JPH07330582A - 直腸投与用組成物 - Google Patents

直腸投与用組成物

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JPH07330582A
JPH07330582A JP26891894A JP26891894A JPH07330582A JP H07330582 A JPH07330582 A JP H07330582A JP 26891894 A JP26891894 A JP 26891894A JP 26891894 A JP26891894 A JP 26891894A JP H07330582 A JPH07330582 A JP H07330582A
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JP
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matrix
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fatty acid
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Application number
JP26891894A
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English (en)
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Susumu Iwasa
進 岩佐
Tetsuo Hoshino
哲夫 星野
Hiroya Muranishi
廣哉 村西
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Takeda Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Takeda Chemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患の治療のための
優れた直腸投与用組成物を提供する。 【構成】炎症性腸疾患治療薬が分散してなる粘膜付着性
マトリックスを坐剤基剤に含有させてなる直腸投与用組
成物。 【効果】本発明の直腸投与用組成物は、腸管粘膜炎症部
位またはその近傍に膨潤して付着し、炎症性腸疾患治療
薬を徐々に放出し、長時間にわたり該薬物を高濃度で効
率的に供給する。従って微量の薬物投与量で効果を発揮
し、副作用が少ない。本発明の組成物は、潰瘍性大腸炎
やクローン病の治療薬として有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、炎症性腸疾患治療薬を
分散させた粘膜付着性マトリックスを坐剤基剤に含有さ
せてなる直腸投与用組成物に関する。本発明の組成物
は、潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患の治療に用いられ
る。
【0002】
【従来の技術】潰瘍性大腸炎(以下、UCと略記するこ
とがある)、クローン病や限局性腸炎などの炎症性腸疾
患は、再燃と緩解とを繰り返し遷延経過を辿る難治性の
疾患である。最近の研究から、免疫異常がその病因に関
与していると言われ〔ジャーナル オブ クリニカル
イムノロジー(J. Clin. Immunol.)第6巻、第415
頁(1986)〕、各種の免疫抑制剤による治療が試み
られたが十分な成績を挙げていない。現在でもなお副腎
皮質ステロイドホルモン(以下、SHと略記することが
ある)やサリチルアゾスルファピリジン(以下、SAS
Pと略記することがある)の有する、主として抗炎症作
用に基づいた治療法が主体となっている〔厚生省特定疾
患消化吸収障害調査研究班昭和60年度業績集、第18
5頁(1986);日本臨床、第35巻、第72頁(1
977);ニュー イングランドジャーナル オブ メ
ディスン(N. Engl. J. Med.)第25巻、第1499頁
(1980)等〕。SASPは、UCの治療薬として広
く臨床使用され、その薬効についてもよくコントロール
された臨床試験で証明されている〔ランセット(Lance
t)1巻、第185頁(1965)〕。SASPは、ス
ルファピリジンとサリチル酸とがジアゾ結合した構造を
有し、投与後腸内細菌により分解されてスルファピリジ
ンとサリチル酸とに分解され吸収されると言われ、現
在、経口剤および坐剤として使用されている。しかしな
がら、胃腸症状・頭痛・発疹等の症状が服用患者で時と
して認められる。また坐剤投与は経口投与の約2倍の吸
収量が得られ、患部局所における即効性により経口投与
以上の治療効果が期待されている〔基礎と臨床、第17
巻、第2553頁(1983)〕が、投与後体外に排出
され易く薬物が体内に長く留まらず、十分な吸収が得ら
れない等の欠点を有している。
【0003】一方、遺伝子工学的手法の進歩により各種
のサイトカインが大量に作製可能となり、医薬への応用
が現実のものとなった。例えば、塩基性繊維芽細胞増殖
因子(以下、bFGFと略記することがある)およびそ
のムテイン〔フェブス レター(FEBS Lett.)第
213巻、第189頁(1987)〕は、血管内皮細胞
に対する強い増殖促進作用とプラスミノーゲンアクチベ
ータ誘導作用とを有する〔ネイチャー(Nature)第24
9巻、第123頁(1974)〕ため、創傷治癒・血管
新生促進・抗血栓・抗動脈硬化等の予防治療薬として期
待されている。これは、実際に病態動物モデルを用いた
実験で胃・十二指腸潰瘍に有効であることが分かってお
り〔ガストロエンテロロジー(Gastroenterology),第
98巻(5II)、A45頁(1990);モレキュラ
ー メディスン(Mol. Med.)第30巻、第1030頁
(1993)等〕、臨床応用されている。またこのbF
GFは経腸投与によりラット潰瘍性大腸炎モデルにおい
て顕著な薬理効果を示すこと〔ガストロエンテロロジー
(Gastroenterology)第98巻、A203頁(199
0)等〕も報告されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記したように、SA
SPは経口剤としてだけではなく坐剤としてもUCの治
療に使われているが、なおこの疾患の治療には現在の剤
型では不十分で、副作用の強いSHの投薬を必要として
いる。また新しい作用機作を有するbFGFの本疾患へ
の適用は大いに期待されるところであるが、該蛋白質は
不安定で水溶液中で急速に失活するばかりでなく、経口
投与の場合、胃内での酸性条件下あるいは消化管内での
プロテアーゼ作用により容易に分解される。一方、最近
では、薬物送達システムの概念を導入した放出制御型坐
剤や直腸滞留型坐剤が開発され〔薬剤学、第47巻、第
42頁(1987);薬剤学、第48巻、第48頁(1
988)〕、優れた坐剤基剤としてウイテップゾルW3
5(以下、WIT−35と略記することがある)が使わ
れ、エチレン−酢酸ビニル共重合体の粒子とWIT−3
5とから成る二相性坐剤も考案されている〔薬剤学、第
53巻、第148頁(1993)〕。また、胃粘膜に対
する付着性を利用し胃内での滞留時間を延長させ、胃・
十二指腸潰瘍薬等の薬効成分を生体により有効に利用さ
せうる経口投与用の消化管粘膜付着性マトリックスも報
告されている(特開平5−132416号公報)。しか
しながら、この消化管粘膜付着性マトリックスを利用し
た大腸疾患治療用の坐剤に関する報告は無く、その有用
性については知られていない。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らはかかる実情
に鑑み、より効率的かつ選択的に大腸炎症部位に作用す
る安全性の高い炎症性腸疾患治療用製剤を得るべく鋭意
研究を重ねた。その結果、通常の坐剤基剤中に薬効成分
を含む粘膜付着性マトリックスを含有させてなる直腸投
与用組成物が、従来の経口剤や坐剤よりも有効であり、
SASPのような低分子の潰瘍性大腸炎治療薬だけでな
く、bFGFのような不安定な蛋白性薬物をも製剤化し
て炎症部位に選択的に付着し、薬物を徐々に放出・作用
させうることを見いだし、種々検討を加えた結果、本発
明を完成した。本発明は、(1)炎症性腸疾患治療薬を
分散させた粘膜付着性マトリックスを坐剤基剤に含有さ
せてなる直腸投与用組成物、(2)炎症性腸疾患治療薬
が潰瘍性大腸炎治療薬である上記(1)記載の直腸投与
用組成物、(3)炎症性腸疾患治療薬がトロンボキサン
A2 合成酵素阻害剤である上記(1)記載の直腸投与用
組成物、(4)炎症性腸疾患治療薬がトロンボキサンA
2 レセプター拮抗剤である上記(1)記載の直腸投与用
組成物、(5)炎症性腸疾患治療薬が繊維芽細胞増殖因
子である上記(1)記載の直腸投与用組成物、(6)粘
膜付着性マトリックスが消化管粘膜付着性マトリックス
である上記(1)記載の直腸投与用組成物、および
(7)消化管粘膜付着性マトリックスが、ポリグリセリ
ン脂肪酸エステル又は脂質に水で粘性を生じる物質を配
合してなる上記(6)記載の直腸投与用組成物を提供す
るものである。
【0006】本発明で用いる炎症性腸疾患治療薬として
は、炎症性腸疾患に有効な薬物であればいかなるもので
もよく、例えば潰瘍性大腸炎、クローン病、限局性腸炎
などの炎症性腸疾患に有効な薬物があげられる。潰瘍性
大腸炎に有効な薬物としては、例えばサリチルアゾスル
ファピリジン(SASP)、スルファピリジン、5−ア
ミノサリチル酸、5,5'−アゾビスサリチル酸、免疫抑
制作用を有する薬物、メルカプトプリン、副腎皮質ステ
ロイドホルモン(SH)、メトロニダゾール、下記に述
べる細胞増殖因子およびそのムテイン、トロンボキサン
A2 合成酵素阻害剤およびトロンボキサンA2 レセプタ
ー拮抗剤などが挙げられる。クローン病に有効な薬物と
しては、例えば副腎皮質ステロイドホルモン(SH)な
どが挙げられる。限局性腸炎に有効な薬物としては、例
えばサリチルアゾスルファピリジン(SASP)、スル
ファピリジン、5−アミノサリチル酸、5,5'−アゾビ
スサリチル酸、メルカプトプリン、副腎皮質ステロイド
ホルモン(SH)、メトロニダゾール、下記に述べる細
胞増殖因子およびそのムテインなどが挙げられる。この
うち好ましくは潰瘍性大腸炎に有効な薬物である。さら
に好ましくは、サリチルアゾスルファピリジン、細胞増
殖因子およびそのムテイン、トロンボキサンA2 合成酵
素阻害剤およびトロンボキサンA2 レセプター拮抗剤で
ある。特に好ましくはトロンボキサンA2 合成酵素阻害
剤およびトロンボキサンA2 レセプター拮抗剤である。
上記免疫抑制作用を有する薬物としては、例えばアザチ
オプリン、シクロスポリンA、FK506等が挙げられ
る。好ましくは、アザチオプリンである。上記副腎皮質
ステロイドホルモンとしては、例えばハイドロコーチゾ
ン、メタゾン類(例、ベータメタゾン、ベクロメタゾ
ン、二プロピオン酸ベクロメタゾン等)、プレドニソロ
ン類(例、メチルプレドニソロン,プレドニソロン等)
等が挙げられる。好ましくは、二プロピオン酸ベクロメ
タゾンである。二プロピオン酸ベクロメタゾンは局所に
おける抗炎症作用に優れ、治療効果と安全性との面で高
く評価されている。
【0007】上記細胞増殖因子としては、例えば上皮細
胞増殖因子、繊維芽細胞増殖因子(例、塩基性繊維芽細
胞増殖因子(bFGF)、酸性繊維芽細胞増殖因子(a
FGF)等)などが挙げられる。これらの増殖因子には
そのムテインも含まれる。これら増殖因子は脳や下垂体
などの臓器から抽出された天然型だけでなく、遺伝子操
作技術により作製された組換え型も本発明では用いられ
る。このうち好ましくは、繊維芽細胞増殖因子が用いら
れる。さらに好ましくは塩基性繊維芽細胞増殖因子であ
る。特に好ましくはbFGFの一部の構成アミノ酸を改
変したムテイン(塩基性繊維芽細胞増殖因子蛋白ムテイ
ン)である〔バイオケミカル バイオフィジカル リサ
ーチ コミュニケーション(Biochem. Biophys. Res. C
ommun.)第151巻、第701頁(1986)、EP−
A−281822号公報、EP−A−326907号公
報等〕。特に、bFGFの69位と87位のシステイン
をセリンにそれぞれ置換したムテイン(以下、CS23
と略記することがある)は、元のbFGFと同等の生物
活性を有し、かつシステインがセリンに置換されている
ため多量体形成につながるチオール基の酸化が生じない
ことから安定であり、好ましく用いられる。上記トロン
ボキサンA2 合成酵素阻害剤としては、例えば(E)−7
−フェニル−7−(3−ピリジル)−6−ヘプテン酸
(以下、化合物Aと略す)等があげられる。上記トロン
ボキサンA2 レセプター拮抗剤としては、例えば7−
(3,5,6−トリメチル−1,4−ベンゾキノン−2−
イル)−7−フェニルヘプタン酸(以下、化合物Bと略
す)等があげられる。上記炎症性腸疾患治療薬は溶液ま
たは固体として用いる。この薬効成分を固体として用い
る場合は、薬効成分粉末または凍結乾燥粉末とすること
もできる。またこの薬効成分粉末の粒度は、調製しよう
とする粘膜付着性マトリックスの粒度よりも小さくして
おく必要があり、例えば約1〜1000μm、好ましく
は約1〜500μmである。薬効成分の粘膜付着性マト
リックスからの放出時間または放出量を制御するため
に、薬効成分粉末にコーティングなどの処理を施しても
よい。薬効成分を溶液とする場合は、水溶液または適当
な溶媒の溶液として用いることができる。本発明で用い
る粘膜付着性マトリックスとしては、腸管炎症部位また
はその近傍に付着し、消化管、例えば直腸、大腸等の腸
管における滞留時間の長いマトリックスであれば、如何
なるものでもよい。このようなマトリックスとしては例
えば、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよび水で粘性を
生じる物質(以下、粘性物質と略記することがある)を
配合してなる消化管粘膜付着性マトリックス、または脂
質および粘性物質を配合してなる消化管粘膜付着性マト
リックス等が用いられる。これらの粘膜付着性マトリッ
クスとしては、例えばポリグリセリン脂肪酸エステルま
たは脂質を含むマトリックスの中に粘性物質が分散して
いるもの、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたは脂質を
含むマトリックスが粘性物質で被覆されているもの等が
挙げられる。好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステ
ルおよび粘性物質を配合してなる粘膜付着性マトリック
スが用いられる。さらに好ましくは、ポリグリセリン脂
肪酸エステルを含むマトリックスの中に粘性物質が分散
しているものである。該粘膜付着性マトリックスの融点
は、例えば約30〜120℃、好ましくは約40〜12
0℃である。
【0008】ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、
ポリグリセリンと脂肪酸とのエステルである限り、モノ
エステル、ジエステルおよびポリエステルのいずれでも
よい。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、結晶多形性を
示さず、しかも薬効成分との相互作用が殆どないという
特性を有するため、薬効成分と共存する場合、薬効成分
は殆ど失活せず、長期にわたり安定である。ポリグリセ
リンは、「1分子中にn個(環状)〜(n+2)個(直
鎖・分枝状)の水酸基と、(n−1)個(直鎖・分枝
状)〜n個(環状)のエーテル結合を有する多価アルコ
ール」〔“ポリグリセリンエステル”阪本薬品工業株式
会社編集、1986年5月2日発行、第12頁〕であ
り、直鎖状または分枝状のいずれでもよい。例えば下記
【化1】 (式中、nは重合度を示し、2以上の整数である)で表
される化合物などが使用される。nは、通常、2〜5
0、好ましくは2〜20、さらに好ましくは2〜10で
ある。該ポリグリセリンの具体例としては、例えばジグ
リセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタ
グリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オ
クタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン、ペ
ンタデカグリセリン、エイコサグリセリン、トリアコン
タグリセリンなどが挙げられる。これらのポリグリセリ
ンの中で、例えばテトラグリセリン、ヘキサグリセリ
ン、デカグリセリンなどが繁用される。脂肪酸として
は、例えば炭素数8〜40、好ましくは12〜22の飽
和または不飽和脂肪酸などが挙げられる。該脂肪酸とし
ては、例えばパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン
酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、ラウリン
酸、リシノール酸、カプリル酸、カプリン酸、ベヘン酸
などが挙げられる。これらの脂肪酸の中で、例えばステ
アリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、リノール酸、ベヘ
ン酸などが好ましい。
【0009】ポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例と
しては、例えばベヘン酸ヘキサ(テトラ)グリセリド、
カプリル酸モノ(デカ)グリセリド、カプリル酸ジ(ト
リ)グリセリド、カプリン酸ジ(トリ)グリセリド、ラ
ウリン酸モノ(テトラ)グリセリド、ラウリン酸モノ
(ヘキサ)グリセリド、ラウリン酸モノ(デカ)グリセ
リド、オレイン酸モノ(テトラ)グリセリド、オレイン
酸モノ(ヘキサ)グリセリド、オレイン酸モノ(デカ)
グリセリド、オレイン酸ジ(トリ)グリセリド、オレイ
ン酸ジ(テトラ)グリセリド、オレイン酸セスキ(デ
カ)グリセリド、オレイン酸ペンタ(テトラ)グリセリ
ド、オレイン酸ペンタ(ヘキサ)グリセリド、オレイン
酸デカ(デカ)グリセリド、リノール酸モノ(ヘプタ)
グリセリド、リノール酸ジ(トリ)グリセリド、リノー
ル酸ジ(テトラ)グリセリド、リノール酸ジ(ヘキサ)
グリセリド、ステアリン酸モノ(ジ)グリセリド、ステ
アリン酸モノ(テトラ)グリセリド、ステアリン酸モノ
(ヘキサ)グリセリド、ステアリン酸モノ(デカ)グリ
セリド、ステアリン酸トリ(テトラ)グリセリド、ステ
アリン酸トリ(ヘキサ)グリセリド、ステアリン酸セス
キ(ヘキサ)グリセリド、ステアリン酸ペンタ(テト
ラ)グリセリド、ステアリン酸ペンタ(ヘキサ)グリセ
リド、ステアリン酸デカ(デカ)グリセリド、パルミチ
ン酸モノ(テトラ)グリセリド、パルミチン酸モノ(ヘ
キサ)グリセリド、パルミチン酸モノ(デカ)グリセリ
ド、パルミチン酸トリ(テトラ)グリセリド、パルミチ
ン酸トリ(ヘキサ)グリセリド、パルミチン酸セスキ
(ヘキサ)グリセリド、パルミチン酸ペンタ(テトラ)
グリセリド、パルミチン酸ペンタ(ヘキサ)グリセリ
ド、パルミチン酸デカ(デカ)グリセリドなどが挙げら
れる。好ましいポリグリセリン脂肪酸エステルとして
は、例えばベヘン酸ヘキサ(テトラ)グリセリド(例え
ば、理研ビタミン(株)製、商品名 ポエムJ−46B,
または阪本薬品工業(株)製、商品名 HB−310な
ど)、ステアリン酸ペンタ(テトラ)グリセリド(例え
ば、阪本薬品工業(株)製、商品名 PS−310な
ど)、ステアリン酸モノ(テトラ)グリセリド(例え
ば、阪本薬品工業(株)製、商品名 MS−310な
ど)、ステアリン酸ペンタ(ヘキサ)グリセリド(例え
ば、阪本薬品工業(株)製、商品名 PS−500な
ど)、ステアリン酸セスキ(ヘキサ)グリセリド(例え
ば、阪本薬品工業(株)製、商品名 SS−500な
ど)、ステアリン酸モノ(デカ)グリセリドまたはそれ
らの混合物などが挙げられる。上記したポリグリセリン
脂肪酸エステルは、1種または2種以上の混合物として
用いられる。
【0010】ポリグリセリン脂肪酸エステルの分子量
は、通常約200〜5000、好ましくは約300〜2
000、さらに好ましくは約500〜2000程度であ
る。ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB(Hydrophi
le-lipophile balance; 親水性親油性バランス)は、通
常1〜22、好ましくは1〜15、さらに好ましくは2
〜9程度である。HLBの異なる二種以上のポリグリセ
リン脂肪酸エステルを適宜混合して目的とするHLBを
調整してもよい。ポリグリセリン脂肪酸エステルのHL
Bを調整すると、薬効成分の放出性および溶出性をコン
トロールできる。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、薬
効成分、粘性物質およびマトリックスの形態に応じて適
宜選択することができるが、常温(約15℃)で固型の
ものが使用される。ポリグリセリン脂肪酸エステルの融
点は、例えば約15〜80℃、好ましくは約30〜75
℃、さらに好ましくは約40〜75℃程度である。2種
以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを混合物として使
用する場合、粘膜付着性マトリックスが常温で固型であ
る限り、液状のポリグリセリン脂肪酸エステルと併用し
てもよい。
【0011】脂質としては、融点が約40〜120℃、
好ましくは約40〜60℃のものが用いられる。脂質と
しては、例えば炭素数14〜22の飽和脂肪酸(例え
ば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラ
キジン酸、ベヘン酸など)又はその塩(例えば、ナトリ
ウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩等);炭素数1
6〜22の高級アルコール(例えば、セチルアルコー
ル、ステアリルアルコールなど);上記脂肪酸とのモノ
−、ジ−、及びトリグリセリド(例えば、1−モノステ
アリン、1−モノパルミチンなど)である脂肪酸グリセ
リンエステル;油脂類(例えば、ヒマシ油、綿実油、大
豆油、菜種油、牛脂など、およびこれらの硬化油な
ど);ロウ類(例えば、蜜ロウ、カルナバロウ、鯨ロウ
など);炭化水素類(例えば、パラフィン、マイクロク
リスタリンワックスなど)、ホスホリピッド(例えば、
水添レシチンなど)等が挙げられる。これらの脂質の中
で、例えば硬化綿実油、硬化ヒマシ油、硬化大豆油、カ
ルナバロウ、ステアリン酸、ステアリルアルコール、マ
イクロクリスタリンワックスなどが好ましい。
【0012】水で粘性を生じる物質(粘性物質)は、水
により粘性が発現し粘膜(消化管粘膜)に対して付着性
を示すと共に、製剤的に許容される物質であれば特に制
限されない。この中で、水により膨潤し著しく増粘する
物質が好ましい。粘性物質としては、例えば合成ポリマ
ー、天然粘性物質などが挙げられる。該合成ポリマーと
しては、20℃における該ポリマーの2%水溶液の粘度
が、約3〜50000cps、好ましくは約10〜300
00cps、さらに好ましくは約15〜30000cpsを示
すものが好適である。但し、中和により増粘するポリマ
ーの場合には、20℃における0.2%中和液の粘度
は、約100〜500000cps、好ましくは約100
〜200000cps、さらに好ましくは約1500〜1
00000cps を示すポリマーが望ましい。上記合成ポ
リマーとしては、好ましくは酸性ポリマーが挙げられ、
その例としては、カルボキシル基、硫酸基またはこれら
の塩を有するポリマーが挙げられる。特に好ましくはカ
ルボキシル基またはその塩を有するポリマーである。
【0013】カルボキシル基またはその塩を有するポリ
マーとしては、例えばアクリル酸を構成モノマーとする
アクリル酸系重合体(共重合体も含む)とその塩が挙げ
られる。該塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩など
の一価の金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの
二価の金属塩などが挙げられる。アクリル酸系重合体ま
たはその塩としては、カルボキシル基58〜63重量%
を含み、分子量約20万〜600万、好ましくは約10
0万〜500万のポリマーが挙げられる。好ましいアク
リル酸系重合体またはその塩には、アクリル酸単独重合
体とその塩も含まれる。このようなポリマーは、例えば
局外規(1986年10月)にカルボキシビニルポリマ
ーとして記載されている。前記ポリマーとしては、例え
ばカーボマー〔例、カーボマー940,934,934
P,940,941,1342等(NF(National For
mula) XVII収載)〕、ハイビスワコー(商品名)1
03、104、105(和光純薬工業株式会社)、ノベ
オン(NOVEON) AA1(商品名、ザ ビー エ
フ グッドリッチ社(The B. F. Goodrich Compan
y))、カルシウムポリカーボフィル(USP XXI
I収載)などが挙げられる。天然粘性物質としては、例
えばムチン、カンテン、ゼラチン、ペクチン、カラギー
ナン、アルギン酸ナトリウム、ローカストビーンガム、
キサンタンガム、トラガントガム、アラビアゴム、キト
サン、プルラン、ワキシ−スターチ、スクラルファー
ト、セルロースおよびその誘導体(例、硫酸セルロース
等)などが挙げられる。本発明で用いられる粘性物質と
しては、アクリル酸系重合体またはその塩が好ましい。
これらの粘性物質は単独であるいはこれらの二種以上を
併用してよい。
【0014】粘性物質の使用量は、粘膜付着性マトリッ
クス中、例えば約0.005〜80重量%、好ましく
は、約0.5〜40重量%、さらに好ましくは約1〜3
0重量%である。例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステ
ルまたは脂質を含むマトリックス中に粘性物質が分散し
ている場合、粘性物質は全重量の約0.005〜80重
量%、好ましくは約0.5〜30重量%、さらに好まし
くは約1〜25重量%であり、ポリグリセリン脂肪酸エ
ステルまたは脂質を含むマトリックスが粘性物質で被覆
される場合、粘性物質の使用量は、全重量の約0.00
5〜80重量%、好ましくは約0.5〜30重量%、さ
らに好ましくは約1〜25重量%である。粘膜付着性マ
トリックスが、例えばポリグリセリン脂肪酸エステルに
粘性物質を配合してなる粘膜付着性マトリックスまたは
脂質に粘性物質を配合してなる粘膜付着性マトリックス
の場合、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよび脂質の使
用量は、重量換算で、使用する薬効成分に対してそれぞ
れ約0.001〜10000倍、好ましくは約0.00
1〜50倍である。さらに、前記ポリグリセリン脂肪酸
エステルを含むマトリックスには、脂質を含有させても
よい。脂質としては、製剤上許容しうる水不溶性物質で
あり、かつ薬効成分の溶出速度を調整する作用を有する
ものが用いられ、例えば、前記した脂質が挙げられる。
脂質とポリグリセリン脂肪酸エステルとを併用する場
合、脂質の使用量は、粘膜への付着性が損われない範囲
であればよく、例えば、重量換算で、薬効成分に対して
約0.01〜100倍、好ましくは約1〜20倍であ
る。
【0015】前記の粘膜付着性マトリックスには、薬効
成分の吸収を促進させるために有機酸を適量併用しても
よい。有機酸としては、例えば酒石酸、クエン酸、コハ
ク酸、アスコルビン酸などが用いられる。さらに、前記
のマトリックスには、固型医薬製剤(例、細粒剤、顆粒
剤等)の製造に用いられる慣用の添加剤を使用してもよ
い。添加剤としては、例えば乳糖、コーンスターチ、タ
ルク、結晶セルロース(例、アビセルなど)、粉糖、ス
テアリン酸マグネシウム、マンニトール、軽質無水ケイ
酸、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、L−システイ
ンなどの賦形剤;澱粉、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴ
ム粉末、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロー
ス、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキ
シプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセル
ロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリ
ンなどの結合剤;カルボキシメチルセルロースカルシウ
ム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカ
ルメロースナトリウムなどの崩壊剤;アルキル硫酸ナト
リウムなどのアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレ
ンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪
酸エステルおよびポリオキシエチレンヒマシ油誘導体等
の非イオン系界面活性剤などの界面活性剤;水酸化マグ
ネシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫
酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、
ケイ酸アルミン酸マグネシウム、スクラルファートなど
の制酸剤や粘膜保護剤;着色剤;矯味剤;吸着剤;防腐
剤;湿潤剤;帯電防止剤、崩壊延長剤などが挙げられ
る。これらの添加剤の添加量は、粘膜に対する付着性を
損わない範囲で適宜選択される。
【0016】本発明で用いられる坐剤基剤としては、特
に制限はなく、通常の坐剤などに使用されている通常の
水溶性基剤、油脂性基剤、乳剤性基剤、軟膏基剤等が挙
げられる。このうち、油脂性基剤が好ましい。水溶性基
剤としては、例えばポリエチレングリコール類(例、P
EG−400,1000,1540,4000,600
0またはこれらの混合物等)、グリセリン、グリセロゼ
ラチン、プロピレングリコール類、糖アルコール類
(例、ソルビトール、マンニトール等)、天然ガム類
(例、トラガントガム、アカシヤガム、カラヤガム、ア
イルランド苔、グアヤクガム、キサンタンガム、ローカ
ストビーンガム等)、セルロース誘導体(例、メチルセ
ルロース、カルボキシメチルセルロース等)、アクリル
酸重合体(例、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸
等)、ビニール重合体(例、ポリビニルピロリドン、ポ
リビニルメチルエーテル、カルボキシポリメチレン
等)、合成多糖類(例、ポリシュークロース、ポリグル
コース、ポリラクトース等)、でんぷん、デキストリ
ン、ペクチン、アルギン酸ソーダ等の水性ゲル基剤など
が挙げられる。油脂性基剤としては、例えばカカオ脂、
ラウリン脂、イソカカオ、サポサイアー(Suppocire,G
ATEFOSSE社製,フランス)、ウィテプゾル類(Witepso
l,ダイナミット−ノーベル社製、西ドイツ)(例、Wit
epsol W−35,H−5等)、ミグリオール(ダイナミ
ット−ノーベル社製、西ドイツ)等の脂肪酸グリセリ
ド、ゴマ油、大豆油、トウモロコシ油、綿実油、オリー
ブ油等の植物油などが挙げられる。乳剤性基剤として
は、例えばカカオ脂、コレステロール及びグリセリンの
混合物、カカオ脂、レシチン及び水の混合物、カカオ脂
及びラネットワックス(Lanette wax)SX(主成分が
セチルアルコール、ステアリルアルコールの硫酸エステ
ルで、約10%のリン酸エステルを含有)の混合物、カ
カオ脂、セチルアルコール及びラウリル硫酸ナトリウム
の混合物、カカオ脂及びグリセリンモノステアレートの
混合物、脂肪酸モノグリセリンエステル、モノレン(mo
nolene,プロピレングリコール−α−モノステアレー
ト)、および、木ロウ、白ロウ、ステアリルアルコール
またはセチルアルコール等とラウリル硫酸ナトリウム、
ツィーン(Tween)類との混合物などが挙げられる。軟
膏基剤としては例えば精製ラノリン、ラウリル硫酸ナト
リウムなどが挙げられる。この中で、水溶性基剤として
はポリエチレングリコール類が好ましい。油脂性基剤と
してはウィテプゾル類、ミグリオール(ダイナミット−
ノーベル社製、西ドイツ)等の脂肪酸グリセリドが好ま
しい。乳剤性基剤としてはカカオ脂にラネットワックス
SXを配合したものが好ましい。軟膏性基剤としては精
製ラノリンなどが好ましい。上記基剤は単独で又はこれ
ら2種以上を混合して使用する。
【0017】本発明の直腸投与用組成物は、炎症性腸疾
患治療薬を粘膜付着性マトリックスに分散させ、これを
坐剤基剤に含有せしめることにより得られる。例えば、
まず炎症性腸疾患治療薬を分散せしめた粘膜付着性マト
リックスを自体公知の方法により調製し、次いでこれと
坐剤基剤とを自体公知の方法により混合し、適当な形状
とすればよい。該混合方法としては、例えば炎症性腸疾
患治療薬を、1)ポリグリセリン脂肪酸エステルまたは
脂質に粘性物質が分散している粘膜付着性マトリックス
に分散させ、または2)ポリグリセリン脂肪酸エステル
または脂質を含むマトリックスが粘性物質で被覆された
粘膜付着性マトリックスに分散させ、次いで得られた薬
効成分を含む粘膜付着性マトリックスを、坐剤基剤に含
有せしめる方法が挙げられる。このうち好ましくは、炎
症性腸疾患治療薬を、ポリグリセリン脂肪酸エステルま
たは脂質に粘性物質が分散している粘膜付着性マトリッ
クスに分散させ、次いで得られた薬効成分を含む粘膜付
着性マトリックスを坐剤基剤に含有せしめる方法が採用
される。得られたマトリックス含有坐剤基剤を適当な形
状とする方法としては自体公知の方法が採用され、例え
ば手工法、押出器等により適当な形状とする、あるいは
適当な型に注入し、放冷する方法等が挙げられる。上記
の薬効成分を含むポリグリセリン脂肪酸エステルまたは
脂質を含むマトリックスの中に粘性物質が分散している
粘膜付着性マトリックスは、ポリグリセリン脂肪酸エス
テルまたは脂質、粘性物質および薬効成分がマトリック
ス中に分散していればよく、分散方法としては自体公知
の方法が採用される。例えばポリグリセリン脂肪酸エス
テルまたは脂質を融点以上に加熱して溶融し、粘性物質
及び薬効成分を同時にまたは別々に添加して分散させた
後、冷却する方法が挙げられる。加熱温度は、例えば、
約40〜150℃、好ましくは約40〜95℃、より好
ましくは約45〜90℃である。分散方法は周知の方法
により行えばよい。上記の方法は慣用の造粒機等を用い
ればよい。例えばスプレーチリングなどの噴霧冷却法に
より球形の固型剤(例、細粒剤)とするのが好ましい。
スプレーチリングは、例えば10〜6000回転/分、
好ましくは900〜6000回転/分、より好ましくは
1000〜3000回転/分の高速回転ディスク上に一
定流速で、溶融したポリグリセリン脂肪酸エステルまた
は脂質中に粘性物質及び薬効成分が分散した混合物を滴
下する等により行うことができる。回転ディスクとして
は、例えば、直径5〜100cm、好ましくは10〜20
cmの平滑円盤、例えばアルミニウム製円盤などが使用で
きる。また、溶融した前記混合物の滴下速度は、所望す
る粒径に応じて選択できるが、通常、約2〜200g/
分、好ましくは約5〜100g/分である。このように
して得られた粒状物は、より真球に近いため、後工程で
のコーティング時に、均一なコーティング被膜を効率よ
く形成できる。上記方法以外には、例えばポリグリセリ
ン脂肪酸エステルまたは脂質、粘性物質および薬効成分
を練合などにより分散して造粒することにより調製する
方法を採用してもよい。この際使用する溶媒としては、
慣用の溶媒(例、メタノール、アセトニトリル、クロロ
ホルム等)が挙げられる。
【0018】さらに、例えば溶融造粒法を用いて薬効成
分を含む粘膜付着性マトリックスを製造してもよい。溶
融造粒法としては、ポリグリセリン脂肪酸エステルまた
は脂質を、該ポリグリセリン脂肪酸エステルまたは脂質
の融点近傍、例えば該融点から約5℃低い温度範囲で加
熱溶融し、上記のスプレーチリング等の造粒方法により
細粒とし、これと粘性物質および薬効成分を所望の温度
で加熱しながら浮遊させ、薬効成分を含む粘膜付着性マ
トリックスとする方法等が挙げられる。この方法を用い
る場合には、薬効成分に対する熱の作用を抑制できるの
で、薬効成分がペプチドやタンパク質などであっても、
その成分の失活を抑制しながら薬効成分を含む粘膜付着
性マトリックスを容易に得ることができる。前記の、ポ
リグリセリン脂肪酸エステルまたは脂質を含むマトリッ
クスが粘性物質で被覆されている粘膜付着性マトリック
スは、該マトリックスが粘性物質、好ましくは少なくと
も粘性物質を含有するコーティング剤で被覆されていれ
ばよい。コーティング剤は、前記粘性物質に加えて、前
記ポリグリセリン脂肪酸エステル、前記脂質および水不
溶性ポリマーの少なくとも1つの成分を含んでいてもよ
い。この場合、前記のマトリックス中の成分に対して相
溶性に乏しい、または相溶しない粘性物質を用いると、
粘性物質が分散した被膜で該マトリックスを被覆でき
る。さらにコーティング剤は添加剤を含有していてもよ
い。
【0019】水不溶性ポリマーとしては、例えばヒドロ
キシプロピルメチルセルロースフタレート(日局1
1)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート
サクシネート(信越化学工業(株)製、カルボキシメチル
エチルセルロース(フロイント産業製,CMEC,局外
規1986)、セルロースアセテートトリメリテート
(イーストマン(Eastman)社製)、セルロースアセテ
ートフタレート(日局11)、エチルセルロース(旭化
成(株)製、FMC)、アミノアルキルメタアクリレート
コポリマー〔レーム ファルマ社製、商品名 オイドラ
ギット(Eudragit)E100〕、アミノアルキルメタク
リレートコポリマー(レーム ファルマ社製、商品名
オイドラギットRS,RN100L、RSPML,RN
100,RSPM)、メタクリル酸コポリマーL(レー
ム ファルマ社製、商品名 オイドラギットL10
0)、メタクリル酸コポリマーL−D(レーム ファル
マ社製、商品名 オイドラギットL−30−D−5
5)、メタクリル酸コポリマーS(レームファルマ社
製、商品名 オイドラギットS−100)、ポリビニル
アセテートフタレート〔カラルコン(COLORCON)社
製〕、商品名 オイドラギットNE30−D(レーム
ファルマ社製)などが挙げられる。これらの水不溶性ポ
リマーは、1種またはこれらの2種以上が用いられる。
【0020】粘性物質含有コーティング剤中の粘性物質
の使用量は、コーティング剤中の固型分全体の約0.0
05〜90重量%、好ましくは約0.05〜80重量
%、さらに好ましくは約0.05〜30重量%、特に好
ましくは約1〜10重量%である。また、コーティング
剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂質および
水不溶性ポリマーの少なくとも1つの成分と粘性物質と
を併用する場合、粘性物質は、コーティング剤中の固型
分全体に対して約0.005〜90重量%、好ましくは
約0.5〜30重量%、さらに好ましくは約3〜20重
量%である。さらに、コーティング剤において、ポリグ
リセリン脂肪酸エステル、脂質および水不溶性ポリマー
から選択された二種以上の成分を併用してもよく、この
場合、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又は脂質の
総量1重量部に対して、他の成分は約0.0001〜1
000重量部、好ましくは約0.01〜100重量部、
より好ましくは約0.01〜10重量部である。
【0021】コーティング剤の被覆量は、マトリックス
の種類、所望する粘膜に対する付着性などに応じて選択
できる。マトリックスに対するコーティング量は、例え
ば錠剤では約0.1〜30重量%、好ましくは約0.5
〜10重量%であり、丸剤、顆粒剤では約0.1〜50
重量%、好ましくは約1〜20重量%であり、細粒剤で
は約0.1〜100重量%、好ましくは約1〜50重量
%である。被覆に際しては、必要に応じて、一般的に用
いられる前記添加剤をコーティング剤に添加して被覆し
てもよく、コーティング剤と、前記添加剤をそれぞれ別
々に用いて被覆してもよい。添加剤の使用量は、例えば
コーティング剤の固型分に対して約0.1〜70重量
%、好ましくは約1〜50重量%、より好ましくは約2
0〜50重量%である。被覆方法としては、自体公知の
方法、例えばパンコーティング法、流動コーティング
法、転動コーティング法などが採用できる。コーティン
グ剤が、水または有機溶媒を含む溶液または分散液であ
る場合には、スプレーコーティング法も採用できる。前
記水または有機溶媒の使用量は、例えば約25〜99重
量%である。有機溶媒の種類は特に制限されず、例えば
メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の
アルコール類;アセトン等のケトン類;クロロホルム、
ジクロロメタン、トリクロロエタン等のハロゲン化炭化
水素類などが使用できる。
【0022】コーティング剤において、ポリグリセリン
脂肪酸エステル及び(又は)脂質を用いる場合、ポリグ
リセリン脂肪酸エステル及び(又は)脂質と、必要に応
じてその他の添加剤とを加熱溶融して混合し、水と混和
して乳化した後、マトリックスの表面に噴霧し、乾燥す
ることにより、被覆製剤としてもよい。また、コーティ
ングパンのような装置内で、温風により予熱したマトリ
ックスに、コーティング剤を投入して溶融、展延させる
ことにより被覆製剤としてもよい。マトリックスは、通
常約25〜60℃、好ましくは約25〜40℃で被覆す
る。被覆に要する時間は、コーティング方法、コーティ
ング剤の特性や使用量、マトリックスの特性などを考慮
して適宜選択できる。粘膜付着性マトリックスにおい
て、消化管内で前記粘性物質による粘膜付着性が確保さ
れる限り、必要に応じて、さらに、粘膜付着性マトリッ
クスは慣用の水溶性被膜等で被覆されていてもよい。
【0023】上述の薬効成分を分散させた粘膜付着性マ
トリックスを坐剤基剤に含有せしめる方法としては自体
公知の方法が挙げられる。例えば薬効成分を含有する粘
膜付着性マトリックスを、加温(例、約30〜70℃)
融解した坐剤基剤に分散する方法等が挙げられる。分散
温度は、粘膜付着性マトリックスから薬効成分が調製中
に放出しなければ特に限定されず、通常その分散温度は
粘膜付着性マトリックスの融点と坐剤基剤との間であ
る。例えば、坐剤基剤に分散する時の温度としては約2
0〜90℃、好ましくは約30〜60℃が挙げられる。
この場合例えば、坐剤基剤中に配合する薬効成分量とし
ては約0.001〜99重量%、好ましくは約0.1〜
80重量%が用いられる。本発明で用いられる粘膜付着
性マトリックスの形態としては、例えば散剤、顆粒剤な
どが挙げられる。これらの粘膜付着性マトリックスの粒
度は、特に限定されないが消化管粘膜への付着性と薬効
成分の当該マトリックスからの放出時間、放出速度に応
じ適宜選択する。例えば、10〜1000μm の粒子約
75重量%以上、1000μm 以上の粒子約5重量%以
下、10μm の粒子約10重量%以下である。またコー
ティングなどの処理により、薬効成分の粘膜付着性マト
リックスからの放出時間または放出量を制御してもよ
い。
【0024】本発明で用いられる炎症性腸疾患治療薬は
組成物全体に対して例えば約0.000001〜99重
量%、好ましくは約0.000001〜80重量%、さ
らに好ましくは約0.00001〜80重量%である。
粘膜付着性マトリックスの直腸投与用組成物中の含量
は、薬効成分量の投与量に応じて適宜選択することがで
きる。例えば約0.1〜90重量%、好ましくは約1〜
80重量%である。薬効成分としてbFGFおよびその
ムテインのような比較的不安定な蛋白を用いる場合、安
定化剤の存在下で薬効成分を含有する粘膜付着性マトリ
ックスを調製したのち、坐剤基剤に含有せしめてもよ
い。このような安定化剤としては、例えばヘパリン、デ
キストラン硫酸、スクラルファート、ハイドロキシメチ
ルセルロース、ハイドロキシプロピルセルロース、血清
アルブミン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸などが
挙げられる。これらは1種もしくは2種以上を混合して
用いてもよい。このうちデキストラン硫酸、スクラルフ
ァート、ヒト血清アルブミン等が好ましく用いられる。
特に好ましくは、デキストラン硫酸およびヒト血清アル
ブミンの組み合わせである。本発明の直腸投与用組成物
は低毒性で人畜に極めて安全である。本発明の組成物の
形態は、例えば、固形坐剤(例、水溶性固形坐剤、油性
固形坐剤)、半固形状坐剤(例、軟膏坐剤、ゲルまたは
ゼリー坐剤等)、液状または懸濁液のもの(例、レクタ
ルカプセル剤、注腸剤等)などである。
【0025】本発明の直腸投与用組成物は腸管局所で粘
膜に付着し、徐放的に薬効成分を放出するため、効果的
・持続的な作用が得られる。本発明の直腸内投与組成物
はヒト、イヌ、ラット、ウサギ、サル等の温血動物の直
腸に投与され、その投与方法は、常法に従って行えばよ
く、固状坐剤を直接肛門へ挿入する、挿入器を用いて半
固状の製剤を挿入する等の方法で行なうことができる。
これにより、治療すべき宿主に対して治療学的に有効な
量の薬物が直腸粘膜に吸収され、消化管(例、大腸、直
腸等)の炎症性腸疾患(例、潰瘍性大腸炎、クローン
病、限局性腸炎等)を全身性の副作用を最小限に抑えな
がら治療又は治癒することができる。本発明の直腸投与
用組成物の投与量は、粘膜付着性マトリックス中に含有
される薬効成分の量、または坐剤基剤中に分散させる薬
効成分を含有する粘膜付着性マトリックスの量を、適宜
選択することによって調節することができる。また本発
明の直腸投与用組成物の投与量は、剤型あるいは使用す
る薬効成分の種類などにより異なるが、例えばCS23
の場合、ヒト成人には1日当りCS23として約0.0
1〜100μg/kg、好ましくは約0.05〜50μg
/kgである。例えばSASPの場合、約0.01〜0.
5g/kg、好ましくは約0.02〜0.2g/kgであ
る。例えばステロイドホルモンの場合、約0.005〜
5mg/kg、好ましくは約0.05〜3mg/kgである。例
えばメトロニダゾールの場合、約0.002〜0.1g
/kg、好ましくは約0.004〜0.04g/kgであ
る。例えばアザチオプリンの場合は、約0.01〜5mg
/kg、好ましくは約0.05〜3mg/kgである。例えば
トロンボキサンA2 合成酵素阻害剤またはトロンボキサ
ンA2 レセプター拮抗剤である場合、約0.01〜10
0mg/kg、好ましくは約0.1〜10mg/kgである。以
下に、実施例および試験例を示し、本発明をさらに詳細
に説明する。
【0026】
【実施例】
実施例1 CS23含有直腸投与用組成物 (1)CS23凍結乾燥粉末の作製: A. 1mg/mlのCS23原液100mlに人血清アルブ
ミン(シグマ社)1.0g、デキストラン硫酸(生化学
工業)1.0gおよびD−マンニトール1.9gを添加
して溶解後、凍結乾燥した。得られた凍結乾燥粉末を、
相対湿度10%以下の低湿条件下で270メッシュの篩
い(タイラー標準篩、以下同様)を用いて篩過し53μ
m 以下の微粉とした。 B. 1mg/mlのCS23原液100mlに人血清アルブ
ミン(シグマ社)0.4gおよびデキストラン硫酸(生
化学工業)0.5gを添加して溶解後、凍結乾燥した。
得られた凍結乾燥粉末を、相対湿度10%以下の低湿条
件下で270メッシュの篩いを用いて篩過し53μm 以
下の微粉とした。
【0027】(2)CS23を分散させた粘膜付着性マ
トリックスの調製: A. テトラグリセリンペンタステアレート(阪本薬品
工業;以下、PS−310と略記することがある)8.
025gを80℃で溶解し、ハイビスワコー104(和
光純薬工業;以下、HVW104と略記することがあ
る)0.8gを均一に混合した後、約55℃まで冷却し
た。次いで上記(1)Aで作製したCS23凍結乾燥粉
末1.17gを加えて均一に分散し、スプレーチリング
装置で球形の細粒剤とした。さらに42メッシュと60
メッシュの篩過により250〜355μm に整粒した。 B. 4.453gのPS−310を80℃で溶解し、
0.4gのHVW104を均一に混合した後、約55℃
まで冷却した。次いで上記(1)Bで作製したCS23
凍結乾燥粉末147.1mgを加えて均一に分散し、スプ
レーチリング装置で球形の細粒剤とした。さらに42メ
ッシュと60メッシュの篩過により250〜355μm
に整粒した。 C. 4.703gのPS−310を80℃で溶解し、
0.15gのHVW104を均一に混合した後、約55
℃まで冷却した。次いで上記(1)Bで作製したCS2
3凍結乾燥粉末147.1mgを加えて均一に分散し、ス
プレーチリング装置で球形の細粒剤とした。さらに42
メッシュと60メッシュの篩過により250〜355μ
m に整粒した。
【0028】(3)直腸投与用組成物の作製: 3.0gのウイテップゾルW35(ダイナミットノーベ
ル社、西ドイツ、ミツバ貿易;以下、WIT−35と略
す)を60℃で溶解後、39℃まで冷却した。次いで上
記(2)で作製した3種類の粘膜付着性マトリックス1
0mg(CS23として約30μg含有)ずつを温度を一
定に保ちながら均一に分散し、予め38℃に加温した真
鍮製ラット坐剤成形器(容量150μl)に注入し、最
後に4℃に冷却し坐剤基剤を固化したところ円錐形直腸
投与用組成物(直径5mm,高さ1.3cm)がそれぞれ得
られた。
【0029】実施例2 サリチルアゾスルファピリジン
(SASP)含有直腸投与用組成物 (1)SASPを分散させた粘膜付着性マトリックスの
調製:SASP(シグマ社,S−0883)、PS−3
10およびHVW104を〔表1〕に示す分量ずつ用意
した。PS−310を80℃で溶解後、SASPを加え
て均一に分散した。次いで70℃まで冷却後、HVW1
04を加えて均一に分散した。この分散液をアルミホイ
ール上に薄く塗布した後、室温で放置し固化した。固型
物を乳鉢で粉砕し得られた粉末を篩過に供し、〔表1〕
に記載の粒度に整粒し、試料 No.1〜6の粘膜付着性マ
トリックスを得た。
【表1】 (2)直腸投与用組成物の作製:3.0gのWIT−3
5を60℃で溶解後、39℃まで冷却した。上記(1)
で得られた各粘膜付着性マトリックス400mg(SAS
Pとして約40mg含有)を、温度を一定に保ちながら均
一に分散した。ついで、実施例1−(3)に記載の方法
と同様にして円錐形直腸投与用組成物(直径5mm,高さ
1.3cm)を得た。
【0030】実施例3 化合物A含有直腸投与用組成物 (1)化合物Aを分散させた粘膜付着性マトリックスの
調製:8.0gのPS−310を70℃で溶解後、1.
0gのHVW104を加え均一に分散した。ついで1.
0gの化合物Aを加えて均一に分散した。この分散液を
アルミホイール上に薄く塗布した後、室温で放置し固化
した。固形物を乳鉢で粉砕し得られた粉末を篩過に供し
250〜355μm の粒度に整粒し、粘膜付着性マトリ
ックスを得た。 (2)直腸投与用組成物の作製:3.5gのWIT−3
5を60℃で溶解後、39℃まで冷却した。上記(1)
で得られた粘膜付着性マトリックス840mg(化合物A
として84mg含有)を温度を一定に保ちながら均一に分
散した。ついで、実施例1−(3)に記載の方法と同様
にして円錐形直腸投与用組成物(直径5mm,高さ1.3
cm)を得た。
【0031】実施例4 化合物B含有直腸投与用組成物 (1)化合物Bを分散させた粘膜付着性マトリックスの
調製:8.0gのPS−310を70℃で溶解後、1.
0gのHVW104を加え均一に分散した。ついで1.
0gの化合物Bを加えて均一に分散した。この分散液を
アルミホイール上に薄く塗布した後、室温で放置し固化
した。固形物を乳鉢で粉砕し得られた粉末を篩過に供し
250〜355μm の粒度に整粒し粘膜付着性マトリッ
クスを得た。 (2)直腸投与用組成物の作製:3.5gのWIT−3
5を60℃で溶解後、39℃まで冷却した。上記(1)
で得られた粘膜付着性マトリックス840mg(化合物B
として84mg含有)を温度を一定に保ちながら均一に分
散した。ついで、実施例1−(3)に記載の方法と同様
にして円錐形直腸投与用組成物(直径5mm,高さ1.3
cm)を得た。
【0032】試験例1 ラット大腸粘膜付着性試験: 1)SASP組成物(コントロール)の作成 3.0gのWIT−35を60℃で溶解後、39℃まで
冷却した。次いで40mgのSASPを温度を一定に保ち
ながら均一に分散し、予め38℃に加温した真鍮製ラッ
ト坐剤成形器(容量150μl)に注入した。最後に4
℃に冷却し坐剤基剤を固化して円錐形直腸投与用組成物
(直径5mm,高さ1.3cm)を作製し、コントロールと
した。 2)2日間絶食させた雄性SDラット(8週令)に、実
施例2で得られた直腸投与用組成物のうち、〔表1〕中
の試料 No.3および6(HVW104含量はそれぞれ3
重量%および5重量%)、上記方法で作製したSASP
組成物(コントロール)を投与した。投与後直ちにラッ
ト肛門をクリップで閉塞し、15分後にクリップを取り
外し放置した。投与30分後に屠殺して肛門部から盲腸
下部までの大腸を摘出した。摘出大腸断片にダルベッコ
燐酸緩衝液を添加して、90℃で10分間加熱し粘膜付
着性固型製剤を溶解した。遠心分離後その上清を以下に
記載の条件の高速液体クロマトグラフィーに供しSAS
Pを定量した。得られた結果を〔表2〕に示す。
【表2】 これより、コントロールより粘膜付着性マトリックスを
含有する直腸投与用組成物(試料No.3および6)の方
が、大腸への残存性に優れていることは明らかである。 SASPの高速液体クロマトグラフィーによる測定条件 カ ラ ム:YMC A−303 溶 離 液:0.06M燐酸緩衝液(pH7.2)とアセ
トニトリルとの7:3(V/V)混液 流 量:1.0ml/min 検出 波長:360 nm カラム温度:40℃ 注 入 量:50μl
【0033】試験例2 ラット大腸粘膜付着性試験: 1)SASP含有直腸投与用組成物の作成 上記試験例1−1)および実施例2の方法に従い、それ
ぞれサリチルアゾスルファピリジン(SASP)組成物
(コントロール)とSASP含有粘膜付着性マトリック
ス直腸投与用組成物2種(表1中の試料No.3および
7;HVW104含量はそれぞれ3重量%および10重
量%)とを作成した。 2)試験例1−2)と同様の方法で、上記SASP含有
直腸投与用組成物3種をラットに直腸内投与し、2時間
後に屠殺して大腸を摘出した。投与されたSASPの大
部分は、大腸内細菌由来アゾリダクターゼにより5−ア
ミノサリチル酸(以下、5−ASAと略す)とスルファ
ピリジンとに分解される。摘出大腸断片に結合した5−
ASAを、以下に記載の条件下で高速液体クロマトグラ
フィーに供して定量した。得られた結果を〔表3〕に示
す。
【表3】 これより、有効成分の5−ASAは、コントロールより
粘膜付着性マトリックス含有直腸投与用組成物(試料N
o.3および7)を使用した方が、大腸への残存性に優
れていることは明らかである。しかもこの残存性は、ポ
リマーであるHVW104含量に比例して優れた数値を
示した。 5−ASAの高速液体クロマトグラフィーによる測定条
件 カ ラ ム:YMC A−303 溶 離 液:5mM臭化テトラブチルアンモニウム含有
0.06M燐酸緩衝液(pH7.2)とアセトニトリルと
の9:1(V/V)混液 流 量:1.0ml/min 検出 波長:励起波長305nm、蛍光波長500nm カラム温度:40℃ 注 入 量:50μl
【0034】試験例3 ラット潰瘍モデルにおける抗潰
瘍試験: 1)人工肛門の作成 6週齢雄性SDラットを開腹し、腸管を肛門より約8〜
10cmの位置で2カ所医療用縫合糸で結紮した。結紮部
中央を切断し、肛門側断片は腹腔内へ戻し、回腸側断片
は医療用縫合絹糸を用いて腹壁切開部筋層に腸管漿膜面
を縫合後、結紮部を切除し腸管を腹壁に開口し、人工肛
門ラットを得た。 2)トリニトロベンゼンスルホン酸による潰瘍の惹起 トリニトロベンゼンスルホン酸溶液(30mg/250μ
l 50%エタノール水溶液)を上記 1)で作成した人
工肛門ラットに直腸内投与して潰瘍を惹起し、ラット潰
瘍モデルとした。 3)化合物A含有組成物(コントロール)の作製 3.5gのWIT−35を60℃で溶解後、39℃まで
冷却した。次いで84mgのSASPを温度を一定に保ち
ながら均一に分散し、予め38℃に加温した真鍮製ラッ
ト坐剤成形器(容量150μl)に注入した。最後に4
℃に冷却し坐剤基剤を固化して円錐形直腸投与用組成物
(直径5mm,高さ1.3cm)を作製し、コントロールと
した。 4)化合物A含有直腸投与用組成物の抗潰瘍作用 上記2)で得られたラット(1群:6匹)に、実施例3
で得られた直腸投与用組成物および上記3)で得られた
化合物A含有組成物(コントロール)を、それぞれ潰瘍
作成翌日から2日間投与した。投与終了翌日にラットを
屠殺し大腸を摘出した。潰瘍治癒の指標として摘出大腸
のミエロパーオキシダーゼ活性(以下、MPO活性と略
す)を、ガストロエンテロロジー(Gastroenterology)
第87巻、1344~1350頁(1984)に記載の方法に準
じて測定した。局所のMPO活性は、その部位への好中
球の浸潤を反映しているため、炎症マーカーのひとつと
して用いられている。すなわち、摘出大腸に pH6.0
の0.5%ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミ
ド緩衝液を加え、はさみで細切し、ポリトロン(キネマ
チカ社製)でホモジナイズした。さらに超音波破砕を行
った後、凍結融解を3回繰り返し遠心分離して上清を集
めた。290μl のオルトジアニシジン溶液(0.16
7mg/ml)に適当に希釈した検体上清10μl と蒸留水
10μl とを加え一分間放置し、基質溶液(0.012
4%過酸化水素溶液)12μl と蒸留水12μl とを添
加し、460nmの吸光度を測定した。一分間に過酸化水
素1μmol が消費される活性を1UとしてMPO活性と
した。大腸単位重量あたりのMPO活性の結果を〔表
4〕に示す。
【表4】 これより、本発明の粘膜付着性直腸投与用組成物投与群
におけるMPO活性は、コントロールの組成物投与群に
おけるMPO活性よりも低値を示すことより、優れた潰
瘍治癒作用が認められたことがわかる。
【0035】
【発明の効果】本発明の直腸投与用組成物は、腸管粘膜
炎症部位またはその近傍に膨潤して付着し、炎症性腸疾
患治療薬を徐々に放出し、長時間に亘り該薬物を高濃度
で、かつ効率的に供給する。従って微量の薬物投与量で
効果を発揮し、かつ副作用が少ない。本組成物は、従来
難治性疾患と云われた潰瘍性大腸炎やクローン病の治療
薬として有用である。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】炎症性腸疾患治療薬を分散させた粘膜付着
    性マトリックスを坐剤基剤に含有させてなる直腸投与用
    組成物。
  2. 【請求項2】炎症性腸疾患治療薬が潰瘍性大腸炎治療薬
    である請求項1記載の直腸投与用組成物。
  3. 【請求項3】炎症性腸疾患治療薬がトロンボキサンA2
    合成酵素阻害剤である請求項1記載の直腸投与用組成
    物。
  4. 【請求項4】炎症性腸疾患治療薬がトロンボキサンA2
    レセプター拮抗剤である請求項1記載の直腸投与用組成
    物。
  5. 【請求項5】炎症性腸疾患治療薬が繊維芽細胞増殖因子
    である請求項1記載の直腸投与用組成物。
  6. 【請求項6】粘膜付着性マトリックスが消化管粘膜付着
    性マトリックスである請求項1記載の直腸投与用組成
    物。
  7. 【請求項7】消化管粘膜付着性マトリックスが、ポリグ
    リセリン脂肪酸エステル又は脂質に水で粘性を生じる物
    質を配合してなる請求項6記載の直腸投与用組成物。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017533264A (ja) * 2014-10-27 2017-11-09 エフビーエム インダストリア ファーマシューティカ エルティディエー.Fbm Industria Farmaceutica Ltda. 抗炎症性、増殖性、保護性及び粘膜付着性の、可溶性且つ安定な医薬組成物、粘膜部位の状態を治療するためのその使用及び取得方法、並びに医薬組成物の調製のための基本医薬組成物及びその取得方法
JP2021054737A (ja) * 2019-09-30 2021-04-08 ハウスウェルネスフーズ株式会社 粘膜上皮適用組成物
JP2022514959A (ja) * 2018-12-21 2022-02-16 広州市婦女児童医療中心 胃腸疾患の免疫機序及び治療薬

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