JPH07277971A - 抗腫瘍剤、ヒト腫瘍細胞に対する選択的細胞障害剤、ヘプテリジン酸クロロヒドリンの生産菌及びその製造方法 - Google Patents

抗腫瘍剤、ヒト腫瘍細胞に対する選択的細胞障害剤、ヘプテリジン酸クロロヒドリンの生産菌及びその製造方法

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JPH07277971A
JPH07277971A JP6522394A JP6522394A JPH07277971A JP H07277971 A JPH07277971 A JP H07277971A JP 6522394 A JP6522394 A JP 6522394A JP 6522394 A JP6522394 A JP 6522394A JP H07277971 A JPH07277971 A JP H07277971A
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acid
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antitumor
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Atsushi Kawashima
淳 川嶋
Taku Kato
卓 加藤
Mitsuru Niwano
満 庭野
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 ヒト腫瘍細胞に対する高い選択的細胞障害作
用を有する薬剤を提供する。 【構成】 式(1)で示されるヘプテリジン酸クロロヒ
ドリンまたは医薬として許容されるその塩類を含有する
抗腫瘍剤、およびヘプテリジン酸クロロヒドリン産生能
を有する微生物(特にアクレモニウム属に属する微生
物)を培養し、その培養物中からこれを採取することよ
り成るヘプテリジン酸クロロヒドリンの製造方法。 【効果】 ヘプテリジン酸ヒドロクロリドを含有する抗
腫瘍剤は、従来の化学療法剤に比べて低い濃度でもヒト
腫瘍細胞に対して高い選択的細胞障害作用を有する薬剤
である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高い抗腫瘍活性を有し
且つヒト腫瘍細胞に対して選択的に細胞障害作用を有す
る薬剤、及び該薬剤の有効成分を生産する微生物、並び
に該有効成分を高収率で製造する方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】我国においては、1981年以降死因の
第1位は悪性腫瘍(癌)であり、現在毎年20万人近く
の人が癌で死亡している。この様な事情に鑑みて、癌の
原因究明、癌の予防・診断方法、治療法の開発等に関す
る研究が幅広く行われている。現在行われている癌の治
療法としては、外科手術、化学療法、放射線療法が挙げ
られるが、これらのうち化学療法剤(抗腫瘍剤)につい
ては、その作用機序や作用部位の違いから下記の様に分
類されている。
【0003】(i)腫瘍細胞のヌクレオチド合成系、D
NA合成系、細胞の有糸分裂等に影響を与えて腫瘍細胞
の増殖を阻止する作用を有する薬剤: アルキル化剤(シクロホスファミド,メルファラン,チ
オテパ等)、 代謝拮抗薬(5−フルオロウラシル等)、 微生物由来の抗腫瘍性抗生物質(放線菌由来のブレオマ
イシン、マイトマイシンC、ドキソルビシン、アクチノ
マイシンD等;担子菌由来のレンチナン、シゾフィラ
ン、クレスチン等)、 金属錯体(シスプラチン、カルボプラチン等)等。 (ii)腫瘍細胞の増殖促進因子を抑制する作用を有する
薬剤: ホルモン剤(クエン酸タモキシフェン等)等。 (iii )生体防御機構のもつ抗腫瘍作用を高める作用を
有する薬剤: 細菌製剤、制癌多糖体、インターフェロン等。
【0004】これらの抗腫瘍剤の大部分は、正常細胞と
腫瘍細胞との間に存在する何らかの質的もしくは量的な
差を利用して、腫瘍細胞の増殖を直接的または間接的に
阻害する性質(即ち、選択毒性)を有している。しかし
ながら、腫瘍細胞はもともと自己の細胞から発生・分化
したものであるので、抗腫瘍剤における選択毒性は、外
的異物である細菌等を対象とする抗感染薬に比べて低い
ことが多い。換言すれば、腫瘍細胞に対して障害を起こ
す物質は、ほとんどの場合正常細胞に対しても何らかの
障害作用を示すのである。従って抗腫瘍剤の開発におい
ては、腫瘍細胞のみに高い障害作用を示す様な、即ち高
度な選択毒性を有する薬剤の開発が望まれている(ファ
ルマシアレビューNo.23, pp.71-80 (1987))。
【0005】一方、テルペン類には抗腫瘍活性を示すも
のが多数知られている。例えば、セスキテルペン化合物
としてはアカントライド,β-elemene, curcumol等、ジ
テルペン化合物としてはoridonin, ponicidin 等、トリ
テルペン化合物としてはcucurbitacin類,physalin B,
cerastrol, pristimerin, ganoderic acid類等が挙げら
れ、これらの中には既に臨床実験が行われているものも
ある(天然物医薬品学,p155-210 (1987) )が、いずれ
も腫瘍細胞に対する選択的障害作用が高いとは言い難
い。また、上記テルペン類は全て植物由来であるので、
以下の様な精製工程上の問題点がある。即ち、 天候等の自然条件に左右され、これらを安定して供給
することは困難である。 上記テルペン類を単離するには一般に抽出操作が用い
られるが、植物中の含有量がもともと少ないため、収量
が非常に悪く、且つ抽出操作中に成分が変化することも
あるため、抽出操作においては細心の注意を払う必要が
あり、大量生産には不向きである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は以上のような
問題に鑑みてなされたものであり、その第一の目的は、
抗腫瘍作用を有し且つヒト腫瘍細胞に対する高い選択的
細胞障害作用を有する薬剤を提供することである。ま
た、本発明の第二の目的は、この様な薬剤の有効成分を
効率良く生産する能力を有する微生物を提供することで
ある。更に本発明の第三の目的は、上記有効成分を高収
率で製造する方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の抗腫瘍剤は、式
(1)
【0008】
【化2】
【0009】で示されるヘプテリジン酸クロロヒドリン
または医薬として許容されるその塩類、及び医薬として
許容される担体を含有することに要旨を有するものであ
る。また、本発明のヒト腫瘍細胞に対する選択的細胞障
害剤は、上記ヘプテリジン酸クロロヒドリンまたは医薬
として許容されるその塩類、及び医薬として許容される
担体を含有することに要旨を有するものである。
【0010】本発明の微生物は、アクレモニウム属に属
し、上記ヘプテリジン酸クロロヒドリンを生産する能力
を有する微生物アクレモニウムsp.No.618であ
る。本発明のヘプテリジン酸クロロヒドリンの製造方法
は、アクレモニウム属に属し、上記ヘプテリジン酸クロ
ロヒドリンを生産する能力を有する微生物を培地に培養
して培養物中にヘプテリジン酸クロロヒドリンを生産蓄
積させ、これを採取することに要旨を有するものであ
る。
【0011】
【作用】本発明者らは、微生物由来の新規な抗腫瘍活性
物質を得る目的で、種々の不完全菌や担子菌を分離して
研究を行った結果、大阪府箕面市で採集した腐朽材より
分離した不完全菌が、その培養物中に抗腫瘍活性を有す
る化合物(即ち、ヘプテリジン酸クロロヒドリン)を大
量に生産することを見出し、本発明を完成したのであ
る。
【0012】上記ヘプテリジン酸クロロヒドリンは、L.
A. Calhounらによって、松及びとうひの芽を食べる害虫
に対して殺虫効果を示すこと、並びに松及びとうひ材中
に生育する子嚢菌類(Phyllosticta sp.)を培養して得
られた菌体(51.5g )から精製されること(5mg )が報
告されている(Mycol. Res. 96(4): 281-286 (199
2))。しかしながら、ヘプテリジン酸クロロヒドリンが
抗腫瘍活性を有するという報告は未だなく、本発明者ら
によって初めて見い出された作用である。また、ヘプテ
リジン酸クロロヒドリンの生産菌についても上述した様
にPhyllosticta sp.のみが報告されているにとどまって
いる。更に、ヘプテリジン酸クロロヒドリンを高収率で
製造する方法については現在まで報告されておらず、本
発明によって初めて見い出された方法である。本発明に
係るヘプテリジン酸クロロヒドリンは、以下の表1に示
す様な理化学的性質を有する。
【0013】
【表1】
【0014】上記ヘプテリジン酸クロロヒドリンの医薬
として許容される好適な塩類としては、例えば以下の様
な常用の無毒性の塩類が挙げられる。 無機塩基等の塩基との塩として、アルカリ金属塩(例
えばナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属
塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモ
ニウム塩 有機塩基塩等の塩基との塩として、有機アミン塩(例
えばトリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エ
タノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロ
ヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジア
ミン塩等) 塩基性アミノ酸または酸性アミノ酸との塩(例えばア
ルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等)
【0015】本発明の抗腫瘍剤およびヒト腫瘍細胞に対
する選択的細胞障害剤は、有効成分として上記ヘプテリ
ジン酸クロロヒドリンまたは医薬として許容されるその
塩類を含有し、これに医薬として許容される無機担体も
しくは有機担体を加えて固体、半固体、または液体の形
で、経口投与剤または非経口投与剤の剤型に製剤化す
る。
【0016】本発明の薬剤は、この様に経口剤及び非経
口剤のいずれの形態でも提供可能であり、投与経路や投
与対象等に応じた最適の剤型を選ぶことができる。経口
投与に適した剤型としては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒
剤、軟・硬カプセル剤、ペレット剤、舌下剤、各種液剤
等が例示され、非経口に適した剤型としては、注射剤、
点滴剤、輸液、軟膏、ローション、トニック、スプレ
ー、懸濁剤、油剤、乳剤、坐剤等が挙げられる。本発明
の有効成分を製剤化させるには常用に従えばよく、界面
活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩
衝剤、懸濁剤、等張剤、その他常用の医薬として許容さ
れる担体を適宜使用する。
【0017】本発明の薬剤の投与量は、剤型の種類、治
療の種類、投与方法、患者の年齢、体重、患者の症状、
腫瘍の種類や部位、更には進行の程度等を考慮して適宜
決定されるものであるが、有効成分であるヘプテリジン
酸クロロヒドリンとして、一般に大人では、非経口投与
の場合(静脈投与、筋肉投与等)、約0.01〜10m
g/kg/日の範囲であり、好ましくは0.1〜5mg
/kg/日であり、経口投与の場合は約0.5〜20m
g/kg/日の範囲であり、好ましくは1〜10mg/
kg/日の範囲である。
【0018】本発明の微生物は、アクレモニウム属に属
し、ヘプテリジン酸クロロヒドリンを生産する能力を有
する微生物であり、その様な例として例えばアクレモニ
ウムsp.No.618が挙げられる。以下に、上記菌
株sp.No.618に関する菌学的性質を示す。
【0019】(1)菌の分離 本菌株は、大阪府箕面市で採取した腐朽材を用いて、木
材腐朽菌の分離に通常用いられる方法で単離した。即
ち、上記腐朽材の試料(ピンセット1つまみ分)を火炎
処理後、ブナ木粉(100メッシュの篩いを通過したも
の)2.0%と寒天1.6%を含有する培地(WA培
地)に接種し、1〜2週間培養した。生育した菌体を、
ピンセットあるいは白金耳を用いて新しい培地に接種す
る単菌分離操作を行うことによりコロニーを分離し、目
的とする菌株を単離した。
【0020】(2)菌の形態的性質 菌糸は、ポテト−デキストロース培地及び麦芽エキス寒
天培地上でよく発達し、隔壁が観察される。菌糸はとき
に集合して、数本の菌糸が絡み合ったロープ状となる。
該菌糸は白色〜灰白色を呈し、その表面は滑面で、直
径:2.5〜4.0μmである。菌糸から直立した分生
子柄の先端に1細胞の分生子の集団を形成する。分生子
柄への分生子の付着力は弱く、僅かな衝撃によっても分
生子柄より脱離する。分生子は楕円形で、その大きさは
5.0〜7.5×2.5〜7.5μmである。分生子の
表面は平滑である。
【0021】(3)各種培地における培養的性質 各種培地における培養的性質を表2に示す。なお、後記
する観察結果はすべて特に特記しない限り、28℃、7
日間の条件下における各培地での結果である。
【0022】
【表2】
【0023】(4)生理学的・化学分類学的性質 ポテト−デキストロース培地を用いた、pH及び温度条
件の結果を以下に示す。 最適生育条件 生育最適pH:5〜8 生育最適温度:約25℃ 生育の範囲 pH生育域:2〜10 温度生育域:10〜30℃
【0024】(5)フェノールオキシダーゼ反応 0.5%の没食子酸を含むポテト−デキストロース寒天
培地を用いて本菌株を培養した結果、培地の色が褐色を
呈した。従って、本菌株はフェノールオキシダーゼ反応
が陽性であることが分かった。
【0025】上記(1)〜(5)に記載した本菌株の菌
学的性状を要約すると以下の通りである。即ち、菌糸は
隔壁を有し、ときに集合してロープ状になる。菌糸の色
は白色〜灰白色を呈し、菌糸から直立した分生子柄の先
端に1細胞の分生子の集団を形成する。培養上の諸性質
としては、各種培地上で菌糸は白色系の色調を呈し、表
2に示す様に溶解性色素は生産しない。フェノールオキ
シダーゼ反応は陽性で、木材腐朽能力を有する。これら
の結果から、本菌株はデビッドマロックによる分類(カ
ビの分離・培養と同定、50〜89頁、1983年)に
より、アクレモニウム属に属する菌種であると考えら
れ、アクレモニウムsp.No.618(Acremonium s
p. No. 618)と命名して工業技術院生命工学工業技術研
究所へ寄託した(FERM P−14211,受託日:
平成6年3月7日)。
【0026】以上、ヘプテリジン酸クロロヒドリン生産
菌についてアクレモニウムsp.No.618を例に挙
げて説明したが、これに限定されず、アクレモニウム属
に属し、ヘプテリジン酸クロロヒドリンを生産する能力
を有する菌株は全て本発明の範囲内に包含される。
【0027】本発明のヘプテリジン酸クロロヒドリンの
製造方法は、アクレモニウム属に属し、これを生産する
能力を有する微生物を培地に培養して培養物中にヘプテ
リジン酸クロロヒドリンを生産蓄積させて採取する方法
であり、この方法によってヘプテリジン酸クロロヒドリ
ンを高収率で得ることが可能である。以下に、その方法
を詳述する。
【0028】まず、アクレモニウム属に属し、ヘプテリ
ジン酸クロロヒドリンを生産する能力を有する微生物を
培地に培養する。上記微生物の培養においては、通常の
不完全菌を培養する方法が一般に用いられる。即ち、培
地としては、微生物が同化し得る炭素源、消化し得る窒
素源、更には必要に応じて無機塩等を含有する栄養培地
が使用される。ここで、上記同化し得る炭素源として
は、グルコース、フルクトース、マルトース、キシロー
ス、マンニット、グリセリン、糖蜜、澱粉、デキストリ
ン、コーンスチープリカー等の炭水化物が挙げられ、上
記消化し得る窒素源としては、ペプトン、肉エキス、酵
母エキス、乾燥酵母、大豆粉、大豆蛋白分解物、カゼイ
ン、アミノ酸、尿素、NZ−アミン、コーンスチープリ
カー、フィッシュミール等の有機窒素源;硝酸塩、アン
モニウム塩等の無機窒素化合物が挙げられ、上記無機塩
としてはナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マ
グネシウム塩、リン酸塩等が挙げられる。これらの各炭
素源、窒素源及び無機塩は、それぞれ単独でまたは2種
以上組み合わせて用いられる。更に必要に応じて、本菌
株の生育やヘプテリジン酸クロロヒドリン及び医薬とし
て許容されるその塩類の生産を促進する目的で、重金属
(Fe,Cu等)、微量栄養源(ビタミン類等)、発育
促進物質(パントテン酸、ビオチン等)、前駆物質(メ
バロン酸、ピロリン酸等)等を添加してもよい。
【0029】上記菌株の培養は通常、振盪培養または通
気攪拌培養等の好気的条件下で行うことが好ましく、工
業的規模で培養を行うには深部通気攪拌培養が好まし
い。培養温度は10〜30℃が好ましく、24〜30℃
がより好ましい。培養液のpHは、菌体の増殖を高める
ためにも弱酸性〜中性(pH5〜7)にすることが好ま
しい。培養時間は、液体培養の場合、通常3〜8日間で
あるが、好ましくは培養物中のヘプテリジン酸クロロヒ
ドリンの蓄積量が最大に達したときに培養を終了させ
る。上記した培地組成、培地の液性、培養温度、培養時
間及び攪拌速度、通気量等の培養条件は、使用する菌株
の種類や外部条件等に応じて最適条件を適宜選択して行
えばよい。なお、液体培養において発泡が生じるとき
は、シリコン油、植物油、界面活性剤等の消泡剤を適宜
使用することが好ましい。
【0030】この様にして得られた培養物中に蓄積され
たヘプテリジン酸クロロヒドリンは、主として培養濾液
中に含まれるので、遠心分離や濾過によって培養濾液と
菌体を分離し、培養濾液からヘプテリジン酸クロロヒド
リンを抽出・精製することが好ましい。培養濾液からヘ
プテリジン酸クロロヒドリンを抽出するには、メタノー
ル、エタノール、n−ブタノール、アセトン、クロロホ
ルムその他の有機溶媒;水;またはリン酸緩衝液等を、
単独でまたはこれらを2種以上組み合わせたものからな
る混合液を用いることが好ましい。得られた粗製の抽出
物は、更に疎水性物質の精製に通常用いられる方法、例
えばシリカゲル、アルミナ等の担体を用いたカラムクロ
マトグラフィーによって精製することができる。この様
な方法によって、ヘプテリジン酸クロロヒドリンを高収
率で得ることができる。
【0031】以下実施例を挙げて本発明をさらに詳細に
説明するが、下記実施例は本発明を制限するものではな
く、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施するこ
とは全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0032】
【実施例】
実施例1:ヘプテリジン酸クロロヒドリンの製造 (1)ヘプテリジン酸クロロヒドリン生産菌の培養 直径90mmのシャーレ上に調製したポテト−デキスト
ロース寒天培地に、アクレモニウムsp.No.618
株の斜面培養物(ポテト−デキストロース寒天斜面培地
上で28℃で7日間培養したもの)を1白金耳接種し、
28℃で7日間培養し、培養物を得た。500mL容エ
ルレンマイヤーフラスコにポテト−デキストロース液体
培地(pH5.0)100mLを滅菌調製し、これに上
記培養物の1/5量を接種した後、ロータリーシェーカ
ー(200rpm)を用いて28℃で7日間培養し、種
母を得た。
【0033】次に、10L容ジャーファーメンターにポ
テト−デキストロース液体培地6Lを滅菌調製した後、
これに上記方法で得られた種母1Lを無菌的に移植し、
28℃で3日間培養(空気通気量:毎分3L、攪拌速
度:200rpm)して、培養液約6Lを得た。
【0034】(2)培養物からのヘプテリジン酸クロロ
ヒドリンの抽出 図1に、上記培養物からヘプテリジン酸クロロヒドリン
を精製する工程を示す。以下、同図を参照しながら、こ
の工程を詳細に説明する。まず、上記(1)で得られた
培養液約6Lを濾過して菌体と培養濾液に分離した。得
られた培養濾液を減圧濃縮した後、乾固した。この乾固
物に、アセトン80%、水20%からなる混合液3Lを
加えて攪拌・抽出を行い、80%アセトン抽出液を減圧
乾固して抽出物14gを得た。上記80%アセトン抽出
物をクロロホルム:メタノール:水=5:6:4の二層
液々分配で分配し、クロロホルム抽出物2.6gを得
た。残りのメタノール/水層を減圧乾固し、これをn−
ブタノール:メタノール:水=4:1:5の二層液々分
配で分配し、n−ブタノール抽出物3.8gを得た。こ
の様にして、ヘプテリジン酸クロロヒドリンを含むクロ
ロホルム抽出物及びn−ブタノール抽出物を得た。
【0035】(3)抽出物からのヘプテリジン酸クロロ
ヒドリンの精製 上記(2)で得られたクロロホルム抽出物及びn−ブタ
ノール抽出物を、予め10mMリン酸緩衝液を充填した
オクタデシルシラン化シリカゲルカラム(内径50m
m、長さ10cm)に吸着させ、10mMリン酸緩衝液
で洗浄した後、10mMリン酸緩衝液中のアセトニトリ
ル濃度を10%ずつ上げていくステップワイズ方式で溶
出させた。得られた溶出液のうち、10mMリン酸緩衝
液:アセトニトリル=70:30からなる画分を減圧乾
固し、溶出物520mgを得た。この溶出物を、オクタ
デシルシラン化シリカゲルカラム(内径20mm、長さ
25cm)を用いた分取用高速液体クロマトグラフィー
(溶出は、10mMリン酸緩衝液:アセトニトリル=7
0:30のアイソクラティック方式で行う)にかけ、波
長210nmの紫外部吸収でヘプテリジン酸クロロヒド
リンに該当するピークを有する画分を集めた。この画分
を減圧乾固すると、ヘプテリジン酸クロロヒドリンの純
品180mgを得た。
【0036】実施例2及び比較例:細胞障害性の評価 Michael C. Alleyらの方法(Cancer Research 48, 589-
601, Feb. 1, 1988 )に従って、ヒト正常細胞(ヒト正
常繊維芽細胞:IMR-90)及びヒト腫瘍細胞(ヒト副腎皮
質上皮腺癌細胞:SW-13 )に対するヘプテリジン酸クロ
ロヒドリンの細胞障害性を評価した。
【0037】即ち、上記各培養細胞を10%牛胎児血清
を含むダルペッコ改変イーグル培地を、培地1mL当た
りの細胞数が5×103 〜1×105 個になる様に調製
した。96ウェルのマイクロプレ−トに、1ウェル当た
り各調製液を100μL注入した。このプレートを、5
%CO2 −95%空気中、37℃で24時間培養後、被
験物質として種々の濃度のヘプテリジン酸クロロヒドリ
ン{上記各注入量と等量の培地(DMSOを0.1%以
下含有)に溶解もしくは懸濁させる}を添加した後、更
に同一条件下で72時間培養した。この培養物に、1m
gのMTT(3-(4,5-dimethylthiazo-2-yl)-2,5-diphen
yltetrazolium bromide )/mL・PBSを、最終濃度
が200μg/mLになる様に添加し、同一条件下で更
に4時間静置した。
【0038】生細胞が存在する場合には、この間にMT
Tが取り込まれ、該生細胞内で還元されて青色のホルマ
ザンを形成する。本実施例における被験物質の細胞障害
能は、この様な生細胞のMTTの取り込みを測定して、
コントロール群(被験物質を添加しない群)と比較する
ことにより評価した。即ち、上記工程終了後、ウェル中
の培地を取り除いた状態で各細胞内に取り込まれたMT
Tを、100%DMSO(150μL/ウェル)で細胞
外に抽出し、分光光度計を用いて540nmにおける吸
光度(A540 )を測定した。
【0039】被験物質の細胞障害作用は、正常細胞の場
合は、コントロールとして被験物質無添加の正常細胞の
MTTの取り込み量を100としたときの、被験物質を
用いた場合の正常細胞のMTTの取り込み量の割合(生
存率%)で表し、一方、腫瘍細胞の場合は、コントロー
ルとして被験物質無添加の腫瘍細胞のMTTの取り込み
量を100としたときの、被験物質を用いた場合の腫瘍
細胞のMTTの取り込み量の割合(生存率%)で表し
た。縦軸に得られた生存率を、横軸に被験物質の最終濃
度の対数をとってプロットし、50%の生存率を与える
濃度:IC50(Inhibited Concentration of 50%, μg
/mL)を求めた。その結果を図2に示す。
【0040】ヘプテリジン酸クロロヒドリンを用いた場
合のヒト正常繊維芽細胞(IMR-90)及びヒト副腎皮質上
皮腺癌細胞(SW-13 )のIC50はそれぞれ、0.74μ
g/mL及び0.13μg/mLであった。このことか
ら、ヘプテリジン酸クロロヒドリンは、SW-13 に対して
高い選択的細胞障害作用を発揮し、且つその程度も非常
に高い(IMR-90に比べて約6倍もの高い選択的細胞障害
作用を有する)ことが分かった。
【0041】一方、比較例として既知の抗腫瘍剤である
5−フルオロウラシル及びシスプラチンを用いて、上記
と同様にして細胞障害性を評価したところ、5−フルオ
ロウラシルにおけるIMR-90及びSW-13 のIC50はそれぞ
れ、11μg/mL及び9μg/mLであり、シスプラ
チンにおけるIMR-90及びSW-13 のIC50はそれぞれ、
2.2μg/mL及び1.1μg/mLであった。この
様に比較例の抗腫瘍剤はいずれも、本発明に係るヘプテ
リジン酸クロロヒドリンに比べて、SW-13 に対する選択
的細胞障害作用はかなり低かった。また、ヘプテリジン
酸クロロヒドリンは、比較例の抗腫瘍剤に比べて、より
低い濃度において強い細胞障害作用を発揮することが分
かった。
【0042】更に、ヘプテリジン酸クロロヒドリンを用
いて、他の腫瘍細胞(ヒト悪性黒色腫細胞:G-361 ,ヒ
ト神経芽細胞腫細胞:IMR-32)に対する細胞障害性を同
様にして評価した。その結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】ヒト悪性黒色腫細胞(G-361 )のIC50
0.28μg/mL、ヒト神経芽細胞腫細胞(IMR-32)
のIC50は0.24μg/mLであった。このことか
ら、ヘプテリジン酸クロロヒドリンは、上述したSW-13
以外にも、G361及びIMR-32に対して高い選択的細胞障害
作用を発揮し、且つその程度もかなり高い(IMR-90に比
べて約3倍もの高い選択的細胞障害作用を有する)こと
が分かった。
【0045】実施例3:急性毒性試験の結果 ヘプテリジン酸クロロヒドリンをマウスの腹腔内に投与
したときのLD50は、23.5〜32.0mg/kgで
あった。製剤例1 :錠剤 ヘプテリジン酸クロロヒドリン 50g ラクトース 90g コーンスターチ 29g ステアリン酸マグネシウム 1g 及びの全量との17gを混合し、別途7gのか
ら調製したペーストと共に顆粒化させた。得られた顆粒
に、の5gとの全量を加えて十分混合し、この混合
物を圧縮錠剤機で圧縮し、1錠当たりを50mg含有
する錠剤1000個を製造した。
【0046】製剤例2:注射剤 ヘプテリジン酸クロロヒドリン 5.0g プロピレングリコール 5.0g 塩化ナトリウム 8.5g クロロブタノール 5.0g 炭酸水素ナトリウム 50.0g 〜の全量を蒸留水1000mLに溶解した後、アン
プルに1mLずつ分注して注射剤1000本を製造し
た。
【0047】
【発明の効果】本発明の薬剤は以上の様に構成されてい
るので、従来の化学療法剤に比べて低い濃度でも、ヒト
腫瘍細胞に対して高い選択的細胞障害作用を発揮するこ
とができる。また、本発明の微生物は、上記薬剤の有効
成分であるヘプテリジン酸クロロヒドリンを生産する能
力を有するものである。更に、本発明の製造方法は以上
の様に構成されているので、上記有効成分を高収率で製
造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ヘプテリジン酸クロロヒドリンの精製工程を示
す工程図である。
【図2】ヘプテリジン酸クロロヒドリンの細胞障害作用
を示すグラフである。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式(1) 【化1】 で示されるヘプテリジン酸クロロヒドリンまたは医薬と
    して許容されるその塩類、及び医薬として許容される担
    体を含有することを特徴とする抗腫瘍剤。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のヘプテリジン酸クロロ
    ヒドリンまたは医薬として許容されるその塩類、及び医
    薬として許容される担体を含有することを特徴とするヒ
    ト腫瘍細胞に対する選択的細胞障害剤。
  3. 【請求項3】 アクレモニウム属に属し、請求項1に記
    載のヘプテリジン酸クロロヒドリンを生産する能力を有
    する微生物アクレモニウムsp.No.618。
  4. 【請求項4】 アクレモニウム属に属し、請求項1に記
    載のヘプテリジン酸クロロヒドリンを生産する能力を有
    する微生物を培地に培養して培養物中にヘプテリジン酸
    クロロヒドリンを生産蓄積させ、これを採取することを
    特徴とするヘプテリジン酸クロロヒドリンの製造方法。
JP6522394A 1994-04-01 1994-04-01 抗腫瘍剤、ヒト腫瘍細胞に対する選択的細胞障害剤、ヘプテリジン酸クロロヒドリンの生産菌及びその製造方法 Withdrawn JPH07277971A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009013901A1 (ja) * 2007-07-23 2009-01-29 Tokyo University Of Agriculture And Technology 新規化合物及びその製造方法、医薬組成物、抗腫瘍剤、並びにその使用
JP4500951B1 (ja) * 2009-08-07 2010-07-14 学校法人神戸学院 Dna合成酵素阻害剤

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JP2011037730A (ja) * 2009-08-07 2011-02-24 Kobe Gakuin Dna合成酵素阻害剤

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