熱エネルギーを生成する電気熱変換体を用いてイン
クを吐出し、吐出インクのインク滴を被記録材へ飛翔さ
せて記録を行う型式のユニットである。図18におい
て、100はヒータボードであり、該ヒータボード10
0は、Si基板上に複数の列状に配された電気熱変換体
(吐出ヒータ)とヘッド内部のインクを含めた吐出ヒー
タ近傍の温度を検知する温度センサと電気配線とを成膜
技術により形成して構成されている。
【0065】200はヒータボード100に対する配線
基板であり、該配線基板200は、ヒータボード100
の配線に対応する配線(例えばワイヤボンディングによ
り接続される)と、この配線の端部に位置し本体装置I
JRAからの信号を受けるパッド201とを有してい
る。1300は複数のインク流路をそれぞれ区分するた
めの隔壁や共通液室等を有する溝付き天板であり、この
溝付き天板1300には、インクタンクITから供給さ
れるインクを受けて共通液室へ導入するインク受け口1
500と、複数の吐出口を有する吐出口プレート400
とが一体化されている。これらの一体成形材料としては
ポリサルフォンが好ましいが、他の成形用樹脂材料でも
良い。
【0066】300は配線基板200の裏面を平面で支
持する支持体であり、該支持体300は、例えば金属製
であり、インクジェットユニットIJUの底板となる。
500は、M字形状をした押さえばねであり、そのM字
の中央で共通液室を押圧するとともに前だれ部501で
液路の一部を線圧で押圧する。押さえばね500は、ヒ
ータボード100および天板1300を抱くとともに、
その足部が支持体300の孔3121を通って該支持体
300の裏面側に係合することにより、これらを挟み込
んだ状態で保持固定している。すなわち、押さえばね5
00とその前だれ部501の付勢力によって、ヒータボ
ード100および天板1300が圧着固定されている。
【0067】また、支持体300は、インクタンクIT
の2つの位置決め凸起1012および位置決めかつ熱融
着保持用凸起1800、1801に係合する位置決め用
孔312、1900、2000を有する他、装置本体I
JRAのキャリッジHCに対する位置決め用の突起25
00、2600を裏面側に有している。加えて、支持体
300はインクタンクからのインク供給を可能にするイ
ンク供給管2200(後述)を貫通可能にする孔320
をも有している。支持体300に対する配線基板200
の取付けは、接着剤等で貼着して行われる。
【0068】なお、支持体300の凹部2400、24
00は、それぞれ位置決め用突起2500、2600の
近傍に設けられており、組立てられたインクジェットカ
ートリッジIJC(図17)において、その周囲の3辺
を複数の平行溝3000、3001で形成されたヘッド
先端域の延長点にあって、ゴミやインク等の不要物が突
起2500、2600に至ることがないように位置して
いる。この平行溝3000が形成されている蓋部材80
0は、図20に示すように、インクジェットカートリッ
ジIJCの外壁を形成するとともに、インクジェットユ
ニットIJUを収納する空間部を形成している。
【0069】また、平行溝3001が形成されているイ
ンク供給部材600は、前述したインク供給管2200
に連通するインク導管1600の該供給管2200側が
固定される片持ち梁として形成され、インク導管160
0の固定側とインク供給管2200との毛管現象を確保
するための封止ピン602が挿入されている。なお、6
01はインクタンクITと供給管2200との結合シー
ルを行うパッキン、700は供給管のタンク側端部に設
けられたフィルタである。このインク供給部材600
は、モールド成形されているので、安価で位置精度が高
く製造上の精度低下を無くしているだけでなく、片持ち
梁の導管1600によって大量生産時においても導管1
600の前記インク受け口1500に対する圧接状態を
安定化することができる。
【0070】本実施例では、この圧接状態下で封止用接
着剤をインク供給部材側から流し込むだけで、完全な連
通状態を確実に得ることができる。なお、インク供給部
材600の支持体300に対する固定は、支持体300
の孔1901、1902に対するインク供給部材600
の裏面側ピン(不図示)を支持体300の孔1901、
1902を介して貫通突出させ、支持体300の裏面側
に突出した部分を熱融着することで簡単に行うことがで
きる。なお、この熱融着された裏面部の僅かな突出領域
は、インクタンクITのインクジェットユニットIJU
取付け面側壁面のくぼみ(不図示)内に収められるの
で、正確なユニットIJUの位置決め面が得られる。
【0071】次にインクタンクITの構成について説明
する。インクタンクITは、カートリッジ本体1000
に対し、上記ユニットIJU取付け面と反対側の側面か
らインク吸収体900を挿入した後、これを蓋部材11
00で封止することにより構成されている。900はイ
ンクを含浸させるための吸収体であり、カートリッジ本
体1000内に配置される。1200は、上記各部10
0〜600から成るユニットIJUに対してインクを供
給するための供給口であるとともに、当該ユニットIJ
Uをカートリッジ本体1000の部分1010に配置す
る前の工程で、供給口1200よりインクを注入するこ
とにより、吸収体900のインク含浸を行うための注入
口でもある。
【0072】本実施例では、インクを供給できる部分は
大気連通口1401と前記供給口1200であるが、イ
ンク吸収体からのインク供給性を良好に行うための本体
1000内リブ2300と蓋部材1100の部分リブ2
500、2400とによって形成されたタンク内空気存
在領域を、大気連通口1401側から連続させてインク
供給口1200から最も遠い角部域にわたって形成する
構成を採っているので、このインク供給口1200側か
ら、相対的に良好かつ均一なインク吸収体900へのイ
ンク供給を行うことができる。前記インク吸収体900
へのインク供給が良好かつ均一に行われることは極めて
重要なことであり、上記インク供給の方法は実用上極め
て有用である。
【0073】前記リブ2300は、インクタンク本体1
000の後方面において、キャリッジ移動方向に平行な
4本のリブで構成されており、インク吸収体900が後
方面に密着することを防止している。また、部分リブ2
400、2500は、前記蓋部材1100の内面の前記
リブ2300の延長線上に設けられているが、該リブ2
300と異なり、分割された状態になっていて空気の存
在空間を前者より増加させている。なお、部分リブ24
00、2500は蓋部材1100の全面積の半分以下の
面に分散された形となっている。
【0074】上記のような各リブを設けることにより、
インク吸収体900のインク供給口1200から最も遠
い角部の領域のインクをより安定させつつも、確実に供
給口1200側へ毛管力で導くことが可能になる。14
01はカートリッジ内部を大気に連通するために設けら
れた大気連通口である。1400は大気連通口1401
の内方に装着される液遮断部材であり、これによって大
気連通口1401からのインク漏洩が防止される。
【0075】前記インクタンクITのインク収容空間は
長方体形状であり、その長辺を側面に持つ場合であるの
で、前述したリブの配置構成は特に有効であるが、キャ
リッジの移動方向に長辺を持つ場合または立方体の場合
は、蓋部材1100の全体にリブを設けることにより、
インク吸収体900からのインク供給を安定化させるこ
とができる。
【0076】また、インクタンクITの前記ユニットI
JUの取付け面の構成は図19に示すとおりである。前
記吐出口プレート400の吐出口のほぼ中心を通って、
インクタンクITの底面もしくはキャリッジHCの表面
の載置基準面に平行な直線をL1 (図19)とすると、
支持体300の孔312に係合する2つの位置決め凸起
1012はこの直線L1 上にある。この凸起1012の
高さは支持体300の厚みより僅かに低く、支持体30
0の位置決めを行う。図19中の直線L1 の延長上に
は、図20に示すようなキャリッジの位置決め用フック
4001の90度角の係合面4002が係合する爪21
00が位置しており、キャリッジに対する位置決め作用
力がこの直線L1 を含む上記基準面に平行な面領域で作
用するように構成されている。図20で後述するが、こ
れらの関係は、インクタンクのみの位置決めの精度が記
録ヘッドの吐出口の位置決め精度と同等となるので、極
めて有用な構成となる。
【0077】また、支持体300をインクタンク側面へ
固定するための孔1900、2000のそれぞれに対応
するインクタンクの突起1800、1801は前述の凸
起1012よりも長く、支持体300を貫通して突出し
た部分を熱融着して支持体300をインクタンクの側面
に固定するためのものである。前述の直線L1 に垂直で
前記突起1800を通る直線をL3 、突起1801を通
る直線をL2 とすると、直線をL3 上には前記供給口1
200のほぼ中心が位置するので、供給部の口1200
と供給管2200との結合状態を安定化することがで
き、落下や衝撃によってもこれらの結合状態への負荷を
軽減することができる。
【0078】また、直線L2 、L3 は一致しておらず、
ヘッドIJHの吐出口側の凸起1012周辺に突起18
00、1801が存在しているので、さらにヘッドIJ
Hのインクタンクに対する位置決めの補強効果が得られ
る。なお、L4 で示される曲線は、インク供給部材60
0の装着時の外壁位置である。突起1800、1801
は、その曲線L4 に沿っているので、ヘッドIJHの先
端側構成の重量に対しても充分な強度と位置精度を与え
ている。なお、2700はインクタンクITの先端ツバ
であり、該先端ツバ2700は、キャリッジの前板40
00(図20)の孔に挿入されて、インクタンクの変位
が極端に悪くなるような異変発生時に対処するためのも
のである。2101は、キャリッジHCとの更なる位置
決め部との係合部である。
【0079】インクタンクITは、ユニットIJUを装
着した後に蓋800で覆うことにより、ユニットIJU
を下方開口を除いて包囲する形状となるが、インクジェ
ットカートリッジIJCとしては、キャリッジHCに載
置するための下方開口がキャリッジHCと近接するた
め、実質的な4方包囲空間を形成してしまう。したがっ
て、この包囲空間内にあるヘッドIJHからの発熱は、
この空間内を保温空間とするのには有効であるものの、
長期間連続使用すると僅かな昇温となる。そのため、本
実施例では、支持体300の自然放熱を助けるために、
カートリッジIJCの上方面に前記空間よりは小さい幅
のスリット1700が設けられている。このスリット1
700により、前記昇温を防止しつつ、環境に左右され
ずにユニットIJU全体の温度分布の均一化を図ること
が可能になる。
【0080】インクジェットカートリッジIJCとして
組立てられると、インクは、カートリッジ内部より、供
給口1200と支持体300の孔320と供給タンク6
00のの中裏面側に設けた導入口とを介して、供給タン
ク600内に供給される。供給されたインクは、供給タ
ンク600内を通った後、導出口より適宜の供給管およ
び天板400のインク導入口1500を介して、共通液
室内へと流入する。以上におけるインク連通用の接続部
には、例えばシリコンゴムやブチルゴム等のパッキンが
配設され、これによって封止が行われてインク供給路が
確保される。
【0081】なお、本実施例においては、天板1300
は、耐インク性に優れたポリサルフォン、ポリエーテル
サルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリプロピレ
ンなどの樹脂を材料とし、吐出口プレート400ととも
に金型内で一体に同時成形して作られる。このような一
体成形部品は、インク供給部材600、天板および吐出
口プレート、インクタンク本体1000としたので、組
立て精度が高水準になり、しかも、大量生産の品質向上
に極めて有効である。また、部品点数の個数は従来例に
比較して減少させることができ、優れた所望特性を確実
に発揮させることができる。
【0082】次に、キャリッジHCに対するインクジェ
ットカートリッジIJCの取付けについて説明する。図
20において、記録用紙等の被記録材Pは、プラテンロ
ーラ5000により、図中の下方から上方へ案内され
る。キャリッジHCはプラテンローラ5000に沿って
往復移動し、該キャリッジには前板4000と電気接続
用支持板4003と位置決め用フック4001とが設け
られている。前記前板4000は、例えば厚さ2mmの
板部材で構成され、キャリッジの前方プラテン側でイン
クジェットカートリッジIJCの前面側に位置してい
る。
【0083】前記電気接続用支持板4003には、カー
トリッジIJCの配線基板200のパッド201に対応
するパッド2011を具備したフレキシブルシート40
05と、該フレキシブルシートを裏面側から各パッド2
011に対して押圧する弾性力を発生するためのゴムパ
ッド4006とが保持されている。前記位置決め用フッ
ク4001は、インクジェットカートリッジIJCを記
録位置へ固定するためのものである。
【0084】前板4000には、カートリッジの支持体
300の前記位置決め突起2500、2600のそれぞ
れに対応する2個の位置決め用突出面4010が設けら
れ、カートリッジを装着した後では前記突出面4010
に向かう垂直な力を受ける。この力を受けるため、前板
4000のプラテンローラ側には垂直な力の方向に向か
っている複数の補強用リブが設けられている。このリブ
は、カートリッジIJC装着時の前面位置L5 よりも僅
かに(約0.1mm程度)プラテンローラ側に突出し
て、ヘッド保護用突出部をも形成している。
【0085】電気接続用支持板4003には、前記補強
用リブに対して垂直に形成された複数の補強用リブ40
04が設けられている。これらの補強用リブ4004
は、側方への突出割合がプラテン側からフック4001
側に向かって段々と減じるように形成されている。これ
らのリブ4004は、インクジェットカートリッジIJ
Cの装着時の姿勢を図示のように傾斜させるための機能
も果たしている。また、支持板4003は、電気的接触
状態を安定化するため、プラテン5000側の位置決め
面4008とフック4001側の位置決め面4007
(図19)とを有し、これらの間にパッドコンタクト域
を形成するとともに、パッド2011対応のボッチ付き
ゴムシート4006の変形量を一義的に規定している。
【0086】これらの位置決め面4007、4008
は、カートリッジIJCが記録可能な位置に固定される
と、配線基板200の表面に当接した状態となる。本実
施例では、さらに、配線基板200のパッド201を前
述した直線L1 に関して対称となるように分布させてい
るので、ゴムシート4006の各ボッチの変形量を均一
化してパッド2011、201の当接圧の安定性を向上
させることができる。なお、本実施例におけるパッド2
01の分布は、上方および下方に2列でかつ縦に2列で
配列されている。
【0087】フック4001は固定軸4009に係合す
る長孔を有しており、この長孔の移動空間を利用して図
示の位置から反時計方向に回動させた後、プラテンロー
ラ5000に沿って左方側へ移動させることで、キャリ
ッジHCに対するインクジェットカートリッジIJCの
位置決めを行う。このフック4001の移動はどのよう
な操作で行っても良いが、レバー等で行う構成が好まし
い。いずれにしても、このフック4001の回動時に、
カートリッジIJCはプラテンローラ5000側へ移動
し、位置決め突起2500、2600は前板4000の
位置決め面4010と当接可能な位置へ移動し、フック
4001の左方側移動によって、90度のフック面40
02がカートリッジIJCの爪2100の90度面に密
着し、カートリッジIJCは位置決め面2500、40
10同士の接触域を中心に水平面内で旋回し、最終的に
パッド201、2011同士の接触が始まる。
【0088】そして、フック4001が所定位置、すな
わち固定位置に保持されると、パッド201、2011
同士の完全接触状態と、位置決め面2500、4010
同士の完全面接触と、90度面4002と爪の90度面
の面接触と、配線基板200と位置決め面4007、4
008との面接触とが、同時に形成されてキャリッジに
対するインクジェットカートリッジIJCの着脱可能な
状態での位置決め固定が完了する。
【0089】次に、インクジェット記録装置の装置本体
の概略構成について説明する。図16は本発明を適用し
たインクジェット記録装置IJRAの斜視図である。図
16において、駆動モータ5013の正逆回転に連動し
て、駆動力伝達ギア5011、5009を介してリード
スクリュー5004が正逆方向に回転し、該リードスク
リューの螺旋溝5005とピン(不図示)を介して係合
したキャリッジHCが矢印a、b方向に往復移動する。
紙押え板5002は、キャリッジ移動方向にわたって被
記録材(記録用紙等)Pをプラテン5000の表面に押
圧する。5007、5008はフォトカプラである。該
フォトカプラは、キャリッジのレバー5006のこの領
域での存在を確認してモータ5013の回転方向切り換
え等を行うホームポジションを検知するための検知手段
を構成している。
【0090】5016は、記録ヘッドの前面をキャッピ
ングするためのキャップ部材5022を保持するキャッ
プホルダーである。5015はキャップ5022内を吸
引する吸引手段であり、該吸引手段5015は、キャッ
プ内開口(吸引口)5023を通して記録ヘッドIJH
の吐出口からのインクを吸引して吸引回復を行うための
吸引ポンプで構成されている。5017はクリーニング
ブレードであり、該クリーニングブレード5017は、
記録ヘッドの移動を利用して吐出口面に付着した異物を
拭き取り清掃するためのものである。5019は前記ブ
レード5017を前後方向に移動可能に保持する部材で
あり、該部材5019および前記ブレード5017は本
体支持板5018に支持されている。なお、クリーニン
グブレード5017は図示の形態に限定されるものでは
なく、かかるクリーニング手段としては、既提案の種々
の形態のクリーニング部材を使用することができる。
【0091】また、5021は吸引回復の吸引を開始す
るためのレバーである。このレバー5021はキャリッ
ジと係合するカム5020の移動に伴って移動するもの
である。前記レバー5021の移動は、駆動モータ50
13からの駆動力がクラッチ切り換え等の公知の伝達手
段を介して伝達されることにより制御される。これらの
キャッピング、クリーニング、吸引回復などの処理に関
しては、キャリッジ5014がホームポジション側の領
域にきた時に、リードスクリュー5004の作用により
それらの対応位置で所望の処理をそれぞれ実行するよう
に構成されている。
【0092】本実施例は、これらの処理の実行手順や動
作条件によって制約を受けるものではなく、公知のタイ
ミングで所望の動作を行う記録装置であれば、どのよう
な記録装置でも実施可能なものである。さらに、記録装
置本体の基板ボード(PCB)上には温度センサ(基準
サーミスタ)5024が取り付けられている。この温度
センサ5024は、環境温度を測定したり、記録ヘッド
の温度の校正に使用したりするものである。そして、こ
の記録ヘッドの挙動に基づいて後述する泡入れ動作を制
御している。
【0093】図21は前記インクジェット記録装置IJ
RAで用いられる記録ヘッドIJHの要部構成を示す分
解斜視図であり、図22は図21中の天板を裏面から見
た斜視図である。図21および図22において、記録ヘ
ッドは、溝付き天板(凹部付き天部材)1300と吐出
口プレート400とヒータボード100とを一体化する
ことにより、内部に共通液室83および複数の液路84
が形成され、吐出口面81(吐出口プレート400の前
面)に各液路84の開口部で形成される複数の吐出口8
2が設けられている。
【0094】図21および図22において、41は20
0ミクロン厚さの吐出口プレート400に開けられて前
記吐出口82を形成する開口、1500は溝付き天板1
300とヒータボード100とを接合することにより形
成された共通液室83およびインク路(液路)84にイ
ンクを供給するためのインク受け口である。91はイン
クを吐出するために各液路84に配置された電気熱変換
体(吐出用ヒータ)である。この電気熱変換体91はイ
ンクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生す
る熱エネルギー発生素子で形成されている。共通液室8
3は前記インク受け口1500から供給されるインクで
満たされている。
【0095】電気熱変換体91が発生する熱エネルギー
によりインクに生じる膜沸騰を利用して吐出口82より
インクを吐出させる上記インクジェット記録ヘッドにあ
っては、記録を行うに従って消泡しきれなかった泡が液
路84内に蓄積し、蓄積した泡が共通液室83内へ流れ
出ていく場合がある。共通液室83内の気泡は必ずしも
悪影響を及ぼすものではないが、気泡が多く入り過ぎた
り、気泡体積が大き過ぎたりした場合には、吐出口82
や液路84を塞いでしまい、インク供給路が確保されな
いという弊害が生じる。したがって、吐出が悪化した時
に実行される吐出回復動作(本実施例では負圧を利用し
た吸引回復動作)の際に、共通液室83内に混入してい
る気泡も極力除去してしまうことが好ましい。
【0096】本実施例では、共通液室83内の気泡を効
果的に除去するために、該共通液室83の形状は図22
に示すように三角形にしてある。吸引時にインクが流れ
ている時にも、壁面のインク流速は零である。そのた
め、共通液室83内のインクを万遍なく吸引することに
より、気泡を取り除くとともに、増粘したインクを新し
いインクと入れ換えるために前記壁面のインク淀みを最
低限に抑える必要がある。したがって、壁面が円形のよ
うな丸みを有したり、壁面の形状が方形の角部を有する
形状であったりするよりは、インクが最短距離で液路8
4に導かれる三角形のテーパー形状が最適である。
【0097】前述のように共通液室83内の泡が最も抜
け易い形状に構成しておくと、該共通液室83内の気泡
が全て抜けてしまうことが懸念される。すなわち、本実
施例のように液室バッファを持たない記録ヘッド構成
(共通液室構成)において、共通液室83内の気泡を全
て抜き取ってしまうと、図2で説明したように、1ドッ
ト目吐出後の2ドット目のインクリフィル(インク再充
填)が遅くなり、2ドット目の主滴(飛翔インク滴)が
適正に形成されず、画像品位の低下を招くことが懸念さ
れる。しかし、本実施例では、以下に説明するような制
御を実行することにより、このような不具合を解消する
ことができる。
【0098】共通液室83内の気泡が完全に無くなるの
は吸引回復後に限られる。そこで、本実施例では、吸引
回復後に適量の気泡、すなわち、吐出に悪影響を与える
ことなくダンパーとなり得る気泡の量や大きさなどを管
理し、そのような量または大きさの気泡を共通液室83
内に入れる(混入させる)ように制御される。
【0099】本実施例では、共通液室83内に気泡を入
れる泡入れ方法として、インクとの接触面を吐出用ヒー
タ91により直接的に加熱する方法が採られる。加熱温
度はインクが沸騰を開始する温度まで上げることが好ま
しい。沸点に達したインクは、気泡を発生させるととも
に、該気泡を液路84内に溜める。液路84内に溜まっ
た気泡は、次に発泡した気泡に押し出され、その一部が
共通液室83内に流れ出ていく。したがって、本実施例
では、吐出ヒータ91への印加エネルギーを制御するこ
とにより、共通液室83内に溜める気泡の量を制御す
る。しかし、その場合、記録ヘッドIJHのヒータや放
熱特性などの個体差により、気泡が生成される量が異な
ってくることが考えられる。そのため、プレ加熱による
ヘッド温度を検知し、その結果に応じて前記吐出ヒータ
91への印加エネルギーを補正する必要がある。
【0100】本実施例では、プレ加熱の印加エネルギー
に対する一定時間後のヘッド温度の立ち上がりの特性を
検出し、その検出温度でヘッドのヒータや放熱特性の個
体差を校正して前記泡入れの印加エネルギーを決定す
る。ヘッド温度の検出は、ヘッドチップ内の温度センサ
を用いて行う。通電直前のヘッド温度を検出し、吐出し
ない程度のエネルギーをヘッドに印加する。具体的に
は、3kHZ の駆動周波数で3.5W(23V×150
mA)×1マイクロ秒を各液路に印加する。数秒後、ヘ
ッド温度を検知して、通電直前のヘッド温度からの変位
量:ΔTを求め、その温度に応じて泡入れの印加エネル
ギー量を制御する。
【0101】図23はプレ加熱特性検出シーケンスを示
すフローチャートである。図23に示すように、本実施
例では、ΔTが5℃未満の場合は吐出ヒータ91もしく
は装置本体の電源系の異常とみなし、再度プレ加熱を行
う。ただし、プレ加熱を繰り返すのは3回までとし、そ
れでもΔTが5℃未満の場合はエラー表示してユーザー
に知らせる。また、ΔTが30℃以上の場合は、インク
が落ちているものとみなし、再度吸引回復を行ってから
プレ加熱検出を行う。ΔTが5℃から30℃までの場合
は、表1の印加エネルギーテーブルに従って泡入れの印
加エネルギーを決定する。
【0102】本実施例で用いるヘッドの吐出ヒータ抵抗
は±15%程度の公差があり、吐出ヒータ(電気熱変換
体)91それぞれにおいてバラツキがある。すなわち、
同じエネルギーを投入しても、その温度変化には違いが
ある。また、吐出ヒータを形成しているシリコンチップ
と基板ボードとの接着層の厚みも個々で異なり、放熱特
性の違いもある。したがって、その記録ヘッドに固有の
特性に合わせて泡入れを行う必要がある。本実施例で
は、泡入れのプレ加熱特性を検出することで、それぞれ
の記録ヘッドに合わせた泡入れを可能にしている。一つ
の記録ヘッド内の吐出ヒータ91に通電することで、全
ヒータの平均的特性で泡入れを行うことができる。
【0103】泡入れシーケンスを実行した後、液路84
内の気泡は予備吐出により排出する。図24は液路84
内の気泡の状態を示す模式図である。図24の(A)は
液路84内の気泡の残り方の一例を示す。そして、図2
4の(B)に示すような状態になれば、毛管現象により
液路84内にインクがリフィルされる。したがって、図
24の(A)の状態を同図の(B)の状態にすれば、イ
ンクはリフィルされる。すなわち、液路84内に気泡が
混入している状態で吐出を行って液路前方のインクを排
出してしまい、毛管力によりインクがリフィルされる状
況を作る。これにより液路84内にインクは充填(リフ
ィル)され、記録が行える状態に回復するが、液路84
内のインク中に小気泡が混入している可能性があるの
で、該小気泡をも排出すべく、予備吐出発数は複数発行
うことが好ましい。
【0104】本実施例では吸引回復後に泡入れ制御を行
ったが、加圧手段を用いる等、他のインク排出手段を用
いる場合、あるいはそれ以外の場合でも、共通液室83
の気泡が排出されてしまった後で前記泡入れ制御を行う
ことにより、同様の効果が得られる。
【0105】前述のごとく、インク排出動作の後に、イ
ンクとの接触面を加熱する手段により、共通液室83内
に、常に、吐出に悪影響を与えない適正量の気泡を混入
させておくことが可能となる。そのため、混入された気
泡がダンパーとなり、吐出発泡時の共通液室側への発泡
エネルギー(圧力波)を該気泡の膨張・収縮によって吸
収することができる。これによって、インクタンク側へ
のインク流れを食い止め、液室バッファを設けることな
く、1ドット目吐出後のリフィルの遅延を防止すること
が可能なインクジェット記録装置が得られる。
【0106】次に、請求項7の発明を適用したインクジ
ェット記録装置の第2実施例について説明する。本実施
例は、環境温度が高い場合に、その温度に応じて泡入れ
を制御するものである。インクは液相であり、圧力波を
伝播する媒体となり得るが、その伝播速度はインクその
ものの固有の性質および状態に左右される。インク固有
の性質は変化しないが、環境によりその状態は変わり、
特に温度により状態は大きく変わってくる。インクの温
度が高いと、インクは活性的であり、動きも激しので、
ある程度の量の気泡が必要である。
【0107】環境温度が高い場合、前述のようにインク
は活性的であり、必要となる気泡の量は常温状態に比べ
て多くなるが、活性的であることから僅かな加熱、すな
わち小さいエネルギーで充分な気泡を入れることができ
る。逆に、過度のエネルギーを印加すると、気泡が増え
過ぎて弊害となってしまう場合がある。また、ヘッドの
温度が高い状態で過度のエネルギーを印加することは、
インクの温度をさらに上げるのみならず、ヘッド全体の
温度を上昇させてしまい、吐出量の必要以上の増大を招
いたり、耐久性に悪影響を及ぼす原因となる。
【0108】本実施例は、表1に示している印加エネル
ギーを環境温度により補正するものである。その補正値
は表2に示される。本実施例では、環境温度を本体基板
ボード上などに設置された温度センサ(基準サーミス
タ)で検知し、プレ加熱特性検出において決められた泡
入れの印加エネルギーを検知温度に応じて補正する。こ
れは高温環境時のみ実行し、常温状態、低温状態では行
わない。プレ加熱特性検出により、高温環境時の泡入れ
の弊害や過度のエネルギー投入を防いでいる。インクへ
のエネルギー印加手段の構成および作用は前述の第1実
施例の場合と同様であるので、それらの詳細説明は省略
する。
【0109】さらに、請求項7の発明を適用したインク
ジェット記録装置の第3実施例について以下に説明す
る。本実施例は、部分泡入れを行う場合のプレ加熱特性
検出による印加エネルギーを設定することを特徴とする
ものである。本実施例で用いる記録ヘッドは64個の吐
出口(液路)から成る360dpiの高精細なヘッドで
あるが、文字だけの記録を行う場合は上部の48個の液
路(吐出口)のみを使用し、49番目以降の液路は使用
しない。本実施例では、記録に使用しない49番目以降
の液路のみを用いて泡入れを行い、プレ加熱特性検出に
より適正な印加エネルギーを設定する。
【0110】具体的には、49番目以降の液路のみを使
用するため、プレ加熱によるヘッド温度の立ち上がり特
性も緩慢になり、表1の印加エネルギーを適用できなく
なる。そこで、表3に示すような49番目以降の液路の
みの専用テーブルを持たせる。ただし、このヘッド温度
は49番目以降の液路(吐出口)の近傍の温度センサに
より検出されたものである。そして、本実施例において
も、図23のシーケンスに基づいて、ヘッド温度の変位
に応じて印加エネルギーを決定する。このように49番
目以降の液路を泡入れに用いることにより、記録に対す
る使用頻度の少ない液路84を使用して、使用頻度の多
い液路84との差を縮めるとともに、使用頻度の高い液
路84の吐出ヒータ91の高寿命化を図ることができ
る。インクへのエネルギー印加手段の構成および作用
は、前述の第1実施例および第2実施例の場合と同様で
あり、その詳細説明は省略する。
【0111】以上図16〜図24で説明した請求項7〜
請求項10の発明の実施例によれば、吐出に悪影響を与
えるような共通液室83内の気泡を排出しやすい液室構
造を有し、吸引等による吐出回復動作後に、プレ加熱の
立ち上がり特性を検出してやることで、その記録ヘッド
固有の吐出ヒータのバラツキや放熱特性に応じて泡入れ
の印加エネルギーを設定し、共通液室83内に適正あ泡
を入れる泡入れ手段を設けたことにより、共通液室内
に、常に、吐出に悪影響を与えない適正気泡を混入させ
ておくことが可能となり、この気泡がダンパーとなっ
て、吐出発泡時の共通液室側への発泡エネルギー(圧力
波)を該気泡の膨張・収縮によって吸収し、吐出回復時
などにおけるインクタンク側へのインクの流れ(逆流)
を防止することが可能となる。また、個々のヘッドのプ
レ加熱特性を検出することで、そのヘッドに適切な泡入
れを行うことが可能となる。
【0112】次に、前述した図16〜図22および図2
5〜図28を参照して、請求項11〜請求項13の発明
を適用したインクジェット記録装置の実施例について説
明する。前述したごとく、インクジェット記録ヘッドに
あっては、共通液室83内の気泡が完全に無くなってし
まうと、図2で説明したように、連続吐出を行った時の
2ドット目のドット形成がうまく行かず画像品位を劣化
させてしまう場合がある。そこで、本実施例でも、共通
液室内の気泡が完全に無くなるのは吸引回復後に限られ
るので、吸引回復後に適量の気泡を共通液室内に入れる
(混入する)ように制御する。すなわち、吸引回復後
に、吐出に悪影響を与えることなくダンパーとして機能
する程度の気泡を、その量または大きさ等を管理しなが
ら、共通液室83に入れるように制御する。
【0113】共通液室83内に気泡を入れる泡入れ方法
として、例えば、吸引回復後にインクとの接触面を吐出
用ヒータ91を用いて直接加熱する方法などがある。加
熱温度はインクが沸騰を開始する温度まで上げることが
好ましい。沸点に達したインクは、気泡を発生させ、該
気泡を液路84内に溜める。液路84内に溜まった気泡
は、次に発泡した気泡に押し出され、その一部が共通液
室83内に流れ出ていく。したがって、吐出ヒータ91
への印加エネルギーを制御することにより、共通液室8
3内に溜める気泡の量を制御することができる。
【0114】以下、請求項11〜請求項13の発明につ
いて具体的に説明する。前述のごとく、吸引回復動作が
頻繁に行われると想定される場合等には、蓄熱や共通液
室内気泡過多などの問題や、気泡形成手段が吐出用ヒー
タ等を兼ねていることによるヒータ寿命の問題が懸念さ
れるが、本発明によれば、吐出用ヒータ等による気泡形
成手段の使用を必要最小限にする制御によって前記問題
が解決される。
【0115】先ず、請求項11の発明の第1実施例につ
いて説明する。実験によれば、直径が50ミクロン以下
の気泡は−0.5atm以上の大きな負圧をかけても抜
けずに共通液室内に残る。気泡が完全に抜けるのは共通
液室や流路にインクが全く無い状態のいわゆるインク落
ちをしている時であった。よって、インク落ちしている
か否かを、インクジェット記録装置の使用状況から推定
することにより、インク落ちしている時のみ気泡形成手
段を用いるように制御すれば、吸引回復動作が頻繁に行
われると想定される場合や気泡形成手段が吐出用ヒータ
を兼ねている場合等にも、連続吐出時の2ドット目のド
ット形成不良を防いで画像品位の劣化を防止することが
できる。
【0116】インクジェット記録ヘッドの液路84を含
めた流路は、通常−数十mm(水柱)から−百mm(水
柱)程度の負の水頭がかけられている。本実施例では、
インクタンク内のインク吸収体がインクを保持しようと
する力で負の水頭を実現しており、インクタンク内に吸
収体等が無い場合には、記録ヘッドよりもインクタンク
を垂直方向下側に配し負の水頭をかけている。一方、流
路の最端部である液路84では毛管現象によりインクを
引き上げようとする力が働いており、メニスカスが形成
されている。
【0117】したがって、1本の液路でも、共通液室と
大気が連通してしまった場合にはインク落ちが生じ、例
えば共通液室の半分だけインクが落ちており、液路の半
分でインク供給が絶たれ、液路の残り半分にのみインク
が供給されるなどの中途半端な状態は殆ど起こり得な
い。また、インク落ちの原因は、大別して、長期の放置
における透過による放置泡と、記録が行われる場合の記
録泡の発生である。これらの泡により共通液室の気泡が
生長することになる。長期の放置が原因で起こるインク
落ちは、ある一定時間以上の放置がインク落ちにつなが
るので、放置時間により推定する。記録が行われる場合
のインク落ちは、記録の時間がある一定時間以上の時に
共通液室内が気泡過多となり、インク落ちにつながるの
で、記録時間から推定することもできる。
【0118】共通液室内のインク落ちは次のようにして
推定する。インクジェット記録装置は内部電池で駆動す
る内部タイマーを備えている。内部タイマーは、吸引の
度にリセットする。一回の記録命令毎に、記録時間によ
って推定される記録泡の量を、同量の泡が放置により発
生する時間に換算して、内部タイマーの時間に加算す
る。該時間が放置によりインク落ちに至るまでの時間を
越えた場合、インク落ちと判断する。
【0119】図25および図26は、本実施例(第1実
施例)において、インク落ちを推定して泡入れを行う制
御動作のシーケンスを示すフローチャートである。先
ず、図25において、ステップS1000で記録命令が
入ると、記録が開始される(ステップS1001)と同
時に記録開始時間TS を記録する(ステップS100
2)。記録が終了する(ステップS1003)と同時に
記録終了時間TF を記録する(ステップS1004)。
記録時間(TF −TS )より推定される記録泡の量を、
同量の泡が放置により発生する時間に換算し(ステップ
S1005)、これを内部タイマーの時間に加算する
(ステップS1006)。これらの制御を逐次行い、図
26のフローチャートに示される制御を行う。
【0120】図26において、ステップS2007で吸
引命令が入ると吸引が行われ(ステップS2008)、
内部タイマーの時間によりインク落ちか否かを判断する
(ステップS2009)。この判断は、放置によりイン
ク落ちするまでにかかる時間を上限の仕切値T2 とし、
内部タイマーの時間tがT2 と同等もしくは大きい場合
には泡落ちとする。また、内部タイマーの時間tが下限
の仕切値T1 よりも小さい場合には、非常時の吸引と判
断し、泡落ちと見なす。この下限の仕切値T1は、通
常、記録時の吸引間隔の1割程度に設定すればよい。こ
の下限の条件は、新しい記録ヘッドに交換した場合にお
ける2連続の吸引などの非常時に有効である。
【0121】図26において、ステップS2009でイ
ンク落ちと判断された場合は、泡入れ(ステップS20
10)および予備吐出(ステップS2011)が順に行
われ、ステップS2012へ進む。また、ステップS2
009でインク落ちでないと判断された場合は、直接に
ステップS2012へ進む。このステップS2012で
は、内部タイマーをリセットする。これらの制御を行
い、一連の動作を終了する(ステップS2013)。
【0122】前述のごとく、共通液室内にインクが充填
されているか否かを推定することにより、ヒータ寿命や
蓄熱の問題並びに共通液室内気泡過多等の問題を解消す
ることが可能になる。また、液路84内の気泡を排出さ
せる処理は、公知または既提案の各種の手段または方法
から適宜選択したものにより実行される。本実施例で
は、インク落ちの時の吸引回復後に泡入れ制御を行った
が、加圧手段を用いる等の他のインク排出手段を用いる
場合、あるいはそれ以外の場合でも、共通液室の気泡が
排出されてしまった後に前記泡入れ制御を行うことによ
り、本実施例と同様の作用効果が得られる。また、本実
施例では、気泡形成手段としてバラツキの少ない吐出用
ヒータを用いたが、インクを加熱できる手段であれば、
その他の手段を使用してもよい。
【0123】次に、請求項11の発明を適用したインク
ジェット記録装置の第2実施例について説明する。本実
施例は、インク落ちを推定して泡入れ作業の回数を減ら
す他の制御方法を採用する実施例である。前述の実施例
(第1実施例)では、回復命令が入ってからインク落ち
か否かを推定したが、本実施例では、記録中のインク落
ちを防止するために記録前に前記推定が実行される。本
実施例においては、記録を行う前に内部タイマーの時間
がインク落ちになる放置時間を越えていた場合に、イン
ク落ちと判断し、吸引、泡入れ、予備吐出などの処理を
行う。
【0124】また、記録データより記録頻度を読み取
り、該データを記録したことにより生じる記録泡の量
を、同量の泡が放置により発生する時間に換算し、この
時間を前記タイマーの時間に加算する。この時間が放置
によりインク落ちに至るまでの時間を越えると推測され
た場合に、吸引回復を実行する。これらの制御を行った
後、記録を行う。図27は、本実施例においてインク落
ちを推定する動作のシーケンスを示すフローチャートで
ある。以下、図27を参照して本実施例を具体的に説明
する。
【0125】図27において、ステップS3000で1
行分の記録命令が入り、この記録頻度の情報から、記録
したことにより生じる記録泡の量を、同量の泡が放置に
より発生する時間に換算(ステップS3001)して内
部タイマーの時間に加算する(ステップS3002)。
これらの制御の後、ステップS4000へ進む。
【0126】ステップS4000から進んで、内部タイ
マーの時間によりインク落ちしているか否かを判断する
(ステップS4001)。この判断は、前記ステップS
2009の場合と実質上同じである。ステップS400
1でインク落ちと判断された場合、吸引を行い(ステッ
プS4002)、次いで泡入れを行い(ステップS40
03)、さらに、予備吐出によって液路(ノズル)内の
泡を除去し(ステップS4004)、内部タイマーをリ
セットし(ステップS4005)、一連の動作を終了す
る(ステップS4006)。また、ステップS4001
でインク落ちしていないと判断された場合は、直接的に
ステップS4006へ進んで動作を終了する。
【0127】図27で説明した制御を実行することによ
り、放置以外には泡入れを行う必要性を無くすことがで
き、泡入れ作業の頻度を大幅に減らすことができる。ま
た、同時に、記録中のインク落ちを防止することが可能
になる。
【0128】最後に、請求項11の発明を適用したイン
クジェット記録装置の第3実施例について説明する。本
実施例は、インク落ちを推定して泡入れ作業の回数を減
らす更に他の制御方法を採用する実施例である。共通液
室内の泡が増加すると、バッファの機能が強過ぎるため
にインクのリフィル(再充填)の量が少なくなる。この
ため、充分なリフィルをしている吐出よりも吐出量が少
なくなる。その結果、吐出により奪われる熱量が少なく
なり、本来の吐出よりもヘッドの温度は高くなる。本実
施例は、このような現象を利用し、共通液室内の泡の量
をヘッドに取り付けたセンサによりモニターされる温度
と記録情報より予測される温度との差より判断すること
によって、放置時間を示す内部タイマーの時間に補正を
加えるものである。
【0129】この補正は、予測される共通液室内の泡の
量を、同量の泡が放置により発生する時間に換算して該
タイマーの時間とするものである。タイマー時間に基づ
く制御は前述の第1実施例および第2実施例の場合と実
質上同じであり、それらの詳細説明は省略する。本実施
例におけるこれらの制御動作を、図28のフローチャー
トを参照して説明する。
【0130】図28において、ステップS5000で記
録命令が入ると、記録データを元に記録ヘッドの温度を
予測し(ステップS5001)、これと同時に温度のデ
ータを実測する(ステップS5002)。これらの情報
より、共通液室内の泡の量を推定し(ステップS500
3)、同量の泡が放置により発生する時間に換算して
(ステップS5004)、この時間を内部タイマーの時
間とする(ステップS5005)。これらの制御の後、
図27中のステップS4000へ進み、同図中のステッ
プS4001〜ステップS4006で説明した動作に準
じて同様の制御を実行する。本実施例によれば、記録ヘ
ッドにおける環境を実測しているので、一層信頼性の高
い推定を行うことができる。
【0131】以上説明した請求項11〜請求項13の発
明を適用した実施例によれば、共通液室内にインクが充
填されているか否かを推定するインク有り無し推定手段
によって、共通液室内に常に適正量の気泡を混入させる
ことができ、これによって、ヒータの寿命や蓄熱の問
題、あるいは共通液室内気泡過多の問題などを解消する
ことが可能なインクジェット記録装置が提供される。
【0132】なお、前述の各実施例では、記録手段(イ
ンクジェットカートリッジ)を主走査方向に移動させる
シリアル記録方式の場合を例に挙げて説明したが、本発
明は、被記録材の全幅または一部をカバーする長さのラ
イン記録手段を用いて副走査のみで記録するライン記録
方式の場合にも、同様に適用することができ、同様の効
果を達成し得るものである。また、本発明は、異なる色
で記録する複数の記録手段を用いるカラー記録の場合の
他、同一色彩で異なる濃度で記録する複数の記録手段を
用いる階調記録、あるいは1個の記録手段で記録する単
色記録、さらにはこれらを組み合わせた記録の場合に
も、同様に適用することができ、同様の効果を達成し得
るものである。
【0133】なお、本発明は、インクジェット記録装置
であれば、例えば、ピエゾ素子等の電気機械変換体等を
用いる記録手段(記録ヘッド)を使用するものに適用で
きるが、中でも、熱エネルギーを利用してインクを吐出
する方式の記録手段を使用するインクジェット記録装置
において優れた効果をもたらすものである。かかる方式
によれば、記録の高密度化、高精細化が達成できるから
である。
【0134】その代表的な構成や原理については、例え
ば、米国特許第4723129号明細書、同第4740
796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて
行なうのが好ましい。この方式は、所謂オンデマンド
型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能である
が、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)
が保持されているシートや液路に対応して配置されてい
る電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越
える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号
を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギー
を発生せしめ、記録手段(記録ヘッド)の熱作用面に膜
沸騰させて、結果的にこの駆動信号に一対一に対応し液
体(インク)内の気泡を形成出来るので有効である。
【0135】この気泡の成長、収縮により吐出用開口を
介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも一つの
滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即
時適切に気泡の成長収縮が行なわれるので、特に応答性
に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好まし
い。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4
463359号明細書、同第4345262号明細書に
記載されているようなものが適している。尚、上記熱作
用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第43131
24号明細書に記載されている条件を採用すると、更に
優れた記録を行なうことができる。
【0136】記録ヘッドの構成としては、上述の各明細
書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体
の組み合わせ構成(直線状液流路又は直角液流路)の他
に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示
する米国特許第4558333号明細書、米国特許第4
459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれる
ものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共
通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開
示する特開昭59年第123670号公報や熱エネルギ
ーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を
開示する特開昭59年第138461号公報に基づいた
構成としても本発明は有効である。すなわち、記録ヘッ
ドの形態がどのようなものであっても、本発明によれ
ば、記録を確実に効率よく行なうことができるようにな
るからである。
【0137】さらに、前述のように、記録装置が記録で
きる被記録材(記録媒体)の最大幅に対応した長さを有
するフルラインタイプの記録ヘッドに対しても、本発明
は有効に適用できる。そのような記録ヘッドとしては、
複数記録ヘッドの組み合わせによってその長さを満たす
構成や、一体的に形成された1個の記録ヘッドとしての
構成のいずれでもよい。加えて、上例のようなシリアル
タイプのものでも、装置本体に固定された記録ヘッド、
あるいは装置本体に装着されることで装置本体との電気
的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交
換自在のチップタイプの記録ヘッド、あるいは記録ヘッ
ド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッ
ジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効で
ある。
【0138】また、本発明に記録装置の構成として設け
られる記録ヘッドに対しての回復手段や予備的な補助手
段等を付加することは、本発明の効果を一層安定できる
ので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、
記録ヘッドに対しての、キャッピング手段、クリーニン
グ手段、加圧或は吸引手段、電気熱変換体或はこれとは
別の加熱素子或はこれらの組み合わせによる予備加熱手
段、記録とは別の吐出を行なう予備吐出モードを行なう
ことも安定した記録を行なうために有効である。
【0139】また、前述のように、搭載される記録ヘッ
ドの種類ないし個数についても、例えば、単色のインク
に対応して1個のみが設けられたものの他、記録色や濃
度を異にする複数のインクに対応して複数個数設けられ
るものであってもよい。すなわち、例えば、記録装置の
記録モードとしては、黒色等の主流色のみの記録モード
だけではなく、記録ヘッドを一体的に構成するか複数個
の組み合わせによるか、いずれでもよいが、異なる色の
複色カラー又は、混色によるフルカラーの少なくとも一
つを備えた装置にも本発明は極めて有効である。
【0140】さらに加えて、以上説明した本発明実施例
においては、インクを液体として説明しているが、室温
やそれ以下で固化するインクであって、室温で軟化もし
くは液化するもの、あるいは、インクジェット方式で
は、インク自体を30℃以上70℃以下の範囲内で温度
調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように
温度制御するものが一般的であるから、使用記録信号付
与時にインクが液状をなすものであればよい。加えて、
積極的に熱エネルギーによる昇温をインクの固形状態か
ら液体状態への状態変化のエネルギーとして使用せしめ
ることで防止するか、または、インクの蒸発防止を目的
として放置状態で固化するインクを用いるかして、いず
れにしても、熱エネルギーの記録信号に応じた付与によ
ってインクが液化し、液状インクが吐出されるものや、
記録媒体に到達する時点ではすでに固化し始めるもの等
のような、熱エネルギーによって初めて液化する性質の
インクを使用する場合も本発明は適用可能である。
【0141】このような場合のインクは、特開昭54−
56847号公報あるいは特開昭60−71260号公
報に記載されるような、多孔質シート凹部または貫通孔
に液状または固形物として保持された状態で、電気熱変
換体に対して対向するような形態としてもよい。本発明
においては、上述した各インクに対して最も有効なもの
は、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0142】さらに加えて、本発明によるインクジェッ
ト記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理
機器の画像出力端末として用いられるものの他、リーダ
等と組み合わせた複写装置、さらには送受信機能を有す
るファクシミリ装置の形態を採るもの等であってもよ
い。
【表1】
【表2】
【表3】
【0143】
【発明の効果】以上の説明から明らかなごとく、請求項
1の発明によれば、記録手段から被記録材へインクを吐
出して記録を行うインクジェット記録装置において、吐
出用インクを一時的に貯える共通液室を記録手段ごとに
設け、各記録手段を覆うキャップと吸引回復用のシリン
ダポンプとの間に吸引回復動作のタイミングを制御する
ためのバルブ機構を設け、複数の記録手段を単一のシリ
ンダポンプで吸引回復動作可能にする構成としたので、
色の異なる複数の記録手段でも1つのポンプで順次吸引
回復することができ、ポンプのピストンが戻る時のイン
クの逆流を防止して高画質の記録を可能にし、吸引回復
時の初期圧力を記録手段ごとに適正値に制御することが
でき、各記録手段に適した吸引回復動作を実現するとと
もに無駄なインク吸引を防いでインクを効率よく使用す
ることができるインクジェット記録装置が提供される。
【0144】請求項2〜請求項6の発明によれば、上記
構成に加えて、インクの強制排出手段を有し、前記バル
ブ機構を制御して吸引回復動作時のインク逆流を防ぐ構
成、インクの強制排出手段を有し、前記バルブ機構を制
御して吸引回復動作時の初期圧力を記録手段の状態に合
わせて可変にし、吸引回復時の過度の流速上昇を抑える
構成、インクの強制排出手段を有し、各記録手段に応じ
て初期圧力を設定する構成、前記記録手段がインクを吐
出するために利用される熱エネルギーを発生する電気熱
変換体を備えているインクジェット記録手段である構
成、あるいは前記記録手段が前記電気熱変換体が発生す
る熱エネルギーによりインクに生じる膜沸騰を利用して
吐出口よりインクを吐出させる構成としたので、一層効
率よく、上記効果を達成することが可能なインクジェッ
ト記録装置が提供される。
【0145】請求項7の発明によれば、記録手段から被
記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記
録装置において、吐出用インクを一時的に貯える共通液
室を記録手段に設け、該共通液室に気泡を入れる泡入れ
手段を設ける構成としたので、特別な液室バッファを設
けることなく、かつ1ドット目吐出後のリフィルの遅延
を抑えることができるインクジェット記録装置が提供さ
れる。
【0146】請求項8〜請求項10の発明によれば、上
記構成に加えて、記録手段の温度を測定する温度測定手
段を設け、該温度測定手段によりヒータ加熱の熱特性を
検出し、その検出結果に応じて前記泡入れ手段を制御す
る構成、前記記録手段がインクを吐出するために利用さ
れる熱エネルギーを発生する電気熱変換体を備えている
インクジェット記録手段である構成、あるいは前記記録
手段が前記電気熱変換体が発生する熱エネルギーにより
インクに生じる膜沸騰を利用して吐出口よりインクを吐
出させる構成としたので、一層効率よく、上記効果を達
成することが可能なインクジェット記録装置が提供され
る。
【0147】請求項11の発明によれば、記録手段から
被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット
記録装置において、記録手段内に吐出用インクを一時的
に貯えるインク貯留部を設け、該インク貯留部に気泡を
混入させる泡生成手段を設け、前記インク貯留部に気泡
を混入させる必要があるか否かを記録装置の記録条件お
よび放置時間より判別し、この判別結果に応じて前記泡
生成手段を制御する構成としたので、インク貯留部内に
常に適正量の気泡を混入させることができ、吐出用ヒー
タの寿命低下、蓄熱による吐出量変動、共通液室内の気
泡過多などの問題を解決することが可能なインクジェッ
ト記録装置が提供される。
【0148】請求項12および請求項13の発明によれ
ば、上記構成に加えて、前記記録手段がインクを吐出す
るために利用される熱エネルギーを発生する電気熱変換
体を備えているインクジェット記録手段である構成、あ
るいは前記記録手段が前記電気熱変換体が発生する熱エ
ネルギーによりインクに生じる膜沸騰を利用して吐出口
よりインクを吐出させる構成としたので、一層効率よ
く、上記効果を達成することが可能なインクジェット記
録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェット記録ヘッドの模式的分解斜視図
である。
【図2】2ドット目のドット形成の状態を通常のドット
の場合と比較して示す説明図である。
【図3】請求項1の発明を適用したインクジェット記録
装置の一実施例の模式的斜視図である。
【図4】図3中のインクジェットカートリッジ(記録手
段)の斜視図である。
【図5】図4のインクジェットカートリッジのインク吐
出部の構造を模式的に示す部分斜視図である。
【図6】図4の記録ヘッドの内部構造を示す模式的縦断
面図である。
【図7】請求項1の発明を適用した記録装置に使用され
るシリンダポンプの待機状態を示す模式的縦断面図であ
る。
【図8】図7のポンプでピストンが往移動した状態を示
す模式的縦断面図である。
【図9】図7のポンプでピストンが戻り移動を開始した
状態を示す模式的縦断面図である。
【図10】図9の状態からピストンがさらに戻ってイン
クを排出した後の状態を示す模式的縦断面図である。
【図11】請求項1の発明を適用したインクジェット記
録装置の吸引回復機構の第1実施例のピストン前進移動
時の状態を示す模式図である。
【図12】図11の吸引回復機構のピストン戻り移動時
の状態を示す模式図である。
【図13】インクタンクと共通液室との間にフィルタを
有するカートリッジの模式的断面図である。
【図14】図13中のフィルタにおける泡溜めの状態を
示す模式図である。
【図15】請求項1の発明を適用したインクジェット記
録装置の吸引回復機構の第2実施例のピストン前進移動
時の状態を示す模式図である。
【図16】請求項7および請求項11の発明を適用した
インクジェット記録装置の一実施例の模式的斜視図であ
る。
【図17】図16中のインクジェットカートリッジの斜
視図である。
【図18】図17のインクジェットカートリッジの分解
斜視図である。
【図19】図18中のインクタンクの斜視図である。
【図20】図16中のキャリッジにインクジェットカー
トリッジを搭載した状態を示す断面図である。
【図21】図17のインクジェットカートリッジのヘッ
ド部の分解斜視図である。
【図22】図21中の天板を裏面から見た斜視図であ
る。
【図23】請求項7の発明を実施する際のプレ加熱特性
検出シーケンスのフローチャートである。
【図24】記録ヘッドの液路内の気泡の状態を示す模式
図である。
【図25】請求項11の発明の第1実施例の放置時間推
定動作を示すフローチャートである。
【図26】請求項11の発明の第1実施例の泡入れ動作
を示すフローチャートである。
【図27】請求項11の発明の第2実施例の放置時間推
定および泡入れの動作を示すフローチャートである。
【図28】請求項11の発明の第3実施例の放置時間推
定動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
9 記録手段(記録ヘッド) 10 キャリッジ 15 被記録材 25 回復系ユニット 26 キャップ 28 チューブ 29 ポンプユニット 30 クリーニングブレード 32 支持体 33 ヒータボード 34 温調用ヒータ 35 配線基板 36 バブル 40 ピストン 42 シリンダ 43 ポンプ室 53 シリンダポンプ 54 バルブ機構 55 泡溜めフィルタ 56 泡 81 吐出口面 82 吐出口 83 共通液室 85 電気熱変換体(吐出用ヒータ) 91 吐出用ヒータ IJC インクジェットカートリッジ IJU インクジェットユニット IJH インクジェットヘッド IT インクタンク HC キャリッジ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B41J 2/165 B41J 3/04 102 N (72)発明者 平林 弘光 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 名越 重泰 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 矢野 健太郎 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 大塚 尚次 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 岩崎 督 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 記録手段から被記録材へインクを吐出
    して記録を行うインクジェット記録装置において、吐出
    用インクを一時的に貯える共通液室を記録手段ごとに設
    け、各記録手段を覆うキャップと吸引回復用のシリンダ
    ポンプとの間に吸引回復動作のタイミングを制御するた
    めのバルブ機構を設け、複数の記録手段を単一のシリン
    ダポンプで吸引回復動作可能にしたことを特徴とするイ
    ンクジェット記録装置。
  2. 【請求項2】 インクの強制排出手段を有し、前記バ
    ルブ機構を制御して吸引回復動作時のインク逆流を防ぐ
    ことを特徴とする請求項1のインクジェット記録装置。
  3. 【請求項3】 インクの強制排出手段を有し、前記バ
    ルブ機構を制御して吸引回復動作時の初期圧力を記録手
    段の状態に合わせて可変にし、吸引回復時の過度の流速
    上昇を抑えることを特徴とする請求項1のインクジェッ
    ト記録装置。
  4. 【請求項4】 インクの強制排出手段を有し、各記録
    手段に応じて初期圧力を設定することを特徴とする請求
    項1のインクジェット記録装置。
  5. 【請求項5】 前記記録手段が、インクを吐出するた
    めに利用される熱エネルギーを発生する電気熱変換体を
    備えているインクジェット記録手段であることを特徴と
    する請求項1のインクジェット記録装置。
  6. 【請求項6】 前記記録手段が、前記電気熱変換体が
    発生する熱エネルギーによりインクに生じる膜沸騰を利
    用して、吐出口よりインクを吐出させることを特徴とす
    る請求項5のインクジェット記録装置。
  7. 【請求項7】 記録手段から被記録材へインクを吐出
    して記録を行うインクジェット記録装置において、吐出
    用インクを一時的に貯える共通液室を記録手段に設け、
    該共通液室に気泡を入れる泡入れ手段を設けることを特
    徴とするインクジェット記録装置。
  8. 【請求項8】 記録手段の温度を測定する温度測定手
    段を設け、該温度測定手段によりヒータ加熱の熱特性を
    検出し、その検出結果に応じて前記泡入れ手段を制御す
    ることを特徴とする請求項7のインクジェット記録装
    置。
  9. 【請求項9】 前記記録手段が、インクを吐出するた
    めに利用される熱エネルギーを発生する電気熱変換体を
    備えているインクジェット記録手段であることを特徴と
    する請求項7のインクジェット記録装置。
  10. 【請求項10】 前記記録手段が、前記電気熱変換体
    が発生する熱エネルギーによりインクに生じる膜沸騰を
    利用して、吐出口よりインクを吐出させることを特徴と
    する請求項9のインクジェット記録装置。
  11. 【請求項11】 記録手段から被記録材へインクを吐
    出して記録を行うインクジェット記録装置において、記
    録手段内に吐出用インクを一時的に貯えるインク貯留部
    を設け、該インク貯留部に気泡を混入させる泡生成手段
    を設け、前記インク貯留部に気泡を混入させる必要があ
    るか否かを記録装置の記録条件および放置時間より判別
    し、この判別結果に応じて前記泡生成手段を制御するこ
    とを特徴とするインクジェット記録装置。
  12. 【請求項12】 前記記録手段が、インクを吐出する
    ために利用される熱エネルギーを発生する電気熱変換体
    を備えているインクジェット記録手段であることを特徴
    とする請求項11のインクジェット記録装置。
  13. 【請求項13】 前記記録手段が、前記電気熱変換体
    が発生する熱エネルギーによりインクに生じる膜沸騰を
    利用して、吐出口よりインクを吐出させることを特徴と
    する請求項12のインクジェット記録装置。
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