JPH07314171A - 角形鋼管の製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 角形鋼管を製造する際の蓋板溶接による弓な
り変形を防止しストーレートな角形鋼管を製造する。 【構成】 蓋板をコ字型素材に溶接する前に、あらかじ
め、コ字型素材に溶接変形に見合う逆歪みを付与してお
き、蓋板溶接時の熱収縮量とキャンセルさせる。 【効果】 従来の角形鋼管の矯正に大型プレスが不要で
あり、また、線状加熱による矯正のような高度な技能と
長時間を要しない。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、土木・建築分野で主と
して柱材として使用される角形鋼管の製造方法に関する
発明である。

【０００２】

【従来の技術】鋼板の二箇所を直角にプレスして、コの
字型に成形した後に、蓋板を溶接して角形鋼管に成形し
た柱材が、特開平１ー１６９０３９号公報に開示され、
公知である。

【０００３】ところで、前述の従来技術における角形鋼
管柱を製造する過程においては、図４に示す如く弓なり
の変形が生じる。即ち、図４において、鋼板の二箇所を
直角にプレスして、コの字型に成形した素材１に、蓋板
７を溶接するわけであるが、溶接が完了し、溶接ビード
が常温に自然冷却されるに伴い、溶接部において熱収縮
が生じるため、完成した角形鋼管は溶接部を内側として
図示に示す如く弓なりに大曲り変形する。

【０００４】蓋板７の溶接方法としては、高能率化のた
めに、溶接入熱量の大きいサブマージドアーク溶接で１
ランの両側同時溶接を行うことが多いが、溶接入熱量の
比較的少ないと言われるガスシールドアーク溶接でも、
同様な現象が起こりうる。

【０００５】ここで、角形鋼管の弓なり変形は、溶接入
熱量に依存して決定される。即ち、サブマージドアーク
溶接を行った方が入熱量が大であるので、ガスシールド
アーク溶接を行った場合よりも、大きな変形が生じる。

【０００６】前述の如く、弓なりに変形した角形鋼管
は、矯正を施し、変形をキャンセルさせる必要がある
が、この矯正手段として、プレスによる矯正かまたは図
５に示すごとく、両溶接部と対向する位置であるコの字
型成形素材１のコーナー両面部分をバーナ１１による線
状加熱および水冷ホース１２による水冷により、矯正し
ている。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】従来技術による角形鋼
管の矯正作業においては、プレスによる矯正では断面が
コの字型に成形されており、ダイヤフラムの如き補強材
が取付けられているので矯正しにくい断面二次モーメン
トの大きい構造材となっていることから、矯正のための
プレス荷重が大となり、従って大型プレスの使用のため
の設備コストを要する問題がある。

【０００８】また、線状加熱による矯正作業は、長年の
熟練と勘を必要とし技術的に困難性が高いのは勿論のこ
と、前記と同様に断面二次モーメントが大きいことか
ら、矯正作業に長時間を要し、角形鋼管の製造コストを
上昇させる傾向にあった。

【０００９】従って、角形鋼管製造のコストを下げるた
めには、前述のプレス矯正や線状加熱矯正、による弓な
り変形の矯正作業を行わなくても良い角形鋼管製造技術
の出現が望まれていた。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明は、鋼板をプレス
してコ字型素材に成形した後に、蓋板を該コ字型素材に
溶接して角形鋼管に成形する角形鋼管の製造方法におい
て、前記コ字型素材に、蓋板の溶接歪みで変形する方向
とは逆方向の逆歪みをあらかじめ付与しておき、その
後、蓋板の溶接時の歪みで前記逆歪みをキャンセルさせ
て完成品とすることを特徴とする角形鋼管の製造方法を
提供するものである。

【００１１】

【作用】本発明は、鋼板をプレスして、コ字型素材に成
形した時点で、該コ字型素材にあらかじめ逆歪みを付与
しておくと、蓋板の溶接時の溶接歪みと前記逆歪みとが
キャンセルされて、角形鋼管が完成した時点で弓なり変
形が生じない。

【００１２】また、蓋板を溶接する以前のコ字型素材の
段階で逆歪みを付与した方が、角形鋼管となったロの字
型断面状態で歪み矯正する場合に比べて、コ字型素材の
断面性能（断面二次モーメント）は、ほぼ１／２である
ことから、プレス曲げによる矯正の場合または加熱・水
冷による矯正の場合でも約１／２の力または入熱量で矯
正できる。

【００１３】

【実施例】以下、本発明にかかる角形鋼管の製造方法に
ついて、図面に示される一実施例により詳述する。

【００１４】図１（イ）〜（ホ）は、本発明にかかる角
形鋼管の製造方法の工程を説明するものである。以下、
工程順に説明する。

【００１５】先ず、図１（イ）において、鋼板をプレス
してコ字型素材１を製造する。該コ字型素材１は、鋼板
の二箇所をプレスするか、あるいは、一体型のプレス押
型を使用して成形しても良い。

【００１６】次に、図１（ロ）において、前記コ字型素
材１を所定の逆歪みδが付与されるように該コ字型素材
１の開放部を上部にして曲げ加工を行う。該曲げ加工
は、図２に一例として示すプレス法により曲げ加工が行
われる。即ち、２は頭部が曲面２ａを有するジャッキ
で、該ジャッキ２上に前記コ字型素材１の中間部を支点
となる如く載置し、上方からプレス押型３、４により加
圧し、該コ字型素材１にδの逆歪みを付与する。

【００１７】次に、図１（ハ）において、逆歪みδが付
与されたコ字型素材１の柱梁仕口部相当位置にダイヤフ
ラム５、６、を挿入し、該コ字型素材１の内側との溶接
を行う。

【００１８】次に、図１（ニ）において、蓋板７を該コ
字型素材１の開放部に挿入し溶接トーチ８、９、によ
り、蓋板７とコ字型素材１との溶接を同時に行う。当該
溶接の途中では、コ字型素材１は、溶接熱により膨張
し、反りは若干大きくなるが、溶接部の冷却過程で収縮
が始まる。

【００１９】図１（ホ）において、蓋板７の溶接が完了
し、溶接部が自然冷却する過程で、溶接部の熱収縮が生
じ、逆歪みδがキャンセルされて、歪みのない角形鋼管
１０が完成する。

【００２０】ここで、逆歪みδがあらかじめ付与されて
いなければ、最終的には溶接部を内側とする弓なりの大
曲り変形が残るが、本発明の方法に従えば、その変形に
見合う逆歪みδがあらかじめ付与されているので、両者
の歪みがキャンセルされ、最終的に、歪みの無い角形鋼
管が完成する。

【００２１】本発明における前記コ字型素材１にあらか
じめ付与すべき逆歪み量は、蓋板７の溶接時の溶接収縮
変形量により、求めることができる。ここで、該溶接収
縮変形量を、コ字型素材１の板厚、辺の長さ、全長、強
度レベル、および溶接入熱量をパラメータとして計算と
実験により、あらかじめ把握しておけば、コ字型素材１
にあらかじめ付与すべき逆歪み量を決定することができ
る。

【００２２】図３（イ）（ロ）は、与えるべき逆歪み量
δと溶接入熱量の関係の一例を示したグラフである。

【００２３】図３（イ）は、サブマージドアーク溶接の
場合であり、図３（ロ）は、ガスシールドアーク溶接の
場合である。尚、図３（イ）（ロ）の場合、長さ９ｍの
コ字型素材１に対して、４ｍｍ以下の弓なり変形は許容
範囲内であるので、当該逆歪みを付与する必要が無いこ
とを表している。

【００２４】

【発明の効果】本発明は以上のとおり、鋼板をプレスし
て成形したコ字型素材に、溶接歪みをキャンセルするだ
けの逆歪みを、あらかじめ付与しておくので、蓋板の溶
接に起因する弓なり変形が生じない。従って、大型プレ
スの設備を必要とすることなく、また、線状加熱のよう
な高度の熟練と勘を要する技能による矯正作業が不要に
なり、角形鋼管の製造コストを大幅に削減することがで
きるので、本発明は工業的にきわめて大きな効果をもた
らす発明である。

【図面の簡単な説明】

【図１】（イ）〜（ホ） 本発明にかかる角形鋼管の製造工程を示す説明図。

【図２】本発明にかかるコ字型素材に逆歪みを付与する
方法の一実施例。

【図３】（イ）（ロ） 本発明にかかるコ字型素材に与える逆歪み量と溶接入熱
量との関係グラフ。

【図４】従来技術による角形鋼管の弓なり変形状態斜視
図。

【図５】従来技術による角形鋼管の弓なり変形の矯正方
法を示す正面図。

【符号の説明】

１ コ字型素材 ２ ジャッキ ３・４ プレス押型 ５・６ ダイヤフラム ７ 蓋板 ８・９ 溶接トーチ １０ 角形鋼管

フロントページの続き (72)発明者 石村 博 東京都千代田区丸の内一丁目１番２号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 長縄 裕 東京都千代田区丸の内一丁目１番２号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 岡本 晴仁 東京都千代田区丸の内一丁目１番２号 日 本鋼管株式会社内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】鋼板をプレスしてコ字型素材に成形した後
   に、蓋板を該コ字型素材に溶接して角形鋼管に成形する
   角形鋼管の製造方法において、前記コ字型素材に蓋板の
   溶接歪みで変形する方向とは逆方向の逆歪みをあらかじ
   め付与しておき、その後、蓋板の溶接時の歪みで前記逆
   歪みをキャンセルさせて完成品とすることを特徴とする
   角形鋼管の製造方法。