JPH07310794A - 無段変速機の制御装置 - Google Patents

無段変速機の制御装置

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JPH07310794A
JPH07310794A JP10287994A JP10287994A JPH07310794A JP H07310794 A JPH07310794 A JP H07310794A JP 10287994 A JP10287994 A JP 10287994A JP 10287994 A JP10287994 A JP 10287994A JP H07310794 A JPH07310794 A JP H07310794A
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speed
gear ratio
target
continuously variable
control
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JP10287994A
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Hirobumi Okahara
博文 岡原
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Nissan Motor Co Ltd
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Nissan Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】アクセル開度(スロットル開度)が“0”また
はほぼ“0”の状態で、セレクトアップシフト操作を行
った場合に、車両の加速ショック感を抑制可能な無段変
速機の制御装置を提供する。 【構成】目標変速比CD を達成するステップモータの目
標駆動速度SPを、最大駆動速度SPMAX と比例係数k
との積で算出し(ステップS6)、セレクトアップシフ
ト操作のスロットル開度THが所定値TH1 (“0/
8”)以下の時に(ステップS5a)、比例係数kを通
常時の“1”より小さい値であるk0 に設定する(ステ
ップS5b)。これにより、無段変速機の変速比変更制
御の変速速度は、スロットル開度THが“0”またはほ
ぼ“0”であるセレクトアップシフト操作時に、通常時
より小さくなるように調整される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は無段変速機の制御装置に
関するものであり、特に、アクセル開度が“0”または
ほぼ“0”の状態で、変速シフトポジションを例えばエ
ンジンブレーキレンジから通常走行レンジへ変更するセ
レクトアップシフト操作を行った場合に、車両の加速シ
ョック感や変速ショックを抑制防止可能な無段変速機の
変速比制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ベルトとプーリとの接触点半径を変化さ
せる(所謂プーリ比を変化させる)ことで入出力の変速
比を変更制御するベルト式無段変速機にあっては、昨今
のトルクコンバータ及び歯車伝達機構を用いた自動変速
機とその出力側との間に介装されているワンウエイクラ
ッチのような動力伝達方向規制手段を介装しないこと
が、その性能上好ましいとされている。ここでは、ベル
ト式無段変速機より上流側、つまり機関(エンジン)側
を入力側と定義し、下流側、即ちプロペラシャフトやデ
ィファレンシャル装置等の動力伝達系及び車輪側を出力
側と定義する。このようなベルト式無段変速機の前記プ
ーリ比の変更制御には、通常、流体圧や電子制御された
機械的機構等が用いられており、具体的には、ピストン
化された可動プーリ片(可動円錐部材)を固定プーリ片
(固定円錐部材)に対して相対移動させることで、両者
の間に形成されるプーリ溝の幅を変更制御する。
【0003】ここで、この種の無段変速機のうち、本出
願人が先に提案した特開昭61−105353号公報に
記載される無段変速機及びその制御装置を引用すると、
当該無段変速機の変速比を制御するためには主としてス
テップモータが使用されており、このステップモータの
回転角を制御することで可動プーリ片(可動円錐部材)
と固定プーリ片(固定円錐部材)との間に形成されるプ
ーリ溝の幅を変更制御するようにしている。その一方
で、ピストン化された可動プーリ片(可動円錐部材)の
シリンダ室には、所定の流体圧、具体的には油圧が付与
されており、この油圧によって、両プーリ片(両円錐部
材)間に介在し且つ回転移動するベルトを挟持すると共
に、伝達される回転駆動力(トルク)に変動が生じても
前記プーリ溝の幅が変化しないようにしている。
【0004】そして、この種の無段変速機では一般に、
その変速比を制御するための変速パターンは、当該無段
変速機の出力軸と入力軸との回転速度比であるから、車
速と機関回転数又は機関回転速度(以下、これらを総称
して「機関回転状態」とも記す)とに依存しており、具
体的には、例えば車速と前記スロットル開度等とを変数
として変速パターンを設定制御している。
【0005】一般に、車速が大きい状態つまり高速走行
状態では、同等の機関(エンジン)の回転状態において
駆動輪の車輪速を大きくする必要があるから、無段変速
機の変速比を車両全体での減速比で考えた場合、当該無
段変速機の変速比を小さくする必要がある。逆に車速が
小さい状態つまり低速走行状態では、同等のエンジンの
回転状態において駆動輪の車輪速を小さくする必要があ
るから、無段変速機の変速比は大きなものでなければな
らない。ところが、運転者の意思としては、車速の大小
に関わらず、車両をより加速したい場合にはアクセルペ
ダルをより大きく踏込むため、その結果スロットル開度
が大きくなる。一方、車両をより加速する即ち車速を大
きくするためには、同等のエンジンの回転状態におい
て、車両全体での減速比である無段変速機の変速比は小
さくなければならない。
【0006】これらのことから、無段変速機の変速比制
御曲線つまり変速パターンは、通常、車速が大きくなる
と変速比が小さくなり、スロットル開度が大きくなると
変速比が大きくなるように、車速を変数とし且つスロッ
トル開度をパラメータとした制御マップに表され、同一
の変速比は当該変速比制御マップ中の傾き一定の直線と
して表される。
【0007】以上より、無段変速機の変速比制御は、通
常の自動変速機の変速比制御と同様に、この変速比制御
マップ中の変速比マトリックスから、当該車両走行状態
並びに操縦入力に応じた変速比を設定し、これに応じて
前記プーリ比を変更制御することになる。勿論、スロッ
トル開度の代わりにアクセルペダルの踏込み量をアクセ
ル開度として検出し、これを用いて変速比制御すること
も可能である。
【0008】また、このような無段変速機は、通常、前
進走行用の変速シフトポジションとして、通常走行レン
ジと通常走行変速比制御領域よりも最小変速比の大きい
エンジンブレーキレンジとを備えている。そして、変速
シフトポジションに通常走行レンジ(一般にいうDレン
ジであり、以下、単に「Dレンジ」と略称することもあ
る。)が選択されれいるときには、通常走行に好適な通
常走行変速比制御領域(Dレンジ変速比領域)内で、エ
ンジンブレーキレンジ(一般にいう2レンジまたはDs
レンジおよびLレンジまたは1レンジであり、以下、単
に「2レンジ」、「Lレンジ」と略称することもあ
る。)が選択されているときにはエンジンブレーキレン
ジ制御領域(2レンジ変速比領域またはLレンジ変速比
領域)内で、それぞれ車速およびスロットル開度に応じ
て無段変速機の変速比を制御する。
【0009】このように、変速シフトポジションにエン
ジンブレーキレンジを備えている無段変速機が搭載され
た車両においては、アクセルペダルの踏み込みを解除し
てスロットル開度を“0”またはほぼ“0”とした状態
で、前記Dレンジから2レンジへまたは2レンジからL
レンジにシフトポジションを移行することにより、車両
全体の減速比としての変速比を大きくして、エンジンブ
レーキによる車速低減を行うことができる。そして、こ
のエンジンブレーキによる車速低減が十分になされる
と、運転者は、アクセルペダルから足を離した状態で、
すなわち、アクセル開度(スロットル開度)が“0”ま
たはほぼ“0”の状態で2レンジまたはLレンジからD
レンジにシフトポジションを移行して通常走行を行う。
【0010】また、2レンジまたはLレンジでアクセル
ペダルを踏み込むことにより、スロットル開度を大きく
してエンジンの回転駆動力を上げ、車両をより大きく加
速することもある。この場合に運転者は、所定の車速が
得られると、アクセルペダルの踏み込みを解除してスロ
ットル開度を“0”またはほぼ“0”とした状態で、2
レンジまたはLレンジからDレンジにシフトポジション
を移行して、この車速を維持しながらコースト走行を行
う。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】前述のように、アクセ
ル開度すなわちスロットル開度が“0”またはほぼ
“0”の状態で2レンジまたはLレンジからDレンジに
シフトポジションが移行されると、2レンジまたはLレ
ンジの最小変速比に設定されていた目標変速比がDレン
ジの最小変速比に強制的に変更設定される。このとき、
前記各レンジの変速比領域における最小変速比の設定値
の違いから、無段変速機の変速比は急激に小さくなるよ
うに変更設定されることになり、駆動輪の回転駆動力が
急激に低下するため変速ショックが生じる場合がある。
【0012】また、通常は、エンジンの出力向上や燃費
向上を目的として、アクセルペダルの踏込み解除に伴い
スロットル開度が“0”となっても、エンジンの回転速
度は直ぐには“0”にならないで徐々に低下するように
設定されているため、前述のように、2レンジまたはL
レンジでの加速走行からDレンジでのコースト走行への
移行に伴って、無段変速機の変速比が急速に小さくなる
ように変更されると、スロットル開度が“0”またはほ
ぼ“0”となって直ぐにセレクトアップシフトされるた
め、各時刻における変速比がエンジン回転速度に見合っ
た値よりかなり小さな値になって、未だ収束されていな
いエンジンのイナーシャトルクが余分な駆動トルクとし
て駆動輪に伝達されて車両が加速されることになり、こ
れに伴って車両の加速ショック感が生じることがある。
【0013】本発明はこれらの諸問題に鑑みて開発され
たものであり、アクセル開度(スロットル開度)が
“0”またはほぼ“0”の状態で、変速シフトポジショ
ンを例えばエンジンブレーキレンジから通常走行レンジ
へ変更するセレクトアップシフト操作を行った場合に、
車両の加速ショック感や変速ショックを抑制防止可能な
無段変速機の制御装置を提供することを目的とするもの
である。
【0014】
【課題を解決するための手段】本件発明者は前記諸問題
を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得て
本発明を開発した。すなわち、通常の無段変速機の変速
比制御では、アクセル開度(スロットル開度)の変化に
対する変速比変化の応答性は速い方が好ましいため、変
速比変更制御のアクチュエータであるステップモータを
最大駆動速度で駆動させることにより、大きな変速速度
で変速比を変更制御している。しかしながら、前述のよ
うに、アクセル開度(スロットル開度)が“0”または
ほぼ“0”の状態で2レンジまたはLレンジからDレン
ジにシフトポジションが移行されるセレクトアップシフ
ト操作時において生じる変速ショックや車両の加速ショ
ック感等の原因は、変速比の急速な低減によるものであ
る。ここで、セレクトアップシフト操作時における変速
比の減少量は、セレクトアップシフト操作時におけるア
クセル開度(スロットル開度)が小さいほど大きいもの
であるため、アクセル開度(スロットル開度)が所定値
以下である場合のセレクトアップシフト操作時に、無段
変速機の変速比変更の変速速度を通常時より小さくする
ことにより、緩やかに変速比を低減すれば、前記のよう
な変速ショックや車両の加速ショック感等が抑制防止さ
れると考えた。
【0015】また、前記変速速度を変化させる方法とし
ては、ステップモータ等のアクチュエータの駆動速度を
変化させる方法や、前記変速比制御マップ中の変速比マ
トリックスから設定される目標変速比に到達するまでの
所要時間を変化させ、この所要時間における変速比を、
セレクトアップシフト時の実変速比と前記目標変速比の
設定値との間で変化させることが考えられる。
【0016】このような知見から、請求項1の無段変速
機の制御装置は、図1の基本構成図に示すように、変速
シフトポジションに最小変速比が異なる二つ以上の前進
用走行レンジを備え、前記変速シフトポジションに選択
された前進用走行レンジの変速比制御領域で無段変速機
の目標変速比を設定する変速比設定手段を備えるととも
に、前記変速比設定手段で設定された目標変速比に基づ
いて、無段変速機の変速比を変更制御する変速比制御手
段を備えた無段変速機の制御装置において、前記変速シ
フトポジションが最小変速比のより大きい前進用走行レ
ンジから最小変速比のより小さい前進用走行レンジへ変
更されるセレクトアップシフトを検出するセレクトアッ
プシフト検出手段と、アクセル開度を検出するアクセル
開度検出手段とを備えるとともに、前記変速比制御手段
は、前記セレクトアップシフト検出手段によるセレクト
アップシフト検出時に、前記アクセル開度検出手段から
のアクセル開度検出値に基づいて、無段変速機の変速比
変更制御の変速速度を調整する変速速度調整手段を備え
たことを特徴とするものである。
【0017】また、請求項2の無段変速機の制御装置
は、前記変速速度調整手段は、前記セレクトアップシフ
ト検出手段によるセレクトアップシフト検出時で、前記
アクセル開度検出手段からのアクセル開度検出値が所定
値以下である場合に、無段変速機の変速比変更制御の変
速速度を通常時より小さく調整するものであることを特
徴とするものである。
【0018】また、請求項3の無段変速機の制御装置
は、前記変速比制御手段がアクチュエータを備えたもの
であり、前記変速速度調整手段が、前記セレクトアップ
シフト検出手段によるセレクトアップシフト検出時に、
前記アクチュエータの駆動速度を変化させることにより
無段変速機の変速比変更制御の変速速度を調整するもの
であることを特徴とするものである。
【0019】さらに、請求項4の無段変速機の制御装置
は、前記変速速度調整手段が、前記セレクトアップシフ
ト検出手段によるセレクトアップシフト検出時に、前記
変速比設定手段で設定される目標変速比に到達するまで
の所要時間を変化させ、当該所要時間内における変速比
を、当該セレクトアップシフト検出時の実変速比と前記
目標変速比の設定値との間で変化させることにより無段
変速機の変速比変更制御の変速速度を調整するものであ
ることを特徴とするものである。
【0020】
【作用】本発明の無段変速機の制御装置では、図1の基
本構成図に示すように、前記変速比設定手段は、例えば
前述したように当該車速を変数とし且つアクセル開度や
スロットル開度をパラメータとした無段変速機の変速比
制御マップ中の変速比マトリックス等から、当該車両走
行状態並びに操縦入力に応じた変速比を設定し、前記変
速比制御手段は、前記目標変速比の設定値に基づいて、
無段変速機の変速比を変更制御するが、前記セレクトア
ップシフト検出手段により変速シフトポジションが最小
変速比のより大きい前進用走行レンジから最小変速比の
より小さい前進用走行レンジへ変更された(セレクトア
ップシフトがなされた)ことが検出された時には、前記
アクセル開度検出手段により検出されたアクセル開度に
応じて、前記変速比制御手段の変速速度調整手段が、例
えば請求項2のように、前記アクセル開度検出手段から
のアクセル開度検出値が所定値以下(例えば、アクセル
開度と等価なスロットル開度が全閉状態または少し開い
た状態を示す値)である場合に、無段変速機の変速比変
更制御の変速速度を通常時より小さく調整するため、無
段変速機の変速比が緩やかに小さくなるように制御され
る。ここで、前記変速速度は、例えば、請求項3のよう
に、アクチュエータの駆動速度が変化することにより、
または請求項4のように、目標変速比の設定値に到達す
るまでの所要時間が変化し、当該所要時間内における変
速比が、当該セレクトアップシフト検出時の実変速比と
前記目標変速比の設定値との間で変化することにより調
整される。
【0021】このように、本発明の無段変速機の制御装
置によれば、アクセル開度が“0”またはほぼ“0”の
場合のように小さい状態でのセレクトアップシフト時
に、無段変速機の変速比が緩やかに小さくなるように制
御されるため、駆動輪の回転駆動力が緩やかに減少して
変速ショックが抑制防止されるとともに、2レンジまた
はLレンジでの加速走行からDレンジでのコースト走行
への移行時であっても、エンジンのイナーシャトルクに
伴う余分な駆動トルクが駆動輪に付与されないため、車
両の加速ショック感が抑制防止される。
【0022】
【実施例】以下、本発明の無段変速機の制御装置を実際
の車両に適用した第一実施例を図2〜図13に基づいて
説明する。図2は、本発明の一実施例に相当する無段変
速機の動力伝達機構を示すスケルトン図である。この実
施例の無段変速機は、機関(すなわち、エンジン)の回
転駆動力によって回転駆動される駆動輪が前左右輪であ
る、所謂FF(フロントエンジンフロントドライブ)車
両に適用されたものである。
【0023】この無段変速機の動力伝達機構は、フルー
ドカップリング12、前後進切換機構15、Vベルト式
無段変速機構29、差動装置56等を有しており、エン
ジン10の出力軸10aの回転を、所定の変速比および
回転方向で左右のドライブシャフト66,68に伝達す
ることができる。回転駆動源としてのエンジン10の出
力軸10aには、流体伝動装置であるフルードカップリ
ング12が連結されている。このフルードカップリング
12は、ロックアップ機構付きのものであり、ロックア
ップ油室12aの油圧を制御して、ロックアップピスト
ン12dを移動させることにより、入力側のポンプイン
ペラー12bと出力側のタービンライナ12cとを機械
的に連結可能、又は切り離し可能である。また、フルー
ドカップリング12の出力側は、前後進切換機構15の
回転軸13と連結されており、前後進切換機構15は、
遊星歯車機構17、前進用クラッチ40、および後進用
ブレーキ50を有している。
【0024】遊星歯車機構17は、サンギヤ19と、2
つのピニオンギヤ21及び23を有するピニオンキャリ
ア25と、インターナルギヤ27とから構成されてい
る。2つのピニオンギヤ21及び23は互いに噛合して
おり、ピニオンギヤ21はサンギヤ19と噛合してお
り、またピニオンギヤ23はインターナルギヤ27と噛
合している。サンギヤ19は常に回転軸13と一体に回
転するように連結されている。ピニオンキャリア25は
前進用クラッチ40によって回転軸13と連結可能であ
る。また、インターナルギヤ27は後進用ブレーキ50
によって静止部に対して固定可能である。ピニオンキャ
リア25は回転軸13の外周に配置された駆動軸14と
連結され、この駆動軸14には駆動プーリ16が設けら
れている。
【0025】駆動プーリ16は、駆動軸14と一体に回
転する固定円錐板18と、固定円錐板18に対向配置さ
れてV字状プーリ溝を形成すると共に、駆動プーリシリ
ンダ室20に作用する油圧によって駆動軸14の軸方向
に移動可能である可動円錐板22とから構成されてい
る。なお、駆動プーリシリンダ室20は、室20a及び
20bの2室からなり、後述する従動プーリシリンダ室
32の2倍の受圧面積を有している。駆動プーリ16は
Vベルト24によって従動プーリ26と伝動可能に連結
されている。
【0026】従動プーリ26は、従動軸28上に設けら
れ、従動軸28と一体に回転する固定円錐板30と、固
定円錐板30に対向配置されてV字状プーリ溝を形成す
ると共に、従動プーリシリンダ室32に作用する油圧に
よって従動軸28の軸方向に移動可能である可動円錐板
34とから構成されている。これらの駆動プーリ16、
Vベルト24及び従動プーリ26により、Vベルト式無
段変速機構29が構成される。従動軸28には駆動ギヤ
46が固着されており、この駆動ギヤ46はアイドラ軸
52上のアイドラギヤ48と噛合している。アイドラ軸
52に設けられたピニオンギヤ54はファイナルギヤ4
4と常に噛合している。ファイナルギヤ44には、差動
装置56を構成する一対のピニオンギヤ58及び60が
取付けられており、このピニオンギヤ58及び60と一
対のサイドギヤ62及び64が噛合しており、サイドギ
ヤ62及び64は夫々出力軸66及び68と連結されて
いる。
【0027】上記のような動力伝達機構にエンジン10
の出力軸10aから入力された回転力は、フルードカッ
プリング12及び回転軸13を介して前後進切換機構1
5に伝達され、前進用クラッチ40が締結されると共に
後進用ブレーキ50が解放されている場合には、一体回
転状態となっている遊星歯車機構17を介して回転軸1
3の回転力が同じ回転方向のまま駆動軸14に伝達され
る。一方、前進用クラッチ40が解放されると共に後進
用ブレーキ50が締結されている場合には、遊星歯車機
構17の作用により回転軸13の回転力は回転方向が逆
になった状態で駆動軸14に伝達される。駆動軸14の
回転力は、駆動プーリ16、Vベルト24、従動プーリ
26、従動軸28、駆動ギヤ46、アイドラギヤ48、
アイドラ軸52、ピニオンギヤ54及びファイナルギヤ
44を介して差動装置56に伝達され、左右のドライブ
シャフト66,68が前進方向又は後進方向に回転す
る。なお、前進用クラッチ40及び後進用ブレーキ50
の両方が解放されている場合には、動力伝達機構は中立
状態となる。
【0028】上記のような動力伝達の際に、駆動プーリ
16の可動円錐板22及び従動プーリ26の可動円錐板
34を軸方向に移動させてVベルト24との接触位置半
径を変えることにより、駆動プーリ16と従動プーリ2
6との回転比を変えることができる。例えば、駆動プー
リ16のV字状プーリ溝の幅を拡大すると共に、従動プ
ーリ26のV字状プーリ溝の幅を縮小すれば、駆動プー
リ16側のVベルトの接触位置半径は小さくなり、従動
プーリ26側のVベルトの接触位置半径は大きくなるた
め、大きな変速比が得られることになる。可動円錐板2
2及び34を逆方向に移動させれば、上記と全く逆に変
速比は小さくなる。
【0029】次に、この無段変速機の油圧制御装置につ
いて説明する。油圧制御装置は、図3に示すように、オ
イルポンプ101、ライン圧調圧弁102、マニュアル
弁104、変速制御弁106、ステップモータ108、
変速比圧弁110、変速操作機構112、切換弁11
4、プレッシャーモディファイヤ弁116、一定圧調圧
弁118、モディファイヤ用デューティ弁120、クラ
ッチリリーフ弁122、トルクコンバータリリーフ弁1
24、ロックアップ制御弁126、ロックアップ用デュ
ーティ弁128、クラッチ接離制御用デューティ弁12
9、変速指令弁150等で構成されている。
【0030】オイルポンプ101は、タンク130内の
油をストレーナ131を介して吸引し、油路132に吐
出する。油路132の吐出油は、ライン圧調圧弁102
のポート102a,102bに供給されて、このライン
圧調圧弁102で所定圧力のライン圧として調整され、
この調整されたライン圧が従動プーリシリンダ室32、
変速制御弁106のポート106a及び切換弁114の
入力ポート114aに夫々供給される。なお、油路13
2には、ライン圧の異常高圧を抑制するパイロットリリ
ーフ弁133kが設けられている。
【0031】切換弁114は、ライン圧が供給される入
力ポート114a、ライン圧調圧弁102のポート10
2fに連通された出力ポート114b、タンク130に
連通されたドレーンポート114c及びモディファイヤ
用デューティ弁120の出力圧がパイロット圧として供
給されるパイロットポート114dと、スプール114
eとを備え、パイロットポート114dのパイロット圧
が略零であるときに入力ポート114a、出力ポート1
14b及びドレーンポート114cが連通状態となる
が、パイロットポート114dのパイロット圧が高くな
るとドレーンポート114cがスプール114eによっ
て閉鎖される。なお、切換弁114の入力ポート114
aは、油路132に連通する油路133がその途中にセ
パレータ133sを介装することにより遮断されている
と共に、出力ポート114bとライン圧調圧弁102の
パイロットポート102fとを連通する油路134がそ
の途中にセパレータ134sを介装することにより遮断
されている。
【0032】プレッシャーモディファイヤ弁116は、
ライン圧調圧弁102のパイロットポート102fに連
通されたポート116a、モディファイヤ用デューティ
弁120の出力圧がパイロット圧として供給されるパイ
ロットポート116b、タンク130に連通されたドレ
ーンポート116c及びライン圧調圧弁102の出力ポ
ート102dに連通された入力ポート116dと、2つ
のランド116e,116fを有するスプール116g
と、このスプール116gをパイロットポート116b
側に付勢するリターンスプリング116hとを備えてお
り、パイロットポート116bのパイロット圧が略零で
あるときにポート116aとドレーンポート116cと
が連通状態となるが、パイロット圧が高くなるとこれに
応じてスプール116gが上動してポート116a及び
116d間が連通状態となる。
【0033】一定圧調圧弁118は、ライン圧調圧弁1
02の出力ポート102dに連通された入力ポート11
8a、出力ポート118b、出力ポート118bの出力
圧がフィルタ118cを介してパイロット圧として供給
されるパイロットポート118d及びタンク130に連
通されたドレーンポート118eと、2つのランド11
8f及び118gを有するスプール118hと、スプー
ル118hをパイロットポート118d側に付勢するリ
ターンスプリング118iを備えており、パイロットポ
ート118dの入口にはオリフィス118jが設けられ
ている。この一定圧調圧弁118は、周知のパイロット
圧による調圧作用によりスプリング118iの付勢力に
対応した一定の油圧を調圧し、これを出力ポート118
bを介してモディファイヤ用デューティ弁120、ロッ
クアップ用デューティ弁128及びクラッチ接離制御用
デューティ弁129に供給する。
【0034】モディファイヤ用デューティ弁120は、
入力ポート120aが前記一定圧調圧弁118の出力ポ
ート118bに連通され、出力ポート120bが切換弁
114のパイロットポート114d、プレッシャーモデ
ィファイヤ弁116のパイロットポート116b、クラ
ッチリリーフ弁122の外部パイロットポート122c
に連通され、ドレーンポート120cがタンク130に
連通され、変速制御装置300から供給される目標変速
比に対応したデューティ比の駆動電流によって、出力ポ
ート120bからデューティ比に応じたモディファイヤ
制御圧を出力する。
【0035】ロックアップ用デューティ弁128は、入
力ポート128aが前記一定圧調圧弁118の出力ポー
ト118bに接続され、出力ポート128bが後述する
変速指令弁150の入力ポート150aに接続され、さ
らにライン圧調圧弁102のパイロットポート102
e、及びクラッチリリーフ弁122のパイロットポート
122cに接続され、ドレーンポート128cがタンク
130に接続され、後述する変速制御装置300から供
給される所定デューティ比の駆動電流よって、出力ポー
ト128bからロックアップ制御圧PLUを出力する。こ
こで、出力ポート128bとライン圧調圧弁102のパ
イロットポート102e及びクラッチリリーフ弁122
のパイロットポート122cとの間を接続する油路13
5及び136がそれらの途中に介装されたセパレータ1
35s及び136sによって遮断されている。
【0036】クラッチ接離制御用デューティ弁129
は、入力ポート129aが前記一定圧調圧弁118の出
力ポート118bに連通され、出力ポート129bが後
述する後進用ブレーキ制御弁140及び前進用クラッチ
制御弁142のパイロットポート140h及び142h
に連通され、ドレーンポート129cがタンク130に
連通され、後述する変速制御装置300からクリープ制
御時及びアンチスキッド制御時に供給される所定デュー
ティ比の駆動電流よって、出力ポート129bからデュ
ーティ比に応じたクラッチ制御圧PCCを出力する。
【0037】ライン圧調圧弁102は、大径孔部102
gに形成された入力ポート102a,パイロットポート
102c、大径孔部102gに連通する中径孔部102
hに形成されたパイロットポート102e、この中径孔
部102hに連通する小径孔部102iに形成されたパ
イロットポート102b及びこの小径孔部102iに連
通する特大径孔部102jに形成されたパイロットポー
ト102fと、各孔部102g〜102jに対応するラ
ンド102o,102p,102q,102rを有する
スプール102sとで形成され、各パイロットポート1
02b,102c,102e及び102fに供給される
パイロット圧と受圧面積による推力バランスによってス
プール102sが左右動して入力ポート102a及び出
力ポート102d間の開口面積を調整してライン圧を調
圧する。
【0038】マニュアル弁104は、ライン圧調圧弁1
02の出力ポート102dに連通する入力ポート104
a、Rレンジポート104b、Dレンジポート104
c、Lレンジポート104d及び両端のドレーンポート
104e,104fと、2つのランド104g,104
hを有するスプール104iとから構成されている。ス
プール104iは、運転席近傍に設けたセレクトレバー
(図示せず)によって動作され、P,R,N,D,2,
Lレンジの6つの停止位置を有している。そして、Rレ
ンジポート104bが後進用ブレーキ制御弁140を介
して後進用ブレーキ50に連通され、Dレンジポート1
04c及びLレンジポート104dが前進用クラッチ制
御弁142を介して前進用クラッチ40に連通されてい
る。
【0039】後進用ブレーキ制御弁140は、マニュア
ル弁104のRレンジポート104bに連通する入力ポ
ート140a、後進用ブレーキ50にオリフィス140
b及び140cを介して連通する出力ポート140d、
タンク130に連通するドレーンポート140e、出力
ポート140dの出力圧がオリフィス140fを介して
パイロット圧として供給されるパイロットポート140
g及びクラッチ制御用デューティ弁129の出力ポート
129bに連通されたパイロットポート140hと、3
つのランド140i,140j,140kを有するスプ
ール140mと、このスプール140mをパイロットポ
ート140g,140h側に付勢するリターンスプリン
グ140nとから構成されている。なお、オリフィス1
40b及び140cには、これらと並列に後進用ブレー
キ50から後進用ブレーキ制御弁140に流出する作動
油を阻止する逆止弁140o及び後進用ブレーキ制御弁
140から後進用ブレーキ50に流入する作動油を阻止
する逆止弁140pが介挿されている。
【0040】前進用クラッチ制御弁142は、マニュア
ル弁104のDレンジポート104cにオリフィス14
2aを介して連通する入力ポート142b、前進用クラ
ッチ40にオリフィス142cを介して連通する出力ポ
ート142d、タンク130に連通するドレーンポート
142e、出力ポート142dの出力圧がオリフィス1
42fを介してパイロット圧として供給されるパイロッ
トポート142g及びクラッチ制御用デューティ弁12
9の出力ポート129bに連通されたパイロットポート
142hと、3つのランド142i,142j,142
kを有するスプール142mと、このスプール142m
をパイロットポート142g,142h側に付勢するリ
ターンスプリング142nとから構成されている。な
お、オリフィス142aと並列にクラッチ制御弁142
からマニュアル弁104に流出する作動油を阻止する逆
止弁142oが介挿され、且つオリフィス142cと並
列に前進用クラッチ制御弁142から前進用クラッチ4
0に流入する作動油を阻止する逆止弁142pが介挿さ
れている。
【0041】クラッチリリーフ弁122は、大径孔部1
22eに形成された入力ポート122a及び出力ポート
122dと、この大径孔部122eに連通する中径孔部
122fに形成されたパイロットポート122bと、こ
の中径孔部122fに連通する小径孔部122gに形成
されたパイロットポート122cと、各孔部122e,
122f及び122gに係合するランド122h,12
2i及び122jを有するスプール122kと、このス
プール122kをパイロットポート122b及び122
c側に付勢するリターンスプリング122mとから構成
されている。ここで、入力ポート122aはライン圧調
圧弁102の出力ポート102dに直接連通され、パイ
ロットポート122bはオリフィス122nを介してラ
イン圧調圧弁102の出力ポート102dに連通され、
パイロットポート122cはモディファイヤ用デューテ
ィ弁120の出力ポート120b及びロックアップ用デ
ューティ弁128の出力ポート128bに連通され、出
力ポート122dはトルクコンバータリリーフ弁124
の入力ポート124aに連通されている。
【0042】トルクコンバータリリーフ弁124は、ク
ラッチリリーフ弁122の出力ポート122dに連通さ
れた入力ポート124aと、出力ポート124bと、1
つのランド124cを有するスプール124dと、この
スプール124dを出力ポート124bを閉塞する方向
に付勢するリターンスプリング124eとから構成さ
れ、出力ポート124bが潤滑用圧力を設定する潤滑リ
リーフボール144を介してオイルポンプ101の吸込
み側に戻されると共に、デファレンシャルギヤ、パワー
トレーン、ベルト等の潤滑系に潤滑用として出力され
る。
【0043】ロックアップ制御弁126は、大径孔部1
26aに形成されたクラッチリリーフ弁122の出力ポ
ート122dに連通された入力ポート126b、ロック
アップ油室12aに連通された出力ポート126c、フ
ルードカップリング12に連通された出力ポート126
d、クーラー146に連通された出力ポート126e、
上述した潤滑系に連通された出力ポート126f及びタ
ンク130に連通されたドレーンポート126gと、小
径孔部126hに形成された出力ポート126cにオリ
フィス148を介して連通されたパイロットポート12
6i及び変速指令弁150の出力ポート150bに連通
されたパイロットポート126jと、大径孔部126a
に係合する4つのランド126m,126n,126
o,126pと小径孔部126hに係合するランド12
6rとを有するスプール126sと、このスプール12
6sをパイロットポート126i及び126j側に付勢
するリターンスプリング126tとから構成されてい
る。なお、出力ポート126dとフルードカップリング
12とを連通する油路149には、異常高圧を抑制する
リリーフ弁152が接続されている。
【0044】変速制御弁106は、入力ポート106
a,出力ポート106b及び調圧ポート106cと、3
つのランド106d,106e及び106fを有するス
プール106gとを備えており、入力ポート106aが
ライン圧が供給される油路132に連通され、出力ポー
ト106bが駆動プーリ16の駆動プーリシリンダ室2
0に連通され、調圧ポート106cが駆動プーリシリン
ダ圧を予め設定された所定圧に保圧する保圧弁160を
介してタンク130に連通され、且つスプール106g
の上端が後述する変速操作機構112のレバー178の
略中央部にピン181によって回転自在に連結されてい
る。したがって、一定の変速比を維持する場合には、図
3において、ランド106eによって出力ポート106
bが閉塞されているため、駆動プーリシリンダ室20へ
のライン圧供給が遮断状態にあるものとすると、スプー
ル106gが図3において上動することにより、入力ポ
ート106aと出力ポート106bとが連通状態となっ
て、所定のライン圧が駆動プーリシリンダ室20に供給
されて増圧されることにより、駆動プーリ16のV字状
プーリ溝の幅が小さくなり、他方、従動プーリ26のV
字状プーリ溝の幅が大きくなる。すなわち、駆動プーリ
16のVベルト接触半径が大きくなると共に従動プーリ
26のVベルト接触半径が小さくなるので、変速比は小
さくなる。逆にスプール106gを図3で下動させる
と、上記とは全く逆の作用により、変速比は大きくな
る。
【0045】変速操作機構112のレバー178は、前
述したようにその略中央部において変速制御弁106の
スプール106gとピン181によって結合されている
が、レバー178の一端は、駆動プーリ16の軸14と
平行に配設された断面方形の案内軸162に摺動自在に
装着され、且つ外周縁に形成されたフランジ164aの
外周縁の一部が駆動プーリ16の可動円錐板22の外周
に設けた溝22aに係合して、可動円錐板22の軸方向
の移動に応じて移動するセンサーシュー164に、ピン
183と図示しない長孔とによって連結され、他端がロ
ッド182にピン185によって連結されている。ロッ
ド182は、ラック182cを有しており、このラック
182cがステップモータ108のピニオンギヤ108
aと噛合している。
【0046】このような変速操作機構112において、
変速制御装置300によって制御されるステップモータ
108が時計方向に回転駆動されると、ロッド182が
下方に移動し、レバー178がピン183を支点として
時計方向に回動し、レバー178に連結された変速制御
弁106のスプール106gを下方に移動させる。
【0047】これによって、前述したように、駆動プー
リシリンダ室20内の圧油が保圧弁160を介してタン
ク130に戻されるので、駆動プーリシリンダ室20の
シリンダ圧が保圧弁160で設定された圧力まで低下さ
れる。このため、駆動プーリ16の可動円錐板22は図
3中で、上方に移動して、駆動プーリ16のV字状プー
リ溝間隔は大きくなり、同時にこれに伴って従動プーリ
26のV字状プーリ溝間隔は小さくなり、変速比は大き
くなる。
【0048】レバー178の一端はピン183によって
センサーシュー164と連結されているので、可動円錐
板22の移動に伴ってセンサーシュー164が図3中で
上方に移動すると、今度はレバー178の他端側のピン
185を支点としてレバー178は時計方向に回動す
る。このため、スプール106gは上方に引き戻され
て、駆動プーリ16及び従動プーリ26を変速比が小さ
い状態にしようとする。このような動作によって、スプ
ール106g、駆動プーリ16及び従動プーリ26は、
ステップモータ108の回転位置に対応して目標とする
変速比の状態で安定する。
【0049】逆に、ステップモータ108を反時計方向
に回転駆動した場合は、上記とは逆に変速制御弁106
のスプール106gが図3中で上方に移動することによ
り、駆動プーリシリンダ室20に所定のライン圧が供給
されて、駆動プーリ16のV字状プーリ溝が小さくな
り、従動プーリ26のV字状プーリ溝が大きくなり、変
速比が小さくなる。このとき、駆動プーリ16における
可動円錐板22の移動に伴ってセンサーシュー164が
図3中で下方に移動するので、変速制御弁106のスプ
ール106gが下方にひき戻されて、駆動プーリ16及
び従動プーリ26を変速比が大きい状態にしようとす
る。このような動作によって、スプール106g、駆動
プーリ16及び従動プーリ26は、ステップモータ10
8の回転位置に対応して目標とする変速比の状態で安定
する。
【0050】したがって、ステップモータ108を所定
の変速パターンに従って作動させると、変速比はこれに
追従して変化することになり、ステップモータ108を
制御することによって無段変速機構の変速を制御するこ
とができる。ステップモータ108は、変速制御装置3
00から送出されるステップモータ駆動信号に対応して
回転角が決定され、当該ステップモータ駆動信号は、通
常は走行状態に応じた所定の変速パターンに従って与え
られる。
【0051】変速比圧弁110は、入力ポート110
a,出力ポート110b,ドレーンポート110c及び
パイロットポート110dと、3つのランド110e,
110f及び110gを有するスプール110hと、前
述したセンサーシュー164に略中央部に支点を有する
レバー170を介して連結されたスプリング止め摺動杆
110iと、このスプリング止め摺動杆110iとスプ
ール110hとの間に介挿され、スプール110hをパ
イロットポート110d側に付勢するリターンスプリン
グ110jとを備えており、入力ポート110aが一定
圧調圧弁118の入力ポート118aに連通されている
と共に、出力ポート110bがライン圧調圧弁102の
パイロットポート102c及び自身のパイロットポート
110dに連通され、駆動プーリ16のV字状プーリ溝
間隔が小さいときには、スプリング止め摺動杆110i
が上方の位置をとるため、リターンスプリング110j
の付勢力が小さくなって、出力ポート110bから出力
されるパイロット圧が小さくなり、ライン圧調圧弁10
2で調圧される油路132のライン圧が小さい状態とな
り、この状態から駆動プーリ16のV字状プーリ溝間隔
が大きくなるにつれてスプリング止め摺動杆110iが
徐々に下方移動するため、リターンスプリング110j
の付勢力が大きくなって、出力ポート110bから出力
されるパイロット圧が徐々に大きくなって、油路132
のライン圧が徐々に増加する。
【0052】そして、上記ステップモータ108、モデ
ィファイヤ用デューティ弁120、ロックアップ用デュ
ーティ弁128、及びクラッチ接離制御用デューティ弁
129が、マイクロコンピュータからなる変速制御装置
300によって制御され、当該変速制御装置300に
は、エンジン回転速度センサ301、車速センサ30
2、スロットル開度センサ303、シフトポジションス
イッチ304、タービン回転速度センサ305、エンジ
ン冷却水温センサ306、およびブレーキセンサ307
からの各検出値が入力される。
【0053】エンジン回転速度センサ301は、エンジ
ンのイグニッション点火パルスからエンジン回転速度N
E を検出する。また、車速センサ302は、無段変速機
の出力軸の回転から車速Vを検出する。シフトポジショ
ンスイッチ304は、前述したマニュアル弁104が
P,R,N,D,2,Lのどの位置にあるかを検出す
る。タービン回転速度センサ305は、フルードカップ
リング12のタービン軸の回転速度Nt を検出する。エ
ンジン冷却水温センサ306は、エンジン冷却水の温度
が一定値以下のときに信号を発生する。ブレーキセンサ
307は、車両のブレーキが使用されているか否かを検
出する。
【0054】スロットル開度センサ303は、エンジン
のスロットル開度を電圧信号として検出するものであっ
て、ポテンショメータ等から構成され、アクセルペダル
の踏込み量を9段階に分割し、このアクセルペダルの踏
込み量が“0”である、即ち、それと等価なスロットル
開度が全閉状態である場合を(0/8)とし、アクセル
ペダルの踏込み量が最大である、即ち、それと等価なス
ロットル開度が全開状態である場合を(8/8)とし
て、当該スロットル開度に応じたアナログ信号が出力さ
れるものである。
【0055】変速制御装置300は、図4に示すよう
に、入力インタフェース311、CPU(中央処理装
置)313、基準パルス発生器312、ROM(リード
オンリメモリ)314、RAM(ランダムアクセスメモ
リ)315、及び出力インタフェース316を少なくと
も有しており、これらはアドレスバス319及びデータ
バス320によって接続されている。
【0056】そして、エンジン回転速度センサ301、
車速センサ302、及びタービン回転速度センサ305
からの信号は、夫々波形整形器308,309,322
を介して入力インタフェース311に供給され、また、
スロットル開度センサ303からの電圧信号は、A/D
変換器310を介して当該スロットル開度に応じたディ
ジタル信号からなるスロットル開度検出値(単に、スロ
ットル開度とも記す)THが、前記(n/8)(n=0
〜8の整数)の形式で入力インタフェース311に供給
され、アクセル開度センサ401からの電圧信号は、A
/D変換器402によってデジタル信号に変換されて、
入力インタフェース311に供給される。
【0057】また、基準パルス発生器312は、中央処
理装置313を作動させる基準パルスを発生させるもの
であり、ROM314には、ステップモータ108及び
デューティ弁120,128及び129を制御するため
のプログラム及び制御に必要なデータを格納してある。
RAM315には、各センサ及びスイッチからの情報、
制御に必要なパラメータ等を一時的に格納する。
【0058】中央処理装置313では、入力インタフェ
ース311を介して入力した各センサ等からのデータを
もとに所定の処理を行い、所定のデータを出力インタフ
ェース316を介してモータ駆動回路317、デューテ
ィ弁120,128及び129の電磁ソレノイドに出力
する。そして、モータ駆動回路317では、変速制御装
置300の出力インタフェース316から出力されたス
テップモータ駆動信号を増幅して対応する電圧信号等に
変換し、これをステップモータ108に出力するととも
に、ステップモータ108に配設した例えばロータリエ
ンコーダ318からの位置情報IS (ステップ数)を、
変速制御装置300の入力インタフェース311に出力
する。
【0059】ここで、ロータリエンコーダ318からは
ステップモータの位置情報としてステップ数IS が出力
され、後述のように、このステップ数IS に基づいて前
記ステップモータ108の回転角に対応する現在ステッ
プ数PA が算出されるが、この現在ステップ数PA は、
図5に示すように、無段変速機の変速比が車両減速比で
最大の場合に“0”とし、変速比が小さくなるに従って
リニアに大きくなるものとする。なお、図5の最大変速
比CMAX は、後述の図10における最大変速比CHiに相
当し、最小変速比CMIN は、後述の図10におけるDレ
ンジ最小変速比CDLO に相当する。
【0060】また、前記ステップモータ駆動信号は、所
定時間における総パルス数とそのピッチとを可変とした
パルス信号からなり、当該パルス信号の所定時間におけ
る総パルス数及びパルスピッチを変更制御することで、
ステップモータ108の回転角並びに回転角速度を制御
することができるようにした。なお、この所定時間と
は、後述する変速比制御の演算処理のサンプリング時間
に一致させた。また、前記回転角とステップ数との相関
に従って、ステップモータ駆動信号による総パルス数が
増加するほどステップモータ108の回転角は大きくな
り、同時に、前記図3に示す油圧制御回路並びに図2の
無段変速機構で達成される無段変速機の変速比はリニア
に小さくなるものとする。なお、ステップモータが1パ
ルスで進む角度がステップ(単位進角)であり、進角は
ステップにパルス数を乗じたものとなるから、前記ステ
ップ数はパルス数と等価なものである。
【0061】そして、前記変速制御装置(マイクロコン
ピュータ)300により、前記無段変速機の変速比制御
は、図6のフローチャートに示す基準演算処理に従って
実行される。後述されるように、この演算処理における
各シフトポジションでの変速パターン検索では、前記ス
テップモータ駆動信号を設定するためのステップモータ
108の目標駆動速度SPが設定される。ここで、この
目標駆動速度SPは、この演算処理が行われるサンプリ
ング時間毎のステップモータの駆動量(回転角及び回転
角速度)を制御するためのものであり、変速比を変更制
御する変速速度に相当する。そして、ステップモータ駆
動信号として、当該目標駆動速度SPを達成するステッ
プモータ108の回転角及び回転角速度に応じた、前記
所定時間内の総パルス数及びパルスピッチからなるパル
ス信号が出力される。
【0062】なお、前述のように、前記所定時間は、本
演算処理のタイマ割込み時間、即ちサンプリング時間Δ
Tに一致させた。また、ステップモータ駆動信号は1パ
ルスずつ出力されるわけではないから、前記ロータリエ
ンコーダ318からの検出ステップ数IS に基づいた現
在ステップ数PA (即ちステップモータ108の回転角
と等価なステップ位置)に応じて、前記ステップモータ
駆動信号つまり駆動制御量はフィードバック制御される
こととした。
【0063】この変速比制御の基準演算処理について説
明すれば、図6の演算処理は例えば10msec程度の
所定時間(ΔT)毎のタイマ割込みによって実行され、
まずステップ502で前記シフトポジションスイッチ3
04からのシフトポジションを読込み、次いでステップ
504でシフトポジションが走行レンジであるD,L,
2,Rレンジであるか否かを判定し、D,L,2,Rレ
ンジであると判定された場合にはステップ508に移行
し、そうでない場合、即ちP,Nレンジである場合には
ステップ506に移行し、ステップ506でロックアッ
プ用デューティ弁128の電磁ソレノイドに対する励磁
電流のデューティ比を“0”に設定してから、後述する
ステップ630に移行する。
【0064】前記ステップ508では、前記スロットル
開度センサ303からの信号に基づいてスロットル開度
THを読込み、次いでステップ510で、車速センサ3
02からの信号に基づいて車速Vを読込み、次いで、ス
テップ511aで、ロータリエンコーダ318から検出
されたステップ数IS をステップ位置情報として読み込
み、このステップ数IS に基づいて、ステップ511b
で、ステップモータ108の回転角度(変速比が最大の
ときのステップモータ108の回転角を“0”とした
値)を表す現在ステップ数PA を算出する。
【0065】次いでステップ512で、エンジン回転速
度センサ301からエンジン回転速度NE を読み込み、
ステップ513aに移行する。このステップ513aで
は、ステップ511bで算出された現在ステップ数P A
から現在の変速比CP を算出してから、ステップ513
bに移行して、スロットル開度TH及びエンジン回転速
度NE をもとに、図7に示す、スロットル開度THをパ
ラメータとしてエンジン回転速度NE とエンジントルク
E との関係を示すマップを参照してエンジントルクT
E を算出し、次いでステップ513cに移行して、算出
したエンジントルクTE と現在の変速比CP とをもと
に、図8に示す、エンジントルクTE をパラメータとし
て変速比Cとライン圧PL との関係を示すマップを参照
してライン圧PL を算出し、このライン圧PL を得るた
めにライン圧調圧弁102に供給するパイロット圧をプ
レッシャーモディファイヤ弁116から出力するために
対応するモディファイヤ用デューティ弁120に対する
励磁電流のデューティ比を決定してからステップ514
に移行する。
【0066】ここで、図8に示す、エンジントルクTE
をパラメータとして変速比Cとライン圧PL との関係を
示すマップは、変速比Cを横軸、ライン圧PL を縦軸と
し、ライン圧最大値LMAX 及びライン圧最小値LMIN
間でアクセル開度毎のエンジントルクTE をパラメータ
として、変速比Cに応じてライン圧PL が変化するよう
になされており、例えば、変速比Cが最大で、例えばC
=2.503のとき、ライン圧最大値LMAX =24〔k
g/cm2〕、ライン圧最小値LMIN =16〔kg/c
m2〕、変速比Cが最小で、例えばC=0.497のと
き、ライン圧最大値LMAX =8〔kg/cm2〕、ライン
圧最小値LMIN =5.5〔kg/cm2〕に設定される。
【0067】ステップ514では、タービン回転速度セ
ンサ305からの信号に基づいてタービン回転速度Nt
を読込み、次いでステップ516に移行して、前記エン
ジン回転速度NE とタービン回転速度Nt との回転偏差
D を算出して、ステップ518に移行する。前記ステ
ップ518では、ステップ508で読込んだスロットル
開度THとステップ510で読込んだ車速Vとを基に、
予めROM314に記憶されている図9に示す制御マッ
プに従って、ロックアップオン車速VON及びロックアッ
プオフ車速VOFF を検索する。
【0068】次にステップ520に移行して、ロックア
ップフラグLUFが“1”に設定されているか否かを判
定し、ロックアップフラグLUFが“1”に設定されて
いる場合にはステップ544に移行し、そうでない場合
にはステップ522に移行する。前記ステップ544で
は、車速Vが前記ロックアップオフ車速VOFF よりも小
さいか否かを判定し、V<VOFF である場合にステップ
540に移行し、そうでない場合、すなわち、V≧V
OFF である場合にステップ546に移行する。一方、前
記ステップ522で車速Vが前記ロックアップオン車速
ONよりも大きいと判定された場合にはステップ524
に移行し、そうでない場合には前記ステップ540に移
行する。
【0069】前記ステップ524では、前記回転偏差N
D から、予め設定した第1の目標値Nm1 を減じて回転
目標値偏差eを算出し、次にステップ526で予め記憶
された制御マップから前記回転目標値偏差eに応じた第
1のフィードバックゲインG 1 を検索し、次にステップ
528で、前記回転偏差ND が、予め設定した制御系切
換閾値N0 よりも小さいか否かを判定し、ND <NO
ある場合にはステップ530に移行し、そうでない場合
即ちND ≧NO である場合にはステップ538に移行す
る。
【0070】前記ステップ530では、ロックアップ用
デューティ弁128の前回デューティ比に、予め設定し
た微小所定値αを加えて、このロックアップ用デューテ
ィ弁128の今回デューティ比を設定し、次にステップ
532でこのロックアップ用デューティ弁128の今回
デューティ比が100%より小さいか否かを判定し、1
00%より小さいと判定された場合にはステップ601
に移行し、そうでない場合にはステップ534に移行す
る。ステップ534では、ロックアップ用デューティ弁
128の今回デューティ比を100%に修正し、次にス
テップ536でロックアップフラグLUFを“1”に設
定してから前記ステップ601に移行する。
【0071】一方、前記ステップ538では、今回デュ
ーティ比を前記回転目標値偏差e及び第1のフィードバ
ックゲインG1 を変数とする演算式に基づいて算出し、
前記ステップ601に移行する。また、前記ステップ5
40ではロックアップ用デューティ弁128の今回デュ
ーティ比を0%に設定し、次にステップ542でロック
アップフラグLUFを“0”にリセットしてから前記ス
テップ601に移行する。また、前記ステップ546で
はロックアップ用デューティ弁128の今回デューティ
比を100%に設定して、前記ステップ601に移行す
る。
【0072】前記ステップ601では、車両がアンチス
キッド制御中であるか否かを判定する。このアンチスキ
ッド制御は、車両の走行中にブレーキペダルを踏込んで
制動状態としたときに、これによってホイールシリンダ
圧が増加して、車輪速を低下させるが、そのときのスリ
ップ率が所定値を越えたときに、そのときのホイールシ
リンダ圧を保持し、この保持状態で車輪減速度が設定値
を越えたときに車輪がロック傾向にあると判断してホイ
ールシリンダ圧を減圧してロック状態を回避し、以後車
輪速が回復すると、保持状態、緩増圧状態、保持状態及
び減圧状態を繰り返しながら制動状態を継続することに
より、車輪のロックを防止して良好な制動状態を得るよ
うにしたものであり、アンチスキッド制御が開始される
と、これを表すアンチスキッド制御中フラグが“1”に
セットされるため、このアンチスキッド制御中フラグが
“1”であるか否かを判定することにより、アンチスキ
ッド制御中であるか否かを判断することができる。
【0073】そして、アンチスキッド制御中ではないと
きには、そのままステップ602に移行するが、アンチ
スキッド制御中であるときには、ステップ601aに移
行して、クラッチ接離制御用デューティ弁129の電磁
ソレノイドに対する励磁電流のデューティ比を100%
に設定してステップ602に移行する。ステップ602
では、当該車速Vが予め設定された変速比制御開始閾値
0 (例えば2〜3km/hに設定され、図8に示すよ
うにロックアップオン車速VON及びロックアップオフ車
速VOFF より小さい値となる。)よりも小さいか否かを
判定し、V<V0 と判定された場合はクリープ制御の必
要があると判断してステップ604に移行し、そうでな
い場合即ちV≧V0 である場合は変速制御を行う必要が
あると判断してステップ624に移行する。前記ステッ
プ604ではスロットル開度THがアイドル判定閾値
(後述の変速比制御開始閾値に相当)TH0よりも小さ
いか否かを判定し、TH<TH0 であると判定された場
合はステップ610に移行し、そうでない場合即ちTH
≧TH0 であると判定された場合にはステップ606に
移行する。前記ステップ606では、クラッチ接離制御
用デューティ弁129の今回デューティ比を0%に設定
して前進用クラッチ40又は後進用ブレーキ50を完全
に締結状態とし、次にステップ608でステップモータ
108の目標ステップ数PD を“0”に設定してから、
後述するステップ630に移行する。
【0074】一方、前記ステップ610では、ステップ
モータ108の現在ステップ数PAが“0”であるか否
かを判定し、PA =0である場合にはステップ612に
移行し、そうでない場合にはステップ619に移行す
る。前記ステップ619では、目標駆動速度SPを最大
値SPMAX に設定してステップ620に移行する。
【0075】前記ステップ612では、前記回転偏差N
D から予め設定した第2の目標値Nm2 を減じて回転目
標値偏差eを算出し、次にステップ614で、予め記憶
された制御マップから、前記回転目標値偏差eに応じた
第2のフィードバックゲインG2 を検索し、次にステッ
プ616で、クラッチ接離制御用デューティ弁129の
今回デューティ比を、前記回転目標値偏差e及び第2の
フィードバックゲインG2 を変数とする演算式に基づい
て算出してステップ638に移行する。
【0076】一方、前記ステップ624で、シフトポジ
ションがDレンジであるか否かを判定し、Dレンジであ
る場合にはステップ626に移行して、当該Dレンジに
相当する変速パターンから車速V及びスロットル開度T
Hに応じた変速比(即ち目標変速比CD である)を検索
すると共に、当該目標変速比CD を達成するための前記
ステップモータ目標駆動速度SPを設定して、前記ステ
ップ630に移行する。
【0077】前記ステップ624で、シフトポジション
がDレンジでないと判定された場合には、ステップ62
5に移行して、シフトポジションが2レンジであるか否
かを判定する。シフトポジションが2レンジである場合
にはステップ627に移行して、当該2レンジに相当す
る変速パターンから車速V及びスロットル開度THに相
当する変速比(即ち目標変速比CD である)を検索する
と共に、当該目標変速比CD を達成するための前記ステ
ップモータ目標駆動速度SPを設定して、前記ステップ
630に移行する。
【0078】前記ステップ625で、シフトポジション
が2レンジでないと判定された場合には、ステップ63
9に移行して、シフトポジションがLレンジであるか否
かを判定する。シフトポジションがLレンジである場合
にはステップ640に移行して、当該Lレンジに相当す
る変速パターンから車速V及びスロットル開度THに相
当する変速比(即ち目標変速比CD である)を検索する
と共に、当該目標変速比CD を達成するための前記ステ
ップモータ目標駆動速度SPを設定して、前記ステップ
630に移行する。
【0079】前記ステップ639で、シフトポジション
がLレンジでないと判定された場合には、ステップ64
0に移行して、シフトポジションRレンジに相当する変
速パターンから車速V及びスロットル開度THに相当す
る変速比(即ち目標変速比C D である)を検索すると共
に、当該目標変速比CD を達成するための前記ステップ
モータ目標駆動速度SPを設定して、前記ステップ63
0に移行する。
【0080】一方、前記ステップ630では、現在ステ
ップ数PA と目標ステップ数PD とを比較して、現在ス
テップ数PA が目標ステップ数PD に等しいと判定され
た場合には、前記ステップ638に移行する。また、前
記ステップ630で現在ステップ数PA が目標ステップ
数PD より小さいと判定された場合には、ステップ63
2に移行して、ステップモータ駆動信号を、前記各変速
パターン検索で設定された目標駆動速度SPに応じてア
ップシフト方向に形成設定した後、前記ステップ636
に移行する。一方、前記ステップ630で現在ステップ
数PA が目標ステップ数PD より大きいと判定された場
合には、前記ステップ620に移行して、ステップモー
タ駆動信号を、前記各変速パターン検索で設定された目
標駆動速度SPに応じてダウンシフト方向に形成設定し
た後、前記ステップ636に移行する。
【0081】前記ステップ636では、前記ステップ6
32またはステップ620で設定されたステップモータ
駆動信号を出力して、ステップ638に移行する。前記
ステップステップ638では、電磁弁ソレノイド駆動信
号を出力してから、メインプログラムに復帰する。そし
て、モータ駆動回路317では、前記ステップモータ駆
動信号に対応する電圧信号等をステップモータ108に
出力する。
【0082】本実施例では、前記ステップ640のRレ
ンジ相当変速パターン検索を除くステップ626,62
7,628で検索される変速パターンは、凡そ図10の
ような変速パターンに従って無段変速機の変速比が設定
されると考えてよい。即ち、各変速パターンにおける変
速比は、車速Vとスロットル開度THとを変数とする制
御マップ上で、それらの変数に従って検索すれば一意に
設定される。
【0083】この図10を、車速Vを横軸、エンジン回
転速度NE を縦軸、スロットル開度THをパラメータと
する変速パターンの総合制御マップであると仮定すれ
ば、原点を通る傾き一定の直線は変速比が一定であると
考えればよい。そして、例えば変速パターンの全領域に
おいて最も傾きの大きい直線は、車両全体の減速比が最
も大きい即ち最大変速比CHiを表し、逆に最も傾きの小
さい直線は、車両全体の減速比が最も小さい即ちDレン
ジ最小変速比CDLO を表し、2レンジ最小変速比C2LO
は、Dレンジ最小変速比CDLO を表す直線より傾きが大
きく最大変速比C Hiを表す直線より傾きが小さい直線と
して表される。
【0084】従って、具体的に、前記Lレンジの変速パ
ターンは、車速V及びスロットル開度THに関わらず前
記最大変速比CHiに固定され、前記2レンジの変速パタ
ーンは、前記最大変速比CHiと2レンジ最小変速比C
2LO との間の領域で車速V及びスロットル開度THに応
じて設定される変速比の経時的軌跡からなる制御曲線と
なり、前記Dレンジの変速パターンは、前記最大変速比
HiとDレンジ最小変速比CDLO との間の領域で車速V
及びスロットル開度THに応じて設定される変速比の経
時的軌跡からなる制御曲線となる。因みに、前記Dレン
ジにおけるDレンジ変速領域での通常加速走行時変速パ
ターンCPTN を、図10に二点鎖線で記してみた。
【0085】なお、車速Vが前記変速比制御開始閾値V
0 よりも小さい領域では、各シフトポジションのレンジ
に関係なく、変速比(即ち変速パターン)は前記最大変
速比CHiに固定される。つまり、この変速比制御開始閾
値V0 は、自動変速機搭載車両で発生するクリープ状態
の制御上限値であると考えればよい。ここで、最大変速
比CHiにおける変速比制御開始閾値V0 のときのスロッ
トル開度THを同じく変速比制御開始閾値TH0 と定義
し、この変速比制御開始スロットル開度閾値TH0 にお
いて2レンジ最小変速比C2LO となる車速Vを2レンジ
最小変速比車速V21、同じく変速比制御開始スロットル
開度閾値TH0 においてDレンジ最小変速比CDLO とな
る車速VをDレンジ最小変速比車速VD1と定義し、これ
らの各レンジ最小変速比車速V21,VD1を単にレンジ最
小変速比車速Vj1とも記すこととする。
【0086】そして、変速比を、或る現在の変速比CP
から前記図6の演算処理で算出設定された次の目標変速
比CD に変化させる速度が変速速度であり、この変速速
度は前記ステップモータの目標駆動速度SPで変更制御
できることになる。但し、前記各ステップ626,62
7,628,640(実質的にはDレンジ変速パターン
検索ステップ626及び2レンジ変速パターン検索ステ
ップ627のみである)における目標駆動速度SPの設
定は、後述するサブルーチン(マイナプログラム)に従
って実行される。
【0087】次に、前記図6の演算処理の作用を説明す
る。今、車両が正常状態であり、車両がエンジンを停止
させ且つシフトレバーでPレンジを選択した駐車状態に
あるものとし、この状態で、Vベルト式無段変速機構2
9が、図3において、Vベルト24の駆動プーリ16側
の接触位置半径が最小で、従動プーリ26側の接触位置
半径が最大となった最大変速比CMAX の変速位置にある
ものとする。
【0088】この駐車状態からイグニッションスイッチ
をオン状態としてエンジンを始動させてアイドリング状
態とすると、これに応じてオイルポンプ101が回転駆
動されることにより、流路132への吐出圧が増加し、
これがライン圧調圧弁102のパイロットポート102
bにパイロット圧として供給される。このとき、ライン
圧調圧弁102の出力ポート102dに接続されたクラ
ッチリリーフ弁122によってその入力ポート122a
のクラッチ圧PC がエンジン停止状態でドレーン圧近傍
までに低下しているものとすると、このクラッチ圧PC
が変速比圧弁110を介して供給される、スプール10
2sの右端部のパイロットポート102cに供給される
パイロット圧が低くなる。
【0089】一方、イグニッションスイッチがオン状態
となったときに中央処理装置313では、初期化を行っ
てロックアップフラグLUFを“0”にリセットすると
共に、目標ステップ数PD を“0”に設定してから図6
の処理を実行し、このとき、シフトレバーでPレンジが
選択されていることから、ステップ504からステップ
506に移行してロックアップ用デューティ弁128の
デューティ比を“0”に設定してからステップ630に
移行し、このとき、現在ステップ数PA が目標ステップ
数PD (=0)に一致しているものとするとステップモ
ータ108に駆動信号を出力しないで、ステップ638
で、デューティ比“0”のソレノイド駆動信号を各デュ
ーティ弁120、128及び129に出力する。このた
め、モデファイヤ用デューティ弁120のデューティ比
が零の状態を維持し、その出力ポート120bから出力
されるモディファイヤ圧PM が零となって、これがプレ
ッシャーモディファイヤ弁116のパイロットポート1
16bに入力されるため、このプレッシャーモディファ
イヤ弁116の入力ポート116d及び出力ポート11
6aが遮断状態で、且つ出力ポート116aとドレーン
ポート116cとが連通状態となるため、ライン圧調圧
弁102のパイロットポート102fのパイロット圧も
零となる。
【0090】したがって、スプール102sを右動させ
るパイロットポート102b及び102fのパイロット
圧と、スプール102sを左動させるパイロットポート
102cの圧力と、スプール102sの受圧面積との積
でなる推力差によってスプール102sが右動し、これ
によって入力ポート102aとスプール102sのラン
ド102oとの間の開口面積が増加し、これによって入
力ポート102aと出力ポート102dとが連通状態と
なるため、流路132のライン圧が一時的に減少する。
【0091】ところが、ライン圧調圧弁102の出力ポ
ート102dから出力される出力圧は、その下流側に配
設されているクラッチリリーフ弁122の入力ポート1
22a及びパイロットポート122bに供給されるた
め、入力ポート122aで形成されるクラッチ圧P
C は、このクラッチリリーフ弁122のリターンスプリ
ング122mによる推力とパイロットポート122bの
パイロット圧及びスプール122kのランド122iの
受圧面積の積で表される推力とが釣り合う圧力まで増加
する。
【0092】このように、クラッチ圧PC が増加する
と、これが変速比制御弁110の入力ポート110aに
供給され、このとき駆動プーリ16のV字状プーリ溝間
隔が広くなっていることから、これに応じてセンサシュ
ー164が図3でみて上方側に移動しており、このため
スプリング止め摺動杆110iが下方に移動して、リタ
ーンスプリング110jの付勢力が大きくなっているた
め、この変速比制御弁110の出力ポート110bから
出力される制御圧がクラッチ圧PC よりは低い値である
がこれに近い値となり、この制御圧がライン圧調圧弁1
02のパイロットポート102cにパイロット圧として
供給される。このため、ライン圧調圧弁102のスプー
ル102sが左動して入力ポート102aとランド10
2oとの間の開口面積が小さくなり、これに応じて流路
132のライン圧が図8に示すように、最大ライン圧曲
線LMAX 上の最大変速比CMAX に対応する点で表される
比較的高いライン圧に設定される。
【0093】このPレンジを選択している停車状態か
ら、ブレーキペダルの踏込みを維持して、前進走行を開
始するために、シフトレバーでDレンジを選択すると、
図6の処理が実行されたときに、ステップ504からス
テップ508に移行し、変速制御処理を開始する。しか
しながら、ブレーキペダルの踏込を継続している状態で
は、エンジンはアイドリング状態にあると共に、車両も
停止状態であるので、車速Vは零であり、ステップ51
3a〜S513cで算出されるモディファイヤ用デュー
ティ弁120のデューティ比は最小ではないがアイドリ
ング状態のエンジントルクに応じた値となり、モディフ
ァイヤ用デューティ弁120から出力されるモディファ
イヤ圧PM が多少増加し、これに応じてプレッシャーモ
ディファイヤ弁116の出力ポート116a及びドレー
ンポート116c間が遮断状態となり、これに代えて出
力ポート116a及び入力ポート116d間が連通状態
となるため、クラッチ圧PC に基づく比較的小さい圧力
のモディファイヤ圧がパイロット圧としてライン圧調圧
弁102のパイロットポート102fに供給される。こ
のため、スプール102sが右動して、流路132のラ
イン圧PL が図8に示すように、最小ライン圧曲線L
MIN 上の最大変速比CMAX に対応する点で表される最小
ライン圧に設定される。
【0094】一方、シフトレバーでDレンジを選択した
ときに、マニュアル弁104の入力ポート104aと出
力ポート104cが連通状態となるため、クラッチリリ
ーフ弁122で形成されたクラッチ圧PC が前進用クラ
ッチ制御弁142を介し、オリフィス142cを介して
前進用クラッチ40に供給されるので、この前進用クラ
ッチ40が緩やかに増加して一端締結状態となる。とこ
ろが、図6の処理において、ロックアップフラグLUF
が初期状態で、“0”にリセットされているので、ステ
ップ520からステップ522に移行し、車速Vが零で
あるので、ステップ540に移行して、ロックアップ用
デューティ弁128のデューティ比を“0”に設定し、
次いでステップ542に移行して、ロックアップフラグ
LUFを“0”にリセットしてからステップ601に移
行する。
【0095】この時点では、アンチスキッド制御中では
ないので、ステップ602に移行し、ここで、車速Vは
停車中であって設定車速V0 より小さいので、ステップ
604に移行し、アイドリング状態であるためスロット
ル開度THが前記閾値TH0より小さいので、ステップ
610に移行し、現在ステップ数PA がPA =0である
ので、ステップ612から616を実行して、クラッチ
接離制御用デューティ弁129のデューティ比をエンジ
ン回転速度NE とタービン回転速度NT との偏差ND
目標偏差Nm2との差eとゲインG2 とに基づいて設定す
ることにより、デューティ比が比較的大きい値、例えば
60程度に設定される。このため、クラッチ接離制御用
デューティ弁129の出力ポート129bから出力され
るクラッチ制御圧PCCが後進用ブレーキ制御弁140及
び前進用クラッチ制御弁142のパイロットポートに供
給されるため、これら後進用ブレーキ制御弁140及び
前進用クラッチ制御弁142のスプール140m及び1
42mがリターンスプリング140n及び142nに抗
して下降し、前進用クラッチ制御弁142では、出力ポ
ート142dとドレーンポート142eとを連通させる
状態となり、前進用クラッチ40に対するクラッチ締結
圧をリターンスプリング142nの付勢力とパイロット
ポート142hのパイロット圧による推力とがバランス
する圧力まで低下させて、クリープ走行を可能な状態に
制御する。
【0096】一方、ロックアップ用デューティ弁128
に対するデューティ比が“0”となるので、これから出
力されるロックアップ制御圧PLUは略零に制御され、こ
れがロックアップ制御弁126のパイロットポート12
6jにパイロット圧として供給されるので、スプール1
26sはリターンスプリング126tによって図2に示
すように右動した位置となり、トルクコンバータリリー
フ弁124から供給されるトルクコンバータ制御圧PT
が入力ポート126b及び出力ポート126cを介して
ロックアップ油室12aに供給され、フルードカップリ
ング12には、ロックアップ油室12a側から作動圧が
供給され、フルードカップリング12の油圧はリリーフ
弁152によって一定圧に保持される。
【0097】このため、フルードカップリング12にお
けるポンプインペラ12bとタービンランナ12cとの
間を作動油を介して連結するロックアップ解除状態に制
御する。なお、フルードカップリング12から出力され
る作動油がロックアップ制御弁126の入力ポート12
6d及び出力ポート126eを介してクーラー146に
出力される。
【0098】したがって、この状態でブレーキペダルの
踏込みを解除し、アクセルペダルを解放状態とするか又
は軽く踏込んでスロットル開度THが前記閾値TH0
満の状態を維持すると、前進用クラッチ40が僅かに締
結された状態となり、エンジン10の回転駆動力がフル
ードカップリング12、前進用クラッチ40及び遊星歯
車機構17のピニオンキャリア25を介して駆動プーリ
16に伝達され、フルードカップリング12でエンジン
10に対する過負荷を吸収して車両を最大変速比CMAX
でクリープ走行させることができる。
【0099】また、Dレンジを選択してブレーキペダル
を踏込んでいる停車状態から発進するため、ブレーキペ
ダルの踏込みを解除し、これに代えてアクセルペダルを
大きく踏込むことにより、スロットル開度THが前記閾
値TH0 より大きくなると、図6の処理が実行されたと
きにステップ604からステップ606に移行して、ク
ラッチ接離制御用デューティ弁129のデューティ比が
“0”に設定され、次いでステップ608で目標ステッ
プ数PD を図5に示すように最大変速比CMAXを表すパ
ルス数“0”に設定してからステップ630に移行す
る。
【0100】このとき、現在ステップ数PA が“0”で
あるので、PA =PD となり、そのままステップ638
でソレノイド駆動信号を出力する。このため、クラッチ
接離制御用デューティ弁129から出力されるクラッチ
制御圧PCCが零となって、前進用クラッチ制御弁142
のスプール142mがリターンスプリング142nによ
って上昇し、出力ポート142dとドレーンポート14
2eとを遮断し、逆に出力ポート142dと入力ポート
142bとを連通させる状態となり、前進用クラッチ4
0に対するクラッチ締結圧を増加させて、前進用クラッ
チ40を完全に締結状態に制御すると共に、ステップモ
ータ108を図5に示すパルス数“0”の最大変速比C
MAX の位置に維持する。
【0101】このように、前進用クラッチ40が締結状
態となることにより、最大変速比C MAX で車両を発進さ
せることができ、このとき、スロットル開度THが大き
くなることにより、図6の処理におけるステップ513
a〜S513cで設定されるライン圧PL もエンジント
ルクの増加に応じて図8の最大ライン圧曲線LMAX 上の
最大変速比CMAX に対応する点の最大圧力となり、これ
が従動プーリシリンダ室32に供給されるので、ベルト
24に対してエンジントルクに対応した押付力を作用し
て、ベルト24とプーリ16及び26間の滑りを抑制し
て良好な発進を行うことができる。
【0102】そして、車速Vが図9に示す設定車速V0
に達すると、図6の処理が実行されたときに、ステップ
602からステップ624に移行し、Dレンジであるの
でステップ626に移行して、そのときの車速V、エン
ジン回転速度NE 及びスロットル開度THをもとに、予
め記憶されたDレンジ変速パターンから目標変速比C D
を検索し、この目標変速比CD を達成するためのステッ
プモータ108の目標ステップ数PD と目標駆動速度S
Pとを決定して、変速制御を開始する。
【0103】すなわち、目標ステップ数PD が“0”よ
り大きな値に設定されることにより、図6の処理におけ
るステップ630からステップ632に移行し、後述さ
れるマイナプログラムに従って設定された目標駆動速度
SPから、ステップモータ駆動信号がアップシフト方向
に形成設定され、ステップ636で、ステップモータ1
08を図3でみて反時計方向に所定ステップ角分回転さ
せる。
【0104】この結果、図11に示すように、ロッド1
82が上方に移動し、レバー178が、センサーシュー
164との連結点であるピン183を支点として反時計
方向に破線図示の位置まで回動し、このレバー178に
ピン181を介して連結されている変速制御弁106の
スプール106gが上方に移動する。これによって、変
速制御弁106の入力ポート106a及び出力ポート1
06bが連通状態となり、入力ポート106aに供給さ
れているライン圧PL が駆動プーリシリンダ室20に供
給されるので、可動円錐板22が固定円錐板18側に移
動されてV字状プーリ溝間隔が小さくなり、これによっ
てベルト24の駆動プーリ16に対する接触位置半径が
大きくなり、これに応じて従動プーリ26に対する接触
位置半径が小さくなることにより、変速比が徐々に小さ
くなる。
【0105】一方、可動円錐板22の移動によってセン
サーシュー164が下方に移動し、これによってレバー
178がロッド182のピン185を支点として反時計
方向に回動することにより、変速制御弁106のスプー
ル106gが下降し、そのランド106eによって出力
ポート106bが徐々に閉塞され、目標変速比に一致し
たときに、出力ポート106bがランド106eによっ
て完全に閉塞されるので、駆動プーリ16の駆動プーリ
シリンダ室20の圧力上昇が停止され、可動円錐板22
の移動が停止される。
【0106】このように、Vベルト式無段変速機構29
の変速比が小さくなると、図6のステップ513a〜S
513cで算出されるモディファイヤ用デューティ弁1
20のデューティ比が大きくなり、これに応じてプレッ
シャーモディファイヤ弁116の出力ポート116aか
ら出力されるモディファイヤ圧が大きくなってライン圧
調圧弁102のパイロットポート102fに供給するパ
イロット圧が増加すると共に、センサーシュー164の
下動によって変速比圧弁110のスプリング止め摺動杆
110iが上動し、これによってリターンスプリング1
10jの付勢力が小さくなり、これに応じて出力ポート
110bから出力されるライン圧調圧弁102のパイロ
ットポート102cに対するパイロット圧が低下するこ
とにより、ライン圧調圧弁102のスプール102sが
右動し、これによって入力ポート102aとランド10
2oとの間の開口面積が大きくなることにより、ライン
圧PL が低下し、従動プーリシリンダ室32の圧力が低
下することにより、変速比に応じたベルト挟持力に変更
される。
【0107】その後、スロットル開度THが大きい状態
を維持しながら車速Vが増加して、ロックアップオン車
速VONを越える状態となると、図6の処理におけるステ
ップ522からステップ524に移行して、エンジン回
転速度NE とタービンランナ回転速度Nt との回転速度
偏差ND から第1の目標値Nm1 を減じて回転目標値偏
差eを算出し、次にステップ526で予め記憶された制
御マップから前記回転目標値偏差eに応じた第1のフィ
ードバックゲインG1 を検索し、次にステップ528で
前記回転速度偏差ND が制御系切換閾値N0 よりも小さ
いか否かを判定する。ND ≧NO である場合には回転速
度偏差が大きすぎるものと判断してステップ538に移
行して、ロックアップ用デューティ弁128に対するデ
ューティ比を回転速度偏差e及びフィードバックゲイン
1 に応じた値に設定してフィードバック制御を行う。
このため、ステップ638でソレノイド駆動信号がロッ
クアップ用デューティ弁128に出力されたときに、そ
の出力ポート128bから出力されるロックアップ制御
圧PLUが徐々に増加することにより、これが変速指令弁
150の入力ポート150a及び150bを通じてロッ
クアップ制御弁126のパイロットポート126jに供
給されるため、そのスプール126sがリターンスプリ
ング126tに抗して左動することになり、ロックアッ
プ油室12aに供給されるトルクコンバータ圧PT が徐
々に減少されると共に、フルードカップリング12から
クーラー146に出力される作動油量も減少され、ロッ
クアップ油室12aの圧力が低下することにより、徐々
にロックアップ状態に切換えが行われる。
【0108】そして、回転速度偏差ND が制御系切換閾
値N0 より小さくなると、図6のステップ528からス
テップ530に移行し、現在のロックアップ用デューテ
ィ比に所定値αを加算するフィードフォワード制御を行
い、これが100%未満であるときには、ステップ53
4に移行してデューティ比を100%に設定し、次いで
ステップ536でロックアップ制御フラグLUFを
“1”にセットしてからステップ601に移行する。
【0109】このため、ロックアップ用デューティ弁1
28から出力されるロックアップ制御圧PLUが高い圧力
となるため、ロックアップ制御弁126のスプール12
6sがさらに左動し、ロックアップ油室12aをドレー
ンポート126gに連通させると共に、トルクコンバー
タ圧PT をフルードカップリング12に直接供給し、さ
らに潤滑用リリーフボール144で設定される潤滑圧P
LBが入力ポート126f及び出力ポート126eを介し
てクーラー146に供給されて冷却される。
【0110】このため、ロックアップ油室12aの圧力
が略零となるので、ポンプインペラー12bとタービン
ランナ12cとを機械的に連結したロックアップ状態と
なり、車両は加速状態を継続する。そして、所望の車速
Vに達して、アクセルペダルの踏込みを停止すると、ス
ロットル開度THが一定値となり、エンジン回転速度も
一定となるので、ステップ626で検索される目標ステ
ップ数PD が一定値となり、これと現在ステップ数PA
とが一致するので、図6の処理においてステップ630
からステップ638に移行してステップモータを駆動さ
せないため、現在ステップ数PA が維持されて変速動作
は行われず、定速走行状態が維持される。
【0111】そして、この定速走行状態からアクセルペ
ダルの踏込を解除しエンジンブレーキ状態とするか又は
ブレーキペダルを踏込んで制動状態とさせたものとす
る。この場合には、スロットル開度THが低下すること
により、ステップ626で検索される目標ステップ数P
D が低下し、これによってステップ630からステップ
620に移行し、後述されるマイナプログラムに従って
設定された目標駆動速度SPから、ステップモータ駆動
信号がダウンシフト方向に形成設定される。
【0112】このため、ステップモータ108が図11
で時計方向に回転駆動され、これによってロッド182
が下方に移動することにより、レバー178がセンサー
シュー164のピン183を支点として時計方向に回動
し、これによって変速制御弁106のスプール106g
が下降することにより、出力ポート106bとドレーン
ポート106cとが連通状態となり、駆動プーリシリン
ダ室20aの作動油が徐々に保圧弁160を介してタン
ク130に戻される。このため、駆動プーリシリンダ室
20aの圧力が徐々に低下することによりV字状プーリ
溝間隔が徐々に広がり、駆動プーリ16に対するベルト
24の接触位置半径が徐々に小さくなり、逆に従動プー
リ26に対するベルト24の接触位置半径が大きくなる
ことにより、変速比Cが大きくなってダウンシフトが行
われ、車両は減速状態となる。
【0113】そして、減速状態を継続して、車速Vがロ
ックアップオフ車速VOFF 未満となると、図6の処理に
おけるステップ544からステップ540に移行して、
ロックアップ用デューティ弁128に対するデューティ
比が“0”に設定され、次いで、ステップ542でロッ
クアップ制御フラグLUFが“0”にリセットされる。
このため、ロックアップ制御弁126のパイロットポー
ト126jの圧力が低下することにより、スプール12
6sが瞬時に右動し、トルクコンバータ圧PTがロック
アップ油室12aに供給されるため、ロックアップ状態
が直ちに解除されてフルードカップリング12を介した
駆動状態に復帰し、この間無段変速機29の変速比Cは
増加状態を継続し、車速Vが設定車速V0 未満となる
と、ステップ602からステップ604に移行し、スロ
ットル開度THが前記閾値TH0 より小さいので、ステ
ップ610に移行し、現在ステップ数PA が“0”、す
なわち、最大変速比CMAX に達していないときには、ス
テップ619で目標駆動速度SPを最大駆動速度SP
MAX に設定した後、変速比の変化量に応じてステップモ
ータ108を駆動させ、現在ステップ数PA が“0”に
達するとステップ612に移行して前述したように、前
進用クラッチ40のクラッチ圧を低下させてクリープ走
行可能な状態に復帰させる。
【0114】この減速状態を継続している間に、駆動プ
ーリ16の可動円錐板22が上方に移動することによ
り、センサーシュー164が下降することにより、変速
比圧弁110の出力圧が増加し、これによってライン圧
調圧弁102のパイロットポート102cのパイロット
圧が増加することにより、ライン圧が低下して従動プー
リ26のベルト挟持力が変速位置に応じた値に調整され
る。
【0115】また、シフトレバーでRレンジを選択した
場合には、マニュアル弁104の入力ポート104aと
Rレンジポート104bとが連通状態となり、クラッチ
リリーフ弁122で形成されたクラッチ圧PC が後進用
ブレーキ制御弁140を介し、オリフィス140fを介
してパイロット圧としてパイロットポート140gに供
給されると共に、オリフィス140b、140cを介し
て後進用ブレーキ50に供給され、これによって、後進
用ブレーキ50が作動し、駆動軸14が逆回転し、車両
は後進する。
【0116】この場合も、上記と同様に、各センサの検
出信号をもとに各デューティー比を設定し、この場合、
Rレンジであるのでステップ640において、Rレンジ
の変速パターンを検索して目標ステップ数PD を設定し
てステップモータ108を駆動し、ステップ630で、
目標ステップ数PD と現在ステップ数PA とがPA <P
D である場合にはステップ632で、PA <PD である
場合にはステップ622で、ステップモータ駆動信号
を、前記目標駆動速度SPからアップシフト方向にまた
はダウンシフト方向にそれぞれ形成設定して、これをモ
ータ駆動回路317に出力し、これによりステップモー
タ108を駆動することによって、変速制御弁106が
駆動され変速される。
【0117】なお、制動時にアンチスキッド制御が開始
されると、前述したように、アンチスキッド制御中フラ
グが“1”にセットされることにより、図6の処理にお
けるステップ601からステップ601aに移行して、
クラッチ接離制御用デューティ弁129の電磁ソレノイ
ドに対する励磁電流のデューティ比が100%に設定さ
れるため、ステップ636でソレノイド駆動信号がクラ
ッチ接離制御用デューティ弁129に出力されたとき
に、クラッチ接離制御用デューティ弁129の出力ポー
ト129bから出力されるクラッチ制御圧PCCが高い圧
力となり、これが前進用クラッチ制御弁142のパイロ
ットポート142hに供給されるので、そのスプール1
42mがリターンスプリング142nに抗して下降し、
これによって出力ポート142dとドレーンポート14
2eとが連通状態となることにより、前進用クラッチ4
0のクラッチ圧が低下して、車輪速の変動による負荷が
エンジン10に作用することを回避することができる。
【0118】また、車両が走行状態から停車状態となっ
た後に、シフトレバーをDレンジからNレンジにシフト
すると、これに応じてマニュアル弁104のスプール1
04iが図3で下方に移動することにより、Dレンジポ
ート104cがドレーンポート104fに連通する状態
となるが、前進用クラッチ制御弁142の入力ポート1
42bとDレンジポート104cとの間の油路に逆止弁
142oが介挿されていることにより、前進用クラッチ
制御弁142の入力ポート142bから流出する作動油
はオリフィス142aを通じてDレンジポート104c
及びドレーンポート104fを介してタンク130に戻
ることになり、前進用クラッチ40のクラッチ圧の低下
が徐々に行われ、DレンジからNレンジへのシフト時の
ショックを防止することができる。
【0119】なお、シフトポジションが2レンジに選択
されている場合には、ステップ625からステップ62
7に移行して、2レンジ変速パターンから変速比の目標
値C D を検索して前記目標駆動速度SPが設定され、前
記Dレンジの場合と同様にして、ステップモータ108
の駆動により変速速度が制御される。また、シフトポジ
ションがDレンジに選択されている場合には、ステップ
639からステップ628に移行して、Lレンジ変速パ
ターンから変速比の目標値CD が検索されるが、この実
施例では、Lレンジ変速パターンは車速Vおよびスロッ
トル開度THに関わらず前記最大変速比CHiに固定され
ているため、ステップ630からステップ638に至っ
て、ステップモータ108は駆動されない。
【0120】それでは次に、前述のような無段変速機お
よびその変速制御装置を搭載する車両にあって、アクセ
ル開度が小さい場合のセレクトアップシフト時に、変速
ショックおよび車両の加速ショック感を抑制防止するた
めのこの第一実施例の基本原理について説明する。通常
の無段変速機の変速比制御では、アクセル開度又はスロ
ットル開度の変化に対する変速比変化の応答性は速い方
が好ましいため、変速比変更制御のアクチュエータであ
るステップモータを最大駆動速度で駆動させることによ
り、大きな変速速度で変速比を変更制御している。しか
しながら、前述のように、スロットル開度が“0”また
はほぼ“0”の状態でのセレクトアップシフト操作時に
おいて顕著に現れる変速ショックや車両の加速ショック
感等の原因は、急激な変速比の低減によるものである。
したがって、アクセル開度又はスロットル開度が“0”
またはほぼ“0”の状態でのセレクトアップシフト操作
時に、変速速度を小さくすることにより無段変速機の変
速比を緩やかに低減すれば、変速ショックや車両の加速
ショック感が抑制防止される。
【0121】そのため、本実施例では、前記目標駆動速
度SPを、前記ステップモータ108の駆動速度の基準
値である最大駆動速度SPMAX と“1”以下の正数であ
る比例係数kとから下記の(1)式により設定し、 SP=k・SPMAX ……(1) この比例係数kを、通常時には“1”に設定し、変速シ
フトポジションを2レンジからDレンジへ、Lレンジか
ら2レンジへ、またはLレンジからDレンジへ移行した
セレクトアップシフト時には、スロットル開度センサ3
03により検出されたスロットル開度THに応じて設定
する。すなわち、アクセル開度又はスロットル開度が
“0”またはほぼ“0”の状態であることを、前記スロ
ットル開度検出値THが所定値TH1 (例えば“0/
8”)以下であることで判定し、TH≦TH1 の場合に
は、比例係数kを“1”より小さい所定値k0 (例えば
0.25)に設定し、TH>TH1 の場合には、比例係
数kを“1”に設定する。
【0122】これにより、セレクトアップシフト時以外
と、セレクトアップシフト時であってもスロットル開度
THが前記所定値TH1 以上である場合には、ステップ
モータの目標駆動速度SPが前記最大駆動速度SPMAX
に設定され、セレクトアップシフト時であってスロット
ル開度THが前記所定値TH1 以下である場合には、ス
テップモータの目標駆動速度SPが最大駆動速度SP
MAX より小さい値(例えばSPMAX の1/4)に設定さ
れる。
【0123】また、このようにして設定された目標駆動
速度SPのみに応じて前記ステップモータ駆動信号を設
定してしまうと、その総パルス数で今回演算処理による
ステップモータの到達回転角が決定されてしまい、これ
により、検出される現在ステップ数PA が目標ステップ
数PD を越えた値になり(すなわち、オーバーシュート
が発生して)、ハンチングが生じる可能性がある。そこ
で、この実施例では、目標ステップ数PD と現在ステッ
プ数PA との偏差の絶対値|PD −PA |が目標駆動速
度SPの絶対値|SP|以下である場合には、当該目標
ステップ数PDと現在ステップ数PA との偏差の絶対値
|PD −PA |を目標駆動速度SPに設定することにし
た。
【0124】以上の基本原理に基づいて、車両の走行状
態および車両への操作入力に応じて目標変速比CD を設
定するとともに、この目標変速比CD に到達するまでの
変速速度を決定する目標駆動速度SPを設定するための
演算処理を図12に示す。この演算処理は、前記無段変
速機の制御装置であるマイクロコンピュータ300で、
所定時間(ΔT)毎のタイマ割込みによって実行される
図6の変速比制御の演算処理のうち、前記変速パターン
検索ステップ626,627,628,640(実質的
には、Dレンジ変速パターン検索ステップ626および
2レンジ変速パターン検索ステップ627のみである)
のマイナプログラムとして実行される。また、この図1
2の演算処理において、制御フラグFは、2レンジから
Dレンジから2への、またはLレンジから2レンジもし
くはDレンジへのセレクトアップシフト操作時であるこ
とを示し、制御フラグFが“1”のセット状態でセレク
トアップシフト操作時であることを示し、“0”のリセ
ット状態でセレクトアップシフト操作時でないことを示
す。また、図中の制御フラグのセット・リセットでは、
その都度、前記RAM315への記憶更新が同時に実行
される。
【0125】この図12の演算処理では、まず、ステッ
プS1で、制御フラグFが“1”のセット状態でないか
否か判定し、当該制御フラグFが“1”のセット状態で
なければステップS2に移行して、そうでなければつま
り当該制御フラグFが“1”のセット状態であればステ
ップS5aに移行する。前記ステップS2では、シフト
ポジションスイッチ304による前回サーチ時と今回サ
ーチ時のシフトポジションより、シフトポジションが2
レンジからDレンジへ、Lレンジから2レンジへ、また
はLレンジからDレンジへ変更されたセレクトアップシ
フト操作時であるか否かを判定し、当該セレクトアップ
シフト操作時である場合にはステップS3に移行し、そ
うでなければステップS4に移行する。
【0126】前記ステップS3では、制御フラグFを
“1”のセット状態としてから、ステップS5aに移行
する。前記ステップS5aでは、前記図6の演算処理の
ステップ508で読込まれたスロットル開度検出値TH
が前記所定値TH1 以下であるか否か判定し、スロット
ル開度検出値THが前記所定値TH1 以下であればステ
ップS5bに移行し、そうでないつまりTH>TH1
あればステップS4に移行する。
【0127】前記ステップS5bでは、比例係数kを
“1”より小さい前記所定値k0 に設定してから、ステ
ップS6に移行する。一方、前記ステップS4では、比
例係数kを“1”に設定してから、ステップS6に移行
する。前記ステップS6では、前記ステップS5bまた
はステップS4で設定された比例係数kにより、前記
(1)式に従って目標駆動速度SPを算出する。
【0128】次に、ステップS7に移行して、前記図6
の演算処理のステップ508で読込まれたスロットル開
度THと、ステップ510で読込まれた車速Vとを用い
て、前記図10の検索マップから目標変速比CD を検索
する。次に、ステップS8に移行して、前記ステップS
7で検索された目標変速比C D に所定の比例定数Bを乗
じて、ステップモータ108が当該目標変速比CD を達
成するための目標ステップ数PD を算出する。
【0129】次に、ステップS9に移行して、前記ステ
ップS8で算出された目標ステップ数PD と前記図6の
演算処理のステップ511bで算出された現在ステップ
数P A との偏差の絶対値|PD −PA |が、目標駆動速
度SPの絶対値|SP|以下であるか否かを判定し、|
D −PA |≦|SP|である場合にはステップS10
に移行し、そうでないつまり|PD −PA |>|SP|
である場合にはメインプログラムに復帰する。
【0130】前記ステップS10では、目標駆動速度S
Pを、前記目標ステップ数PD と現在ステップ数PA
の偏差の絶対値|PD −PA |に設定する。次に、ステ
ップS11では、制御フラグFを“0”のリセット状態
としてからメインプログラムに復帰する。次に、前記図
12の演算処理の作用を説明する。
【0131】今、車両が平坦な路面を走行していて、シ
フトポジションはDレンジに維持されており、車速Vが
前記所定値V0 を越えている状態で、アクセルペダルの
踏込み量を増大しながら、つまりアクセルペダルを踏込
みながら車速Vを増速している状態を想定する。この
時、前記図12の演算処理が図6の演算処置のサンプリ
ング時間(ΔT)毎に実行されると、ステップS1で制
御フラグF≠1と判定されてステップS2からステップ
S4に至り、ステップS4で比例係数kが“1”に設定
され、ステップS6で目標駆動速度SPが最大駆動速度
SPMAX に設定される。また、ステップS7で、前記図
6の演算処理のステップ508で読込まれたスロットル
開度THと、ステップ510で読込まれた車速Vとを用
いて、前記図10の検索マップから目標変速比CD が検
索され、この目標変速比CD に応じて、ステップS8で
当該目標変速比CD を達成するステップモータ108の
回転角である目標ステップ数PD が算出設定される。そ
して、ステップS9で、目標ステップ数PD と現在ステ
ップ数PA との偏差の絶対値が、前記目標駆動速度SP
の絶対値以下でない限り、前記ステップS6で設定され
た最大駆動速度SPMAX が目標駆動速度SPになる。
【0132】このように、最大駆動速度SPMAX が目標
駆動速度SPに設定されると、例えば車速Vの増加より
もスロットル開度THの増加の方が大きい場合のよう
に、車両減速比を大きくして駆動輪の回転駆動力を大き
くすべきような場合には、前記図12の演算処理で設定
された目標変速比CD を達成するための前記目標ステッ
プ数PD は、現在ステップ数PA よりも小さいはずであ
るから、前記図6の演算処理のステップ630からステ
ップ620に移行する。そして、当該目標駆動速度SP
である最大駆動速度SPMAX に応じた、前記所定時間Δ
T当たりの最小ピッチのパルス信号で、ステップモータ
駆動信号をダウンシフト方向即ちステップモータの回転
角が小さくなる方向に形成し、このステップモータ駆動
信号が次のステップ636でステップモータ108に向
けて出力される。
【0133】逆に、例えば車速Vの増加よりもスロット
ル開度THの増加の方が小さい場合のように、車両減速
比を小さくして駆動輪の回転駆動力を小さくすべきよう
な場合には、前記図12の演算処理で設定された目標変
速比CD を達成するための前記目標ステップ数PD は現
在の実ステップ数PA よりも大きいはずであるから、前
記図6の演算処理のステップ630からステップ632
に移行する。そして、当該目標駆動速度SPである最大
駆動速度SPMAX に応じた、前記所定時間ΔT当たりの
最小ピッチのパルス信号で、ステップモータ駆動信号を
アップシフト方向即ちステップモータの回転角が大きく
なる方向に形成し、このステップモータ駆動信号が次の
ステップ636でステップモータ108に向けて出力さ
れる。
【0134】これにより、当該ステップモータ108
は、前記最大駆動速度SPMAX に応じた最大回転速度
(最大角速度)で所定時間ΔT間に最大角回転するた
め、所望する目標変速比CD に向けて、ダウンシフト方
向へもアップシフト方向へも最大の速度で変速比が変更
制御される。従って、前記車両走行状態並びに操縦入力
に対して無段変速機の変速比は最大変速速度で変化する
ため、運転者には応答性のよい変速フィーリングが与え
られる。
【0135】次に、或る程度車速Vが増速してからアク
セルペダルの踏込み量を一定に保持し、その結果、車速
Vが一定となる定速走行状態に移行した状態を想定する
と、この時には、前記と同様に、ステップS1,2から
ステップS4を経てステップS6に至り、ステップS6
で最大駆動速度SPMAX が目標駆動速度SPに設定され
る。更に、ステップS8では目標ステップ数PD と現在
ステップ数PA との偏差の絶対値が、この目標駆動速度
SPの絶対値以下でない限り、前記ステップS6で設定
された最大駆動速度SPMAX が目標駆動速度SPにな
る。
【0136】このように、最大駆動速度SPMAX が目標
駆動速度SPに設定されると、この場合には、スロット
ル開度THが一定で車速Vは次第に増加しているから、
図12の演算処理で設定された目標変速比CD は車両減
速比を小さくする所謂アップシフト方向への変速比であ
るため、当該目標変速比CD を達成するための前記目標
ステップ数PD は現在ステップ数PA よりも大きいはず
であるから、前記図6の演算処理のステップ630から
ステップ632に移行する。そして、当該目標駆動速度
SPである最大駆動速度SPMAX に応じた、前記所定時
間ΔT当たりの最小ピッチのパルス信号で、ステップモ
ータ駆動信号をアップシフト方向即ちステップモータの
回転角が大きくなる方向に形成し、このステップモータ
駆動信号が次のステップ636でステップモータ108
に向けて出力される。
【0137】これにより、当該ステップモータ108
は、前記最大駆動速度SPMAX に応じた最大回転速度
(最大角速度)で所定時間ΔT間に最大角回転するた
め、所望する目標変速比CD に向けてアップシフト方向
に最大の速度で変速比が変更制御され、前記車両走行状
態並びに操縦入力に対して無段変速機の変速比は最大変
速速度で変化する。
【0138】やがて、アクセルペダルの踏込み量一定で
車両が定速走行に移行し始めて、前記図12の演算処理
が、図6の演算処理のサンプリング時間毎に実行される
と、前記と同様のフローが繰り返され、結果的に、無段
変速機で達成される変速比は、前記最大駆動速度SP
MAX に設定された目標駆動速度SPに応じたステップモ
ータの回転角及び回転角速度で、次第に目標変速比CD
に近づく。つまりステップモータ108で達成される現
在ステップPA は、当該目標変速比CD を達成する目標
ステップ数PD に近づく。そして、図12の演算処理の
ステップS9で目標ステップ数PD と現在ステップ数P
A との偏差の絶対値が、この目標駆動速度SPの絶対値
以下となると、この目標ステップ数PD と実ステップ数
A との偏差の絶対値が目標駆動速度SPに設定され
る。
【0139】従って、この時点での図12(即ち図6)
の演算処理から次の演算処理までの所定時間(即ちサン
プリング時間ΔT)後に、ステップモータ108の回転
角である現在ステップ数PA が目標ステップ数PD にな
るから、その時点で前記目標変速比CD が達成され、そ
の後、車両は一定の変速比、一定のスロットル開度で定
速走行状態に移行する。
【0140】次に、車両が平坦な路面を走行していて、
前記車速Vが前記所定値V0 を越えている状態で、アク
セルペダルの踏み込みを解除して、前記Dレンジから2
レンジまたはLレンジにシフトポジションを移行し(セ
レクトダウンシフトを行い)、車両全体の減速比として
の変速比を強制的に大きくして、エンジンブレーキを各
駆動輪へのより大きな制動力として作用させた後、この
エンジンブレーキによる車速低減が十分になされたた
め、運転者が、スロットル開度が“0”またはほぼ
“0”の状態で2レンジまたはLレンジからDレンジに
シフトポジションを移行した(セレクトアップシフトを
行った)場合を想定する。
【0141】この時、前記図12の演算処理が図6の演
算処置のサンプリング時間(ΔT)毎に実行されると、
セレクトアップシフト操作直後のサンプリング時にはス
テップS1で制御フラグF≠1と判定されてステップS
2からステップS3に至り、ステップS3で制御フラグ
がセット状態の“1”に設定され、ステップS3からス
テップS5aに至り、セレクトアップシフト操作後の二
回目以降のサンプリング時には、前回のサンプリング時
にステップS11で制御フラグFが“0”に設定されな
い限り、ステップS1で制御フラグF=1と判定されて
ステップS1からステップS5aに至る。
【0142】そして、この場合には、アクセルペダルの
踏み込みが解除されてスロットル開度THが“0”また
はほぼ“0”となるため、ステップS5aでスロットル
開度の検出値THが前記所定値TH1 以下と判定され
て、ステップS5bで比例係数kが“1”より小さい所
定値k0 (例えば0.25)に設定され、ステップS6
で目標駆動速度SPが最大駆動速度SPMAX の例えば1
/4の値に設定される。また、ステップS7で、前記図
10の検索マップから目標変速比CD がDレンジ最小変
速比CDLO に設定され、この目標変速比CD に応じて、
ステップS8で当該目標変速比CD を達成するステップ
モータ108の回転角である目標ステップ数PD が算出
設定され、ステップS9で、目標ステップ数PD と現在
ステップ数PA との偏差の絶対値が、前記目標駆動速度
SPの絶対値以下でない限り、前記ステップS6で設定
された目標駆動速度SPがそのまま目標駆動速度SPに
なる。
【0143】このように、目標駆動速度SPが設定され
ると、この場合には、図12の演算処理で設定された目
標変速比CD を達成するための前記目標ステップ数PD
は現在ステップ数PA よりも大きいはずであるから、前
記図6の演算処理のステップ630からステップ632
に移行する。そして、当該目標駆動速度SPに応じた、
前記所定時間ΔT当たりのパルスピッチが最小ピッチよ
り大きな(例えば最小ピッチの4倍の)パルス信号で、
ステップモータ駆動信号をアップシフト方向即ちステッ
プモータの回転角が大きくなる方向に形成し、このステ
ップモータ駆動信号が次のステップ636でステップモ
ータ108に向けて出力される。
【0144】これにより、当該ステップモータ108
は、前記目標駆動速度SPに応じた回転速度(角速度)
で所定時間ΔT間に回転するため、所望する目標変速比
であるDレンジ最小変速比CDLO に向けてアップシフト
方向に、前記通常走行時の変速速度より小さな速度速度
で変速比が変更制御される。したがって、無段変速機の
変速比は通常走行時の変速速度より小さな速度で緩やか
に変化するため、駆動輪の回転駆動力が緩やかに減少し
て変速ショックが抑制防止される。
【0145】そして、前記図12のステップS9で、目
標ステップ数PD と現在ステップ数PA との偏差の絶対
値がこの目標駆動速度SPの絶対値以下となると、この
目標ステップ数PD と実ステップ数PA との偏差の絶対
値が目標駆動速度SPに設定される。従って、この時点
での図12(即ち図6)の演算処理から次の演算処理ま
での所定時間(即ちサンプリング時間ΔT)後に、ステ
ップモータ108の回転角である現在ステップ数PA
目標ステップ数PD になるから、その時点で、目標変速
比であるDレンジ最小変速比CDLO が達成される。
【0146】次に、2レンジまたはLレンジでアクセル
ペダルを踏み込むことにより、スロットル開度を大きく
してエンジンの回転駆動力を上げ、車両をより大きく加
速した後、所定の車速が得られたため、運転者が、アク
セルペダルの踏み込みを解除してスロットル開度を
“0”またはほぼ“0”とした直後に、2レンジまたは
LレンジからDレンジにシフトポジションを移行した
(セレクトアップシフトを行った)場合を想定する。
【0147】この時、前記図12の演算処理が図6の演
算処置のサンプリング時間(ΔT)毎に実行されると、
前記と同様に、セレクトアップシフト操作直後のサンプ
リング時にはステップS1,S2,S3からステップS
5aに至り、セレクトアップシフト操作後の二回目以降
のサンプリング時には、前回のサンプリング時にステッ
プS11で制御フラグFが“0”に設定されない限り、
ステップS1からステップS5aに至り、スロットル開
度THが“0”またはほぼ“0”であるため、ステップ
S5aで、スロットル開度の検出値THが前記所定値T
1 以下と判定されて、ステップS5bで比例係数kが
“1”より小さい所定値k0 (例えば0.25)に設定
され、ステップS6で目標駆動速度SPが最大駆動速度
SPMAXの例えば1/4の値に設定される。
【0148】以下、前記と同様にして、ステップS9
で、目標ステップ数PD と現在ステップ数PA との偏差
の絶対値が、前記目標駆動速度SPの絶対値以下でない
限り、前記ステップS6で設定された目標駆動速度SP
がそのまま目標駆動速度SPになり、ステップモータ1
08は、前記目標駆動速度SPに応じた回転速度(角速
度)で所定時間ΔT間に回転するため、所望する目標変
速比であるDレンジ最小変速比CDLO に向けてアップシ
フト方向に、前記通常走行時の変速速度より小さな速度
速度で変速比が変更制御される。
【0149】したがって、無段変速機の変速比は通常走
行時の変速速度より小さな速度で緩やかに変化するた
め、駆動輪の回転駆動力が緩やかに減少して変速ショッ
クが抑制防止される。また、この場合には、スロットル
開度が“0”またはほぼ“0”となった直後にセレクト
アップシフト操作が行われるため、エンジンのイナーシ
ャトルクが問題となるが、無段変速機の変速比が通常走
行時の変速速度より小さな速度で緩やかに変化すること
により、各時刻における変速比が徐々に低下するエンジ
ン回転速度に見合った値となって、エンジンのイナーシ
ャトルクに伴う余分な駆動トルクが駆動輪に付与されな
いため、従来のような車両の加速ショック感が抑制防止
される。
【0150】なお、前記作用はスロットル開度が“0”
またはほぼ“0”の状態で2レンジまたはLレンジから
Dレンジにシフトポジションを移行した場合について述
べているが、これ以外のセレクトアップシフトであるL
レンジから2レンジへのシフトポジションの移行であっ
ても、その際のスロットル開度が“0”またはほぼ
“0”である場合は、前記と同様の作用が得られる。
【0151】また、前記所定値TH1 を“0/8”より
大きい例えば“1/8”等に設定することにより、アク
セル開度が“0”またはほぼ“0”よりは大きいが、セ
レクトアップシフト操作による目標変速比の変化量が比
較的大きい場合に、前記と同様の作用が得られるように
することができる。また、坂道の上り下りのように重力
加速度が作用して車速が増減する場合でも、運転者は所
望する車速を得るためにアクセルペダルを踏込んだり足
戻し操作したりするはずであるから、そのような場合の
前記演算処理による作用は、該当するアクセルペダル操
作時と同様かほぼ同様であると考えてよい。
【0152】以上より、前記第一実施例は請求項1,
2,3に係る無段変速機の制御装置を実施化したものと
考えられ、シフトポジションスイッチ304と図12の
演算処理のステップS2とが請求項1,2,3における
セレクトアップシフト検出手段に相当し、以下同様に、
スロットル開度センサ303がアクセル開度検出手段に
相当し、ステップモータ108、図12の演算処理、お
よび図6の演算処理が変速比制御手段に相当し、図12
の演算処理のステップS1,S3〜S6,S9〜S11
が変速速度調整手段に相当し、図6の演算処理と図12
の演算処理のステップS7とが変速比設定手段に相当
し、前記Dレンジ、前記2レンジ、およびLレンジが前
進用走行レンジに相当し、図2の無段変速機構29およ
び図3の油圧制御回路が無段変速機に相当する。また、
ステップモータ108が請求項3のアクチュエータに相
当する。
【0153】次に、本発明の無段変速機の制御装置を実
際の車両に適用した第二実施例を図13〜図14に基づ
いて説明する。この第二実施例の無段変速機の動力伝達
機構は、前記第一実施例の動力伝達機構である図2に示
すものと同等またはほぼ同等であるため、ここでは詳細
な説明を割愛する。
【0154】また、この第二実施例の無段変速機の油圧
制御装置は、前記第一実施例の油圧制御装置である図3
に示すものと同等またはほぼ同等であるため、ここでは
詳細な説明を割愛する。また、この第二実施例の変速比
制御装置に相当するコントローラは、図4に示す前記第
一実施例のマイクロコンピュータからなる変速比制御装
置300と同等またはほぼ同等であるため、ここでは詳
細な説明を割愛する。
【0155】さらに、前記変速比制御装置300により
実行される通常の無段変速機の変速比制御および変速パ
ターン制御は、前記図6のフローチャートに示す基準演
算処理に従って前記第一実施例と同等またはほぼ同等に
実施されるため、ここでは詳細な説明を割愛する。それ
では次に、前述のような無段変速機およびその変速制御
装置を搭載する車両にあって、アクセル開度が小さい場
合のセレクトアップシフト時に、変速ショックや車両の
加速ショック感を抑制防止するためのこの第二実施例の
基本原理について説明する。
【0156】この第二実施例においても、前記第一実施
例の場合と同様に、セレクトアップシフト操作時のアク
セル開度(スロットル開度)が“0”またはほぼ“0”
である場合に、無段変速機の変速比変更制御の変速速度
を小さくすることにより、無段変速機の変速比を緩やか
に低減して、変速ショックや車両の加速ショック感を抑
制防止することを目的とするが、前記第一実施例の場合
と異なりステップモータ108の目標駆動速度SPは一
定の最大駆動速度SPMAX とする。
【0157】そして、セレクトアップシフト操作時のア
クセル開度が“0”またはほぼ“0”であることは、前
記第一実施例と同様に、前記スロットル開度検出値TH
が所定値TH1 (例えば“0/8”)以下であることで
判定し、TH≦TH1 の場合には、無段変速機の変速比
が、セレクトアップシフト操作時における実変速比C P0
(2レンジ最小変速比C2LO または最大変速比CHi)か
ら、セレクトアップシフト操作時の目標変速比CD (D
レンジ最小変速比CDLO または2レンジ最小変速比C
2LO )となるまでの所要時間Δt(通常時は“0”とし
ている)を“0”より大きな値として設定することによ
り、無段変速機の変速比変更制御の変速速度を通常時よ
り小さくすることとした。そして、前記各所要時間Δt
間における各サンプリング時に達成すべき過渡目標変速
比CDBを、サンプリング回数が増える毎に、前記実変速
比CP0から目標変速比CD に向けて減少するように設定
する。
【0158】ここで、セレクトアップシフト操作時にお
ける実変速比CP0と目標変速比CDとの偏差が同じであ
れば、セレクトアップシフト操作時の車速VS が大きい
ほど、セレクトアップシフト操作に伴うエンジン回転速
度の低下量は大きくなるため、エンジン回転速度の収束
に時間がかかる。したがって、変速比CD が前記実変速
比CP0から目標変速比CD に到達するまでの所要時間Δ
tを、セレクトアップシフト操作時の車速VS が大きい
ほど大きく設定し、前述のようにして過渡目標変速比C
DBを設定することにより、各サンプリング時における変
速比がエンジン回転速度に見合った値になるようにす
る。
【0159】具体的には、前記所要時間Δtは、前述の
ようにセレクトアップシフト操作時のスロットル開度T
Hが所定値TH1 以下であれば“0”より大きく設定
し、且つセレクトアップシフト操作時の車速VS が大き
いほど大きく設定するが、前記車速VS が同じであれ
ば、前記セレクトアップシフト操作時における実変速比
P0と目標変速比CD との偏差の絶対値|CP0−CD
が大きいほど大きく設定する必要があるため、この所要
時間Δtを下記の(2)式より算出するものとした。
【0160】 Δt=f(|CP0−CD |)g(VS ) ……(2) ここで、関数fは前記偏差の絶対値|CP0−CD |が大
きいほど大きくなる単調増加関数であり、関数gは前記
車速VS が大きいほど大きくなる単調増加関数である。
また、前記過渡目標変速比CDBを算出設定するための制
御曲線CDBPTN (セレクトアップシフト操作時の車速V
S をパラメータとして、過渡目標変速比CDBと時刻tと
の関係を示す曲線)は、下記の(3)式より算出設定す
るものとした。
【0161】 CDBPTN (t)=CP0−h(Δt,|CP0−CD |) ……(3) ここで、関数hは、前記所要時間Δtおよび前記偏差の
絶対値|CP0−CD |が大きいほど大きくなる単調増加
関数であり、前記偏差の絶対値|CP0−CD |が同じで
あれば、前記制御曲線CDBPTN は例えば図13に示すよ
うな制御マップとして表される。
【0162】この図から分かるように、セレクトアップ
シフト操作時の車速VS がかなり小さい場合には、前記
所要時間Δtがほぼ“0”に設定され、前記車速VS
大きくなるにつれて前記所要時間Δtが大きくなり、セ
レクトアップシフト操作時における実変速比CP0から到
達すべき目標変速比CD まで緩やかに過渡目標変速比C
DBが変化するものとなる。また、いずれの制御曲線C
DBPTN も、前記所要時間Δt以上となる時刻tでは、到
達すべき目標変速比CD が過渡目標変速比CDBに設定さ
れるようになっている。
【0163】そして、セレクトアップシフト操作時であ
ってスロットル開度THが前記所定値TH1 以下である
場合には、各サンプリング時間ΔT毎に、セレクトアッ
プシフト操作時の車速VS に応じて選択された前記制御
曲線CDBPTN から過渡目標変速比CDBを設定する。ここ
で、前記制御曲線CDBPTN は、過渡目標変速比CDBと前
記セレクトアップシフト操作時を“0”とする時刻tと
の関係を示す曲線であり、各サンプリング時の前記時刻
tは、サンプリング回数mとサンプリング時間ΔTとの
積で表される。したがって、各サンプリング毎にこの時
刻t(=m・ΔT)を算出して、算出された各時刻tに
より、前記選択された制御曲線CDBPTNから過渡目標変
速比CDBを設定するものとした。
【0164】このようにして、前記所要時間Δtが経過
するまでは、前述のようにして設定された過渡目標変速
比CDBから目標ステップ数PD を算出することにする
が、スロットル開度THや車速Vが変化して、現時点で
のスロットル開度THおよび車速Vに応じた最新の目標
変速比CD がセレクトアップシフト操作時に設定された
到達すべき目標変速比から変化した場合には、前記最新
の目標変速比CD を到達すべき目標変速比に更新する必
要がある。そのため、各サプリング時におけるスロット
ル開度THおよび車速Vに応じた目標変速比CD の今回
値CD(n)が前回値CD(n-1)に等しくない場合には、サン
プリング回数mを“0”にリセットし、前記今回値C
D(n)を到達すべき目標変速比に更新して時刻t=0から
新たに過渡目標変速比CDBの設定を行うことにした。
【0165】また、前述のように、ステップモータ10
8の目標駆動速度SPは一定の最大駆動速度SPMAX
するが、目標駆動速度SPのみに応じて前記ステップモ
ータ駆動信号を設定してしまうと、その総パルス数で今
回演算処理によるステップモータの到達回転角が決定さ
れてしまい、これにより、検出される現在ステップ数P
A が目標ステップ数PD を越えた値になり(すなわち、
オーバーシュートが発生して)、ハンチングが生じる可
能性がある。そこで、前記第一実施例と同様に、目標ス
テップ数PD と現在ステップ数PA との偏差の絶対値|
D −PA |が目標駆動速度SPの絶対値|SP|以下
である場合には、当該目標ステップ数P D と現在ステッ
プ数PA との偏差の絶対値|PD −PA |を目標駆動速
度SPに設定することにした。
【0166】以上の基本原理に基づいて、車両の走行状
態および車両への操作入力に応じて目標変速比CD を設
定するとともに、セレクトアップシフト操作時であって
アクセル開度が小さい場合には、この目標変速比CD
到達するまでの所要時間Δtとこの所要時間Δt間での
各サンプリング時の過渡目標変速比CDBとを設定するた
めの演算処理を図14に示す。
【0167】この演算処理は、前記無段変速機の制御装
置であるマイクロコンピュータ300で、所定時間(Δ
T)毎のタイマ割込みによって実行される図6の変速比
制御の演算処理のうち、前記変速パターン検索ステップ
626,627,628,640(実質的には、Dレン
ジ変速パターン検索ステップ626および2レンジ変速
パターン検索ステップ627のみである)のマイナプロ
グラムとして実行される。また、この図14の演算処理
において、制御フラグFは、2レンジからDレンジから
2への、またはLレンジから2レンジもしくはDレンジ
へのセレクトアップシフト操作時であることを示し、制
御フラグFが“1”のセット状態でセレクトアップシフ
ト操作時であることを示し、“0”のリセット状態でセ
レクトアップシフト操作時でないことを示す。また、図
中の制御フラグのセット・リセットでは、その都度、前
記RAM315への記憶更新が同時に実行される。
【0168】この図14の演算処理では、まず、ステッ
プS21で、前記図6の演算処理のステップ508で読
込まれたスロットル開度THと、ステップ510で読込
まれた車速Vとを用いて、前記図10の検索マップから
目標変速比の今回値CD(n)を検索する。次に、ステップ
S22に移行して、制御フラグFが“1”のセット状態
でないか否か判定し、当該制御フラグFが“1”のセッ
ト状態でなければステップS23に移行して、そうでな
ければつまり当該制御フラグFが“1”のセット状態で
あればステップS26に移行する。
【0169】前記ステップS23では、シフトポジショ
ンスイッチ304による前回サーチ時と今回サーチ時の
シフトポジションより、シフトポジションが2レンジか
らDレンジへ、Lレンジから2レンジへ、またはLレン
ジからDレンジへ変更されたセレクトアップシフト操作
時であるか否かを判定し、当該セレクトアップシフト操
作時である場合にはステップS24aに移行し、そうで
なければステップS25に移行する。
【0170】前記ステップS24aでは、制御フラグF
を“1”のセット状態としてから、ステップS24bに
移行する。前記ステップS24bでは、前記図6の演算
処理のステップ508で読込まれたスロットル開度検出
値THが前記所定値TH1 以下であるか否か判定し、ス
ロットル開度検出値THが前記所定値TH1 以下であれ
ばステップS26に移行し、そうでないつまりTH>T
1 であればステップS25に移行する。
【0171】前記ステップS26では、RAM315に
記憶されている目標変速比の前回値CD(n-1)を読み込
む。次に、ステップS27に移行して前記ステップS2
1で検索された目標変速比の今回値CD(n)と、前記ステ
ップS26で読込まれた目標変速比の前回値CD(n- 1)
が異なる値であるか否か判定して、前記今回値CD(n)
前記前回値CD(n-1)とが異なる値である場合にはステッ
プS28に移行し、そうでない場合にはステップS32
に移行する。
【0172】前記ステップS28では、サンプリング回
数mを“0”にリセットする。次に、ステップS29に
移行して、前記図6の演算処理のステップ513aで算
出された現在の変速比CP を、セレクトアップシフト時
の実変速比CP0に設定する。次に、ステップS30に移
行して、前記図6の演算処理のステップ510で読込ま
れた車速V(=VS )と、前記ステップS21で読込ま
れた目標変速比の今回値CD(n)と、前記ステップS29
で設定されたセレクトアップシフト操作時における実変
速比CP0とから、前記(2)式に従って前記所要時間Δ
tを算出し、これをRAM315に記憶する。
【0173】次に、ステップS31に移行して、前記ス
テップS30で算出された所要時間Δtと、前記目標変
速比の今回値CD(n)と、前記セレクトアップシフト操作
時における実変速比CP0とから、前記(3)式に従って
前記制御曲線CDBPTN を設定し、これをRAM315に
記憶してから、前記ステップS32に移行する。前記ス
テップS32では、サンプリング回数mを“1”だけ増
やした値に設定する。
【0174】次に、ステップS33aに移行して、前記
ステップS32で設定されたサンプリング回数mとこの
演算処理のサンプリング時間ΔTとから、前記時刻t
(=m・ΔT)を算出する。次に、ステップS33bに
移行して、前記制御曲線CDBPTN がRAM315に記憶
されているか否かを判定し、前記制御曲線CDBPTN がR
AM315に有ればステップS34に移行し、なければ
前記ステップS25に移行する。
【0175】前記ステップS34では、前記ステップS
33aで算出された時刻tにより、前記ステップS31
でRAM315に記憶された最新の制御曲線CDBPTN
ら、過渡目標変速比CDBを設定する。次に、ステップS
35に移行して、前記ステップS33aで算出された時
刻tが、前記ステップS30でRAM315に記憶され
た最新の所要時間Δt以上であるか否か判定し、前記時
刻tが前記所要時間Δt以上であればステップS36に
移行し、そうでなければ、つまり前記時刻tが前記所要
時間Δtより小さい値であればステップS39に移行す
る。
【0176】前記ステップS36では、制御フラグFを
“0”にリセットする。次に、ステップS37に移行し
て、サンプリング回数mを“0”にリセットする。次
に、ステップS38に移行して、前記ステップS31で
RAM315に記憶された最新の制御曲線CDBPTN をク
リアしてから、前記ステップS39に移行する。
【0177】前記ステップS39では、前記ステップS
34で設定された過渡目標変速比C DBに所定の比例定数
Bを乗じて、ステップモータ108が当該過渡目標変速
比C DBを達成するための目標ステップ数PD を算出す
る。次に、ステップS40に移行して、前記ステップS
21で検索された目標変速比の今回値CD(n)を目標変速
比の前回値CD(n-1)としてRAM315に更新記憶して
から、ステップS41に移行する。
【0178】一方、前記ステップS25では、前記ステ
ップS21で検索された目標変速比の今回値CD(n)に所
定の比例定数Bを乗じて、ステップモータ108が当該
目標変速比CD(n)を達成するための目標ステップ数PD
を算出してから、前記ステップS41に移行する。前記
ステップS41では、目標駆動速度SPを最大駆動速度
MAX に設定する。
【0179】次に、ステップS42に移行して、前記ス
テップS25またはステップS39で算出された目標ス
テップ数PD と前記図6の演算処理のステップ511b
で算出された現在ステップ数PA との偏差の絶対値|P
D −PA |が、目標駆動速度SPの絶対値|SP|以下
であるか否かを判定し、|PD −PA |≦|SP|であ
る場合にはステップS43に移行し、そうでないつまり
|PD −PA |>|SP|である場合にはメインプログ
ラムに復帰する。
【0180】前記ステップS43では、目標駆動速度S
Pを、前記目標ステップ数PD と現在ステップ数PA
の偏差の絶対値|PD −PA |に設定してから、メイン
プログラムに復帰する。次に、前記図14の演算処理の
作用を説明する。まず、車両が平坦な路面を走行してい
て、シフトポジションはDレンジに維持されており、車
速Vが前記所定値V0 を越えている状態で、アクセルペ
ダルの踏込み量を増大しながら、つまりアクセルペダル
を踏込みながら車速Vを増速している状態では、ステッ
プS21で検索された目標変速比CD(n)に応じてステッ
プS25で目標ステップ数PD が算出され、この目標ス
テップ数PD と現在ステップ数PA との偏差の絶対値
が、ステップS41で最大駆動速度SPMAX に設定され
た目標駆動速度SPの絶対値以下でない限り、最大駆動
速度SPMAX が目標駆動速度SPとなる。すなわち、こ
の場合には、前記第一実施例と同じ作用となるため詳細
な説明を割愛する。
【0181】また、或る程度車速Vが増速してからアク
セルペダルの踏込み量を一定に保持し、その結果、車速
Vが一定となる定速走行状態に移行した状態において
も、前記と同様に、前記第一実施例と同じ作用となるた
め詳細な説明を割愛する。次に、車両が平坦な路面を走
行していて、前記車速Vが前記所定値V0 を越えている
状態で、アクセルペダルの踏み込みを解除して、前記D
レンジから2レンジまたはLレンジにシフトポジション
を移行し(セレクトダウンシフトを行い)、車両全体の
減速比としての変速比を強制的に大きくして、エンジン
ブレーキを各駆動輪へのより大きな制動力として作用さ
せた後、このエンジンブレーキによる車速低減が十分に
なされたため、運転者が、スロットル開度が“0”また
はほぼ“0”の状態で2レンジまたはLレンジからDレ
ンジにシフトポジションを移行した(セレクトアップシ
フトを行った)場合を想定する。
【0182】この時、前記図14の演算処理が図6の演
算処置のサンプリング時間(ΔT)毎に実行されると、
ステップS21で、前記図10の検索マップから目標変
速比CD がDレンジ最小変速比CDLO に設定され、セレ
クトアップシフト操作直後のサンプリング時にはステッ
プS22で制御フラグF≠1と判定されてステップS2
3からステップS24aに至り、ステップS24aで制
御フラグがセット状態の“1”に設定されてステップS
24bに至り、ステップS24bでTH≦TH 1 と判定
されてステップS26に至る。次に、ステップS27で
D(n)≠CD(n- 1)と判定されて、ステップS28でサン
プリング回数mが“0”に、ステップS29でこの時点
での現在の変速比CP が前記実変速比CP0にそれぞれ設
定され、この時点での車速V(すなわちセレクトアップ
シフト操作時の車速VS )と、前記実変速比CP0と目標
変速比CD との偏差の絶対値|CP0−CD |とに応じ
て、ステップS30で前記所要時間Δtが算出され、ス
テップS31で前記制御曲線CDBPTN が設定され、設定
された制御曲線CDBPTN に従って、ステップS34で過
渡目標変速比CDBが設定される。
【0183】セレクトアップシフト操作後の二回目以降
のサンプリング時には、前回のサンプリング時にステッ
プS36で制御フラグFが“0”に設定されない限り、
ステップS22で制御フラグF=1と判定されてステッ
プS22からステップS26に至り、目標変速比の今回
値CD(n)が前回値CD(n-1)から変化しない限りステップ
S27からステップS32に至って、セレクトアップシ
フト操作直後のサンプリング時にステップS31で設定
された制御曲線CDBPTN に従って、ステップS34で過
渡目標変速比CDBが設定される。
【0184】したがって、この場合には、セレクトアッ
プシフト操作時からの経過時間に相当する時刻tが前記
所要時間Δt以上となって目標変速比の今回値C
D(n)(2レンジ最小変速比C2LO )が達成されるまで
は、サンプリング時間ΔT毎に、セレクトアップシフト
操作直後に設定された制御曲線CDBPTN から過渡目標変
速比C DBが設定され、ステップS39で、刻々と緩やか
に小さくなるように変化する過渡目標変速比CDBを達成
するための目標ステップ数PD (ステップモータ108
の回転角)が算出設定される。そして、ステップS42
で、目標ステップ数PDと現在ステップ数PA との偏差
の絶対値が、前記目標駆動速度SPの絶対値以下でない
限り、前記ステップS41で設定された最大駆動速度S
MAX が目標駆動速度SPになる。
【0185】このように、目標駆動速度SPが設定され
ると、この場合には、図14の演算処理で設定された過
渡目標変速比CDBを達成するための前記目標ステップ数
Dは現在ステップ数PA よりも大きいはずであるか
ら、前記図6の演算処理のステップ630からステップ
632に移行する。そして、当該目標駆動速度SPに応
じた、前記所定時間ΔT当たりのパルスピッチが最小ピ
ッチより大きなパルス信号で、ステップモータ駆動信号
をアップシフト方向即ちステップモータの回転角が大き
くなる方向に形成し、このステップモータ駆動信号が次
のステップ636でステップモータ108に向けて出力
される。
【0186】これにより、当該ステップモータ108
は、前記目標駆動速度SPに応じた回転速度(角速度)
で所定時間ΔT間に回転するため、各サンプリング時
に、設定された過渡目標変速比CDBに向けてアップシフ
ト方向に変速比が変更制御される。そして、前記図14
のステップS42で、目標ステップ数PD と現在ステッ
プ数PA との偏差の絶対値がこの目標駆動速度SPの絶
対値以下となると、この目標ステップ数PD と実ステッ
プ数PA との偏差の絶対値が目標駆動速度SPに設定さ
れる。従って、この時点での図14(即ち図6)の演算
処理から次の演算処理までの所定時間(即ちサンプリン
グ時間ΔT)後に、ステップモータ108の回転角であ
る現在ステップ数PA が目標ステップ数PD になるか
ら、その時点で対応する過渡目標変速比CDBが達成され
る。
【0187】やがて、前記時刻tが前記所要時間Δt以
上となって目標変速比の今回値CD( n)(2レンジ最小変
速比C2LO )が達成されると、ステップS35からステ
ップS36,S37を経てステップS38に至り、RA
M315に記憶されている制御曲線CDBPTN がクリアさ
れてからステップS39に移行し、前記と同様に、目標
ステップ数PD と現在ステップ数PA との偏差の絶対値
が、前記目標駆動速度SPの絶対値以下でない限り、前
記ステップS41で設定された最大駆動速度SPMAX
目標駆動速度SPになり、前記と同様にして、ステップ
モータ駆動信号が形成出力される。
【0188】したがって、無段変速比の変速比は、セレ
クトアップシフト操作直後のサンプリング時から前記所
要時間Δt(セレクトアップシフト操作時の車速VS
大きいほど長い時間)の経過後に、目標変速比CD であ
るDレンジ最小変速比CDLOに設定され、通常の変速速
度よりも小さな変速速度で変更制御される。これによ
り、無段変速機の変速比は通常走行時よりも小さな変速
速度で緩やかに変化するため、駆動輪の回転駆動力が緩
やかに減少して変速ショックが抑制防止される。
【0189】なお、前記時刻tが前記所要時間Δt以上
となる前に、スロットル開度THがセレクトアップシフ
ト操作時の値から変化して、現時点でのスロットル開度
THおよび車速Vに応じた最新の目標変速比CD がセレ
クトアップシフト操作時に設定された到達すべき目標変
速比から変化した直後のサンプリング時には、前述のセ
レクトアップシフト操作直後のサンプリング時と同様
に、ステップS27からステップS28に移行してサン
プリング回数mを“0”にリセットし、ステップS29
でこの時点での現在の変速比CP が前記実変速比CP0
設定され、この時点での車速V、および設定された実変
速比CP0と目標変速比CD との偏差の絶対値|CP0−C
D |とに応じて、ステップS30で新たな前記所要時間
Δtが算出され、ステップS31で新たな制御曲線C
DBPTN が設定される。そして、ステップS34では、こ
の新たな制御曲線CDBPTN から過渡目標変速比CDBの設
定が行われる。
【0190】次に、2レンジまたはLレンジでアクセル
ペダルを踏み込むことにより、スロットル開度を大きく
してエンジンの回転駆動力を上げ、車両をより大きく加
速した後、所定の車速が得られたため、運転者が、アク
セルペダルの踏み込みを解除してスロットル開度を
“0”またはほぼ“0”とした直後に、2レンジまたは
LレンジからDレンジにシフトポジションを移行した
(セレクトアップシフトを行った)場合を想定する。
【0191】この時、前記図12の演算処理が図6の演
算処置のサンプリング時間(ΔT)毎に実行されると、
前記と同様にして、セレクトアップシフト操作時からの
経過時間に相当する時刻tが前記所要時間Δt以上とな
って目標変速比の今回値CD( n)(2レンジ最小変速比C
2LO )が達成されるまでは、サンプリング時間ΔT毎
に、セレクトアップシフト操作直後に設定された制御曲
線CDBPTN から過渡目標変速比CDBが設定され、ステッ
プS39で、刻々と緩やかに小さくなるように変化する
過渡目標変速比CDBを達成するための目標ステップ数P
D (ステップモータ108の回転角)が算出設定され
る。そして、ステップS42で、目標ステップ数PD
現在ステップ数PA との偏差の絶対値が、前記目標駆動
速度SPの絶対値以下でない限り、前記ステップS41
で設定された最大駆動速度SPMAX が目標駆動速度SP
になる。
【0192】そして、前記と同様にして、ステップ63
2に移行し、当該目標駆動速度SPに応じた、前記所定
時間ΔT当たりのパルスピッチが最小ピッチより大きな
パルス信号で、ステップモータ駆動信号をアップシフト
方向即ちステップモータの回転角が大きくなる方向に形
成し、このステップモータ駆動信号が次のステップ63
6でステップモータ108に向けて出力される。
【0193】これにより、当該ステップモータ108
は、前記目標駆動速度SPに応じた回転速度(角速度)
で所定時間ΔT間に回転するため、各サンプリング時
に、設定された過渡目標変速比CDBに向けてアップシフ
ト方向に変速比が変更制御される。以下、前記と同様に
して、ステップS42で、目標ステップ数PD と現在ス
テップ数PA との偏差の絶対値がこの目標駆動速度SP
の絶対値以下となると、この目標ステップ数PD と実ス
テップ数PA との偏差の絶対値が目標駆動速度SPに設
定される。従って、この時点での図14(即ち図6)の
演算処理から次の演算処理までの所定時間(即ちサンプ
リング時間ΔT)後に、ステップモータ108の回転角
である現在ステップ数PA が目標ステップ数PD になる
から、その時点で対応する過渡目標変速比CDBが達成さ
れる。
【0194】やがて、前記時刻tが前記所要時間Δt以
上となって目標変速比の今回値CD( n)(2レンジ最小変
速比C2LO )が達成されると、ステップS35からステ
ップS36,S37を経てステップS38に至り、RA
M315に記憶されている制御曲線CDBPTN がクリアさ
れてからステップS39に移行し、前記と同様に、目標
ステップ数PD と現在ステップ数PA との偏差の絶対値
が、前記目標駆動速度SPの絶対値以下でない限り、前
記ステップS41で設定された最大駆動速度SPMAX
目標駆動速度SPになり、前記と同様にして、ステップ
モータ駆動信号が形成出力される。
【0195】したがって、無段変速比の変速比は、セレ
クトアップシフト操作直後のサンプリング時から前記所
要時間Δt(セレクトアップシフト操作時の車速VS
大きいほど長い時間)の経過後に、目標変速比CD であ
るDレンジ最小変速比CDLOに設定され、通常の変速速
度よりも小さな変速速度で変更制御される。これによ
り、無段変速機の変速比は通常走行時よりも小さな変速
速度で緩やかに変化するため、駆動輪の回転駆動力が緩
やかに減少して変速ショックが抑制防止される。
【0196】また、この第二実施例では、セレクトダン
シフト操作時の車速VS が大きいほど、目標変速比C
D(n)となるまでの所要時間Δtが大きな値に設定される
ため、無段変速機の変速比は、セレクトダンシフト操作
時の車速VS が大きいほど小さな速度で変化することに
なる。すなわち、無段変速機の変速比は、セレクトアッ
プシフト操作時の車速VS が大きいほどより緩やかに小
さくなる。これにより、セレクトアップシフト操作時の
車速VS が大きいほど遅いエンジン回転速度の収束速度
に変速速度が合わされるため、各サンプリング時におけ
る変速比がエンジン回転速度に見合った値になる。
【0197】したがって、この場合には、スロットル開
度が“0”またはほぼ“0”となった直後にセレクトア
ップシフト操作が行われるため、エンジンのイナーシャ
トルクが問題となるが、前述のように、各時刻における
変速比が徐々に低下するエンジン回転速度に見合った値
となって、エンジンのイナーシャトルクに伴う余分な駆
動トルクが駆動輪に付与されないため、従来のような車
両の加速ショック感が抑制防止される。
【0198】なお、前記時刻tが前記所要時間Δt以上
となる前に、スロットル開度THがセレクトアップシフ
ト操作時の値から変化して、現時点でのスロットル開度
THおよび車速Vに応じた最新の目標変速比CD がセレ
クトアップシフト操作時に設定された到達すべき目標変
速比から変化した直後のサンプリング時には、前述のセ
レクトアップシフト操作直後のサンプリング時と同様
に、ステップS27からステップS28に移行してサン
プリング回数mを“0”にリセットし、ステップS29
でこの時点での現在の変速比CP が前記実変速比CP0
設定され、この時点での車速V、および設定された実変
速比CP0と目標変速比CD との偏差の絶対値|CP0−C
D |とに応じて、ステップS30で新たな前記所要時間
Δtが算出され、ステップS31で新たな制御曲線C
DBPTN が設定される。そして、ステップS34では、こ
の新たな制御曲線CDBPTN から過渡目標変速比CDBの設
定が行われる。
【0199】なお、前記作用はスロットル開度が“0”
またはほぼ“0”の状態で2レンジまたはLレンジから
Dレンジにシフトポジションを移行した場合について述
べているが、これ以外のセレクトアップシフトであるL
レンジから2レンジへのシフトポジションの移行であっ
ても、その際のスロットル開度が“0”またはほぼ
“0”である場合は、前記と同様の作用が得られる。
【0200】また、前記所定値TH1 を“0/8”より
大きい例えば“1/8”等に設定することにより、アク
セル開度が“0”またはほぼ“0”よりは大きいが、セ
レクトアップシフト操作による目標変速比の変化量が比
較的大きい場合に、前記と同様の作用が得られるように
することができる。
【0201】また、坂道の上り下りのように重力加速度
が作用して車速が増減する場合でも、運転者は所望する
車速を得るためにアクセルペダルを踏込んだり足戻し操
作したりするはずであるから、そのような場合の前記演
算処理による作用は、該当するアクセルペダル操作時と
同様かほぼ同様であると考えてよい。以上より、前記第
二実施例は請求項1,2,4に係る無段変速機の制御装
置を実施化したものと考えられ、シフトポジションスイ
ッチ304と図14の演算処理のステップS23とが請
求項1,2,4におけるセレクトアップシフト検出手段
に相当し、以下同様に、スロットル開度センサ303が
アクセル開度検出手段に相当し、ステップモータ10
8、図14の演算処理、および図6の演算処理が変速比
制御手段に相当し、図14の演算処理のステップS2
2,S24,S26〜S43が変速速度調整手段に相当
し、図6の演算処理と図14の演算処理のステップS2
1とが変速比設定手段に相当し、前記Dレンジ、2レン
ジ、およびLレンジが前進用走行レンジに相当し、図2
の無段変速機構29および図3の油圧制御回路が無段変
速機に相当する。
【0202】また、前記各実施例では、アクセル開度を
スロットル開度310からの検出値THによって検出し
ているが、請求項1〜4のアクセル開度検出手段として
は、アクセルペダルの踏込み量をアクセル開度として検
出するものであってもよい。また、上記各実施例におい
てはモータ駆動回路はクローズドループで形成されてい
るが、モータ駆動回路をオープンループに形成すること
も可能である。
【0203】また、上記各実施例においては、無段変速
機を油圧制御装置によって制御するようになされている
が、これに限らず、圧縮率の少ない流体であれば任意の
作動流体を適用することができる。なお、上記各実施例
は、本出願人が先に提案した特開昭61−105353
号公報に記載される無段変速機の制御装置を基体とした
ものであるが、本発明はこれ以外のベルト式無段変速機
に広く展開可能であることは言うまでもない。
【0204】また、ベルト式無段変速機に限らず、特開
平4−78369号公報や特開平5−39847号公報
に記載されるようなトロイダル式の無段変速機にも展開
可能であることも言うまでもない。また、前記各実施例
では、変速比制御のためのコントローラをマイクロコン
ピュータで構築したものについてのみ詳述したが、これ
に限定されるものではなく、演算回路等の電子回路を組
み合わせて構成してもよいことは言うまでもない。
【0205】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1〜4の無
段変速機の制御装置によれば、セレクトアップシフト操
作時には、セレクトアップシフト操作時のアクセル開度
検出値に応じて、例えば請求項2のように、アクセル開
度検出値が所定値以下である場合に、無段変速機の変速
比変更制御の変速速度が通常時より小さくなるように調
整することにより、アクセル開度が“0”またはほぼ
“0”の場合のように小さい状態でのセレクトアップシ
フト操作時に、無段変速機の変速比が緩やかに小さくな
るように制御される。
【0206】これにより、大きな変速比変化が緩やかに
行われるため、駆動輪の回転駆動力が緩やかに低下して
変速ショックが抑制防止される。また、2レンジまたは
Lレンジでの加速走行からDレンジでのコースト走行へ
の移行時のように、アクセル開度を“0”またはほぼ
“0”として直ぐにセレクトアップシフトを行う場合で
あっても、エンジンのイナーシャトルクに伴う余分な駆
動トルクが駆動輪に付与されないため、車両の加速ショ
ック感が抑制防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1〜4の無段変速機の制御装置の基本構
成図である。
【図2】無段変速機の動力伝達機構の一例を示す構成図
である。
【図3】無段変速機の油圧制御装置の一例を示す構成図
である。
【図4】無段変速機の変速制御装置に相当するコントロ
ーラの一例を示す構成図である。
【図5】変速比とステップモータのステップ位置との対
応を表すグラフである。
【図6】図4のコントローラで実行される通常の無段変
速機の変速比制御の演算処理の一例を示すフローチャー
トである。
【図7】エンジン回転数とエンジントルクとの対応を表
すグラフである。
【図8】変速比とライン圧との対応を示すグラフであ
る。
【図9】ロックアップ車速を表すグラフである。
【図10】図6の演算処理による変速パターンの説明図
である。
【図11】変速操作機構および変速制御弁の動作説明図
である。
【図12】請求項1〜3の無段変速機の制御装置に相当
する第一実施例において、図6の演算処理のマイナプロ
グラムとして実行される演算処理を示すフローチャート
である。
【図13】請求項1,2,4の無段変速機の制御装置に
相当する第二実施例において、過渡目標変速比CDBを算
出設定するための制御曲線CDBPTN の一例を示すグラフ
である。
【図14】請求項1,2,4の無段変速機の制御装置に
相当する第二実施例において、図6の演算処理のマイナ
プログラムとして実行される演算処理を示すフローチャ
ートである。
【符号の説明】
16 駆動プーリ 18 固定円錐部材 20 駆動プーリシリンダ室 22 可動円錐部材 24 Vベルト 26 従動プーリ 29 無段変速機構(無段変速機) 30 固定円錐部材 32 従動プーリシリンダ室 34 可動円錐部材 106 変速制御弁 108 ステップモータ(アクチュエータ) 112 変速操作機構 300 変速制御装置(マイクロコンピュータ) 301 エンジン回転速度センサ 302 車速センサ 303 スロットル開度センサ(アクセル開度検出手
段) 304 シフトポジションスイッチ(セレクトアップシ
フト検出手段) 317 モータ駆動回路 318 ロータリエンコーダ

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 変速シフトポジションに最小変速比が異
    なる二つ以上の前進用走行レンジを備え、前記変速シフ
    トポジションに選択された前進用走行レンジの変速比制
    御領域で無段変速機の目標変速比を設定する変速比設定
    手段を備えるとともに、前記変速比設定手段で設定され
    た目標変速比に基づいて、無段変速機の変速比を変更制
    御する変速比制御手段を備えた無段変速機の制御装置に
    おいて、 前記変速シフトポジションが最小変速比のより大きい前
    進用走行レンジから最小変速比のより小さい前進用走行
    レンジへ変更されるセレクトアップシフトを検出するセ
    レクトアップシフト検出手段と、アクセル開度を検出す
    るアクセル開度検出手段とを備えるとともに、前記変速
    比制御手段は、前記セレクトアップシフト検出手段によ
    るセレクトアップシフト検出時に、前記アクセル開度検
    出手段からのアクセル開度検出値に基づいて、無段変速
    機の変速比変更制御の変速速度を調整する変速速度調整
    手段を備えたことを特徴とする無段変速機の制御装置。
  2. 【請求項2】 前記変速速度調整手段は、前記セレクト
    アップシフト検出手段によるセレクトアップシフト検出
    時で、前記アクセル開度検出手段からのアクセル開度検
    出値が所定値以下である場合に、無段変速機の変速比変
    更制御の変速速度を通常時より小さく調整するものであ
    ることを特徴とする請求項1記載の無段変速機の制御装
    置。
  3. 【請求項3】 前記変速比制御手段はアクチュエータを
    備えたものであり、前記変速速度調整手段は、前記セレ
    クトアップシフト検出手段によるセレクトアップシフト
    検出時に、前記アクチュエータの駆動速度を変化させる
    ことにより無段変速機の変速比変更制御の変速速度を調
    整するものであることを特徴とする請求項1または2に
    記載の無段変速機の制御装置。
  4. 【請求項4】 前記変速速度調整手段は、前記セレクト
    アップシフト検出手段によるセレクトアップシフト検出
    時に、前記変速比設定手段で設定される目標変速比に到
    達するまでの所要時間を変化させ、当該所要時間内にお
    ける変速比を、当該セレクトアップシフト検出時の実変
    速比と前記目標変速比の設定値との間で変化させること
    により無段変速機の変速比変更制御の変速速度を調整す
    るものであることを特徴とする請求項1または2に記載
    の無段変速機の制御装置。
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