JPH075237Y2 - エンジンのシリンダブロック構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案はエンジンのシリンブロック構造の改良に関し、
特に室内騒音の原因となる該ブロックの振動の低減を図
るようにした構造に関する。

（従来の技術） 一般に、エンジンのシリンダブロックは、複数のシリン
ダボアが列状に設けられたシリンダ部と、その下方に連
設されてクランクケースを構成すると共に、下端面にオ
イルパンが取り付けられるスカート部とで構成され、上
記シリンダ部には各シリンダボアを取り囲むようにウォ
ータージャケットが設けられる。

ところで、このシリンダブロックは、エンジンの運転時
に各シリンダ内で間欠的に発生する爆発時の衝撃を起振
源として振動し、これがエンジンマウント部材を介して
車体に伝達して車内騒音の原因となるのであり、特にエ
ンジン回転数に対する次数が低い低周波数の振動が室内
こもり音と称せられる不快な騒音の原因となることが知
られている。

このようなシリンダブロックの振動に対して、例えば実
開昭62-130149号公報によれば、スカート部下端の左右
両側部に、底壁部と、縦壁部と、頂壁部とで断面略コ字
状とされたオイルパンレールをシリンダ列方向に沿って
形成したものが開示されている。これによれば、シリン
ダブロックの横方向の曲げ剛性が向上し、該方向の曲げ
モードの振動が抑制されることが期待できる。

（考案が解決しようとする課題） しかし、シリンダブロックには、上記のような曲げモー
ドの振動だけでなく、シリンダ部とスカート部との境界
部、つまりシリンダボアを取り囲むウォータージャケッ
トの底壁を構成するボトムデッキの配設部近傍を中心と
する捩りモードの振動が発生し、これが上記のような室
内こもり音の原因となるのである。

そこで、本考案は上記のようなシリンダブロックの捩り
モードの振動を、該ブロックの大幅な重量の増大を招く
ことなく効果的に抑制し、もって不快な室内こもり音を
低減することを課題とする。

（課題を解決するための手段） 上記課題を解決するため、本考案においては次のような
手段を用いる。

すなわち、本考案に係るエンジンのシリンダブロック構
造は、列状に並ぶ複数のシリンダボアを取り囲むように
ウォータージャケットが設けられた構成において、上記
ウォータージャケットの底壁を形成するボトムデッキの
肉厚を、シリンダ列方向の両端部で他の部位より厚くす
る。

（作用） 上記の構成によれば、ボトムデッキにおけるシリンダ列
方向両端部の剛性が向上することになるが、この部位
は、シリンダブロックに捩りモードの振動が発生したと
きに、最も大きな歪みエネルギーが発生する部位であっ
て、この部位を中心としてシリンダブロックの各部が変
位することになる。従って、このボトムデッキ両端部の
剛性を向上させて該部の歪みを抑制することによりシリ
ンダブロック全体としての捩り振動が抑制されるのであ
る。そして、特に本考案においては、上記のように歪み
エネルギーが大きくなる部位のみの剛性を重点的に高く
するので、シリンダブロック全体としての重量を余り増
大させることがない。

（実施例） 以下、本考案の実施例について説明する。

第１〜３図に示すように、この実施例に係るエンジンの
シリンダブロック１は、直列に４つのシリンダボア２…
２が設けられたシリンダ部３と、該シリンダ部３の下方
に連設されてクランクケースを構成するスカート部４と
で構成されている。このスカート部４内には、上記各シ
リンダボア２…２間に位置するように隔壁部５…５が設
けられ、これらの隔壁部５…５とスカート部４の両端の
側壁部6,6とには、クランク軸の主軸受を構成する半円
状の凹部７…７が形成されていると共に、該スカート部
４の下端面はオイルパンの取り付け面８とされている。

一方、上記シリンダ部３には、各シリンダボア２…２を
取り囲むようにウォータージャケット９が設けられてい
る。このウォータージャケット９の上部は当該シンダブ
ロック１の上端のシリンダヘッド取り付け面10に開口さ
れ、シリンダヘッドに設けられたウォータージャケット
に連通されるようになっていると共に、該ウォータージ
ャケット９の低壁は、シリンダ部３とスカート部４との
境界部に設けられたボトムデッキ11によって構成されて
いる。

そして、第４図に示すように、上記ボトムデッキ11は、
シリンダブロック１の一方の端部で上面（ウォータージ
ャケット９の底面）が傾斜状とされて端部側ほど肉厚X₁
が厚くされており、また第５図に示すように、シリンダ
ブロック１の他方の端部ではボトムデッキ11の上面が１
段高くされて、同じく肉厚X₂が厚くされている。なお、
この実施例では、ボトムデッキ11の後者の端部の厚肉部
を利用してブローバイガスの通路12が設けられている。

上記の構成によれば、シリンダ部３とスカート部４との
境界部に設けられて、シリンダボア２…２を取り囲むウ
ォータージャケット９の底壁を形成するボトムデッキ11
の両端部が、肉厚が厚くされている分だけ剛性が高くな
る。

ところで、このボトムデッキ11の両端部は、シリンダブ
ロック１に捩り振動が発生したときに最も歪みエネルギ
ーが大きくなる部位であり、換言すればこの部位を中心
として各部が変位することになる。従って、このボトム
デッキ11の両端部の歪みを抑制することによってシリン
ダブロック１の全体の捩り振動のレベルが低減され、ま
た振動周波数が高周波数側に移動することになるのであ
るが、上記のように、このボトムデッキ11の両端部は剛
性が高くされて、該部の歪みが抑制されるようになって
いる。

これにより、シリンダブロック１の捩り振動のレベルが
低減され、これにともなって該シリンダブロック１から
エンジンマウント部材を介して車体に伝達される振動レ
ベルも低減されると共に、特に上記部位の剛性の向上に
よって捩り振動の周波数が高周波数側に移行し、その結
果、車内騒音が低減されると同時に、特に不快な低周波
数の室内こもり音が効果的に低減されることになる。

そして、特に上記の構成によれば、捩り振動の発生時に
歪みエネルギーがもっも大きくなるボトムデッキ11の両
端部のみの肉厚を重点的に厚くして剛性を高めるように
したから、該ボトムデッキ11の肉厚を全体的に厚くする
場合のように、シリンダブロック１の大幅な重量の増加
を招くことがない。

（考案の効果） 以上のように、本考案に係るエンジンのシリンダブロッ
ク構造によれば、捩り振動の発生時に最も歪みエネルギ
ーが大きくなるボトムデッキのシリンダ列方向両端部の
肉厚を他の部位よりも厚くしたので、シリンダブロック
全体としての大幅な重量の増加を招くことなく、捩り振
動のレベルが低減されると共に、その振動周波数が高周
波数側に移行することになる。これにより、比較的軽量
で、しかも上記捩り振動が車体に伝達することによる室
内騒音、特に低周波数の不快な室内こもり音が効果的に
低減されるシリンダブロックが実現されることになる。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示すもので、第１図はシリンダ
ブロックの横断平面図、第２図は第１図II-II線で切断
した縦断側面図、第３図は第１図III-III線で切断した
縦断正面図、第4,5図は第１図IV-IV線、V-V線でそれぞ
れ切断した要部拡大縦断側面図である。 １……シリンダブロック、２……シリンダボア、９……
ウォータージャケット、11……ボトムデッキ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】列状に並ぶ複数のシンリンダボアを取り囲
   むようにウォータージャケットが設けられたエンジンの
   シリンダブロックであって、上記ウォータージャケット
   の底壁を形成するボトムデッキが、シリンダ列方向の両
   端部で他の部位より肉厚が厚くされていることを特徴と
   するエンジンのシリンダブロック構造。