JPH07292480A - 塗装性と耐食性に優れた表面処理鋼板およびその製造方法 - Google Patents

塗装性と耐食性に優れた表面処理鋼板およびその製造方法

Info

Publication number
JPH07292480A
JPH07292480A JP8993894A JP8993894A JPH07292480A JP H07292480 A JPH07292480 A JP H07292480A JP 8993894 A JP8993894 A JP 8993894A JP 8993894 A JP8993894 A JP 8993894A JP H07292480 A JPH07292480 A JP H07292480A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel sheet
corrosion resistance
plating
group
water
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP8993894A
Other languages
English (en)
Inventor
Masaki Abe
雅樹 阿部
Satoshi Ando
聡 安藤
Takayuki Urakawa
隆之 浦川
Toyofumi Watanabe
豊文 渡辺
Yuzo Yamamoto
裕三 山本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kao Corp
JFE Engineering Corp
Original Assignee
Kao Corp
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kao Corp, NKK Corp, Nippon Kokan Ltd filed Critical Kao Corp
Priority to JP8993894A priority Critical patent/JPH07292480A/ja
Publication of JPH07292480A publication Critical patent/JPH07292480A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Electroplating Methods And Accessories (AREA)
  • Chemical Treatment Of Metals (AREA)
  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】鋼板の両面にCr含有率が1〜25重量%で、
めっき量が5〜40g/m2 のZn−Cr複合めっき層
を形成する。さらに、これらZn−Cr複合めっき層の
表面上に付着量が1〜500mg/m2 の水溶性高分子
層を形成する。これら高分子層のうち少なくとも一方の
表面上に、付着量0.5〜4g/m2 のリン酸塩皮膜を
形成し、表面処理鋼板を得る。 【効果】塗装性および耐食性に優れしかも低コストであ
り、自動車車体として好適な表面処理鋼板が提供され
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車用として好適な
塗装性と耐食性に優れた表面処理鋼板およびその製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】自動
車車体の耐食性向上のためには、塗装面、車体設計面で
も種々の対策がなされているが、長期防錆に対する信頼
性等の面から防錆鋼板を使用するのが現状では主流とな
っている。一般に防錆鋼板の中で最も多用されているの
は亜鉛めっき鋼板および合金化亜鉛めっき鋼板であり、
低コスト化および高耐食化を両立し得る薄目付高耐食鋼
板を開発すべく研究が行われている。
【0003】このような特性を得ることができる最も有
力な皮膜系として、例えば、特公平5−34436号、
特公平2−51996号、特開昭64−55397号、
特開平3−240994号などの公報に開示されたZn
−Cr複合めっきが挙げられる。これらのZn−Cr複
合めっきは、皮膜中に存在するCrによる腐食の抑制効
果が顕著であり、非常に優れた耐食性を有する。また、
不動態化に至らず比較的卑な電位を保持することから、
いわゆる犠牲防食作用も長期にわたり有効であり、地鉄
が露出するような状況下でも耐食性に優れる。
【0004】しかしながら、鋼板の合わせ部のような環
境下では、Zn−Cr複合めっきをもってしても、厚目
付溶融めっき鋼板より耐食性が劣る傾向にある。自動車
には構造上合わせ部は必ず存在し、実車の腐食状況を観
察すると、この合わせ部の腐食が最も激しい。合わせ部
での腐食が激しい要因については十分明らかではない
が、リン酸塩皮膜や電着塗装のつき回りが不十分である
ことや、比較的水分がたまりやすく、かつ乾燥過程では
合わせ部内が不均一に乾燥することなどが材料の腐食環
境をより厳しくしているものと考えられる。上記Zn−
Cr複合めっき鋼板は、通常の平板における暴露環境等
での耐食性は良好であるにもかかわらず、自動車防錆鋼
板として非常に重要な特性である合わせ部の耐食性は未
だ十分とは言えない。
【0005】Zn−Cr複合めっきの耐食性を高める目
的で、例えば特開平1−177386号公報には、めっ
き上層にクロメート処理を施した技術が開示されてい
る。この技術は、耐食性向上を目的としており、上層皮
膜が有効に作用することでその効果が期待される。
【0006】しかしながら、クロメート皮膜は不活性で
あるため、化成処理工程で健全なリン酸塩処理結晶が形
成されない。その結果、塗装密着性が十分ではなく、こ
れに起因して塗装後の耐食性が通常の防錆鋼板に比較し
て劣る(例えば走行中の跳ね石などによる塗装傷が原因
として生じる自動車の外面錆発生しやすいこと)傾向が
ある。
【0007】また、クロメート皮膜の上層に有機樹脂層
を被覆すれば、樹脂塗布に伴う有機溶剤の環境への影
響、およびロールコーターなどの付帯設備に起因するコ
スト増などのデメリットが大きい。さらに、リン酸塩処
理結晶が形成されない点ではクロメート皮膜と同じであ
り、塗膜密着性不良、塗装後外観不良などの要因から、
自動車の外面側への適用が困難であるのが現状である。
【0008】これら以外に、Zn−Crめっきの上層に
被覆処理を行う技術として、特開平4−88196号公
報が挙げられる。これによれば、Zn−Crめっきを含
むZn系合金めっきの表面にリン酸化物などの酸化物を
被覆することにより、プレス性、化成処理性が向上する
ことができるとある。しかしながら、この技術に示され
たリン酸化物の付着量は1〜500mg/m2 と微量で
あり、耐食性の向上効果が十分であるとはいえない。
【0009】この発明はかかる事情に鑑みてなされたも
のであって、塗装性および耐食性に優れしかも低コスト
であり、自動車車体として好適な表面処理鋼板およびそ
の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段および作用】本発明者らは
上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、鋼板上にZn
−Cr系複合めっき層を形成し、その表面に特定の水溶
性高分子層を形成し、そらにその表面に適当量のリン酸
塩皮膜を形成することにより、優れた耐食性と塗装性と
を兼備した自動車車体として好適な表面処理鋼板が得ら
れることを見出した。
【0011】本発明はこのような知見に基づいて完成さ
れたものであり、第1に、鋼板と、鋼板の両面に設けら
れ、Cr含有率が1〜25重量%で、めっき量が5〜4
0g/m2 のZn−Cr複合めっき層と、これらめっき
層の表面上に設けられた付着量が1〜500mg/m2
の水溶性高分子層と、これら高分子層のうち少なくとも
一方の表面上に設けられた0.5〜4g/m2 のリン酸
塩皮膜と、を具備してなる塗装性と耐食性に優れた表面
処理鋼板を提供するものである。
【0012】また、第2に、鋼板と、鋼板の両面に設け
られ、Cr含有率が1〜25重量%で、かつFe、Ni
およびCoのうちの1種以上を0.01〜3重量%含有
し、めっき量が5〜40g/m2 のZn−Cr複合めっ
き層と、これらめっき層の表面上に設けられた付着量が
1〜500mg/m2 の水溶性高分子層と、これら高分
子層のうち少なくとも一方の表面上に設けられた0.5
〜4g/m2 のリン酸塩皮膜と、を具備してなる塗装性
と耐食性に優れた表面処理鋼板を提供するものである。
【0013】第3に、電気めっき法により鋼板の両面に
Zn−Cr系めっき皮膜を形成した後、水溶性高分子を
含む水溶液を鋼板にスプレーし、または該水溶液に鋼板
を浸漬して水溶性高分子層を形成し、引き続き、塗油・
巻取を経ることなく、スプレーまたは浸漬方式のリン酸
塩処理を行う、塗装性と耐食性に優れた表面処理鋼板の
製造方法を提供するものである。
【0014】以下、本発明について具体的に説明する。
【0015】本発明に係る表面処理鋼板は、上述したよ
うに基本的に、鋼板と、鋼板の両面に形成されためっき
層と、めっき層の表面に形成された水溶性高分子層と、
その少なくとも一方の表面上に形成されたリン酸塩皮膜
とを具備するものである。
【0016】めっき層は、Zn−Cr複合めっき層であ
り、高耐食性を実現するために設けられる。そのCr含
有率は1〜25重量%に規定される。その含有率が1重
量%未満では合わせ目部での耐食性が劣化する。また、
特に本発明のポイントとなるリン酸塩皮膜との組み合わ
せにおいて、十分な相乗効果が得られない。リン酸塩皮
膜は、鱗片状またはブロック状の結晶からなるため、腐
食因子(水、酸素、塩素など)に対する皮膜そのものの
バリア効果は完璧ではなく、従って、リン酸塩皮膜があ
ってもその下地のめっき層は緩やかではあるが腐食環境
にさらされることになる。Cr含有率が低いめっき皮膜
では、めっき層自体の耐食性が低いため腐食しやすく、
その腐食反応によって生じる腐食環境のアルカリ化(O
Hイオンの生成)はリン酸塩皮膜の溶解を促進する。す
なわち、Cr含有率が低くなるとリン酸塩皮膜の耐食効
果が急速に失われ、1重量%未満では本発明が目的とす
るところの十分な耐食性が得られない。一方、Cr含有
率が25重量%を超えるとめっき層自体が脆くなり、プ
レス成形を受ける際にめっき剥離やパウダリング(めっ
き皮膜が粉状に脱落すること)を生じる。また、めっき
層が不活性になるあまり、緻密なリン酸塩皮膜が形成さ
れ難くなり、塗装性にも悪影響が現われる。従って、C
r含有率を上述のように1〜25重量%に規定したので
ある。
【0017】さらに、本発明のめっき層は、Fe,N
i,Coのうちの1種以上を0.01〜3重量%の範囲
で含有することができる。これにより、より良好な耐食
性がもたらされる。Zn,Crに比べて貴な金属である
Fe,Ni,Coは、リン酸塩処理時にカソード点とな
ってめっき層の均一溶解を促進し、リン酸塩結晶核の生
成密度を向上させる作用がある。また、Fe,Ni,C
oは前述のめっき層腐食時に生じる腐食環境のアルカリ
化を抑制する作用もあるものと考えられる。これらF
e,Ni,Coの含有率が0.1重量%未満では上記効
果が小さく、3重量%を超えるとめっき層自体が脆くな
り、プレスを受ける際にめっき剥離やパウダリングを生
じることになる。また、めっき製造時にも電解効率の低
下などを引き起こし、製造コストアップの原因にもな
る。従って、Fe,Ni,Coの含有率は0.1〜3重
量%に規定される。
【0018】めっき量は、5〜40g/m2 とする。こ
れは、5g/m2 未満では合わせ部の耐食性が不足し、
40g/m2 を超えるとプレス成形性、溶接性が低下す
るからである。
【0019】めっき層の表面には水溶性高分子層が形成
される。これはり水溶性高分子による表面処理により形
成される層であり、これによって、鋼板の耐食性、特に
塗装後の耐食性が向上する。これはめっき表面に吸着し
た高分子が、腐食環境にあってめっき層の溶解を抑制す
るためと考えられる。さらにその上に形成されるリン酸
塩皮膜と相俟って塗装との親和力を高め塗装密着性を向
上させる効果も有すると考えられる。
【0020】このような作用を有する水溶性高分子とし
ては、まず、以下に示すa,b2つのグループのものが
挙げられる。グループaとしては重量平均分子量が10
00〜100万の高分子であって、分子量500単位当
たりに少なくとも1個以上の芳香環と、平均1〜10個
の水酸基及び平均0.1〜4個のスルホン基とを必須成
分として有し、かつ芳香環と芳香環とを結ぶ主鎖がC−
C結合、C=C結合、エーテル結合(C−O−C)のう
ちいずれか1種以上で構成される水溶性有機高分子が挙
げられる。そしてグループbとしては、重量平均分子量
が1000〜100万の高分子であって、分子量500
単位当たりに少なくとも1個以上の水酸基を置換基とし
て有する1個以上の芳香環、例えば、
【化3】 と、平均0.1〜4個のスルホン基とを有し、かつ芳香
環と芳香環とを結ぶ主鎖がC−C結合、C=C結合、エ
ーテル結合(C−O−C)のうちいずれか1種以上で構
成されるアニオン性水溶性有機高分子が挙げられる。
【0021】ここで芳香環と芳香環とを結ぶ主鎖のC−
C結合、C=C結合、エーテル結合(C−O−C)の概
念の中にはポリ−p−ヒドロキシスチレン、リグニンス
ルホン酸ソーダ、ニトロフミン酸などが含まれる。しか
し、本発明では、結合環、例えば以下に示すような芳香
【化4】 などをもって主鎖内に上記結合が存在するとは見なさな
い。
【0022】これらグループa,bの水溶性有機高分子
の側鎖には上述の官能基の他に、Cl,Brなどのハロ
ゲン基、ニトリル基、ニトロ基、エステル基など他の官
能基を含んでいてもよい。
【0023】即ちグループa,bの条件を満たす水溶性
有機高分子としては、例えば次の(A−1)〜(A−1
1)の化合物が挙げられる。
【0024】(A−1) フェノールホルムアイデヒド
樹脂(ノボラック樹脂、フェノール−フルフラール樹
脂、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂、およびこれら
の誘導体のスルホン酸塩。
【0025】(A−2) ビスフェノールA骨格を有す
るエポキシ樹脂、エポキシアクリレート、およびフェノ
ール(EO)グリシジルエーテル等のエポキシ樹脂
誘導体のスルホン酸塩。
【0026】ビスフェノールAスルホン酸ソーダ、ビス
フェノールSスルホン酸ソーダのホルマリン縮合物。
【0027】(A−3) ポリヒドロキシビニルピリジ
ンのスルホン酸塩。
【0028】(A−4) クレオソート油硫酸化物のホ
ルマリン縮合物の塩、m−クレゾールメチレンスルホン
酸−ホルマリン縮合物、m−クレゾールベークライトメ
チレンスルホン酸ソーダとシェファー酸とのホルマリン
縮合物、2−(2′−ヒドロキシフェニル)−2−
(2′−ヒドロキシ)−スルホメチルプロパン塩のホル
マリン縮合物等の例を含めたアルキルフェノールおよび
この誘導体のスルホン化物のホルマリン縮合物の塩、ま
たはフェノール類およびフェノールカルボン酸のスルホ
ン化物のホルマリン縮合物の塩。フェノール類として
は、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p
−クレゾール、3,5−キシレノール、カルバクロー
ル、チモール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノ
ン、ピロガロール、フロログルシンなどが挙げられる。
【0029】フェノールカルボン酸としてはサリチル
酸、m−オキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、ブロト
カテチュ酸、ゲンチシン酸、α−レゾルシル酸、β−レ
ゾルシル酸、γ−レゾルシル酸、オルセリン酸、カフェ
ー酸、ウンベル酸、没食子酸、3−オキシフタル酸など
が挙げられる。
【0030】(A−5) モノ又はポリヒドロキシナフ
タレンおよびこの誘導体のスルホン化物のホルマリン縮
合物。
【0031】モノヒドロキシナフタレンとしてはα−ナ
フトールおよびβ−ナフトールなどが挙げられる。ポリ
ヒドロキシナフタレンとしてはα−ナフトヒドロキノン
(1,4−ジオキシナフタリン)、β−ナフトヒドロキ
ノン(1,2−ジオナフタリン)、ナフトピロガロール
(1,2,3−トリオキシナフタリン)、ナフトレジル
シン(1,3−ジオキシナフタリン)などが挙げられ
る。
【0032】(A−6) フェニルフェノールスルホン
酸塩のホルマリン縮合物。
【0033】(A−7) ジヒドロキシジフェニルスル
ホンのホルマリン縮合物。
【0034】ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン・ナ
フタリンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ビス(ヒド
ロキシジフェニル)スルホンモノメチルスルホン酸塩の
ホルマリン縮合物、ヒドロキシジフェニルスルホン・モ
ノスルホン酸塩のホルマリン縮合物。
【0035】(A−8) ポリ−p−ヒドロキシスチレ
ン、ポリ−p−ヒドロキシスチレン臭素化物、ポリ−p
−ヒドロキシメトキシスチレン、ポリ−p−ヒドロキシ
ジメトキシスチレン、等のポリ−ヒドロキシスチレン誘
導体のスルホン酸塩。
【0036】(A−9) リグニンスルホン酸またはリ
グニンスルホン酸塩、これは、パルプ製造時に副生する
パルプ廃液を種々の方法で処理した化合物で、主成分は
リグニンスルホン酸塩またはリグニンスルホン酸であ
る。
【0037】リグニンの化学構造はフェニルプロパン基
を基本骨格とし、これが3次元網目構造組織をとった化
合物である。
【0038】リグニンスルホン酸およびリグニンスルホ
ン酸塩はパルプメーカー各社から非常に数多くの商品が
製造販売されている。分子量も180〜100万にわた
り、各種のスルホン化度、各種の塩、化学変性したも
の、貴金属イオンを調整したものなどバラエティーに富
んでいる。これら各種のリグニンスルホン酸およびその
塩は全てが本発明の目的に有効に作用するわけでなく、
その効果はものによって大きなバラツキがある。本発明
の目的の達成度は、ある特定のリグニンスルホン酸およ
びその塩を用いたとき最大となる。従って本発明に用い
ることができる好ましいリグニンスルホン酸およびその
塩には制約がある。すなわち本発明には以下の(1)〜
(3)の条件を全て満たすものが好ましい。
【0039】(1)分子量1000未満の低分子量成分
および分子量10万以上の高分子量成分が工業的に除去
されたもの、または分子量1000未満および10万以
上の成分が非常に少ないもので分子量分布のピークを1
000〜10万の間にもち、少なくとも50%以上の成
分がこの分子量領域に存在するもの。
【0040】(2)スルホン基密度(スルホン化度)が
分子量500当たり平均0.6以上〜3未満のもの。
【0041】(3)酸化処理を施して人工的にカルボキ
シル基を増やしていないもの。
【0042】本発明に用いることができるリグニンスル
ホン酸塩の塩の種類は特に制約がなく、Na塩,K塩,
Ca塩,アンモニウム塩,Cr塩,Fe塩,Al塩,M
n塩,Mg塩等いずれでも本発明に使用できるが、上記
(1)〜(3)の条件を満たすものが好ましい。
【0043】また、Fe,Cr,Mn,Mg,Zn,A
lなどの重金属イオンをキレートさせたリグニンスルホ
ン酸およびリグニンスルホン酸塩も本発明に使用できる
が上記(1)〜(3)の条件を満たすものが好ましい。
【0044】更にナフタレンやフェノールなど他の有機
化合物または有機高分子を付加したリグニンスルホン酸
およびリグニンスルホン酸塩も本発明に使用できるが上
記(1)〜(3)の条件を満たすものが好ましい。とこ
ろで、本発明に使用できるリグニンスルホン酸およびそ
の塩にはパルプ製造時の不純物を含有していてもかまわ
ないが、その量は少なければ少ないほど好ましい。
【0045】上記(1)〜(3)の制約を設けた理由
は、上記(1)〜(3)の条件中の因子がリン酸塩処理
性、塗料密着性の向上、および結晶粒子の微細化および
めっき表面の凹凸化に著しく影響を与えるためである。
すなわち、 (1)100未満の低分子量のリグニンスルホン酸およ
びその塩では結晶粒子が微細化されるものの、リン酸塩
皮膜の緻密化に至らず、塗料密着性、特に2次(耐水)
密着性の改善が不充分であり、10万以上の高分子量の
リグニンスルホン酸およびその塩ではめっき浴への溶解
性が悪くなるとともに、塗料密着性(1次,2次)の向
上が充分得られにくくなるからである。
【0046】(2)スルホン化度の制限は、0.6未満
(分子量500単位)のものではめっき浴への溶解性が
低下してめっき浴への添加量に制限がでてくること、結
晶の微細化または表面の複雑な凹凸化が充分達成できに
くくなるからである。
【0047】(3)カルボキシル基の制限は、リグニン
スルホン酸およびその塩中のカルボキシル基を増やした
ものではリン酸塩皮膜の緻密形成が得られず、塗料の2
次(耐水)密着性が悪くなる傾向がでてくるからであ
る。
【0048】しかし、いずれにしてもリグニンスルホン
酸系の有機高分子はその品質(本発明の効果に対して
の)の製造ロットぶれが存在するため、本発明の工業的
実施には慎重な配慮が必要である。
【0049】(A−10) ポリタンニン酸およびこの
誘導体のスルホン化物。
【0050】(A−11) フミン酸またはニトロ化フ
ミン酸およびこれらの誘導体またはこれらの塩のスルホ
ン化物。
【0051】更に本発明に使用できる水溶性有機高分子
としては、次のc,dのグループが挙げられる。
【0052】グループc:重量平均分子量が1000〜
100万の有機高分子であって、分子量500単位当た
りに1個以上の芳香環と平均1〜10個の水酸基とを有
し、かつ上記単位内に平均0.1〜4個のスルホン基
(−SO3 )、またはリン酸基
【化5】 以下に示す第4級アンモニウム塩基
【化6】 (R,R,Rは同種または異種であって、
かつ直鎖または分岐鎖アルキル基またはヒドロキシアル
キル基、またはフェニル基、ベンジル基などの芳香族
基、Xは対アニオン)、カルボキシル基(−COOH)
の中から選ばれる1種以上の極性基を必須成分として平
均0.1〜5個の範囲で有し、かつ芳香環と芳香環とを
結ぶ主鎖がC−C結合、C=C結合、エーテル結合(C
−O−C)のうちいずれか1種以上で構成されるもので
あるアニオン性、カチオン性および両性の水溶性有機高
分子。
【0053】グループd:重量平均分子量が1000〜
100万の有機高分子であって、分子量500単位当た
りに少なくとも1個以上の水酸基を置換基として有する
1個以上の芳香環を有し、かつ上記単位内に平均0.1
〜4個のスルホン基(SO)、またはリン酸基
【化7】 下記化8に示す第4級アンモニウム塩基
【化8】 (R,R,Rは同種または異種であって、
かつ直鎖または分岐鎖アルキル基またはヒドロキシアル
キル基、またはフェニル基、ベンジル基などの芳香族
基、Xは対アニオン)、カルボキシル基(−COOH)
の中から選ばれる1種以上の極性基を必須成分として平
均0.1〜5個の範囲で有し、かつ芳香環と芳香環とを
結ぶ主鎖がC−C結合、C=C結合、エーテル結合(C
−O−C)のうちいずれか1種以上で構成されるもので
あるアニオン性、カチオン性および両性の水溶性有機高
分子。
【0054】またこれらc,dグループの水溶性有機高
分子の側鎖には上述の極性基の他にCl,Brなどのハ
ロゲン基、ニトリル基、ニトロ基やエステル基などの他
の官能基を含んでもよい。
【0055】即ち条件を満たす水溶性高分子グループ
c,dの例としては次の(B−1)〜(B−4)の高分
子が挙げられる。
【0056】(B−1) 前述した(A−1)〜(A−
11)の水溶性有機高分子を母体に、下記のグループ
(I)の中から選ばれた1種以上の極性基を導入したア
ニオン型、両性型の水溶性有機高分子。
【0057】グループ(I)の極性基:第3級アミノ
基、第4級アンモニウム塩基、カルボキシル基、リン酸
基、亜リン酸基、ホスホン酸基、亜ホスホン酸基、ホス
フィン酸基、亜ホスフィン酸基をさす。
【0058】またはA−1,A−2,A−3,A−4,
A−8,A−9,A−10,A−11のそれぞれの有機
高分子のうち、スルホン化前の有機高分子を原料に、上
記のグルーブ(I)のなかからえらばれた1種以上の極
性基を導入したアニオン型、カチオン型、両性型の水溶
性有機高分子。
【0059】または、A−4,A−5,A−6,A−7
のホルマリン縮合物のうち、スルホン基を含まない状態
にしたものを原料にして変成したもの。すなわち、 A−4′:フェノール、フェノールカルボン酸、または
アルキルフェノールおよびこれらの誘導体のホルマリン
縮合物。
【0060】A−5′:モノまたはポリヒドロキシナフ
タレンおよびこれら誘導体のホルマリン縮合物。
【0061】A−6′:フェニルフェノールのホルマリ
ン縮合物。
【0062】A−7′:ジヒドロキシジフェニルのホル
マリン縮合物などこれらA−4′〜A−7′の高分子を
原料に、グループ(I)の中から選ばれた1種以上の極
性基を導入したアニオン型、カチオン型、両性基の水溶
性有機高分子。
【0063】(B−2) ポリ−p−ビニルヒドロキシ
スチレンと無水マレイン酸との共重合物。この共重合物
を更にアミノ化あるいはリン酸化したもの。
【0064】(B−3) フェニルホスホン酸およびこ
の誘導体とフェノールおよびこの誘導体またはレゾルシ
ンまたはこの誘導体とのホルマリン縮合物のスルホン化
物およびその塩。
【0065】フェニルホスホン酸の誘導体としては、モ
ノオクチルフェニルホスホネート、ジフェニルホスホン
酸、o−メチルハイドロゲンフェニルチオホスホン酸、
ジフェニルホスヒン酸が挙げられる。
【0066】レゾルシンの誘導体としては2,6−ジヒ
ドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシアセト
フェノン、レゾルシノールモノメチルエーテル、レゾル
シノールモノヒドロキシエチルエーテル、2−メチルレ
ゾルシノール、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン、
2−エチルレゾルシノールなどが挙げられる。
【0067】フェノールの誘導体としては(A−4)に
記載したフェノール類、フェノールカルボン酸類および
アルキルフェノール類全てが挙げられる。
【0068】(B−4) フミン酸、ニトロフミン酸お
よびこれらの塩または上記フミン酸のアミノ化物 以上のA,Bそれぞれのグループ内から、あるいはA,
B両方のグループの中から、1種または2種以上を選び
出して混合して用いることも可能である。有機高分子の
塩の種類はNa塩,Ca塩,NH塩等何でもよく制
約を受けない。
【0069】本発明に用いることのできる水溶性有機高
分子はその重量平均分子量が1000〜100万のに範
囲に、好ましくは1000〜50万の範囲に、最も好ま
しくは2000〜10万の範囲に限定される。この理由
は有機高分子の分子量が本発明の効果に影響を与え、分
子量が1000未満の低分子体では大きな塗料密着効果
が得られにくく、反面分子量が100万を越える有機高
分子ではめっき浴への溶解性が悪くなると同時に本発明
の効果も得られにくく、めっき浴への添加濃度に限界が
生じて問題となるからである。以上めっき浴への溶解
性,塗料密着性などの機能発現の容易さを考慮すると重
量平均分子量が2000〜10万の範囲が最も好まし
い。
【0070】スルホン基、リン酸基等の極性基(水酸
基、芳香環は含まない)は有機高分子のめっき浴への溶
解性を与える点およびめっき結晶粒径の微細化、表面の
凹凸化に特に重要であり、その好ましい極性基密度の範
囲は、分子量500単位当たりスルホン基が平均0.1
〜4個、他の極性基が平均0.1〜5個の間に、更に好
ましくは1〜3個の間にある。極性基密度が0.1未満
だとめっき浴への溶解性が悪くて問題となり、スルホン
基が4個、他の極性基が5個を越えると得られるめっき
皮膜層の耐食性が低下して問題となるからである。極性
基としてはスルホン基が最も好ましい。この理由はスル
ホン基をもつものが最も優れた塗料密着性を示すためで
ある。水酸基および芳香環の存在は特に塗料密着性向
上、塗装後耐食性向上の点から本発明浴用の有機高分子
には必須な構成成分であり、かつバルキーな方が好まし
いので一分子中に存在する数が重要である。分子量50
0単位中に含まれる水酸基の数は多いほど(〜10個)
よく、かつ芳香環の数は2個以上が好ましい。水酸基は
芳香環に直接置換基としてついていた方がその効果がよ
く発揮されるので好ましい。芳香環と芳香環とを結ぶ主
鎖はヘテロ原子を含まないC−C、およびC=C結合で
構成されるものが最も好ましく、次いでC−O−C結合
が好ましい。エステル結合(O・CO)、アミド結合
(CONH)を主鎖に含むものは本発明には好まし
くない。その理由はエステル結合、アミド結合を主鎖に
含むものでは塗料の2次(耐水)密着性が改善されない
からである。この原因は電解時、塗装焼付時の分解変質
あるいは塗膜下腐食時のpH上昇(pH2以上)による
加水分解など結合の安定性に問題があるためと考えられ
る。また上記の水溶性有機高分子の分子量、構成単位、
極性基の種類と密度、主鎖の種類等の因子は本発明のめ
っき皮膜層およびその製造方法にとって本質的役割を果
たす重要な因子である。
【0071】めっき層における水溶性高分子の含有率は
0.01〜3重量%に規定される。0.01%未満では
上記効果がなく、3重量%を超えるとめっき層自体が脆
くなり、プレス成形を受ける際にめっき剥離やパウダリ
ングを生じることとなるからである。
【0072】水溶性高分子の付着(吸着)量は1〜50
0mg/m2 である。1mg/m2では上記効果が奏さ
れず、また500mg/m2 を超えると水溶性高分子の
凝集付着(付着分布の不均一化)が生じるためかえって
塗装密着性が損なわれ、塗装耐食性が低下するからであ
る。
【0073】このような水溶性高分子吸着層は、水溶性
高分子を含む水溶液を鋼板にスプレーすること、または
同水溶液に鋼板を浸漬することによって形成することが
できる。処理条件は水溶性高分子の濃度、溶液の温度、
液のpH、スプレー時間または浸漬時間などを適宜選択
して行うが、溶液中の水溶性高分子の濃度は0.01〜
30重量%であることが望ましい。0.01%未満では
十分な高分子吸着が得られず、30%を超えると凝集付
着が起こりやすい。また、溶液の温度は25〜70℃が
望ましい。25℃未満では十分な高分子吸着が得られ
ず、70℃を超えると凝集付着が生じやすい。液のpH
は2〜12が望ましい。2未満または12超えではめっ
き皮膜を強くエッチングするため耐食性が劣化する。処
理時間は処理設備と能率を考慮して他の条件とバランス
をとって選択すればよい。
【0074】また、水溶性高分子処理に先立って鋼板
(鋼帯)はめっき表面の活性化のためにめっき液または
酸液などに浸漬させる(あるいはこれらの溶液中でアノ
ード溶解処理を行う)こともできる。このような処理は
水溶性高分子吸着層の緻密化ならびにめっき層との結合
力を高め、最終的にリン酸塩皮膜の緻密化および耐食性
強化に寄与する。
【0075】次に、水溶性高分子層上に形成されるリン
酸塩皮膜について説明する。
【0076】通常、自動車に存在する合わせ部のような
構造においては、塗装の付き回りが不十分であるため、
他の部分とはことなり、めっき部が露出した状態のまま
である。さらに、水分などがたまりやすく、非常に腐食
しやすい環境である。しかし、本発明の鋼板では、この
ような部位においても表層に形成されたリン酸塩皮膜が
有効に作用するため、非常に優れた耐食性を有する。こ
のような作用は通常のZn系めっきでも見られるが、特
に本発明の複合めっきでめっき層を形成した場合にその
効果が著しい。その理由は上述のとおりである。
【0077】リン酸塩皮膜の種類は特に限定されるもの
ではなく、市販されているリン酸塩処理液を使用するこ
とができるが、現行自動車メーカーの一連の塗装工程の
中で使用されているものと同系統であるという点で、リ
ン酸亜鉛系処理液が最も望ましい。特に、Ni、Mnを
添加したものが、リン酸塩皮膜自身の耐食性の点で好ま
しい。この場合に、リン酸塩皮膜の付着量が1g/m2
未満では良好な耐食性が得られず、4g/m2 を超える
と溶接性が低下し、さらにプレス成形時にリン酸塩皮膜
自体の加工剥離が無視できなくなる。従って、リン酸塩
皮膜の付着量は1〜4g/m2 の範囲とする。
【0078】リン酸塩処理皮膜の形成方法は特に限定さ
れるものではないが、電気めっきラインに付随した化成
処理設備を使用することが製造コスト、能率等の面で最
も望ましい。処理方法も浸漬型、スプレー型など特に規
定されるものではない。リン酸塩処理の前処理に関して
も一般的に行われる表面調整処理を採用することがで
き、まためっき表面の活性化のために、リン酸塩処理に
先立ってめっき液または酸液などに浸漬させる(または
これらの溶液中でアノード溶解処理を行う)こともでき
る。このような処理はリン酸塩被膜の緻密化およびめっ
き層との結合強化に寄与する。
【0079】ところで、自動車の製造工程では、従来よ
り塗装工程において、リン酸塩処理が行われており、合
わせ目対象部を除けば加工組立前のリン酸塩被膜の有無
は品質に影響しないと一般的には考えられている。しか
しながら、本発明のZn−Cr複合めっきの場合、これ
までのように鋼板メーカーから塗油済みめっき鋼板とし
て出荷され、自動車メーカーで通常の工程に従ってプレ
ス加工・組立→脱脂→リン酸塩処理と進んでも良好な化
成処理被膜は得られない。これは、めっき以降の流通過
程も含めた経時的酸化により生成しためっき表面のCr
酸化物がリン酸塩被膜形成を阻害するからであり、また
リン酸塩処理前の脱脂処理も、表面にさらなるCrの安
定酸化物形成へと作用するからである。すなわち、自動
車に必須の塗装密着性や塗装後の耐食性(耐外観錆性)
は単なるZn−Cr複合めっき鋼板では得られなかっ
た。
【0080】これに対して、本発明では、Zn−Cr複
合めっきをベースとし、その電気めっき製造直後に(す
なわち塗油、脱脂を経ずに簡単な洗浄処理−めっき液成
分のコンタミ除去やめっきセクションへの通板過程で生
じる恐れのある表面汚染を除去する処理−を行う程度
で)、リン酸塩処理した商品を自動車メーカーに提供す
ることができるため、めっき層とリン酸塩被膜の相乗効
果による優れた耐食性と優れた塗装性とを兼備した従来
にない自動車車体用表面処理鋼板が提供されるのであ
る。
【0081】なお、本発明において、めっき層の下地鋼
板は耐食鋼板、軟鋼板、高張力鋼板などのいずれでも可
能である。また、一般のリン酸塩処理鋼板の後処理とし
て用いられるクロメートリンスを施してもよいし、塗装
鋼板への適用も可能である。
【0082】以上の構成を有する表面処理鋼板は、典型
的には以下のようにして製造される。
【0083】まず、電気めっき法によりZn−Cr系複
合めっき皮膜を鋼板(鋼帯)の両面に形成し、その後水
溶性高分子を含む水溶液を鋼板にスプレーし、または該
水溶液に鋼板を浸漬して水溶性高分子層を形成し、引き
続き、塗油・巻取を経ることなく、スプレーまたは浸漬
方式のリン酸塩処理を行う。これにより優れた塗装性と
耐食性を有する本発明の表面処理鋼板を安定的に高効率
で製造することができる。
【0084】
【実施例】
1.サンプル作成 電気めっき実験装置を使用して、所定の金属イオンを含
有する硫酸酸性めっき液にて、大きさ70×150m
m、板厚0.8mmの冷延鋼板の両面にめっきを施し
た。皮膜の組成は、電流密度およびめっき浴中のZn、
Crそれぞれのイオン濃度比を変えることにより変化さ
せ、まためっき量はめっき時間を適宜選択することによ
りコントロールした。(なお、実機製造においてはそれ
ぞれのラインの特性に応じためっき液を選択する必要が
あるが、塩化物浴の採用、流速、pHの値、およびめっ
き液の安定性と皮膜組成の均質化を高めるためにめっき
工程において慣行的に行われている各種の添加剤の使用
は特に制限されるものではない。)このようにしてめっ
き皮膜を形成した鋼板に対し、水溶液高分子を含む水溶
液でスプレーまたは浸漬処理して表1に示す水溶性高分
子層を付着(吸着)させた。水溶性高分子付着量は溶液
濃度、液のpH、液の温度を適宜変化させて制御した。
【0085】高分子層を付着させた鋼板に対し、浸漬型
及びスプレー式のリン酸塩処理を行い、上層に皮膜を形
成した。リン酸塩処理液は市販のものを用い、脱脂、表
面調整などの前処理についても標準の条件で行った。な
お、皮膜の膜厚は遊離酸濃度、全酸濃度、および処理時
間により制御した。生成したリン酸塩皮膜の付着量は皮
膜をクロム酸または重クロム酸アンモニウム溶液で溶解
し、溶解前後の重量差を測定してその値から把握した。
【0086】
【表1】 2.特性評価 このようにして作製した試料について、以下に示す特性
を評価した。
【0087】(1)耐食性 耐食性は鋼板合わせ部を想定したサンプルによる耐食性
を評価した。鋼板合わせ部を想定したサンプルは、めっ
き後化成処理した前記150×70mmの板と、100
×50mmの板の二枚を、リン酸塩処理面を向かい合わ
せてスポット溶接した後、化成処理、電着塗装を施して
作製した。次に試料を腐食促進試験に供し、所定のサイ
クルの後にサンプルを取り出し、これを解体してめっき
面での最大腐食深さを測定し、耐食性を評価した。
【0088】その試験方法および評価方法を以下に示
す。
【0089】a)腐食促進試験方法 50℃85%RH→50℃30%RH→室温放置→5%
NaCl水浸漬の工程を1サイクル24時間に時間設定
して所定サイクル実施。
【0090】b)評価方法 合わせ部耐食性 120サイクル経過後の最大穴あき深さ 評価 0.1mm未満 ○ (良好) 0.1以上0.2mm未満 △ 0.3以上0.4mm未満 × 0.4mm以上 ××(不良) (2)塗装性および塗装後耐食性 a)塗装性 塗装性については、塗膜密着性を把握することにより評
価した。塗膜密着性は、上述のようにして作成したサン
プルに対し、実ラインをシミュレートするためにさらに
化成処理を施し、電着塗装、中塗り、上塗りを施した。
電着塗装の厚さは20μmとし、中塗り、上塗りを行っ
た後の合計膜厚はいずれのサンプルも90μmとした。
【0091】塗装後のサンプルを40℃の純水中で24
0時間保持し、これを取り出した後、速やかにカッター
で2mm角×100個のマス目に傷を入れた。その後速
やかにテープ剥離を行い、剥離したマス目の数にて塗膜
密着性を把握し塗装性を評価した。評価方法は以下の通
りである。
【0092】 テープ剥離 評価 なし ○ (良好) 5個以内 △ 5個超え × (不良) b)塗装後耐食性 塗装後耐食性は150×70mmの上記塗装後サンプル
にカッターでクロスカットを入れ、以下の耐食試験(腐
食促進試験)において所定サイクルの後の塗膜ふくれ幅
を測定した。
【0093】腐食促進試験 50℃85%RH→50℃30%RH→室温放置→5%
NaCl水噴霧の工程を1サイクル24時間に時間設定
して所定サイクル実施。
【0094】 180サイクル後の片側最大ふくれ幅 評価 1mm未満 ◎ (良好) 1〜2mm未満 ○ 2〜5mm未満 △ 5mm以上 × (不良) (3)プレス性 プレス性はドロービード試験により評価した。ドロービ
ード試験では、所定長さ(40mm)の水平な凸部を有
する雄ダイスとこれに向き合った雌ダイスとを、30m
mの幅のサンプル片を挟んで500kgfの荷重で押し
つけたまま上方に20mm/minの速度でサンプル片
を100mm引き抜く。この後、サンプル片1を取り外
し、表面の油を溶剤で除去し、サンプルの重量を測定す
る。試験前に測定しておいたサンプル片の重量との差
と、ビードの通過した面積から、単位面積あたりの皮膜
剥離量を算出して剥離性を評価し、その値からプレス性
を把握した。この際の評価方法を以下に示す。
【0095】 剥離量 評価 0以上1.5g/m2 未満 ○ (良好) 1.5g/m2 以上2.5g/m2 未満 △ 2.5g/m2 以上3.5g/m2 未満 × 3.5g/m2 以上 ××(不良) (4)溶接性 溶接電流11KAにて連続スポット溶接を行い、以下の
基準で評価した。
【0096】 評価 500打点以上溶着なし ○ (良好) 500打点未満で溶着発生 × (不良) これら試験結果を表2〜表5に示す。
【0097】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】 表2、表3は本発明の範囲内である実施例の結果である
が、耐食性、塗装性および塗装後耐食性、プレス性、溶
接性のいずれもが優れた結果を示した。
【0098】これに対して、表4、表5の比較例は本発
明の要件のいずれかが本発明の範囲を外れるものであ
り、これら特性のうち少なくとも1つが劣っていた。
【0099】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
塗装性および耐食性に優れしかも低コストであり、自動
車車体として好適な表面処理鋼板及びその製造方法が提
供される。また、本発明ではめっき形成直後にリン酸塩
処理した製品を自動車メーカーに供給することができる
ので、塗装性および耐食性に優れているのみならず、自
動車メーカーにおいてリン酸塩処理設備を省略すること
も可能となり、製造工程の合理化の面から波及効果が極
めて大きい。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浦川 隆之 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 渡辺 豊文 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 山本 裕三 東京都中央区日本橋茅場町1丁目14番10号 花王株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板と、 鋼板の両面に設けられ、Cr含有率が1〜25重量%
    で、めっき量が5〜40g/m2 のZn−Cr複合めっ
    き層と、 これらめっき層の表面上に設けられた付着量が1〜50
    0mg/m2 の水溶性高分子層と、 これら高分子層のうち少なくとも一方の表面上に設けら
    れた0.5〜4g/m2 のリン酸塩皮膜と、 を具備してなる塗装性と耐食性に優れた表面処理鋼板。
  2. 【請求項2】 鋼板と、 鋼板の両面に設けられ、Cr含有率が1〜25重量%
    で、かつFe、NiおよびCoのうちの1種以上を0.
    01〜3重量%含有し、めっき量が5〜40g/m2
    Zn−Cr複合めっき層と、 これらめっき層の表面上に設けられた付着量が1〜50
    0mg/m2 の水溶性高分子層と、 これら高分子層のうち少なくとも一方の表面上に設けら
    れた0.5〜4g/m2 のリン酸塩皮膜と、 を具備してなる塗装性と耐食性に優れた表面処理鋼板。
  3. 【請求項3】 水溶性高分子は、重量平均分子量が10
    00〜100万の有機高分子であって、分子量500単
    位当たりに少なくとも1個以上の芳香環と平均1〜10
    個の水酸基(−OH)とを有し、かつ分子量500単位
    当たりに平均0.1〜4個のスルホン基(−SO3 )、
    またはリン酸基 【化1】 以下に示す第4級アンモニウム塩基 【化2】 (R,R,Rは同種または異種であって、
    かつ直鎖または分岐鎖アルキル基またはヒドロキシアル
    キル基、またはフェニル基、ベンジル基などの芳香族
    基、Xは対アニオン)、カルボキシル基(−COOH)
    の中から選ばれる1種以上の極性基を必須成分として平
    均0.1〜5個の範囲で有するものであって、かつ芳香
    環と芳香環とを結ぶ主鎖がC−C結合、C=C結合、エ
    ーテル結合(C−O−C)のうちいずれか1種以上で構
    成されるアニオン性、カチオン性または両性の水溶性有
    機高分子1種以上である請求項1または2に記載の塗装
    性と耐食性に優れた表面処理鋼板。
  4. 【請求項4】 電気めっき法により鋼板の両面にZn−
    Cr系めっき皮膜を形成した後、水溶性高分子を含む水
    溶液を鋼板にスプレーし、または該水溶液に鋼板を浸漬
    して水溶性高分子層を形成し、引き続き、塗油・巻取を
    経ることなく、スプレーまたは浸漬方式のリン酸塩処理
    を行う、塗装性と耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方
    法。
JP8993894A 1994-04-27 1994-04-27 塗装性と耐食性に優れた表面処理鋼板およびその製造方法 Pending JPH07292480A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8993894A JPH07292480A (ja) 1994-04-27 1994-04-27 塗装性と耐食性に優れた表面処理鋼板およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8993894A JPH07292480A (ja) 1994-04-27 1994-04-27 塗装性と耐食性に優れた表面処理鋼板およびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH07292480A true JPH07292480A (ja) 1995-11-07

Family

ID=13984649

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP8993894A Pending JPH07292480A (ja) 1994-04-27 1994-04-27 塗装性と耐食性に優れた表面処理鋼板およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH07292480A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2008014885A1 (de) 2006-07-31 2008-02-07 Voestalpine Stahl Gmbh Korrosionsschutzschicht mit verbesserten eigenschaften

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2008014885A1 (de) 2006-07-31 2008-02-07 Voestalpine Stahl Gmbh Korrosionsschutzschicht mit verbesserten eigenschaften
DE102006035660A1 (de) * 2006-07-31 2008-02-07 Voestalpine Stahl Gmbh Korrosionsschutzschicht mit verbesserten Eigenschaften
DE102006035660A9 (de) * 2006-07-31 2008-05-15 Voestalpine Stahl Gmbh Korrosionsschutzschicht mit verbesserten Eigenschaften
DE102006035660B4 (de) * 2006-07-31 2009-08-20 Voestalpine Stahl Gmbh Korrosionsschutzschicht mit verbesserten Eigenschaften und Verfahren zu ihrer Herstellung

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR910009166B1 (ko) 아연 및 유기중합체의 전기도금복합체
JP2931310B2 (ja) 金属表面処理用添加剤および金属表面処理用水溶液
KR100496221B1 (ko) 내식성과 도장성이 우수한 인산염 처리된 아연계 도금 강판
JPH07292480A (ja) 塗装性と耐食性に優れた表面処理鋼板およびその製造方法
JPH07300682A (ja) 塗装性と耐食性に優れた表面処理鋼板およびその製造方法
JPH07292479A (ja) 塗装性と耐食性に優れた複合めっき鋼板
JPH0633512B2 (ja) 塗料密着性,耐蝕性,加工性にすぐれた塗装金属材およびその製造方法
JPH07292497A (ja) 塗装性と耐食性に優れた複層複合めっき鋼板
JPS59501269A (ja) 耐アルカリ性燐酸塩変換被覆と製造法
JP2787365B2 (ja) 有機薄膜の長期付着性並びにカチオン電着塗装性に優れた有機薄膜被覆型Cr含有亜鉛系複層型防錆鋼板及びその製造方法
JPH01290797A (ja) 耐食性に優れた複合電気めっき鋼板
KR960007775B1 (ko) 크롬용출이 억제되는 크로메이트용액 및 이 용액을 이용한 크로메이트강판 제조방법
JPH01240671A (ja) 塗装用金属表面のリン酸亜鉛処理方法
JPH073471A (ja) 複合めっき鋼板
JP2648486B2 (ja) 有機高分子複合めっき皮模およびその製造方法
JPH01177394A (ja) めっき浴添加剤及びこれを用いた複合めっき浴
JPS60200997A (ja) 高耐食性2層メツキ鋼板の製法
JP3044643B2 (ja) アルカリ性条件下での耐もらい錆腐食性に優れた有機複合被覆鋼板
JPH0324293A (ja) 加工法、耐食性および耐水密着性に優れた複層めつき鋼板
KR100264982B1 (ko) 전착도장성 및 용접성이 우수한 수용성 에폭시 수지용액 조성물 제조방법 및 에폭시 수지용액 조성물을 이용한 수지피복전기아연도금강판 제조방법
JPH01177386A (ja) クロメート処理を施した亜鉛−クロム系電気めっき鋼板
JPH05156498A (ja) 耐食性、密着性、溶接性に優れた金属表面処理鋼板の黒色クロメート皮膜形成方法
JPH0813162A (ja) 塗装性と耐食性に優れた複層複合めっき鋼板
JPH03166396A (ja) 化成処理性に優れた高耐食性複合電気めっき鋼板及びその製造方法
JPS59200787A (ja) 化成処理性にすぐれた電気メツキ鋼板