JPH0740706A - 高性能偏平空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】 高性能偏平空気入りラジアルタイヤのグリッ
プ力の改善向上を図ること。 【構成】 この種ラジアルタイヤのトレッド部補強を担
うベルト２とキャップ４との間に、テンションメンバー
３を介設してトレッド部に生じ勝ちなバックリングリン
グ起因の接地圧の局部低下を回避すること。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は高性能偏平空気入りラ
ジアルタイヤに関し、とくに時速200km をこえるような
高速走行にも供される車両（主として乗用車）に装備し
て、そこに必要な性能が完備されること、殊に高速耐久
性の水準を高度に維持したままで旋回走行の際におけに
路面把持性（グリップ性）についての一層の改善を図っ
たこの種のタイヤを提案しようとするものである。

【０００２】高速走行車両に装着される高性能空気入り
タイヤは、通常偏平比が0.6 以下、最近に至って0.35以
下、のように極端に低いものまで実用され、ここに車速
が300km/h 以上にも及ぶような高速に耐えることも必要
とされる。

【０００３】それというのも、高速道路網なかでも自動
車専用道路の整備があまねく行き渡るにつれて、自動車
の高出力化、高性能化の著しい進歩に即応して、緊急、
非常の要請にも遅滞のない対処・借置を可能ならしめる
態勢の確立がのぞまれるからである。

【０００４】

【従来の技術】この種の使途に供される偏平空気入りラ
ジアルタイヤは、レーヨンやポリエステルなどのラジア
ル排列コードのプライよりなるトロイド状のカーカスを
ボディ補強として、これにカーカスのクラウン部のまわ
りを取囲んでカーカスの中央円周を含む平面に対し比較
的小角度つまり20〜35゜の傾斜排列にて、実質的に非伸
長性の通常はスチールフィラメントによるコードからな
る少なくとも２層のコード交差積層構造とされるベルト
と、このベルトの外周を、さらに上記平面に対し実質上
平行な排列でベルトの全幅を掩って取巻く熱収縮性コー
ドたとえばナイロンコードのスパイラル巻回になる単層
又は二層のキャップとを、ときにはさらにこのキャップ
の両側区域の外周を取巻く同様なスパイラル巻回による
１〜３層のレイヤーとともに、トレッド部の補強として
具備し、このトレッド部にはその幅方向に間隔をおく複
数の外周主溝を有し、その一例を図１に示したように、
より一般的な、いわゆる汎用の空気入りタイヤに比し全
体としてトレッド内部の鎧装強化の著しいことが特徴で
ある。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】従来の偏平空気入りラ
ジアルタイヤの高性能化に必要なトレッド部強化の一例
について上述したように、ベルトとキャップ及びときに
はレイヤーなどの高度の積層に加えて、偏平比の小さい
こと、即ちサイドウオール高さが低くて勢いそのフレッ
クスゾーンが狭いことも相まってタイヤ全体としての剛
性が高いため、タイヤの負荷転動の際に作用する荷重が
大きくとくに旋回走行時におけるトレッドのグリップ力
が低下し勝ちで、旋回性能の低下に問題があることが指
摘される。

【０００６】この点について発明者らが検討を加えた結
果、上記グリップ力の低下は、トレッド接地部における
接地圧が旋回時に著るしく不均一化すること、そしてこ
の不均一については上記したトレッド部の強化の下で、
トレッド部半幅の中点（いわゆる1/4 点）近傍に生じる
バックリングに起因することが判明した。

【０００７】ここにバックリングは、トレッド部の接地
表層にて、タイヤの旋回走行の際、旋回の外側端に作用
する外力に基いた面内圧縮応力が臨界値に達して急激な
面外変位を伴う大変形が、上記1/4 点の近傍に生じ、こ
の大変形は上記したトレッド部強化層とともにトレッド
クラウン部の内面を内向きに膨出させるように起って、
トレッド部の接地表層が局部的に窪むようにあらわれ
る。

【０００８】従ってこのような窪みがあらわれないトレ
ッド部補強についての新規な構想により、高性能偏平空
気入りタイヤの旋回走行の際におけるクリップ性の低下
を、高速耐久性に悪影響を伴わず、有利適切に回避した
高性能偏平空気入りラジアルタイヤを与えることがこの
発明の目的である。

【０００９】

【課題を解決するための手段】この発明はラジアル排列
コードのプライよりなるトロイド状のカーカスをボディ
補強とし、このカーカスのまわりを取囲んで該カーカス
の中央円周を含む平面に対し比較的小角度の傾斜排列を
なす実質的に非伸長性コードからなる少なくとも２層の
コード交差積層になるベルトと、このベルトの外周をさ
らに上記平面に対して実質上平行な排列でベルトの全幅
を掩って取巻く熱収縮性コードよりなる少なくとも一層
のキャップとをトレッド部補強として具備し、このトレ
ッド部には、その幅方向に間隔をおく複数の外周主溝を
有している、偏平比0.6 以下の空気入りラジアルタイヤ
にして、ベルトとキャップとの間に上記平面に対し15〜
40゜でベルトのコードの傾斜排列には合致しない角度の
傾斜排列をなす非金属コードの少なくとも一層よりな
り、ベルトの交差コードと協同してトレッド半幅の中点
近傍でのバックリングに抵抗するテンションメンバー
を、これに隣接するベルトの幅に対し70〜95％の異幅を
もって介設して成ることを特徴とする、高性能偏平空気
入りラジアルタイヤである。

【００１０】ここでキャップの両側区域にそれらの外周
を取巻くキャップと同様な例えばスパイラル巻回による
１〜３層のレイヤーを、ベルトのエンドセパレーション
防止のために付加し得るのはいうまでもなく、またこの
場合レイヤーの少なくとも一のベルトエンドから離れた
内側縁はトレッド部1/4 点よりも内側でトレッド部外周
主溝の溝底直下から離間させ、レイヤの残りがあるとき
これも同じく溝底直下をよけて位置させることがのぞま
しい。

【００１１】さて図１にこの発明にしたがう高性能偏平
空気入りラジアルタイヤの要部を左半部の断面で示し、
図中１はこの例でレーヨンコード（1650 D/2）１_-1，１
_-2，をラジアル排列で用いた２プライよりなるトロイド
状のカーカスであり、２は、カーカス１のまわりを取囲
んで該カーカスの中央円周を含む平面ｐに対しこの例で
25゜の傾斜排列をなすスチールコード（素線径0.23mmの
１×５構造）２_-1，２ _-2，を用いた２層の交差積層にな
るベルト、また３は非金属コード、この例でケブラー
（芳香族ポリアミド）コード（1500 D/3）を上記平面ｐ
に対し31゜の傾斜にてベルト２のコード２_-2と交差排列
としたテンションメンバーで、隣接するコード２_-2のベ
ルト幅Ｗに対して87％に当る配置幅にて、ベルト２と、
次にのべるキャップ４との間に介設し、このキャップ４
は、ベルト２の外周をその全幅を掩うように、この例で
ナイロンコード（1260 D/2）４_-1，４_-2，のそれぞれ５
本宛引揃えてゴム被覆したリボンを用いてスパイラル状
に巻回した２層積層に成り、また５はキャップ４の両側
域にて、それぞれナイロンコード（1260 D/2）５_-1，５
_-2による同様なリボンを用いてナイロンコード５_-1に比
し、同５_-2はより狭い幅でスパイラル状に巻回した２層
積層になるレイヤーであり、カーカス１はボディ補強と
して、またベルト２とキャップ４及びレイヤー５とはト
レッド部補強として具備するものとする。

【００１２】このトレッド部Ｔにその幅方向に間隔をお
く複数の外周主溝６を有し、この例でレイヤー５は、ト
レッド部Ｔの側端に近い外周主溝６を挟む配置の内側端
を有するものとする。この発明では、上にケブラーコー
ドを用いる事例を掲げたテンションメンバー３は、ポリ
エステル（ＰＥＴ）、レーヨン及びナイロンなど、高モ
ジュラスコードを使用してもよい。

【００１３】

【作用】この発明の上記したボディ補強、トレッド補強
及びトレッド部Ｔの溝排列については、高速走行用の高
性能偏平空気入りラジアルタイヤにおける要求性能を充
足するための在来の慣例を踏襲するほか、とくに旋回時
におけるトレッド部Ｔのグリップ性能を高めるために、
ベルト２とキャップ４との間に、ベルト２の交差コード
２_-1，２_-2と協同してトレッド半幅の中点近傍で生じ勝
ちなバックリングに抵抗するテンションメンバー３を介
設した点に特異性がある。

【００１４】このテンションメンバーはすでにのべたよ
うにケブラーコードを最適とする高モジュラスの非金属
コードを、カーカスの中央円周を含む平面に対する交角
が15〜40゜で、ベルト２のコード２_-2の傾斜排列とは合
致しない傾斜排列とすることにより、ベルト２のコード
２_-1，２_-2とともに三角形網目構造を形成することによ
り、ベルト２の曲げ剛性をきわだって増強するのに役立
ち、カーカスの中央円周を含む平面に対してテンション
メンバー３のコードの傾斜排列は15゜より小さいと曲げ
剛性の増強に役立たず、また40゜をこえても同様でこの
ことはバックリングによる面外変位がトレッド部Ｔの接
地長並びに、トレッド半幅の中点近傍で極大となるよう
に収斂する如くに生起するからであり、この変位を十分
に抑制する三角形網目構造をより有利に形成するため
で、ここにベルト２の隣接コード２ _-2に対する角度差で
は10゜程度とすることが好ましい。

【００１５】テンションメンバー３の配置幅ｗは、隣接
コード２_-2のベルト幅Ｗの70％より狭いトレッド半幅の
中点近傍での面外変位の抑制効果が十分にあらわれない
反面95％よりも広すぎるとベルト２のエンドセパレーシ
ョンに悪影響があらわれることがこの配置幅ｗを限定す
る理由である。

【００１６】

【実施例】サイズ285/40 ZR17 の試作タイヤを図１に従
って調製し、これに対し図２に示す従来タイヤと比較し
たトレッド部における接地圧分布の試験結果を図３に示
した。ここに図２の従来タイヤの補強構造は、すでに述
べたところに従い、試作タイヤと共通の構成につき、共
通の番号を付して対応させた。試作タイヤとの差異は、
テンションメンバーの有無である。

【００１７】図３で接地圧のトレッド部Ｔの幅方向分布
を、従来タイヤについて破線で、一方この発明に従う試
作タイヤはテンションメンバー３にケブラーコードを用
いた事例を実線にて、またナイロンコードを用いた場合
の成績を一点鎖線をもって対比した。

【００１８】試験の条件はリムサイズ10J ×18で車輪に
組立て、内圧2.5kgf/cm²、速度30km/h、荷重500 kg^W Ｃ
Ａは０゜でＳＡを８゜に設定したがこのとき従来タイヤ
はトレッド半幅の中点（1/4 点）近傍で局部的な接地圧
の低下があらわれ、またその結果トレッド端で著しい接
地圧の上昇を生じているのに反して、試作タイヤは何れ
も1/4 点近傍での接地圧低下の度合いが低く従ってトレ
ッド端での接地圧上昇も抑制されることが判明した。

【００１９】次にケブラーコードをテンションメンバー
３に用いた供試タイヤと従来タイヤとについて、内圧2.
5kgf/cm²、荷重500 kg^W を付加して20分間経過毎に10km
/h宛増速して故障に至る速度を比較し、表１に従来タイ
ヤの成績を100 とする指数表示で結果を示した。なお表
１には、図３で示した接地圧の最大値と最小値の差Δ
Ｐ，ΔＰ′についても同様に指数表示し、さらに半径50
m の周回路面上での旋回走行における実車フィーリング
テストの所見をあわせ示した。

【００２０】

【表１】

【００２１】

【発明の効果】高速走行車両に装着される高性能偏平ラ
ジアルタイヤの旋回走行の際におけるトレッド部のグリ
ップ力の低下を、高速耐久性の劣化を伴うことなく有利
に回避して安定な旋回性能の著しい改善を遂げることが
できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明のタイヤの要図断面図である。

【図２】従来タイヤの部分断面図である。

【図３】接圧圧分布比較グラフである。

【符号の説明】

１ カーカス ２ ベルト ３ テンションメンバー ４ キャップ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ラジアル排列コードのプライよりなるト
   ロイド状のカーカスをボディ補強とし、このカーカスの
   まわりを取囲んで該カーカスの中央円周を含む平面に対
   し比較的小角度の傾斜排列をなす実質的に非伸長性コー
   ドからなる少なくとも２層のコード交差積層になるベル
   トと、このベルトの外周をさらに上記平面に対して実質
   上平行な排列でベルトの全幅を掩って取巻く熱収縮性コ
   ードよりなる少なくとも一層のキャップとをトレッド部
   補強として具備し、このトレッド部には、その幅方向に
   間隔をおく複数の外周主溝を有している、偏平比0.6 以
   下の空気入りラジアルタイヤにして、 ベルトとキャップとの間に上記平面に対し15〜40゜でベ
   ルトのコードの傾斜排列には合致しない角度の傾斜排列
   をなす非金属コードの少なくとも一層よりなり、ベルト
   の交差コードと協同してトレッド半幅の中点近傍でのバ
   ックリングに抵抗するテンションメンバーを、これに隣
   接するベルトの幅に対し70〜95％の配置幅をもって介設
   して成ることを特徴とする、高性能偏平空気入りラジア
   ルタイヤ。