JPH07657A - ミシンの同期制御方式 - Google Patents

ミシンの同期制御方式

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Publication number
JPH07657A
JPH07657A JP17203993A JP17203993A JPH07657A JP H07657 A JPH07657 A JP H07657A JP 17203993 A JP17203993 A JP 17203993A JP 17203993 A JP17203993 A JP 17203993A JP H07657 A JPH07657 A JP H07657A
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JP
Japan
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sewing machine
needle bar
tension
drive
embroidery
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Pending
Application number
JP17203993A
Other languages
English (en)
Inventor
Ikuo Tajima
郁夫 田島
Wataru Ichikawa
渉 市川
Naomasa Oshie
直正 押柄
Mitsuhiro Fujiura
充弘 藤浦
Koji Uenishi
浩嗣 上西
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tokai Kogyo Sewing Machine Co Ltd
SG KK
Original Assignee
Tokai Kogyo Sewing Machine Co Ltd
SG KK
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Publication date
Application filed by Tokai Kogyo Sewing Machine Co Ltd, SG KK filed Critical Tokai Kogyo Sewing Machine Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 縫い速度に対応して変化する各駆動機構間の
位置偏差を除去し、各駆動機構間における位置関係を一
定に保持すること。 【構成】 駆動手段の第1は機械的に結合された釜機
構、針棒機構及び天秤機構を同時に回転駆動する主軸モ
ータ、第2は針棒機構の動作位置に同期させて刺繍枠機
構をX軸及びY軸方向に駆動するサーボモータである。
位置検出手段の第1は、主軸モータによって駆動される
釜機構、針棒機構及び天秤機構の動作位置を第2は、X
軸及びY軸のサーボモータの回転位置を検出する。駆動
制御手段は第2の駆動手段を制御する。指令位置生成手
段は縫合速度に応じた補正偏差量を発生し且つ、第1の
位置検出手段により検出した針棒機構の動作位置に対応
した位置を刺繍枠機構の指令動作位置として発生し、こ
の指令動作位置を補正偏差量からの補正値を駆動制御手
段に供給する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、布等の被対象物に対し
て予め記憶されたデータに応じて縫い動作を行うミシン
に係り、特に縫い動作時に互いに独立した駆動源によっ
て駆動制御される複数の駆動機構を同期駆動させるミシ
ンの同期制御方式に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の刺繍ミシンは、1個の主軸モータ
の動力をカム機構又はベルト機構等の動力伝達手段を介
して針棒、天秤、釜等の駆動機構にそれぞれ伝達し、こ
れらを同時に駆動すると共に、布等の被対象物の保持さ
れた刺繍枠を予め記憶された縫いデータに従って2次元
方向に移動することによって、所望の図形や模様等を被
対象物に刺繍するものである。
【0003】図22は従来の刺繍ミシンの概略構成を示
す図である。本図は被対象物に刺繍を施すために必要な
刺繍ミシンの単純構成を示すものであり、例えば、刺繍
ミシンが多頭式ミシンの場合には、その中の1つの頭に
おける1つの針棒が示してある。図において、ミシン制
御手段1は、刺繍ミシン全体の動作を制御するものであ
り、糸の種類や布の種類等の各種情報を設定するための
パネルスイッチ等(図示せず)を有する。ミシン制御手
段1は、枠駆動手段8や主軸モータ4の動作を制御す
る。
【0004】上糸調子手段21は上糸22に適当なテン
ションを与えるものであり、例えば、一対の調子皿間に
上糸22を挟み、その調子皿の一方に押圧力を与えてい
るバネの伸縮力を制御することによって上糸22に加え
られるテンションを適宜変化させように構成されてい
る。
【0005】主軸モータ4はミシン制御手段1から駆動
電流の供給を受けて一定の速度で回転駆動する。また、
主軸モータ4にはその回転位置を検出するためのロータ
リーエンコーダー42が結合されている。主軸モータ4
の回転動力はカム機構又はベルト機構等の動力伝達手段
を介して天秤51、針棒6及び釜91のそれぞれの駆動
機構に伝達される。従って、天秤51、針棒6及び釜9
1は主軸モータ41の回転駆動力に同期して一連の動作
を繰り返し実行する。
【0006】天秤51は糸案内52、53の間から上糸
22を引き上げては、元に戻すという往復運動を繰り返
す。針棒6は、針61を保持して上下運動を行い、この
上下運動に連動させて布押さえ71も同時に移動させ
る。また、図示してないが、針棒6にはジャンプ機構等
が設けられている。
【0007】釜91は外釜及び内釜からなる。外釜は主
軸モータ4の回転に同期して回転し、内釜は外釜の回転
から独立するように釜支えによって保持されている。内
釜の内部にはボビンケースが保持され、さらにボビンケ
ースの内部に下糸92の巻かれているボビンが保持され
ている。
【0008】枠駆動手段8はミシン制御手段1からの指
令位置信号に応じて刺繍枠81をX及びY軸方向に移動
させる。すなわち、枠駆動手段8は刺繍枠82をX軸及
びY軸をそれぞれ移動させる2つのモータ等で構成され
ている。枠駆動手段8は針棒6の上下運動に同期して、
すなわち針61が布から抜けている期間内に刺繍枠81
を移動させるようにX軸及びY軸のモータの回転位置を
制御する。
【0009】次に、図22の刺繍ミシンの動作を図23
のモーションダイヤグラムを用いて説明する。図23は
釜91と天秤51と針棒6との位置関係及びその時にお
ける枠駆動手段8の動作タイミングを示すモーションダ
イヤグラム図である。図において、横軸は針棒6の上下
運動の1周期を360°とした場合における回転角度を
示し、縦軸は針棒6の最下死点を基準とした釜91の釜
剣先、天秤51の上糸通過穴及び針棒6の針穴の位置を
それぞれ示す。
【0010】針棒6は、上死点を0°、下死点を180
°とする約40mmのストロークで上下運動する。図2
3には、針棒6の上下運動に伴う針穴の位置が示してあ
る。従って、針16の針穴は図のようなサイン波形6M
で上下運動を行う。釜91は、針棒6の下死点近傍と釜
剣先の上死点近傍とが略一致した時点で釜剣先が上糸2
2を引き込むように針棒6の2倍の周期で回転する。図
23には、回転運動する釜剣先の位置が示してある。釜
剣先は下死点に達することによって上糸22を針穴の最
下死点から約30mm程度引き込む。釜剣先は図のよう
なサイン波形91Mのような運動を行う。
【0011】天秤51は、釜91の釜剣先が上糸22を
引き込んで下死点に達した時点で、上糸22を引き上げ
て下糸92に絡ませ、針棒6の下降運動及び釜剣先の引
き込み運動に同期して上糸22を徐々にゆるめるという
波形51Mのような運動を行う。天秤15の運動の周期
と、針棒6の上下運動の周期とは同じである。
【0012】枠駆動可能信号は、針61が布から抜け出
た時点(サイン波形6Mが約10mmに達した時点約2
40°)でハイレベル“1”になり、針61が布に刺さ
る時点(サイン波形6Mが約15mmに達した時点約1
00°)でローレベル“0”になる。従って、ミシン制
御手段1は、針棒6の上下運動の1周期のうち、約24
0°から約100°の範囲だけ枠駆動可能信号を枠駆動
手段8に出力し、刺繍枠82を移動させる。
【0013】枠駆動手段8は、刺繍枠82のX軸及びY
軸を例えば図23のような移動速度FX及びFYで移動
させる。移動速度FX及びFYは図23のように一定の
加速度で増加減少する三角波形で構成され、その移動開
始時点は常に同じ240°付近である。従って、移動速
度FX及びFYの出力開始時点はX軸とY軸とでは共に
同じだが、終了時点は移動距離に応じて異なっている。
例えば、図23において、X軸の移動は約0°付近で終
了しているが、Y軸の移動は約60°付近で終了してい
る。
【0014】このように移動開始時点と終了時点が異な
るのは、刺繍枠82のX軸及びY軸の移動距離(ステッ
チ幅)が所定値よりも小さく、各軸の移動距離が異なる
からである。従って、これとは逆に、刺繍枠82のX軸
及びY軸の移動距離が共に所定値よりも大きい場合に
は、各軸の移動距離が異なっても移動開始時点と終了時
点とが略同じとなるように刺繍枠82を移動させてい
る。すなわち、枠駆動手段8は、約240°付近で刺繍
枠82が移動を開始し、約100°付近で刺繍枠82が
移動を終了するように各軸のモータの回転位置を制御し
ている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の刺繍
ミシンにおいては、刺繍枠82を駆動する枠駆動手段8
はステップモータやサーボモータ等の電気駆動力源で構
成されているので、それ自身が定常偏差を有するととも
に、刺繍枠82自体の機械的負荷、布の重さや刺繍縫合
された刺繍糸の重さ等に応じた偏差を有する。これよっ
て、従来の刺繍ミシンは次のような問題を有していた。
【0016】図24、図25及び図26は、刺繍枠82
の移動距離(ステッチ幅)が所定値よりも大きい場合に
実際に刺繍枠82を移動させる際の針棒6の位置と、枠
駆動手段8がX軸を駆動させるための生成する指令位置
データ及び指令速度データと、これらのデータに応じて
実際に駆動したX軸の現在位置データ及び現在速度デー
タとの関係を示す図であり、横軸に時間を示す。このと
き、図24から図26に向かうに従って針棒6の上下運
動の1周期の時間は短くなっている。
【0017】枠駆動手段8の各軸はサーボモータで構成
されており、針棒6の上下運動の1周期の時間が特定さ
れると、それに応じて図のような一定の加速度で増加減
少する三角波形の指令速度データFXが与えられる。す
ると、この指令速度データFXでサーボモータを駆動す
るための指令位置データP0Xが作成され、X軸のサー
ボモータに与えられる。
【0018】X軸のサーボモータは、この指令位置デー
タP0X及び指令速度データFXに応じて刺繍枠82を
移動させるが、実際には刺繍枠82は現在位置データP
0XA,P0XB,P0XCのように指令位置データP
0Xに対して所定の位置偏差ΔPA,ΔPB,ΔPCだ
け遅れ、同様に刺繍枠82は現在速度データFXA,F
XB,FXCのように指令速度データFXに対して所定
の速度偏差ΔFA,ΔFB,ΔFCだけ遅れて動作す
る。
【0019】図24から図26に向かうに従って針棒6
の上下運動の一周期の時間は短く(主軸の回転速度は大
きく)なっている。主軸の回転速度が大きくなると、X
軸の移動開始時点から終了時点までの時間が小さくなる
ので、指令速度データFXは主軸の回転速度に応じて大
きくしなければならない。すると、図24、図25及び
図26から明らかなように、指令位置データP0Xと現
在位置データP0XA,P0XB,P0XCとの間の位
置偏差は、ΔPA,ΔPB,ΔPCの順番で徐々に大き
くなり、また、指令速度データFXと現在速度データF
XA,FXB,FXCとの間の速度偏差もΔFA,ΔF
B,ΔFCの順番で徐々に大きくなっている。
【0020】このように指令値と現在値との間の偏差が
大きくなればなるほど、針棒6のストローク位置に対し
て刺繍枠82の移動位置が異なるため、最悪の場合に
は、図26のように針61が布に刺さる直前の約15m
mに達して針61が布に刺さった状態のまま刺繍枠82
が移動してしまうことになる。従って、従来の刺繍ミシ
ンは、ステッチ幅が所定値より大きくなる場合には、主
軸モータの回転数を小さくし、刺繍速度を遅くせざるを
えなかった。
【0021】一方、従来は、特開平4−51991号公
報や特公平3−37960号公報等に記載されているよ
うに、針棒、天秤及び釜の駆動源をそれぞれ別々に設
け、これらを同期させて駆動させようという考えが多数
存在した。ところが、実際に製品化されている刺繍ミシ
ンは、図22のように1個の主軸モータの動力をカム機
構又はベルト機構等の動力伝達手段を介して針棒、天
秤、釜等の駆動機構にそれぞれ伝達するだけであり、針
棒、天秤及び釜のそれぞれを独立の駆動源で駆動したも
のは存在しない。
【0022】これは、刺繍ミシンを構成する釜、天秤及
び針棒のそれぞれの位置関係を図23のモーションダイ
ヤグラムのように高精度に保持する必要があるからであ
る。すなわち、図23のモーションダイヤグラムにおい
て、釜91は針棒の2倍の周期で正確に回転すればよい
というものではなく、釜剣先が上糸22を引き込むため
に、針棒6の下死点と釜剣先の上死点との位置関係が常
に一定に保持されるように回転しなければならない。ま
た、天秤51は、釜91の釜剣先が上糸22を引き込ん
で下死点に達した時点で、上糸22を引き上げて下糸9
2に絡ませなければならないし、針棒6の下降及び釜剣
先の引き込みに応じて上糸22をゆるめなければならな
い。
【0023】ところが、針棒、天秤及び釜の駆動源をそ
れぞれ別々に設け、これらを同期させて駆動しても、前
述の刺繍枠82の移動位置と針棒6のストローク位置と
の関係のようにそれぞれの駆動源が有する定常偏差等の
影響によって刺繍速度が変化するとそれに応じてお互い
の位置関係が変化し、一様に定まらないという問題を有
していたため、針棒、天秤及び釜の駆動源をそれぞれ別
々に設け、これらを同期させて駆動しようという考えが
存在しても、その考えを実際の刺繍ミシンに取り入れ、
製品化することはできなかったのである。
【0024】本発明は上述の点に鑑みてなされたもので
あり、それぞれ独立した駆動源によって駆動される複数
の駆動機構を具えた刺繍ミシンにおいて、刺繍速度に対
応して変化する各駆動機構間の位置偏差を除去し、各駆
動機構間における位置関係を一定に保持することのでき
る刺繍ミシンの同期制御方式を提供することを目的とす
る。
【0025】
【課題を解決するための手段】第1の発明に係る刺繍ミ
シンの同期制御方式は、複数の駆動機構からなる刺繍ミ
シンの各駆動機構の動作を同期させて刺繍縫合する刺繍
ミシンの同期制御方式において、これら複数の駆動機構
の中の少なくとも1つを駆動させる第1の駆動手段と、
この第1の駆動手段によって駆動される駆動機構以外の
駆動機構の少なくとも1つを、前記第1の駆動手段によ
って駆動される前記駆動機構の中の少なくとも1つの駆
動機構の動作に同期させて駆動する第2の駆動手段と、
前記第1の駆動手段によって駆動される前記駆動機構の
動作位置を検出する第1の位置検出手段と、前記第2の
駆動手段によって駆動される前記駆動機構の動作位置を
検出する第2の位置検出手段と、指令位置と前記第2の
位置検出手段からの前記動作位置とに基づいて前記第2
の駆動手段を制御する駆動制御手段と、前記第1の駆動
手段によって駆動される前記駆動機構の動作速度に応じ
た補正偏差量を発生するとともに、前記第1の位置検出
手段によって検出された前記動作位置に対応した所定の
位置を前記第2の駆動手段によって駆動される前記駆動
機構の指令動作位置として発生し、この指令動作位置を
前記補正偏差量によって補正したものを前記指令位置と
して前記駆動制御手段に供給する指令位置生成手段とか
ら構成されるものである。
【0026】
【作用】刺繍ミシンは一般に釜機構、針棒機構、天秤機
構、刺繍枠機構等の複数の駆動機構が組み合わされて構
成されている。第1の駆動手段はこれら複数の駆動機構
の中の少なくとも1つを駆動し、第2の駆動手段は第1
の駆動手段によって駆動される駆動機構以外の駆動機構
の少なくとも1つを、第1の駆動手段によって駆動され
る駆動機構の中の少なくとも1つの駆動機構の動作に同
期させて駆動する。
【0027】例えば、第1の駆動手段が機械的に結合さ
れた釜機構、針棒機構及び天秤機構を同時に回転駆動す
る主軸モータであり、第2の駆動手段が針棒機構の動作
位置(針棒のストローク位置)に同期させて刺繍枠機構
をX軸及びY軸方向に駆動するサーボモータで構成され
ている場合について説明する。
【0028】第1の位置検出手段は、主軸モータの回転
駆動力によって駆動される釜機構、針棒機構及び天秤機
構の動作位置を検出する。すなわち、釜機構、針棒機構
及び天秤機構は機械的に結合され、各機構間の動作位置
は機械的に特定されているので、第1の位置検出手段は
これらの駆動機構の中の1つの動作位置を検出するだけ
で、他の駆動機構の動作位置をも同時に検出することが
できる。具体的には釜機構が2回転する間に針棒機構及
び天秤機構は1周期分の動作を行う。従って、第1の位
置検出手段は、主軸モータの回転位置を検出し、これに
基づいて釜機構、針棒機構及び天秤機構の動作位置を検
出する。
【0029】第2の位置検出手段は、第2の駆動手段を
構成するX軸及びY軸のサーボモータの回転位置をそれ
ぞれ検出する。第2の駆動手段は針が被対象物である刺
繍布と接触していない期間、すなわち針が布から抜け出
ている期間中に刺繍枠機構を駆動しなければならない。
【0030】一方、駆動制御手段は指令位置と第2の位
置検出手段からの動作位置とに基づいて第2の駆動手段
を制御している。すなわち、駆動制御手段は、ステッチ
幅及びステッチ方向に対応した指令位置を入力し、刺繍
枠機構をこの指令位置通りに動作させるようにフィード
バック制御ループで刺繍枠の位置決めを行っている。
【0031】このように駆動制御手段がフィードバック
制御ループで構成されていると、制御対象である刺繍枠
機構自体の機械的負荷や、刺繍枠機構に取り付けられた
刺繍布の重量等によって指令位置に対して刺繍枠が遅れ
て移動するために、指令位置と動作位置との間には定常
偏差が発生する。そのために、刺繍縫合の速度(すなわ
ち主軸モータの回転速度)が早くなればなるほど、刺繍
枠機構の駆動に遅れが生じ、所定の期間(針が布から抜
け出ている)内に刺繍枠機構を駆動することができなく
なり、針が布に刺さった状態のまま刺繍枠機構を駆動し
てしまうことになる。
【0032】そこで、本発明では、指令位置生成手段が
刺繍縫合速度(主軸モータの回転速度)に応じた補正偏
差量を発生するとともに、前記第1の位置検出手段によ
って検出された針棒機構の動作位置に対応した所定の位
置を刺繍枠機構の指令動作位置として発生し、この指令
動作位置を補正偏差量によって補正したものを前記指令
位置として駆動制御手段に供給している。
【0033】すなわち、従来の指令位置生成手段は、第
1の位置検出手段によって検出された針棒の動作位置を
入力することによって、針が布から抜け出た時点を検出
し、その時点にから刺繍枠機構の指令動作位置(X軸及
びY軸の位置データ)を発生し、それを指令位置として
駆動制御手段に出力しているだけであったが、本発明の
指令位置生成手段は、刺繍縫合時に主軸モータの回転速
度に応じた補正偏差量を発生し、刺繍枠機構の指令動作
位置をその補正偏差量によって補正したものを新たな指
令位置として駆動制御手段に出力している。これによっ
て、駆動制御手段は、主軸モータの回転速度に応じて変
化した定常偏差に相当する遅れ分を逐次修正し、第2の
駆動手段を所望の指令動作位置に位置決め制御すること
ができるようになる。
【0034】次に、第1の駆動手段が釜機構を回転駆動
する釜用モータであり、第2の駆動手段が針棒機構を上
下運動させる針棒用モータである場合について説明す
る。第1の位置検出手段は、釜用モータの回転駆動力に
よって駆動される釜機構の動作位置を検出する。第1の
位置検出手段は、針棒用モータの回転駆動力によって駆
動される針棒機構のストローク位置を検出する。ここ
で、釜機構と針棒機構とは別々の駆動手段によって駆動
されているので、それぞれの動作位置の関係が機械的に
結合されていた場合と変わらないような同期制御が必要
となる。そのためには、第2の駆動手段は釜機構が2回
転する間に針棒機構が1周期分の動作を行うように針棒
用モータを回転駆動すればよい。
【0035】ところが、実際の刺繍縫合においては、釜
機構が2回転する間に針棒機構が1周期分の動作を行う
ように針棒用モータを回転駆動すればよいというもので
はなく、図23に示したように釜剣先の上死点と針棒の
下死点との相対的位置関係が常に一定に保持されるよう
に釜機構と針棒機構との相対的な位置関係を高精度に制
御する必要がある。すなわち、釜用モータの回転速度が
2倍になったからといって、単純に針棒用モータの回転
速度を2倍にすればよいというものではなく、釜剣先の
上死点と針棒の下死点との相対的位置関係が一定になる
ように両機構の位置決めが制御されなければならない。
【0036】そこで、本発明では、指令位置生成手段が
釜用モータの回転速度すなわち刺繍速度に応じた補正偏
差量を発生するとともに、釜剣先の上死点と針棒の下死
点との相対的位置関係が常に一定となるように第1の位
置検出手段によって検出された釜機構の釜剣先の回転位
置に対応した針棒機構の指令動作位置を発生し、この指
令動作位置をその補正偏差量によって補正したものを新
たな指令位置として駆動制御手段に供給している。これ
によって、駆動制御手段は、釜用モータの回転速度に応
じて変化した定常偏差に相当する遅れ分を逐次修正し、
針棒用モータを所望の指令動作位置に位置決めしながら
回転制御することができるようになる。
【0037】なお、指令位置生成手段は、指令動作位置
と第2の位置検出手段からの動作位置との間の偏差に基
づいて復習補正偏差補正量を求め、指令動作位置を補正
偏差量及び復習補正偏差量に基づいて補正したものを指
令位置として駆動制御手段に出力してもよい。これによ
って、より正確に第2の駆動機構を所望の位置に位置決
め制御することができるようになる。
【0038】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面に従って詳
細に説明する。図2は本発明の刺繍ミシンの概略構成を
示す図である。本図は被対象物に刺繍を施すために必要
な刺繍ミシンの単純構成を示すものであり、例えば、刺
繍ミシンが多頭式ミシンの場合には、その中の1つの頭
における1つの針棒が示してある。
【0039】図において、ミシン制御手段1は、刺繍ミ
シン全体の動作を制御するものであり、糸の種類や布の
種類等の各種情報を設定するためのパネルスイッチ等
(図示せず)を有する。ミシン制御手段1は、枠駆動手
段8や主軸モータ4の動作を制御し、その制御状態及び
張力検出手段3からの張力信号TSに基づいて上糸調子
用モータ2を駆動制御して、上糸テンションを制御す
る。
【0040】このミシン制御手段1は、枠駆動手段8の
X軸及びY軸を構成するサーボモータ等のアクチュエー
タの移動量、すなわちサーボモータの回転位置を検出
し、その回転位置と指令位置との偏差に応じてサーボモ
ータの駆動電流を制御するという従来のものと基本的に
は同じであるが、本発明の同期制御方式の特徴は指令位
置の与え方に特徴がある。この指令位置の与え方につい
ては後述する。また、上糸テンションの制御システムの
詳細についても後述する。なお、刺繍ミシンが多頭式の
場合にはミシン制御手段1は各頭の各針棒に対応する上
糸調子用モータ2を制御して、上糸のテンションをそれ
ぞれ独立に制御するものとする。
【0041】上糸調子手段21は上糸22に適当なテン
ションを与えるものであり、例えば、一対の調子皿間に
上糸22を挟み、その調子皿の一方に押圧力を与えてい
るバネの伸縮を上糸調子用モータ2の回転位置を制御す
ることによって適宜変化させるように構成されている。
また、上糸調子手段21はバネの伸縮力に代えて電磁力
を利用して調子皿の一方に押圧力を加えるタイプのもの
でもよい。すなわち、上糸調子手段21としては、指令
信号に応じて上糸の張力を適宜可変制御できるものであ
れば、どのような構成のものであってもよい。
【0042】張力検出手段3は上糸調子手段21と第1
糸案内52との間の上糸22の張力を検出し、検出され
たテンション値をミシン制御手段1に出力するものであ
ればよい。例えば、特開昭60−193493号公報に
記載されているような歪みゲージを有した片持ちの測定
レバーで上糸の張力を検出してもよい。なお、本実施例
では、図3のような張力検出手段を用いて、上糸の張力
を検出する。
【0043】図3の張力検出手段は2つの糸案内54,
55間を通過する上糸22に対して接触部材56を介し
て一方向に所定の押圧力を与える片持ちレバー57と、
この片持ちレバー57の前後に設けられた検出用コイル
58A,58Bとから構成される。片持ちレバ57は上
糸22の張力の大きさに応じて撓み変形するので、検出
用コイル58A,58Bにはその撓み量に応じた信号が
発生する。なお、この張力検出手段は回転軸59を中心
に押圧力方向と逆方向に回転するようになっている。こ
れは、この張力検出手段を各頭に1つ設けておき、針棒
の交換時にこれを押圧力方向と逆方向に回転させて上糸
22と接触部材56との接触を解除し、針棒交換終了後
に元の押圧力位置に戻し、次の上糸と接触部材56とを
接触させてその上糸の張力を検出するためである。この
張力検出手段を各頭に1つ設けておけば、針棒交換等が
あっても全ての針棒の上糸張力を検出することができ
る。
【0044】主軸モータ4はミシン制御手段1から駆動
電流の供給を受けて一定速度で回転駆動する。また、主
軸モータ4にはその回転位置をアブソリュートに検出す
るための回転位置センサ41が結合されている。この回
転位置センサ41としては、例えば特開昭57−704
06号公報又は特開昭58−106691号公報に示さ
れたような誘導型の位相シフト方式の回転位置センサを
使用する。なお、この回転位置センサ41の詳細構成に
ついては後述する。
【0045】主軸モータ4の回転動力はカム機構又はベ
ルト機構等の動力伝達手段を介して天秤51、針棒6及
び釜91のそれぞれの駆動機構に伝達され、それぞれの
動力源として利用される。従って、天秤51、針棒6及
び釜91は主軸モータ41の回転駆動力に同期して一連
の動作を繰り返し実行する従来の刺繍ミシンと同じ構成
である。
【0046】天秤51は糸案内52、53の間から上糸
22を引き上げては、元に戻すという往復運動を繰り返
す。針棒6は、針61を保持して上下運動を行い、この
上下運動に連動させて布押さえ71も同時に移動させ
る。また、図示してないが、針棒6にはジャンプ機構等
の刺繍縫合に必要な機構が設けられている。
【0047】釜91は外釜及び内釜からなる。外釜は主
軸モータ4の回転に同期して回転し、内釜は外釜の回転
から独立するように釜支えを介して保持されている。内
釜の内部にはボビンケースが保持され、さらにボビンケ
ースの内部には下糸92が巻かれているボビンが保持さ
れている。枠駆動手段8はミシン制御手段1からの位置
指令信号P0X,P0Yに応じて刺繍枠81をX軸及び
Y軸方向に移動させる。すなわち、枠駆動手段8は刺繍
枠82をX軸及びY軸方向にそれぞれ移動させる2つの
サーボモータで構成されている。枠駆動手段8は針棒6
の上下移動に同期して、すなわち針61が布から抜けて
いる期間内に刺繍枠82を移動させる。
【0048】図4は、図2の刺繍ミシンの動作を制御す
るミシン制御手段1の詳細構成を示す図である。図4に
おいて図2と同じ構成のものには同一の符号が付してあ
るので、その説明は省略する。主軸動作指令部11は、
上位コントローラ(図示せず)から主軸モータ4の回転
速度を示す指令速度信号VMを入力し、それを内部メモ
リ上に一旦記憶しておき、そして上位コントローラから
の動作開始信号STが入力した時点で指令速度信号VM
に対応した電流指令信号(トルク信号)TMを電流アン
プ12に出力する。また、主軸動作指令部11は、速度
演算部14からの実回転速度MFを入力し、主軸モータ
が指令速度VM通りに回転しているかどうかを常に監視
しながら、電流指令信号TMを制御する。
【0049】電流アンプ12は主軸動作指令部11から
の電流指令信号TMを入力し、それに応じた駆動電流を
主軸モータ4に供給する。主軸モータ4は電流アンプ1
2からの駆動電流に応じて指令速度信号VMに対応した
回転速度で回転する。
【0050】位置変換部13は回転位置センサ41の出
力をデジタルの回転位置データMPに変換し、速度演算
部14及びアドレス変換部15に出力する。なお、位置
変換部13の詳細構成については後述する。速度演算部
14は、位置変換部13からの回転位置データMPを入
力し、所定の単位時間当たりの変化量に基づいたデジタ
ル演算により主軸モータ4の実回転速度MFを主軸動作
指令部11及び速度変動演算部1Bに出力する。
【0051】アドレス変換部15は位置変換部13から
の回転位置データMPを入力し、それを針棒6の上下運
動の一周期中のどの位置に対応するのか、すなわち針棒
6の動きに対応したアドレス信号ADに変換して、基準
データ記憶部19、最適張力データ記憶部17及び枠動
作指令部1Kに出力する。すなわち、針棒6は釜91の
2回転に対して1周期分の上下運動を行う必要があるの
で、アドレス変換部15は、回転位置データMPを入力
することによって、現在針棒6が上下運動の1周期中
(ストローク中)のどこに位置するのかを示すアドレス
信号ADに変換することができる。針棒6の1周期(3
60°)は刺繍縫合の1ステッチに対応するので、枠動
作指令部1Kはこのアドレス信号ADに応じて枠駆動手
段8の各サーボモータ8X及び8Yを駆動制御する。
【0052】サーボモータ8X及び8Yは、図2の枠駆
動手段8を構成し、刺繍枠82をX軸及びY軸方向に移
動させる。サーボモータ8X及び8Yは位置制御部1
L,1R、速度制御部1M,1S、電流アンプ1N,1
T、位置変換部1P,1U、速度演算部1Q,1Vから
なるフィードバック制御ループによって制御される。な
お、サーボモータ8X及び8Yに対するフィードバック
制御ループの構成は同じなので、ここではサーボモータ
8Xに関するフィードバック制御ループの構成について
説明し、サーボモータ8Yに関しては省略する。
【0053】サーボモータ8Xの回転軸には、その回転
位置をアブソリュートに検出する回転位置センサ81X
が結合されている。この回転位置センサ81Xは、上述
の回転位置センサ41と同じ誘導型の位相シフト方式の
回転位置センサで構成されている。位置変換部1Pは、
上述の位置変換部13と同じ構成であり、回転位置セン
サ81Xの出力をデジタルの現在位置データXPに変換
し、速度演算部部1Q、位置制御部1L及び枠動作指令
部1Kに出力する。また、位置変換部1Pは回転位置セ
ンサ81Xからの出力に基づいてサーボモータ8Xの界
磁の切換位置を制御するための位相信号CXを生成して
電流アンプ1Nに出力する。
【0054】位置制御部1Lは、枠動作指令部1Kから
の位置指令信号P0Xと、サーボモータ8Xの現在位置
を示す現在位置データXPを入力し、両者の位置偏差Δ
PXを求め、その位置偏差ΔPXを所定のゲイン(比例
ゲイン)で増幅し、それを速度指令信号FXとして速度
制御部1Mに出力する。なお、図示していないが、この
速度指令信号FXは位置指令信号P0Xを所定のゲイン
(フィードフォワードゲイン)で増幅して得られたフィ
ードフォワード成分を含む値である。従って、位置制御
部1L,1Rの比例ゲイン及びフィードフォワードゲイ
ンの大きさは、それぞれのサーボモータ毎に最適の値が
上位コントローラによって設定される。
【0055】速度演算部1Qは、位置変換部1Pからの
現在位置データXPを入力し、所定の単位時間当たりの
変化量に基づいたデジタル演算によりサーボモータ8X
の現在の回転速度FLを算出し、それを速度制御部1M
に出力する。すなわち、速度演算部1Qは、現在位置デ
ータXPを微分演算して、回転速度FLを得る。
【0056】速度制御部1Mは、位置制御部1Lからの
速度指令信号FXと速度演算部1Qからの速度信号FL
とを入力し、両者の速度偏差ΔFXを求め、その速度偏
差ΔFXを所定のゲイン(比例ゲイン及び積分ゲイン)
で増幅し、それをサーボモータ8Xのトルク信号(電流
指令信号)TXとして電流アンプ1Nに出力する。速度
制御部1Mの比例ゲイン及び積分ゲインの大きさは、そ
れぞれのサーボモータ毎に最適の値が上位コントローラ
によって設定される。
【0057】電流アンプ1Nは、速度制御部1Mからの
電流指令信号TXと位置変換部1Pからの位相信号CX
を入力し、それに基づいて3相のPWM信号を生成して
パワートランジスタを駆動し、サーボモータ8Xの各相
(U相、V相、W相)に駆動電流を供給する。このと
き、図示していない電流アイソレータによってU相及び
V相の電流値の電流フィードバック信号が電流アンプ1
Nにフィードバックされるので、電流アンプ1Nは、各
相の電流指令信号TXと電流フィードバック信号との偏
差を増幅した駆動電流をサーボモータ8Xに供給する。
【0058】なお、図示していないが、枠動作指令部1
Kと電流アンプ1Nとの間はデータ線で接続されてお
り、両者間で各種データのやりとりが行えるようになっ
ている。すなわち、電流アンプ1Nは、サーボモータの
オーバーロード、電源電圧低下、過電流、過電圧及びオ
ーバーヒート等の制御状態を検出する機能を有してお
り、また、これらの制御状態を示すサーボステイタス信
号と、電流アンプの定格を示すIDコードと、制御対象
となるサーボモータの定格を示すモータ定格コード等の
各種データを格納するメモリを有する。
【0059】電流アンプ1N内のメモリに格納されてい
るデータは、必要に応じて上記データ線を介して枠動作
指令部1Kに送信される。なお、モータ定格コードは上
記メモリ内にテーブルとして記憶されている。従って、
サーボモータの定格を示すテーブル番号が送信されてき
た場合には、そのテーブル番号に応じて電流アンプの駆
動電流がそのサーボモータの定格に応じたものに変更さ
れる。
【0060】このように本実施例によれば、サーボモー
タの定格に応じたテーブル番号を選択するだけで、電流
アンプを定格の異なるサーボモータを制御可能なアンプ
に変更することができるので、刺繍枠の大きさ等に応じ
てサーボモータを交換した場合でもテーブル番号を変更
するだけで電流アンプをそのサーボモータに応じたもの
に変更することができる。すなわち、サーボモータ8
X,8Yの定格が同じ場合にはその定格を示すテーブル
番号を同じにすればよい。また、刺繍枠の形状によって
はサーボモータ8Xの定格をサーボモータ8Yよりも大
きくしなければならない場合がある。この場合には、そ
れぞれのサーボモータの定格を示すテーブル番号を電流
アンプに送信してやれば、電流アンプは定格の異なるサ
ーボモータを別々に制御することができる。
【0061】枠動作指令部1Kは、針棒6が上下運動の
一周期中のどこに位置するのかを示すアドレス信号AD
をアドレス変換部15から入力し、刺繍枠82の現在位
置すなわちサーボモータ8X及び8Yの回転位置に対応
した現在位置データXP,YPを位置変換部1P,1U
から入力し、アドレス信号AD及び現在位置データX
P,YPに基づいて針61が布に刺さっていない期間内
にステッチ幅に対応した位置に刺繍枠82を位置決めす
るための位置指令信号P0X,P0Yを算出し、それを
位置制御部1L,1Rに出力してサーボモータ8X及び
8Yを駆動制御する。枠動作指令部1Kは、サーボモー
タ8X,8Yの駆動に関するデータを枠駆動データとし
て予め記憶している。この枠駆動データは刺繍の柄や模
様等のステッチに関するものであり、操作者によって外
部から設定されるものである。また、枠動作指令部1K
は枠駆動手段8の制御に関する位置指令信号P0X,P
0Yを張力データ選択読出部16に出力する。
【0062】すなわち、従来の刺繍ミシンでは、図23
のように針棒6が所定値(約10mm)に達した時点で
枠駆動可能信号がハイレベル“1”になるので、その枠
駆動可能信号の立ち上がりに同期させて各サーボモータ
8X,8Yを枠駆動データ(例えばステッチ幅、ステッ
チ方向)に応じて単純に駆動しているだけであったが、
本発明の同期制御方式では、枠動作指令部1Kがアドレ
ス信号ADと刺繍枠82の現在位置データXP,YPと
に基づいて、最適な指令位置信号P0X,P0Yを演算
にて求めて位置制御部1L,1Rに供給している点に特
徴がある。この枠動作指令部1Kの演算方法の詳細につ
いては後述する。
【0063】張力データ選択読出部16は、主軸動作指
令部11からの指令速度信号VMと、枠動作指令部1K
からの枠駆動データとを入力し、これらの各信号に基づ
いて最適張力データ記憶部17の中から現在の縫い条件
に最適な張力データを読み出す。最適張力データ記憶部
17に記憶されている張力データは、図5のような構成
になっている。
【0064】すなわち、図5において、最適張力データ
記憶部17には主軸モータ4の回転速度N1〜N6に対
応した6種類の張力データが格納されている。また、各
回転速度N1〜N6に対応した張力データはステッチ幅
及びステッチ方向の大きさに対応した16種類の張力デ
ータで構成されている。ここで、ステッチ幅とはサーボ
モータ8X及び8Yによって移動する刺繍枠82の移動
量であり、ステッチ方向とはサーボモータ8X及び8Y
によって移動する刺繍枠82の移動方向である。
【0065】すなわち、図6のようにステッチの開始位
置を原点0とした場合に、刺繍枠82の移動量を3mm
毎に区切り、0〜3,3〜6,6〜9,9〜の4種類に
分類し、さらに原点0から+Y方向を0度、−Y方向を
180度として、刺繍枠82の移動方向を45度毎に区
切り、0〜45,45〜90,90〜135,135〜
180の4種類に分類する。但し、ステッチ方向の場合
は、+X方向回り(左回り)と−X方向回り(右回り)
とでは張力データは同じにする。さらに、ステッチ幅及
びステッチ方向に対応した張力データは今回ステッチ方
向と前回ステッチ方向との成すステッチ角度に対応した
4種類の張力データで構成されている。
【0066】このように主軸の回転速度、ステッチ幅、
ステッチ方向及びステッチ角度に応じてそれぞれ張力デ
ータを設けたのは、糸の張力がこれらに依存して種々変
化するからである。張力データをこのステッチ幅に応じ
て変化させたのは、ステッチ幅に応じて下糸の引き上げ
量が種々異なるからである。また、張力データをこのス
テッチ方向に応じて変化させたのは、上糸22が針穴を
通過する際に発生する摩擦力が刺繍枠82の移動方向に
応じて種々変化するためである。
【0067】すなわち、図6に示すようにサーボモータ
8Xによって移動するX方向は上糸22の針穴通過方向
と垂直であり、サーボモータ8Yによって移動するY方
向は上糸22の針穴通過方向と平行であるため、刺繍枠
82がX方向及びY方向に種々移動すると、その移動方
向に応じて上糸22が針穴を通過する方向が種々変化す
るようになるからである。例えば、図6において上糸2
2の針穴通過方向が+Y方向の場合に、刺繍枠82が同
じ+Y方向に移動すれば、上糸22は針穴をスムースに
通過するため、ステッチ方向による張力変化は少ない。
逆に刺繍枠82が針穴通過方向と反対の−Y方向に移動
すると、上糸22は針穴通過後約180度反転するよう
になるため、ステッチ方向による張力変化が激しくな
る。
【0068】張力データをステッチ角度に応じて変化さ
せたのは、直線縫合のようにステッチ角度の変化しない
場合と、刺繍縫合のように常にステッチ角度が変化する
場合とでは、下糸の引き上げ量をそれぞれ異ならせる必
要があるからである。すなわち、直線縫合の場合には、
上糸と下糸との交差部分が布のほぼ中央付近に位置する
のが良いとされているが、刺繍縫合の場合には上糸が布
の下側に十分に出るのが良いとされている。
【0069】従って、本実施例の刺繍ミシンでは、ステ
ッチ角度に応じて張力データを種々変化させて下糸の引
き上げ量を変化させている。なお、ステッチ方向は刺繍
枠82の移動方向によって決まる絶対的な値であった
が、ステッチ角度は前回のステッチ方向に依存する値な
ので、張力データ選択読出部16は枠動作指令部1Kか
らの枠駆動データに基づいてこのステッチ角度を算出す
る。
【0070】従って、張力データ選択読出部16は、主
軸動作指令部11からの指令速度信号VMに基づいて回
転速度N1〜N6の中から最も指令速度信号VMに近い
張力データを選択し、枠動作指令部1Kからの枠駆動デ
ータに基づいてステッチ幅、ステッチ方向及びステッチ
角度を算出して今回のステッチに最適な張力データを最
適張力データ記憶部17の中から選択する。すると、最
適張力データ記憶部17からは、選択された張力データ
MTがアドレス変換部15からのアドレス信号ADに応
じて順次読み出され、張力補正部1Cに出力されるよう
になる。
【0071】例えば、回転速度がN1、前回ステッチ方
向が+Y方向、今回ステッチ幅が5mm、今回ステッチ
方向が+30度の場合には、今回ステッチ角度は30度
となるので、張力データ選択読出部16は、張力データ
として回転速度N1における張力データT12Aを最適
張力データ記憶部17の中から選択的に読み出し、張力
データMTとして張力補正部1Cに出力する。
【0072】また、回転速度がN3、前回ステッチ方向
が−X方向、今回ステッチ幅が7mm、今回ステッチ方
向が−170の場合には、今回ステッチ角度は100度
となるので、張力データ選択読出部16は、張力データ
として回転速度N3における張力データT43Cを最適
張力データ記憶部17の中から選択的に読み出し、張力
データMTとして張力補正部1Cに出力する。
【0073】選択回路18は、上位コントローラ1Hか
らの指示に従って、張力検出手段3の張力信号TSを基
準データ記憶部19又は張力偏差算出部1Aのいずれか
一方に選択的に出力する。基準データ記憶部19は、基
準データ作成時に選択回路18を介して張力検出手段3
に接続され、風合いの良い刺繍製品ができた場合におけ
る実際の張力信号TSを基本張力データBTとしてアド
レス順に記憶しておき、次回以降の刺繍時にはその基本
張力データBTをアドレス変換部15からのアドレスに
応じて張力補正部1Cに出力する。
【0074】速度変動演算部1Bは、速度演算部14か
ら主軸モータ4の実回転速度MFを入力し、その速度変
動率εを算出して、張力補正部1Cに出力する。主軸モ
ータ4の動力はカム機構又はベルト機構等の動力伝達手
段を介して針棒6、天秤51及び釜91のそれぞれに伝
達されているので、針61が布に刺さる時、釜が上糸を
引き込む時、針61が布から抜ける時、天秤が上糸を引
き上げる時のそれぞれにおいて負荷が変動する。負荷が
変動するとそれに応じて主軸モータ4の実回転速度MF
も変動する。
【0075】このような負荷変動の割合、すなわち速度
変動率εは糸の特性(糸が天然繊維であるか合成繊維で
あるか、又は糸の太さ等)及び被対象物の特性(布の材
質や厚さ等)に依存するものである。従って、この実回
転速度MFの速度変動率εに基づいて糸の特性や被対象
物の特性を把握することができる。
【0076】また、負荷変動の割合(速度変動率ε)は
糸の特性や被対象物の特性の他にも周囲温度や湿度にも
依存する。すなわち、同じ糸で同じ布に同じ模様の刺繍
を施す場合でも周囲の温度や湿度が異なると、それに応
じて負荷が変動するようになる。従って、この実回転速
度MFの速度変動率εに基づいて糸の特性や被対象物の
特性の他にも周囲温度や湿度等の変化を大まかに把握す
ることができる。
【0077】そこで、本実施例では張力補正部1Cで、
速度変動演算部1Bで算出した速度変動率εに基づいて
基準データ記憶部19の張力データBT又は最適張力デ
ータ記憶部17の張力データMTを補正している。すな
わち、この張力補正部1Cは速度変動率εをパラメータ
とした複数の変換テーブルで構成され、張力データBT
又はMTを変換テーブルに従って変換して補正張力デー
タCTとして張力偏差算出部1Aに出力する。
【0078】張力偏差算出部1Aは、選択回路18を介
して入力される張力検出手段3の張力信号TSと張力補
正部1Cからの補正張力データCTとの間の偏差を算出
し、それを張力偏差データΔTとして糸調子制御部1E
に出力する。すなわち、基準データ記憶部19に記憶さ
れている基準張力データBTは、風合いが良く品質の高
い刺繍製品が縫合された時(良質刺繍時)の張力データ
であるから、この基準張力データBTと同じように上糸
の張力を制御することができれば、良質の刺繍製品を再
現性よく製造することができるようになる。
【0079】糸調子データ記憶部1Dは、上糸調子用モ
ータ2の回転位置を示す糸調子データDTが記憶されて
いる。すなわち、上糸調子手段21は上糸調子用モータ
2の回転位置に応じて上糸のテンションを種々変化させ
るものであるから、所望のテンションを上糸に与えるた
めには、上糸調子用モータ2の回転位置が正確に制御さ
れる必要がある。そこで、風合いが良く品質の高い刺繍
製品が縫合された時(良質刺繍時)の張力信号TSを基
準張力データBTとして基準データ記憶部19に記憶す
ると同時に、その時の上糸調子用モータ2の回転位置を
示す糸調子データDTを糸調子データ記憶部1Dに記憶
する。
【0080】糸調子制御部1Eは、張力偏差算出部1A
からの張力偏差データΔTに対応する分だけ上糸22の
テンションを変化させる。すなわち、糸調子制御部1E
は、上糸調子用モータ2の回転位置(位置変換部1Gか
らの現在位置データTP)を糸調子データDT通りに位
置決めするために、糸調子データDTと現在値データT
Pとの間の位置偏差ΔPを求め、この位置偏差ΔPに応
じた電流指令信号TTを電流アンプ1Fに出力してい
る。従って、糸調子制御部1Eは、張力偏差データΔT
を入力し、これを位置データΔTPに変換して糸調子デ
ータDTに加算する。すると、今までゼロであった位置
偏差ΔPが位置データΔTPに等しくなるので、上糸調
子用モータ2はこの位置データΔTPに相当して回転す
るようになる。そして、糸調子制御部1Eは、位置デー
タΔTPだけ回転した現在位置データTPを今回のステ
ッチにおける糸調子データDTとして糸調子データ記憶
部1Dに記憶する。
【0081】電流アンプ1Fは、電流指令信号TTを入
力し、これに応じた駆動電流を上糸調子用モータ2に供
給する。上糸調子用モータ2の回転軸には、その回転位
置をアブソリュートに検出するための回転位置センサ2
3が結合されている。この回転位置センサ23は上述の
回転位置センサ41と同じ誘導型の位相シフト方式の回
転位置センサで構成されている。位置変換部1Gは、上
述の位置変換部13と同じ構成であり、回転位置センサ
23の出力をデジタルの位置データTPに変換し、糸調
子制御部1Eに出力する。
【0082】次に、本発明の刺繍ミシンの同期制御方式
について説明する。図1は図4の枠動作指令部1Kの詳
細構成を示す機能ブロック図である。この枠動作指令部
1Kは、実際はCPU、プログラムROM、データRA
M及びワーキングRAM等を含むマイクロコンピュータ
システムで構成されているが、説明の便宜上機能ブロッ
ク図で示す。
【0083】アドレス変換部15は前述のように針棒6
が上下運動の1周期中のどこに位置するのかを示すアド
レス信号ADを出力するものであり、速度演算手段K
1、同期状態監視手段K2、学習制御手段K4及び回転
位置予測演算手段K5はこのアドレス信号ADを入力す
る。アドレス信号ADは図23に示されるように0度か
ら360度までを一周期として変化する。
【0084】従って、速度演算手段K1はアドレス変換
部15からのアドレス信号ADを入力し、それを所定の
時間間隔で微分処理して得られた回転速度信号(釜91
の回転速度の2分の1に相当する)Pvを同期状態監視
手段K2、予習パターン記憶手段K3、学習制御手段K
4及び回転位置予測演算手段K5に出力する。回転速度
信号Pvはアドレス信号ADが図23の0度から360
度まで変化するのに要する時間の逆数に相当し、その単
位は〔rps〕である。
【0085】同期状態監視手段K2は、アドレス変換部
15からのアドレス信号AD、速度演算手段K1からの
回転速度信号Pv及び現在位置データXP,YP(刺繍
枠82を駆動するサーボモータ82X,82Yの現在位
置を示す信号)を入力し、そのアドレス信号ADに対応
した指令位置データP0X,P0Yと実際の現在位置デ
ータXP,YPとの間の位置偏差を求める。
【0086】ここで、位置偏差は、図24〜26に示さ
れるように指令位置データP0Xに対してサーボモータ
の動作が現在位置データP0XA,P0XB,P0XC
のようにアドレス信号AD上で所定角度だけ遅れるため
に生じるものである。従って、同期状態監視手段K2
は、その位置偏差に基づいて現在位置データP0XA,
P0XB,P0XCが指令位置データP0Xに対してア
ドレス信号AD上でどれだけ遅れているのかを示すアド
レス偏差ΔX1,ΔY1を求めて学習制御手段K4に出
力する。そして、同期状態監視手段K2は、算出された
アドレス偏差ΔX1,ΔY1の値が回転速度信号Pvに
対応して許容可能な値よりも小さいかどうか、すなわち
同期状態にあるかどうかを判定する。アドレス偏差ΔX
1,ΔY1の値が所定値よりも大きい場合は刺繍枠駆動
系に異常が発生したと判断して警報信号やエラー信号を
出力する。
【0087】予習パターン記憶手段K3は、ゲイン信号
(位置制御部1L,1Rのゲイン及び速度制御部1M,
1Sのゲイン)GNをパラメータとして速度演算手段K
1からの回転速度信号Pvとアドレス進角予習量ΔPP
との関係を予めパターン化した図7のような予習パター
ンを記憶しており、ゲイン信号GNと回転速度信号Pv
を入力することによって、それらの値に応じたアドレス
進角予習量ΔPPを学習制御手段K4に出力する。この
アドレス進角予習量ΔPPの単位はアドレス信号ADと
同じ単位の〔度〕である。
【0088】図7の予習パターンは次のようにして作成
される。まず、図8のような動作パターンKa〜Kfの
中から1つを選択し、位置制御部1L,1R及び速度制
御部1M,1Sのそれぞれのゲイン値を一定(例えばゲ
イン信号G3)とし、回転速度信号Pvを変化させ、そ
の時のアドレス偏差ΔX1,ΔY1を求める。図8にお
いて、横軸はアドレス信号AD、縦軸はアドレス信号A
Dに対応した刺繍枠の移動位置XA,YA〔mm〕を示
す。それぞれの動作パターンKa〜Kfは、アドレス範
囲220度で移動しなければならない刺繍枠移動位置X
A,YAの値4,8,12,16,20,24〔mm〕
である。
【0089】例えば、動作パターンとしてKcを選択
し、回転速度信号PvをPv=600〔rpm〕=10
〔rps〕とすると、アドレス範囲220度に対応する
時間は61〔ms〕となる。同様に、動作パターンとし
てKcを選択し、回転速度信号PvをPv=1200
〔rpm〕=20〔rps〕とすると、アドレス範囲2
20度に対応する時間は30〔ms〕となる。
【0090】このように、動作パターンKc通りに刺繍
枠の指令位置データP0X,P0Yを位置制御部1L,
1Rに出力してサーボモータ82X,82Yを動作さ
せ、この動作中に同期状態監視手段K2から出力される
アドレス偏差ΔX1,ΔY1〔度〕を記憶する。この一
連の動作を回転速度信号Pv及び動作パターンKa〜K
fを変更して行うことによって、回転速度信号Pvに対
して刺繍枠移動位置Ka〜Kfをパラメータとした図9
のようなアドレス偏差特性が得られる。なお、図8の左
側の動作パターンと右側の動作パターンの平均値をその
動作パターンのアドレス偏差ΔX1,ΔY1とする。
【0091】図9のアドレス偏差特性と、式ΔPP=Δ
X1/K又はΔY1/Kとに基づいて、回転速度信号P
vに対するアドレス進角予習量ΔPPを算出する。すな
わち、図9の動作パターンKa〜Kfを選択し、位置制
御部1L,1R及び速度制御部1M,1Sのそれぞれの
ゲイン値をパラメータG1〜G5として、回転速度信号
Pvを変化させ、その時のアドレス偏差ΔX1,ΔY1
をKa〜Kfで除することによって、図7のようなゲイ
ンG1〜G5をパラメータとした回転速度信号Pv〔r
ps〕に対するアドレス進角予習量ΔPP〔度〕を示す
予習パターンを求めることができる。
【0092】なお、図9のアドレス偏差特性は刺繍枠8
2に被対象物(布等)を保持していない場合のものであ
るから、実際は保持される被対象物の重量や刺繍縫合時
の刺繍糸自身の重量等によって時々刻々と変化するもの
である。従って、本発明では、学習制御手段K4がこれ
らの被対象物の重量等による影響を考慮して、予習パタ
ーンのゲインパラメータを変更したり、復習制御を行う
ようになっている。
【0093】学習制御手段K4は、同期状態監視手段K
2からのアドレス偏差ΔX1,ΔY1を入力し、針棒6
の上下運動の1周期当たりの刺繍枠82の平均偏差ΔX
1av,ΔY1avを求める。なお、アドレス偏差ΔX
1,ΔY1は、刺繍枠82の回転方向が正転の場合は正
の値、負の場合は負の値なので、学習制御手段K4はア
ドレス偏差ΔX1,ΔY1の絶対値の平均をとるように
なっている。
【0094】そして、学習制御手段K4は、その刺繍枠
82の平均偏差ΔX1av,ΔY1avの大きさに基づ
いて、アドレス進角復習量ΔPRX,ΔPRYを算出
し、それと予習パターン記憶手段K3のアドレス進角予
習量ΔPPX,ΔPPYとを加算した値ΔPPX+ΔP
RX,ΔPPY+ΔPRYを刺繍枠82のアドレス進角
学習量として回転位置予測演算手段K5に出力する。ま
た、学習制御手段K4は、刺繍枠82の平均偏差ΔX1
av,ΔY1avの大きさが所定値以上になった場合に
は、その予習パターンのゲインパラメータを変更し、刺
繍枠82の平均偏差ΔX1av,ΔY1avの大きさが
所定値内に収まるように制御する。
【0095】ところが、枠動作指令部1Kは、単にアド
レス変換部15のアドレス信号ADに学習制御手段K4
のアドレス進角学習量ΔPPX+ΔPRX,ΔPPY+
ΔPRYを加算し、その加算値に基づいて刺繍枠位置を
予測して位置制御部1L,1Rに指令位置データX0
P,Y0Pを出力したとしても、針棒6は一定の回転速
度信号Pvに対応してストローク運動しているので、そ
の出力時点では既に枠動作指令部1Kの処理時間に相当
する角度分だけ針棒が動作しているので、その出力時点
における実際の針棒の位置に対応したアドレス信号AD
に対応した指令位置データP0X,P0Yを出力するこ
とができない。
【0096】そこで、回転位置予測演算手段K5は、ア
ドレス変換部15からのアドレス信号AD、速度演算手
段K1からの回転速度信号Pv及び学習制御手段K4か
らのアドレス進角学習量ΔPPX+ΔPRX,ΔPPY
+ΔPRYを入力し、アドレス信号ADとアドレス進角
学習量ΔPPX+ΔPRX,ΔPPY+ΔPRYとを加
算し、さらに枠動作指令部1Kから位置制御部1L,1
Rに指令位置信号X0P、Y0Pが出力されるまでの処
理時間TWと回転速度信号Pvとの乗算値Pv×TWを
加算した値AD+ΔPPX+ΔPRX+Pv×TW,A
D+ΔPPY+ΔPRY+Pv×TWを正式なアドレス
信号ADaとして刺繍枠位置予測演算用係数テーブルK
7に出力する。
【0097】枠動作指令部1Kは、ステッチ幅及びステ
ッチ方向に応じてそれぞれ異なった動作パターンに従っ
て刺繍枠82を移動させる必要がある。そこで、刺繍枠
動作パターンデータ記憶手段K6は、このステッチ幅及
びステッチ方向毎の動作パターンを、アドレス信号AD
と、刺繍枠移動量XA,YAとからなる動作パターンデ
ータとして記憶している。例えば、刺繍枠動作パターン
データ記憶手段K6は、図10のように20度毎のアド
レス信号AD(240度,260度,280度,300
度,320度,340度,360(0度),20度,4
0度,60度,80度,100度)と、このアドレス信
号ADに対する刺繍枠位置XY0〜XYBとを動作パタ
ーンデータS0〜SBとして記憶している。
【0098】動作パターンデータS0はアドレス信号A
Dが240度の時に刺繍枠位置XA,YAをXY0すな
わち原点に位置させることを、動作パターンデータS1
はアドレス信号ADが260度の時に刺繍枠位置XA,
YAをXY1に位置させることを意味する。以下、動作
パターンデータS2〜SBも同様のことを意味する。従
って、ステッチ幅の大きさにこの刺繍枠位置XA,YA
に乗じることによって、各ステッチ幅に対応した動作パ
ターンデータS0〜SBを作成することができる。
【0099】横軸をアドレス信号ADとし、縦軸を刺繍
枠位置XA,YAとして、図10の動作パターンデータ
S0〜SBをプロットし、各動作パターンデータS0〜
SBの間を直線で結ぶことによって、動作パターンは図
11のようになる。図11の動作パターンは図10の動
作パターンデータS0〜SBを直線で結んだものなの
で、複数の直線式(1次式)で近似することができる。
【0100】例えば、動作パターンデータS0と動作パ
ターンデータS1との間は、直線式XY01=A0×A
d+B0で近似される。ここで、A0は刺繍枠移動量
(XY1−XY0)をアドレス信号Adの約20度で除
した値K=(XY1−XY0)/20に相当し、B0は
その直線式XY01がアドレス信号AD=240度の場
合の刺繍枠位置軸XA,YAに対する切片に相当する。
【0101】以下同様に、動作パターンデータS1と動
作パターンデータS2との間は直線式XY12=A1×
Ad+B1で、動作パターンデータS2と動作パターン
データS3の間は直線式XY23=A2×Ad+B2
で、動作パターンデータS3と動作パターンデータS4
の間は直線式XY34=A3×Ad+B3で、動作パタ
ーンデータS4と動作パターンデータS5の間は直線式
XY45=A4×Ad+B4で、動作パターンデータS
5と動作パターンデータS6の間は直線式XY56=A
5×Ad+B5で、動作パターンデータS6と動作パタ
ーンデータS7の間は直線式XY67=A4×Ad+B
6で、動作パターンデータS7と動作パターンデータS
8の間は直線式XY78=A3×Ad+B7で、動作パ
ターンデータS8と動作パターンデータS9の間は直線
式XY89=A2×Ad+B8で、動作パターンデータ
S9と動作パターンデータSAの間は直線式XY9A=
A1×Ad+B9で、動作パターンデータSAと動作パ
ターンデータSBの間は直線式XYAB=A0×Ad+
BAで、それぞれ近似される。なお、直線式XY01と
XYABの係数Aは同じ値A0であり、以下同様に直線
式XY12とXY9Aの係数AはA1であり、直線式X
Y23とXY89の係数AはA2であり、直線式XY3
4とXY78の係数AはA3であり、直線式XY45と
XY67の係数AはA4であり、直線式XY56の係数
AはA5である。
【0102】刺繍枠位置予測演算用係数テーブルK7
は、このようにして求められた直線式XY01〜XYA
Bのそれぞれの係数A0〜A5及び係数B0〜BBを図
12のようにアドレス信号ADをアドレスとして記憶し
ている。すなわち、刺繍枠位置予測演算用係数テーブル
K7は、アドレス信号ADをアドレスとして入力し、そ
のアドレス信号ADに対応した係数A0〜A5及び係数
B0〜BBを出力する変換テーブルである。従って、刺
繍枠位置予測演算用係数テーブルK7は、回転位置予測
演算手段K5からのアドレス信号ADaを入力し、それ
に対応した係数A0〜A5及び係数B0〜BBを刺繍枠
位置予測演算手段K8に出力する。
【0103】刺繍枠位置予測演算手段K8は、計算式X
YA=A×Ad+Bの係数Aに刺繍枠位置予測演算用テ
ーブルK7の係数A0〜A5を代入し、係数Bに係数B
0〜BBを代入して、刺繍枠指令位置データP0X,P
0Yを演算して位置制御部1L,1Rに出力する。な
お、計算式XYAで求められた刺繍枠指令位置データP
0X,P0Yにステッチ幅の大きさを乗じることによっ
て、ステッチ幅が種々変化した場合でも指令位置データ
P0X,P0Yを出力することができる。
【0104】次に、本実施例の動作を説明する。まず、
図4のようなサーボ制御システムによって刺繍枠82を
駆動する場合には、枠動作指令部1Kはサーボモータ8
X,8Yの定格を示すテーブル番号データをデータ線を
介して、電流アンプ1N,1Tに送信する。これによっ
て、電流アンプ1N,1Tはサーボモータ8X,8Yの
定格を特定し、サーボモータ8X,8Yの定格に応じた
アンプとして機能するようになる。従って、サーボモー
タ8X,8Yの定格は異なっていてもよい。
【0105】次に、枠動作指令部1Kは、位置制御部1
L,1R及び速度制御部1M,1Sのそれぞれのゲイン
(位置比例ゲイン、フィードフォワードゲイン、比例積
分ゲイン等)を設定す枠動作指令部1Kは、サーボモー
タ8X,8Yの目標位置を示す刺繍枠指令位置データX
a,Yaを位置制御部1L,1Rに出力する。
【0106】位置制御部1L,1Rは刺繍枠指令位置デ
ータXa,Ya及び刺繍枠現在位置信号XP,YPに基
づいた速度指令信号FX,FYを速度制御部1M,1S
に出力する。速度制御部1M,1Sは速度指令信号F
X,FY及び速度信号FL,FRに応じたトルク信号
(電流指令信号)TX,TYを電流アンプ1N,1Tに
出力する。電流アンプ1N,1Tはトルク信号TX,T
Y、電流フィードバック信号及び位相信号CX,CYに
基づいてサーボモータ8X,8Yの駆動電流を制御す
る。サーボモータ8X,8Yに結合された回転位置セン
サ81X,81Yの出力は位置変換部1P,1Uによっ
て刺繍枠の現在位置信号XP,YPに変換され、位置制
御部1L,1R、速度演算部1Q,1V及び枠動作指令
部1Kにフィードバックされる。
【0107】枠動作指令部1Kは刺繍枠の現在位置信号
XP,YPを入力し、図1に示すような所定の学習制御
によって求められた新たな刺繍枠指令位置データP0
X,P0Yを位置制御部1L,1Rに出力する。この制
御の途中で、オーバーロード、電源電圧低下、過電流、
過電圧及びオーバーヒート等の異常が発生した場合、こ
れらの制御状態を示すステイタスデータが電流アンプ1
N,1Tから枠動作指令部1Kを介して上位コントロー
ラに送信される。従って、上位コントローラはこのステ
イタスデータを受信し、それに応じた処理を行う。
【0108】次に、図4のミシン制御手段の動作を図1
3のモーションダイヤグラム図を用いて説明する。図1
3は釜91と天秤51と針棒6との位置関係を示すモー
ションダイヤグラム図であり、図23に対応している。
図において、横軸は針棒6の上下運動の1周期を360
度とした場合における回転角度(アドレス信号AD)を
示し、縦軸は針棒6の最下死点を基準とした釜91の釜
剣先、天秤51の上糸通過穴及び針棒6の針穴の位置を
それぞれ示す。
【0109】針棒6は、上死点を0度、下死点を180
度とする約40mmの振幅で上下運動する。図13に
は、針棒6の上下運動に伴う針穴の位置が示してある。
針穴はサイン波形6Mのような上下運動を行う。釜91
は、針棒6の下死点近傍と釜剣先の上死点近傍とが略一
致した時点で釜剣先が上糸22を引き込むように針棒6
の2倍の周期で回転運動する。図13には、釜剣先の回
転運動に伴う位置が示してある。釜剣先は下死点に達す
ることによって上糸22を約30mm程度引き込む。釜
剣先はサイン波形91Mのような回転運動を行う。
【0110】天秤51は、釜91の釜剣先が上糸22を
引き込んで下死点に達した時点で、上糸22を引き上げ
て下糸92に絡ませ、針棒6の下降及び釜剣先の引き込
みに応じて上糸22をゆるめるという波形51Mのよう
な上下運動を行う。天秤15の上下運動の周期と、針棒
6の上下運動の周期とは同じである。
【0111】枠駆動可能信号は、針61が布から抜け出
て、針先が約10mmに達した時点(本実施例では約2
40度)でハイレベル“1”になり、針61が布に刺さ
る直前の約15mmに達した時点(本実施例では100
度)でローレベル“0”に戻る。すなわち、枠動作指令
部1Kは、アドレス変換部15からのアドレス信号AD
に応じて240度から100度の期間に枠駆動信号P0
X,P0Yを出力して、サーボモータ8X及び8Yを駆
動し、刺繍枠82の移動を行う。なお、本実施例では、
刺繍枠82を−Y方向と+Y方向とに交互に移動する場
合について説明する。
【0112】張力信号TSは、張力検出手段3から出力
されるものであり、実際の波形図を模式的に示したもの
である。まず、張力信号TSとしては、釜剣先が上糸2
2を下死点まで引き込んでから天秤が上糸22を引き上
げる時点(約300度付近)で発生する釜下死点張力信
号ta,tfと、上糸22が釜支えを通過する時点(約
10度付近)で発生する釜支え通過点張力信号tb,t
gと、天秤51が上糸22を上死点まで引き上げる時
(約30度〜90度付近)に発生する天秤上死点張力信
号tc,tgと、針棒6の針61が布に刺さる時点(約
110度付近)で発生する針布刺点td,tiとが存在
する。これらの張力信号の中でも、天秤上死点張力信号
tc,tgが最も刺繍製品の風合いに影響を与えるの
で、本実施例では、この天秤上死点張力信号に基づいて
糸調子を行う場合について説明する。
【0113】以下、ミシン制御手段1の動作を説明する
まず、上位コントローラ(図示せず)は各メモリ(基準
データ記憶部19及び糸調子データ記憶部1D)内のデ
ータをリセットしたり、選択回路3の選択状態を設定し
たり、枠動作指令部1Kの内部メモリ上に枠駆動データ
等を読み込んだりして、イニシャライズ処理を行う。こ
のとき、基準データ記憶部19に対するデータの書き込
みがまだなので、上位コントローラは選択回路18をB
端子側に接続する。
【0114】そして、主軸動作指令部11は、上位コン
トローラからのスタート信号の入力に応じて、電流指令
信号TMを電流アンプ12に出力して主軸モータ4を指
令速度信号VMの回転速度で回転させる。このとき、主
軸動作指令部11は指令速度信号VMを張力データ選択
読出部16に出力する。これによって、釜91、針棒6
及び天秤51は図13のようなモーションで動作するよ
うになる。
【0115】張力データ選択読出部16は、最適張力デ
ータ記憶部17の回転速度N1〜N6の張力データの中
から指令速度信号VMに最も近いものを選択し、枠動作
指令部1Kからの枠駆動データに基づいてステッチ幅、
ステッチ方向及びステッチ角度を算出して今回のステッ
チに最適な張力データMTを最適張力データ記憶部17
の中から選択し、アドレス変換部15からのアドレスに
応じて張力補正部1Cに出力する。
【0116】張力補正部1Cは、速度変動演算部1Bか
らの速度変動率εに基づいて張力データMTに補正を加
え、それを補正張力データCTとして張力偏差算出部1
Aに出力する。張力偏差算出部1Aは、張力検出手段3
からの張力信号TSと補正張力データCTとの間の張力
偏差データΔTを糸調子制御部1Eに出力する。糸調子
制御部1Eは、張力偏差データΔTに相当する分だけ糸
調子用モータ2を駆動し、駆動終了後の位置データTP
を今回のステッチにおける糸調子データとして糸調子デ
ータ記憶部1Dに記憶する。
【0117】以上の動作を刺繍模様が完成するまで、す
なわち、枠動作指令部1Kの内部メモリに記憶されてい
る枠駆動データの読み出しが終了するまで行う。これに
よって、糸調子データ記憶部1Dには、張力検出手段3
の張力信号TSが最適張力データ記憶部17内の張力デ
ータMT(実際には補正張力データCT)に略等しくな
るような上糸調子用モータ2の位置データ(糸調子デー
タ)が各ステッチ毎に糸調子データ記憶部1Dに記憶さ
れる。
【0118】従って、操作者は全く糸調子の調整に未熟
であっても、上述の処理(糸調子データ作成処理)を実
行することによって、最適張力データ記憶部17に予め
記憶されている張力データMTに対応した風合いの刺繍
製品を完成することのできる糸調子データを設定するこ
とができる。なお、上述の糸調子データ作成処理を数回
繰り返し実行することによって、より張力データMTに
対応した風合いの刺繍製品を作成することのできる糸調
子データを設定することができることはいうまでもな
い。
【0119】上述の糸調子データ作成処理によって糸調
子データ記憶部1Dに記憶された位置データはあくまで
も、最適張力データ記憶部17に予め記憶されている張
力データMTに基づくものであり、刺繍製品の風合いと
しては平均的なものである。従って、操作者が高度の刺
繍技術を有する場合には、この糸調子データ記憶部1D
に記憶されている位置データを刺繍製品の風合いに応じ
て設定操作子等を操作して手動で種々変更設定してもよ
い。
【0120】このように操作者が手動で糸調子データ記
憶部1D内の位置データを変更設定した場合には、その
刺繍製品の風合いを見るために、刺繍製品を試作する。
このような場合には、糸調子制御部1Eは、糸調子デー
タ記憶部内の位置データに応じてだけ上糸調子用モータ
2の位置決め制御を行う。すなわち、糸調子制御部1E
は張力偏差算出部1Aからの張力偏差データΔTは無視
する。
【0121】以上のようにして、糸調子データ記憶部1
D内の位置データ(糸調子データ)が確定した場合に
は、上位コントローラは選択回路18をA端子側に接続
し、主軸動作指令部11及び枠動作指令部1Kを再び動
作させて、刺繍動作を行い、張力検出手段3から出力さ
れる実際の張力信号TSを基準データ記憶部19に基準
張力データBTとして記憶する。上述の糸調子データ作
成処理と基準張力データ記憶処理とが終了した時点で上
位コントローラは選択回路18をB端子側に接続する。
【0122】これ以降は、張力補正部1Cは、基準デー
タ記憶部19からの基準張力データBTに対して、速度
変動演算部1Bからの速度変動率εに基づいた補正を加
え、それを補正張力データCTとして張力偏差算出部1
Aに出力する。そして、張力偏差算出部1Aは、張力検
出手段3からの張力信号TSと補正張力データCTとの
間の張力偏差データΔTを糸調子制御部1Eに出力す
る。
【0123】糸調子制御部1Eは、張力偏差データΔT
に相当する分だけ糸調子用モータ2を駆動し、駆動終了
後の位置データTPを新たな糸調子データとして糸調子
データ記憶部1D内を書き換える。すなわち、糸調子制
御部1Eは、張力信号TSが基準張力データBTとなる
ように常に糸調子データの復習制御を行う。これによっ
て、上糸調子手段21や上糸調子用モータ2が経時的に
変化した場合でも上糸22のテンションを基準張力デー
タBTに応じて最適制御することが可能となり、同じ風
合いの刺繍製品を再現性良く作成できるようになる。
【0124】なお、上述の実施例では、張力補正部1C
が速度変動演算部1Bからの速度変動率εに基づいて張
力データMT及び基準張力データBTを補正する場合に
ついて説明したが、張力補正部1C及び速度変動演算部
1Bを省略し、これらの張力データMT,BTを直接張
力偏差算出部1Aに入力するようにしてもよい。
【0125】また、上述の実施例では、糸調子データ作
成処理を行った後に、基準張力データ記憶処理を行う場
合について説明したが、糸調子データ記憶部1Dに予め
外部から糸調子データを設定した場合には、糸調子デー
タ作成処理を省略してもよい。さらに、基準データ記憶
部19内の基準張力データBTや糸調子データ記憶部1
D内の糸調子データをフロッピーディスクやメモリカー
ド等の外部記憶装置に記憶しておき、必要に応じて適宜
読み出して利用できるようにしてもよい。
【0126】上述の実施例では、図5のような張力デー
タMTを作成するために、ステッチ方向、ステッチ幅及
びステッチ角度をパラメータとして実際に刺繍ミシンを
動作させる必要があるが、このようにパラメータが3つ
もあると、これらのパラメータを種々変化させながらデ
ータを作成しなければならないため、データ作成が容易
ではない。
【0127】すなわち、従来の刺繍ミシンにおいて、針
棒6は図13のサイン波形6Mのように一定のストロー
クで上下運動を繰り返しているので、ステッチ幅の大き
さに応じて布83と上糸22との成す引っ張り角度θP
が変化する。また、布押え71の通過穴(針61が上下
方向に通過するための穴)が針61の直径に比べて必要
以上に大きいので、ステッチ方向が一定であってもステ
ッチ幅の大きさに応じて上糸22が針穴を通過する際の
針穴通過角度θTも変化する。
【0128】このようにステッチ幅の大きさに応じて引
っ張り角度θP及び針穴通過角度θTが変化する様子を
図14を用いて説明する。図14はステッチ幅の大きさ
が変化することによって引っ張り角度θP及び針穴通過
角度θTが変化する様子を模式的に示す図である。図示
されている針棒6の動作位置は図13の0度付近であ
り、その時の布押え71から針61の針穴下面までの高
さはH1であり、布83の上面から布押え71までの高
さはH2である。図14(A)は、ステッチ方向が−Y
で、ステッチ幅がSW1で、ステッチ角度が0度の場合
を示し、図14(B)はステッチ方向が−Yで、ステッ
チ幅がSW1の約2倍の大きさであるSW2で、ステッ
チ角度が0度の場合を示している。
【0129】図14(A)のようにステッチ幅がSW1
で上糸22が布押え71に接しない場合には、引っ張り
角度θPと針穴通過角度θTは同じ値、すなわちarc
tan{(H1+H2)/SW1}となる。一方、図1
4(B)のようにステッチ幅がSW2で上糸22が布押
え71に接する場合には、引っ張り角度θPはarct
an{H2/(SW2−R)}となり、針穴通過角度θ
Tはarctan(H1/R)となる。ここで、Rは布
押え71の半径である。図14(B)のようにステッチ
幅が大きくなり、上糸22と布押え71とが接するよう
になると、針穴通過角度θTは布押え71の通過穴の半
径Rと、布押え71から針61の針穴下面までの高さは
H1とによって規定される一定値となる。
【0130】例えば、図14(A)の場合には、引っ張
り角度θP1及び針穴通過角度θT1は約75度であ
り、図14(B)の場合には、引っ張り角度θP2は約
60度であり、針穴通過角度θT2は約68度である。
すなわち、図14においては、針穴通過角度θTはステ
ッチ幅の大きさとは無関係の一定の値となる。このよう
に従来の刺繍ミシンにおいては、ステッチ幅の大きさに
応じて引っ張り角度θP及び針穴通過角度θTが種々変
化するので、前述の実施例のように最適張力データ記憶
部17に図5のようなステッチ幅をパラメータとした張
力データを実験等で求めて記憶する必要があった。
【0131】そこで、本実施例では刺繍ミシンの構造に
改良を加えることにより、ステッチ幅が変化した場合で
も引っ張り角度θP及び針穴通過角度θTを一定値に維
持できるようにし、データ作成時のパラメータからステ
ッチ幅の項を省略できるようにする。そのために本実施
例では、布押え71の針通過穴の半径を針61が通過す
るのに必要な最小値rに設定し、かつ、布83から布押
え71までの高さをステッチ幅の大きさ(刺繍枠82の
移動量)に応じて可変制御するようにした。
【0132】図15は、針棒6及び布押え71を布押え
用モータ7で独立に駆動するように構成した刺繍ミシン
の概略構成を示す図である。図15において図2と同じ
構成のものには同一の符号が付してあるので、その説明
は省略する。図15の刺繍ミシンが図2と異なる点は、
図12の主軸モータ4によって駆動されていた針棒6及
び布押え71が布押え用モータ7で独立に駆動されるよ
うに構成されている点である。なお、布押え用モータ7
には、その回転位置をアブソリュートに検出するための
回転位置センサ72が設けられている。
【0133】図15の刺繍ミシンを制御するミシン制御
手段1には、布押え用モータ7の回転を制御する布押え
動作指令部が新たに設けられる。布押え動作指令部は図
13に示されるように針棒6の下死点近傍と釜剣先の上
死点近傍とが一致するように釜91の回転位置すなわち
アドレス変換部からのアドレス信号ADに対応した所定
位置に位置決め制御される。さらに、枠動作指令部1K
と布押え動作指令部とは互いに同期して動作する。
【0134】すなわち、枠動作指令部1Kは布押え動作
指令部によって位置決め制御される針棒のストローク位
置が約10mmに達した時点すなわち針61が布から抜
け出た時点で刺繍枠82をステッチ幅及びステッチ方向
に応じて移動し、布押え動作指令部は枠動作指令部1K
によって位置決め制御されるステッチ幅の大きさ(刺繍
枠82の移動量)に応じて針棒6の布からの高さを可変
制御する。布押え動作指令部は、図1に示された枠動作
指令部1Kの同期制御方式と同じようにして、針棒6の
下死点近傍と釜剣先の上死点近傍とが一致するように、
また布押え71の高さと刺繍枠82の移動位置とが一致
するように布押え用モータ7の回転を駆動制御する。
【0135】これによって、刺繍速度(主軸モータの回
転速度)が種々変化した場合でも針棒6の下死点と釜剣
先の上死点との相対的位置関係を常に一定とし、釜91
の釜剣先が針穴から上糸22を引き込むことができると
共に、ステッチ幅が種々変化した場合でも引っ張り角度
θP及び針穴通過角度θTを一定値に維持できるように
なる。
【0136】図16は、上述の改良を刺繍ミシンに加え
ることによって、図14と同じようにステッチ幅が変化
した場合でも、引っ張り角度θP及び針穴通過角度θT
が一定値に維持される様子を模式的に示す図である。な
お、図16(A)は図14(A)と同じステッチ幅SW
1で同じステッチ方向−Yに刺繍枠82が移動する場合
を示し、図16(B)は図14(B)と同じステッチ幅
SW2で逆のステッチ方向+Yに刺繍枠82が移動する
場合を示す。図16(A)の場合には、布83から布押
え71までの高さH3とステッチ幅SW1(正確にはS
W1−r)とが等しくなるように針棒6のストロークの
上限値を制御し、図16(B)の場合には、布83から
布押え71までの高さH4とステッチ幅SW2(正確に
はSW2−r)とが等しくなるように針棒6のストロー
クの上限値を制御している。
【0137】従って、図16(A)の場合も図16
(B)の場合も、引っ張り角度θP3は約45度であ
り、ステッチ幅及びステッチ方向が変化した場合でも引
っ張り角度θPは一定値に維持されるので、データ作成
時のパラメータからステッチ幅の項を省略でき、最適張
力データ記憶部17のデータ作成が容易になる。また、
図16(A)のようにステッチ方向が−Yの場合には、
針穴通過角度θT3は約82度であり、図16(B)の
ようにステッチ方向が+Yの場合には、針穴通過角度θ
T4は約98度である。一方、図14(A)のようにス
テッチ方向が−Yの場合における針穴通過角度θTの最
大値は約68度であり、ステッチ方向が+Yの場合にお
ける針穴通過角度θTの最大値は112度である。
【0138】すなわち、図14のような従来の刺繍ミシ
ンの場合には、ステッチ方向が変化することによって針
穴通過角度θTの変化幅は±22度(68度から112
度)であるが、図16の本実施例のように布押え71の
針通過穴の半径を針61が通過するのに必要な最小値r
に設定することによって、針穴通過角度θTの変化幅は
±8度(約82度から約98度)と十分に小さくできる
ため、ステッチ方向の変化による張力データのばらつき
も小さく安定したものとなり、最適張力データ記憶部1
7のデータ作成が容易になるという副次的効果がある。
【0139】また、従来の刺繍ミシンでは、針棒6は図
13のサイン波形6Mのように釜91の2倍の周期で回
転運動するだけであったが、図15のように針棒6及び
布押え71を主軸モータとは別個に設けられた布押え用
モータ7で独立に駆動するように構成することによっ
て、針棒6のストローク運動を任意に変えることによっ
て、針61が布から抜け出ている時間を大きくすること
ができる。すなわち、布押え動作指令部は図13に示さ
れるように針棒6の下死点近傍と釜剣先の上死点近傍と
が一致するように釜91の回転位置すなわちアドレス変
換部からのアドレス信号ADに対応した所定位置に針棒
6を位置決め制御した後は、針棒6を急激に上昇させて
針61を布から抜き出し、その後は刺繍枠82の移動に
同期させて上下運動させ、そして再び針棒6の下死点近
傍と釜剣先の上死点近傍とが一致するように針棒6を位
置決め制御する。これによって、針61が布から抜け出
ている時間が長くなるので、刺繍枠82の移動量すなわ
ちステッチ幅を従来よりも十分に大きくすることができ
る。
【0140】なお、上述の実施例では、図6のような天
秤上死点張力信号tc,tgに基づいて糸調子を行う場
合について説明したが、釜下死点張力信号ta,tfや
針布刺点張力信号td,tiに基づいて糸調子の制御を
行ってもよい。この場合に、釜支え通過点張力信号t
b,tgは、上糸22が釜支えを通過する時に発生する
張力であり、刺繍縫合においては本来不要なものであ
る。従って、この釜支え通過点張力信号を除去するよう
な構成を釜91に適用してもよい。例えば、上糸22が
釜支えを通過する時点にボビンケースと釜支えとの間に
上糸が通過できるだけの間隙ができるようにするため
に、ボビンケースを釜回転方向と逆方向に微小量だけ回
転すればよい。
【0141】次に、本実施例で使用される回転位置セン
サの構成について説明する。図17は本実施例で使用す
る回転位置センサの詳細構成を示す図である。本実施例
では、主軸モータ4、上糸調子用モータ2及びサーボモ
ータ8X,8Yのそれぞれの回転軸にその回転位置を検
出するための回転位置センサ41、23、81X及び8
1Yが結合されている。回転位置センサは誘導型の位相
シフト型直線位置センサからなるアブソリュート型の回
転位置センサである。尚、この回転位置センサの詳細に
ついては特開昭57−70406号公報又は特開昭58
−106691号公報にて公知なので、ここでは簡単に
説明する。
【0142】この回転回転位置センサは、複数の極A〜
Dが円周方向に所定間隔(一例として90度)で設けら
れたステータ5aと、各極A〜Dによって囲まれたステ
ータ5aの空間内に挿入されたロータ5bとを備えてい
る。ロータ5bは、モータ等の回転軸に結合されてお
り、回転軸の角度に応じて各極A〜Dのリラクタンスを
変化させる形状及び材質からなり、一例として偏心円筒
形で構成されている。ステータ5aの各極A〜Dには、
1次コイル1a〜1d及び2次コイル2a〜2dがそれ
ぞれ巻き回されている。そして、半径方向で対向する2
つの極Aと極Cの第1の対及び極Bと極Dの第2の対は
差動的に動作するようにコイルが巻き回され、かつ差動
的なリラクタンス変化が生じるように構成されている。
【0143】第1の極の対A及びCに巻かれている1次
コイル1a及び1cは、正弦信号sinωtで励磁さ
れ、第2の極の対B及びDに巻かれている1次コイル1
b及び1cは余弦信号cosωtで励磁されている。そ
の結果、2次コイル2a〜2dからは、それらの合成出
力信号Yが得られる。この合成出力信号Yは、基準信号
となる1次交流信号(1次コイルの励磁信号)sinω
t又はcosωtに対して、ロータ5bの回転角度θに
応じた電気的位相角度だけ位相シフトした信号Y=si
n(ωt+φ)である。
【0144】なお、図17のような誘導型の位相シフト
型回転位置センサを用いる場合には、図1の位置変換部
13、1G、1P及び1Uは、1次交流信号sinωt
又はcosωtを発生する基準信号発生部と、合成出力
信号Yの電気的位相ずれφを測定しロータ5bの位置デ
ータを算出する位相差検出部とを備える必要がある。図
18はその位置変換部の詳細構成を示す図である。
【0145】基準信号発生部はクロック発振器9A、同
期カウンタ9B、ROM93a,93b、D/A変換器
94a,94b及びアンプ95a,95bからなり、位
相差検出部はアンプ96、ゼロクロス回路97及びラッ
チ回路98からなる。クロック発振器9Aは高速の正確
なクロック信号を発生するものであり、このクロック信
号に基づいて他の回路は動作する。同期カウンタ9Bは
クロック発振器9Aのクロック信号をカウントし、その
カウント値をアドレス信号としてROM93a及びラッ
チ回路98に出力する。
【0146】ROM93a及び93bは基準交流信号に
対応した振幅データを記憶しており、同期カウンタ9B
からのアドレス信号(カウント値)に応じて基準交流信
号の振幅データを発生する。ROM93aはsinωt
の振幅データを、ROM93bはcosωtの振幅デー
タを記憶している。従って、ROM93a及び93bは
同期カウンタ9Bから同じアドレス信号を入力すること
によって、2種類の基準交流信号sinωt及びcos
ωtを出力する。なお、同じ振幅データのROMを位相
のそれぞれ異なるアドレス信号で読み出しても同様に2
種類の基準交流信号を得ることもできる。
【0147】D/A変換器94a及び94bはROM9
3a及び93bからのデジタルの振幅データをアナログ
信号に変換してアンプ95a及び95bに出力する。ア
ンプ95a及び95bはD/A変換器からのアナログ信
号を増幅し、それを基準交流信号sinωt及びcos
ωtとして1次コイル1a,1c及び1b,1dのそれ
ぞれに印加される。同期カウンタ9Bの分周数をMとす
ると、そのMカウント分が基準交流信号の最大位相角2
πラジアン(360度)に相当する。すなわち、同期カ
ウンタ9Bの1カウント値は2π/Mラジアンの位相角
を示している。
【0148】アンプ96は2次コイル2a〜2dに誘起
された2次電圧の合成値Y=Ksin(ωt+φ)を増
幅して、ゼロクロス回路97に出力する。ゼロクロス回
路97は回転位置検出手段5の2次コイル2a〜2dに
誘起された相互誘導電圧(2次電圧)に基づいて負電圧
から正電圧へのゼロクロス点を検出し、検出信号をラッ
チ回路98に出力する。
【0149】ラッチ回路98は基準交流信号の立上りの
クロック信号にてスタートした同期カウンタのカウント
値をゼロクロス回路97の検出信号の出力時点(ゼロク
ロス点)でラッチする。従って、ラッチ回路98にラッ
チされた値はちょうど基準交流信号と相互誘導電圧(合
成2次出力)との間の位相差(位相ずれ量)MP(T
P,XP,YP)となる。
【0150】すなわち、2次コイル2a〜2dの合成出
力信号Y=sin(ωt+φ)は、ゼロクロス回路97
に与えられる。ゼロクロス回路97は合成出力信号Yの
電気位相角がゼロのタイミングに同期してパルスLをラ
ッチ回路98に出力する。パルスLはラッチ回路98の
ラッチパルスとして使用される。従って、ラッチ回路9
8がパルスLの立ち上がり応じて同期カウンタ9Bのカ
ウント値をラッチする。同期カウンタ9Bのカウント値
が一巡する期間と正弦波信号sinωtの1周期とを同
期させる。すると、ラッチ回路98には基準交流信号s
inωtと合成出力信号Y=sin(ωt+φ)との位
相差φに対応するカウント値がラッチされることとな
る。従って、ラッチされた値がデジタルの位置データM
P(TP,XP,YP)として出力される。尚、ラッチ
パルスLはタイミングパルスとして適宜利用してもよ
い。
【0151】図17のような位相シフト型回転位置セン
サの合成出力信号Y=sin(ωt+φ)は絶対的な位
相差信号として出力されているので、ノイズの影響を受
けにくいという特徴を有する。また、図17の回転回転
位置センサは、一回転の範囲をアブソリュートに検出す
るものであるが、このようなアブソリュートセンサを複
数個組み合わせることによって多回転にわたってアブソ
リュート位置を検出することができる。
【0152】なお、上述の実施例では、天秤51、針棒
6及び釜91を1つの主軸モータ4で駆動するタイプの
刺繍ミシンにおける針棒6と刺繍枠82の動作の同期を
とる場合について説明したが、これに限らず、次のよう
なタイプの刺繍ミシンについても上述の同期制御方式を
適用することによって、各駆動機構間の同期をとること
ができる。以下、本発明の刺繍ミシンの同期制御方式で
制御可能な刺繍ミシンの概略構成について説明する。
【0153】図19は、天秤と針棒を主軸モータで駆動
し、釜をこれとは別の釜用モータで駆動するように構成
された刺繍ミシンの概略構成を示す図である。図19に
おいて図2と同じ構成のものには同一の符号が付してあ
るので、その説明は省略する。図19の刺繍ミシンが図
2と異なる点は、釜用モータ9を新たに設けて、釜91
をこの釜用モータ9で駆動し、天秤51と針棒6の両方
を主軸モータ4で駆動するようにした点である。釜用モ
ータ9には、その回転位置をアブソリュートに検出する
ための回転位置センサ93が設けられている。図19の
刺繍ミシンを図1のミシン制御手段1で制御する場合に
は、ミシン制御手段1内に釜用モータ9の回転を制御す
る釜動作指令部を新たに設け、主軸動作指令部11を釜
動作指令部の動作に同期させるようにすればよい。
【0154】図20は、天秤を天秤用モータで、針棒を
主軸モータで、釜を釜用モータでそれぞれ独立に駆動す
るように構成された刺繍ミシンの概略構成を示す図であ
る。図20において図2と同じ構成のものには同一の符
号が付してあるので、その説明は省略する。図20の刺
繍ミシンが図2と異なる点は、天秤用モータ5と釜用モ
ータ9を新たに設けて、天秤51を天秤用モータ5で駆
動し、釜91を釜用モータ9で駆動し、針棒6を主軸モ
ータ4で駆動するようにした点である。釜用モータ9及
び天秤用モータ5には、その回転位置をアブソリュート
に検出するための回転位置センサ54,93がそれぞれ
設けられている。
【0155】図20の刺繍ミシンを図1のミシン制御手
段1で制御する場合には、ミシン制御手段1内に天秤用
モータ5の回転を制御する天秤動作指令部と釜用モータ
9の回転を制御する釜動作指令部とを新たに設け、主軸
動作指令部11を釜動作指令部の動作に同期させ、天秤
動作指令部を主軸動作指令部11の動作に同期させれば
よい。図20のように刺繍ミシンを構成することによっ
て、図16のようにステッチ幅に応じて針棒6の高さを
主軸モータ4で適宜制御することができるようになる。
【0156】図21は、天秤を天秤用モータで、針棒を
針棒用モータで、釜を釜用モータで、布押えを布押え用
モータでそれぞれ独立に駆動するように構成し、さらに
上糸の送り量を制御する手段を新たに設けた刺繍ミシン
の概略構成を示す図である。図21において図20と同
じ構成のものには同一の符号が付してあるので、その説
明は省略する。図21の刺繍ミシンが図20と異なる点
は、図20の主軸モータ4によって駆動されていた針棒
6及び布押え71が針棒用モータ62と布押え用モータ
7で別々に駆動されるように構成されている点である。
【0157】さらに、図21の刺繍ミシンには、上糸調
子手段21の上部に上糸22の送り量を制御するための
上糸送り手段25と、この上糸送り手段25を駆動する
上糸送り用モータ24と、上糸22の引き上げ量を制御
するために第2天秤52Aと、この第2天秤52Aを駆
動する第2天秤用モータ52Dが新たに設けられてい
る。なお、上糸送り用モータ24、第2天秤用モータ5
2D、針棒用モータ62及び布押え用モータ7には、そ
の回転位置をアブソリュートに検出するための回転位置
センサ26、52E、63及び72がそれぞれ設けられ
ている。
【0158】上糸送り手段25は、例えば上糸22の巻
き回されたプーリーで構成されており、このプーリーが
回転することによってその回転量に応じた長さの上糸2
2が送り出されるようになっている。従って、このプー
リーの回転位置を上糸送り用モータ24で制御すること
によって、上糸22の送り量を刺繍枠82の移動量に応
じて適宜制御することができる。また、上糸送り用モー
タ24にブレーキ手段を設けることによって上糸22の
送りを停止することも可能である。
【0159】第2天秤52Aは、糸案内52Bが軸52
Cを中心に回転するアーム上に設けられており、このア
ームの回転量に応じて上糸22の引き上げ量を適宜制御
できるようになっている。すなわち、アームが左回転
し、糸案内52Bが下側に移動すると上糸22の引き上
げ量は増加し、逆にアームが右回転し、糸案内52Bか
上側に移動すると上糸22の引き上げ量は減少する。こ
のように、アームの回転位置を適宜制御することによっ
て上糸の引き上げ量を制御することができると共に天秤
51が上糸22を引き上げる際(天秤上死点付近)に発
生するテンションの発生タイミングを適宜制御すること
もできる。
【0160】例えば、刺繍枠82の移動量が一定の場合
に、アームが左回転し、糸案内52Bが下側に移動する
と上糸22の引き上げ量は増加するので、早い時期にテ
ンションが発生し、逆にアームが右回転し、糸案内52
Bか上側に移動すると上糸22の引き上げ量は減少する
ので、遅い時期にテンションが発生する。従って、刺繍
枠82の移動量に応じて第2天秤52Aの回転位置を制
御することによって、常に同じタイミング(天秤上死点
付近)でテンションを発生することが可能となる。
【0161】図21の刺繍ミシンを制御するミシン制御
手段1には、天秤用モータ5の回転を制御する天秤動作
指令部と、第2天秤用モータ52Dの回転量を制御する
第2天秤動作指令部と、上糸送り用モータ24の回転量
を制御する上糸送り動作指令部と、布押え用モータの回
転を制御する布押え動作指令部と、釜用モータ9の回転
を制御する釜動作指令部とが新たに設けられる。なお、
針棒用モータ62の回転を制御するのは、図1と同じ主
軸動作指令部11である。
【0162】針棒動作指令部は釜動作指令部に同期して
針棒6を駆動制御する。これは、釜の剣先が針16の針
穴から出ている上糸22を確実に引っかけるためであ
る。また、天秤動作指令部は釜動作指令部及び針棒動作
指令部に同期して天秤51を駆動制御する。これは、釜
91によって上糸22が下死点に達した時点で上糸22
を引き上げるためである。布押え動作指令部は枠動作指
令部1Kに同期して布押え71の高さを駆動制御する。
これは、布押え動作指令部が枠動作指令部1Kによって
駆動制御される刺繍枠82の移動量に応じて布押え71
の高さを可変制御するためである。上糸送り動作指令部
は枠動作指令部1Kに同期して上糸22の送り量を制御
し、第2天秤動作指令部も枠動作指令部1Kに同期して
上糸22の引き上げ量を制御する。これは、刺繍枠82
の移動量に応じて上糸の引き上げ量及びテンションの発
生時点等を適宜制御するためである。
【0163】なお、本発明は単針刺繍機(ミシン)、多
頭刺繍機(ミシン)及びシャトル刺繍機に適用できるこ
とはいうまでもない。また、上述の実施例では、張力補
正部1Cが速度変動率εに応じて最適張力データ記憶部
17の張力データMT又は基準データ記憶部19の基準
張力データBTを補正する場合について説明したが、こ
れに限らず、張力検出手段3の張力信号TSを補正して
も、張力偏差算出部1Aの張力偏差データΔTを補正し
てもよい。上述の実施例では、最適張力データ記憶部1
7として図3のような張力データを予め記憶したメモリ
を使用する場合について説明したが、刺繍速度、ステッ
チ幅、ステッチ方向及びステッチ角度を演算処理して張
力データMTを出力してもよい。
【0164】上述の実施例では、糸調子データ記憶部1
Dは上糸調子用モータ2の位置データ(糸調子データ)
を各ステッチ毎に記憶する場合について説明したが、最
適張力データ記憶部17と同じように刺繍速度、ステッ
チ幅、ステッチ方向及びステッチ角度をパラメータとし
た張力データを記憶しておき、主軸動作指令部の指令速
度信号VM及び枠動作指令部1Kの位置指令信号P0
X,P0Yに応じた適当な張力データを読み出すように
してもよい。
【0165】なお、上述の実施例では針棒6の高さを主
軸モータ4に設けられている回転位置センサ41や針棒
用モータ62に設けられている回転位置センサ63によ
って検出する場合について説明したが、刺繍ミシンが単
針刺繍ミシンの場合にはこれで問題はないが、多頭刺繍
ミシンの場合には次のような問題がある。すなわち、多
頭刺繍ミシンの場合には1つの主軸モータ4や針棒用モ
ータ62で6〜12本の針棒を同時に駆動しなければな
らないため、駆動力伝達系の剛性や機構等によって、全
部の針棒が完璧に同じ高さでストローク運動を行うとは
限らず、主軸モータ4に最も近くに位置する針棒と、最
も遠くに位置する針棒とではストローク位置に違いが生
じる。
【0166】そこで、図27のような直線位置検出器を
針棒6に設けて、針棒6のストローク位置を直接検出す
るようにすればよい。図27は針棒6のストローク位置
を直接検出する直線位置検出器の詳細構成を示す図であ
る。直線位置検出器は誘導型の位相シフト型直線位置セ
ンサからなるアブソリュート型の位置検出器である。
【0167】この直線位置検出器は、図9の回転位置セ
ンサと同じ原理、すなわち位相シフト方式によって針棒
6の直線位置を検出するものであり、コイルアッセンブ
リ64と、針棒6の一部分に特殊加工の施された磁気目
盛り部6Sとから構成される。コイルアッセンブリ64
は、針棒6の軸方向に所定間隔をもって配置された4個
の1次コイル1a,1c,1b,1dと、これに対応し
て設けられた2次コイル2a,2c,2b,2dとから
なる。コイルアッセンブリ64は、その内部に形成され
る円筒空間が針棒6と同心となるようにシリンダブロッ
ク67内に固定されている。
【0168】針棒6は鉄等の磁性体で構成され、軸受け
68,69によって保持されている。この針棒6は、軸
方向に交互に設けられた所定幅のリング状の非磁性体部
66を外周上に有する。この磁性体部65と非磁性体部
66との繰り返しパターンによって針棒6の外周表面に
は磁気目盛り部6Sが形成される。この磁性体部65と
非磁性体部66とはコイルアッセンブリ64によって形
成された磁気回路に対して磁気抵抗の変化を与えるよう
な構成になっていればどのような材質のもので構成して
もよい。例えば、非磁性体部66を非磁性体又は空気等
で構成してもよい。また、鉄製の針棒6にレーザ焼き付
けを行うことにより、磁気的性質を変化させることによ
り、互いに透磁率の異なる磁性体部65と非磁性体部6
6とを交互に形成するようにしてもよい。
【0169】一例として一つのコイル長を「P/2」
(Pは任意の数)とすると、磁性体部65と非磁性体部
66の交互配列における1ピッチ分の間隔は「P」であ
る。その場合、例えば、磁性体部65と非磁性体部66
の長さは等しく「P/2」であってもよいし、また、必
ずしも等しくなくてもよい。本実施例において、コイル
アッセンブリ64は4つの相で動作するように構成され
いる。図面上では、これらの相に便宜上A,C,B,D
の符号が付されている。
【0170】針棒6とコイルアッセンブリ64との位置
関係は、針棒6の磁性体部65の位置に応じてコイルア
ッセンブリ64の各相A〜Dに生じるリラクタンスが9
0度ずつずれるようになっている。例えば、A相をコサ
イン(cos)相とすると、C相はマイナスコサイン
(−cos)相、B相はサイン(sin)相、D相はマ
イナスサイン(−sin)相となるように構成されてい
る。
【0171】図27の実施例では、各相A〜D毎に個別
に1次コイル1a,1c,1b,1d及び2次コイル2
a,2c,2b,2dがそれぞれ設けられている。各相
A〜Dの2次コイル2a,2c,2b,2dはそれぞれ
に対応する1次コイル1a,1c,1b,1dの外側に
巻かれている。
【0172】各1次コイル1a,1c,1b,1d及び
2次コイル2a,2c,2b,2dの長さは、前述のよ
うに「P/2」である。図27の例では、A相のコイル
1a,2aとC相のコイル1c,2cとが隣合って設け
られており、B相のコイル1b,2bとD相のコイル1
d,2dも隣合って設けられている。また、A相とB相
又はC相とD相のコイル間隔は「P(n±1/4)」
(nは任意の自然数)である。
【0173】この構成によって、針棒6が軸受け68,
69を滑ることによって、針棒6とコイルアッセンブリ
64との間の相対的な位置関係に直線変位が生じて、各
相A〜Dにおける磁気回路のリラクタンスが距離「P」
を一周期として周期的に変化し、しかもそのリラクタン
ス変化の位相が各相A〜D毎に90度ずつずれるように
することができる。従って、A相とC相とでは180度
ずれ、B相とD相とでも180度ずれる。
【0174】1次コイル1a,1c,1b,1d及び2
次コイル2a,2c,2b,2dの結線形式は図10に
示される回転位置センサと同じにする。図10におい
て、A相とC相の1次コイル1a及び1cは正弦信号s
inωtで互いに同相に励磁され、2次コイル2a及び
2cの出力は逆相で加算されるように結線されている。
同様に、B相とD相の1次コイル1b及び1dは余弦信
号cosωtで互いに同相に励磁され、2次コイル2b
及び2dの出力は逆相で加算されるように結線されてい
る。2次コイル2a,2c,2b,2dの出力は最終的
に加算され、出力信号Yとして図10の位置変換部に取
り込まれる。
【0175】この出力信号Yは、針棒6の磁性体部65
とコイルアッセンブリ64との間の相対的な直線位置に
応じた位相角φだけ基準交流信号(sinωt,cos
ωt)を位相シフトしたものとなる。その理由は、各相
A〜Dのリラクタンスが90度ずつずれており、かつ一
方の対(A,C)と他方の対(B,D)の励磁信号の電
気的位相が90度ずれているためである。従って、出力
信号YはY=Ksin(ωt+φ)となる。ここで、K
は定数である。
【0176】リラクタンス変化の位相φは磁性体部65
の直線位置に所定の比例係数(又は関数)に従って比例
しているので、出力信号Yにおける基準信号sinωt
(又はcosωt)からの位相ずれφを測定することに
より直線位置を検出することができる。但し、位相ずれ
量φが全角2πのとき、直線位置は前述の距離Pに相当
する。すなわち、出力信号Yにおける電気的位相ずれ量
φによれば、距離Pの範囲内でのアブソリュートな直線
位置が検出できるのである。この電気的位相ずれ量φを
測定することによって、距離Pの範囲内の直線位置を高
い分解能で精度よく割り出すことが可能となる。
【0177】なお、針棒6における磁気目盛り部6Sは
磁性体部65と非磁性体部66に限らず、磁気抵抗変化
を生ぜしめることのできるその他の材質を用いてもよ
い。例えば、銅等のように導電率の高い材質と鉄等のよ
うに導電率の低い材質(非導電体でもよい)との組合せ
(導電率の異なる材質)により磁気目盛り部6Sを形成
し、渦電流損に応じた磁気抵抗変化を生ぜしめるように
してもよい。その場合、鉄等の針棒6の表面に銅メッキ
等により良導電体のパターンを形成するようにしてもよ
い。パターンの形状等は磁気抵抗の変化を効率よく生ぜ
しめるものであれば、いかなる形状のものでもよい。な
お、針棒6の直線運動をラックアンドピニオンを用いて
回転運動に変換し、そのピニオンの回転位置を検出する
ようにしてもよい。この場合、ピニオンの回転位置を検
出する回転位置センサとして図9に示すような誘導型の
位相シフト型位置センサからなるアブソリュート型の位
置センサを用いる。
【0178】
【発明の効果】本発明の刺繍ミシンによれば、それぞれ
独立した駆動源によって駆動される複数の駆動機構を具
えた刺繍ミシンにおいて、刺繍速度に対応して変化する
各駆動機構間の位置偏差を除去し、各駆動機構間におけ
る位置関係を一定に保持することができるという優れた
効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の刺繍ミシンの同期制御方式を実行す
る図4の枠動作指令部の詳細構成を示す機能ブロック図
である。
【図2】 本発明の刺繍ミシンの同期制御方式によって
同期制御される刺繍ミシンの構成を模式的に示す図であ
る。
【図3】 図1の張力検出手段の詳細構成を示す図であ
る。
【図4】 図2の刺繍ミシン制御手段の詳細構成を示す
図である。
【図5】 図1の最適張力データ記憶部に記憶されてい
る張力データの内容の概念を示す図である。
【図6】 ステッチ幅、ステッチ方向及びステッチ角度
の3つのパラメータに応じて張力データを作成する場合
の各パラメータの内容を示す図である。
【図7】 予めパターン化された主軸モータの回転速度
とアドレス進角予習量との予習パターンを示す図であ
る。
【図8】 図7の予習パターンを作成するために用いる
刺繍枠の動作パターンを示す図である。
【図9】 図8の動作パターンで動作させた場合の主軸
モータの回転速度に対するアドレス偏差を示す図であ
る。
【図10】 図1の刺繍枠動作パターンデータ記憶手段
に記憶されているアドレス信号と刺繍枠位置とからなる
刺繍枠の動作パターンデータの内容を示す図である。
【図11】 図11の動作パターンデータを複数の直線
式で近似した刺繍枠の動作パターンを示す図である。
【図12】 図1の刺繍枠位置予測演算用係数テーブル
に記憶されているアドレス信号に対応した係数A及び係
数Bの内容を示す図である。
【図13】 釜と天秤と針棒との動作関係と、その時に
発生する張力信号との関係を示すモーションダイヤグラ
ム図である。
【図14】 ステッチ幅の大きさが変化することによっ
て引っ張り角度θP及び針穴通過角度θTが変化する様
子を模式的に示す図である。
【図15】 主軸モータとは別個に設けられた布押え用
モータで針棒及び布押えを独立に駆動するように構成さ
れた刺繍ミシンの概略構成を示す図である。
【図16】 図14と同じようにステッチ幅が変化した
場合でも、引っ張り角度θP及び針穴通過角度θTが一
定値に維持される様子を模式的に示す図である。
【図17】 図4の回転位置センサの詳細構成を示す図
である。
【図18】 図4の位置変換部の詳細構成を示す図であ
る。
【図19】 天秤と針棒を主軸モータで駆動し、釜をこ
れとは別の釜用モータで駆動するように構成された刺繍
ミシンの概略構成を示す図である。
【図20】 天秤を天秤用モータで、針棒を主軸モータ
で、釜を釜用モータでそれぞれ独立に駆動するように構
成された刺繍ミシンの概略構成を示す図である。
【図21】天秤を天秤用モータで、針棒を針棒用モータ
で、釜を釜用モータで、布押えを布押え用モータでそれ
ぞれ独立に駆動するように構成し、さらに上糸の送り量
を制御する手段を新たに設けた刺繍ミシンの概略構成を
示す図である。
【図22】 従来の刺繍ミシンの全体構成を示す図であ
る。
【図23】 釜と天秤と針棒と刺繍枠との各動作関係を
示すモーションダイヤグラム図である。
【図24】 針棒と刺繍枠との動作関係を示す図であ
る。
【図25】 図24よりも主軸の回転速度が大きい場合
における針棒と刺繍枠との動作関係を示す図である。
【図26】 図24及び図25よりも主軸の回転速度が
大きい場合における針棒と刺繍枠との動作関係を示す図
である。
【図27】 針棒のストローク位置を直接検出する直線
位置検出器の詳細構成を示す図である。
【符号の説明】
1…ミシン制御手段、11…主軸動作指令部、12,1
F,1N,1T…電流アンプ、13,1G,1P,1U
…位置変換部、14,1Q,1V…速度演算部、15…
アドレス変換部、16…張力データ選択読出部、17…
最適張力データ記憶部、18…選択回路、19…基準デ
ータ記憶部、1A…張力偏差算出部、1B…速度変動演
算部、1C…張力補正部、1D…糸調子データ記憶部、
1E…糸調子制御部、1K…枠動作指令部、K1…速度
演算手段、K2…同期状態監視手段、K3…予習パター
ン記憶手段、K4…学習制御手段、K5…回転位置予測
演算手段、K6…刺繍枠動作パターンデータ記憶手段、
K7…刺繍枠位置予測演算用係数テーブル、K8…刺繍
枠位置予測演算手段、1L,1R…位置制御部、1M,
1S…速度制御部、2…上糸調子用モータ、21…上糸
調子手段、22…上糸、23,26,41,52E,5
4,63,72,81X,81Y,93…回転位置セン
サ、25…上糸送り手段、3…張力検出手段、4…主軸
モータ、5…天秤用モータ、52A…第2天秤、52,
52B,53,54,55…糸案内、52D…第2天秤
用モータ、56…接触部材、57…片持ちレバー、58
A,58B…検出用コイル、59,52C…回転軸、6
…針棒、61…針、7…布押え用モータ、71…布押
え、8…枠駆動手段、8X,8Y…サーボモータ、82
…刺繍枠、83…布、84…針板、91…釜、92…下
糸、5a…スタータ、5b…ロータ、1a,1b,1
c,1d…1次コイル、2a,2b,2c,2d…2次
コイル、9A…クロック発振器、9B…同期カウンタ、
93a,93b…ROM、94a,94b…D/A変換
器、95a,95b,96…アンプ、97…ゼロクロス
回路、98…ラッチ回路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 押柄 直正 大阪府茨木市真砂1−1−32 ファミール 古川302号 (72)発明者 藤浦 充弘 愛知県碧南市鶴見町3丁目139番地 (72)発明者 上西 浩嗣 愛知県高浜市向山町1丁目9番地10

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の駆動機構からなるミシンの各駆動
    機構の動作を同期させて縫い動作を行うミシンの同期制
    御方式において、 これら複数の駆動機構の中の少なくとも1つを駆動させ
    る第1の駆動手段と、 この第1の駆動手段によって駆動される駆動機構以外の
    駆動機構の少なくとも1つを、前記第1の駆動手段によ
    って駆動される前記駆動機構の中の少なくとも1つの駆
    動機構の動作に同期させて駆動する第2の駆動手段と、 前記第1の駆動手段によって駆動される前記駆動機構の
    動作位置を検出する第1の位置検出手段と、 前記第2の駆動手段によって駆動される前記駆動機構の
    動作位置を検出する第2の位置検出手段と、 指令位置と前記第2の位置検出手段からの前記動作位置
    とに基づいて前記第2の駆動手段を制御する駆動制御手
    段と、 前記第1の駆動手段によって駆動される前記駆動機構の
    動作速度に応じた補正偏差量を発生するとともに、前記
    第1の位置検出手段によって検出された前記動作位置に
    対応した所定の位置を前記第2の駆動手段によって駆動
    される前記駆動機構の指令動作位置として発生し、この
    指令動作位置を前記補正偏差量によって補正したものを
    前記指令位置として前記駆動制御手段に供給する指令位
    置生成手段とから構成されるミシンの同期制御方式。
  2. 【請求項2】 前記指令位置生成手段は前記指令動作位
    置と前記第2の位置検出手段からの前記動作位置との間
    の偏差に基づいて復習補正偏差量を求め、前記指令動作
    位置を前記補正偏差量及び前記復習補正偏差量に基づい
    て補正したものを前記指令位置として前記駆動制御手段
    に供給することを特徴とする請求項1に記載のミシンの
    同期制御方式。
  3. 【請求項3】 前記指令位置生成手段は前記第1の駆動
    手段によって駆動される前記駆動機構の動作速度を前記
    第1の位置検出手段からの動作位置に基づいて算出する
    ことを特徴する請求項1に記載のミシンの同期制御方
    式。
  4. 【請求項4】 前記第1の駆動手段は機械的に連結され
    た釜機構、針棒機構及び天秤機構を同時に駆動し、前記
    第2の駆動手段は刺繍枠機構を駆動することを特徴する
    請求項1に記載のミシンの同期制御方式。
  5. 【請求項5】 前記第1及び第2の駆動手段は釜機構、
    針棒機構及び天秤機構を駆動することを特徴する請求項
    1に記載のミシンの同期制御方式。
  6. 【請求項6】 前記第1の駆動手段は前記釜機構を駆動
    し、前記第2の駆動手段は前記針棒機構及び前記天秤機
    構の少なくとも1つを駆動することを特徴する請求項5
    に記載のミシンの同期制御方式。
  7. 【請求項7】 前記第1及び第2の駆動手段は回転動力
    源で構成されていることを特徴する請求項1、3、4、
    5及び6に記載のミシンの同期制御方式。
  8. 【請求項8】 第1の位置検出手段は前記第1の駆動手
    段の回転位置を検出することによって前記駆動機構の動
    作位置を検出し、前記第2の位置検出手段は前記第2の
    駆動手段の回転位置を検出することによって前記駆動機
    構の動作位置を検出することを特徴する請求項1に記載
    のミシンの同期制御方式。
  9. 【請求項9】 前記第1及び第2の位置検出手段は、前
    記回転駆動力源の回転位置を絶対位置にて検出するアブ
    ソリュート型の位置センサであり、巻線部と、この巻線
    部に対して相対的に変位し、前記巻線部における磁気抵
    抗変化をその相対位置に応じて変化させる部材とを有
    し、前記巻線部の位相のずれた複数の1次交流信号によ
    って励磁し、モータの絶対位置に対応する電気的位相ず
    れを持つ出力交流信号を発生する位相シフト型位置セン
    サで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の
    ミシンの同期制御方式。
  10. 【請求項10】 前記第1の駆動手段は前記釜機構を駆
    動し、前記第2の駆動手段は前記針棒機構及び前記天秤
    機構の少なくとも1つを駆動し、前記第2の位置検出手
    段は前記針棒機構の動作位置を直接検出することを特徴
    とする請求項6に記載のミシンの同期制御方式。
  11. 【請求項11】 前記第2の位置検出手段は、 所定の交流信号により励磁される1次コイルを少なくと
    も有するコイル部と、 前記針棒を構成する針棒ロッドの移動に伴って前記コイ
    ル部の磁気回路における磁気抵抗が変化するように、こ
    の針棒ロッドの軸方向に沿って設けられた磁気目盛り部
    と、 この磁気目盛り部と前記コイル部との間の相対的位置関
    係によって生じる前記コイル部の磁気回路の磁気抵抗変
    化に基づき、前記針棒ロッドの位置を示すデータを前記
    コイル部から取り出す位置検出回路とを備えたものであ
    ることを特徴とする請求項10に記載のミシンの同期制
    御方式。
  12. 【請求項12】 前記コイル部が、複数の1次コイル及
    び2次コイルを有するものであり、 前記位置検出回路が、位相のずれた複数の基準交流信号
    によって前記各1次コイルを個別に励磁する回路と、前
    記各1次コイルに対応する2次コイルの出力を合計し
    て、前記針棒ロッドの相対的直線位置に従って前記基準
    交流信号を位相シフトした出力信号を発生する出力回路
    と、前記基準交流信号の所定の1つと前記出力回路から
    の出力信号との位相差を検出し、検出した位相差データ
    を前記針棒ロッドの位置データとして出力する回路とを
    有するものであることを特徴とする請求項11に記載の
    ミシンの同期制御方式。
  13. 【請求項13】 前記第2の位置検出手段は、前記針棒
    ロッドに設けられたラックと、このラックに接触して回
    転するピニオンと、このピニオンの回転位置を検出する
    回転位置検出手段とで構成されていることを特徴する請
    求項10に記載のミシンの同期制御方式。
JP17203993A 1993-06-21 1993-06-21 ミシンの同期制御方式 Pending JPH07657A (ja)

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Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5660129A (en) * 1995-02-09 1997-08-26 Brother Kogyo Kabushiki Kaisha Sewing machine
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CN104499215A (zh) * 2015-01-14 2015-04-08 李红女 立线绣、平绣二合一机绣工艺及其绣花机
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EP3045578A4 (en) * 2013-09-09 2017-07-12 NSD Corporation Sewing machine
JP2019063130A (ja) * 2017-09-29 2019-04-25 ブラザー工業株式会社 ミシンとミシンの制御方法

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