JPH072890B2 - 耐熱性に優れたブロー成形用樹脂組成物 - Google Patents

耐熱性に優れたブロー成形用樹脂組成物

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JPH072890B2
JPH072890B2 JP2239948A JP23994890A JPH072890B2 JP H072890 B2 JPH072890 B2 JP H072890B2 JP 2239948 A JP2239948 A JP 2239948A JP 23994890 A JP23994890 A JP 23994890A JP H072890 B2 JPH072890 B2 JP H072890B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、大型部品のブロー成形に適し、かつ耐熱性に
優れた製品の得られるブロー成形用樹脂組成物に関する
ものである。
(従来の技術) ブロー成形法は、中空容器を成形する技術としてポリオ
レフィン系樹脂を中心に広く利用されて来たが、比較的
簡便な装置を用いて大型成形品が得られることから、エ
ンジニアリング樹脂を用いた大型成形品を成形する技術
としても注目されている。例えば、ポリフェニレンエー
テルを用いたブロー成形に関し、特開平2−64149号公
報には、大型部品を成形しようとするとパリソン強度が
充分でなくドローダウンし易く、また仮に成形可能な場
合でも成形条件巾が狭いといった欠点を有していたこと
が示されている。
ところで、ゴム質重合体とシアン化ビニル化合物と芳香
族ビニル化合物よりなる樹脂組成物は一般にABS樹脂と
して知られ、主として射出成形用材料として用いられて
いる。ABS樹脂は、その分子量および分子量分布を工夫
することで(特願平2−37275号公報)優れたブロー成
形性を付与できるものの、ポリフェニレンエーテル系樹
脂に比べ耐熱性に劣るために、使用可能な用途に制約を
受けざるを得ない。例えば、塗装を施す用途では、塗料
焼付時の成形品変形を回避するため、100℃以上の耐熱
性(加熱変形温度)が求められることが多い。
ABS樹脂に耐熱性を付与する手段としては、芳香族ビニ
ル化合物としてα−メチルスチレンを用いることが一般
的であるが、ブロー成形では成形品とともに発生する大
量の“バリ”部分をリワーク再使用するため、解重合性
を有する単量体を用いた樹脂組成物では商業的な生産に
適さず、α−メチルスチレンを用いた耐熱温度100℃以
上のブロー成形材料は作れなかった。
(発明が解決しようとする課題) ブロー成形法により大型部品を容易に成形することが可
能で、かつ「バリ」部分のリワーク使用ができる耐熱性
の優れた樹脂材料の開発が求められている。
(課題を解決するための手段) 本発明者らは、かかる現状に鑑み、マレイミド化合物を
必須成分とするABS系樹脂組成物に対し、分子量を工夫
することで本課題が解決可能であることを見出し、本発
明を完成するに至った。
すなわち、本発明は; ゴム質重合体にシアン化ビニル化合物、芳香族ビニ
ル化合物および必要に応じ下記一般式にて示されるマレ
イミド化合物がグラフト共重合してなる共重合体(I)
と、下記一般式にて示されるマレイミド化合物単位を有
する芳香族ビニル−マレイミド又は芳香族ビニル−シア
ン化ビニル−マレイミド共重合体(II)、更に必要に応
じシアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物およびこ
れらの共重合可能なマレイミド化合物以外の単量体より
なる共重合体(III)よりなり、 (i)該組成物中のゴム質重合体が10〜30重量%、 (ii)該組成物中のマレイミド化合物単位が5〜25重量
%、 (iii)該組成物よりアセトンを用い、抽出して得られ
る成分の還元粘度(ηsp/c)が0.4以上、 である、耐熱性に優れたブロー成形用熱可塑性樹脂組成
物を用いるものである。また、 (但し、式中Rは水素、C1〜C18のアルキル基、フェニ
ル基、又は核置換フェニル基のいずれかを示し、は高
分子鎖を示す。) 下記に定義される230℃に於ける溶融粘度比が10以
上である点に特徴を有し、更に 上記組成物を用いたブロー成形品にも特徴を有す
る。
この様な組成物は、共重合体(I)、(II)に併せ、マ
レイミド化合物単位を含まないシアン化ビニル化合物と
芳香族ビニル化合物と必要に応じこれらと共重合可能な
単量体よりなるマレイミド化合物単位を含まない共重合
体(III)を組み合わせて作ることも可能である。
以下、本発明を更に詳しく説明する。
ABS樹脂に耐熱性を付与する目的で、マレイミド化合物
を導入する手法は広く知られている。マレイミド化合物
単位を有するABS系樹脂は一般に耐熱性が高いと同時に
射出成形がし易い、すなわち溶融粘度がα−メチルスチ
レンを用いてなる耐熱ABSに比べ小さいことが特色であ
る。
この特色を生かすために、樹脂組成物からアセトンを用
いて抽出した成分の還元粘度は、0.25〜0.4程度に設定
されるのが一般的である。しかし、これら射出成形を前
提に設計された組成物をそのままの形でブロー成形に用
いようとすると、パリソン強度が低くドローダウンが激
しいため、大型部品は得られなかった。これに対し、本
発明者らは、該抽出物の還元粘度を0.4、好ましくは0.5
以上に高めると、パリソン強度が著しく改善されること
を見出した。
この現象は、キャピラリーフローテストにより見出され
た知見、すなわちポリフェニレンエーテル系樹脂の一般
的なブロー成形温度である230℃(ブロー成形機のシリ
ンダー温度)における、シェアレート101(1/sec)と10
3(1/sec)の溶融粘度比に関係し、この値が10以上、好
ましくは15以上であることと対応している。ブロー成形
に適した樹脂の還元粘度の上限については定かではない
が、キャピラリーフローテストから還元粘度1.0を越え
るとパリソンそのものの押出しが困難になるか、或いは
押出しは出来てもメルトフラクチャーを起こし平滑な表
面を有するブロー成形品が得られないものと予想され
る。
還元粘度は、該組成物のアセトン可溶分を0.5%メチル
エチルケトン溶液とし、30℃にて測定したηsp/cであ
る。
ブロー成形品の耐熱性には、マレイミド化合物単位の含
有率が重要であり、該組成物中に5〜25重量%が好まし
い範囲である。基本的には、製品に求められる耐熱温度
に合わせて含有率を決めれば良いが、5重量%未満では
100℃以上の加熱変形温度に達せず、25重量%を越える
とηsp/cを高く設定しにくく、仮にηsp/cの高い組成物
を作るとメルトフラクチャーを起こし易いといった問題
がある。組成物中のマレイイミド化合物単位の含有率
は、IRにより求めたカルボニル量に基づきnフェニルマ
レイイミド単位に換算することで求めることができる。
マレイミド化合物単位としては、nフェニルマレイミド
の他にマレイミド、nシクロヘキシルマレイミド等、下
記一般式に示される構造のものが挙げられる。
(但し、式中Rは水素、C1〜C18のアルキル基、フェニ
ル基、又は核置換フェニル基のいずれかを示し、は高
分子鎖を示す。) マレイミド化合物単位を有する共重合体(II)を共重合
によって作成する方法には特に制限はなく、公知の乳化
重合法、懸濁重合法、溶液重合法を用いることができ
る。また、マレイミド化合物単位を高濃度で含有するシ
アン化ビニル−芳香族ビニル−マレイミド共重合体と、
マレイミド化合物を含まないシアン化ビニル−芳香族ビ
ニル共重合体をそれぞれ独立に作成し、本発明の範囲に
混合調整して用いることもできる。マレイミド化合物を
含まないシアン化ビニルと芳香族ビニルは、ゴム質重合
体を含むグラフト共重合体(I)を作成する際にグラフ
ト反応せず併生した共重合体であってもかまわない。グ
ラフト重合時にマレイミド化合物単量体を併用したグラ
フト共重合体(I)を用いることも任意である。
更には、無水マレイン酸とスチレンの共重合体をイミド
化して得た変成共重合体をABS樹脂と組み合わせて用い
ることもできる。
本発明に用いるグラフト共重合体(I)は、ゴム質重合
体にシアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物をグラ
フト共重合させてなるものであり、公知の乳化重合法、
懸濁重合法、溶液重合法により作られる。シアン化ビニ
ル化合物としてアクリロニトリル、メタアクリロニトリ
ルが芳香族ビニル化合物としてはスチレン、α−メチル
スチレンが例示できる。
ゴム質重合体は、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレ
ン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体と
いったジエン系ゴム質重合体;ブチルアクリレート−メ
チルメタアクリレート−(メタ)アクリル酸エステル共
重合体といったアクリルゴム;エチレン−プロピレン共
重合体といった飽和ゴム質重合体が挙げられる。ゴム質
重合体の含有率は10〜30重量%が好適である。
10重量%未満では耐衝撃性が十分ではなく、30重量%を
越えると「バリ」部分のリワーク使用時に樹脂が着色す
る等の問題がある。
本樹脂組成物に対し公知の熱安定剤、紫外線吸収剤、滑
剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤を添加することは任意
である。また成形品の熱膨張率を調整するためガラス繊
維、カーボン繊維等を配合することも任意である。
以下、実施例に基づき本発明を説明するが、これらは本
発明の範囲を制限しない。
なお、以下に用いる部数は重量部を表すものである。
参考例1 グラフト共重合体(I)の作成; ポリブタジエンゴムラテックス(3000Å)ゴム固形分40
部、脱イオン水100部、ロジン酸カリウム0.3部、t−ド
デシルメルカプタン0.2部を還流冷却器付き重合槽に入
れ、気相部を窒素置換しながら70℃に昇温した。アクリ
ロニトリル24部、スチレン36部、クメンハイドロパーオ
キサイド0.15部、t−ドデシルメルカプタン0.4部の混
合液、及び脱イオン水50部にナトリウムホルムアルデヒ
ドスルホキシレート0.3部、硫酸第一鉄0.004部、エチレ
ンジアミンテトラ酢酸ナトリウム0.04部を加えてなる水
溶液を、7時間にわたり連続追添加して、反応させた。
この間、重合系の温度を70℃にコントロールし、追添加
終了後に更にクメンハイドロパーオキサイド0.02部を加
え、1時間その状態を維持して、反応を完結した。
得られたラテックスから硫酸マグネシウムを用い樹脂分
を析出させ、洗浄、濾過、乾燥し、ABS乾燥粉末を得
た。
参考例2 マレイミド化合物単位を含む共重合体の作成; スチレン36重量部、アクリロニトリル14重量部、N−フ
ェニルマレイミド20重量部、エチルベンゼン30重量部及
びt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.02
重量部からなる混合液を1.26/hrの速度で、反応容積
1.9の完全混合反応器と0.5の層流反応器(3基)と
を直列に並べた重合槽に連続的に供給し、完全混合反応
器の温度109℃、層流反応器の温度110〜140℃の条件で
重合を行った。なお、第2層流反応器の上流に、スチレ
ン10重量部を添加混合した。
次いで固形分50重量%の重合体溶液を265℃に加熱する
と同時に20トールの減圧室に導き、脱揮を15分間行い、
溶融重合体を取り出し冷却固化し、共重合体を得た。
この共重合体は、N−フェニルマレイミドの残存量が18
ppmで、スチレン(ST)単位50重量%、アクリロニトリ
ル(AN)単位17重量%及びN−フェニルマレイミド(NP
MI)単位33重量%から成るものであった。これをH−1
とした。
同様の反応を温度及び開始剤量変えて実施し、H−2、
H−3を得た。各共重合体の分析値を第1表に示した。
参考例3 マレイミド化合物単位を含まない共重合体の作成; 160℃に予め昇温された連続式、完全混合型反応器に、
アクリロニトリル37.5部、スチレン37.5部、エチルベン
ゼン25部よりなる単量体混合液を連続的に添加し、添加
量に見合う分の重合体溶液を払い出しながら反応させ
た。反応系の固形分量が50重量%に安定した後に払い出
された重合体溶液を脱気し、造粒し、サンプルペレット
を得た。
これをM−1とした。同様の反応を温度を変えて実施
し、M−2、M−3を得た。それぞれの分析値を第2表
に示した。
参考例4 ブロー成形性良否の判断基準の作成; グラフト共重合体45部、(M−1)55部、エチレンビス
ステアリルアミド0.5部、熱安定剤(スミライザー BH
T)0.5部を押出機を用い、溶融混練し、ペレットを得
た。得られたペレットをブロー成形機(プラコー(株)
DA−75型)を用い、シリンダー温度210℃にて円筒を成
形した。この時、1.5m重量3.8kgのパリソンは、30秒以
上ドローダウンしなかった。同様の操作を(M−2)、
(M−3)を用い実施したところ、M−2では18秒、M
−3では数秒でドローダウンが発生した。
以上から、30秒以上ドローダウンしないものを、優良
(◎)、10秒以上ドローダウンしないものを良(○)、
10秒未満のものを不可(×)と判定した。この試験に用
いたペレットをキャピラルフローテスター(キャピログ
ラフ 1B型:東洋精機)を用い、210℃の溶融粘度とシ
ェアレートの関係を測定し、シェアレート101(1/sec)
とシェアレート103(1/sec)における溶融粘度の比を求
めたところ、それぞれ20、15、9であった。
以上の結果をまとめた第3表より、ABS樹脂のブロー成
形性は、溶融粘度のシェアレート依存性の大きい材料が
良好であり、上記溶融粘度比が10以上で実際の商業生産
が可能であることが明らかとなった。
なお、マレイミド化合物単位を含有する樹脂組成物は、
一般的ABS樹脂に比べガラス転移温度が上昇しており、
キャピラリーフローテストは、耐熱温度の差に相当する
20℃高めた温度条件である230℃にて実施した。
実施例1 グラフト共重合体45部、(H−1)55部、エチレンビス
ステアリルアミド0.5部、熱安定剤(スミライザーBBM)
0.5部を押出機を用い溶融混練し、ペレット状試料を作
成した。同試料の加熱変形温度(ASTM−D648、18.6kg荷
重、射出成形試験片による)は、108℃であった。230℃
においてキャピラルフローテストを行ったところ、溶融
粘度比は15.7であった。ペレットからのアセトン可溶分
の還元粘度ηsp/cは0.42であった。
同サンプルを大量に作成し、参考例4と同様のブロー成
形を230℃にて実施したところ、パリソンの保持時間は1
5秒と良好であった。同パリソンより製品(自動車用エ
アスポイラー、製品重量1.41kg、パリソン重量3.8kg)
を取り去った後のバリ部分を粉砕し、再度ブロー成形を
実施したが、成形品の変色、パリソン強度の低下、ゲル
化物の発生は観られず、良好なリワーク性能を有するこ
とが確認できた。
実施例2〜6、比較例1、2 同様の試験を各成分の組合せを変えて実施し、第4表を
得た。ブロー成形性の良否は、キャピラルフローテスト
の溶融粘度比に基づき判定した。
第4表よりマレイミド化合物単位を導入したABS樹脂は
高い耐熱性を有すること、ブロー成形性は該組成物のア
セトン可溶分の還元粘度が0.4、好ましくは0.5以上で良
好となること、この効果はゴム質重合体含有率には依存
しないこと、マレイミド化合物単位を含む共重合体と含
まない共重合体を併用することが可能なことが明らかで
ある。
併せて、マレイミド化合物単位を導入したABS樹脂は、
これを含まないABSに比べて小さい還元粘度においても
良好なブロー成形性を有することも明らかである。
(発明の効果) 本発明の組成物は、マレイミド化合物を必須成分とし、
分子量に工夫を凝らしたABS系樹脂型としたので、耐熱
性に優れ、かつブロー成形で大型部品に成形できる利点
を有する。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ゴム質重合体にシアン化ビニル化合物、芳
    香族ビニル化合物および必要に応じ下記一般式にて示さ
    れるマレイミド化合物がグラフト共重合してなる共重合
    体(I)と、下記一般式にて示されるマレイミド化合物
    単位を有する芳香族ビニル−マレイミド又は芳香族ビニ
    ル−シアン化ビニル−マレイミド共重合体(II)、更に
    必要に応じシアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物
    およびこれらと共重合可能なマレイミド化合物以外の単
    量体よりなる共重合体(III)よりなり、 (i)該組成物中のゴム質重合体が10〜30重量%、 (ii)該組成物中のマレイミド化合物単位が5〜25重量
    %、 (iii)該組成物よりアセトンを用い、抽出して得られ
    る成分の還元粘度(ηsp/c)が0.4以上、 であることを特徴とする、耐熱性に優れたブロー成形用
    熱可塑性樹脂組成物。 (但し、式中Rは水素、C1〜C18のアルキル基、フェニ
    ル基、又は核置換フェニル基のいずれかを示し、は高
    分子鎖を示す。)
  2. 【請求項2】下記に定義される230℃に於ける溶融粘度
    比が10以上であることを特徴とする、請求項(1)記載
    の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 【請求項3】請求項(1)〜(2)のいずれかに記載の
    組成物を用いたブロー成形品。
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