JPH0754621Y2 - グロープラグのカバー - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、ディーゼルエンジン、特にグローアシスト式
アルコールエンジンにおける高速高負荷域の運転時にお
いても、燃料の安定した燃焼を可能とするグロープラグ
のカバーに関する。

（従来の技術） ディーゼルエンジンの中には、アルコール燃料を燃焼室
内で直接燃焼させるグローアシスト式のエンジンがあ
る。このとき、燃料の燃焼を安定に行なわせるために、
前記燃料噴射ノズルの近傍にはグロープラグが取付けら
れている。

このグロープラグは、その内部に抵抗発熱する発熱線が
組み込まれ、それを発熱させることにより、先端の表面
温度を800〜900℃の高温に保持するようになっている。

燃料噴射ノズルから燃焼室内に放射状に噴出された燃料
の一部は、グロープラグの先端に吹き当り、ここで着火
して火炎を生成し、そのことにより、他の燃料の燃焼が
補助されることになる。

しかしながら、グロープラグの先端に燃料が吹き当る
と、燃料温度は低いので、その先端は冷却される。その
ため、グロープラグの着火能力は低下し、そかも熱ロス
は増大する。グロープラグの着火能力を低下させないた
めには、発熱線からの発熱量を増加せしめればよいわけ
であるが、しかしそのような処置は、グロープラグの使
用寿命を縮め、耐久性を低下させることになる。

このようなことから、グロープラグの先端に、先端の着
火部を被包してグロープラグカバーが取付けられてい
る。

この場合の構造の１例を第３図、および第３図のIV-IV
線に沿う断面図として示した第４図に則して説明する。

第３図において、ピストン１には燃焼室２が形成され、
シリンダヘッド３には燃料噴射ノズル４が装着されてい
る。この燃料噴射ノズル４からは燃焼室２の中に、燃料
５が放射状に噴射される。

燃料噴射ノズル４の近傍には、グロープラグ６がその先
端着火部6aを燃焼室２内に突出して取付けられている。
グロープラグ６は、シース７の中に固定され、シース７
をシリンダヘッド３に固定される。

グロープラグの先端着火部6aは、耐熱性の材料から成る
ドーム状をしたカバー８で被包されている。

カバー８には、燃料５が吹き当る側の壁面に孔8aが、ま
た他の壁面、通常は孔8aの孔軸線と直交する方向の壁面
に孔8bが形成されている。ここで、孔8aは燃料噴入孔、
孔8bは火炎噴出孔として機能する。

すなわち、このようなカバー８で先端着火部6aが被包さ
れていると、燃料噴射ノズル４から噴射された燃料５の
一部は、燃料噴射孔8aからカバー８の内部に噴入し、カ
バー内部で複雑な渦流を形成しながら先端着火部6aに吹
き当ってそこで着火し、生成された火炎が火炎噴出孔8b
から燃焼室２内に噴出して、他の燃料の着火を補助する
ようになる。

そして、先端着火部6aに吹き当る燃料の量は、このカバ
ー８が存在しない場合よりも少ないので、燃料による冷
却の度合は小さくなり、その表面温度の低下は少なくな
る。その結果、着火能力は維持され、着火安定性も保持
され、しかも熱ロスを抑制できるようになる。

（考案が解決しようとする課題） しかしながら、上記した構造のグロープラグカバーの場
合には、エンジンの高速負荷域において次のような不都
合が生ずる。

すなわち、エンジンの高速高負荷域においては、燃料噴
射ノズル４から噴射される燃料５の量は多くなる。その
ため、燃料噴入孔8aからカバー８の内部に噴入する燃料
の量も多くなり、その結果、グロープラグの先端着火部
6aへの冷却作用は大となってその表面温度の低下を招く
とともに、過濃混合気がカバー内部に形成され、全体と
しての燃料の着火と燃焼は不安定となる。

本考案は、高速高負荷域における上記したような問題を
発生することがなく、安定した着火・燃焼を可能にする
グロープラグのカバーの提供を目的とする。

（課題を解決するための手段） 上記した目的を達成するために、本考案においては、燃
料噴射ノズルの近傍に先端着火部が燃焼室内に突出して
取付けられているグロープラグの前記先端着火部を被包
し、前記燃料噴射ノズル側の壁面に燃料噴射ノズルから
噴射された燃料の一部が噴入する燃料噴入孔が形成さ
れ、噴入した燃料によって生成された火炎が噴出する火
炎噴出孔を有する、グロープラグのカバーにおいて、前
記燃料噴入孔の孔軸線の延長線上または延長線上近傍の
壁面に、当該カバー内に噴入した燃料の一部を噴出させ
る燃料噴出孔が形成され、かつ、前記延長線は前記先端
着火部と交差しないことを特徴とするグロープラグのカ
バーが提供される。

（作用） 本願考案のカバーの場合、燃料噴入孔の形成されている
カバー壁面の反対側壁面、すなわち、燃料噴入孔の孔軸
線の延長線上または延長線上近傍の壁面に、カバー内に
噴入した燃料の一部を噴出させる燃料噴出孔が形成され
ているので、エンジンの高速高負荷域において、燃料噴
入孔から噴入された燃料のうち、過剰の燃料は先端着火
部と接触する渦流にはならないでそのまま過剰燃料噴出
孔からカバーの外に噴出していく。

そのため、グロープラグの先端着火部の表面温度の低下
は抑制され、カバー内部の混合気は適正な状態となり、
安定した着火、燃焼が行なわれるようになる。

（実施例） 以下に、本考案の実施例を添付図面に基づいて説明す
る。第１図は実施例カバーを取付けたグロープラグの配
置を示す断面図、第２図は第１図のII-II線に沿う断面
図である。図中、第３図および第４図と同一の要素には
同じ符号が付されている。

カバー８は、従来の場合と同じように、燃焼室２に突出
してシリンダヘッド３に装着されているグロープラグ６
の先端着火部6aを被包して取付けられる。

このカバー８の燃料５が吹き当る壁面には、適宜な径の
燃料噴入孔8aが形成され、また他の壁面には大径の火炎
噴出口8bが形成されていることは、従来構造のカバーと
変わることはない。

本考案のカバーの場合は、燃料噴入孔8aが形成されてい
る壁面と反対側の壁面には、孔8aと略同軸に所望径の過
剰燃料噴出孔8cが形成されている。その場合、第２図に
示したように、燃料噴入孔8a,過剰燃料噴出孔8cの各孔
軸線は、グロープラグの先端着火部6aと交差しないよう
に、各孔8a,8cをカバー８の壁面に形成する。すなわ
ち、各孔8a,8cをカバー８の壁面に対し斜めに形成する
ことが好ましい。

このようにすると、燃料噴入孔8aから噴入した燃料が正
面から先端着火部6aに吹き当らないのでその部分の表面
温度の低下が抑制され、また過剰の燃料は障害をうける
ことなくそのまま過剰燃料噴出孔8cからカバー８の外部
に逃げることができる。

つぎに作用について説明すると、まず、エンジンが高速
高負荷域で運転されると、燃料噴射ノズル４からは多量
の燃料５が燃焼室２に噴射される。そして、カバー８の
燃料噴入孔8aからも多量の燃料が噴入する。そのうち、
過剰な燃料は孔8cからカバー８の外部に噴出していき、
適正な混合気状態にある燃料はカバー８の内部で渦流と
なって先端着火部6aと接触して着火する。生成した火炎
は火炎噴出孔8bから燃焼室２に噴出して他の燃料の燃焼
を補助する。

したがって、グロープラグの先端着火部6aにおける表面
温度の低下は抑制され、しかもカバー内部の混合気も適
正化するので、着火能力の保持、安定な着火・燃焼が可
能となる。

（考案の効果） 以上の説明で明らかなように、本考案のグロープラグの
カバーは、その構成を、燃料噴射ノズルの近傍に先端着
火部が燃焼室内に突出して取付けられているグロープラ
グの前記先端着火部を被包し、前記燃料噴射ノズル側の
壁面に燃料噴射ノズルから噴射された燃料の一部が噴入
する燃料噴入孔が形成され、噴入した燃料によって生成
された火炎が噴出する火炎噴出孔を有する、グロープラ
グのカバーにおいて、前記燃料噴入孔の孔軸線の延長線
上または延長線上近傍の壁面に、当該カバー内に噴入し
た燃料の一部を噴出させる燃料噴出孔が形成され、か
つ、前記延長線は前記先端着火部と交差しないようにし
たので、エンジンの高速高負荷域運転に伴ない多量の損
料が燃焼室に噴射された場合であっても、カバー内に噴
入する燃料のうちの過剰分は、カバー壁面に形成されて
いる過剰燃料噴出孔からカバーの外に逃げていくことが
でき、カバー内部の混合気は適正化する。したがって、
高速高負荷域においてもグロープラグの着火能力は低下
せず、安定した着火，燃焼が可能となる。とくに、この
カバーは、グローアシスト式メタノールエンジンのグロ
ープラグに取付けて有用である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案のカバーで被包されたグロープラグが取
付けられているエンジンの燃焼室構造を示す概略図、第
２図は第１図のII-II線に沿う断面図、第３図は従来の
燃焼室構造を示す概略図、第４図は第３図のIV-IV線に
沿う断面図である。 １……ピストン、２……燃焼室、３……シリンダヘッ
ド、４……燃料噴射ノズル、５……燃料、６……グロー
プラグ、6a……先端着火部、７……シース、８……カバ
ー、8a……燃料噴入孔、8b……火炎噴出孔、8c……過剰
燃料噴出孔。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】燃焼噴射ノズルの近傍に先端着火部が燃焼
   室内に突出して取付けられているグロープラグの前記先
   端着火部を被包し、前記燃料噴射ノズル側の壁面に燃料
   噴射ノズルから噴射された燃料の一部が噴入する燃料噴
   入孔が形成され、噴入した燃料によって生成された火炎
   が噴出する火炎噴出孔を有する、グロープラグのカバー
   において、 前記燃料噴入孔の孔軸線の延長線上または延長線上近傍
   の壁面に、当該カバー内に噴入した燃料の一部を噴出さ
   せる燃料噴出孔が形成され、かつ、前記延長線は前記先
   端着火部と交差しないことを特徴とするグロープラグの
   カバー。