JPH0747676B2 - 艶消し熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

艶消し熱可塑性樹脂組成物

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JPH0747676B2
JPH0747676B2 JP62280437A JP28043787A JPH0747676B2 JP H0747676 B2 JPH0747676 B2 JP H0747676B2 JP 62280437 A JP62280437 A JP 62280437A JP 28043787 A JP28043787 A JP 28043787A JP H0747676 B2 JPH0747676 B2 JP H0747676B2
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Description

【発明の詳細な説明】 a. 産業上の利用分野 本発明は機械的性質および成形加工性に優れ、かつ成形
品の表面の艶のないゴム変性熱可塑性樹脂組成物に関す
るものである。
b. 従来の技術 ゴム変性熱可塑性樹脂は優れた耐衝撃性、成形性、およ
び良好な表面光沢を有することから種々の用途に使用さ
れている。しかしながら、使用される用途によっては、
他の物性を低下させることなく成形品の表面を艶消しの
状態にしたものが望まれる。
このような艶消しが要求される用途としては、自動車の
内装部品、事務用および家庭用電気機器部品などが挙げ
られる。
従来の成形品の艶消し方法としては、 (i)チタン、マグネシウム、カルシウムなどの酸化物
や炭酸塩をゴム強化樹脂に添加する方法、 (ii)ゴム強化樹脂にゴム質弾性体を添加する方法、 (iii)架橋性モノマーを用いて三次元化した樹脂成分
を添加する方法、 などが知られている。
c. 発明が解決しようとする問題点 しかしながら、従来知られている艶消し方法には種々の
問題点がある。例えば、前記(i)の方法では樹脂の機
械的性質、特に衝撃強度を大きく低下させる難点があ
り、また艶消しにはなるが成形品表面の艶が均一に消え
ないという欠点がある。前記(ii)の方法では樹脂の機
械的性質、特に硬度および剛性を低下させる。また、成
形品の表面上に異物状のものが現われ、成形品の商品価
値を著しく損う。さらに前記(iii)の方法では、成形
品表面に光沢むらを生じ、また成形性の低下および衝撃
強度の低下を起こすなどの欠点を有している。
d. 問題点を解決するための手段 本発明者らは、このような従来の問題点を解決するため
に鋭意検討した結果、エチレン性不飽和カルボン酸に対
して安定なゴム質重合体ラテックスの存在下に、エチレ
ン性不飽和カルボン酸を必須成分とした単量体混合物を
グラフト重合して得られた艶消し用高分子改質材をゴム
変性ビニル芳香族系熱可塑性樹脂と特定の割合で混合し
た場合、艶消し状態、光沢むら、成形性などが優れ、か
つ耐衝撃性も優れた艶消し熱可塑性樹脂組成物が得られ
ることを見い出して、本発明に到達した。
すなわち、本発明は(A)ゴム変性ビニル芳香族系熱可
塑性樹脂70〜97重量%と、(B)ゴム固形分に対し15重
量%のメタクリル酸を添加したときの凝固率がゴム固形
分当り20重量%以下であるゴム質重合体ラテックスの存
在下に、エチレン性不飽和カルボン酸を必須成分とし、
これとビニル芳香族化合物、ビニルシアン化合物および
共重合可能なビニル単量体から選ばれた一種以上の単量
体とをグラフト重合して得られる艶消し用高分子改質材
30〜3重量%よりなり、かつ上記高分子改質材(B)中
のエチレン性不飽和カルボン酸成分の含有量が1〜30重
量%であり、ゴム質重合体の含有量が10〜60重量%であ
る艶消し熱可塑性樹脂組成物である。
(A)ゴム変性ビニル芳香族系熱可塑性樹脂について; 本発明において使用されるゴム変性ビニル芳香族系熱可
塑性樹脂成分(A)は、ゴム変性ビニル芳香族系重合
体またはゴム変性ビニル芳香族系重合体とビニル芳香
族系重合体(ゴム変性してないもの)との混合物であ
り、高度の耐衝撃性を得る目的でゴム質重合体を特定の
ビニル芳香族系重合体中に混合したものである。混合方
法としては単純な機械的なブレンド方法でもかまわない
が、良好な相溶性を得るためには、ゴム質重合体の存在
下にビニル芳香族系単量体などをグラフト共重合させ
る、いわゆるグラフト共重合処方によって得られたもの
が一層好ましい。また、該方法で得られるゴム変性ビニ
ル芳香族系重合体(グラフト重合体)に、別途方法によ
って得られるビニル芳香族系重合体を混合するいわゆる
グラフト−ブレンド法によって得られたものを用いるこ
とも好ましい。
前記ゴム質重合体としては、ポリブタジエン、スチレン
−ブタジエン共重合体、アクリル系共重合体、エチレン
−プロピレン系共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリウ
レタンなどが挙げられるが、中でもポリブタジエンを用
いることが好ましい。
(A)成分中のゴム質重合体の含有量は、5〜40重量%
が好ましく、更に好ましくは10〜30重量%である。
前記ビニル芳香族系単量体としてはスチレン、α−メチ
ルスチレン、ブロモスチレンなどがあるが、これらの中
でもスチレン、α−メチルスチレンを用いることが最適
である。
さらに、必要に応じてこれらビニル芳香族系単量体と共
重合可能な共単量体を用いて共重合することが可能であ
る。このような共単量体としては、アクリロニトリル、
メタクリロニトリル、メチルメタクリレート、N−フェ
ニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどが
挙げられる。
一般にビニル芳香族系単量体単独では耐衝撃性が発現し
にくいので、アクリロニトリルを共重合させるのが好ま
しい。
このようにして得られるゴム変性ビニル芳香族系熱可塑
性樹脂を具体的に示せば、従来のアクリロニトリル−ブ
タジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリ
ル−エチレンプロピレン−スチレン樹脂(AES樹脂)、
メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン樹脂(MBS
樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸
メチル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−n−ブチル
アクリレート−スチレン樹脂(AAS樹脂)、ゴム変性ポ
リスチレン(ハイインパクトポリスチレン:HIPS)、α
−メチルスチレンを用いた耐熱ゴム変性ビニル芳香族系
樹脂などの共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂とABS
樹脂またはAES樹脂との混合樹脂、ABS樹脂に塩化ビニル
樹脂を複合させた難燃性樹脂、およびABS樹脂に難燃剤
を配合した難燃ABS樹脂などが挙げられる。
上記のゴム変性ビニル芳香族系熱可塑性樹脂は乳化重
合、溶液重合、塊状重合、懸濁重合などによって製造さ
れる。また、該重合に用いられる重合開始剤、分子量調
節剤、乳化剤、分散剤、溶媒などは通常これら重合法で
用いられているものをそのまま用いることが可能であ
る。
(B) 艶消し用高分子改質材について; 本発明において使用される艶消し用高分子改質材(B)
は、エチレン性不飽和カルボン酸に対し安定なゴム質重
合体ラテックスの存在下に、エチレン性不飽和カルボン
酸を必須成分とした単量体混合物をグラフト重合して得
られるグラフト重合体である。
ゴム質重合体ラテックスのゴム質重合体として用いられ
るものは、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重
合体、アクリル系共重合体、エチレン−プロピレン系共
重合体、塩素化ポリエチレン、ポリウレタンなどが挙げ
られるが、中でもポリブタジエンを用いることが好まし
い。
また、ゴム質重合体の量は、艶消し用高分子改質材(グ
ラフト重合体)中10〜60重量%が好ましく、さらに好ま
しくは20〜50重量%である。
10重量%未満では耐衝撃性が不充分であり、60重量%を
越えると表面外観が劣る。
ゴム質重合体ラテックスの製造方法としては、 i)前記ゴム質重合体の固形物を各種の分散装置、乳化
剤および必要に応じて有機溶剤を用い、水中に微分散さ
せラテックスとする方法、および ii)前記ゴム質重合体を乳化重合で製造する方法が挙げ
られるが、製造工程が容易でラテックスが安定に得られ
るという点でii)の方法が好ましい。
ここで、本発明に用いるゴム質重合体ラテックスは、エ
チレン性不飽和カルボン酸に対して安定なゴム質重合体
ラテックスであることが必要である。安定性の基準とし
てメタクリル酸15重量%に対するゴム質重合体の凝固率
を用い、これを以下の方法で定めた。
ゴム質重合体の凝固率の測定方法 ゴム質重合体ラテックス10g(固形分)にメタクリル酸
1.5gを加え、室温で5分間撹拌する、凝固物を80メッシ
ュの金網でろ取し、真空乾燥機を用いて100℃で乾燥し
たのち、その重量(xg)を測定する。
本発明に用いるゴム質重合体ラテックスは、上記測定法
で測定された凝固率が20重量%以下のもの、好ましくは
10重量%以下のものである。20重量%を越える場合に
は、次工程のエチレン性不飽和カルボン酸を必須成分と
した単量体混合物のグラフト重合時の重合安定性が不良
であり、凝固物が多量に生じ製造上好ましくない。
ゴム質重合体の凝固率を20重量%以下とするためには、
ゴム質重合体ラテックスを製造する際の乳化剤の選択が
重要である。
例えば、一般に用いられる脂肪酸系乳化剤を用いた場
合、凝固率は20重量%を大きく越えるため好ましくな
い。好ましい乳化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム
などに例示される脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどに例示され
るアルキルアリルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハ
ク酸ナトリウム、アルキル、リン酸塩、ポリオキシエチ
レンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチ
レンアルキルフェノールエーテル硫酸ナトリウム、ナフ
タレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレ
ンラウリルエーテルおよびポリオキシエチレンノニルフ
ェノールエーテルなどに例示されるノニオン系乳化剤、
ラウリルアミンアセテートおよびステアリルトリメチル
アンモニウムクロライドなどに例示されるカチオン系乳
化剤およびこれらの乳化剤の組合せが挙げられるが、特
に好ましいのは脂肪族アルコールの硫酸エステル塩およ
び/またはアルキルアリルスルホン酸塩である。
脂肪酸系乳化剤を上記の好ましい乳化剤と混合して用い
ること、または脂肪酸系乳化剤を用いて得られたゴム質
重合体ラテックスと、好ましい乳化剤を用いて得られた
ゴム質重合体ラテックスを混合して用いることも可能で
あるが、この場合、全乳化剤中の脂肪酸系乳化剤の分率
は30重量%以下であることが好ましく、特に20重量%以
下であることが好ましい。用いる脂肪酸系乳化剤として
は、不均化ロジン酸カリウム、不均化ロジン酸ナトリウ
ム塩のロジン酸塩、オレイン酸カリウム、ラウリン酸カ
リウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウ
ム、ステアリン酸カリウムなどを例示することができ
る。
ゴム質重合体ラテックスを乳化重合で製造する場合、上
記の乳化剤の選択に留意する必要があるが、その製造は
一般的な方法をそのまま用いることができる。例えば、
撹拌機付き耐圧反応器にイオン交換水、前記の乳化剤、
単量体、分子量調節剤、および重合開始剤を加え、重合
温度5〜150℃、重合時間1〜70時間、重合圧力−1.0〜
15.0kg/cm2の条件下で重合する。
前記エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル
酸、メタクリル酸、エタクリル酸、イタコン酸、マレイ
ン酸、フマル酸などが例示されるが、好ましい単量体は
アクリル酸、メタクリル酸である。
また、エチレン性不飽和カルボン酸の量は、艶消し用高
分子改質材(グラフト重合体)中1〜30重量%が好まし
く、より好ましくは2〜20重量%、さらに好ましくは3
〜10重量%である。1重量%未満の場合には,艶消し効
果が不十分で好ましくなく、30重量%を越える場合には
耐衝撃性が低下し好ましくない。
エチレン性不飽和カルボン酸以外の共単量体としては、
ビニル芳香族化合物、ビニルシアン化合物および共重合
可能なビニル単量体より選ばれた一種以上の単量体が使
用できる。
ビニル芳香族化合物としては、スチレン、α−メチルス
チレン、ブロモスチレンなどが例示されるが、これらの
中でもスチレン、α−メチルスチレンを用いることが好
適である。
ビニルシアン化合物としては、アクリロニトリル、メタ
クリロニトリルなどが例示されるが、アクリロニトリル
が好適である。
共重合可能なビニル単量体としては、アクリルアミドに
例示されるアミド基を有するビニル化合物、メチルメタ
クリレート、n−ブチルアクリレートに例示されるエチ
レン性不飽和カルボン酸のエステル類、N−フェニルマ
レイミドに例示されるマレイミド類などが挙げられる
が、メチルメタクリレートが好適である。
これらの共単量体の組合せの好ましい比率は、ビニル芳
香族化合物/ビニルシアン化合物/共重合可能なビニル
単量体=50〜90/10〜40/0〜40(重量比)が好ましく、
さらには60〜80/20〜30/0〜30(重量比)が好ましい。
さらにグラフト重合に用いられる単量体の組合せの具体
例を記せば、アクリル酸/スチレン/アクリロニトリ
ル、メタクリル酸/スチレン/アクリロニトリル、メタ
クリル酸/スチレン/アクリロニトリル/α−メチルス
チレン、メタクリル酸/スチレン/アクリロニトリル/
メチルメタクリレートなどが例示されるが、好ましくは
メタクリル酸/スチレン/アクリロニトリル、メタクリ
ル酸/スチレン/アクリロニトリル/α−メチルスチレ
ンの組合せなどが挙げられる。
グラフト重合体の製造方法は、前記ゴム質重合体のラテ
ックスの存在下にエチレン性不飽和カルボン酸を必須成
分とする上記単量体混合物をグラフト重合するものであ
る。
その際、重合開始剤、分子量調節剤は通常の乳化重合に
用いられるものをそのまま用いることができる。また、
必要に応じて乳化剤を追加することが可能であるが、乳
化剤は前記のエチレン性不飽和カルボン酸に対し安定な
乳化剤に限定される。
重合開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキ
サイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイ
ド、パラメンタンハイドロパーオキサイドなどで代表さ
れる有機ハイドロパーオキサイド類と含糖ピロリン酸処
方、スルホキシレート処方、含糖ピロリン酸処方/スル
ホキシレート処方の混合系処方などで代表される還元剤
との組合わせによるレドックス系の開始剤、さらに過硫
酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸磯、アゾ
ビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、
ラウロイルパーオキサイドなどを任意に使用することが
できる。特に好ましくはクメンハイドロパーオキサイ
ド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、
パラメンタンハイドロパーオキサイド類で代表される有
機ハイドロパーオキサイド類の酸化剤と含糖ピロリン酸
処方、スルホキシレート処方、含糖ピロリン酸処方/ス
ルホキシレート処方混合系処方などで代表される還元剤
との組合わせである。
連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、
n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタ
ン,n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメ
ルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタンなどのメ
ルカプタン類、テトラエチルチウラムスルフィド、四塩
化炭素、臭化エチレンおよびペンタフェニルエタンなど
の炭化水素類、またはアクロレイン、メタクロレイン、
アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコレー
トなどが挙げられる。これらの連鎖移動剤は単独でまた
は二種以上を組合わせて使用することができる。使用方
法としては一括添加、分割添加、または連続添加のいず
れの方法でも差支えない。
単量体の添加方法としては、 i)バッチ重合方法、 ii)インクレメント重合方法、および iii)バッチ、インクレメントの組み合せによる重合方
法が挙げられ、いずれの方法でも差支えないが、好まし
いのはiii)の方法である。
重合条件に関して述べれば、このようなグラフト重合に
用いる条件をそのまま適用することが可能である。例を
示せば、重合温度30〜150℃、重合時間1〜15時間、重
合圧力−1.0〜5.0kg/cm2の条件下でグラフト重合する。
このような方法で得られたグラフト重合体は、下記の方
法で測定したグラフト率が10〜150%、非グラフト成分
(マトリックス成分)の極限粘度〔η〕が0.25〜1.0に
なるように、重合開始剤、分子量調節剤、単量体添加方
法、重合条件などを設定することが好ましい。
グラフト率および極限粘度の測定方法 グラフト率;グラフト重合体の一定量(x)をアセトン
中に投入し、振とう機で2時間振とうし、遊離の共重合
体を溶解させる。遠心分離機を用いて、この溶液を23,0
00rpmで30分間遠心分離し、不溶分を得る。次に真空乾
燥機を用いて120℃で1時間乾燥し不溶分(y)および
遊離の共重合体を得る。グラフト率は次式より算出し
た。
極限粘度〔η〕;遊離の共重合体を単離し、メチルエチ
ルケトンに溶解し、30℃の温度条件により、ウベローデ
型粘度計で測定した。
前記ゴム変性ビニル芳香族系熱可塑性樹脂成分(A)と
艶消し用高分子改質材成分(B)の混合方法としては、
バンバリーミキサー、ブラベンダー、プラストミル、ニ
ーダー、ベント付き押出機など、通常の熱可塑性樹脂の
混合に用いられる各種の混合装置および方法を用いるこ
とができるが、これら方法の中でもベント付き押出機を
用いる方法が好ましい。
また、混合する前の各成分樹脂の形態としてはペレッ
ト、ピーズ、粉末、フレークなどいずれの場合でも混合
可能であるが、混合する温度は一般に約200〜300℃の温
度であることが好ましい。
ゴム変性ビニル芳香族系熱可塑性樹脂成分(A)の混合
量は、組成物中70〜97重量%、好ましくは80〜95重量%
であり、艶消し用高分子改質材成分(B)の混合量は30
〜3重量%、好ましくは20〜5重量%である。
(A)の混合量が70重量%未満の場合、すなわち(B)
が30重量%を越える場合は耐衝撃性が好ましくなく、ま
た、(A)の混合量が97重量%を越える場合、すなわち
(B)が3重量%未満の場合には、耐衝撃性は十分であ
るが、艶消し効果が不十分で光沢が発現するため好まし
くない。
また(A)と(B)との組成物中のゴム質重合体の含有
量は5〜35重量%が好ましく、更に好ましくは10〜30重
量%である。
このようにして得られた本発明の艶消し熱可塑性樹脂組
成物は、エチレン性不飽和カルボン酸を共重合した艶消
し用高分子改質材が何らかの有機フィラーとなり、樹脂
成形品表面の光の乱反射をひき起し、艶が消えるものと
考えられる。
また、このような有機フィラーを添加した場合、通常の
樹脂組成物においては、耐衝撃性が低下する難点がある
が、本発明の組成物においてはそのような欠点は見られ
ない。
この理由は明確ではないが、艶消し用高分子改質材中に
含有されるゴム質重合体が耐衝撃性の保持に大きく影響
を及ぼしているためと考えられる。
本発明の艶消し熱可塑性樹脂組成物は、前記必須成分
(A)(B)の他に必要に応じて滑剤、帯電防止剤、酸
化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光酸化防止剤、着色
材、ガラス繊維など、この種の熱可塑性樹脂組成物にお
いて通常用いられる配合剤や添加剤を混合することがで
きる。
また、本発明の組成物は、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、ポリ塩化ビニルなどに例記される汎用熱可塑性樹
脂、あるいはポリアミド、ポリアルキレンテレフタレー
ト、ポリカーボネート、ポリスルホンなどに例記される
エンジニアリングプラスチックと混合して使用すること
も可能である。
また、本発明の組成物には配合剤として、1価、2価ま
たは3価の金属化合物の少なくとも1種を添加すること
が可能であり、この場合、特に艶消し効果が良好でかつ
表面外観が良好な成形品が得られる。
これらの金属化合物は周期律表の第I、第II、第III、
第IV、第V族の金属の1価ないし3価の金属イオンを生
成する化合物であり、たとえばこれらの金属の水酸化
物、酸化物、塩、アルコラートなどが挙げられる。それ
らの金属イオンとしてはLi+、Na+、K+、Ca+、Ag+、B
a2+、Mg2+、Ca2+、Zn2+、Ba2+、Al3+、Fe2+、Fe3+など
が例示される。
水酸化物、酸化物、金属塩、アルコラートについての具
体的化合物としては、Zn(OH)、Al(EH)、KOH、C
a(OH)、Sn(OH)、Fe(OH)、NaOH、Ba(OH)
、Hg(OH)などの水酸化物;ZnO、Al2O3、K2O、Ca
O、SnO、FeO、Na2O、BaO、MgOなどの酸化物;ZnCl2、Zn
(C2H3O2、ZnSO4、AlCl3、Al2(SO4、KCl、KC2
H3O2、K2SO4、CaCl2、Ca(C2H3O2、CaSO4、SnCl2
SnSO4、FeCl2、Fe(C2H3O2、FeSO4、NaCl、NaC2H3O
2、Na2SO4、BaCl2、Ba(C2H3O2)、BaSO4、MgCl2、Mg
(C2H3O2、MgSO4、ステアリン酸亜鉛、ステアリン
酸セルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸ス
ズ、ジブチルスズジラウリレート、ジブチルスズシステ
アレートなどの金属塩;ナトリウムメチラート、ナトリ
ウムエチラート、ナトリウムフェノラートなどのアルコ
ラートが挙げられる。
好ましくはZnO、Al2O3、K2O、CaO、SnO、FeO、Na2O、Ba
O、MgOなどの酸化物である。
上記金属化合物は、本発明の組成物中のエチレン性不飽
和カルボン酸に対する金属化合物のモル比が0.1〜2、
好ましくは0.2〜1.5の範囲で配合するのが適当である。
金属化合物のモル比が0.1未満では艶消し効果が十分で
はなく、また2.0を越えると耐衝撃性が低下し好ましく
ない。
e. 実施例 次に、本発明を実施例によりさらに詳述する。
本発明において、「部」は重量部を意味する。
製造例1(ゴム質重合体ラテックスR−1〜R−6) 4段バドル翼を備えた内容積100のステンレス製重合
反応器を用いて、表−1に示した処方にて重合反応を実
施した。バドル翼の回転数90rpmの撹拌下に昇温し、温
度が50℃に達した時点で過硫酸カリウムを添加し、以後
反応温度を50℃で一定に保つように制御しながら重合反
応を行ない、重合率が90%に達した時点でジエチルヒド
ロキシアミン0.1重量部を添加して反応を停止させ、水
蒸気蒸留により未反応モノマーを実質的に留去し、ゴム
状物質のラテックスを得た。
得られたラテックスはナイサイザー(日本科学機械株式
会社製)を用い平均粒径を測定した。
結果を表−1に示す。
前記の方法に従い、製造例1で得られたゴム質重合体ラ
テックスおよびその混合物のメタクリル酸に対する凝固
率を測定し、結果を表−2に示した。
表−2に示した結果から明らかなように、アルキルアリ
ルスルホン酸塩または脂肪族アルコールの硫酸エステル
塩を用いた場合は凝固率が10%以下で好ましいが、脂肪
族系乳化剤を用いた場合、または脂肪族系乳化剤が全乳
化剤中30重量%を越える場合は凝固率が20%を越え、好
ましくない。
製造例2(グラフト重合体G−1〜G−22) 撹拌翼を備えた7ガラス製フラスコに、イオン交換水
100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、
水酸化カリウム0.01部、t−ドデシルメルカプタン0.1
部および表−3に示す割合で製造例1で得られたゴム質
重合体ラテックス(R−1〜R−6)と各種単量体を加
え、撹拌しながら昇温した。温度が45℃に達した時点
で、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩0.1部、硫酸
第一鉄0.003部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキ
シラート・二水塩0.2部、およびイオン交換水15部より
なる活性化剤水溶液およびジイソプロピルベンゼンヒド
ロパーオキシド0.1部を添加し、1時間反応を続けた
(前段重合)。
その後、イオン交換水50部、ドデシルベンゼンスルホン
酸ナトリウム1部、水酸化カリウム0.02部、t−ドデシ
ルメルカプタン0.1部、ジイソプロピルベンゼンヒドロ
パーオキシド0.2部および表−3に示す割合の各種単量
体よりなる混合物を3時間にわたって連続的に添加し反
応を続けた(後段重合)。
添加終了後、さらに撹拌しながら1時間反応を続けたの
ち、2,2−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブ
チルフェノール)0.2重量部を添加して反応生成物をフ
ラスコより取り出した。
塩化カルシウム2重量部を用いて生成物を凝固させ、脱
水、水洗、乾燥を行って、粉末状のグラフト樹脂を回収
した。
表−3に重合転化率並びに先に述べた方法で測定したグ
ラフト率および極限粘度〔η〕を記す。
表中に、用いたゴム質重合体ラテックスのメタクリル酸
に対する凝固率を記す。凝固率が20重量%を越える場合
には重合安定性が著しく低下し好ましくない(G−8お
よびG−11)。
*重合安定性の評価基準 ○ 凝固物が少く安定に重合できる。
× 凝固物が多く重合不能。
実施例1〜16、比較例1、2 製造例2で得られたグラフト重合体G−1〜G−6、G
−9、10および12〜17(艶消し用高分子改質材(B))
を各種のゴム変性ビニル芳香族系熱可塑性樹脂(A)と
表−4に示す割合で混合し、30m/m二軸ベント付き押出
機を用いて220〜250℃の温度で造粒し、90℃で乾燥させ
たのち、220〜250℃で射出成形を行なって、表−4に示
す各種物性を測定した。
表−4に記載した各樹脂はそれぞれ次の通りである。
ABS樹脂−1;ポリブタジエンゴム20部、スチレン54部お
よびアクリロニトリル26部からなるABS樹脂。
ABS樹脂−2;ポリブタジエンゴム15部、スチレン10部、
α−メチルスチレン50部およびアクリロニトリル25部か
らなるABS樹脂。
ABS樹脂−3;ポリブタジエンゴム26部、スチレン50部お
よびアクリロニトリル24部からなるABS樹脂。
AES樹脂;EPT(日本合成ゴム株式会社製;JSR EP−24)30
部、スチレン50部およびアクリロニトリル20部からなる
AES樹脂。
AAS樹脂;n−ブチルアクリレート重合体25部、スチレン5
0部およびアクリロニトリル25部からなるAAS樹脂。
AS樹脂;日本合成ゴム株式会社製JSR AS 230。
ポリカーボネート樹脂;三菱化成株式会社製ノバレック
ス7022。
また、物性測定の条件は以下に示すごとき方法によって
測定した。
(1)衝撃値;ASTM(D256−54T)ノッチ付きアイゾット
23℃ (2)表面光沢;スガ試験機株式会社製デジタル変角光
沢計UGV−4Dを用い、入射角60゜での反射光を測定し
た。
(3)表面外観;8オンス射出成形機を用いて150mm×150
mm、厚さ30mmの成形品を成形して、その表面外観を目視
評価した。○は表面の光沢ムラがなく均一、×は表面の
光沢ムラおよび荒れが著しいことを表す。
表−4の結果から明らかなように、本発明で得られた艶
消し樹脂組成物は耐衝撃性が良好で、艶消し状態および
表面外観が優れたものである。
実施例17〜22および比較例3〜5 実施例1〜16と同様の条件下で評価を行った。結果を表
−5に示す。
実施例17、18および比較例3、4はゴム変性ビニル芳香
族系熱可塑性樹脂成分(A)と艶消し用高分子改質成分
(B)の混合量について説明したものである。
実施例19および比較例5は、艶消し用高分子改質材成分
(B)の効果を説明したものである。
実施例21および22は、本発明の艶消し熱可塑性樹脂組成
物に、配合時にさらに金属化合物を加え、成形、物性評
価を行った例である。
表−5の結果から、以下のことが判る。
(A)の混合量が97重量%を越える場合、すなわち
(B)が3重量%未満の場合には耐衝撃性は十分である
が、艶消し効果が不十分で光沢が発現するため好ましく
なく(実施例17、比較例3)、また(A)の混合量が70
重量%未満の場合、すなわち(B)が30重量%を越える
場合には耐衝撃性が好ましくない(実施例18、比較例
4)。
比較例5はゴム成分を含まない本発明の範囲外の艶消し
用高分子改質材を用いた例であり、一方実施例19は本発
明の艶消し用高分子改質材を用い、艶消し熱可塑性樹脂
組成物中のゴム成分含有量およびメタクリル酸含有量を
比較例5に合せたもので、実施例19の方が比較例3に比
べ耐衝撃性が優れている。
金属化合物を加えた場合、艶消し効果が良好でかつ表面
外観が良好な成形品が得られる(実施例21,22)。
実施例23〜25および比較例6〜7 実施例1〜16と同様の条件下で評価を行った。結果を表
−6に示す。これらの例は艶消し用高分子改質材成分
(B)中のゴム質重合体の含有量について説明したもの
である。すなわち、含有量が10重量%未満の場合は耐衝
撃性が好ましくなく(比較例6)、60重量%を越える場
合は表面外観が好ましくない。
g. 発明の効果 本発明の艶消し熱可塑性樹脂組成物は、従来にない艶消
し外観および耐衝撃性を有する樹脂組成物である。
特に以下に示す効果がある。
エチレン性不飽和カルボン酸を必須成分とした単量
体をゴム質重合体ラテックスにグラフト重合することに
より得られる艶消し用高分子改質材を用いているため、
艶消し外観と耐衝撃性のバランスの優れたものが得られ
る。
通常の脂肪酸系乳化剤で得られたゴム質重合体ラテ
ックスはエチレン性不飽和カルボン酸に対し不安定であ
るという欠点があったが、本発明においては、アルキル
アリルスルホン酸塩などのエチレン性不飽和カルボン酸
に対し安定な乳化剤を用いて得られるゴム質重合体ラテ
ックスを用いることによって上記の欠点が解決される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山元 友治 東京都中央区築地2丁目11番24号 日本合 成ゴム株式会社内 (56)参考文献 特開 昭60−197713(JP,A) 特開 昭60−177071(JP,A) 特開 昭62−124139(JP,A) 欧州特許公開明細書154244(EP,A)

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)ゴム変性ビニル芳香族系熱可塑性樹
    脂70〜97重量%と、(B)ゴム固形分に対し15重量%の
    メタクリル酸を添加したときの凝固率がゴム固形分当り
    20重量%以下であるゴム質重合体ラテックスの存在下
    に、エチレン性不飽和カルボン酸を必須成分とし、これ
    とビニル芳香族化合物、ビニルシアン化合物および共重
    合可能なビニル単量体から選ばれた一種以上の単量体と
    をグラフト重合して得られる艶消し用高分子改質材30〜
    3重量%よりなり、かつ上記高分子改質材(B)中のエ
    チレン性不飽和カルボン酸成分の含有量が1〜30重量%
    であり、ゴム質重合体の含有量が10〜60重量%であるこ
    とを特徴とする艶消し熱可塑性樹脂組成物。
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