JP3603318B2 - 複硼化物系焼結合金 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、室温から800℃程度の高温域まで、優れた硬度と強度を併せて保有し、各種金属材料の成形加工用の工具や金型に適した複硼化物系焼結合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種の金属材料を室温または熱間で成形加工するための工具や金型の材料には、従来合金工具鋼が多く用いられている。しかし合金工具鋼は硬度が十分に大きくなく耐磨耗性に劣る他、600℃以上の温度域で硬度と強度が室温時の2分の1程度にまで低下してしまい、使用時に変形したり熱応力によって損傷するなどの問題があった。
【0003】
これらの問題点を解決し600℃以上の高温域でも強度と硬度が低下しない材料として、先に本発明者らは、主としてNi、Mo、WおよびBからなる複硼化物(Mo,W)Niを硬質相としNi基合金で結合された複硼化物系焼結合金(サーメット)を提案している(特開昭63−143236)。
【0004】
また、その後炭化物等を焼結合金の原料に添加することによって高温域における硬度と強度が改善された複硼化物系焼結合金が特開昭63−293134や特開平1−131071に提案され、特開昭63−293134にはさらにCrやVを添加した焼結合金が提案されている。
【0005】
これらの複硼化物系焼結合金は、融点の高い複硼化物の硬質相を耐熱性のあるNi基合金で結合した組織を有しているため、室温から800℃程度の高温域まで硬度と強度の低下が少なく、高温域において合金工具鋼やWC−Co系超硬合金と比べて優れた硬度と強度を保有しており、800℃程度の温度で使用されるアルミニウム鋳造機械用部品や鉄鋼材料の鍛造型などに応用され始めている。
【0006】
しかしながら、工業技術の高度化に伴ってこうした部材はますます過酷な条件で使用される傾向にあり、部材の耐用を確保するため、材料のさらなる高硬度化、高強度化が望まれている。
【0007】
前述の複硼化物系焼結合金の場合、焼結合金の硬度を高めることは、硬質相である(Mo,W)Ni複硼化物の含有量を増加せしめることにより、ある程度達成できる。しかし、複硼化物の含有量が多過ぎると、結合相の割合が減少して強度と靭性が低下する傾向を示すので、満足できる程度に高硬度と高強度を両立させるまでには至っていない。また、特に高温において現状では前述の炭素が添加された複硼化物系焼結合金でも十分に高硬度と高強度を両立させるまでには至っていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術における前述の問題点を解決して、600℃以上の高温域において高硬度と強度を併せて保有する複硼化物系焼結合金供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の課題を達成すべくなされたものであり、本発明の複硼化物系焼結合金は、x、yおよびzを原子%として(Mo,W)Niで表される組(x,y,z)が、(Mo,W)−Ni−B系3成分組成図上の(38,24,38)、(40,22,38)、(40,36,24)および(24,52,24)で表される4組成点を頂点とする4角形内(点を結ぶ線上を含む)にあって、W/Moの原子%比が0.25以下である組成を基準組成とし、この基準組成に炭素が(1−0.025z)(15−0.375z)原子%Niと置換した形で含有された組成を有することを特徴とする。
【0010】
すなわち本発明は、図1に示した(Mo,W)−Ni−B系擬3成分組成図(この組成図ではMoとWを合わせた原子%が(Mo,W)の原子%で示される)において(Mo,W)Ni組成点(x,y,z)がa;(38,24,38)、b;(40,22,38)、c;(40,36,24)およびd;(24,52,24)で表される4組成点を頂点とする4角形内にあり、W/Moの原子%比が0.25以下である組成を有する合金を基準組成とし、この基準組成に炭素を(1−0.025z)(15−0.375z)原子%Niと置換した形で含有されていることによって800℃においても高硬度で高強度の複硼化物系焼結合金を実現している。
【0011】
ここで炭素をNiと置換する形で基準組成に添加するとは、加えた炭素の量(原子%)だけ基準組成を有する複硼化物系焼結合金中のNiの含有量を減らすことを意味する。したがって、上記の(Mo,W)−Ni−B系擬3成分組成図に示された4組成点a、b、cおよびdを頂点とする4角形内にある基準組成から加えられた炭素の量だけNiの含有量が少なくなっている。また、Ta、Nb、V、CrおよびCoが添加された基準組成についても同様であり、Niの含有量はこれら添加された元素を合計した原子%分だけ少なくなっている。
【0012】
また、焼結合金のW/Mの原子%比を0.25以下とした理由は、Wの存在が焼結合金の強度を高めるのに有効ではあるが、余り多く含有してもその効果が小さく、多く含有すると焼結合金の比重が大きくなり、原料のコストも高くなるからである。
【0013】
炭素の含有量を(1−0.025z)原子%以上とした理由は、含有量がこれより少ないと材料の強度と硬度を向上せしめる効果が小さいためであり、炭素の含有量を(15−0.375z)原子%以下としたのは、炭素の含有量が多くなり過ぎると焼結合金中に炭化物が多く生成して結合相中のMoの含有量が減り、また硬質相の粒子が大きくなるなどにより焼結合金の強度が低下する傾向を示すためである。硬度と強度をバランスよく保有せしめるには、炭素の含有量を(3−0.075z)(10−0.025z)原子%とするのが好ましい。
【0014】
本発明で焼結合金の基準組成を上記の組成に限定した理由を、図1に示した(Mo,W)−Ni−B系3成分組成図に沿って以下に説明する。基準組成(た だしW/Moの原子%比は0.25以下)は、(Mo,W)Niで表される組成(x,y,z)がそれぞれa;(38,24,38)、b;(40,22,38)、c;(40,36,24)およびd;(24,52,38)を頂点とする4角形内にある。前記基準組成は、1100℃〜1400℃で焼結された後に、主としてMoとWを含むNi基合金からなる結合相中に(Mo,W)Ni複硼化物が60〜95原子%程度析出した組織になる領域である。
【0015】
この複硼化物は硬質相となって本発明の複硼化物系焼結合金に高硬度を付与し、また、主としてMoとWを含むNi基合金からなる結合相は強度と靱性に優れ、本発明の複硼化物系焼結合金に強度と靱性を付与している。
【0016】
図1において(Mo,W)Niの組成(x,y,z)がa;(38,24,38)とb;(40,22,38)を結ぶ直線abより上側(Bの多い側)の組成では、焼結合金中に含まれる(Mo,W)Ni複硼化物の含有量が95原子%より多くなって結合相の量が減少し、焼結合金の強度と靱性が不足するために範囲外とされた。
【0017】
また、(Mo,W)Niの組成(x,y,z)がd;(24,52,24)とc;(40,36,24)を結ぶ直線dcより下側(Bの少ない側)の組成では、焼結合金中に含まれる(Mo,W)Ni複硼化物の含有量が60原子%より少なくなり、焼結合金の硬度が小さいので範囲外とされた。
【0018】
また、組成点のaとdを結ぶ直線adより左側の組成では、結合相中に固溶して存在するMoおよびWの含有量が少なくなって結合相の強度が小さくなる他、炭素を添加したとき、焼結合金中に析出する炭化物の量が少なく、大きい硬度の焼結合金が得られないので範囲外とされた。
【0019】
また、組成点のbとcを結ぶ直線bcより右側の組成では、結合相中に含有されるMoとWの含有量が多くなり過ぎ、焼結合金中に脆弱なNi(Mo,W)等の金属間化合物が生成して焼結合金の靱性が損なわれるので範囲外とされた。
【0020】
炭素を上述の基準組成を有する複硼化物系焼結合金に添加すると、主にMo、WおよびNiを含む細かい粒径(2μm以下)の複炭化物(Mo−W−Ni系複炭化物)が焼結合金中に析出し、焼結合金の硬度と強度を向上せしめる効果を示す。
【0021】
このとき炭素の含有量を基準組成を有する焼結合金中のNiと置換した形で(1−0.024z)(15−0.375z)原子%とする理由は、炭素の含有量が(1−0.024z)原子%より少ないと、焼結合金中に析出する炭化物の量が少なく、焼結合金の硬度の向上効果が少なくなるためであり、また炭素の含有量が(15−0.375z)原子%を超えると、焼結合金中に析出する炭化物の量が多くなり過ぎるとともに結合相中に固溶しているMoやWの大部分が炭化物となるため、MoやWによる結合相の固溶強化の効が犠牲になり、焼結合金の強度と靱性が損なわれるからである。
【0022】
本発明の好ましい複硼化物系焼結合金は、x、yおよびzを原子%として(Mo,W)Niで表される組(x,y,z)が、(Mo,W)−Ni−B系3成分組成図上のa;(38,24,38)、b;(40,22,38)、c;(40,36,24)およびd;(24,52,24)で表される4組成点を頂点とする4角形内にあって、W/Moの原子%比が0.25以下である組成を基準組成とし、この基準組成に炭素が(1−0.025z)(15−0.375z)原子%、Ta、NbおよびVから選ばれる一種以上が合わせて(0.01y−0.005z)(0.2y−0.1z)原子%、Crが(0.4y−0.2z)原子%以下、Coが(0.35y−0.175z)原子%以下いずれもNiと置換した形で含有された組成を有することを特徴とする。
【0023】
この焼結合金は、前述の基準組成に炭素のみを含有せしめた複硼化物系焼結合金に、さらにTa、Nb、V、Cr、Co等を含有せしめたものであり、さらにTa、Nb、V、Cr、Co等を添加することによって得られる効果と含有量の限定理由を以下に説明する。
【0024】
Ta、NbおよびVが前述の複硼化物系焼結合金に含まれていると、硬質相の複硼化物と結合相のNi基合金中に固溶強化の作用をもたらし、焼結合金の硬度と強度を増大せしめる。
【0025】
また、これらの元素は、炭化物になりやすい元素であり、焼結合金中に析出しているMo−W−Ni系複炭化物中にも取り込まれ、炭化物の熱的安定性を高めるものと推定される。基準組成を有する焼結合金のNiと置換した形で、Ta、NbおよびVを合わせて(1−0.025z)(15−0.375z)原子%含有せしめる理由は、これらの含有量が(1−0.025z)原子%より少ないと焼結合金の硬度と強度を向上せしめる効果がほとんど得られず、(15−0.375z)原子%より多いとNiTa、NiNb、NiV等の脆弱な金属間化合物が焼結合金中に析出して、焼結合金の強度と靱性が損なわれるからである。
【0026】
X線回折によって結合相と複硼化物相の格子定数を調べたところ、焼結合金中のMo、W、Ta、NbおよびVの含有量を一定として炭素の含有量をNiと置換した形で増やすと、結合相と複硼化物相の格子定数がいずれもほぼ直線的に小さくなることが分かった。このことは、焼結合金に添加された炭素が優先的にMo、W、Ta、Nb、VおよびNiと結合して複炭化物を形成し、結合相と複硼化物相中に固溶しているMo、W、Ta、NbおよびVの量が減少したためと解釈された。
【0027】
素を含有せしめることによって結合相と複硼化物相中に固溶しているMo、W、Ta、NbおよびVの量が減少してしまうのは固溶強化の点では好ましくない。このため炭素の含有量を増加させる場合には、結合相と複硼化物相に固溶しているMo、W、Ta、NbおよびV等の量が減少しないように、複硼化物系焼結合金の組成を基準組成の範囲内でMoの多い側の組成とするのが好ましい。すなわち、図1において、基準組成の領域を示す4角形abcd上で、直線bc寄りの組成を選択するのが好ましい。
【0028】
またはTa、NbおよびVを多目に添加するという考え方に基づいて最終的な焼結合金の組成を決定するのが好ましい。この場合、X線回折により測定した焼結合金の結合相(立方晶)の格子定数が3.58以上(Moの固溶量が多いと大きい値となる)となるように、実験的に焼結合金の組成を決定すると室温800℃において優れた硬度と強度を併せて保有する焼結合金が得られる。
【0029】
Crは主に焼結合金中の結合相と複硼化物相に固溶し、比較的少量含まれていれば焼結合金の耐酸化性と耐食性が向上する効果を示す。したがって、本発明の焼結合金が耐酸化性と耐食性を要求されない条件で使用される場合には、特にCrを含有せしめる必要はないが、Crを含有せしめれば大気中において800℃程度の高温で使用される場合や硝酸等が存在する酸化性または腐食性の雰囲気下で使用される用途に好ましい焼結合金が得られる。
【0030】
しかしCrの含有量が、基準組成の焼結合金のNiと置換する形で(0.4y−0.2z)原子%を超えても、それ以上耐食性と耐酸化性を向上せしめる効果が得られず、室温における強度が低下する傾向を示すので、Crの含有量は(0.4y−0.2z)原子%以下とし、さらには(0.05x−0.025z)(0.4y−0.2z)原子%とするのが好ましい。
【0031】
焼結合金中のCoは結合相と複硼化物相に固溶し、焼結時における複硼化物相の粒成長を抑制するので、焼結合金の強度を増す効果がある。しかし、その含有量が0.35y−0.175z原子%を超えてもそれ以上の強度の増大効果はほとんどなく、原料コストが高い分だけ焼結合金の製造コストが増えることになる。
【0032】
本発明の焼結合金を製造するには、例えばMoB、WB、TaB、NbB、VB、Ni−Cr合金、Ni、Co、Mo、W、カーボンブラック等の細かい粉末原料を所要量秤取し、回転ボールミルや振動ボールミル等に入れてエタノール等の有機溶媒を媒体として湿式で混合粉砕し、得られたスラリーを減圧下で乾燥後、金型プレスや静水圧プレスなどで加圧成形し、通常は真空中等の非酸化性の雰囲気中において1100℃〜1400℃で焼結する。
【0033】
原料は上記の粉末の組み合わせとする必要はなく、硬質相となる複硼化物成分の原料として、例えばMo、W、BやNiの粉末、予めアトマイズ法等により合成したMoNiB粉末、(Mo,W)NiB粉末などを使用することができる。炭素源の原料もカーボンブラックである必要はなく、MoC、TaC等の炭化物を使用してもよい。
【0034】
また、その他の成分の原料もTaB、NbB、VBおよびNi−Cr合金の粉末の代わりに、例えばTa、Nb、V、Cr等の単体金属の粉末や本発明の焼結合金に含有されている成分間の各種合金粉末または化合物粉末が使用できる。
【0035】
いずれの場合にも、焼結合金が所要量の各元素を含有するように原料粉末の配合量を定めればよい。なお、混合粉砕して乾燥した原料粉末中には、大抵1重量%以下の酸素が取り込まれているので、原料粉末中の炭素と酸素が焼成過程で反応し、C+O→CO(ガス)の形で炭素と酸素が焼結合金の外に放出されていることが、焼成過程における焼成炉内のガス分析の結果から明らかにされた。
【0036】
この還元反応の結果として、最終的な焼結合金中の炭素量は初期の原料粉末中の炭素量より少なくなるので、原料粉末中の酸素量に相当する炭素を予め多く原料粉末に加えて、焼結合金中の炭素量が目標とする量となるように調整するのが望ましい。
【0037】
これらの原料粉末からなる成形体を焼結する際、昇温過程で成形体中の各成分が反応し、M型複硼化物(ただし、Mの主成分はMo、W、Niであり、一部分がTa、Nb、V、Crで置換されている)を形成する。このM型複硼化物の組成は、焼結合金中にTa、Nb、V、Cr等が含有されていない場合には(Mo,W)NiBとなる。焼成の昇温過程では、同時にMo、W、Ni、Ta、Nb、V、Crの内少なくとも2種の元素を含有する複炭化物が固相反応により形成される。
【0038】
さらに温度が上昇すると、複硼化物および複炭化物となった残余の成分が溶融して液相を生成し、液相焼結が進行する結果、成形体は相対密度がほぼ100%の緻密な焼結合金となる。こうして得られた焼結合金の組織はNi基合金からなる結合相中に微細な複硼化物相と複炭化物相が均一に分散したものである。
【0039】
本発明の他の好ましい複硼化物系焼結合金では、焼結合金の800℃におけるビッカース硬度と抗折強度がそれぞれ700kg/mm以上と150kg/mm以上である。また、本発明の複硼化物系焼結合金中に含まれる不可避的な不純物の含有量は、材料物性に悪影響を及ぼさないように、5原子%以下、さらには3原子%以下であるのが好ましい。
【0040】
【実施例および比較例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。
【0041】
まず、焼結合金を試作するための原料として、表1に示した平均粒径と化学成分または純度を有する粉末原料を準備した。次に、表2に示す組成となるように、MoB、WB、TaB、NbB、VB、NiB、Ni、Mo、Ni−Cr合金およびカーボンブラックの各粉末を表3に示した割合で調合した。
【0042】
調合された各原料粉末を、回転ボールミルを使用し、エタノールを媒体として48時間混合、粉砕した後得られたスラリーを減圧乾燥し、1500kg/cmで静水圧プレスして成形体とした。得られた成形体を約10−3torrの真空中において1180℃〜1300℃の温度で1時間焼成して焼結合金を得た。
【0043】
得られた焼結合金の一部を切り取って鏡面研磨し、この鏡面でビッカース硬度(荷重20kg)を測定するとともに、焼結合金から3mm×3mm×30mmの試験片を切り取って、室温と800℃で3点曲げによる抗折強度を測定し、これらのデータを表4にまとめて示した。
【0044】
表2〜表4において、試験例1〜10は本発明の実施例であり、他は比較例である。表4には示されていないが、一部の焼結合金について800℃におけるビッカース硬度を測定したところ、試験例2で900kg/mm、試験例8で800kg/mm、試験例11で680kg/mm、試験例16で470kg/mmであった。
【0045】
試験例11は、試験例2の組成を有する焼結合金から炭素を除いた組成の焼結合金であり、試験例2と室温の硬度がほぼ同等であるが、800℃の硬度は例2に比べて低下している。また、室温と800℃における抗折強度が小さい。試験例11では800℃になると焼結合金中に析出していたNiMoが結合相中に固溶するので硬度が小さくなると考えられ、試験例2では、炭化物の結合相中への溶解度が小さいためか、800℃となっても硬度の低下が少ない。
【0046】
試験例11の焼結合金をX線回折法で分析したところ、結合相中に脆弱なNiMoが析出していることが分かった。試験例11の焼結合金は、このNiMoが析出したために、炭化物が析出している試験例2の焼結合金と比較して室温の硬度は、ほぼ同等の値が得られたものの、靱性が損なわれて抗折強度が顕著に低下している。
【0047】
【表1】
Figure 0003603318
【0048】
【表2】
Figure 0003603318
【0049】
【表3】
Figure 0003603318
【0050】
表4
Figure 0003603318
【0051】
試験例12は、試験例3の組成を有する焼結合金に(15−0.375z)原子%の上限量を超えて炭素を含有せしめた焼結合金であり、炭素が上限を超えて含まれていることにより、硬度は試験例3の焼結合金の硬度を上回っているが、靱性の低下が著しく、室温と800℃における抗折強度がともに試験例3の抗折強度を顕著に下回ったものとなった。
【0052】
試験例13〜17は、焼結合金の基準組成が前記4角形で限定された範囲外にある焼結合金であり、試験例の焼結合金と比較して硬度と抗折強度の両方が同時に大きいものとなっていない。X線回折法による分析の結果、試験例13と試験例14の焼結合金には、それぞれNiMoおよびNiBの析出が認められ、これらの脆弱な金属間化合物が析出したために、さらに試験例14では金属結合相中に固溶しているMoの量が少なくなったために、抗折強度が顕著に低下したものと推定される。
【0053】
これらの試験結果から、本発明の実施例である焼結合金は、比較例の焼結合金と比較していずれも硬度ならびに抗折強度が大きく、両物性のバランスが取れた優れた焼結合金であることが分かる。
【0054】
【発明の効果】
本発明の焼結合金では、基準組成の(Mo,W)−Ni−B系焼結合金に対し、Niと置換した形で炭素を含有しており、焼結合金中に微細な炭化物が析出していることによって従来の複硼化物焼結合金と比較して、抗折強度を犠牲にすることなく焼結合金の硬度が顕著に向上し、800℃程度の高温まで硬度の低下が少ない。
【0055】
また、焼結合金中にNiと置換した形でTa、Nb、V、Cr、Coを含有せしめ、これらの元素を複硼化物相、複炭化物相および結合相中に固溶せしめることによって焼結合金の硬度、抗折強度、耐食性等の性質をさらに向上せしめることができる。
【0056】
本発明の焼結合金をアルミニウムの押し出し型や溶融アルミニウムの鋳造機械の部品または鉄鋼材料の室温および熱間における加工用工具や金型、さらには化学工業で使用される耐食耐磨耗部材等に利用すれば、これらの部材の耐用が延長されるとともに、鋳造または加工される製品の品質と歩留りが顕著に向上するなどの効果が得られるので、その産業上の利用価値は多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複硼化物焼結合金の基準組成の範囲を示す(Mo,W)−Ni−B系3成分組成図。
【符号の説明】
a、b、c、d;本発明の焼結合金の基準組成の範囲を示す四角形の頂点

Claims (3)

  1. x、yおよびzを原子%として(Mo,W)Niで表される組(x,y,z)が、(Mo,W)−Ni−B系3成分組成図上の(38,24,38)、(40,22,38)、(40,36,24)および(24,52,24)で表される4組成点を頂点とする4角形内にあって、W/Moの原子%比が0.25以下である組成を基準組成とし、この基準組成に炭素が(1−0.025z)(15−0.375z)原子%Niと置換した形で含有された組成を有する複硼化物系焼結合金。
  2. x、yおよびzを原子%として(Mo,W)Niで表される組(x,y,z)が、(Mo,W)−Ni−B系3成分組成図上の(38,24,38)、(40,22,38)、(40,36,24)および(24,52,24)で表される4組成点を頂点とする4角形内にあって、W/Moの原子%比が0.25以下である組成を基準組成とし、この基準組成に炭素が(1−0.025z)(15−0.375z)原子%、Ta、NbおよびVから選ばれる一種以上が合わせて(0.01y−0.005z)(0.2y−0.1z)原子%、Crが(0.4y−0.2z)原子%以下、Coが(0.35y−0.175z)原子%以下いずれもNiと置換した形で含有された組成を有する複硼化物系焼結合金。
  3. 焼結合金の800℃におけるビッカース硬度が700kg/mm 以上であり、焼結合金の800℃における抗折強度が150kg/mm以上である請求項1または2に記載の複硼化物系焼結合金。
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