JP2000317673A - ろう付け性に優れたブレージングシート - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 フッ素系の非腐食性フラックスを使用する雰
囲気ろう付け性に優れ、たブレージングシートを提供す
る。 【解決手段】 Ｓｉ：５〜１５％、Ｌｉ：０．０２〜
０．０８％を含有し残部Ａｌ及び不可避不純物よりなり
不可避不純物のＭｇを０．０１％以下に規制したろう
材、又はさらにこれにＺｎ：０．５〜１０％、Ｓｎ：
０．０１〜０．２％、Ｉｎ：０．０１〜０．２％の１種
または２種以上を含有したろう材をＡｌ芯材の片面ある
いは両面にクラッドしたブレージングシートであり、ア
ルミニウム合金製熱交換器のフッ素系の非腐食性フラッ
クスを使用する雰囲気ろう付に用いられ、優れたろう付
け性に有するものである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、Ａｌ芯材の片面あ
るいは両面にＡｌ−Ｓｉ合金ろう材をクラッドしたブレ
ージングシートに係り、特にフッ素系の非腐食性フラッ
クスを使用する雰囲気ろう付け用いられるろう付け性に
優れたブレージングシートに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来より自動車用のラジエータ、ヒータ
やエアコンのエバポレータ、コンデンサなどアルミニウ
ム製熱交換器の組立方法として、フッ素系の非腐食性フ
ラックスを利用する雰囲気ろう付け法、いわゆるノコロ
ック工法が普及しており、Ａｌ−Ｓｉ系のろう材をＡｌ
芯材にクラッドしたブレージングシートがこれに使用さ
れている。近年、地球環境問題の観点から、自動車より
排出される炭酸ガス、窒素酸化物の量抑制が叫ばれてお
り、このため自動車の軽量化による燃費向上が有効な対
策として採用され始めている。自動車用熱交換器もこの
ような背景から使用材料の高強度化・高耐食性化による
薄肉、軽量化が検討されており、ＪＩＳ ３００３Ａｌ
合金の芯材からなるブレージングシートを薄肉化するた
めに、Ｃｕ，Ｓｉ，Ｍｇの添加が有効であり、各種のＡ
ｌ合金の材料が開発されている。

【０００３】しかしながら、薄肉化するためにＭｇを添
加したＡｌ合金芯材からなるブレージングシートは、非
腐食性のフッ化物系フラックスを用い炉内に窒素ガスを
導入してろう付を行うノコロック法ではろう付け性が低
下するので、Ｍｇ含有Ａｌ合金材が使用できず、材料の
高強度化にも限界があった。

【０００４】Ｍｇ含有Ａｌ合金材でも、そのろう付けが
可能なろう材として、米国カイザー社はＬｉ量０．０１
〜０．３０％含有するＡｌ−Ｓｉ系ろう材を提案してい
る（特表平９−５００４２２公報）。このＬｉ添加Ａｌ
−Ｓｉ系ろう材を使用すれば、ろう材の表面張力が低下
し、しかも、アルミ表面の酸化皮膜Ａｌ_２０_３を還元
し、スピネル型のＬｉＡｌＯ_２に転換し、Ｍｇ添加量
０．７％までのＡｌ合金芯材のノコロックろう付けが可
能であるとされている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、Ｌｉ添
加したＡｌ−Ｓｉ系ろう材は、過剰のＬｉ添加したもの
は、ろう材の製造時に酸化を引き起し、ろう付け性が不
安定になるという問題がある。また、ろう付け時の雰囲
気中の水分、酸素量が変動した際には、ろう材の製造時
と同様の表面酸化が進み、ろう付け性を低下させる問題
がある。また、ブレージングシート芯材の薄肉化に有効
であるとしてＡｌ合金芯材へ多量のＭｇを添加すると、
芯材のＭｇ含有Ａｌ合金の製造段階で酸化を引き起し、
さらにろう付け工程においては、その加熱段階で酸化が
さらに進み、Ａｌ−Ｓｉ系ろう材にＬｉを添加したＡｌ
−Ｓｉ−Ｌｉ系ろう材をもってしてもろう付け性は改善
されないという問題がある。本発明の目的は、フッ素系
の非腐食性フラックスを使用する雰囲気ろう付け性に優
れ、またブレージングシートのＭｇ含有Ａｌ合金芯材の
ろう付けを可能、かつ安定化せしめ、熱交換器材料の薄
肉、高強度化がはかれる、ろう付け性に優れたブレージ
ングシートを提供するものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するためのもので、Ａｌ芯材の片面あるいは両面にＡ
ｌ−Ｓｉ合金ろう材をクラッドしたブレージングシート
において、前記Ａｌ−Ｓｉ合金ろう材はＳｉ：５〜１５
％、Ｌｉ：０．０２〜０．０８％を含有し残部Ａｌ及び
不可避不純物よりなり前記不可避不純物のＭｇを０．０
１％以下に規制したものであり、フッ素系の非腐食性フ
ラックスを使用する雰囲気ろう付けに用いられることを
特徴とするろう付け性に優れたブレージングシートであ
る。

【０００７】また、本発明は、Ａｌ芯材の片面あるいは
両面にＡｌ−Ｓｉ合金ろう材をクラッドしたブレージン
グシートにおいて、前記Ａｌ−Ｓｉ合金ろう材はＳｉ：
５〜１５％、Ｌｉ：０．０２〜０．０８％、さらにＺ
ｎ：０．５〜１０％、Ｓｎ：０．０１〜０．２％、Ｉ
ｎ：０．０１〜０．２％の１種または２種以上を含有し
残部Ａｌ及び不可避不純物よりなり前記不可避不純物の
Ｍｇを０．０１％以下に規制したものであり、フッ素系
の非腐食性フラックスを使用する雰囲気ろう付けに用い
られることを特徴とするろう付け性に優れたブレージン
グシートである。また、本発明は、上記ろう付け性に優
れたブレージングシートを用いたろう付け性に優れたア
ルミニウム合金製熱交換器である。

【０００８】

【作用】本発明は、Ａｌ−Ｓｉ合金ろう材をクラッドし
たブレージングシートにおいて、Ａｌ−Ｓｉ合金ろう材
がＳｉ：５〜１５％、Ｌｉ：０．０２〜０．０８％を含
有し残部Ａｌ及び不可避不純物よりなり、この不可避不
純物のＭｇを０．０１％以下に規制することにより、溶
融しているフッ素系の非腐食性フラックスとＡｌ−Ｓｉ
合金ろう材とのＭｇ−Ｆ化合物形成が抑制され、ろう材
本来の優れた流動性を有するものである。またブレージ
ングシートのＡｌ芯材がＭｇを含有するものの場合で
も、芯材からろう材側へＭｇが拡散してくる前に、Ｍｇ
を規制したＡｌ−Ｓｉ−Ｌｉろう材による濡れが開始
し、ろう付け部には良好なフィレットが形成され、優れ
たろう付け性を示すものである。

【０００９】非腐食性のフッ化物系フラックスを用い炉
内に窒素ガスを導入してろう付を行うノコロック法にお
いて、ろう材が溶融する（ろう材の溶融点５７７℃）手
前の温度で、フラックス中のフッ素がＭｇ含有Ａｌ合金
芯材中のＭｇと反応し、Ｍｇ−Ｆ化合物を形成し、ろう
付け性も大きく損ねる結果となるものである。このろう
付け性低下の原因は、フッ化物系フラックスがろう材層
のＭｇと反応しＭｇ−Ｆ化合物生成により消費されて、
フラックス本来の作用であるアルミ材表面に溶融して拡
がってアルミ表面の強固な酸化皮膜を破壊する働きが不
十分になること、またＭｇとの反応により形成されたＭ
ｇ−Ｆ化合物の融点がフラックス溶融温度（５６５℃）
より高く、溶融したフラックスが再凝固して、フラック
スの流動性、酸化皮膜破壊作用を減じることによるもの
である。これを解決するためにフラックス使用量を過剰
にして、Ｍｇ含有Ａｌ合金材料で熱交換器をろう付けす
ることを試みてみたが、ろう付け後にろう材表面に形成
された厚いフラックス残渣層が、熱交換器の熱交換能力
を低下させる。また厚いフラックス残渣層が、表面処理
性を低下させるなどの問題が生じた。

【００１０】そこで、Ａｌ−Ｓｉ合金ろう材中のＬｉ量
とＡｌ合金芯材のＭｇ量を変えて、ノコロックろう付け
性への影響を詳細に調査した結果、Ａｌ−Ｓｉ合金ろう
材中の微量Ｍｇの存在がろう付け性に大きく影響するこ
とを見出した。すなわち、Ａｌ−Ｓｉ合金ろう材の材料
製造段階、ろう付け時の加熱段階でのブレージングシー
ト（ろう）表面の皮膜形成に、Ａｌ−Ｓｉ合金ろう材中
のＬｉとＭｇが関与しており、このＡｌ−Ｓｉ合金ろう
材のＬｉは０．０８％以下、Ｍｇは０．０１％以下に規
制することで、ろう付け性の安定化を図ることができ
た。これは、Ａｌ−Ｓｉ合金ろう材中のＭｇ量を低く規
制することで、溶融フラックスとのＭｇ−Ｆ化合物形成
が抑制され、ろう材の流動性の良さが発揮されたことに
よるものである。また、芯材にＭｇが添加されたＡｌ合
金の場合には、芯材からろう材側へＭｇが拡散してくる
前に、Ｍｇを規制したＡｌ−Ｓｉ−Ｌｉろう材による濡
れが開始され、ろう付け部にはフィレットが形成され、
品質が均一で仕上げが良好なろう付け性を示すものあ
る。

【００１１】また、本発明は、Ａｌ芯材の片面あるいは
両面にＡｌ−Ｓｉ合金ろう材をクラッドしたブレージン
グシートにおいて、前記Ａｌ−Ｓｉ合金ろう材はＳｉ：
５〜１５％、Ｌｉ：０．０２〜０．０８％、さらにＺ
ｎ：０．５〜１０％、Ｓｎ：０．０１〜０．２％、Ｉ
ｎ：０．０１〜０．２％の１種または２種以上を含有し
残部Ａｌ及び不可避不純物よりなり前記不可避不純物の
Ｍｇを０．０１％以下に規制したものであり、ろう材本
来の優れた流動性、ろう付け部のフィレット形成が良好
なろう付け性を示すとともに、Ａｌ−Ｓｉ合金ろう材
に、Ｚｎ、Ｓｎ、Ｉｎを１種または２種以上含むことに
より、公知のＺｎ，Ｓｎ，ｌｎを添加したろう材と比較
して優れた犠牲作用を示し、芯材を防食して、耐食寿命
を改善するものである。

【００１２】本発明について上述したところであるが、
ろう材がＳｉ：５〜１５％、Ｌｉ：０．０２〜０．０８
％を含有し残部Ａｌ及び不可避不純物よりなり、この不
可避不純物のＭｇを０．０１％以下に規制する、その成
分範囲限定の理由の点から説明する。Ｓｉは５％未満で
は溶融温度が高くなり、流動性が低下する。１５％を超
えて添加すると、巨大な初晶Ｓｉが発生し、ろう付け性
低下し、加工性も低下する。Ｌｉは０．０２％未満では
流動性が良くならない。０．０８％を超えて添加すると
材料製造時の酸化、ろう付け加熱時の酸化が進みろう付
け性が低下する。Ｍｇを０．０１％以下に規制するの
は、０．０１％を超えると、Ｌｉとの相乗作用で酸化が
進みろう付け性が低下する。

【００１３】Ｚｎ、Ｓｎ、ｌｎは、Ｓｉ：５〜１５％、
Ｌｉ：０．０２〜０．０８％を含有し、不可避不純物の
Ｍｇを０．０１％以下に規制したＡｌ−Ｓｉ合金ろう材
の電位を卑にして、ブレージングシートの芯材の防食に
作用するもので、Ｚｎは０．５％未満ではろう材の電位
を卑にして、芯材を防食することができができず、１０
％を超えると、防食効果が飽和するとともに、ろう材の
塑性加工性を低下させる。またＳｎ、ｌｎもろう材の電
位を卑にして芯材を防食するものであるが、０．０１％
未満では芯材を防食することができができず、０．２％
を超えると、防食効果が飽和し、ろう材の塑性加工性を
低下させるものである。

【００１４】また、本発明のＡｌ−Ｓｉ合金ろう材は、
さらにＦｅ等の通常のＡｌろう材に添加されている元素
を含有してもよい。例えばＦｅは０．８％以下、具体的
には０．８％〜０．０５％添加する。Ｆｅは、ろう材が
溶融後、凝固するときの結晶粒を微細化し、フィレット
の強度を高める働きをするものである。さらに、Ｆｅは
凝固時に金属間化合物を形成し、これが腐食の起点とな
るので結晶粒の微細化効果と耐食性とのバランスから、
Ｆｅを添加するときは０．８％以下添加するものであ
る。

【００１５】

【発明の実施の形態】本発明のブレージングシートは、
Ｓｉ：５〜１５％、Ｌｉ：０．０２〜０．０８％を含有
し残部Ａｌ及び不可避不純物よりなり不可避不純物のＭ
ｇを０．０１％以下に規制したろう材をＡｌ芯材にクラ
ッドしたものであり、そのＡｌ芯材は、その固相線温度
が本発明のろう材の液相線温度よりたかいもので、例え
ばＪＩＳ １ｘｘｘ，ＪＩＳ ３ｘｘｘ系芯材、強度向
上のためにＣｕ，Ｓｉ，Ｍｇを添加したＡｌ合金、ある
いは強度、耐食性向上のためにＣｒ，Ｚｒ，Ｔｉ等を添
加したＡｌ合金である。強度向上のためにＭｇを添加す
る場合は、ろう付過程における芯材のＭｇのろう材への
拡散を考慮すると、芯材のＭｇ量は１．０％未満にする
ことが好ましい。

【００１６】本発明のブレージングシートは、Ｓｉ：５
〜１５％、Ｌｉ：０．０２〜０．０８％を含有し残部Ａ
ｌ及び不可避不純物よりなり不可避不純物のＭｇを０．
０１％以下に規制したろう材を芯材の片面にクラッドし
たもの、芯材の両面にクラッドしたものである。また芯
材の片面に本発明のろう材をクラッドし、もう一方の片
面に犠牲材（犠牲陽極材）をクラッドしたものである。
犠牲陽極材としては、例えばＪＩＳ ７０７２合金、あ
るいはＳｎ，Ｚｎ，Ｉｎなどの材料の電位を卑にする元
素を添加した合金が用いられる。また本発明のブレージ
ングシートは、Ｓｉ：５〜１５％、Ｌｉ：０．０２〜
０．０８％を含有し残部Ａｌ及び不可避不純物よりなり
不可避不純物のＭｇを０．０１％以下に規制したろう材
のＡｌ芯材に対するクラッド率（片面のろう材の厚さ）
は、３〜１８％である。

【００１７】本発明において、フッ素系の非腐食性フラ
ックスとしては、ＫAlＦ_４，Ｋ_２AlＦ_５が用いられ、ま
た雰囲気としては炉内に窒素ガスを導入してろう付を行
うものである。例えばブレージングシートをＫAIＦ_４／
Ｋ_２AlＦ_５の混合フラックス液に浸漬してフラックス塗
布しする。炉で水分を蒸発させて窒素ガス中でろう付け
加熱を行うものである。

【００１８】本発明のブレージングシートは、ラジエー
ター、コンデンサー、エバポレーター等アルミニウム合
金製熱交換器のろう付に用いられるもので、具体的には
自動車用ラジエーター、カーエアコン用コンデンサー・
エバポレーター、家電用ヒーターユニット等アルミニウ
ム合金製熱交換器のろう付に有用なものである。本発明
のＳｉ：５〜１５％、Ｌｉ：０．０２〜０．０８％を含
有し残部Ａｌ及び不可避不純物よりなりその不可避不純
物のＭｇを０．０１％以下に規制したろう材を芯材にク
ラッドしたブレージングシートを用いて、フッ素系の非
腐食性フラックスを使用し窒素ガス雰囲気でアルミニウ
ム合金製熱交換器のろう付を行うことにより、Ｍｇ−Ｆ
化合物の形成が抑制され、フラックス本来の作用である
アルミ材表面に溶融して拡がり強固な酸化皮膜を破壊す
ることになり、良好にろう付けを行なうことができる。

【００１９】また、Ｍｇ−Ｆ化合物の形成が抑制され、
良好なフラックスの濡れ、拡がりのためにろう付け後に
厚いフラックス残渣層が形成されることもなく、熱伝導
性がよく熱交換能力の低下を起こすことがなく、また表
面処理性の低下などを起こすこともなく、アルミニウム
合金製熱交換器の品質が均一で仕上げが良好なろう付け
が行われる。また、薄肉、軽量化のために開発されてい
るＣｕ，Ｓｉ，Ｍｇを添加したＡｌ合金を芯材としたブ
レージングシートを用いてアルミニウム合金製熱交換器
のろう付を行なうことができる。特に、強度向上のため
にＣｕ，Ｓｉ，Ｍｇ（Ｍｇは１．０％未満）を添加した
Ａｌ合金、あるいは強度、耐食性向上のためにＣｒ，Ｚ
ｒ，Ｔｉ等を添加したＡｌ合金を用いて芯材としたブレ
ージングシートを用いて、アルミニウム合金製熱交換器
のろう付を行なうことができるので、材料の高強度化が
図られ自動車の軽量化による燃費向上に有用なものであ
る。

【００２０】

【実施例１】本発明について、実施例により具体的に説
明する。表１は、本発明例のろう材合金、比較例のろう
材合金、従来例のろう材合金の組成を示すものである。
表２は芯材の合金の組成を示すものである。ブレージン
グシートは、表１に示すろう材合金と、表２に示す芯材
Ａｌ合金をクラッドしたものである。ブレージングシー
トの作製について示す。ろう材は、表１に示す合金を溶
製し、６０×１８０×１８０ｍｍの金型鋳造塊とした。
ろう材の鋳造塊は片面５ｍｍずつ両面を面削し、５０ｍ
ｍ厚さとした後、５００℃に加熱して熱間圧延にて６ｍ
ｍ厚さとした。また、芯材は表２に示す合金を溶製し、
６０×１８０×１８０ｍｍの金型鋳造塊とした。芯材の
鋳造塊は、ろう材と同様に面削をした後、６００℃×３
時間の均質化加熱処理を行った。

【００２１】上述の５０ｍｍ厚さの芯材の両側に、上述
の６ｍｍ厚さのろう材板を配置して、５００℃にてクラ
ッド圧延、冷間圧延を経て１ｍｍの板材とした。最終投
階で燃焼ガス雰囲気（窒素、炭酸ガス混合雰囲気）で３
６０℃×２時間の焼鈍処理を施し、ろうクラッド率９．
７％のＯ調質（焼鈍材）のブレージングシートを作製し
た。

【表１】

【表２】

【００２２】図１は、ろう付け性の試験を示す図であ
る。下板（２）の上にブレージングシート（１）を垂直
に立て、片端にステンレス製ロッド（３）を挿入してブ
レージングシート（１）と下板（２）の間に隙間（４）
を形成し、ステンレス細線でこの形状を保持して隙間充
填ろう付け試験片とした。下板（２）は、ＪＩＳ３００
３、ＪＩＳ３００５で、厚さ１ｍｍ×幅３０×長さ７０
ｍｍ板である。このＪＩＳ３００３板、ＪＩＳ３００５
板は、常法により作製した１ｍｍ厚さの焼鈍材である。
ブレージングシート（１）は、表１に示すＮｏのろう材
合金と表２に示す芯材をクラッドしたもので、厚さ１ｍ
ｍ×幅２５×長さ６０ｍｍのものである。ステンレス製
ロッド（３）は、φ３ｍｍ×長さ２０ｍｍのものであ
り、隙間（４）長さは５０ｍｍである。また（５）はろ
う付け性の試験後に隙間（４）にろう材が充填された長
さである。

【００２３】図１に示すような試験片を、５％のＫAl_４
／Ｋ_２AlＦ_５混合フラックス液（水とフラックスのスラ
リー状態）中に浸漬して、フラックス塗布した後、１５
０℃の乾燥炉で水分を蒸発させて、６００℃×３分の窒
素ガス中でのろう付け加熱を行った。乾燥工程終了後に
昇温−６００℃保持−冷却（５７０℃まで）−取り出し
の全体のろう付け時間は２０分、ろう付け雰囲気の露点
は−４５℃、酸素濃度は１００ｐｐｍであった。ろう付
け加熱後に、ブレージングシート（１）と下板（２）の
隙間（４）にろう材が充填された長さ（５）をノギスで
測定し、ろう付け性を比較した。ろう付け試験はｎ＝３
で実施した。表３に隙間充填長さ（ｍｍ）として示して
いる。

【００２４】その結果を表３に示す。表３のブレージン
グシートは表１のろう材合金、表２の芯材合金をクラッ
ドしたものである。本発明例のＮｏ．１〜６、比較例の
Ｎｏ．１３〜１７及び従来例のＮｏ．２３は、ブレージ
ングシート（１）の芯材としてＪＩＳ３００３のものに
は、下板（２）としてＪＩＳ３００５を組み合わせろう
付けしたものである。本発明例Ｎｏ．７〜１２、比較例
のＮｏ．１８〜２２及び従来例のＮｏ．２４は、ブレー
ジングシート（１）の芯材としてＪＩＳ３００５のもの
に、下板（２）としてＪＩＳ３００３を組み合わせろう
付けしたものである。表３に示すように、本発明例Ｎ
ｏ．１〜６のブレージングシート（１）の芯材ＪＩＳ３
００３と下板（２）ＪＩＳ３００５を組み合わせたも
の、及び本発明例のＮｏ．７〜１２のブレージングシー
ト（１）の芯材ＪＩＳ３００５と下板（２）ＪＩＳ３０
０３を組み合わせたものは、隙間充填長さ、すなわち図
１の隙間（４）にろう材が充填される長さ（５）が、比
較例のＮｏ．１３〜２２及び従来例のＮｏ．２３〜２４
に比べて長くなっており、優れたろう付け性を示すもの
であった。

【表３】 詳しくは、本発明例のＮｏ．１〜６と比較例のＮｏ．１
３〜１７、従来例のＮｏ．２３とを比べてみる。これら
は、ブレージングシート（１）の芯材としてＪＩＳ３０
０３、下板（２）としてＪＩＳ３００５を組み合わせて
試験したものである。比較例のＮｏ．１３は、ろう材の
合金組成（表１のＮｏ．７）のＳｉが４％で、本発明の
ろう材合金とはＳｉが異なるものである。比較例のＮ
ｏ．１４は、ろう材の合金組成（表１のＮｏ．８）のＳ
ｉが１７％で、本発明のろう材合金とはＳｉが異なるも
のである。比較例のＮｏ．１５は、ろう材の合金組成
（表１のＮｏ．９）のＭｇが０．０３３％で、本発明の
ろう材合金のようにはＭｇが０．０１％以下に規制され
ていないものである。

【００２５】比較例のＮｏ．１６は、ろう材の合金組成
（表１のＮｏ．１０）のＬｉが０．０１％で、本発明の
ろう材合金のＬｉ：０．０２〜０．０８％と異なるもの
である。比較例のＮｏ．１７は、ろう材の合金組成（表
１のＮｏ．１１）のＬｉが０．０９％で、本発明のろう
材合金のＬｉ：０．０２〜０．０８％と異なるものであ
る。このように本発明例のＮｏ．１〜６は、比較例のＮ
ｏ．１３〜１７のように、本発明のろう材とその成分範
囲が相違し、またＭｇを０．０１％以下に規制していな
いものに比べ、隙間にろう材が充填される長さが長くろ
う付け性の優れたものであった。

【００２６】また従来例のＮｏ．２３は、ろう材の合金
組成（表１のＮｏ．１２）のＬｉを含まず、またＭｇが
０．０１％以下に規制されていないものである。本発明
例のＮｏ．２、３は、従来例のＮｏ．２３とＳｉが７．
５％で同量であるが、隙間にろう材が充填される長さが
３０％以上長く、ろう付け性が改善されている。また、
Ｓｉが６％とやや低い本発明例のＮｏ．１でも、比較例
のＮｏ．１３〜１７及び従来例Ｎｏ．２３よりも隙間に
ろう材が充填される長さが長く、ろう付け性が改善さ
れ、Ｓｉ量の多い本発明例のＮｏ．４，Ｎｏ．５，Ｎ
ｏ．６ではその効果は顕著である。

【００２７】また、ブレージングシート（１）の芯材と
してＪＩＳ３００５、下板（２）としてＪＩＳ３００３
を組み合わせて試験した本発明例のＮｏ．７〜１２と比
較例のＮｏ．１８〜２２、従来例のＮｏ．２４とを比べ
てみた。その結果、比較例のＮｏ．１８〜２２及び従来
例のＮｏ．２４のように、本発明のろう材とその成分範
囲が相違し、またＭｇを０．０１％以下に規制していな
いものは、隙間にろう材が充填される長さが短い。具体
的には従来例Ｎｏ．２４に対して、本発明例のＮｏ．７
〜１２では隙間にろう材が充填される長さが４０％から
８０％長くなっており、ろう付け性が改善されている。
これは本発明のブレージングシートが、Ｓｉ：５〜１５
％、Ｌｉ：０．０２〜０．０８％を含有し残部Ａｌ及び
不可避不純物よりなりその不可避不純物のＭｇを０．０
１％以下に規制したろう材をＡｌ芯材にクラッドしたこ
とにより、ろう付け性が改善されていることを示すもの
である。

【００２８】

【実施例２】本発明の実施例２を表４に示す。表４のブ
レージングシートは表１のろう材合金、表２の芯材合金
を実施例１と同様にクラッドしたものである。実施例２
の表４はＪＩＳ ３００３芯材のブレージングシートに
ついて下板をＪＩＳ ３００５として長時間のろう付け
試験を行ったものである。すなわち、ろう付け性の試験
は実施例１と同様図１に示すように、下板（２）の上に
ブレージングシート（１）を垂直に立て、片端にステン
レス製ロッド（３）を挿入してブレージングシート
（１）と下板（２）の間に隙間（４）を形成し、ステン
レス細線でこの形状を保持して隙間充填ろう付け試験片
とした。フラックス塗布条件、加熱温度条件、雰囲気露
点、酸素濃度などは実施例１と同じで、全体ろう付け時
間（乾燥後、ろう付け炉に挿入してから取り出しまで）
を約２倍の５０分としたものである。

【００２９】その結果は表４に示すように、本発明例の
Ｎｏ．３１〜３６は、比較例のＮｏ．３７〜４１及び従
来例Ｎｏ．４２よりも隙間にろう材が充填される長さが
長く、ろう付け性が改善されているものである。詳しく
は、長い時間のろう付けにより、比較例３７〜４１及び
従来例Ｎｏ．４２では１０ｍｍ以下の間隙充填長さであ
るのに対して、本発明例のＮｏ．３１〜３６では、約２
倍の間隙充填長さを示した。これは下板（ＪＩＳ３００
５）の酸化が進む中でも、本発明のＬｉ，Ｍｇ制御した
ろう材である、Ｓｉ：５〜１５％、Ｌｉ：０．０２〜
０．０８％を含有し残部Ａｌ及び不可避不純物よりなり
その不可避不純物のＭｇを０．０１％以下に規制したも
のをクラッドしたブレージングシートを使用することに
より優れたろう付け性を示すことがわかる。

【表４】

【００３０】

【実施例３】本発明の実施例３を表５に示す。表５のブ
レージングシートは表１のろう材合金、表２の芯材合金
を実施例１と同様にクラッドしたものである。表５は、
ＪＩＳ ３００３芯材のブレージングシートについて下
板をＪＩＳ３００３として、実施例２と同様の条件で長
時間のろう付け試験を行ったものである。その結果は表
５に示すように、本発明例のＮｏ．５１〜５６は、比較
例のＮｏ．５７〜６１及び従来例Ｎｏ．６２よりも隙間
にろう材が充填される長さが長く、ろう付け性が改善さ
れているものである。実施例３のブレージングシート芯
材、及び下板のＪＩＳ ３００３は表２に示すようにＭ
ｇを含まないものであるが、Ｍｇを含まないＡｌ合金の
芯材と下板の組合せにおいても、本発明のＳｉ：５〜１
５％、Ｌｉ：０．０２〜０．０８％を含有し残部Ａｌ及
び不可避不純物よりなりその不可避不純物のＭｇを０．
０１％以下に規制したものをクラッドしたブレージング
シートを使用することにより、ろう付け性の改善されて
優れたろう付け性を示すことがわかる。

【表５】

【００３１】

【実施例４】本発明の実施例４について表６、表７、表
８、表９に示し説明する。表６、表７は、本発明例のろ
う材合金、比較例のろう材合金、従来例のろう材合金の
組成を示すものである。ブレージングシートは、表６、
表７に示すろう材合金と上述した表２に示す芯材Ａｌ合
金とをクラッドしたものである。ろう材は、表６、表７
に示す合金を溶製し、６０×１８０×１８０ｍｍの金型
鋳造塊とした。ろう材の鋳造塊は片面５ｍｍずつ両面を
面削し、５０ｍｍ厚さとした後、５００℃に加熱して熱
間圧延で６ｍｍ厚さとした。また、芯材は表２に示す合
金を溶製し、６０×１８０×１８０ｍｍの金型鋳造塊と
した。芯材の鋳造塊は、ろう材と同様に面削をして厚さ
５０ｍｍにした後、６００℃×３時間の均質化加熱処理
を行った。

【００３２】５０ｍｍ厚さの芯材の両側に、６ｍｍ厚さ
のろう材板を配置して、５００℃にてクラッド圧延、冷
間圧延を経て１ｍｍの板材とした。最終投階で燃焼ガス
雰囲気（窒素、炭酸ガス混合雰囲気）で３６０℃×２時
間の焼鈍処理を施し、ろうクラッド率９．７％のＯ調質
のブレージングシートを作製した。また、ＪＩＳ３００
３、ＪＩＳ３００５の１ｍｍ厚さの板材（焼鈍材）も常
法により作製し、下板とした。

【表６】

【表７】

【００３３】ろう付け性試験は、上記実施例１と同様に
図１に示すような試験片を、５％のＫAIＦ_４／Ｋ_２AlＦ
_５混合フラックス液（水とフラックスのスラリー状態）
中に浸漬して、フラックス塗布した後、１５０℃の乾燥
炉で水分を蒸発させて、６００℃×３分の窒素ガス中で
のろう付け加熱を行った。乾燥工程終了後に昇温−６０
０℃保持−冷却（５７０℃まで）−取り出しの全体のろ
う付け時間は２０分、ろう付け雰囲気の露点は−４５
℃、酸素濃度は１００ｐｐｍであった。ろう付け加熱後
に、ブレージングシート（１）と下板（２）の隙間
（４）にろう材が充填された長さ（５）をノギスで測定
し、ろう付け性を比較した。ろう付け試験はｎ＝３で実
施した。その結果を表８、表９に、隙間充填長さ（ｍ
ｍ）として示している。

【００３４】また、５０ｍｍ×ｌ００ｍｍに切断した各
ブレージングシートを間隙充填試験と同等のフラックス
塗布加熱し、これをＪＩＳＨ８６８１のＣＡＳＳ試験に
かけ、７２０時間後の最大孔食深さを測定した。腐食試
験片は片面を腐食評価面とし、他面はシールテープによ
りマスキングして腐食液がかからないようにした。腐食
試験後は硝酸３０％水溶液中で腐食生成物を除去したの
ち、水洗して乾燥して、顕微鏡により、焦点深度法によ
り、発生した孔食の深さを測定した。その結果を表８、
表９に、最大孔深さ（ｍｍ）として示している。

【００３５】表８、表９は、ろう付け性試験、最大孔食
深さ試験を示すもので、表６、表７のろう材合金と表２
の芯材合金をクラッドしたブレージングシートについて
行った結果である。表８は本発明例の試験結果、表９は
比較例、従来例の試験結果である。表８、表９から明ら
かなように、本発明例のブレージングシートは、１９ｍ
ｍ以上の隙間充填長さで優れたろう付け性を示してい
る。芯材が表２ＪＩＳ３００３のブレージングシートの
場合、表８の本発明例のＮｏ．７２、７３のブレージン
グシートは、従来例１０５のものに対して、Ｓｉ量は同
様の７．５％でも３０％以上のろう付け性改善効果が示
している。

【００３６】また、本発明例のＮｏ．７１のＳｉ：６％
とややＳｉ量が低いろう材合金組成（表６のＮｏ．２
２、２３）においても、ろう付け性改善効果は認められ
る。本発明例Ｎｏ．７４、７５、７６のＳｉ：１０％と
ややＳｉ量が多いろう材合金組成（表６のＮｏ．２４、
２５、２６）ではその効果は顕著である。また、芯材が
表２ＪＩＳ３００５のＭｇを添加したブレージングシー
トの場合には、その効果が顕著となった。すなわち、表
９の従来例Ｎｏ．１０６に対して、本発明例のＮｏ．８
０〜８８では４０％〜８０％のろう付け性改善効果が見
られた。

【００３７】耐食試験は、表８の本発明例Ｎｏ．７１〜
８８のブレージングシートでは、０．５０ｍｍ以下の腐
食深さに止まっており、表９の比較例Ｎｏ．８９〜１０
４のものに対してすぐれていることがわかる。また従来
例Ｎｏ．１０７、１０８は、Ｚｎ添加したろう材を使用
したものであるが、約０．６ｍｍの腐食深さとなり、本
発明例のＬｉとＺｎ同時添加したろう材合金の犠牲作用
より劣っている。

【００３８】詳しくは、表８の本発明例のＮｏ．７１〜
７９、表９の比較例のＮｏ．８９〜９６及び従来例のＮ
ｏ．１０５、１０７は、ブレージングシート（１）の芯
材がＪＩＳ３００３であり、下板（２）がＪＩＳ３００
５のものを組み合わせ、ろう付け性試験を行ったもので
ある。本発明例のＮｏ．７１〜７９は、隙間充填長さ、
すなわち図１の隙間（４）にろう材が充填される長さ
（５）が、長く、優れたろう付け性を示すものであり、
また最大孔食深さの測定結果はＺｎ：０．５〜１０％、
Ｓｎ：０．０１〜０．２％、Ｉｎ：０．０１〜０．２％
の１種または２種以上を含有することにより、ブレージ
ングシートの芯材の防食に効果があることを示している
ものである。

【００３９】比較例Ｎｏ．８９は、ろう材合金組成（表
７のＮｏ．３０）のＳｉが４％で、本発明のろう材合金
とはＳｉが異なるものであり、またＺｎ、Ｓｎ、Ｉｎを
含有していないもので、隙間充填長さが短く、最大孔食
深さは貫通しており耐食の劣るものであった。比較例Ｎ
ｏ．９０は、ろう材合金組成（表７のＮｏ．３１）のＳ
ｉ１７％で、本発明のろう材合金とはＳｉが異なるもの
であり、Ｚｎ、Ｓｎ、Ｉｎを含有していないものであ
る。比較例Ｎｏ．９１は、ろう材合金組成（表７のＮ
ｏ．３２）のＭｇが０．０３３％で、本発明のろう材合
金のようにはＭｇが０．０１％以下に規制されていない
ものであり、Ｚｎ、Ｓｎ、Ｉｎを含有していないもので
ある。比較例Ｎｏ．９２は、ろう材合金組成（表７のＮ
ｏ．３３）のＬｉが０．０１％で、本発明のろう材合金
のＬｉ：０．０２〜０．０８％と異なるものであり、Ｚ
ｎ、Ｓｎ、Ｉｎを含有していないものである。比較例Ｎ
ｏ．９３は、ろう材合金組成（表７のＮｏ．３４）のＬ
ｉが０．０９％で、本発明のろう材合金のＬｉ：０．０
２〜０．０８％と異なるものであり、Ｚｎ、Ｓｎ、Ｉｎ
を含有していないものであり、これらは隙間充填長さが
短く、最大孔食深さは貫通しており耐食の劣るものであ
った。

【００４０】比較例Ｎｏ．９４は、ろう材合金組成（表
７のＮｏ．３５）のＺｎ：０．４８％は本発明のろう材
合金のＺｎ：０．５〜１０％と異なるものであり、比較
例のＮｏ．９５は、ろう材合金組成（表７のＮｏ．３
６）のＳｎ：０．００５％は本発明のろう材合金のＳ
ｎ：０．０１〜０．２％と異なるものであり、また比較
例Ｎｏ．９６は、ろう材合金組成（表７のＮｏ．３７）
のＩｎ：０．００５％は本発明のろう材合金のＩｎ：
０．０１〜０．２％と異なるものであり、表８に示す本
発明例のＮｏ．７１〜７９に比べて耐食の劣るものであ
った。

【００４１】表８本発明例のＮｏ．８０〜８８は、表２
のＪＩＳ３００５芯材と表６のろう材合金とのブレージ
ングシートについての試験結果である。表９の比較例の
Ｎｏ．９７〜１０４は表２のＪＩＳ３００５芯材と表７
の比較例ろう材合金とのブレージングシートについての
試験結果であり、従来例のＮｏ．１０６は表２のＪＩＳ
３００５芯材と表７の従来例ろう材合金とのブレージン
グシート、従来例のＮｏ．１０８は表２のＪＩＳ３００
５芯材と表７の比較例ろう材合金とのブレージングシー
トについての試験結果である。これらは下板（２）がＪ
ＩＳ３００３のものを組み合わせ、ろう付け性試験を行
ったもので、本発明例のＮｏ．８０〜８８は、隙間充填
長さ、すなわち図１の隙間（４）にろう材が充填される
長さ（５）が、長く、優れたろう付け性を示すものであ
り、また最大孔食深さの測定結果はＺｎ：０．５〜１０
％、Ｓｎ：０．０１〜０．２％、Ｉｎ：０．０１〜０．
２％の１種または２種以上を含有することにより、ブレ
ージングシートの芯材の防食に効果があることを示して
いるものである。

【表８】

【表９】

【００４２】

【発明の効果】以上のように、本発明によれば、ろう材
をクラッドしたブレージングシートのろう材がＳｉ：５
〜１５％、Ｌｉ：０．０２〜０．０８％を含有し残部Ａ
ｌ及び不可避不純物よりなり、この不可避不純物のＭｇ
を０．０１％以下に規制することにより、溶融している
フッ素系の非腐食性フラックスとＡｌ−Ｓｉ合金ろう材
とのＭｇ−Ｆ化合物形成が抑制され、ろう材本来の優れ
た流動性を有するという効果を有し、またブレージング
シートのＡｌ芯材がＭｇを含有するものの場合でも、芯
材からろう材側へＭｇが拡散してくる前に、Ｍｇを規制
したろう材による濡れが始まり、ろう付け部にはフィレ
ットが形成されるので良好なろう付け性を示すという効
果を奏するものである。

【００４３】また、Ｍｇを含有するＡｌのブレージング
材（ろうクラッドした芯材）、Ｍｇを含有する母材のろ
う付け性が著しく改良される。特に従来のＡｌ−Ｓｉ−
Ｌｉろう合金では、Ｍｇ含有Ａｌ合金材を長時間加熱に
よるろう付けを行うと、雰囲気中の水、酸素などの酸化
性ガスとの反応により皮膜形成し、ノコロックろう付け
性が低下するが、本発明のＭｇを０．０１％以下に規制
したろう材をクラッドしたブレージングシートにより長
時間のノコロックろう付けでろう付け性が低下すること
がない。またＭｇを含有しないＡｌ材料のろう付けにお
いても優れたろう付け性を示すという効果を奏するもの
である。

【００４４】さらに、ろう材をクラッドしたブレージン
グシートのろう材が、Ｓｉ：５〜１５％、Ｌｉ：０．０
２〜０．０８％、さらにＺｎ：０．５〜１０％、Ｓｎ：
０．０１〜０．２％、Ｉｎ：０．０１〜０．２％の１種
または２種以上を含有し残部Ａｌ及び不可避不純物より
なり、この不可避不純物のＭｇを０．０１％以下に規制
することにより、ろう付け性が著しく改良されるととも
に、Ｚｎ，Ｓｎ，Ｉｎの添加によりＬｉとの相互作用で
優れた耐食性をゆうするという効果を奏するものであ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】 ろう付け性の試験を示す図

【符号の説明】

１．ブレージングシート ２．下板 ３．ロッド ４．ブレージングシートと下板の隙間 ５．ろう材の隙間充填長

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁷ 識別記号 ＦＩ テーマコート゛(参考） Ｃ２２Ｃ 21/00 Ｃ２２Ｃ 21/00 Ｅ Ｆ２８Ｆ 19/06 Ｆ２８Ｆ 19/06 Ｂ 21/08 21/08 Ａ

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 Ａｌ芯材の片面あるいは両面にＡｌ−Ｓ
   ｉ合金ろう材をクラッドしたブレージングシートにおい
   て、前記Ａｌ−Ｓｉ合金ろう材はＳｉ：５〜１５％、Ｌ
   ｉ：０．０２〜０．０８％を含有し残部Ａｌ及び不可避
   不純物よりなり前記不可避不純物のＭｇを０．０１％以
   下に規制したものであり、フッ素系の非腐食性フラック
   スを使用する雰囲気ろう付けに用いられることを特徴と
   するろう付け性に優れたブレージングシート。
2. 【請求項２】 Ａｌ芯材の片面あるいは両面にＡｌ−Ｓ
   ｉ合金ろう材をクラッドしたブレージングシートにおい
   て、前記Ａｌ−Ｓｉ合金ろう材はＳｉ：５〜１５％、Ｌ
   ｉ：０．０２〜０．０８％、さらにＺｎ：０．５〜１０
   ％、Ｓｎ：０．０１〜０．２％、Ｉｎ：０．０１〜０．
   ２％の１種または２種以上を含有し残部Ａｌ及び不可避
   不純物よりなり前記不可避不純物のＭｇを０．０１％以
   下に規制したものであり、フッ素系の非腐食性フラック
   スを使用する雰囲気ろう付けに用いられることを特徴と
   するろう付け性に優れたブレージングシート。
3. 【請求項３】 請求項１または２に記載のろう付け性に
   優れたブレージングシートを用いたろう付け性に優れた
   アルミニウム合金製熱交換器。