JPH0756080B2 - 塗料密着性に優れた有機高分子複合メツキ金属材の製造方法 - Google Patents

塗料密着性に優れた有機高分子複合メツキ金属材の製造方法

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JPH0756080B2
JPH0756080B2 JP60105673A JP10567385A JPH0756080B2 JP H0756080 B2 JPH0756080 B2 JP H0756080B2 JP 60105673 A JP60105673 A JP 60105673A JP 10567385 A JP10567385 A JP 10567385A JP H0756080 B2 JPH0756080 B2 JP H0756080B2
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は塗料密着性、耐食性、プレス加工性および溶接
性に優れる電気メツキ皮膜を形成させた有機高分子複合
メツキ金属材の製造方法に関するものである。詳しく
は、塗装する際において従来のようにリン酸塩処理やク
ロメート処理などの塗装下地処理を全く必要としない点
に大きな特徴を有する有機高分子複合電気メツキ金属材
の製造方法に関するものである。
〔従来の技術〕
従来、金属表面、特に鋼板表面に耐食性を付与するため
亜鉛や亜鉛合金キ等の金属メツキが広く行なわれてい
る。これらのメツキ金属材は、耐食性の増加及び装飾性
付与等の目的のため、メツキの上に塗装して使用される
ことが多い。ところが亜鉛及び亜鉛合金メツキ等の金属
メツキ表面は塗料密着性が悪い場合があるため、塗装に
先立つてリン酸塩処理やクロメート処理などの塗装下地
処理が施されるのが普通である。しかるに近年リン酸塩
処理やクロメート処理などの化成処理は、工程の長さ
(6〜9ステツプ)や浴管理の煩雑さから、工程の短
縮、簡素化が望まれている。特にユーザーにおいては、
省力化、あるいはスラツジ処理や廃液処理などの公害防
止上の制約から上記の如き自家処理(化成処理)を回避
すること、あるいは塗装下地処理を必要としない表面処
理鋼板の開発が強く要望されている。
これらの問題を解決するため、これまで各種の方法が試
みられている。化成処理を必要としない表面処理鋼板の
試みの中で有機化合物を利用する方法としては、例え
ば、極性有機化合物を塗布する方法や有機複合シリケー
トなどの樹脂を塗布、乾燥する方法、あるいはメツキ液
中に水不溶性樹脂を分散して複合共析させる分散メツキ
方法なども既に提案されている(米国特許第3434942号
及び同第3461044号)。しかしいずれの方法にも一長一
短があつてユーザーの要求を充分満たすまでには至つて
いない。
例えば最後にあげた水不溶性樹脂分散メツキ法は注目す
べき技術であるが、工業化を考慮した場合、次のような
多くの欠点があつた。まず、工程上の問題点としては、 (a) 樹脂粒子の均一分散安定化のために界面活性剤
の使用が必要であり、又液循環に特別の工夫が必要で煩
雑な工程を含んでいる。
(b) 樹脂粒子がメツキ浴中で強く負に帯電するた
め、樹脂粒子の陽極への析出が生じて陰極共析が難し
い。
(c) これを回避するため、被メツキ物の極性を反転
しながら交互にメツキする工夫が必要であつた(米国特
許第3434942号、同3461044号)。
あるいは特殊な界面活性剤を使用して樹脂粒子を正に帯
電させて、陰極析出を容易にし、樹脂の陽極析出を防止
する工夫が必要である(特公昭52-25375号公報)点など
制約が多い。
(d) この界面活性剤を用いる方法は樹脂粒子の種類
ごとに界面活性剤の選定が必要であつたり、あるいは連
続生産性を考慮した場合、微量の界面活性剤の濃度管理
が難しくなるなど煩雑な問題を含んでいる。
一方、生成するメツキ皮膜の物性にかかわる問題点とし
て、次の様なものが挙げられる。
(e) 用いる樹脂粒子の大きさ以下には膜厚を薄くで
きない。
(f) 粒子の金属相に埋め込まれる形で析出するため
ピンホールができやすく、そのため耐食性に不利であ
る。
(g) 多量の樹脂粒子(約5%以上)を析出しないと
塗料密着効果が現われず、また用いる樹脂粒子径によつ
ては下地基板との密着不良やメツキ金属相の物性が変化
して、加工時の剥離につながりやすい。
不溶性樹脂粒子の分散メツキ法は実用上以上のような問
題を含んでいた。
〔発明が解決しようとする問題点〕
上に述べたように、塗装下地処理(化成処理)を行わな
くとも十分に塗料密着性に優れている電気メツキ金属材
の製造方法は各種検討されているが、連続生産性に不向
きであつたり、耐食性、プレス加工性などの機能面でも
不充分で、現行の化成処理工程を省きうるレベルには至
つていない。
一方、亜鉛とプラスチツク化合物を分子状態で複合メツ
キする方法が、既に物理蒸着法においては試みられてい
る(特公昭58-1185号公報)。これは耐食性付与を目的
としたものであるが、高真空中での処理のため大量連続
生産性に多大の設備が必要となるなど工業的実施には問
題が多い。
本発明はこのような状況に鑑み、有機高分子と金属との
複合化技術に注目して上記問題を解決しようとするもの
である。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明は有機化合物を単に塗布するとか、水不溶性樹脂
粒子を分散共析するといつた従来の発想から離れて、有
機高分子と金属とを分子レベルで複合化(モレキユラー
コンポジツト)する新技術を開発することによつて、従
来の技術では達成しえない高水準の多機能表面の形成を
意図したものである。
以上の観点から鋭意検討を行つた結果、本発明者らは水
溶性有機高分子を電気メツキに応用することにより上記
目的を達成できることを見い出し本発明の完成に至つた
のである。
即ち、本発明は亜鉛イオンを10〜600g/l含む亜鉛メツキ
浴、あるいは前記の亜鉛メツキ浴に亜鉛以外の異種金属
イオンの1種以上をそれぞれ61〜600g/l含む亜鉛合金メ
ツキ浴に、分子量が1000〜100万の水溶性有機高分子の
1種以上を必須成分としてそれぞれ0.05〜30wt%添加し
均一に溶解させた浴中で、金属材を陰極として電気メツ
キし、当該表面に金属と水溶性有機高分子とを共析さ
せ、水溶性有機高分子の割合が全析出量に対し0.06〜30
wt%の範囲になるようにコントロールすることを特徴と
する塗料密着性に優れた有機高分子複合メツキ金属材の
製造方法を提供するものである。
本発明で用いる水溶性有機高分子は多量の金属塩を含ん
だメツキ液中でも均一に溶解して安定であるため、改め
て分散剤(界面活性剤)を使用することや、液循環の特
別な工夫等が必要でなく、作業性に極めて優れている。
また本発明においては、樹脂が陽極に析出して絶縁膜を
形成し電圧異常となるなどの問題がないため通常の直流
法で連続メツキが可能である。
ところで、水溶性の有機化合物を電気メツキに使用する
ことは古くから行われている。これは比較的低分子量の
界面活性剤をメツキ浴助剤として極く少量(0.001〜0.0
5%程度)添加する用い方で、主に装飾性の向上(光沢
剤)をねらいとしたものである。その他の目的としては
ミスト防止剤、不純物除去剤(錯形成剤)、消泡剤、不
溶性懸濁不純物の凝集沈澱剤、あるいは分散メツキ法に
おいては、共析粒子の分散剤として用いられている。従
つて、上記の場合、塗料密着性及び耐食性はほとんど改
善されていない。本発明は従来の使用目的とは大きく異
なり、塗料密着性および耐食性の向上を1次目的とし、
プレス加工性、溶接性の向上を2次的な目的としたもの
で、そのため使用の方法も異なつている。すなわち本発
明に於てはメツキ金属と水溶性有機高分子とを積極的に
共析、複合化させることにより上記の機能を発現させる
ものである。
本発明に用いることができる水溶性高分子の例として
は、I)アニオン性水溶性高分子、II)カチオン性水溶
性高分子、III)ノニオン性水溶性高分子、及びIV)両
性の水溶性高分子の4種類に大別され、このうち分子量
が1000〜100万のものを用いることができる。
I)としては以下のものが挙げられる。
アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、
アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2−アクリル
アミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスル
ホン酸、アクリロギンエチルホスフエート、メタクリロ
ギンエチルホスフエートなどのカルボン酸、スルホン酸
またはリン酸と重合性二重結合を有するモノマーを少な
くとも1種含む水溶性のアニオン性ビニルポリマーまた
はオリゴマー。
アニオン性の水溶性ポリウレタン樹脂及び水溶性ポリエ
ステル樹脂、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合
物。
カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチリデン
粉、リグニン、及び過ヨウ素リグニン、硫酸リグニン、
塩酸リグニン、クロムリグニン、銅アンモニアリグニ
ン、ジオキサンリグニン、チオリグニン、チオグリコー
ル酸リグニン、シリンギルリグニン、リグニンスルホン
酸、リグニンスルホン酸塩の如きアニオン性半合成高分
子。
II)としては分子中に陽イオン性又は塩基性の窒素原子
を含有する陽イオン性水溶性高分子化合物、次のa〜h
から成る群から選ばれるものが挙げられる。
a 次の一般式(I)〜(IX)で表わされる含窒素単量
体又はその塩の単独重合物あるいは2種以上の共重合
物。
〔R1はH又はCH3、R2及びR3はH又は炭素数1〜3のア
ルキル基〕 〔m1は1〜3の数、n1は1〜3の数、R1,R2,R3は式
(I)と同じ〕 〔R4はH又は炭素数1〜3のアルキル又はアルキロール
基、R1は式(I)と同じ〕 〔m2及びn2は0〜3の数、R1,R2,R3は式(I)と同じ〕 〔Aは−O−又は−NH−、R1,R2,R3,n1は式(I)及び
(II)と同じ〕 〔R1,R2,R3,n1は式(I)及び(II)と同じ〕 〔R1は式(I)と同じ。ピリジンの置換位は2又は4
位〕 〔R1,R2は式(I)と同じ。ピペリジンの置換位は2又
は4位〕 〔R1,R2,R3は式(I)と同じ〕 ジアリルアミン b エチレンイミンの開環重合体の塩又は第4級アンモ
ニウム塩。
c 脂肪族ジカルボン酸とポリエチレンポリアミン又は
ジポリオキシエチレンアルキルアミンとの縮重合物の塩
又は第4級アンモニウム塩。
d ジハロアルカン−ポリアルキレンポリアミン縮重合
物。
e エピハロヒドリン−アミン縮重合物。
f キトサンの塩あるいはデンプンあるいはセルロース
等のカチオン変性した半合成高分子、及び天然高分子。
g 窒素原子6〜20個を有するポリアルキルイミン又は
その誘導体にアルキレンオキシドを付加して得られる分
子量1000〜60万のポリエーテルポリオール又はポリオー
ルポリエーテル誘導体。
h カチオン性の水溶性ポリウレタン樹脂。
III)としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピ
ロリドン、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチル
(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイド、ポリ
ビニルエーテル、ノニオン性の水溶性エポキシ樹脂の如
き水溶性のノニオン性合成高分子、 デキストリン、プルラン、ペクチンの如き水溶性のノニ
オン性天然高分子、 ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースの如き
水溶性のノニオン性半合成高分子が挙げられる。
IV)としては、ゼラチン、カゼイン等の水溶性タンパク
質、あるいはI)でのべたアニオン性モノマーとII)で
挙げたカチオン性モノマーとの共重合体が挙げられる。
本発明に用いることのできる水溶性有機高分子はその分
子量が1000〜100万の範囲に限定される。この理由は有
機高分子の分子量が本発明の効果に影響を与え、分子量
が1000未満の低分子体では大きな塗料密着効果が得られ
にくく、反面分子量が100万を越える高分子体では水へ
の溶解性が悪くなり、メツキ浴への添加濃度に限界が生
じて問題となるからである。
尚、本発明において「水溶性有機高分子」とは、これを
溶解させるメッキ浴に、そのメッキ浴の温度において、
本発明で規定する範囲の濃度で均一に溶解するものをい
う。また「均一に溶解する」とは、当該水溶性有機高分
子を溶解させたメッキ液にレーザービームを照射したと
き、横方向から散乱光を視認することができない程度の
均一さで水に溶解する状態をいう。
本発明において、対象となる被メツキ金属材には特に制
限はない。例えば鉄鋼、銅、真鍮、アルミニウムなどの
金属材料が使用できる。
本発明の方法は共析金属イオンとして亜鉛イオンを含む
場合、即ち亜鉛及び亜鉛合金メツキに対して特に有効で
ある。使用できる亜鉛メツキ浴としては、亜鉛イオンを
10〜600g/l含む公知の亜鉛メツキ浴が挙げられる。例え
ば、(1)硫酸亜鉛を用いる硫酸塩浴、塩化亜鉛を用い
る塩化物浴、ホウフツ化亜鉛を用いるホウフツ化物浴あ
るいはこれらの混合浴を含む一般公知の酸性浴、(2)
塩化亜鉛をアンモニアにて中和して建浴する中性浴、
(3)ピロリン酸亜鉛を用いるピロリン酸亜鉛浴、亜
鉛、水酸化ナトリウムよりなるジンケート浴などのアル
カリ浴あるいは(4)シアン化亜鉛メツキ浴など一般に
公知の亜鉛メツキ浴が挙げられるが、このうち(1)の
ものが好ましい。亜鉛合金メツキ浴としては上記(1)
〜(4)の浴中に合金元素として考えられる鉄、ニツケ
ル、クロム、コバルト、マンガン、銅、錫、鉛、マグネ
シウム、アルミニウムなどの塩化物、硫化物、フツ化
物、シアン化物、酸化物、有機酸塩、リン酸塩、ナトリ
ウム塩等の中から1種以上を浴成分としてそれぞれ61〜
600g/l添加した一般公知の亜鉛合金メツキ浴を用いるこ
とができる。このうち(1)の浴を基本に建浴されたも
のが好ましい。合金メツキ浴を用いることにより亜鉛メ
ツキ皮膜のもつ耐食性及び溶接性の向上を図ることがで
きる。
本発明で用いるメツキ浴としては上記の共析金属イオン
を含む水溶液に0.05〜30wt%の水溶性高分子を添加し均
一に溶解させたメツキ浴を用いることができる。好まし
くは0.5〜30wt%添加したメツキ浴が良い。浴調整後
は、有機高分子が安定に溶解しているため、分散均一化
のための液攪拌の必要はない。メツキ浴のpHは酸性ある
いはアルカリ性でもよいが、pHの程度及び、金属イオン
濃度によつては、用いる水溶性有機高分子の溶解性が悪
くなる場合があるので注意を要する。また本発明にかか
るメツキ浴には防錆剤を添加して耐食性を向上させるこ
とができる。
メツキ電解条件としては、直流あるいはパルス電流を用
いることができる。
水溶性有機高分子の共析量は、高分子濃度、電流密度、
及び有機高分子の電荷によつて著しく影響をうける。高
濃度、高電流密度で共析量は増加する。また、分子骨格
がほぼ同一のものであれば共析量はカチオン性高分子>
ノニオン性高分子>アニオン性高分子の順である。
本発明は、有機高分子複合メツキ皮膜中に、0.06〜30wt
%の有機高分子を分子状態で共析させることを特徴とす
る。好ましくは0.6〜30wt%共析させるのが良い。有機
高分子の共析量が少ないとZn単体メツキに近づくため塗
料密着効果が現われにくく、反面多すぎるとメツキ皮膜
がもろくなるためプレス加工時にメツキ皮膜の破壊や剥
離が生じやすくなつて問題となる。
本発明による有機高分子複合メツキ皮膜は水溶性高分子
を用いているため、共析金属との複合化が分子オーダー
で起こる点に大きな特徴を有しており、マクロな分散・
複合化しか達成し得ない水不溶性樹脂の分散メツキと本
発明はこの点で大きく相違するものである。本発明に使
用する水溶性有機高分子としては、上記の如くアニオン
性、ノニオン性のものも使用し得る。これらの水溶性有
機高分子が電気メッキ法によりメッキ金属と共に共析、
複合化する機構としては、 1) 陰極面への衝突時の偶発的捕捉共析、 2) 陰極面への吸着共析、 等により共析されるものと推定される。回転電極を用い
て被メツキ体を回転させると、その回転数に応じてポリ
マーの共析量が増える。この結果は上記1)の機構によ
る共析が存在していることを示している。従つて本発明
法では分散メツキのように用いる樹脂粒子径からくるメ
ツキの下限膜層の制約はなく、薄膜(薄目付)から厚膜
(厚目付)まで任意にメツキ量を選択することができ
る。更に用いる水溶性有機高分子の種類によつては複合
メツキ金属の結晶の形を例えば、平板、立方体、針状、
球状、長方体などと大きく変化させることも可能であ
り、しかも結晶サイズのコントロールも可能である。こ
れらの現象は有機高分子が結晶成長の段階から関与して
いることを示しており、金属との共析が分子オーダーで
生じていることの一つの証でもある。このように有機高
分子により表面形態をコントロールできることは、アン
カー効果や接着表面積の増大等がコントロールできるわ
けで接着性表面を設計するうえで大変有益である。
本発明による複合メツキ金属材は、金属材の耐食性を一
段と向上させるためメツキ皮膜上に塗料を塗布すること
を前提として考えているので、塗料に対する密着機能は
有機高分子複合メツキに求められる本質的機能である。
用いることのできる塗料は、常温乾燥型塗料、熱硬化型
塗料あるいは電着塗料等、公知の塗料が使用可能であ
る。
塗布方法としてはスプレー塗装、粉体塗装、ロールコー
ト法、静電塗装、電着塗装法等公知の塗布方法を適用す
ることができる。
本発明による有機高分子複合メツキ皮膜は、メツキされ
た状態で塗料へ対する密着性を有しているので、リン酸
塩処理やクロメート処理などの化成処理(塗装下地処
理)が全く必要でなく、また100℃以上の加熱処理など
新たなる特別な処理を全く必要としない。従つて乾燥し
たメツキ皮膜にそのまま常温乾燥型塗料を塗布した場合
でも十分な塗料密着効果が得られる。熱硬化型塗料を用
いる場合には、塗料硬化のために加熱処理を施す必要が
あるが、この場合の加熱温度は200℃以下が好ましい。
その理由は200℃以上の高温になると共析した有機高分
子が酸化、分解をうけやすく、その結果塗料の密着性が
低下する傾向が現われるからである。従つて長期間にわ
たる塗料の密着性を維持するためには、塗布前の熱履歴
に注意する必要がある。
〔作用〕
本発明法によつて塗料密着性が向上する原因については
完全に解明されているわけではないが、次の因子が挙げ
られる。
先ず、有機高分子との複合化で金属表面の塗料に対する
親和性が増大すること、あるいは結晶形態の変化による
有効接着面積の増加やアンカー効果の寄与も考えられ
る。また塗料のもつ電荷とは逆電荷の水溶性高分子を複
合した方がより強い塗料密着性が得られることから、酸
塩基作用による接着効果、あるいは静電気的効果の寄与
が考えられる。
〔実施例〕
以下実施例を用いて本発明を説明する。
(1) メツキ方法 冷延鋼板をアルカリ脱脂、水洗後、次の条件でメツキを
施した。用いたメツキ浴組成、水溶性有機高分子をそれ
ぞれ表1及び表2に示した。メツキ条件は電流密度1〜
50A/dm2の直流電流を用い、浴温30〜50℃の範囲で行つ
た。
有機高分子の共析量は、水溶性有機高分子の添加濃度と
電流密度とを変化させてコントロールした。メツキ皮膜
厚は全て3μmとした。膜厚測定には渦電流式膜厚計
(サンコウ電子(株)、SL-2L-SM型)を用いた。
(2) 塗料密着性評価 上記条件で作製した本発明品及び比較品の塗料密着性の
評価結果を表3及び表4に示す。表3及び表4に記載し
ている塗膜密着性評価は塗料としてカチオン型エポキシ
系電着塗料(関西ペイント(株)エレクロン9210番)を
用い、150Vにて電着を行い、180℃で25分焼付後の塗膜
厚さを30μmとなるよう調整した。中塗、上塗塗装を行
わないでそのまま密着性試験に供した。
尚、比較例のクロメート処理電気亜鉛メツキ鋼板及びリ
ン酸亜鉛処理電気亜鉛メツキ鋼板にはそれぞれ市販のジ
ンコート鋼板(商品名、新日鉄(株)製)及びボンデ鋼
板(商品名、新日鉄(株)製)を用いた。水不溶性樹脂
の分散メツキは表−1,Aの亜鉛メツキ浴に酢酸ビニル/
メタクリル酸メチル(97:3)共重合体エマルシヨン(粒
径3μm)を20g/l(固形分)添加したメツキ浴を用い
て、浴温30℃、電流密度10A/dm2の条件で厚さ3μmの
メツキを行つた。
注1) 金属中炭素分析装置(堀場製作所製EMIA-110)
を用いて1350℃に加熱し、発生するCO2,CO量を検出して
メツキ皮膜中の全炭素量を定量(wt%)した。この値
(炭素含量)をもつて有機高分子の共析量とした。
注2) 下地メツキ面に達するゴバン目を1mm間隔に100
個描き、セロテープで剥離した時の塗膜残存数で示し
た。
注3) 下地メツキ面に達するゴバン目を1mm間隔で100
個描いた後、エリクセン押出加工、7mmを行い、引き続
きセロテープ剥離試験を行つた際の塗膜残存率 評価基準 ◎・・・加工後のテープ剥離による剥離が全く認められ
ない ○・・・加工後のテープ剥離による剥離がわずか(1〜
5%)に認められる △・・・加工後のテープ剥離による剥離がやや(5〜15
%)認められる ×・・・加工後のテープ剥離による剥離が相当程度(15
〜35%)認められる ××・・・加工後のテープ剥離による剥離が大部分(65
%)以上を占める。
表3は本発明品である亜鉛−水溶性有機高分子複合メツ
キ皮膜各種の塗膜1次密着性を比較例とともに示したも
のである。
ゴバン目試験による塗膜密着性評価結果においては、本
発明品(No.1〜17)と比較例(No.18〜21)との間に有
意差は認められない。しかし、エリクセン押出試験によ
る厳しい条件下での塗膜密着性評価結果においては、顕
著な差が存在していることがわかる。即ち、先ず有機高
分子を全く含まないZn単体メツキ皮膜(No.18)と比較
すると、有機高分子を複合した本発明品の塗膜密着性が
極めて優れていることがわかる。また、市販の化成処理
鋼板と比較すると、No.1がリン酸亜鉛処理鋼板(No.2
0)及び水不溶性樹脂の分散メツキ鋼板(No.21)と同等
である以外は全て市販化成処理鋼板以上の塗膜密着性を
示した。
以上の結果から、水溶性有機高分子を少量亜鉛金属と共
析させることによつて亜鉛メツキ表面の塗料密着性を大
幅に改良できることがわかる。
表4は、本発明の効果を亜鉛合金メツキまで拡げて確認
すると同時に、塗膜密着性評価に耐水密着性を付け加え
たものである。表4から明からなように、本発明品(N
o.22〜25)は比較例中の水溶性有機高分子を全く含まな
いNo.26〜29、あるいはNo.30、31のクロメート処理及び
リン酸亜鉛処理鋼板及び水不溶性樹脂の分散メツキ鋼板
No.32に比較して、いずれも優れた塗膜1次密着性及び
耐水密着性を示した。この結果から本発明が亜鉛メツ
キ、亜鉛合金メツキ、錫メツキの塗膜1次密着性向上に
有効であるばかりでなく、耐水塗膜密着性に対しても極
めて有効であることがわかる。
表3及び表4の本発明品を5%塩化ナトリウム水溶液60
℃に浸漬して塗装後耐食性を評価したところ、水溶性有
機高分子を複合しないメツキ皮膜を塗装下地とした場合
に比較して耐食性が向上していることがわかつた。
また、表3及び表4の本発明品はプレス加工時において
も、水溶性有機高分子を含まないメツキ皮膜と同等以上
のプレス加工性を示し、有機高分子複合による悪影響は
特に認められなかつた。
以上、水溶性有機高分子を電気メツキに応用することに
より、従来の水不溶性樹脂分散メツキ技術が有していた
煩雑さや制約を取り除くことが可能で、本発明の方法に
より化成処理技術を施すことなく塗料密着性及び耐食性
に優れたメツキ金属材が得られることがわかつた。
(3) 塗膜密着性良好域の測定 同一ポリマーを用いて亜鉛−有機高分子複合メツキ3μ
mを施し、関西ペイント(株)製、フタル酸樹脂系常温
乾燥型塗料SDホルス−1000を30μmの厚さで塗布乾燥
後、ゴバン目試験により塗膜密着性を評価した。結果を
第1図に示す。
第1図から明らかなように、複合メツキ中の有機高分子
共析量には適当な範囲が存在し、全炭素含量として0.06
〜30wt%の範囲で塗膜密着効果が顕著となり、好ましく
は0.2〜15wt%の範囲にあることがわかつた。
〔発明の効果〕
本発明は上記のように、水不溶性の有機高分子を用いる
かわりに水溶性の有機高分子を用いたところに大きな特
徴を有している。本発明の方法ではメツキ金属と有機高
分子との複合化が分子オーダーで生じるため、極めて少
量(0.06〜数重量%)の有機高分子の共析で高水準の塗
料密着性の付与が可能であり、耐食性、プレス加工性、
及び溶接性も兼備することができる。
このようにして得られる水溶性有機高分子複合メツキ皮
膜は、塗料に対する密着性表面としてのみならず、金属
材表面に樹脂フイルムやゴム、セラミツクスなどをラミ
ネートする際、あるいは金属同士を接着する際の接着性
表面としても利用できる。更に水溶性有機高分子で非粘
着性を示すもの例えばC−F結合を含む高分子を共析す
れば非粘着性表面を形成し得る。この皮膜は金型表面等
に利用できる。また潤滑性にすぐれた水溶性有機高分子
を共析すれば潤滑性にすぐれた複合メツキ皮膜を作製す
ることができる。この種のメツキ皮膜の用途は潤滑性を
必要とする回転体、摺動体の表面処理として利用でき
る。磁性金属と潤滑性有機高分子とを共析すれば自己潤
滑性を有する磁性メツキ層を形成することが可能であ
る。
以上の述べてきた水溶性有機高分子複合メツキ技術は電
解によるものであるが、無電解メツキ技術にもそのまま
の応用が可能である。
又本発明による水溶性有機高分子複合メツキ法において
は、従来の電気メツキ設備で容易に生産でき、高価な設
備や多大の労力を必要とせず、工業的価値が高い。
【図面の簡単な説明】
第1図は実施例に於ける塗膜密着性評価試験結果を示す
グラフである。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】亜鉛イオンを10〜600g/l含む亜鉛メッキ
    浴、あるいは前記の亜鉛メッキ浴に亜鉛以外の異種金属
    イオンの1種以上をそれぞれ61〜600g/l含む亜鉛合金メ
    ッキ浴に、分子量が1000〜100万の水溶性有機高分子の
    1種以上を必須成分としてそれぞれ0.05〜30wt%添加し
    均一に溶解させた浴中で、金属材を陰極として電気メッ
    キし、当該表面に金属と水溶性有機高分子とを共析さ
    せ、水溶性有機高分子の割合が全析出量に対し0.06〜30
    wt%の範囲になるようにコントロールすることを特徴と
    する塗料密着性に優れた有機高分子複合メッキ金属材の
    製造方法。
  2. 【請求項2】水溶性有機高分子の添加量が0.5〜30wt%
    であり、析出する水溶性有機高分子の割合が全析出量に
    対し0.6〜30wt%の範囲にコントロールされる特許請求
    の範囲第1項記載の製造方法。
  3. 【請求項3】メッキ浴が亜鉛イオンを10〜600g/l含む酸
    性亜鉛メッキ浴又は酸性亜鉛合金メッキ浴である特許請
    求の範囲第1項記載の製造方法。
  4. 【請求項4】水溶性有機高分子の添加量が0.5〜30wt%
    であり、析出する水溶性有機高分子の割合が全析出量に
    対し0.6〜30wt%の範囲にコントロールされる特許請求
    の範囲第3項記載の製造方法。
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