JPH0745641B2 - 熱転写用インク - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明は熱転写型プリンターに供する熱転写記録シー
トに用いるインク組成物に関する。

従来の技術 近年、熱転写記録はノンインパクトで無騒音、メンテナ
ンスフリー、低コスト、小型軽量化、カラー化が可能で
あるという利点があるために、ファクシミリ、コンピュ
ーター末端、レコーダー、プリンター等の多くの分野で
用いられてきた。

熱転写プリンターに供される熱転写記録シートのインク
は熱溶融性であり、熱転写時に固態−液態−固態の相変
化を鋭敏に行なわせるために、従来からインク組成の主
成分は炭化水素を主体とする天然ワックスおよび／また
は合成ワックスに顔料、染料等の着色剤を分散したもの
であり、これに皮膜強化、接着性向上等のために多少の
合成樹脂や可塑剤を添加していた。

発明が解決しようとする問題点 上記のように、従来の熱転写用インク主成分がワックス
であるために、溶融時の凝集力が弱く、粗い紙（低平滑
紙）に印字したときに像が不鮮明であるという欠点があ
った。

粗い紙は紙の表面の孔の径、深さが大きく、転写の際に
インクとの接触面積が小さために、凝集力が小さいイン
クでは接触していない部分が熱転写インクシートの基材
に残留し、紙に転写しない。また、凝集力を上げるため
に単に合成樹脂成分を増しただけでは接着性が増すため
にインクシートの基材とインクとの剥離が悪くなった
り、軟化点が上昇するので従来のサーマルヘッドでは転
写できない。

この発明は、この問題を解決しようとするもので、その
目的は主成分のワックスの溶融温度を上昇させずに溶融
状態の時の凝集力を向上させて、粗い紙（低平滑紙）に
転写しても鮮明な印字像が得られるような熱転写用イン
クを提供することである。

問題点を解決するための手段 上記問題点を解決するための構成は、熱可塑性有機物質
と着色剤とベンジリデンソルビトールおよび／またはト
リベンジルデンソルビトールを含む熱転写用インクであ
り、具体的には上記熱可塑性を示す有機物質としてワッ
クスまたはワックスと熱可塑性樹脂との混合物を用い、
着色剤としては顔料および／または油溶性染料を用いる
ものである。

作用 この発明の熱転写用インクの成分であるジベンジリデン
ソルビトールとトリベンジリデンソルビトールはゲル化
剤として公知の物質であるが、この発明は、これらの物
質がワックスの溶融状態でもゲル化作用があるという知
見に基づき、それを熱転写用インクに応用したものであ
る。

ワックスは溶融したときの粘度の低下が急激で、溶融時
に凝集力がほとんどない。しかし、ジベンジリデンソル
ビトールとトリベンジリデンソルビトールはワックスの
溶融時にゲル化作用を示すだけではなく、凝集力も向上
させ、インクの転写効率を向上させるので、低平滑紙に
も鮮明な印字ができる。

このジベンジリデンソルビトールとトリベンジルデンソ
ルビトールは単独または混合して用いられるものであ
り、その使用量はインクの0.3重量％〜５重量％、特に
0.5重量％〜２重量％である。

この発明に用いられるワックスと熱可塑性樹脂の軟化温
度は50℃〜300℃が適当である。

ワックスとしては天然系ワックス、合成ワックスのいず
れも用いられる。

天然系ワックスとして、カルナバワックス、パラフィン
ワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられ
る。

合成ワックスとしては、ポリエチレンワックス等があ
る。これらのワックスは単独または混合して用いられ、
その使用量は35〜97重量％が適当である。

熱可塑性樹脂としては、上記ワックスと相溶するもので
あれば何でもよく、具体的にはエチレンビニルアセテー
ト共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、ポ
リエチレン、ポリビニルブチラール、ポリエステル等が
挙げられる。

これら熱可塑性樹脂の使用量は５〜20重量％が適当であ
る。

この発明で用いられる着色材は顔料と油溶性染料であ
り、これらも単独または混合して用いることができる。
その使用量は0.5〜20重量％である。

以下、この発明を実施例によって、具体的に説明する。

実施例 以下の実施例中に示すインク成分の量（％）はすべて重
量％である。

実施例１ インクの組成 パラフィンワックス 130゜ F［日本精蝋（株）製］55％ カルナバワックス 1号 10％ ポリエチレンワックス［サンワックス 165P、三洋化成
工業（株）製］ 24％ カーボンブラック［MA−100、三菱化成工業（株）製］1
0％ ジベンジリデンソルビトール［ゲルオールＤ、新日本理
化（株）製］ １％ 上記組成の混合物をプラネタリーミキサーにより予備分
散し（120℃、30分）、冷却固化後、粉砕してから３本
ロールミルにより本分散して（後ロールと中ロール、10
0℃、前ロールは水冷して15回通し）黒色の熱転写用イ
ンクをつくった。

比較例１ 上記実施例１におけるジベンジルデンソルビトールを除
いた他は実施例１と同じ成分の混合物を同じ方法で分散
処理をして熱転写インクをつくった。

実施例２ インクの組成 パラフィンワックス 120゜ F［日本精蝋（株）製］50
％ カルナバワックス 1号 20.5％ マイクロクリスタリンワックス［Hi−Mic−1070、日本
精蝋（株）製］ 10 ％ エチレンビニルアセテート共重合物［エバフレックス、
三井ポリケミカル（株）製］ ８ ％ カーボンブラック［RAVEN1255、コロンビアンカーボン
日本（株）製］ ８ ％ C.I.ソルベントブラック50［CHUOBLACK80、中央合成化
学（株）製］ ２ ％ ジベンジリデンソルビトール［ゲルオールＤ、新日本理
化（株）製］ １ ％ トリベンジリデンソルビトール［ゲルオールＴ、新日本
理化（株）製］ 0.5％ 上記組成の混合物を実施例１と同様の方法で分散させ
て、黒色の熱転写用インクを得た。

比較例２ 実施例２のジベンジリデンソルビトールとトリベンジリ
デンソルビトールを除いた他は上記実施例２と同じ成分
の混合物を同じ方法で分散処理をして熱転写用インクを
つくった。

実施例３ インクの組成 パラフィンワツクス 130゜ F［日本精蝋（株）製］50
％ 酸化ワックス［NSP6010、日本精蝋（株）製］ 30.5％ エチレンビニルアセテート共重合体［エバフレックス 3
10、三井ポリケミカル（株）製］ ５ ％ エチレンエチルアクリレート共重合体［NUC−6070、日
本ユニカー（株）製］ ５ ％ C.I.ピグメントブルー15（フタロシアニンブルーＢ）８
％ トリベンジリデンソルビトール［ゲルオールＴ、新日本
理化（株）製］ 1.5％ 上記組成の混合物を実施例１と同様の方法で分散して、
青色の熱転写用インクをつくった。

比較例３ 実施例３のインク組成のうち、トリベンジリデンソルビ
トールを除いた他は、実施例３と同じ成分の混合物を同
じ方法で分散処理をして青色の熱転写用インクをつくっ
た。

上記実施例１、２、３、および比較例１、２、３より得
られた各インクを100℃に加熱溶融して、厚さ４μｍのP
ETフィルムにワイヤーバー法で塗布し、インク層厚５μ
ｍの熱転写用インクシートをつくった。

この熱転写用インクシートを用い、ベック平滑度４秒お
よび15秒の各ボンド紙、180秒の熱転写専用紙に熱印加
量10DPIにおいて、0.6mJ/dotで転写した。その結果を表
に示す。

発明の効果 以上説明したように、この発明の熱転写用インクは従来
の熱転写インクに比較して溶融温度（転写温度）が高く
なく、凝集力が大きいので粗い紙（低平滑紙）に対して
も鮮明な印字ができる。

また、この発明の熱転写用インクを用いたインクシート
を用いれば、サーマルヘッドによる熱転写、通電ヘッド
による通電熱転写等、いずれの原理による熱付与手段で
あってもよいので、熱溶融性インクを被転写媒体に転写
して記録を得ようとするどのようなタイプのプリンター
にも供することができる。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】熱可塑性有機物質と着色剤とジベンジリデ
   ンソルビトールおよび／またはトリベンジリデンソルビ
   トールを含むことを特徴とする熱転写用インク。
2. 【請求項２】熱可塑性を示す有機物質がワックスまたは
   ワックスと熱可塑性樹脂との混合物である特許請求の範
   囲（１）記載の熱転写用インク。
3. 【請求項３】着色剤が顔料および／または油溶性染料で
   ある特許請求の範囲（１）記載の熱転写用インク。