JPH07290912A - 空気入りタイヤ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】カーカスの折返し部の端縁に起因してサイドウ
ォール外壁面に生じるシワの発生を防ぎ見映えを高めか
つ耐久性を向上する。 【構成】カーカス６は、ビードコア５の周りを内側から
外側に折返す折返し部９ｂを有する第１のカーカスプラ
イ９と、この第１のカーカスプライ９の本体部９ａと折
返し部９ｂとの間を通りビードコア５のタイヤ軸方向外
方にのびる第２のカーカスプライ１０とを含み、前記折
返し部９ｂの先端は、トレッド端縁を通る半径方向線Ｎ
よりもタイヤ赤道側かつベルト層７の半径方向内側に位
置させている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、耐久性を保持しつつカ
ーカスの折返し部の端縁に起因してサイドウォール部外
壁面に生じるシワの発生を防ぎ、見映えを高めうる空気
入りタイヤに関する。

【０００２】

【従来の技術】例えばライトトラック、トラック、バス
等の高内圧で使用される空気入りタイヤにあっては、高
荷重が作用することによって、カーカスはその折返し部
を高くしてサイドウォール部の剛性を高めたいいわゆる
ハイターンアップ形式のものが多用される。

【０００３】又このようなハイターンアップ構成のカー
カスを構成するには、従来、図３、に示す如く、カーカ
スプライａ、ａをビードコアｂの周りをタイヤ軸方向内
側から外側に向かって折返しており、従ってその折返し
部ｃはサイドウォール部ｄの外向き面ｅに沿って立上が
ることとなる。なおこのような高荷重が作用するタイヤ
にあってはカーカスは複数枚のカーカスプライを重ね合
わせて形成される場合が多い。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし前記した如く折
返し部ｃがサイドウォール部ｄの外壁面ｅに沿って立上
がることによって、サイドウォール部ｄの外向き面ｅを
形成するゴムｇが折返し部ｃの端部ｃ１においては前記
ゴムｇに厚さの段差が生じるため、この端部ｃ１の外壁
面ｓにシワが生じやすくタイヤの見映えが低下するとと
もに、シワを起点としてカーカスとサイドウォール間で
ルースが発生して耐久性を低下させる。

【０００５】しかも折返し端ｃ１の位置する外壁面ｅは
ハイターンアップ構造のタイヤにおいてはタイヤの最大
巾ｍ点近傍であることによって、荷重の作用によって大
きな引張り応力が生じる結果、前記シワがタイヤの強度
を著しく低下させる。

【０００６】なお前記問題点の一端を解決すべく、前記
カーカスの折返し部の外側に補強フィラを設けることに
よって、ビード部の耐久性の向上と前記シワの発生を防
止する提案がなされているが、補強フィラを設けた場
合、タイヤ縦バネ定数が変化するなどタイヤの走行性能
が変化し、又、タイヤ重量が増すことによって燃費が増
すなど前記問題点の解決には至っていない。

【０００７】さらに、図４に示す如く、カーカスａの折
返し部ｃのサイドウォール部ｄの外壁面ｅ側に、トレッ
ド部からサイドウォール部ｄを通りビード部に至るアウ
タープライｊを配し、サイドウォール部ｄの前記折返し
部ｃ端部によって生じる段差を緩和する方法が提案され
ている。しかしアウタープライｊを設けることによっ
て、シワは若干減少するもののサイドウォール部ｄにお
いて剛性段差は解消し得ず縦バネ定数が不安定となる。
又カーカスのドラム成形においては、作業工程が増し、
作業能率に劣るという問題がある。

【０００８】なお又、カーカスの折返し部の端部に起因
してサイドウォール部にシワが発生するのを防止するた
め、出願人は特開平５−３３８４０５号、及び特開平２
−２４２０５号によってそれぞれ提案を行っている。

【０００９】特開平５−３３８４０５号においては、カ
ーカスの折返し部の端部をカーカスの内側に位置するよ
う配置して、サイドウォール部のシワの発生を防ぎ外観
向上を図ったものであるが、このためにはカーカスをト
レッド部で２分割せねばならずカーカスの耐久性と作業
性に問題がある。

【００１０】特開平２−２４２０５号においては、図７
に示す如く、外のカーカスプライｊはビードエーペック
スの外向き面を通りその先端を内のカーカスプライａの
巻上げ部ｃの内側に位置させており、このもののカーカ
ス構成は単に従来から存在する１−１構成に過ぎないの
であり、強度を高めるには至っていない。

【００１１】発明者らは、前記問題点の解決を図るべく
研究を重ねた結果、カーカスの折返し部先端を、トレッ
ド端縁を通る半径方向線をこえてタイヤ赤道側に位置さ
せることによって、耐久性を損なうことなくサイドウォ
ール部外壁面に生じがちなシワを排除でき、しかも簡易
に製造しうることを見出し、本発明を完成させたのであ
る。

【００１２】本発明は、耐久性を損なうことなくサイド
ウォール部の外壁面にシワが生じることなく成形でき、
見映えの向上できかつ軽量化を可能とする空気入りタイ
ヤの提供を目的としている。

【００１３】

【課題を解決するための手段】本発明は、トレッド部か
らサイドウォール部を通りビード部にのびる本体部にビ
ードコアの周りをタイヤ軸方向内側から外側に向かって
折返す折返し部を延設した第１のカーカスプライと、ト
レッド部から前記第１のカーカスプライの本体部と、折
返し部との間とを通り前記ビードコアのタイヤ軸方向外
方にのびる第２のカーカスプライとを含むカーカス、及
びトレッド部の内部かつ前記カーカスの半径方向外側に
配されるとともにベルトプライからなるベルト層とを具
え、第１のカーカスプライの前記折返し部の先端は、ト
レッド端縁を通る半径方向線よりもタイヤ赤道側かつ前
記ベルト層の半径方向内側に位置させてなる空気入りタ
イヤである。

【００１４】又折返し部は、内のベルトプライのタイヤ
軸方向の巾である内のベルトプライ巾の０．０５倍以上
かつ０．２０倍以下の長さを有してこのべルトプライと
半径方向外位置で重なる重なり部を設けるのが好まし
い。

【００１５】

【作用】カーカスを形成する第１のカーカスプライは、
その折返し部の先端がトレッド端縁を通る半径方向線よ
りもさらにタイヤ軸方向内側に位置させている。これに
よって、サイドウォール部の外壁面に最も近い位置を通
るプライは、該サイドウォール部においては途切れるこ
となく連続しており、外壁面にシワが生じることなく、
見映えを向上し、又このシワを起点とするカーカスとサ
イドウォール間でのルースの発生を防止でき、耐久性を
高めることが出来る。

【００１６】又第２のカーカスプライは、第１のカーカ
スプライの本体部と折返し部との間を通りビードコアの
タイヤ軸方向にのびている。従って前述の第１のカーカ
スプライの構成と相まってサイドウォール部にはプライ
端が存在しないためユニフォミティが向上する。これに
よりサイドウォール部にあっては略全域に亘り剛性段差
が生じないため走行特性が安定する。

【００１７】このように、本願発明は前記した各構成が
有機的に結合しかつ一体化することにより、耐久性を保
持しつつサイドウォール部外壁面に生じるシワの発生を
防ぎタイヤの見映えを向上でき、しかも、ユニフォミテ
ィが向上するため、高内圧で使用されるライトトラッ
ク、トラック、バス用のタイヤとして好適に採用しう
る。

【００１８】

【実施例】以下本発明の一実施例を図面に基づき説明す
る。図１において空気入りタイヤ１はトレッド部２とそ
の両側からタイヤ半径方向内方にのびる一対のサイドウ
ォール部３、３と、該サイドウォール部３の内方にのび
るビード部４とを有する。

【００１９】さらに空気入りタイヤ１には、トレッド部
２からサイドウォール部３をへてビード部４に至るカー
カス６と、該カーカス６の外側かつトレッド部の内方に
配されるベルトプライからなるベルト層７とを具える。

【００２０】前記カーカス６は、トレッド部２からサイ
ドウォール部３を通りビード部４にのびる本体部９ａに
ビードコア５の周りを折返し先端Ｐにおいて途切れる折
返し部９ｂを延設した第１のカーカスプライ９と、トレ
ッド部２から前記第１のカーカスプライ９の本体部９ａ
と折返し部９ｂとの間を通り前記折返し部９ｂのタイヤ
軸方向内側面に沿って半径方向内側にのび前記ビードコ
ア５のタイヤ軸方向外方で途切れる第２のカーカスプラ
イ１０とを具えており、いわゆる変形１−１構成によっ
て形成される。

【００２１】なお本実施例では、前記ビードコア５の半
径方向外方かつ第１のカーカスプライ９の本体部９ａと
第２のカーカスプライ１０との間に、断面三角形状かつ
硬質のゴムからなるビードエーペックス８を立上げてい
る。

【００２２】前記第１、第２の各カーカスプライ９、１
０は、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、芳香族ポリ
アミドなどの有機繊維からなるカーカスコードをタイヤ
赤道面Ｃに対して７５〜９０°の角度で傾けて並置した
ラジアル、又はセミラジアル配列として形成され、又各
カーカスプライの間では前記カーカスコードが互いに交
差する向きに配される。

【００２３】ベルト層７は本実施例では、内、中、外に
重ね合わせて配される３枚のベルトプライからなり、各
ベルトプライはナイロン、ポリエステル、レーヨン、芳
香族ポリアミドなどの有機繊維又はスチールからなるベ
ルトコードをタイヤ赤道面Ｃに対して１０〜７０度の角
度で傾けかつ各ベルトプライ間では互いに交差する向き
に配しタガ効果を有して、トレッド部２の剛性増大を図
っている。

【００２４】前記第１のカーカスプライ９はその折返し
部９ｂの先端がトレッド端縁Ｅを通る半径方向線Ｎより
もタイヤ赤道Ｃ側かつ前記ベルト層７の半径方向内側に
位置させている。従ってこの先端部分は、ベルト層７の
内のベルトプライ７Ａに半径方向外側で重なる重なり部
１１を形成している。

【００２５】重なり部１１は、本実施例では、その長さ
Ｌが内のベルトプライ７Ａのタイヤ軸方向の巾である内
のベルトプライ巾ＷＢの０．０５倍以上かつ０．２０倍
以下としている。

【００２６】なお第１のカーカスプライ９及び第２のカ
ーカスプライ１０について、それぞれ複数枚のプライ片
を内外に重ね合わせたいわゆるｎ−ｍ構成のカーカスと
して形成してもよい。

【００２７】次に図１に示すカーカス構成についてその
カーカスの製造工程を、図４に示す従来構成のものの製
造工程と対比する。

【００２８】図２（Ａ）〜（Ｃ）にその製造手順を示
す。即ち、 （Ａ）第１のカーカスプライの貼付け （Ｂ）ビード打込み及び第２のカーカスプライの貼付け （Ｃ）第１のカーカスプライの折返し（チェーファーが
付設される場合には同時施工できる）

【００２９】他方、図４に示す従来のカーカス構成にお
いては、図５（Ａ）〜（Ｄ）に示すように、 （Ａ）第１のカーカスプライの貼付け （Ｂ）ビード打込み及び第１のカーカスプライの折返し （Ｃ）第２のカーカスプライの貼付け （Ｄ）チェーファーｋの貼付け、及び巻込み であり、第２のカーカスプライを第１のカーカスプライ
の本体部９ａと折返し部９ｂとの間に介在させた図１に
示す本願構成のものは、図４に示す従来構成のものに比
して製造工程が簡略化でき、経済的な生産がなしうる。

【００３０】なお本発明に係る図１の構成を有するタイ
ヤは、図６に示す２−１構成かつ折返し部の先端がビー
ドエーピペックスより低い２Ｌ−１構成のものと略同等
きサイドウォール部の剛性を保持でき、カーカス構成の
簡略化によりタイヤ重量の低減も可能としている。

【００３１】タイヤサイズが７．００Ｒ１６でありかつ
図１に示す構成を有するタイヤについて試作する（実施
例１〜４）とともにその性能について調査した。なお従
来の構成を有するタイヤ（従来例１、２）及び本願構成
外のタイヤ（比較例１〜３）についても併せてテストを
行いその性能を比較した。テストは下記要領で行った。

【００３２】

【具体例】

１）ビード耐久性 ドラム試験機を用いて試供タイヤに規定の最大内圧と、
規定の最大荷重の１．５倍の荷重を加え周速度５０km／
ｈで走行させるとともに、ビード部に損傷が発生するま
での走行距離を測定し、その値を従来例１を１００とす
る指数で表示した。数値が大きいほど耐久性が高いこと
を示す。

【００３３】２）サイドウォール部の外観 新品タイヤについて目視により判定するとともに、４段
階に評価した。◎は極めて良好、○は良好、△はやや不
良、×は不良であることをそれぞれ示す。テスト結果を
表１に示す。

【００３４】

【表１】

【００３５】テストの結果、実施例のものは、従来例及
び比較例のものに比して、ビード部の耐久性を損なうこ
となく、サイドウォール部の外観を向上できしかも従来
例１に比して重量を軽減し得た。

【００３６】

【発明の効果】叙上の如く本発明の空気入りタイヤは、
第１のカーカスプライの本体部と折返し部との間を通り
ビードコア付近にのびる第２のカーカスプライを介在さ
せるとともに、その折返し部先端を、トレッド部端縁を
通る半径方向線よりもタイヤ赤道側かつベルト層の半径
方向内側に位置させることを要旨としたため、サイドウ
ォール部外壁面に生じるシワの発生を防ぎ見映えを高め
るとともに、耐久性を保持しつつ重量の軽減を可能とす
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示すタイヤ右半分断面図で
ある。

【図２】そのカーカスの製造工程を略示する線図であ
る。

【図３】従来のタイヤを示す断面図である。

【図４】従来のタイヤを示す断面図である。

【図５】そのカーカスの製造工程を略示する線図であ
る。

【図６】従来のタイヤを示す断面図である。

【図７】従来のタイヤを示す断面図である。

【符号の説明】

２ トレッド部 ３ サイドウォール部 ４ ビード部 ５ ビードコア ６ カーカス ７ ベルト層 ７Ａ、７Ｂ、７Ｃ ベルトプライ ９ 第１のベルトプライ ９ａ 本体部 ９ｂ 折返し部 １０ 第２のベルトプライ １１ 重なり部 Ｃ タイヤ赤道 Ｅ トレッド端縁 Ｌ 重なり部の長さ Ｎ 半径方向線 Ｐ 折返し部の先端

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】トレッド部からサイドウォール部を通りビ
   ード部にのびる本体部にビードコアの周りをタイヤ軸方
   向内側から外側に向かって折返す折返し部を延設した第
   １のカーカスプライと、トレッド部から前記第１のカー
   カスプライの本体部と、折返し部との間とを通り前記ビ
   ードコアのタイヤ軸方向外方にのびる第２のカーカスプ
   ライとを含むカーカス、及びトレッド部の内部かつ前記
   カーカスの半径方向外側に配されるとともにベルトプラ
   イからなるベルト層とを具え、 第１のカーカスプライの前記折返し部の先端は、トレッ
   ド端縁を通る半径方向線よりもタイヤ赤道側かつ前記ベ
   ルト層の半径方向内側に位置させてなる空気入りタイ
   ヤ。
2. 【請求項２】前記第１のカーカスプライの折返し部は、
   ベルト層のカーカスに隣接する内のベルトプライのタイ
   ヤ軸方向の巾である内のベルトプライの巾の０．０５倍
   以上かつ０．２０倍以下の長さを有してこのベルトプラ
   イと半径方向外位置で重なる重なり部を有することを特
   徴とする請求項１記載の空気入りタイヤ。