JPH076064Y2 - 農用トラクタにおけるステアリング装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、フロントアクスルに設けた左右のナックルア
ームを左右のタイロッドを介してピットマンアームに連
結し、ハンドル操舵によりピットマンアームが回動して
機体を旋回させるようにした農用トラクタにおけるステ
アリング装置に係るものである。

〔従来の技術〕

従来、フロントアクスルの左右にナックルアームを設
け、該ナックルアームをハンドル操舵によって回動する
ピットマンアームに左右一対のタイロッドで接続したス
テアリング装置には、タイロッドの左右外側方を下り勾
配、或いは上り勾配とし旋回操舵時に外側前輪を押し下
げて旋回半径が小さくなるようにしたものが知られてい
る。

〔本考案が解決しようとする問題点〕

ところで、上記のようなステアリング装置では、旋回半
径の大きな通常の旋回時でも、タイロッドが常に外側の
前輪を下方に押し下げようとするため、旋回する度に前
輪による跡が地表面に大きく残って、圃場面が汚なくな
る許りでなく、外側車輪がぬかるみに入った時等には、
抜け出そうとする外側前輪が増々深くぬかるみにはまり
込むという欠点がある。

本考案は上記の如き欠点を解決すべく、小さな半径で旋
回するときにのみ旋回外側の前輪が下方に押し下げられ
るようにして、通常の旋回時には前輪の跡を大きく残す
ことなく圃場面を綺麗に保つことができるうえ、外側車
輪がぬかるみにはまった時等でも容易に脱出することが
できる農用トラクタにおけるステアリング装置を提供す
ることを目的としたものである。

〔問題点を解決するための手段〕

上記の問題点を解決するため本考案が講じた技術的手段
は、上下にスイングするフロントアクスルの左右にナッ
クルアームを設け、該ナックルアームをハンドル操舵に
よって回動するピットマンアームに左右一対のタイロッ
ドで接続した農用トラクタにおいて、上記一対のタイロ
ッドをフロントアクスルのスイング中心を挾んで上下に
離間させて設けると共に、ハンドル操舵のストロークエ
ンドでナックルアームが当接するストッパーを、スイン
グ中心の下方に離間させたタイロッドで接続されたナッ
クルアーム側にのみ設けて、上記ストッパーにナックル
アームが当接すると、該ナックルアームに接続された上
記タイロッドに作用するハンドル操舵の余剰推力が、フ
ロントアクスルをスイングさせて旋回外側を下方に押し
下げるべく構成したことを特徴とするものである。

〔考案の作用〕

したがって本考案によれば、ステアリングハンドルの操
作によって、ピットマンアームが回動すると、ピットマ
ンアームに左右一対のタイロッドで接続されたナックル
アームが回動して機体を旋回させる。このとき左右一対
のタイロッドはフロントアクスルのスイング中心を挾ん
で上下に離間しているので、一方のタイロッドが押され
てフロントアクスルをスイングさせようとする力と、他
方のタイロッドが引かれてフロントアクスルをスイング
させようとする力とが互に打消し合うことになり、前輪
の一方のみが下方に押し下げられて地表面に大きな跡を
残すことはない。そしてハンドルを大きく操舵して小さ
な半径で旋回する際には、ストロークエンドにおいて、
スイング中心の下方に離間したタイロッドで接続される
ナックルアームのみがストッパーに当接すると、このナ
ックルアームに接続されているタイロッドには、ハンド
ル操舵の余剰推力により、スイング中心の上方に離間し
た他方のタイロッドより大きな押し引きする力が作用し
て、フロントアクスルの旋回外側を押し下げようとする
ので、小さな半径で円滑に旋回することができる。

〔実施例〕

次に本考案の実施例を添付した図面に基いて詳述する。
１はハンドル、２はステアリングコラム、３はステアリ
ングシャフトであって、クラッチハウジング４の前部に
装着したエンジン５の下部両側にはシャーシ６を前方に
向けて突設してあり、該シャーシ６のフロントアクスル
７より前部にはステアリングギヤボックス８を後部が一
側に偏位するように傾斜させてブラケット9,9を介して
取付け、その後端の入力軸はユニバーサルジョイント1
0,11,12,13,および伝動軸14,15,16,17を介して前記ステ
アリングシャフト３に連動連結されている。

前記フロントアクスル７は、その中間部から前後に突設
したピボット軸18,18をシャーシ６の中間位置で軸受メ
タル19,19に支承して、スイング中心20のまわりにスイ
ング可能となっている。またフロントアクスル７の左右
両端に設けたキングピンケース21,22には、ナックルア
ーム23,24を有するフロントアクスルケース25,26をキン
グピンにより回動可能に装着し、該フロントアクスルケ
ース25,26に前輪タイヤ27,28が軸支されている。

また前記ステアリングギヤボックス８にはピボット軸18
の前方にセクターシャフト29を垂下させ、該セクターシ
ャフト29に螺着したピットマンアーム30を後部が拡開し
た二又状に形成し、前方からみて左側の分岐アーム30a
は下方へ折曲し、右側の分岐アーム30bは上方へ折曲し
てある。そしてナックルアーム23,24と上記ピットマン
アーム30とを接続する左右一対のタイロッド31,32は、
左側のナックルアーム23に連結したタイロッド31を右側
の分岐アーム30bに接続し、右側のナックルアーム24に
連結したタイロッド32を左側の分岐アーム30aに連結し
て、左右のタイロッド31,32が前記スイング中心20を挾
んで上下に離間した状態となっている。そして、スイン
グ中心20の下方に離間させたタイロッド32で接続される
ナックルアーム24側のキングピンケース22、すなわち前
方からみて右側のキングピンケース22にのみ、ハンドル
１を進行方向の左へ旋回操舵したときにストロークエン
ドでナックルアーム24が当接して操舵限界となるストッ
パ33と、右へ旋回操舵したときに操舵限界となるスッパ
34を設けて、ナックルアーム24がストッパ33,34のいず
れかに当接したときには、ナックルアーム24に接続され
たスイング中心20の下方に離間するタイロッド32に、ハ
ンドル操舵の余剰推力によって、スイング中心20の上方
に離間した他方のタイロッド31より大きな押し引きする
力が作用して、フロントアクスル７をスイングさせ、旋
回外側を押し下げるようになっている。

上記の如き構成において、ハンドル１を操舵すればピッ
トマンアーム30が回動し、左右一対のタイロッド31,32
がナックルアーム23,24を押し引きして機体を旋回させ
るが、いま左旋回する場合には、第３図に示すようにタ
イロッド31にはＡ方向に引く力が作用してフロントアク
スル７をスイング中心20のまわりに回動させる矢印Ｆ方
向の力が作用するが、一方タイロッド32にはＢ方向に押
す力が作用してフロントアクスル７を矢印Ｅ方向に回動
させようとするので、この力が互に打消し合ってフロン
トアクスル７が回動することはない。また右旋回の場合
も、同様に作用するので、通常の旋回時には一方の前輪
のみが下方に押し下げられて地表面に大きな跡を残した
り、ぬかるみから抜け出そうとするときに前輪が増々深
くはまり込むようなことはない。

そして小半径で旋回するため、左に大きくハンドル１を
操舵すると、ストロークエンドでナックルアーム24がス
トッパー33に当接する、するとナックルアーム24に接続
されているスイング中心20の下方に離間したタイロッド
32に作用するＢ方向への押す力の方が、ハンドル１を操
作する余剰推力によってスイング中心20の上方に離間し
たタイロッド31に作用するＡ方向の引く力より大きくな
り、フロントアクスル７全体をスイング中心20に対し矢
印Ｅ方向にスイングさせようとして旋回外側の前輪タイ
ヤ27を押し下げることになる。また右旋回の場合には、
ナックルアーム24がストッパー34に当接し、タイロッド
32に作用するＤ方向への引く力の方が、タイロッド31に
作用するＣ方向の押す力より強くなるので、フロントア
クスル７を矢印Ｆ方向にスイングさせようとして旋回外
側の前輪タイヤ28を押し下げる。

したがって、小半径で旋回するときにのみ旋回外側の前
輪が地表面に押圧されて円滑に旋回することができる。

〔考案の効果〕

これを要するに本考案は、上下にスイングするフロント
アクスルの左右にナックルアームを設け、該ナックルア
ームをハンドル操舵によって回動するピットマンアーム
に左右一対のタイロッドを接続した農用トラクタにおい
て、上記一対のタイロッドをフロントアクスルのスイン
グ中心を挾んで上下に離間させて設けると共に、ハンド
ル操舵のストロークエンドでナックルアームが当接する
ストッパーを、スイング中心の下方に離間させたタイロ
ッドで接続されたナックルアーム側にのみ設けて、上記
ストッパーにナックルアームが当接すると、該ナックル
アームに接続された上記タイロッドに作用するハンドル
操舵の余剰推力が、フロントアクスルをスイングさせて
旋回外側を下方に押し下げるべく構成したから、通常の
旋回時には、フロントアクスルのスイング中心を挾んで
上下に離間したタイロッドに、フロントアクスルをスイ
ングさせようとする力が作用しても、これらの力が互に
打消し合うので一方の前輪のみが下方に押し下げられて
地表面に大きな跡を残すことはなく、常に圃場面を綺麗
に保ことができるうえ、ぬかるみから抜け出そうとして
増々前輪がはまり込むようなことはない。そして小半径
で旋回する際には、ストロークエンドで、スイング中心
の下方に離間させたタイロッドで接続されるナックルア
ームのみがストッパーに当接するため、このナックルア
ームに接続されているタイロッドには、スイング中心の
上方に離間した他方のタイロッドよりも大きな押し引き
する力が作用してフロントアクスルをスイングさせるの
で、旋回外側の前輪を下方に押し下げて、円滑に旋回す
ることができるものである。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案に係る農用トラクタにおけるステアリング
装置の実施例を示すものであって、第１図は平面図、第
２図は側面図、第３図は作用を示す正面図である。 図中、１……ハンドル、７……フロントアクスル、20…
…スイング中心、23,24……ナックルアーム、30……ピ
ットマンアーム、31,32……タイロッド、33,34……スト
ッパーである。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】上下にスイングするフロントアクスルの左
   右にナックルアームを設け、該ナックルアームをハンド
   ル操舵によって回動するピットマンアームに左右一対の
   タイロッドで接続した農用トラクタにおいて、上記一対
   のタイロッドをフロントアクスルのスイング中心を挾ん
   で上下に離間させて設けると共に、ハンドル操舵のスト
   ロークエンドでナックルアームが当接するストッパー
   を、スイング中心の下方に離間させたタイロッドで接続
   されたナックルアーム側にのみ設けて、上記ストッパー
   にナックルアームが当接すると、該ナックルアームに接
   続された上記タイロッドに作用するハンドル操舵の余剰
   推力が、フロントアクスルをスイングさせて旋回外側を
   下方に押し下げるべく構成したことを特徴とする農用ト
   ラクタにおけるステアリング装置。