JP3623612B2 - 難燃樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低分子量のスチレン系樹脂、低重合度の塩化ビニル系樹脂および特定のゴム状重合体を使用したグラフト共重合体からなる、耐油性、耐衝撃性に著しく優れ、かつ耐熱性、剛性、加工性、難燃性に優れた難燃樹脂組成物を製造し、使用する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂およびグラフト共重合体からなる難燃樹脂組成物は、その機械的性質および経済性の点から優れた材料であり、近年、OA機器などのハウジング材としての使用が増加している。
【0003】
一方、OA機器の分野においては、成形品に対する要求が年々厳しくなってきている。とくにOA機器のハウジングの薄肉化により、加工性の高い樹脂が要求されている。一般的に、加工性を向上させる手段として、分子量を低下させて流動性を高める方法がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この方法は、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂およびグラフト共重合体からなる難燃樹脂組成物では、耐油性、耐衝撃性などの他の特性が低下するという欠点がある。
【0005】
耐油性の低下は、OA機器の機構部品に使用される油類により機構部品と接触するハウジング部位にクラックが発生するという問題を生じさせる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記問題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、特定のグラフト共重合体を使用することにより、難燃樹脂組成物の加工性および他の特性を損わずに耐油性、耐衝撃性を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
芳香族ビニル化合物60〜85%(重量%、以下同様)、シアン化ビニル化合物15〜40%およびこれらと共重合可能なビニル化合物0〜25%を重合してなり、メチルエチルケトン可溶部の還元粘度が0.15〜0.55dl/g(N,N−ジメチルホルムアミド溶液、30℃、濃度0.3g/dl)の共重合体(A)5〜55部(重量部、以下同様)、
粘度平均重合度が400〜800の塩化ビニル系樹脂(B)30〜90部、
平均粒径が450〜900nmのゴム状重合体(X)40〜95部に、シアン化ビニル化合物および(または)アルキル(メタ)アクリレート10〜90%、芳香族ビニル化合物10〜90%およびこれらと共重合可能なビニル化合物0〜20%からなる単量体混合物5〜60部を合計100部になるように重合してなるグラフト共重合体(C)1〜25部および
平均粒径が50〜300nmのゴム状重合体(Y)40〜95部に、シアン化ビニル化合物および(または)アルキル(メタ)アクリレート10〜90%、芳香族ビニル化合物10〜90%およびこれらと共重合可能なビニル化合物0〜20%からなる単量体混合物5〜60部を合計100部になるように重合してなるグラフト共重合体(D)1〜25部
からなり、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分の合計が100部であり、かつ、
ゴム状重合体(X)が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびクロトン酸のうちの少なくとも1種の不飽和酸5〜50%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種50〜95%およびこれらと共重合可能なビニル化合物0〜40%を重合させることにより調製した酸基含有ラテックス(S)を使用する凝集肥大法により製造したゴム状重合体
である難燃樹脂組成物(請求項1)、
ゴム状重合体(X)が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびクロトン酸のうちの少なくとも1種の不飽和酸5〜25%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートの少なくとも1種5〜30%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルメタクリレートの少なくとも1種20〜80%、これらと共重合可能な芳香族ビニル化合物、分子中に2つ以上の重合性の官能基を有する単量体およびシアン化ビニル化合物のうちの1種以上0〜40%を重合させることにより調製した酸基含有ラテックス(S)を使用する凝集肥大法により製造したゴム状重合体である請求項1記載の難燃樹脂組成物(請求項2)および
ゴム状重合体(X)とゴム状重合体(X)およびゴム状重合体(Y)との重量比((X)成分/((X)成分+(Y)成分))が0.2〜0.9であり、かつ、ゴム状重合体(X)が平均粒径450〜900nm、標準偏差40%以下の粒径分布であり、ゴム状重合体(Y)が平均粒径50〜300nm、標準偏差40%以下の粒径分布である請求項1記載の難燃樹脂組成物(請求項3)
に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に使用される共重合体(A)は、とくに耐熱性、加工性、耐油性を発現させるために使用される成分であり、芳香族ビニル化合物60〜85%、好ましくは65〜80%、さらに好ましくは67〜78%、シアン化ビニル化合物15〜40%、好ましくは20〜35%、さらに好ましくは22〜33%、およびこれらと共重合可能なビニル化合物0〜25%、好ましくは0〜15%、さらに好ましくは0〜11%を合計100%になるように重合してなる共重合体である。前記芳香族ビニル化合物の割合が60%未満のばあい、加工性、耐衝撃性が低下し、85%をこえると、耐油性、耐熱性、耐衝撃性が低下する。また、前記シアン化ビニル化合物の割合が15%未満のばあい、耐油性、耐熱性、耐衝撃性が低下し、40%をこえると、加工性、耐衝撃性が低下する。さらに、前記共重合可能なビニル化合物の割合が25%をこえると、耐油性、耐衝撃性、加工性が低下する。
【0009】
共重合体(A)のメチルエチルケトン可溶部の還元粘度は、0.15〜0.55dl/g(N,N−ジメチルホルムアミド溶液、30℃、濃度0.3g/dl、以下同様)、好ましくは0.20〜0.45dl/g、さらに好ましくは0.24〜0.42dl/gである。前記還元粘度が0.15dl/g未満のばあい、耐油性、耐衝撃性が低下し、0.55dl/gをこえると加工性が低下する。
【0010】
共重合体(A)を形成する芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、o−クロルスチレン、p−クロルスチレンなどが、シアン化ビニル化合物の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが、共重合可能なビニル化合物の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどの炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、マレイミド、N−フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド化合物や、アクリル酸、メタクリル酸、イソプロペニルナフタレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどがあげられる。前記芳香族ビニル化合物のうちでは、スチレン、α−メチルスチレンが耐衝撃性、加工性、経済性の点から、また、シアン化ビニル化合物のうちでは、アクリロニトリルが耐衝撃性、耐油性、経済性の点から好ましい。
【0011】
共重合体(A)の具体例としては、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−マレイミド共重合体、アクリロニトリル−スチレン−メチルメタクリレート−マレイミド共重合体、アクリロニトリル−スチレン−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−スチレン−α−メチルスチレン−メチルメタクリレート共重合体などがあげられる。
【0012】
本発明に用いられる塩化ビニル系樹脂(B)は、とくに難燃性、耐衝撃性、耐油性を発現させるために使用される成分であり、粘度平均重合度が400〜800、好ましくは450〜750、さらに好ましくは480〜700の塩化ビニル系樹脂である。塩化ビニル系樹脂(B)の重合度が400未満のばあい、耐油性、耐衝撃性が低下し、800をこえると、熱安定性が低下する。
【0013】
前記塩化ビニル系樹脂の具体例としては、塩化ビニル単独重合体、塩化ビニル80%以上とエチレン、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、ブチルアクリレートなどのビニルまたはビニリデン化合物20%以下との共重合体、後塩素化ポリ塩化ビニルがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよく、また、重合度の異なるものを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明に用いられるグラフト共重合体(C)は、とくに耐衝撃性、耐油性を発現させるために使用される成分であり、ゴム状重合体(X)40〜95部、好ましくは50〜85部、さらに好ましくは55〜80部に、シアン化ビニル化合物および(または)アルキル(メタ)アクリレート10〜90%、好ましくは20〜90%、芳香族ビニル化合物10〜90%、好ましくは10〜80%およびこれらと共重合可能なビニル化合物0〜20%、好ましくは0〜10%からなる単量体混合物5〜60部、好ましくは15〜50部、とくに好ましくは20〜45部を合計100部になるように重合してなるグラフト共重合体である。ゴム状重合体(X)が40部未満のばあい、耐油性、耐衝撃性が低下し、95部をこえると、耐油性、耐衝撃性、加工性が低下する。また、単量体混合物が60部をこえると、耐油性、耐衝撃性が低下し、5部未満のばあい、耐油性、耐衝撃性、加工性が低下する。さらに、前記シアン化ビニル化合物および(または)アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニル化合物およびこれらと共重合可能なビニル化合物の割合が前記の範囲外のばあい、耐油性、耐衝撃性が低下する。
【0015】
前記ゴム状重合体(X)は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびクロトン酸のうちの少なくとも1種の不飽和酸5〜50%、好ましくは5〜40%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種50〜95%、好ましくは60〜90%およびこれらと共重合可能なビニル化合物0〜40%、好ましくは0〜30%を重合させることにより調製した酸基含有ラテックス(S)(通常、平均粒径30〜1000nm、肥大能の点から好ましくは50〜800nm、さらに好ましくは60〜600nmである)を使用する凝集肥大法により、好ましくは平均粒径30〜300nm、さらに好ましくは50〜270nm、好ましくは標準偏差40%以下、さらに好ましくは30%以下のラテックス状のゴム状重合体を凝集肥大させることにより製造したゴム状重合体である。このように、酸基含有ラテックス(S)を使用する凝集肥大法により製造したゴム状重合体(X)を使用するため、耐油性、耐衝撃性の改良効果が大きくなる。
【0016】
前記ゴム状重合体(X)の平均粒径としては、好ましくは330〜900nm、さらには350〜850nm、標準偏差としては好ましくは40%以下、さらには30%以下であるのが耐油性および耐衝撃性の点から好ましい。なお、標準偏差の下限は耐油性、耐衝撃性の点から通常1%以上である。
【0017】
また、酸基含有ラテックス(S)を使用する凝集肥大法によりゴム状重合体(X)にする平均粒径30〜300nm、標準偏差40%以下のラテックス状のゴム状重合体の具体例としては、前記のごとき平均粒径、標準偏差を有するポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリル酸エステルゴム、水素化スチレン−ブタジエンゴムなどのジエン系ゴム重合体、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴムなどのオレフィン系ゴム重合体、ポリアクリル酸エステルゴム、エチレン−アクリル酸エステルゴムなどのアクリル系ゴム重合体などのラテックスがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、ジエン系ゴム重合体が耐衝撃性の点から好ましい。
【0018】
前記ラテックス状のゴム状重合体の平均粒径が30nm未満のばあい、乳化重合での合成が困難となり、300nmをこえると、肥大制御が困難となり、凝塊物が発生しやすくなる傾向が生ずる。また、標準偏差が40%をこえると肥大工程、重合工程で凝塊物が生じやすくなる傾向にあり、標準偏差の下限は乳化重合での合成の容易性の点から通常1%以上である。
【0019】
前記ラテックス状のゴム状重合体の凝集肥大に使用する酸基含有ラテックス(S)を構成するアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびクロトン酸のうちの少なくとも1種の不飽和酸のうちでは、アクリル酸、メタクリル酸が肥大制御および経済性の点から好ましい。
【0020】
また、酸基含有ラテックス(S)を構成するアルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリレートの例としては、たとえばメチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどがあげられる。これらのうちでは、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレートが肥大制御(肥大径、凝塊物の発生の制御)がしやすい点から好ましい。
【0021】
さらに、酸基含有ラテックスを構成する前記不飽和酸およびアルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリレートと共重合可能なビニル化合物の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミドなどがあげられる。
【0022】
さらに、酸基含有ラテックスを構成する前記共重合可能なビニル化合物の例としては、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、アリルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレートなどの分子中に2つ以上の重合性の官能基を有する単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物などがあげられる。
【0023】
また、酸基含有ラテックス(S)における前記不飽和酸の割合が5%未満になると、肥大能が低下し、50%をこえると、凝塊物が著しく発生しやすくなる。また、前記アルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種の割合が50%未満になると、凝塊物が発生しやすくなり、肥大能が低下し、95%をこえると、肥大能が低下する。さらに、前記共重合可能なビニル化合物の割合が40%をこえると、肥大能(肥大径制御性)が低下する。
【0024】
前記酸基含有ラテックス(S)の具体例としては、メタクリル酸−ブチルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体、メタクリル酸ブチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン共重合体、メタクリル酸−メチルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体、メタクリル酸−ブチルメタクリレート−エチルアクリレート共重合体、アクリル酸−ブチルメタクリレート−メチルアクリレート共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体などがあげられる。
【0025】
前記ラテックス状のゴム状重合体を酸基含有ラテックス(S)を使用して凝集肥大させるばあいの使用割合としては、ラテックス状のゴム状重合体100部(固形分)(ラテックス中の固形分20〜50%、好ましくは25〜45%、好ましいpHは7以上)に対して、酸基含有ラテックス(S)0.1〜10部(固形分)(ラテックス中の固形分10〜50%、好ましくは15〜45%)、さらには0.5〜8部であるのが、肥大特性の点から好ましい。
【0026】
なお、凝集肥大させる方法としては、ラテックス状のゴム状重合体に酸基含有ラテックスを添加し、室温〜90℃、好ましくは30〜80℃で0.5〜5時間、好ましくは1〜4時間撹拌する方法があげられる。
【0027】
前記ゴム状重合体(X)が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびクロトン酸のうちの少なくとも1種の不飽和酸5〜25%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートの少なくとも1種5〜30%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルメタクリレートの少なくとも1種20〜80%、これらと共重合可能な芳香族ビニル化合物、分子中に2つ以上の重合性の官能基を有する単量体およびシアン化ビニル化合物のうちの1種以上0〜40%を重合させることにより調製した酸基含有ラテックス(S)を使用する凝集肥大法により製造したゴム状重合体であるばあいには、耐油性、耐衝撃性、加工性の点から好ましい。
【0028】
前記ゴム状重合体(X)にグラフト重合させる芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、o−クロルスチレン、p−クロルスチレンなどが、シアン化ビニル化合物の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが、アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどの炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが、これらと共重合可能なビニル化合物としては、マレイミド、N−フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド化合物やアクリル酸、メタクリル酸、イソプロペニルナフタレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどがあげられる。前記芳香族ビニル化合物のうちでは、スチレン、p−メチルスチレンが耐衝撃性、耐油性、加工性の点から、また、シアン化ビニル化合物および(または)アルキル(メタ)アクリレートのうちでは、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、ブチルアクリレートが耐衝撃性、耐油性の点から好ましい。
【0029】
グラフト共重合体(D)は、とくに耐衝撃性、耐油性を発現させるためにグラフト共重合体(C)と組み合わせて使用される成分であり、ゴム状重合体(Y)40〜95部、好ましくは50〜85部、とくに好ましくは55〜80部に、シアン化ビニル化合物および(または)アルキル(メタ)アクリレート10〜90%、好ましくは20〜90%、芳香族ビニル化合物10〜90%、好ましくは10〜80%およびこれらと共重合可能な他のビニル化合物0〜20%、好ましくは0〜10%からなる単量体混合物5〜60部、好ましくは15〜50部、とくに好ましくは20〜45部を合計100部になるように重合してなるグラフト共重合体である。ゴム状重合体(Y)が40部未満のばあい、耐油性、耐衝撃性が低下し、95部をこえると、耐薬品性、耐衝撃性、加工性が低下する。また、単量体混合物が60部をこえると、耐油性、耐衝撃性が低下し、5部未満のばあい、耐油性、耐衝撃性、加工性が低下する。さらに、前記シアン化ビニル化合物および(または)アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニル化合物およびこれらと共重合可能なビニル化合物の割合が前記の範囲外のばあい、耐油性、耐衝撃性が低下する。
【0030】
ゴム状重合体(Y)は、耐油性および耐衝撃性の点から、好ましくは平均粒径50〜300nm、さらに好ましくは80〜270nm、標準偏差40%以下、さらに好ましくは30%以下、通常は1%以上の粒径分布のゴム状重合体である。
【0031】
ゴム状重合体(Y)の具体例としては、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリル酸エステルゴム、水素化スチレン−ブタジエンゴムなどのジエン系ゴム重合体、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴムなどのオレフィン系ゴム重合体、ポリアクリル酸エステルゴム、エチレン−アクリル酸エステルゴムなどのアクリル系ゴム重合体があげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0032】
ゴム状重合体(Y)にグラフト重合させる芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、o−クロルスチレン、p−クロルスチレンなどが、シアン化ビニル化合物の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが、アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどの炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが、これらと共重合可能なビニル化合物としては、マレイミド、N−フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド化合物やアクリル酸、メタクリル酸、イソプロペニルナフタレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどがあげられる。前記芳香族ビニル化合物のうちでは、スチレン、p−メチルスチレンが耐衝撃性、耐油性、加工性の点から、また、シアン化ビニル化合物および(または)アルキル(メタ)アクリレートのうちでは、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、ブチルアクリレートが耐衝撃性、耐油性の点から好ましい。
【0033】
ゴム状重合体(X)およびゴム状重合体(Y)は、耐油性および耐衝撃性の点から、好ましくはゴム状重合体(X)とゴム状重合体(X)およびゴム状重合体(Y)との重量比((X)成分/((X)成分+(Y)成分))が0.2〜0.9、好ましくは0.3〜0.85、さらに好ましくは0.35〜0.70である。
【0034】
本発明の難燃樹脂組成物に使用される共重合体(A)、塩化ビニル系樹脂(B)、グラフト共重合体(C)およびグラフト共重合体(D)の割合は、耐油性、耐衝撃性、耐熱性、剛性、加工性、難燃性の点から、共重合体(A)5〜55部、好ましくは5〜45部、さらに好ましくは10〜40部、塩化ビニル系樹脂(B)30〜90部、好ましくは35〜85部、さらに好ましくは40〜80部、グラフト共重合体(C)1〜25部、好ましくは1〜20部、さらに好ましくは1〜15部、およびグラフト共重合体(D)1〜25部、好ましくは1〜20部、さらに好ましくは1〜15部で、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分の合計が100部である。
【0035】
本発明の組成物の製法としては、本発明の範囲の組成物がえられるかぎり、いかなる重合法、開始剤、連鎖移動剤、界面活性剤を用いて製造したものを使用しても構わない。たとえば、共重合体(A)、塩化ビニル系樹脂(B)、グラフト共重合体(C)、グラフト共重合体(D)は、公知の乳化重合法、乳化−懸濁重合法、乳化−塊状重合法、塊状−懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法などの重合法によって重合したものでよい。
【0036】
本発明においてとくに重要なグラフト共重合体(C)、(D)は、ゴム粒径を維持し、グラフト率を制御しやすい点から、乳化重合法によるものが好ましい。グラフト共重合体を製造する際の開始剤、連鎖移動剤としては、過硫酸カリウムなどの熱分解開始剤、鉄−還元剤−有機パーオキサイドなどのレドックス系開始剤など公知の開始剤、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー、テルピノレンなど公知の連鎖移動剤を使用しうる。
【0037】
本発明の難燃樹脂組成物を具体的に製造する方法は、共重合体(A)、塩化ビニル系樹脂(B)、グラフト共重合体(C)、(D)の製造方法によって異なるが、たとえば、これらをラテックス、サスペンション、スラリー、溶液、粉末、ビーズ、ペレットなどのいずれかの状態で製造したのち混合して製造する方法があげられる。
【0038】
重合後のグラフト共重合体ラテックスからポリマー粉末を回収する方法としては、通常の方法、たとえばラテックスに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムのようなアルカリ土類金属の塩、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムのようなアルカリ金属の塩、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸のような無機酸、有機酸を添加することによりラテックスを凝固したのち、脱水乾燥する方法で実施することができる。またスプレー乾燥法も使用できる。
【0039】
これらの混合物は、バンバリーミキサー、ロールミル、一軸押出機、2軸押出機など公知の溶融混練機で混練することができる。
【0040】
本発明の難燃樹脂組成物は、通常よく知られた酸化防止剤、熱安定剤、滑剤はもとより、必要に応じて適宜UV吸収剤、顔料、帯電防止剤、さらに難燃剤、難燃助剤をあわせて使用することもできる。とくにスチレン系樹脂に用いられるフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系安定剤、塩化ビニル系樹脂に配合される錫系安定剤、鉛系安定剤、および各種脂肪酸エステル、金属石鹸、ワックス類などの滑剤などは、本発明の組成物を射出成形用組成物としてより高性能なものにするために用いるのが通常である。また、本発明の組成物は、塩化ビニル系樹脂が有効に働いて良好な難燃性を示すが、難燃性の必要度合いによって少量のハロゲン系難燃剤、アンチモン化合物などの難燃助剤を配合して使用することもできる。
【0041】
本発明の好ましい態様としては、
芳香族系ビニル化合物65〜80%、シアン化ビニルモノマー20〜35%とこれらと共重合可能な他のビニルモノマー0〜15%からなり、メチルエチルケトン可溶部の還元粘度が0.20〜0.45dl/g(N,N−ジメチルホルムアミド溶液、30℃、濃度0.3g/dl)である共重合体(A)10〜40部、粘度平均重合度が450〜750である塩化ビニル系樹脂(B)40〜80部、ゴム状重合体(X)50〜85部にシアン化ビニル化合物および(または)アルキル(メタ)アクリレート20〜90%、芳香族系ビニル化合物10〜80%およびこれらと共重合可能な他のビニル化合物0〜10%からなる単量体混合物15〜50部を重合してなるグラフト共重合体(C)1〜15部および
ゴム状重合体(Y)50〜85部にシアン化ビニル化合物および(または)アルキル(メタ)アクリレート20〜90%、芳香族系ビニル化合物10〜80%およびこれらと共重合可能な他のビニル化合物0〜10%からなる単量体混合物15〜50部を重合してなるグラフト共重合体(C)1〜15部
からなり、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分の合計が100部であり、かつ、
ゴム状重合体(X)が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびクロトン酸のうちの少なくとも1種の不飽和酸5〜25%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートの少なくとも1種5〜30%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルメタクリレートの少なくとも1種20〜80%、これらと共重合可能な芳香族ビニル化合物、分子中に2つ以上の重合性の官能基を有する単量体およびシアン化ビニル化合物のうちの1種以上0〜40%を重合させることにより調製した酸基含有ラテックス(S)を使用する凝集肥大法により製造したゴム重合体であり、かつ
ゴム状重合体(X)とゴム状重合体(X)およびゴム状重合体(Y)との重量比((X)成分/((X)成分+(Y)成分))が0.2〜0.9であり、かつ、ゴム状重合体(X)が平均粒径330〜900nm、標準偏差40%以下の粒径分布であり、ゴム状重合体(Y)が平均粒径50〜300nm、標準偏差40%以下の粒径分布である難燃樹脂組成物があげられる。このばあいには、とくに耐衝撃性、耐油性に著しく優れ、かつ耐熱性、加工性、剛性、難燃性にも優れるという効果がえられる。
【0042】
【実施例】
以下、本発明の難燃樹脂組成物を具体的な実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0043】
なお、以下の製造例、実施例における評価はつぎの方法によって行なった。
【0044】
(還元粘度)
共重合体(A)のラテックスに塩酸を加えて凝固させ、えられた凝固スラリーを熱処理、脱水乾燥して樹脂粉末をえ、濃度0.3g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液として30℃で還元粘度を測定した。
【0045】
(重合転化率)
ガスクロマトグラフィー分析により残存単量体量を測定し、算出した。
【0046】
(粘度平均重合度)
JIS K 6721に基づき、塩化ビニル系樹脂の粘度平均重合度を測定した。
【0047】
(グラフト共重合体のグラフト率)
グラフト共重合体のパウダーをメチルエチルケトンに溶解して遠心分離し、メチルエチルケトン可溶分と不溶分をえた。この可溶分と不溶分との比率から、グラフト率を求めた。
【0048】
(ゴム状重合体の粒径、粒径分布の標準偏差)
パシフィックサイエンス社製のナイコンプ粒径測定機を用いてゴム状重合体ラテックスの粒径および粒径分布の標準偏差を測定した。
【0049】
(難燃樹脂組成物の特性)
1 アイゾット衝撃強度
ASTM D−256(厚さ1/4インチ)の方法で23℃で測定した。
2 引張強度、引張伸び
ASTM D638の方法で1号ダンベルを使用し、23℃で評価した。
3 耐熱性(HDT)
ASTM D648の方法で18.6kg/cm荷重の熱変形温度で評価した。
4 耐油性
23℃で1号ダンベルを表面歪1.5%となる固定治具にセットし、ダンベル表面に油を均一に塗布し、表面にクラックが発生するまでの時間を測定し、つぎの4段階で評価した。油は、コシロ工業(株)製の金属板プレス用油UB75Nを用いた。
【0050】
◎:120時間でわれない
○:24時間以上120時間未満でわれる
△:5時間以上24時間未満でわれる
×:5時間未満でわれる
【0051】
5 流動性
(株)ファナック製FAS100B射出成形機を使用し、シリンダー温度190℃、射出圧力1350kg/cmで、厚さ3mmのスパイラル形状の金 型内における樹脂の流動長(単位:mm)で評価した。
【0052】
特性はいずれも数値が大きいほど優れていることを示す。
【0053】
製造例1(共重合体(A)の製造)
(1)共重合体(A−1)の製造
攪拌機および冷却機付の反応容器にチッ素気流中でつぎの物質を仕込んだ。
【0054】
水 250部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.4部
硫酸第1鉄 0.0025部
エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム 0.01部
パルミチン酸ソーダ 3部
【0055】
チッ素気流中で65℃に加熱撹拌後、アクリロニトリル(AN)26部、スチレン(St)74部を重合開始剤のクメンハイドロパーオキサイド(CHP)0.3部、重合度調整剤のt−ドデシルメルカプタン(tDM)1部とともに8時間で連続滴下した。滴下終了後、さらに65℃で1時間撹拌し、重合を終了した。重合転化率は99%、還元粘度は0.32であった。
【0056】
(2)共重合体(A−2)の製造
モノマー、重合開始剤、重合度調整剤をつぎのように変更した以外は、共重合体(A−1)と同様にして製造した。α−メチルスチレン(αS)68部を一括で仕込んだのち、スチレン6部、アクロリニトリル26部を重合開始剤のクメンハイドロパーオキサイド0.5部、重合度調整剤のt−ドデシルメルカプタン0.8部とともに8時間で連続滴下した。滴下終了後、さらに65℃で1時間撹拌し、重合を終了した。重合転化率は98%、還元粘度は0.33であった。
【0057】
(3)共重合体(A−3)の製造
共重合体(A−1)と同様にして表1に示す単量体混合物を使用し共重合体(A−3)を製造した。重合転化率は99%、還元粘度は0.42であった。
【0058】
(4)共重合体(A−4)の製造
共重合体(A−1)と同様にして表1に示す単量体混合物を使用し共重合体(A−4)を製造した。重合転化率は99%、還元粘度は0.25であった。
【0059】
結果を表1にまとめて示す。
【0060】
【表1】
Figure 0003623612
【0061】
製造例2(塩化ビニル系樹脂(B)の合成)
(1)塩化ビニル系樹脂(B−1)、(B−2)の製造
公知の懸濁重合法により、ポリ塩化ビニル(B−1)を製造した。えられた重合体の粘度平均重合度は600であった。
【0062】
さらにポリ塩化ビニル(B−1)を公知の方法により塩素化し、後塩素化ポリ塩化ビニル(B−2)をえた。塩素含有率は60%であった。
【0063】
(2)塩化ビニル系樹脂(B−3)の製造
公知の懸濁重合法により、ポリ塩化ビニル(B−3)を製造した。えられた重合体の粘度平均重合度は500であった。
【0064】
(3)塩化ビニル系樹脂(B−4)の製造
公知の懸濁重合法により、ポリ塩化ビニル(B−3)を製造した。えられた重合体の粘度平均重合度は700であった。
【0065】
製造例3(ゴム状重合体(X)、ゴム状重合体(Y)の製造)
(1)ゴム状重合体(X−1)の製造
第1段階として、ゴム状重合体(X−1)に肥大化させるために必要な未肥大ゴム状重合体(Y−1)を製造した。
【0066】
100L重合機に以下の物質を仕込んだ。
【0067】
純水 230部
過硫酸カリウム 0.2部
t−ドデシルメルカプタン 0.2部
重合機内の空気を真空ポンプで除いたのち、以下の物質を仕込んだ。
【0068】
オレイン酸ナトリウム 0.6部
ロジン酸ナトリウム 2部
ブタジエン 100部
【0069】
系の温度を60℃まで昇温し、重合を開始した。重合は25時間で終了し、重合転化率は96%であった。未肥大ゴム状重合体(Y−1)の粒径は85nm、標準偏差18%であった。
【0070】
第2段階として、未肥大ゴム状重合体(Y−1)からゴム状重合体(X)に肥大化させるために必要な酸基含有ラテックス(S)を以下のように製造した。
【0071】
撹拌機、還流冷却器、チッ素導入口、モノマー導入口、温度計の設置された反応器に、以下の物質を仕込んだ。
【0072】
純水 200部
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.6部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.5部
エチレンジアミン四酢酸ナトリウム 0.01部
硫酸第1鉄 0.0025部
【0073】
反応器を撹拌しながらチッ素気流下に70℃まで昇温させた。70℃に到達後、ブチルメタクリレート(BMA)25部、ブチルアクリレート(BA)5部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、クメンハイドロパーオキサイド0.15部の単量体混合物を2時間かけて滴下し、さらにブチルメタクリレート50部、ブチルアクリレート4部、メタクリル酸(MAA)16部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、クメンハイドロパーオキサイド0.15部を4時間かけて滴下し、滴下終了後、70℃で1時間撹拌を続け重合を終了し、酸基含有ラテックス(S−1)をえた。重合転化率は99%であった。平均粒径は95nmであった。
【0074】
第3段階として、さきに製造した未肥大ゴム状重合体(Y−1)と酸基含有ラテックス(S−1)を使用し、ゴム状重合体(X−1)を製造した。
【0075】
未肥大ゴム状重合体(Y−1)のラテックス100部(固形分)に、水酸化ナトリウム0.1部を添加し、さらに先に製造した酸基含有ラテックス(S−1)3.3部(固形分)を60℃で添加後、撹拌を1時間続けて肥大化させ、ゴム状重合体(X−1)の製造を行なった。ゴム状重合体(X−1)の平均粒径は450nm、標準偏差24%であった。
【0076】
(2)ゴム状重合体(X−2)の製造
酸基含有ラテックス(S−1)と同様にして表2に示す単量体混合物を使用し、酸基含有ラテックス(S−2)を製造した。
【0077】
ゴム状重合体(X−2)は、酸基含有ラテックス(S−2)を2.6部(固形分)使用した以外は、ゴム状重合体(X−1)と同様の方法で製造した。ゴム状重合体(X−2)の平均粒径は590nm、標準偏差26%であった。
【0078】
(3)ゴム状重合体(X−3)の製造
酸基含有ラテックス(S−1)と同様にして表2に示す単量体混合物を使用し、酸基含有ラテックス(S−3)を製造した。
【0079】
ゴム状重合体(X−3)は、酸基含有ラテックス(S−3)を2.2部(固形分)、水酸化ナトリウム0.2部使用した以外は、ゴム状重合体(X−1)と同様の方法で製造した。ゴム状重合体(X−3)の平均粒径は710nm、標準偏差23%であった。
【0080】
(4)ゴム状重合体(X−4)の製造
酸基含有ラテックス(S−1)と同様にして表2に示す単量体混合物を使用し、酸基含有ラテックス(S−4)を製造した。
【0081】
ゴム状重合体(X−4)は、酸基含有ラテックス(S−4)を3部使用した以外は、ゴム状重合体(X−1)と同様の方法で製造した。ゴム状重合体(X−4)の平均粒径は510nm、標準偏差22%であった。
【0082】
(5)ゴム状重合体(Y−2)の製造
未肥大ゴム状重合体(Y−2)は、単量体として、ブタジエン70部、スチレン30部を使用し、乳化剤としてオレイン酸ナトリウム0.6部を初期に仕込み、ロジン酸ナトリウム2部を重合中に20時間で連続追加した以外は、ゴム状重合体(Y−1)と同様の方法で製造した。20時間後の重合転化率は98%、未肥大ゴム状重合体(Y−2)の平均粒径は180nm、標準偏差24%であった。
【0083】
表2、表3にまとめて示す。
【0084】
【表2】
Figure 0003623612
【0085】
【表3】
Figure 0003623612
【0086】
製造例4(グラフト共重合体(C)の製造)
(1)グラフト共重合体(C−1)の製造
撹拌機、還流冷却器、チッ素導入口、モノマー導入口、温度計の設置された反応器に、以下の物質を仕込んだ。
【0087】
純水 280部
ゴム状重合体(X−1)(固形分) 65部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.3部
EDTA 0.01部
硫酸第1鉄 0.0025部
【0088】
反応器を撹拌しながらチッ素気流下に60℃まで昇温させた。60℃到達後にメチルメタクリレート(MMA)26部、スチレン9部、クメンハイドロパーオキサイド0.2部の混合物を連続的に5時間で滴下した。滴下終了後、60℃で2時間撹拌を続け、重合を終了し、グラフト共重合体(C−1)をえた。重合転化率は99%で、グラフト率は36%であった。
【0089】
(2)グラフト共重合体(C−2)の製造
グラフト共重合体(C−1)と同様の方法で、ゴム状重合体(X−1)75部にメチルメタクリレート13部、スチレン10部、アクリロニトリル2部、クメンハイドロパーオキサイド0.2部を開始剤として重合させ、グラフト共重合体(C−2)を製造した。重合転化率は98%で、グラフト率は25%であった。
【0090】
(3)グラフト共重合体(C−3)の製造
グラフト共重合体(C−1)と同様の方法で、ゴム状重合体(X−1)にかえてゴム状重合体(X−2)を使用して重合させ、グラフト共重合体(C−3)を製造した。重合転化率は99%で、グラフト率は33%であった。
【0091】
(4)グラフト共重合体(C−4)の製造
グラフト共重合体(C−1)と同様の方法で、ゴム状重合体(X−1)にかえてゴム状重合体(X−3)を使用して重合させ、グラフト共重合体(C−4)を製造した。重合転化率は99%で、グラフト率は43%であった。
【0092】
(5)グラフト共重合体(C−5)の製造
グラフト共重合体(C−1)と同様の方法で、表4に示す単量体混合物とゴム状重合体(X−4)55部を使用し、グラフト共重合体(C−5)を製造した。重合転化率は99%、グラフト率は54%であった。
【0093】
(6)グラフト共重合体(C−6)の製造
グラフト共重合体(C−1)と同様の方法で、表4に示す単量体混合物とゴム状重合体(X−4)80部を使用し、グラフト共重合体(C−6)を製造した。重合転化率は98%、グラフト率は24%であった。
【0094】
結果をまとめて表4に示す。
【0095】
製造例5(グラフト共重合体(D)の製造)
(1)グラフト共重合体(D−1)の製造
グラフト共重合体(C−1)と同様の方法で、ゴム状重合体(X−1)にかえて上述の未肥大ゴム状重合体(Y−1)を使用し、グラフト共重合体(D−1)を製造した。重合転化率は98%で、グラフト率は44%であった。
【0096】
(2)グラフト共重合体(D−2)の製造
グラフト共重合体(C−1)と同様の方法で、ゴム状重合体(X−1)にかえて未肥大の日本ゼオン(株)製のNipol LX111NF(粒径370nm、標準偏差42%)を使用し、グラフト共重合体(D−2)を製造した。重合転化率は99%で、グラフト率は34%であった。
【0097】
(3)グラフト共重合体(D−3)の製造
グラフト共重合体(C−1)と同様の方法で、表4に示す単量体混合物とゴム状重合体(Y−2)70部を使用し、グラフト共重合体(D−3)を製造した。重合転化率は98%、グラフト率は33%であった。
【0098】
結果をまとめて表4に示す。
【0099】
【表4】
Figure 0003623612
【0100】
実施例1〜11および比較例1〜5
製造例1、3、4、5でえられた共重合体(A)、グラフト共重合体(C)、グラフト共重合体(D)のラテックスを表5に示す割合(固形分)で均一に混合し、フェノール系抗酸化剤(旭電化工業(株)製AO−50)を1部加え、塩化カルシウム水溶液で凝固させたのち、水洗、脱水、乾燥し、共重合体(A)とグラフト共重合体(C)、(D)の混合パウダーをえた。そののち、共重合体(A)、グラフト共重合体(C)、(D)の混合パウダーおよび塩化ビニル系樹脂(B)を表5の割合で混合し、この混合物100部に対して錫安定剤であるジブチルスズマレート2部およびジブチルスズメルカプト1部、滑剤であるグリセリントリステアレート1部およびポリエチレンワックス1部を加えて20Lスーパーミキサーでブレンドし、40m/m 1軸押出機でペレット化した難燃樹脂組成物を製造した。
【0101】
えられた難燃樹脂組成物を用いてその特性(アイゾット衝撃強度、引張強度、引張伸び、耐熱性、耐油性、流動性、難燃性)を評価した。
【0102】
結果を表5に示す。
【0103】
なお、アイゾット衝撃強度、引張強度、引張伸び、耐熱性に使用する試験片は、(株)ファナック製のFAS100B射出成形機を使用し、シリンダー温度190℃で成形し、評価に供した。
【0104】
【表5】
Figure 0003623612
【0105】
表5の結果から、実施例1〜11に代表される本発明の難燃樹脂組成物は、とくに耐油性、耐衝撃性に優れ、かつ剛性、耐熱性、流動性も良好なことが明らかである。
【0106】
【発明の効果】
本発明の組成物は加工性に優れ、かつ、耐油性、耐衝撃性に著しく優れ、かつ耐熱性、剛性、難燃性に優れた成形品を与えることができる。

Claims (3)

  1. 芳香族ビニル化合物60〜85重量%、シアン化ビニル化合物15〜40重量%およびこれらと共重合可能なビニル化合物0〜25重量%を重合してなり、メチルエチルケトン可溶部の還元粘度が0.15〜0.55dl/g(N,N−ジメチルホルムアミド溶液、30℃、濃度0.3g/dl)の共重合体(A)5〜55重量部、
    粘度平均重合度が400〜800の塩化ビニル系樹脂(B)30〜90重量部、
    平均粒径が450〜900nmのゴム状重合体(X)40〜95重量部に、シアン化ビニル化合物および(または)アルキル(メタ)アクリレート10〜90重量%、芳香族ビニル化合物10〜90重量%およびこれらと共重合可能なビニル化合物0〜20重量%からなる単量体混合物5〜60重量部を合計100重量部になるように重合してなるグラフト共重合体(C)1〜25重量部および
    平均粒径が50〜300nmのゴム状重合体(Y)40〜95重量部に、シアン化ビニル化合物および(または)アルキル(メタ)アクリレート10〜90重量%、芳香族ビニル化合物10〜90重量%およびこれらと共重合可能なビニル化合物0〜20重量%からなる単量体混合物5〜60重量部を合計100重量部になるように重合してなるグラフト共重合体(D)1〜25重量部
    からなり、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分の合計が100重量部であり、かつ、
    ゴム状重合体(X)が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびクロトン酸のうちの少なくとも1種の不飽和酸5〜50重量%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種50〜95重量%およびこれらと共重合可能なビニル化合物0〜40重量%を重合させることにより調製した酸基含有ラテックス(S)を使用する凝集肥大法により製造したゴム状重合体である難燃樹脂組成物。
  2. ゴム状重合体(X)が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびクロトン酸のうちの少なくとも1種の不飽和酸5〜25重量%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートの少なくとも1種5〜30重量%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルメタクリレートの少なくとも1種20〜80重量%、これらと共重合可能な芳香族ビニル化合物、分子中に2つ以上の重合性の官能基を有する単量体およびシアン化ビニル化合物のうちの1種以上0〜40重量%を重合させることにより調製した酸基含有ラテックス(S)を使用する凝集肥大法により製造したゴム状重合体である請求項1記載の難燃樹脂組成物。
  3. ゴム状重合体(X)とゴム状重合体(X)およびゴム状重合体(Y)との重量比((X)成分/((X)成分+(Y)成分))が0.2〜0.9であり、かつ、ゴム状重合体(X)が平均粒径450〜900nm、標準偏差40%以下の粒径分布であり、ゴム状重合体(Y)が平均粒径50〜300nm、標準偏差40%以下の粒径分布である請求項1記載の難燃樹脂組成物。
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