JPH0733364A - 転向滑車にクライミング装置を有する工事用のエレベータ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 高層ビル等の建築工事に於いて、工事の進捗
度合に伴って高くなっていく作業床面に合せて、工事用
エレベータの搬器の揚程を延長していくことが必要とな
る。本発明の工事用エレベータは、搬器の昇降用ロープ
の牽引方向を変えるための転向滑車にクライミング装置
を付加し、上方に移動可能な構造と成して揚程の延長作
業を迅速且つ安全に施工することを目的とする。更に、
搬器の昇降速度の高速化と、搭乗者の居住性の向上を図
る。 【構成】 本発明に係る工事用エレベータは、ガイドレ
ールと、搬器と、該搬器の昇降用ロープと、該ロープを
巻込みまたは繰り出すための昇降ウインチと、ロープの
牽引方向を変えるための転向滑車及び該転向滑車を上下
動させるためのクライミング装置から成し、前記ガイド
レールを上方に連結して延長した場合に、転向滑車を上
方に自力で移動できるよう構成した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、高層化するビルの建築
や鉄塔構造物の建設に当り、該ビルや構造物の高層部に
建築資材や機材及び作業員を輸送するための手段として
使用される、工事用エレベータの設置の省力化及び迅速
化を図り且つ輸送の高速化、安全性向上を図るために、
ガイドレール上部の転向滑車に該転向滑車を自力で上下
移動させるためのクライミング装置を付加した工事用エ
レベータの実用化に関し、更に詳しくは、建築等工事の
過程に於いて、延長工事の進捗にともない増加する床面
の高さに合わせて変更されるエレベータの、揚程の変更
作業を迅速に且つ安全に実施できる装置の具体的な構造
に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、工事用エレベータとして使用され
ているものは、ガイドレールにラックが具備され、搬器
には該ラックと噛み合って回転する昇降用ピニオン及び
駆動モ一タが装備されており、該モータの正逆転により
上昇もしくは下降する方式が大半である。

【０００３】この種のエレベータはガイドレールを延長
するだけでエレベータの揚程を延長していくことができ
る利点がある反面、ラックとピニオンの噛み合に起因す
る力学的な制約から、昇降速度に限度があり高速化が困
難である。

【０００４】しかも、高荷重を受けたピニオンを回転さ
せるため異常な振動と、騒音を発し、搭乗者に不快感と
恐怖感を与えるなどの問題が発生している。

【０００５】一方、搬器をロープで吊し昇降させる方式
の工事用エレベータも実在するが、この種のエレベータ
は、昇降用ウインチをガイドレール上部の架台に設置し
たり、また昇降ウインチを地階に設置した場合でも、上
部の架台にロープの牽引方向を変えるための転向滑車を
設置したりしているため、エレベータの揚程を延長した
い場合に於いても、ガイドレール上部の架台に設置され
たウインチや転向滑車のような重量物を分解したのち上
方に移設しなくてはならず、その作業のための多分な時
間を要したり、危険な作業を伴うなどの問題が発生して
いる。

【０００６】また、建築等工事が完了した場合には、前
記同様に重量物を分解し、高層部から地上へ降すなどの
作業に膨大な労力と時間を費やすという問題が発生する
ため現在ではほとんど使用されていない。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、前述の如き
事情に鑑み、係る欠点を解決するために搬器に従来付設
されていた昇降用ピニオン及び駆動モータを分離し、ガ
イドレールの下方に別途昇降ウインチを設置し、更に昇
降用ロープの牽引方向を変えるための転向滑車をガイド
レールに沿って任意に上下移動できるように成して、建
築等工事の進捗度合に伴い、エレベータの揚程が容易に
延長できるように成すと共に、搬器の昇降速度の高速化
を図り且つその結果弊害として発生する異常な振動と騒
音に伴う搭乗者の不快感と恐怖感を解消したエレベータ
構造を提供するにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するた
め、本発明に係る工事用エレベータ構造は、ガイドレー
ルと、搬器と、該搬器の昇降用ロープと、該ロープを巻
込みまたは繰り出すための昇降ウインチと、ロープの牽
引方向を変えるための転向滑車及び該転向滑車を上下動
させるためのクライミング装置から成るものである。

【０００９】

【作用】前述の手段に係る本発明の工事用エレベータに
依れば、搬器と該搬器を昇降させるための昇降用ピニオ
ン及び駆動モータを分離し、ウインチによるロープの巻
込み及び繰り出し式となし且つロープの牽引方向を変え
るための転向滑車にクライミング装置を付加させたこと
により、ガイドレールを上方に連結して延長した場合で
も該クライミング装置を作動させることによって、転向
滑車を上方に移動でき、転向滑車を上方に移動した長さ
だけ、エレベータの揚程を延長できるため、建築等工事
の進捗度合に伴った揚程を持つエレベータに迅速且つ安
全に変更できる。

【００１０】また、搬器の昇降方式をウインチによるロ
ープの巻込み及び繰り出し式と成すことにより、運転時
の異常な振動と騒音の発生が回避され搭乗者の居住性が
向上し、しかも、搬器の昇降速度の高速化が可能とな
る。

【００１１】

【実施例１】図１の装置は、上方に順次連結可能なガイ
ドレール１と、該ガイドレール１に沿って自在に昇降可
能な搬器２と、該搬器２を昇降させるための昇降ウイン
チ５及びロープ４と、ロープ４の牽引方向を変えるため
の転向滑車３とを有している。

【００１２】ガイドレール１には、転向滑車３を上方に
移動させる際に必要な駆動反力を受けもつためのラック
１１が具備され、最下端が基礎１０１に固定されており
順次上方に向けて複数本が連結できるよう、両端の断面
形状は同一となっている。中間部は壁つなぎ１０２によ
って建築物１０３の一部と固定されている。

【００１３】搬器２には、昇降中にガイドレール１から
逸脱しないためにガイドローラ２１が付設され、また上
面にはロープ固定金具２２及び予備ドラム３７が具備さ
れ、ロープ４によって懸垂されている。

【００１４】転向滑車３は、ガイドレール１に沿って任
意に上下動可能な構造となした枠体３１と、搬器２を昇
降させるためのロープ４の牽引方向を変えるための転向
滑車３と、該転向滑車３を上下動させるためのクライミ
ング用ピニオン３４及び原動機３３とから成り、該ピニ
オン３４はガイドレール１に具備されたラック１１に噛
み合っており、クライミング用原動機３３を起動するこ
とによってガイドレール１に沿って上下動するようにな
っている。上下動中にガイドレール１から逸脱しないた
めに枠体３１にはガイドローラ３５が具備されている。
ロープ４を巻込み、または繰り出すための昇降ウインチ
５は、基礎１０１に固定されている。

【００１５】図１に示す実施例では、昇降用ウインチ５
をエンドレス式のロープ繰り出し機と成しているため、
反搬器側のロープにカウンタウェイト３６を装備してい
る。更に、搬器２の揚程の増減に対応するために、ロー
プ４の有効長を調整するための予備ドラム３７を装備し
ている。

【００１６】また、搬器２には、前記ガイドレール１に
具備されたラック１１と噛み合って回転する制動用ピニ
オン７１と更に、該制動用ピニオン７１の軸上に遠心式
ガバナブレーキ７２が装着され、ロープ４の切断等によ
る搬器２の落下や昇降速度の超過を防止するようになっ
ている。

【００１７】図２は、図１のＡ矢視図を示している。

【００１８】図３は、建築等工事の進捗度合に伴って、
搬器の揚程を延長する場合の作業方法のうちガイドレー
ルの連結状況を示している。

【００１９】最初に、搬器２を下端に停止させ、次にガ
イドレール１の上部に延長用ガイドレール１２を連結す
る。

【００２０】図４は、延長用ガイドレール１２を連結
後、転向滑車３を上方に移動させて搬器の揚程をＢ寸法
だけを延長した状態を示している。

【００２１】まず、最初にカウンタウエイト３６が落下
しないように転向滑車３を取付けている枠体３１にカウ
ンタウエイトを固定する。次にロープ固定金具２２のク
ランプを解除したのち予備ドラム３７を回転させて、搬
器２の揚程が延長された長さ分だけロープ４を繰り出し
たのち，再度ロープ４をロープ固定金具２２に固定す
る。次に、クライミング用原動機３３を起動して転向滑
車３を上昇させ、図示しない転向滑車固定ピンを挿入し
てガイドレール１と転向滑車３を取付けている枠体３１
を固定し、揚程の延長作業を完了する。

【００２２】昇降ウインチ５は、転向滑車３を取付けて
いる枠体３１に設置しても機能を発揮できる。また、本
発明は、建設用リフトにも応用できる。

【００２３】

【発明の効果】前述の如き本発明に係る工事用エレベー
タ構造に依れば、搬器と昇降装置を分離し且つ搬器をロ
ープによる昇降式と成し、しかも搬器の昇降方式を従来
の昇降用ピニオンとガイドレールに具備されたラックの
噛み合せ方式に代えて昇降ウインチによるロープの巻込
み及び繰り出し式と成したため、搬器の昇降時の昇降用
ピニオンとラックの噛み合いによる異常な振動や騒音の
発生が回避され、搭乗者の居住性が向上すると共に、搬
器の昇降速度の高速化が可能となる。

【００２４】ガイドレール上部に転向滑車を付設し、ま
た昇降ウインチを地上に設置したことにより、高所作業
を伴うことなく安全に且つ容易に該昇降ウインチの点検
や整備が実施できる。

【００２５】更に、該転向滑車にクライミング装置を付
加させ、転向滑車を自力で上方に移動できるよう構成し
たことにより、転向滑車を上方に移動した長さだけ搬器
の揚程が延長でき、建築等工事の進捗度合に伴った揚程
のエレベータに迅速に且つ容易に変更できる。

【００２６】一方、建築等工事が完了し、工事用エレベ
ータを撒去する場合には、前記搬器を地上で撒去したの
ち、前記転向滑車のクライミング装置を作動させて、転
向滑車を高層部より下方に移動させ、地上へ降したのち
に分解できることから、撒去作業の迅速化、省力化およ
び安全性向上が図られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る工事用エレベータの構造の実施例
を示す側面図である。

【図２】本発明に係る工事用エレベータの構造に実施例
を示す平面図であり、図１のＡ矢視図を表している。

【図３】建築等の工事の進捗度合に伴って搬器の揚程を
延長する場合のガイドレールの連結状況を示している。

【図４】転向滑車を上方に移動させて搬器の揚程を延長
した状態を示している。二点鎖線で示す図は、転向滑車
が上方に移動する前の状態であり、実線は、クライミン
グ装置を作動させることによって、Ｂ寸法だけ上方に移
動した状態を示している。

【図５】ラック・ピニオン式と呼ばれている従来技術の
工事用エレベータの実施例を示す図であり、搬器２の上
部に昇降用ピニオン２０３及び駆動モータ２０２を装備
し、ガイドレール１に具備されたラック１１と噛みあっ
て回転しながら搬器２が昇降する状況を示している。

【図６】従来技術の工事用エレベータの実施例を示す図
であり、ガイドレール１の上部の架台２０１に転向滑車
３が設置され，地上に昇降ウインチ５が設置されてい
る。更にガイドレールを延長する場合には、架台２０１
をクレーンで上部に移動させる必要性があることを示し
ている。

【符号の説明】

１・・・ガイドレール ２・・・搬器 ３・・・転向滑車 ４・・・ロープ ５・・・昇降用ウインチ １１・・・ラック ３３・・・クライミング用原動機 ３４・・・駆動ピニオン ３６・・・カウンタウェイト ３７・・・予備ドラム ７２・・・遠心式ガバナブレーキ

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 上方に順次連結可能なガイドレールと、
   該ガイドレールに沿って昇降自在な搬器と、該搬器を昇
   降させるための昇降ウインチと、前記ガイドレールの上
   部にあって昇降用ロープの牽引方向を変えるための転向
   滑車とから成るエレベータに於いて、前記転向滑車を前
   記ガイドレールに沿って上下移動可能な枠体に設置し、
   また該枠体に前記ガイドレールに具備されたラックと噛
   み合うように構成したピニオンと、該ピニオンを回転駆
   動させるための動力伝達手段とを付設させて、前記転向
   滑車にクライミング機能を持たせたことを特徴とする工
   事用エレベータ構造。
2. 【請求項２】 前記搬器が、前記ガイドレールに具備さ
   れたラックと噛み合って回転する制動用ピニオンと、該
   制動用ピニオンの軸上に遠心力式ガバナブレーキとを備
   えた特許請求の範囲第１項のエレベータ構造。