JPH0738481Y2 - 建物の躯体とキャンティ構造物の梁との結合構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、建物の躯体にキャンティ構造物（支柱なし構
造物）の梁を結合するための構造に係り、例えばキャン
ティバルコニーに利用できるものである。

〔背景技術〕

第３図はキャンティバルコニー20を備えた建物21を示
し、この建物21は、工場で予め生産された複数の箱型ユ
ニット22を建設現場で組み合わせることにより建てられ
る工業化住宅である。キャンティバルコニー20は梁23、
桁24からなる骨組みに床版等を取り付けることにより構
成され、工場で作られるこのキャンティバルコニー20の
建物21への取り付けは、梁23の後端部を建物21の躯体に
結合することにより行われる。

第４図および第５図は梁23の後端部を建物21の躯体25に
結合するための従来構造を示す。ここで、建物21の躯体
25は前記ユニット22の骨組みとなっている柱26、梁27に
よって構成されている。

第４図の従来構造は、躯体25にブラケット28を設け、こ
のブラケット28と梁23のそれぞれの上面、側面、下面を
接合プレート29を介してボルト30、ナット31で結合した
構造となっている。

第５図の従来構造は、ブラケット28の先端面と梁23の後
端面とに垂直なエンド部材32,33を取り付け、エンド部
材32に突設したガイドピン34をエンド部材33の孔35に挿
入することにより梁23の位置決めを行い、両方のエンド
部材32,33をボルト36、ナット37で結合した構造となっ
ている。ボルト36は上下各２本の合計４本あり、またボ
ルト36は高張力ボルトであり、バルコニー20に作用する
垂直荷重による梁23の下向きモーメントおよびバルコニ
ー20に作用する例えば吹上風による梁23の上向きモーメ
ントがこれらの高張力ボルト36で受けられるようになっ
ている。

〔考案が解決しようとする課題〕

第４図の従来構造によると、多数のボルト30が必要にな
るとともに、ボルト30がブラケット28、梁23のそれぞれ
の上面、下面から突出することになるため、これらの上
面、下面に関するバルコニー20の仕上げ作業を行えない
という問題がある。

第５図の従来構造によると、このような仕上げ作業上の
問題は生じないが、ガイドピン34の他に合計４本のボル
ト36を必要とし、数多くのボルトを必要としていた。特
に、第５図の従来構造によると、キャンティバルコニー
20が第３図で示す短寸法のバルコニー20Aではなく長寸
法のバルコニー20Bである場合、建物21に取り付けられ
る前のキャンティバルコニー20Bは中央部が下方に大き
く撓んだ湾曲形状となり、バルコニー精度が低下したも
のとなっているため、前記ガイドピン34を孔35に挿入す
る作業が難しくなり、バルコニー20Bの梁23を建物21の
躯体25に結合する作業が面倒なものとなる。

なお、本考案と関連性を有する従来技術として実開平１
−151501号がある。本考案の目的は、ボルトの本数を従
来構造よりも少なくでき、また、キャンティバルコニー
等のキャンティ構造物が長寸法のものであって建物に取
り付けられる前のキャンティ構造物の精度が低下してい
ても、キャンティ構造物の梁を建物の躯体に結合する作
業を容易に行える建物の躯体とキャンティ構造物の梁と
の結合構造を提供するところにある。

〔課題を解決するための手段〕

本考案は、建物の躯体側に垂直部とこの垂直部の下端か
ら前方へ延びる水平部とからなるＬ字型のエンド部材を
取り付け、このＬ字型エンド部材の水平部を上向きのガ
イドピン兼用ボルトを備えたものとし、キャンティ構造
物の梁の後端部をこの後端部に設けられた前後方向に長
い長孔にガイドピン兼用ボルトを挿入しながらＬ字型エ
ンド部材の水平部に載置し、長孔から突出したガイドピ
ン兼用ボルトにナットを締め付けることにより梁の後端
部をＬ字型エンド部材の水平部に結合し、Ｌ字型エンド
部材の垂直部と梁の後端面に垂直に取り付けられたエン
ド部材とに設けた孔にボルトを挿入し、これらの孔から
突出したこのボルトにナットを締め付けることにより両
方のエンド部材を結合したことを特徴とするものであ
る。

〔作用〕

本考案では、ガイドピンはキャンティ構造物の梁の後端
部をＬ字型エンド部材の水平部に結合するためのボルト
ともなっているため、必要とされるボルトは前記両方の
エンド部材を結合するためのボルトだけとなる。また、
キャンティ構造物が長寸法のものであって建物に取り付
けられる前のこのキャンティ構造物が中央部が下方に大
きく撓んだ湾曲形状となっていても、Ｌ字型エンド部材
は梁の後端部を載せるための水平部を備えているため、
梁を建物の躯体に結合するための作業を容易に行える。

〔実施例〕

以下に本考案の一実施例を添付図面に基づいて説明す
る。

以下の説明では既に説明した部材と同じ部材には同一符
号を使用する。

第１図において、建物21の躯体25に設けられたブラケッ
ト28の先端面にはエンド部材１が取り付けられ、このエ
ンド部材１は垂直部２と、垂直部２の下端から前方に延
びる水平部３とを有するＬ字型となっている。水平部３
には高張力材料によるガイドピン兼用ボルト４が上向き
に植設され、このボルト４の上端4Aは剣先テーパとなっ
ている。垂直部２には２個の孔５が同一高さで設けら
れ、これらの孔５は垂直部２の上端寄りに設けられる。

キャンティバルコニー20の梁23はチャンネル材からな
り、この梁23の下フランジ部23Aの後端部には前後方向
に長い長孔６が形成される。また、梁23の後端面にはエ
ンド部材７が垂直に取り付けられ、このエンド部材７に
前記孔５と同一間隔で２個の孔８が設けられる。

梁23を建物21の躯体25に結合するためには、第２図の通
り、梁23の後端部を躯体25側のＬ字型エンド部材１の水
平部３にガイドピン兼用ボルト４を長孔６に挿入しなが
ら載置し、この載置作業をボルト４のガイドピン作用に
よって梁23を躯体25に対し位置決めしながら行う。次い
で、長孔６から突出したボルト４に高張力ナット９を締
め付け、梁23の後端部をＬ字型エンド部材１の水平部３
に結合する。また、両方のエンド部材1,7の孔5,8に高張
力ボルト10を挿入し、これらの孔5,8から突出したボル
ト10にナット11を締め付け、両方のエンド部材1,7を結
合する。これにより梁23は躯体25に結合されたことにな
る。

以上の結合作業はキャンティバルコニー20の全ての梁23
について行う。

以上の梁23の結合作業において、キャンティバルコニー
20が第３図で示した長寸法のキャンティバルコニー20B
であって、建物21に取り付けられる前のキャンティバル
コニー20Bの精度がキャンティバルコニー中央部が下方
に大きく撓むこによって低下していても、梁23の後端部
はＬ字型エンド部材１の水平部３に載せられるため、梁
23の躯体25への結合作業を容易、確実に行える。また、
ガイドピン兼用ボルト４を挿入するために梁23に設けた
孔６は前後方向に長い長孔であるため、キャンティバル
コニー20Bが中央部の撓みにより湾曲変形していても、
この孔６へのガイドピン兼用ボルト４の挿入を確実に行
える。

さらに、ガイドピンはボルト４となっており、梁23の躯
体25への結合はガイドピン兼用ボルト４を除くと２本の
ボルト10だけによって行えるため、従来構造よりもボル
トの本数を少なくできる。

このようにボルトの本数を減らしても、強く締め付けら
れる高張力ナット９と梁23との摩擦力により梁23が前後
方向、左右方向に移動するのをボルト10と共に確実に阻
止することができる。また、キャンティバルコニー20が
受ける垂直荷重に基づき梁23に作用する下向き荷重はＬ
字型エンド部材１の水平部３で受けられることになり、
梁23に作用する下向きモーメントは高張力ボルト10によ
って受けられる。高張力ボルト10とガイドピン兼用ボル
ト４との上下間隔は第５図で示した２本のボルト36の上
下間隔よりも大きくできるため、この下向きモーメント
を第５図の従来構造よりも有効にボルト10で受けること
ができる。バルコニー20が例えば吹上風を受けて梁23に
上向きモーメントが作用した場合には、このモーメント
は高張力材料によりガイドピン兼用ボルト４によって受
けられることになる。

このように本実施例によれば、梁23に作用する各種荷
重、モーメントに対する十分な強度をもって梁23を躯体
25に結合できる。

以上の本実施例はキャンティバルコニー20の場合であっ
たが、本考案に係る結合構造はこれ以外の建物のキャン
ティ構造物、例えば玄関庇、オーバーハング、破風にも
適用できる。また、本考案は建物が前記箱型ユニット22
を組み合わせるユニット工法による工業化住宅ではない
場合にも適用でき、鉄骨ラーメン構造の軸組を有する住
宅に適用可能である。

〔考案の効果〕

本考案によれば、従来構造よりもボルトの本数を少なく
でき、これにより部品点数の減少が可能となり、また、
キャンティ構造物が長寸法のものであって、建物に取り
付けられる前のキャンティ構造物の精度が低下していて
も、キャンティ構造物の梁を建物の躯体に容易に結合で
きるようになり、作業性の向上を達成できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例を示す斜視図で、梁を躯体に
結合する前を示す図、第２図は同結合後を示す側面図、
第３図はキャンティ構造物であるキャンティバルコニー
を備えた建物の概略斜視図、第４図および第５図は従来
例を示す側面図である。 １…Ｌ字型エンド部材、２…垂直部、３…水平部、４…
ガイドピン兼用ボルト、5,8…孔、６…長孔、７…エン
ド部材、9,11…ナット、10…ボルト、20…キャンティ構
造物であるキャンティバルコニー、21…建物、23…梁、
25…躯体。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】建物の躯体側に垂直部とこの垂直部の下端
   から前方に延びる水平部とを有するＬ字型エンド部材が
   取り付けられ、このエンド部材の前記水平部は上向きの
   ガイドピン兼用ボルトを備え、キャンティ構造物の梁の
   後端部がこの後端部に設けられた前後方向に長い長孔に
   前記ガイドピン兼用ボルトが挿入されて前記エンド部材
   の水平部に載置され、前記長孔から突出した前記ガイド
   ピン兼用ボルトにナットを締め付けることにより前記梁
   の後端部がエンド部材の水平部に結合され、前記エンド
   部材の垂直部と前記梁の後端面に垂直に取り付けられた
   エンド部材とに設けられた孔にボルトが挿入され、これ
   らの孔から突出したこのボルトにナットを締め付けるこ
   とにより前記両方のエンド部材が結合されたことを特徴
   とする建物の躯体とキャンティ構造物の梁との結合構
   造。