JPH073376A - 複硼化物サーメット焼結体とその時効処理方法 - Google Patents

複硼化物サーメット焼結体とその時効処理方法

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JPH073376A
JPH073376A JP16953193A JP16953193A JPH073376A JP H073376 A JPH073376 A JP H073376A JP 16953193 A JP16953193 A JP 16953193A JP 16953193 A JP16953193 A JP 16953193A JP H073376 A JPH073376 A JP H073376A
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JP16953193A
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English (en)
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Yasuo Shinozaki
泰夫 篠崎
Noritoshi Horie
則俊 堀江
Kazuo Hamashima
和男 浜島
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AGC Inc
Original Assignee
Asahi Glass Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】高温まで優れた硬度と強度を保有する複硼化物
サーメット焼結体を提供する。 【構成】(Mo,W)2 NiB2 型複硼化物の硬質相3
0〜90重量%と、残部の硬質相を取り囲むNi基合金
の結合相とから構成されるサーメット焼結体の結合相中
に、Alを1〜10重量%とTiを7重量%以下含有さ
せておき、溶体化処理後Ni3 AlまたはNi3 (Al
1-x ,Tix )の微細な相を時効処理によって析出させ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルミニウムの押し出
し型やアルミニウムの鋳造装置の部品あるいは鉄鋼材料
の熱間加工用治具等、700℃以上の高温域で使用され
る用途に適した複硼化物サーメット焼結体に関する。
【0002】
【従来の技術】アルミニウムの押し出し型やアルミニウ
ムの鋳造装置の部品あるいは鉄鋼材料の熱間加工用治具
等、700℃以上の高温域で使用される部品には、SK
D材に代表される熱間工具鋼が多く使用されている。し
かし大抵の熱間工具鋼は600℃を超えると室温で保有
していた強度と硬度がいずれも半分程度に低下してしま
い、使用時に変形したり熱応力によって亀裂が発生する
などの問題があった。
【0003】上記問題を解決した材料として、本発明者
らは、Ni、Mo、WおよびBからなる複硼化物(M
o,W)2 NiB2 を主とする硬質相と、Ni基合金を
結合相とする複硼化物サーメット焼結体を提案した(特
開昭63−143236)。
【0004】このサーメット焼結体は、融点の高い複硼
化物の硬質相を耐熱性のあるNi基合金の結合相で結合
した組織を有するため、室温から800℃程度の高温域
まで硬度と強度の低下が少く、高温において熱間工具鋼
やWC−Co系超硬合金と比べて優れた強度と硬度を有
する。しかし、800℃を超える温度になると、結合相
であるNi基合金の軟化が始まり、硬度と強度が顕著に
低下することになる。
【0005】サーメット焼結体の800℃以上における
硬度と強度の低下を小さくするには、複硼化物の硬質相
の含有量を増やす方法と、硬質相の平均粒径を微細化し
て硬質相の間を埋めている結合相の厚さを小さくする方
法が有効である。しかし、硬質相の含有量を増加させる
とサーメット焼結体の靱性が低下して脆くなる。また、
硬質相の粒子の微細化には、原料の微粉砕および焼結条
件の制限など、製造プロセス上に問題があり、今のとこ
ろ実用性のある微細な複硼化物の硬質相を有するサーメ
ット焼結体は得られていない。
【0006】
【発明の解決しようとする課題】本発明は、このような
先行発明による複硼化物サーメット焼結体の弱点を改善
し、さらに高温まで優れた硬度と強度を保有する複硼化
物サーメット焼結体を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は前述の課題を達
成すべくなされたものであり、本発明の複硼化物サーメ
ット焼結体は、M2 TB2 (Mは主にMoおよび/また
はWであり、Tは主にNiである)型複硼化物の硬質相
を30〜90重量%と、Niを50〜90重量%、Al
を1〜10重量%、Tiを7重量%以下、Crを30重
量%以下、Coを20重量%以下、Taを10重量%以
下、Nbを10重量%以下、Feを10重量%以下、炭
素を2重量%以下、Moおよび/またはWを合量で1〜
25重量%含むNi基合金の結合相とからなることを特
徴とする。
【0008】本発明の複硼化物サーメット焼結体は、結
合相がこのような組成を有していることにより、焼結体
を適当な条件下で溶体化してから、再加熱して微細な第
3相を析出させる(時効処理)ことによって、結合相中
にNi3 Al相またはNi3(Al1-x ,Tix )相
(以下両者をγ’相という)の微粒子が分散した組織を
有する焼結体とすることができ、前述の弱点が改善され
る。
【0009】γ’相は結合相であるNi基合金との界面
における整合性がよく、またγ’相自体の降伏強度が室
温から900℃程度の温度域まで増加するという好まし
い性質を示す相であることにより、Ni基合金中に微細
な分散相として存在せしめた場合、靱性の劣化をそれほ
ど伴うことなく、結合相の高温強度を向上せしめること
ができる。
【0010】従来のサーメット焼結体の硬質相である
(Mo,W)2 NiB2 組成の複硼化物、例えばMoを
39〜16原子%含む複硼化物などはNi基合金の結合
相中における溶解度の温度による変化が小さいため、一
般の金属材料でしばしば行われる溶体化、時効処理によ
り結合相中に複硼化物を微細な結晶として析出させるこ
とはできない。
【0011】一方、γ’相はこの複硼化物系サーメット
焼結体の焼成温度である1300℃付近において結合相
であるNi基合金中への溶解度が大きく、室温に近づく
ほど溶解度が小さくなるため、900〜1200℃に加
熱して溶体化した後急冷却(焼き入れ)し、700〜8
50℃の温度で時効処理することにより、Ni基合金か
らなる結合相中に過飽和に固溶していたγ’相が1μm
あるいはそれより細かい粒径の相(通常立方体に近い形
状を有する)として結合相中に析出し、その結果結合相
の厚さを減少させたと同じ効果が得られ、800〜90
0℃の温度域における結合相の歪み抵抗が増し、サーメ
ット焼結体の高温強度が向上する。
【0012】γ’相は本発明のサーメット焼結体の複硼
化物の硬質相であるM2 TB2 相と比較して、γ’相自
体の靱性が大きく、γ’相が結合相中に微細な相として
分散状態で存在していてもサーメット焼結体の顕著な靱
性の低下を伴うことがない。本発明の複硼化物サーメッ
ト焼結体では、硬質相の含有量はB成分がすべて複硼化
物中に取り込まれ、Moおよび/またはWは焼結体中に
含まれているのと同じ比率で複硼化物の硬質相中に取り
込まれていると想定した近似計算によって求められる。
【0013】本発明のサーメット焼結体では、結合相の
組成として、Ni50〜90重量%、Al1〜10重量
%、Ti7重量%以下、Cr30重量%以下、Co20
重量%以下、Ta10重量%以下、Nb10重量%以
下、Fe10重量%以下、炭素2重量%以下、Moおよ
び/またはW1〜25重量%を含む多元系のNi基合金
とされているが、これらの合金元素の中でAlは上述の
好ましい性質を有するγ’相を形成するために不可欠な
元素である。
【0014】Alの結合相中の含有量を1〜10重量%
とした理由は、含有量が1重量%より少ないとγ’相の
析出量が少なくてγ’相が析出することによる前述の好
ましい効果が得られず、また10重量%を超えると、好
ましくない脆性を示すNiAl等の金属間化合物が生成
するためである。
【0015】Tiは含まれていなくてもγ’相を形成で
きるが、Tiを結合相中に7重量%以下含有せしめてN
3 Al相中のAlの一部分をTiで置換し、Ni3
(Al1-x ,Tix )相とすることにより、γ’相の強
度が増すので結合相中にTiを0.5〜7重量%含む焼
結体とするのが好ましい。
【0016】Moおよび/またはWはNi基合金中に固
溶して、固溶強化の効果を奏する。Moおよび/または
Wの結合相中の含有量を合量で1〜25重量%とした理
由は、含有量が1重量%より少ないと有効な固溶強化が
なされないためであり、含有量が25重量%を超えると
脆弱な金属間化合物が析出するためである。
【0017】Crは硬質相中にもMoやNiと置換して
含まれ、結合相中にCrが含まれていると焼結体の耐酸
化性と酸やアルカリに対する耐食性が向上する。Crの
結合相中の含有量を好ましくは1〜25重量%とした理
由は、1重量%より少ないと耐酸化性と耐食性の向上効
果が得られないためであり、25重量%を超えると脆弱
な金属間化合物が析出する傾向があるためである。
【0018】Coは主にNi基合金中に固溶して存在
し、AlやTiの含有量が一定の場合にはγ’相の析出
量を増加させる働きがある。Coの結合相中での含有量
を20重量%以下とした理由は、Coの含有量が20重
量%を超えると焼結体の高温強度が低下するためであ
る。
【0019】TaとNbはNi基合金の結合相やγ’相
および硬質相である複硼化物中に固溶するが、TaとN
bはNiと比較して原子半径が大きいため、結合相中に
少量含まれていても顕著な固溶強化の効果をもたらす。
しかし、結合相中にTaとNbが10重量%を超えて含
まれていると、焼結体を脆弱化する金属間化合物が析出
する傾向があるため、結合相中での含有量の上限を10
重量%とした。Taおよび/またはNbの好ましい含有
量は0.8〜8重量%である。
【0020】FeはCoと同様の作用を有するが、結合
相中に10重量%を超えて含有させても、γ’相の析出
量を増やす効果がそれ以上得られず、結合相の耐熱性が
低下することになるため、Feの含有量は10重量%以
下とされた。炭素が結合相中に含有されていると、M
o、W、Ta、Nb等の炭化物を形成しやすい元素と結
合して炭化物を形成し、結合相中に微細な炭化物相が析
出して、焼結体の強度を向上させる働きがある。しかし
2重量%を超えて結合相中に含有していると、焼結体が
脆くなるとともに高温強度も低下するため、炭素の含有
量は2重量%以下とされた。
【0021】次に、硬質相である複硼化物について説明
する。本発明のサーメット焼結体の硬質相は、その代表
的な複硼化物がMo2 NiB2 で表されるM2 TB2
(Mは主にMoおよび/またはWであり、Tは主にNi
である)型複硼化物であり、この複硼化物は種々の成分
が固溶してもX線回折により斜方晶の結晶として同定で
きる。
【0022】本発明の焼結体では、焼結体中に複硼化物
の主構成元素であるMo、W、NiおよびB以外の元素
としてAlの他、Cr、Ta、Nb、Feなどを含んで
おり、これらの元素は前述したように主に結合相中に存
在するが、一部分は複硼化物中にも固溶していることが
EPMAによる分析でわかった。
【0023】これらの元素の一部は複硼化物の耐熱性と
耐食性の強化に有効に作用していると考えられるので、
本発明のサーメット焼結体では硬質相であるM2 TB2
型複硼化物中に、その結晶構造が変化しない範囲でA
l、Ti、Cr、Co、Ta、Nb、Tiなどが固溶し
た状態を含んでいても差し支えない。
【0024】本発明のサーメット焼結体では、結合相は
Ni基の合金とされているが、これはNi基合金の耐熱
性が比較的高く、γ' 相の成分の溶解度が大で、溶解度
の温度依存性が結合相中に微細なγ' 相を析出せしめる
のに適しているからである。焼結体中に含まれるγ' 相
の含有量が数%より多いとγ' 相はX線回折でその存在
を同定できる。γ' 相の含有量が数%より少ない場合に
は、EPMAによりその存在を確認できる。
【0025】次に、焼結体中に含まれる硬質相の割合を
90〜30重量%とした理由は、硬質相が90重量%を
超えると、焼結体の靱性が小さくなるからであり、30
重量%より少なくなると焼結体の強度、特に高温強度が
低下するからである。
【0026】本発明の好ましい複硼化物サーメット焼結
体では、γ’相すなわちNi3 Al相またはNi3 (A
l、Ti)相を結合相中に0.1〜50体積%含んでい
ることにより優れた高温強度、硬度および靭性をバラン
ス良く保有している。γ’相は1μmより細かいことに
よって材料特性の改善効果があるので、好ましくは、
γ’相の60体積%以上が1μmより細かいものとされ
る。
【0027】本発明の焼結体を得るには、例えば硬質相
を構成する原料として細かいMoB、WBおよびNiの
粉末と、結合相を構成する原料としてNi、Fe、C
o、Mo、W、Ni−Al合金、Ni−Ti合金、C
r、Ni−Ta合金、Ni−Nb合金および炭素から選
ばれる粉末を所要量秤り取り、回転ボールミルや振動ボ
ールミル等によりエタノール等の有機溶媒を媒体として
湿式で混合粉砕し、スラリーを減圧乾燥後、金型プレス
や静水圧プレスなどを用いて加圧成形し、通常は真空中
等の非酸化性の雰囲気下において1100℃〜1400
℃で焼結する。
【0028】用いる原料は必ずしも上記の粉末の組み合
わせとする必要はなく、硬質相を構成する成分の原料と
して、例えばMo、W、Bの各粉末あるいは予めアトマ
イズ法等で合成したMo2 NiB2 粉末や(Mo,W)
2 NiB2 粉末などを用いることができる。
【0029】また、結合相を構成する成分の原料も、同
様にNi、Mo、W、Ni−Al合金、Ni−Ti合
金、Cr、Ni−Ta合金、Ni−Nb合金、Fe、炭
素等の粉末とする必要はなく、例えばAlやTi源とし
て単体の金属粉末あるいはTiAl等の化合物粉末を使
用してもよい。
【0030】いずれにしても、硬質相であるMo2 Ni
2 や(Mo,W)2 NiB2 などが所要量だけ焼結体
中に形成されるように、また結合相の組成が所要の組成
となるように原料粉末中の元素量を計算し、焼結体が所
要の元素の組成を有するものとなるように原料粉末の配
合量を定めればよい。
【0031】これらの原料粉末からなる成形体を焼結す
る際、昇温過程で成形体中の成分がM2 TB2 型の複硼
化物を形成し、さらに温度が上昇するとこの複硼化物
と、Ni50〜70重量%、Al1〜10重量%、Ti
7重量%以下、Cr30重量%以下、Co20重量%以
下、Ta7重量%以下、Nb10重量%以下、Fe10
重量%以下、炭素2重量%以下、Moおよび/またはW
が合量で1〜25重量%からなる結合相のNi基合金と
共晶反応を起こして液相を生成し、液相焼結が進行す
る。
【0032】焼結温度ではγ’相の液相中への溶解度が
かなり大きいため、γ’相は存在しないが、焼結体が冷
却されると溶解度が小さくなりγ’相が結合相中に析出
してくる。したがって、焼結後に900〜1200℃に
加熱して室温まで急冷却し、γ’相成分が結合相中に完
全に溶けた状態から700〜850℃で再加熱すること
により微細なγ’相を結合相中に析出させ、かつその粒
径をコントロールすることができる。
【0033】しかし、一般に雰囲気炉内で焼結された焼
結体をそのまま急冷却することは困難なので、雰囲気炉
から取り出した後に900〜1200℃に加熱し、常温
付近まで急冷却(焼き入れ)してから700〜850℃
で時効処理を行うことにより好ましい状態の微細なγ’
相を容易に析出させられる。
【0034】焼結体の時効処理は、使用前に予め完了さ
せて最適な状態のγ’相を析出させておくのが好ましい
が、時効処理はサーメット焼結体の部材を使用する寸前
に行うこともでき、焼結体の機械加工を時効処理を行う
前に実施するのが好ましい場合もあり、サーメット焼結
体の部材の出荷を時効処理をしない状態で行うこともで
きる。また、使用時に加熱される場合には、焼き入れし
た焼結体の部材をそのまま使用し、使用時に時効処理が
進行するようにしてもよい。
【0035】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明
するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定さ
れない。先ず、サーメット焼結体を試作する原料とし
て、表1に示した平均粒径と化学組成または純度を有す
る粉末原料を準備した。
【0036】
【表1】
【0037】実施例1 MoB粉末50.1重量%、Mo粉末3.9重量%、N
i粉末39重量%、Ni2 Al3 粉末7重量%を秤り取
り、エタノールを媒体として振動ミル中で24時間混合
粉砕し、スラリーをエバポレータで乾燥後篩を通して成
形用粉体とし、1500kg/cm2 で静水圧プレス成
形を行って成形体とした。
【0038】得られた成形体を真空雰囲気の電気炉中に
おいて1285℃で1時間焼成し、得られた焼結体を1
100℃のArガス雰囲気中において2時間の加熱(溶
体化処理)して油焼き入れを行い、次いで800℃で2
時間の時効処理を行った。得られた焼結体は、硬質相を
65重量%含み、結合相はNi83重量%、Mo 9重
量%、Al 8重量%からなり、4〜5μmの複硼化物
の硬質相の粒子を取り囲んでいる結合相中に大部分の粒
径が1μmより細かいγ’相が約48体積%析出した組
織を有していた。この焼結体の室温におけるビッカース
硬度は1000kg/mm2 、850℃における曲げ強
度は120kg/mm2 であった。
【0039】比較例1 MoB粉末50.1重量%、Mo粉末3.9重量%、N
i粉末46重量%を秤り取り、実施例1と同様の条件で
混合粉砕、乾燥および成形後して1285℃で焼結して
焼結体とした。
【0040】この比較例1は実施例1の組成からAl成
分を除き、AlをNiで置き換えた組成であり、硬質相
の含有量は実施例1と同じで、焼結体中にはγ’相は観
察されなかった。比較例1の焼結体の室温におけるビッ
カース硬度は700kg/mm2 、850℃における曲
げ強度は80kg/mm2 であった。
【0041】このように、Alを加えて結合相中にγ’
相を析出させた実施例1の焼結体はγ’相が析出してい
ない比較例1の焼結体と比較して室温における硬度が顕
著に高く、また高温での曲げ強度も大幅に向上した焼結
体であった。
【0042】実施例2 MoB粉末50.1重量%、Mo粉末4.3重量%、N
i粉末38重量%、Ni2 Al3 粉末6重量%、NiT
i粉末1.6重量%を秤り取り、実施例1と全く同一の
条件で混合粉砕、成形、焼成および熱処理を行って焼結
体を得た。得られた焼結体は硬質相を65重量%含み、
結合相はNi81重量%、Mo 10重量%、Al 7
重量%、Ti2重量%からなり、1μmより細かいγ’
相を約45体積%含み、室温におけるビッカース硬度は
1080kg/mm2 、850℃における曲げ強度は1
30kg/mm2 であり、比較例1の焼結体と比べて顕
著に優れた高度と高温強度を有する焼結体であった。
【0043】実施例3 MoB粉末50.1重量%、Mo粉末2.7重量%、N
i粉末35重量%、Ni2 Al3 粉末6.2重量%、N
iTi粉末0.9重量%、Cr粉末5.1重量%を秤り
取り、実施例1と全く同一の条件で混合粉砕、成形、焼
成、熱処理を行い焼結体を得た。得られた焼結体は硬質
相を65重量%含み、結合相はNi73重量%、Mo
5重量%、Cr14重量%、Al 7重量%、Ti1重
量%からなり、1μmより細かいγ’相を約48体積%
含み、室温におけるビッカース硬度は1100kg/m
2 、850℃における曲げ強度は135kg/mm2
であり、比較例1の焼結体と比べて顕著に優れた焼結体
であった。
【0044】実施例4 MoB粉末30.9重量%、WB粉末34.8重量%、
Mo粉末1.5重量%、Ni粉末24.4重量%、Ni
2 Al3 粉末2.5重量%、NiTi粉末0.9重量
%、W粉末1重量%、Cr粉末2重量%、Co粉末2重
量%を秤り取り、実施例1の場合と同様の条件で混合粉
砕、減圧乾燥および成形し、得られた成形体を1300
℃において1時間真空中で焼成し、次いで焼結体をAr
雰囲気中で1100℃で3時間の溶体化処理し、油焼き
入れ後800℃において4時間の時効処理を行った。
【0045】得られた焼結体は硬質相を80重量%含
み、結合相はNi63重量%、Co10重量%、Mo
5重量%、W5重量%、Cr10重量%、Al 5重量
%、Ti2重量%からなり、1μmより細かいγ’相を
約39体積%含み、室温のビッカース硬度は1200k
g/mm2 、850℃における曲げ強度は150kg/
mm2 であった。
【0046】比較例2 比較例2として、MoB粉末30.9重量%、WB粉末
34.8重量%、Mo粉末1.5重量%、Ni粉末3
2.8重量%を秤り取り、実施例4と同様の条件で混合
粉砕、乾燥、成形し、成形体を1285℃で焼結して焼
結体を得た。この焼結体は実施例4の焼結体と硬質相の
重量%が同一となるように配合したもので、焼結体は実
施例4と同じ量の硬質相を含み、実施例4の焼結体に含
まれるAl、Ti、Cr、CoをNiで置き換えた組成
となっている。
【0047】比較例2の焼結体の室温におけるビッカー
ス硬度は1050kg/mm2 、850℃における曲げ
強度は110kg/mm2 であった。このようにγ’相
が析出した実施例4の焼結体は比較例2の焼結体と比較
して室温におけるビッカース硬度が高く、高温における
曲げ強度も顕著に改善された焼結体であった。
【0048】実施例5 MoB粉末49.4重量%、WB粉末13.9重量%、
Mo粉末1.8重量%、Ni粉末25.0重量%、Ni
2 Al3 粉末2.5重量%、NiTi粉末0.5重量
%、W粉末1.2重量%、Cr粉末1重量%、Co粉末
1重量%、Ni3Ta粉末3.1重量%、Ni3 Nb粉
末0.6重量%を秤り取り、実施例1と同様の条件で混
合粉砕、乾燥、成形し、得られた成形体を1300℃で
1時間真空中において焼成し、得られた焼結体を110
0℃のAr雰囲気中で3時間の溶体化処理を行い、次い
で油焼き入れして750℃で4時間の時効処理を行っ
た。
【0049】この焼結体は硬質相を80重量%含み、結
合相はNi64重量%、Co 5重量%、Mo 5重量
%、W6重量%、Ta8重量%、Nb1重量%、Cr5
重量%、Al 5重量%、Ti1重量%からなり、1μ
mより細かいγ’相を約40体積%含み、室温における
ビッカース硬度は1230kg/mm2 、850℃にお
ける曲げ強度は165kg/mm2 であり、比較例1、
2の焼結体と比べて高度と高温の強度が顕著に優れた焼
結体であった。
【0050】実施例6 MoB粉末50.1重量%、Mo粉末4.2重量%、N
i粉末33.2重量%、Ni2 Al3 粉末5.2重量
%、Cr粉末1.8重量%、Co粉末1.7重量%、N
3 Ta粉末3.6重量%を秤り取り、実施例1と同様
の条件で混合粉砕、乾燥、成形し、この成形体を130
0℃で1時間真空雰囲気中で焼成し、得られた焼結体を
Ar雰囲気中で1100℃において3時間溶体化処理
し、油焼き入れ後750℃で4時間の時効処理を行っ
た。
【0051】得られた焼結体は硬質相を65重量%含
み、結合相はNi70重量%、Co5重量%、Mo 9
重量%、Ta5重量%、Cr5重量%、Al 6重量%
からなり、1μmより細かいγ’相を約43体積%含
み、室温のビッカース硬度は950kg/mm2 、85
0℃での曲げ強度は130kg/mm2 であり、比較例
1、2の焼結体と比べて顕著に高度と高温強度が優れた
焼結体であった。
【0052】実施例7 MoB粉末50.1重量%、Mo粉末4.4重量%、N
i粉末31.2重量%、Ni2 Al3 粉末5.2重量
%、Cr粉末1.8重量%、Co粉末1.7重量%、N
3 Ta粉末3.6重量%、炭素粉末0.2重量%、F
e粉末1.8重量%を秤り取り、実施例1と同様の条件
で混合粉砕、乾燥、成形し、この成形体を1285℃で
1時間真空雰囲気中で焼成し、得られた焼結体を105
0℃のAr雰囲気中で3時間の溶体化処理し、油焼き入
れ後750℃で3時間の時効処理を行った。
【0053】この焼結体は硬質相を65重量%含み、結
合相はNi63.5重量%、Co5重量%、Fe5重量
%、Mo 10重量%、Ta5重量%、Cr5重量%、
Al 6重量%、炭素0.5重量%からなり、1μmよ
り細かいγ’相を約48体積%含み、室温のビッカース
硬度は1100kg/mm2 、850℃での曲げ強度は
135kg/mm2 であり、比較例1、2の焼結体と比
べて顕著に優れた焼結体であった。
【0054】高温におけるビッカース硬度は、測定は特
に行っていないが、高温における曲げ強度が顕著に向上
している焼結体では、当然高温の硬度も向上しているは
ずである。
【0055】
【発明の効果】これらの試験結果から明らかなように、
本発明の複硼化物サーメット焼結体では、硬質相である
複硼化物を取り囲む結合相中に微細なγ’相が時効処理
によって導入されることにより、単純に複硼化物をNi
系の合金で結合した構造を有する従来の複硼化物サーメ
ット焼結体と比較して、靭性をほとんど損なうことなく
焼結体の高温における硬度と強度が顕著に改善される。
また、結合相中にW、Cr、Ta、Nbなどの元素を固
溶せしめることにより、耐食性、耐酸化性、高温の曲げ
強度などの性質がさらに向上する。
【0056】したがって、本発明の複硼化物サーメット
焼結体をアルミニウムの押し出し型やアルミニウムの鋳
造機械の部品あるいは鉄鋼材料の熱間加工治具等、70
0℃以上の高温域で使用される部材に使用した場合、こ
れら部材の耐用が延長されるとともに、鋳造あるいは加
工される製品の品質と歩留が向上するなどの効果が得ら
れることになり、その実用的価値は多大である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】M2 TB2 (Mは主にMoおよび/または
    Wであり、Tは主にNiである)型複硼化物の硬質相を
    30〜90重量%と、Niを50〜90重量%、Alを
    1〜10重量%、Tiを7重量%以下、Crを30重量
    %以下、Coを20重量%以下、Taを10重量%以
    下、Nbを10重量%以下、Feを10重量%以下、炭
    素を2重量%以下、Moおよび/またはWを合量で1〜
    25重量%含むNi基合金の結合相とからなることを特
    徴とする複硼化物サーメット焼結体。
  2. 【請求項2】結合相中にNi3 Al相またはNi3 (A
    1-x ,Tix )相の微細な粒子が0.1〜50体積%
    散在して含まれる請求項1に記載の複硼化物サーメット
    焼結体。
  3. 【請求項3】結合相中に含まれるNi3 Al相またはN
    3 (Al1-x ,Tix )相の粒子の60体積%以上が
    粒径1μmより細かい粒子である請求項2に記載の複硼
    化物サーメット焼結体。
  4. 【請求項4】結合相中にCrを1〜25重量%、Taお
    よび/またはNbを0.5〜8重量%含む請求項1〜3
    のいずれか1つに記載の複硼化物サーメット焼結体。
  5. 【請求項5】M2 TB2 (Mは主にMoおよび/または
    Wであり、Tは主にNiである)型複硼化物の硬質相3
    0〜90重量%と、Niを50〜90重量%、Alを1
    〜10重量%、Tiを10重量%以下、Crを30重量
    %以下、Coを20重量%以下、Taを10重量%以
    下、Nbを10重量%以下、Feを10重量%以下、炭
    素を2重量%以下、Moおよび/またはWを合量で1〜
    25重量%含む残部のNi基合金の結合相とからなる焼
    結体を、900〜1200℃に加熱しておいて急冷却
    し、次いで700〜850℃で加熱することにより結合
    相中に微細なNi3Al相またはNi3 (Al1-x ,T
    x )相を析出せしめることを特徴とする複硼化物サー
    メット焼結体の時効処理方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6238807B1 (en) * 1997-07-25 2001-05-29 Chubu Sukegawa Enterprise Co., Ltd. Thermal spraying composite material containing molybdenum boride and a coat formed by thermal spraying
CN104561726A (zh) * 2014-12-30 2015-04-29 广东工业大学 一种高韧性铝镁硼陶瓷及其制备方法

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US6361581B2 (en) 1997-07-25 2002-03-26 Chubu Sukegawa Enterprise Co., Ltd Thermal spraying composite material containing molybdenum boride and a coat formed by thermal spraying
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