JPH07268527A - 非腐食性フラックスろう付用高強度チューブ材および該チューブ材用アルミニウム合金 - Google Patents

非腐食性フラックスろう付用高強度チューブ材および該チューブ材用アルミニウム合金

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JPH07268527A
JPH07268527A JP8377694A JP8377694A JPH07268527A JP H07268527 A JPH07268527 A JP H07268527A JP 8377694 A JP8377694 A JP 8377694A JP 8377694 A JP8377694 A JP 8377694A JP H07268527 A JPH07268527 A JP H07268527A
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skin material
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JP8377694A
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Yoshito Oki
義人 沖
Haruo Sugiyama
治男 杉山
Shiyunichi Ushino
俊一 牛野
Masayuki Hanazaki
昌幸 花崎
Tatsuyuki Kobayashi
達由樹 小林
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Nikkei Techno Research Co Ltd
Nippon Light Metal Co Ltd
Original Assignee
Nikkei Techno Research Co Ltd
Nippon Light Metal Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 弗化物系化合物のような非腐食性フラックス
によってろう付けされる自動車用ラジエーターなどの熱
交換器チューブ材に関して、薄肉化されたチューブ材の
強度および耐孔食性を確保するアルミニウム合金材の提
供。 【構成】 wt%で、Fe:0.4〜1.6%、Mn:0.7〜1.7
%で且つ合計2.4%以下のFeとMnを含有すると共にSi:
0.7〜1.3%以下、Cu:0.3〜1.5%以下で且つSiとCu
の合計が1.5%以上を含有し、前記Fe、MnとSi,Cuとが
次式を満足する範囲で含有され、しかもMgを0.1%以下
に規制し、残部がアルミニウムと不可避不純物とからな
るアルミニウム合金芯材と、 Fe(%)+Mn(%)≧1.7×〔2.5×Si(%)+Cu
(%)〕−4.2 該芯材の一面にクラッドされた、Zn:1.0〜3.0%、M
g:0.5〜2.5%、Si:0.05〜0.5%、Fe:0.05〜
0.5%を含有するアルミニウム合金皮材および前記芯材
の他面にクラッドされたAl−Si系ろう材から成る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は非腐食性フラックスろう
付用高強度チューブ材および該チューブ材用アルミニウ
ム合金材に係り、弗化物系化合物のような非腐食性フラ
ックスによりろう付される自動車用ラジエーターなどの
熱交換器チューブ材に関して、近時において薄肉化され
たチューブ材の強度および耐孔食性を確保することので
きるアルミニウム合金材を提供しようとするものであ
る。
【0002】
【従来の技術】自動車のラジエーターやヒーターコア等
の水系熱媒体が循環するアルミニウム製熱交換器は、例
えば図1に示すラジエーターのように、コルゲート加工
されたフィン1をはさんだ複数の偏平管2の両端にヘッ
ダープレート3とタンク4を配して熱媒体通路を形成し
た構造となっており、偏平管2とフィン1によって高温
の熱媒体と低温の空気が熱交換されるものである。
【0003】上記したようなアルミニウム製熱交換器の
製造は、外面にろう材をクラッドしたブレージングシー
トからなる偏平管2及びヘッダープレート3とコルゲー
ト加工されたフィン1を組み合わせて590℃以上に加
熱し、ろう材を溶融して各部材を接合するいわゆるろう
付法により行われている。そしてろう付法としては、ろ
う付性に優れ且つ後処理の不要な弗化アルミニウムカリ
ウム系の非腐食性フラックスを使用した炉中ろう付法が
多く採用されていることは公知の如くである。
【0004】水系熱媒体が内部を循環する熱交換器の管
用ブレージングシートとしては、ろう付後もある程度の
強度を有する3003等のAl−Mn系合金を芯材とし、そ
の片面に4045等のAl−Si系合金ろう材を、更にアル
ミニウム材に対して腐食性のある水系熱媒体と常時接す
る他の片面に7072等のAl−Zn系合金犠牲陽極皮材を
クラッドした3層材が通常用いられている。即ちこのよ
うなブレージングシートは、芯材鋳塊とろう材及び皮材
を熱間においてクラッド圧延後、冷間圧延と焼鈍を適宜
組合わせて製造されている。
【0005】ところが近年において熱交換器の小型軽量
化の進行とともに、管用材料の板厚を薄くする要求が高
まってきた。しかし、従来用いられていた上述のブレー
ジングシートをそのまま薄肉化したのでは、ろう付後の
強度が不足したり水系熱媒体に対する内部耐食性を満足
できなくなるという問題が生じることが知られ、このた
め、従来のAl−Mn系合金を芯材とするブレージングシー
トのろう付後の強度を高め、且つ内部耐食性を向上させ
るために種々の検討がなされていて、例えば特開昭63
−118044、特開平2−50934に開示されてい
るように芯材にSiやCu或はさらにMgを添加したり、特開
平2−175093、特開平4−371368に開示さ
れているようにAl−Zn合金犠牲陽極皮材にMgを添加した
材料が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前記した特開昭63−
118044のように、Al−Mn系合金芯材へのSi、Cuの
添加は材料強度を高めるとしても、その添加量が多くな
ると溶融開始温度が低下し590〜610℃のろう付温
度でバーニングを生ずる恐れがある。即ちこのためにそ
れらの元素添加量には限度があり、薄肉化のための強度
向上を図るのに充分な量を添加することができない。
【0007】また、前記特開平2−50934のような
芯材へのMgの添加は、少量でもその強度を適切に向上す
ることができるが、弗化アルミニウムカリウム系の非腐
食性フラックスを用いたろう付では微量添加されただけ
でもろう付性を著しく阻害することは一般に知られてい
る如くであって適切な手法となし得ない。
【0008】さらに、前記特開平2−175093、特
開平4−371368のように犠牲陽極皮材へのMgの添
加によっても材料強度を高めることができるが、皮材の
厚さは芯材の厚さの1/10〜1/5程度であるため、
チューブ材全体に対する強度向上効果としては充分とは
なし得ない。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は上記したような
従来技術における課題を解決し、ろう付性を適切に満足
すると共に薄肉化のための有効な強度向上を図ることに
ついて検討を重ねた結果、芯材用アルミニウム合金とし
てFe及びMnをSi,Cu添加量との関係である程度以上添加
することにより、溶融開始温度を低下させることなくS
i,Cu添加量を増大して強度を確保し得ることを見いだ
し、さらにFe,Mnの添加はSi,Cuの添加ほど顕著でない
としても一段の強度向上効果の得られることを確認し
た。このようにして得られた芯材に、Mgを添加したAl−
Zn系犠牲陽極皮材とAl−Si系ろう材をクラッドすること
によって優れたろう付後の強度を有するチューブ材が得
られることを確認した。
【0010】また、本発明においては、腐食性を有する
水系熱媒体に対する内部耐食性を高めるために、皮材組
成及び皮材の厚さについて種々の検討を行ったところ、
薄肉化されたチューブにおいては、ろう付後における皮
材中の最大Zn濃度と皮材表面のCu濃度及びその比が内部
耐食性に重要であることを見いだし、これら濃度及びそ
の比を適切な範囲にするために、皮材の厚さを芯材のCu
含有量に応じて増加することによって、従来よりも一段
と内部耐食性に優れたチューブ材が得られることを明ら
かにし、本発明を完成したものであって、以下の如くで
ある。
【0011】(1) wt%で、Fe:0.4〜1.6%、Mn:0.
7〜1.7%で且つ合計2.4%以下のFeとMnを含有すると
共にSi:0.7〜1.3%以下、Cu:0.3〜1.5%以下で且
つSiとCuの合計が1.5%以上を含有し、前記Fe、MnとS
i,Cuとが次式を満足する範囲で含有され、しかもMgを
0.1%以下に規制し、残部がアルミニウムと不可避不純
物とからなるアルミニウム合金芯材と、 Fe(%)+Mn(%)≧1.7×〔2.5×Si(%)+Cu
(%)〕−4.2 該芯材の一面にクラッドされた、Zn:1.0〜3.0%、M
g:0.5〜2.5%、Si:0.05〜0.5%、Fe:0.05〜
0.5%を含有するアルミニウム合金皮材および前記芯材
の他面にクラッドされたAl−Si系ろう材から成ることを
特徴とした非腐食性フラックスろう付用高強度チューブ
材。
【0012】(2) wt%で、Fe:0.4〜1.6%、Mn:0.
7〜1.7%で且つ合計2.4%以下のFeとMnを含有すると
共にSi:0.7〜1.3%以下、Cu:0.3〜1.5%以下で且
つSiとCuの合計が1.5%以上を含有し、しかもCr:0.0
5〜0.3%、Zr:0.05〜0.3%、Ti:0.05〜0.3%
の何れか1種または2種以上を含有し、前記Fe、MnとS
i,Cuとが下式を満足する範囲で含有されると共にMgを
0.1%以下に規制し、残部がアルミニウムと不可避不純
物とからなるアルミニウム合金芯材と、 Fe(%)+Mn(%)≧1.7×〔2.5×Si(%)+Cu
(%)〕−4.2 該芯材の一面にクラッドされた、Zn:1.0〜3.0%、M
g:0.5〜2.5%、Si:0.05〜0.5%、Fe:0.05〜
0.5%を含有するアルミニウム合金皮材、および前記芯
材の他面にクラッドされたAl−Si系ろう材からなること
を特徴とした非腐食性フラックスろう付用高強度チュー
ブ材。
【0013】(3) 皮材の厚さが30〜70μm で、且
つ下式を満足することを特徴とした前記(1)項または
前記(2)項に記載の非腐食性フラックスろう付用高強
度チューブ材。 皮材の厚さ(μm )≧芯材のCu含有量(%)×25+2
【0014】(4) 非腐食性フラックスを用いたろう付
加熱後の皮材中における最大Zn濃度が0.7〜2.0%で、
皮材表面のCu濃度が0.25%以下であり、且つ最大Zn濃
度と表面Cu濃度との比が4以上であることを特徴とした
前記(3)項に記載の非腐食性フラックスろう付高強度
チューブ材用アルミニウム合金。
【0015】
【作用】アルミニウム合金芯材とアルミニウム合金皮材
およびAl−Si系ろう材のクラッドされたものであること
によって該チューブに対しフィンなどを量産的にろう付
して熱交換特性に優れた機構を提供し、また皮材によっ
て芯材における孔食発生などを防止して耐用性の高い熱
交換機構を提供せしめる。
【0016】芯材における添加元素の限定理由は以下の
如くである。 Fe:0.4〜1.6%、 Feは、Si,Cuが多く添加されたアルミニウム合金の溶融
開始温度を上昇させる作用を有し、またMn,Siと共に微
細な第二相化合物を生成するため強度向上にも有効であ
る。その添加量が0.4%未満ではそれらの効果が乏し
く、1.6%を越え、もしくはMnとの合計量で2.4%を越
えると鋳造時に巨大な晶出物が生じて延性を低下するの
でこれを上限とする。
【0017】Mn:0.7〜1.7%、 Mnは、Si,Cuが多く含有されたアルミニウム合金の溶融
開始温度を上昇させる作用を有することはFeと同じであ
り、またFe,Siと共に微細な第二相化合物を生成し強度
向上にも有効であることにおいても同様である。このMn
添加量が0.7%未満ではそれらの効果が充分でなく、一
方1.7%を越え、又はFeとの合計量で2.4%を越えると
鋳造時に巨大な晶出物を生ぜしめて延性を低下し好まし
くない。
【0018】Si:0.7〜1.3%以下、Cu:0.3〜1.5%
以下、 SiとCuは、ともにろう付後の強度を向上させるのに有効
な元素であって、これらのSiおよびCuは何れもろう付後
に固溶状態及びMn,Feと共に微細な第二相化合物を生成
してろう付後の強度を向上させる。SiとCuの添加量が合
計で1.5%未満では前記強度向上が不十分であり、しか
もSi添加量が1.3%を越えるとFe,Mnを巨大晶が生成し
ない上限まで添加しても溶融開始温度がろう付温度以下
に低下し、またCu添加量が1.5%を越えると成形加工性
が低下するようになって好ましくないことになるので、
これらを上限とする。また、Si、Cuの下限値以下では強
度が低下する。
【0019】Fe,Mnの添加量と、Si,Cuの添加量の関係
については、 Fe(%)+Mn(%)≧1.7×〔2.5×Si(%)+Cu
(%)〕−4.2 の式を満足した組合せの合金とすることにより、溶融開
始温度がろう付温度の610℃以上となり、バーニング
の生ずる恐れを解消せしめる。
【0020】なお本発明によるものが、鋳造に際して鋳
造割れが発生しまたは発生する恐れのあるときは常法に
より鋳造組織の微細化剤を添加することによりこれを防
止することができる。かかる微細化剤としてはTi:0.0
5%以下、Bを併用するときはTi:0.05%以下、B:
0.01%以下が好ましい。
【0021】また本発明による芯材合金には必要に応じ
てCr,Zr,Tiの何れか1種または2種以上を下記する組
成範囲で含有することができる。 Cr:0.05〜0.3% Zr:0.05〜0.3% Ti:0.05〜0.3% 即ち、Cr,Zr,TiはそれぞれAl−Cr系,Al−Zr系,Al−
Ti系の微細化合物を生成して材料の高温強度を高める。
それらの添加量がそれぞれ0.05%未満ではその作用が
不十分であり、しかもそれぞれが0.3%を越えると鋳造
時に粗大な晶出物を生じて延性が低下するのでこれを上
限とする。
【0022】なお本発明では芯材にMg:0.1%以下を含
有させることができ、このMgは、少量でもろう付後の強
度を高めるが、弗化アルミニウムカリウム系の非腐食性
フラックスを用いてろう付すると、フラックス成分であ
るFとMgが反応するためフラックスの効果が低減してろ
う付性が著しく低下するので0.1%以下に規制すること
が必要である。
【0023】次に本発明における皮材の成分組成につい
て述べると以下の如くである。 Zn:1.0〜3.0% Znは、皮材に犠牲陽極効果をもたせ、芯材を水系熱媒体
による腐食から保護するために必須の元素である。添加
量が1.0%未満ではその効果が少なく、一方3.0%を越
えると自己腐食量が多くなり皮材の寿命が低下するので
好ましくない。
【0024】Mg:0.5〜2.5% Mgは、ろう付時に生じる皮材表面からのZnの蒸発を抑制
するとともに皮材電位を卑に移行させ犠牲陽極効果を高
める。また、ろう付時に芯材に拡散して芯材SiとMg2Si
化合物を生成し、ろう付後の強度を向上させる効果もあ
る。添加量が0.5%未満であるとそれらの効果が少な
く、また2.5%を越えると溶融開始温度が低下するので
0.5%〜2.5%とした。
【0025】Si:0.05〜0.5% Siは、MgとともにMg2Si 化合物を生成し、皮材のろう付
後の強度を向上させる。添加量が0.05%未満だとその
効果が少なく、一方0.5%を越えると貴な電位を有する
Al−Fe−Si系化合物が多く生成するようになり皮材の犠
牲陽極効果を減ずるので好ましくない。
【0026】Fe:0.05〜0.5% Feは、Siとともに微細なAl−Fe−Si系化合物を生成し、
皮材のろう付後の強度を向上させる。添加量が0.05%
未満ではその効果が少なく、0.5%を越えると効果が飽
和するのに加え耐孔食性が低下することから0.05〜0.
5%とした。
【0027】芯材にクラッドされる皮材の厚さとして
は、30〜70μm の範囲が望ましく、且つ芯材のCu含
有量との関係で下式を満足する範囲であれば内部耐食性
は一段と向上する。 皮材の厚さ(μm )≧芯材のCu含有量(%)×25+2
【0028】即ち、皮材厚が30μm 未満であると、ろ
う付時に生じるZnの蒸発及び芯材への拡散によって、皮
材中のZn残存量の低下が大きくなる。さらに、ろう付時
の拡散により芯材中のCuが皮材表面に到達し易くなるた
め、皮材と芯材の電位差が少なくなり、十分な犠牲陽極
効果を示さなくなる恐れがある。このような芯材Cuの皮
材表面への拡散は、強度向上のため芯材のCu含有量を増
加すると必然的に多くなる。この場合には皮材の厚さを
上式の範囲とすることにより、ろう付時の拡散により皮
材表面に達するCuを少なく抑えることができ、皮材の犠
牲陽極効果が損なわれることを防止できる。一方、皮材
厚が70μm を越えると、ろう付後に残存するZn量が多
くなって皮材の自己腐食量が増大し、それに伴って発生
する腐食生成物が管路内に滞留することになり熱効率を
低下させるため好ましくない。
【0029】ろう付後の皮材中の最大Zn濃度を0.7%以
上且つ皮材表面のCu濃度を0.25%以下、さらに最大Zn
量と表面Cu量の比を4以上とすることによって、皮材の
電位を芯材よりも50mV以上卑にして皮材の犠牲陽極効
果を十分発揮させる。Cu濃度が0.25%を越えるかまた
はZn濃度が0.7%未満、あるいは最大Zn量と表面Cu量の
比が4より小さいと、一段と薄肉化されたチューブとし
ての内部耐食性を満足できなくなる。また皮材中の最大
Zn濃度が2.0%を越えると、皮材の自己腐食量が増大す
るため好ましくない。このようなろう付後における皮材
中の最大Zn濃度及び皮材表面のCu濃度は、チューブ皮材
のZn含有量及び皮材の厚さを上述のようにすることによ
り、通常のろう付加熱条件、即ち590℃まで5〜30
分で昇温し、590〜610℃で2〜10分保持後、4
00℃まで2〜20分で冷却することにより適切に達成
できる。
【0030】ろう材としては、4045、4343等の
Al−Si合金が使用される。また熱交換器部材であるフィ
ン材、ろう材、芯材の間で、ろう付後の電位関係が
(卑)フィン材<ろう材<芯材(貴)の条件を壊さない
限り、ろう材中に0.5〜2.5%のZnをAl−Si合金系のろ
う材に添加して、最適電位勾配を得ることができる。芯
材の防食を図る最適電位勾配としては、フィン材とろう
材及びろう材と芯材との間に電位差50mV以上を確保す
ることが望ましい。ろう材におけるSi含有量は一般的に
7〜15%、特に9〜12%である。
【0031】
【実施例】本発明によるものの具体的な実施例について
説明すると以下の如くである。 実施例1 本発明者等は次の表1に示す組成のアルミニウム合金芯
材、Al−Si合金ろう材及びAl−Zn−Mg合金犠牲陽極皮材
を各々DC鋳造し、まずろう材及び犠牲陽極皮材を48
0℃で熱間圧延してクラッド用厚板を作製し、次いで4
80℃で3時間の均質化処理を施した芯材スラブと熱間
でクラッド圧延後、冷間圧延にて厚さ0.43mmの板とし
た。
【0032】
【表1】
【0033】上記のようにして得られた板はこれを40
0℃で2時間の焼鈍処理後、さらに冷間圧延して厚さ0.
30mmのブレージングシートを作製した。なお、ろう材
のクラッド率は8%で、皮材のクラッド率は15%であ
る。このようにして得られた各板について、ろう付後の
強度、粗大な第二相化合物の有無及びろう付性の評価を
行った。また、芯材スラブのみを熱間圧延、冷間圧延し
て厚さ3.0mmの板を作製し芯材合金の溶融開始温度を求
めた結果は次の表2に示す如くであった。
【0034】
【表2】
【0035】即ち、ろう付後の強度は、ろう付を想定し
て600℃で3分間の加熱処理を行った供試板からJI
S−13B号引張試験片を切出し、引張試験で測定し
た。また粗大な第二相化合物の有無は、供試板の断面組
織観察により判定した。さらにろう付性の評価は、板厚
0.5mmであるA3003材の上に、幅25mm、長さ40
mmの供試ブレージングシートを垂直に固定し、これを溶
剤で脱脂後、 KAlF4とK3AlF6の混合組成からなるフラッ
クスを約2 g/m2塗布し、露点−30℃に制御した窒素
ガス雰囲気中で610℃により3分間のろう付処理した
試験片の接合状態及びバーニングに伴うろうの芯材への
侵食状態を断面組織観察することにより行った。また、
芯材合金の溶融開始温度は、供試板材を2℃/分の昇温
速度で示差熱分析することにより求めた。
【0036】表2の結果によれば、本発明材によるもの
は何れもろう付後引張強さにおいて191 N/mm2 以上
で、芯材の溶融開始温度が610℃以上であり、芯材中
に粗大な第二相化合物がなくて、ろう付部接合状態も良
好であり、ろうの侵食も小さいのに対し、比較材8〜1
2、17、18及び従来材33はろう付後強度が143
〜187 N/mm2 であり、また比較材10、19及び2
0の溶融開始温度は607℃以下であって、ろう付後に
バーニングに伴うろうの侵食が大きい。また、比較材1
1、12及び30〜32には粗大な第二相化合物が生じ
ており、比較材29のろう付部接合状態は不良であっ
て、比較材及び従来材は何れも好ましいろう付用高強度
アルミニウム合金チューブ材となし得ない。
【0037】実施例2 次の表3に示す組成のアルミニウム合金犠牲陽極皮材
と、Al−Si合金ろう材及び前記表1のNo. 14合金芯材
を各々DC鋳造し、まずろう材及び犠牲陽極皮材を48
0℃で熱間圧延してクラッド用厚板を作製し、次いで4
80℃で3時間の均質化処理を施した芯材スラブと熱間
でクラッド圧延後、冷間圧延にて厚さ0.35mmの板とし
た。これを400℃で2時間の焼鈍処理後、さらに冷間
圧延して厚さ0.25mmのブレージングシートを作製し
た。なお、ろう材のクラッド率は8%で、皮材のクラッ
ド率は18%(皮材の厚さは45μm )である。
【0038】
【表3】
【0039】上記のようにして得られた各板について、
ろう付後の強度および内部耐食性評価を行った結果は、
次の表4に示す如くであった。
【0040】
【表4】
【0041】前記表4に於けるろう付後の強度は、ろう
付を想定して600℃で3分間の加熱処理を行った供試
板からJIS−13B号引張試験片を切出し、引張試験
で測定した。腐食試験後の最大孔食深さは、ろう付を想
定して窒素ガス雰囲気中で600℃で3分間の加熱処理
後、ろう材側及び端部を樹脂でシールし、Clイオン50
0ppm 、SO4 イオン500ppm 、Cuイオン10ppm を塩
酸で pH 3に調整した腐食液に浸漬して、88℃×8時
間→35℃×16時間を1サイクルとして28回繰り返
すビーカーテストを行い、皮材側に発生した孔食の深さ
を顕微鏡焦点深度法で測定して求めた。皮材中の最大Zn
濃度及び皮材表面のCu濃度は、ろう付後の板材断面をX
MAライン分析したチャートから求めた。
【0042】即ち本発明皮材によるチューブ材はろう付
後の引張強さが192 N/mm2 以上あり、ろう付後の皮
材中の最大Zn濃度が0.78〜1.63%、表面Cu濃度は0.
15%以下、Zn濃度とCu濃度の比は5.2以上であるため
内部耐食性は良好で、腐食試験により最大75μm 以下
の浅い腐食しか生じていない。これに対し、比較皮材
8、10〜12及び従来皮材13を用いたチューブ材
は、ろう付後の引張強さは十分であるが、比較材8、1
0及び従来材13は皮材Mg量が0.7%未満であるか皮材
Zn量が1.0%未満のため、ろう付後に皮材中に残存する
Zn濃度が0.56%以下と少なく、腐食試験で122μm
以上の深い孔食が発生している。また、比較材11及び
12は、ろう付後の最大Zn濃度、表面Cu濃度とも問題な
い範囲にあるが、皮材Si量または皮材Fe量が本発明範囲
よりも多いため、腐食試験で107μm 以上の深い孔食
が発生した。なお、比較皮材9を用いたチューブ材は、
600℃の加熱処理により皮材にバーニングが生じたた
め、評価試験は行わなかった。
【0043】実施例3 次の表5に示す組成のアルミニウム合金芯材(表1のN
o. 2、6及び14合金)と、Al−Si合金ろう材及び犠
牲陽極皮材(表3のNo. 2合金)を各々DC鋳造し、ま
ずろう材及び犠牲陽極皮材を480℃で熱間圧延してク
ラッド用厚板を作製し、次いで480℃で3時間の均質
化処理を施した芯材スラブと熱間で表5に示した皮材ク
ラッド率でクラッド圧延後、冷間圧延にて厚さ0.35mm
の板とした。これを400℃で2時間の焼鈍処理後、さ
らに冷間圧延して厚さ0.25mmのブレージングシートを
作製した。なお、ろう材のクラッド率は8%てある。
【0044】
【表5】
【0045】上記した表5のようにして得られた各板に
ついて内部耐食性評価を行った結果は次の表6に示す如
くであった。
【0046】
【表6】
【0047】前記表6に於けるろう付後の強度は、ろう
付を想定して600℃で3分間の加熱処理を行った供試
板からJIS−13B号引張試験片を切出し、引張試験
で測定した。腐食試験後の最大孔食深さは、ろう付を想
定して窒素ガス雰囲気中で600℃で3分間の加熱処理
後、ろう材側及び端部を樹脂でシールし、Clイオン50
0ppm 、SO4 イオン500ppm 、Cuイオン10ppm を塩
酸で pH 3に調整した腐食液に浸漬して、88℃×8時
間→35℃×16時間を1サイクルとして28回繰り返
すビーカーテストを行い、皮材側に発生した孔食の深さ
を顕微鏡焦点深度法で測定して求めた。皮材中の最大Zn
濃度及び皮材表面のCu濃度は、ろう付後の板材断面をX
MAライン分析したチャートから求めた。
【0048】即ち本発明の第3発明によるチューブ材1
〜4、6〜8、11及び12は、ろう付後の皮材中の最
大Zn濃度が0.81〜1.42%、表面Cu濃度は0.21%以
下、Zn濃度とCu濃度の比は4.6以上であるため内部耐食
性は良好で、腐食試験により最大74μm 以下の浅い腐
食しか生じていない。これに対し、皮材の厚さが第3発
明の範囲から外れるチューブ材5、9及び10は、ろう
付後の表面Cu濃度が0.25%を越えるか皮材中の最大Zn
濃度と表面Cu濃度の比が4未満のため、腐食試験で83
〜95μm のやや深い孔食が発生している。なお、上記
チューブ材のろう付後の引張強さはいずれも191 N/
mm2 以上あり、一段と薄肉化されたチューブ材としての
強度を十分満たしている。
【0049】
【発明の効果】以上説明したような本発明によれば、非
腐食性フラックスを用いたろう付時にバーニング及びろ
う付不具合の恐れがなく、且つ内部耐食性に優れた高強
度アルミニウム合金チューブ材を適切に得ることがで
き、内部における腐食性水系熱媒体が循環する熱交換器
の耐用性を有効に向上して薄肉軽量化が可能になるもの
であるから、工業的にその効果の大きい発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動車用ラジエーターの1例について部分切欠
して示した斜面図である。
【符号の説明】
1 コルゲートフィン 2 偏平管 3 ヘッダープレート 4 タンク
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年4月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 牛野 俊一 静岡県庵原郡蒲原町蒲原1丁目34番1号 株式会社日軽技研内 (72)発明者 花崎 昌幸 静岡県庵原郡蒲原町蒲原1丁目34番1号 株式会社日軽技研内 (72)発明者 小林 達由樹 静岡県庵原郡蒲原町蒲原1丁目34番1号 株式会社日軽技研内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 wt%で、Fe:0.4〜1.6%、Mn:0.7〜
    1.7%で且つ合計2.4%以下のFeとMnを含有すると共に
    Si:0.7〜1.3%以下、Cu:0.3〜1.5%以下で且つSi
    とCuの合計が1.5%以上を含有し、前記Fe、MnとSi,Cu
    とが次式を満足する範囲で含有され、しかもMgを0.1%
    以下に規制し、残部がアルミニウムと不可避不純物とか
    らなるアルミニウム合金芯材と、 Fe(%)+Mn(%)≧1.7×〔2.5×Si(%)+Cu
    (%)〕−4.2 該芯材の一面にクラッドされた、Zn:1.0〜3.0%、M
    g:0.5〜2.5%、Si:0.05〜0.5%、Fe:0.05〜
    0.5%を含有するアルミニウム合金皮材および前記芯材
    の他面にクラッドされたAl−Si系ろう材から成ることを
    特徴とした非腐食性フラックスろう付用高強度チューブ
    材。
  2. 【請求項2】 wt%で、Fe:0.4〜1.6%、Mn:0.7〜
    1.7%で且つ合計2.4%以下のFeとMnを含有すると共に
    Si:0.7〜1.3%以下、Cu:0.3〜1.5%以下で且つSi
    とCuの合計が1.5%以上を含有し、しかもCr:0.05〜
    0.3%、Zr:0.05〜0.3%、Fe:0.05〜0.3%の何
    れか1種または2種以上を含有し、前記Fe、MnとSi,Cu
    とが下式を満足する範囲で含有されると共にMgを0.1%
    以下に規制し、残部がアルミニウムと不可避不純物とか
    らなるアルミニウム合金芯材と、 Fe(%)+Mn(%)≧1.7×〔2.5×Si(%)+Cu
    (%)〕−4.2 該芯材の一面にクラッドされたZn:1.0〜3.0%、Mg:
    0.5〜2.5%、Si:0.05〜0.5%、Fe−0.05〜0.5
    %を含有するアルミニウム合金皮材、および前記芯材の
    他面にクラッドされたAl−Si系ろう材から成ることを特
    徴とした非腐食性フラックスろう付用高強度チューブ
    材。
  3. 【請求項3】 皮材の厚さが30〜70μm で、且つ下
    式を満足することを特徴とした請求項1または請求項2
    に記載の非腐食性フラックスろう付用高強度チューブ
    材。 皮材の厚さ(μm )≧芯材のCu含有量(%)×25+2
  4. 【請求項4】 非腐食性フラックスを用いたろう付加熱
    後の皮材中における最大Zn濃度が0.7〜2.0%で、皮材
    表面のCu濃度が0.25%以下であり、且つ最大Zn濃度と
    表面Cu濃度との比が4以上であることを特徴とした請求
    項3に記載の非腐食性フラックスろう付高強度チューブ
    材用アルミニウム合金。
JP8377694A 1994-03-31 1994-03-31 非腐食性フラックスろう付用高強度チューブ材および該チューブ材用アルミニウム合金 Pending JPH07268527A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
NL1016977C2 (nl) * 1999-12-23 2003-09-30 Reynolds Metals Co Aluminiumlegeringen met optimale combinaties van vormbaarheid, bestandheid tegen corrosie en warme verwerkbaarheid, en werkwijzen van toepassing.
JP2010163674A (ja) * 2009-01-19 2010-07-29 Furukawa-Sky Aluminum Corp 強度及び耐食性に優れたアルミニウム合金ブレージングシート

Cited By (2)

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