JPH0528379Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は多噴孔の燃料噴射ノズルを備えた断熱
型デイーゼル機関に関するものである。

［従来の技術］ 断熱型デイーゼル機関は燃焼室の壁面にセラミ
ツクなどの耐熱材を配設し、圧縮行程と燃焼行程
での燃焼室の熱を外部へ放出しないの原則であ
る。したがつて、シリンダ壁の温度が非常に高く
なると、吸入空気がシリンダの内部で加熱・膨張
するために、吸入空気量（質量）が少なくなる。
また、機関の燃焼行程で、燃料の予混合気が蓄積
されず、燃料が高温状態にあるシリンダ壁で発火
しやすくなり、等容燃焼の度合が減じ、機関の出
力が低下する。

また、燃料噴射ノズルの噴孔が少ないと、短い
着火遅れ期間中に、普通の機関と同程度の予混合
気を生成しようにも、燃料の噴霧相互間の空気が
十分に利用されない。しかし、燃料噴射ノズルの
噴孔を大径にすると、噴孔からの燃料量が多くな
るだけで、燃料の霧化が悪くなる結果、予混合気
の生成が不完全になる。

実開昭60−14233号公報に開示されるデイーゼ
ル機関では、燃料噴射ノズルに燃焼室の周壁に向
ける噴孔と、燃焼室の底壁へ向ける噴孔とが周方
向に間隔を存して配設される。しかし、上述の燃
料噴射ノズルは、各噴孔が等径になつているの
で、相対的に燃焼室の中心の突部へ向けて噴射さ
れる燃料は、周囲の空気を十分に利用できない状
況にある。

水冷却を行うデイーゼル機関では、燃焼室の壁
面の温度はあまり高くならないので、多噴孔の燃
料噴射ノズルを使用すると、燃焼室の底壁へ向け
て噴射された燃料は、底壁に付着したまま完全な
燃焼が得られず、排気中のHC成分を増加させ
る。

［考案が解決しようとする問題点］ 本考案の目的は上述の問題に鑑み、断熱型デイ
ーゼル機関において、シリンダ壁の温度を低下さ
せて、吸入空気量を増加させ、予混合気の生成を
十分に行い、短い着火遅れ期間に燃料噴射を十分
に行い、出力性能を高める、断熱型デイーゼル機
関を提供することにある。

［問題点を解決するための手段］ 上記目的を達成するために、本考案の構成は断
熱構造の燃焼室の底壁中心に円錘状の突部を備
え、燃料噴射ノズルを燃焼室へ突出させ、燃料を
燃焼室の突部の円錐面に沿つて噴射する大径の噴
孔と、燃料を燃焼室の周壁へ向つて噴射する小径
の噴孔とを、燃料噴射ノズルに設けたものであ
る。

［作用］ 圧縮行程の終期に燃料噴射ノズルの大径の噴孔
から燃焼室の底壁へ向けて、小径の噴孔から周壁
へ向けて、それぞれ燃料が噴射される。底壁へ向
けて噴射された燃料は噴霧となるが、粒径の大な
るものは底壁へ衝突して細粒化され、同時に底壁
の熱を吸収して霧化する。

周壁へ向けて噴射された燃料は、噴孔が小径で
あること、周壁までの噴射距離が比較的長いこと
もあつて、周壁に達するまでに霧化し、完全な噴
霧となる。

［考案の実施例］ 第１図に示すように、断熱型デイーゼル機関の
燃焼室１は、ピストン２の冠部の凹部とシリンダ
ヘツドとの間に形成される。燃焼室１は底壁４の
中心に円錐状の突部９を備えられる。燃焼室１の
壁面はセラミツクなどの耐熱材で構成される。燃
焼室１へ突出する燃料噴射ノズル３は、６以上の
噴孔を備える。

第２図に示すように、燃料噴射ノズル３は燃焼
室１の底壁４へ向けられた大径の噴孔（口径D1）
６と、燃焼室１の周壁７へ向けられた小径の噴孔
（口径D2）８とを備える。第１図に矢印で示すよ
うに、各噴孔６，８の噴射方向は予め定められ
る。

次に、本考案による断熱型デイーゼル機関の作
動について説明する。燃料は圧縮行程の終期に燃
料噴射ノズル３から燃焼室１へ噴射される。第３
図に示すように、大径の噴孔６からの燃料は、突
部９の円錐面に沿つて底壁へ噴射され、噴霧１０
を生成する。小径の噴孔８からの燃料は、周壁７
へ向けて噴射され、噴霧１１を生成する。

大径の噴孔６から噴射された燃料の粒径は、小
径の噴孔８から噴射された燃料の粒径よりも大き
い。しかし、大径の噴孔６から噴射された燃料
は、突部９の円錐面や底壁４に衝突して細粒化さ
れ、燃焼室の内でも最も高温の状態にある底壁４
から熱を吸収して霧化する。

小径の噴孔８から噴射された燃料は、粒径が小
さく、噴孔８から周壁７までの距離は長いことか
ら燃料が大きな拡がりをもつので、周壁７へ達す
るまでに周囲の空気とよく混合し、ほぼ完全に霧
化する。

［考案の効果］ 本考案は上述のように、断熱構造の燃焼室の底
壁中心に円錘状の突部を備え、燃料噴射ノズルを
燃焼室へ突出させ、燃料を燃焼室の突部の円錐面
に沿つて噴射する大径の噴孔と、燃料を燃焼室の
周壁へ向つて噴射する小径の噴孔とを、燃料噴射
ノズルに設けたので、次のような効果を奏する。

(a) 断熱型デイーゼル機関では、燃焼室の底壁の
突部の温度が非常に高くなるので、大径の噴孔
から燃焼室の中心突部の円錐面に沿つて噴射さ
れた多量の燃料は、十分な熱量を得て良好に蒸
発気化しつつ底壁へ達する。しかし、同時に小
径の噴孔から燃焼室の周壁へ向けて噴射された
少量の燃料は、燃料量が少いこと、噴射距離が
長いことから、周壁へ達するまでに周囲の空気
とよく混合し、完全に霧化される内に発火し、
小径の噴孔からの燃料が燃焼室の周壁に付着し
てHCを発生する恐れはない。

燃焼は周囲から中心へ移行するから外部への
熱損失が少い。

(b) 最終的には底壁へ当る大径の噴孔からの燃料
は、底壁の熱を奪うので、燃焼室の底壁の温度
が異常に高くなることはない。このため、吸入
空気量が増加し、予混合気が底壁に触れて早期
発火することはなく、予混合気の蓄積が十分に
行われる。

(c) 多噴孔の燃料噴射ノズルを採用しているの
で、短かい着火遅れ期間で燃料を十分に供給で
き、各噴霧間の空気や底壁付近の空気を効率的
に利用できる。

(d) 圧縮行程の終期に燃焼室に十分な空気と予混
合気が存在するので、熱サイクルでの等容燃焼
の割合が増加し、機関の出力性能が向上する。

(e) 大径の噴孔から噴射された多量の燃料は、底
壁中心の突部の円錐面に沿つて流れるから、混
合気の生成を抑制し、機関の中・高速運転での
騒音を抑え、スワールによる噴霧の干渉を防
ぐ。

【図面の簡単な説明】

第１図は断熱型デイーゼル機関における燃焼室
の概略構成を示す側面断面図、第２図は燃料噴射
ノズルの側面断面図、第３図は燃料噴射ノズルか
ら燃焼室への燃料噴射状態を示す側面断面図であ
る。 １……燃焼室、２……ピストン、３……燃料噴
射ノズル、４……底壁、６……大径の噴孔、７…
…周壁、８……小径の噴孔、９……突部、１０…
…大径の噴孔からの噴霧、１１……小径の噴孔か
らの噴霧。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 断熱構造の燃焼室の底壁中心に円錘状の突部を
   備え、燃料噴射ノズルを燃焼室へ突出させ、燃料
   を燃焼室の突部の円錐面に沿つて噴射する大径の
   噴孔と、燃料を燃焼室の周壁へ向つて噴射する小
   径の噴孔とを、燃料噴射ノズルに設けたことを特
   徴とした断熱型デイーゼル機関。