JPH07268519A - 電池用水素吸蔵合金,その製造方法およびニッケル水素電池 - Google Patents

電池用水素吸蔵合金,その製造方法およびニッケル水素電池

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JPH07268519A
JPH07268519A JP6087572A JP8757294A JPH07268519A JP H07268519 A JPH07268519 A JP H07268519A JP 6087572 A JP6087572 A JP 6087572A JP 8757294 A JP8757294 A JP 8757294A JP H07268519 A JPH07268519 A JP H07268519A
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周介 稲田
Noriaki Sato
典昭 佐藤
Hiromichi Horie
宏道 堀江
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裕之 長谷部
Yoshiyuki Isozaki
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Abstract

(57)【要約】 【目的】高い電極容量、長寿命特性および良好な立上り
特性の三大特性に加えて大電流放電特性を共に満足させ
ることが可能な電池用水素吸蔵合金,その製造方法およ
びニッケル水素電池を提供する。 【構成】本発明の電池用水素吸蔵合金は、一般式A N
a Mnb Alc Cod e (但し、AはY(イ
ットリウム)を含む希土類元素より選択される少なくと
も1種の元素、MはW,Ta,Mo,Nb,In,G
a,Sn,Zn,Cr,V,Ti,ZrおよびHfの中
から選択される少なくとも1種の元素、3.5≦a≦
5,0.1≦b≦1,0≦c≦1,0.1≦d≦1,0
<e≦0.6,4.5≦a+b+c+d+e≦6)で表
わされる組成を有する合金から成り、この合金が少なく
とも一部に柱状晶組織を有し、この柱状晶の平均短径が
5〜30μmであることを特徴とする。また柱状晶の短
径と長径との比(アスペクト比)が1:2以上となる柱
状晶組織の面積比率が50%以上であることを特徴とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電池用水素吸蔵合金,
その製造方法およびその合金を使用したニッケル水素電
池に係り、特に合金を電池の負電極に使用した場合にお
いて、高い電極容量(電池容量),繰返しの使用に耐え
る長寿命特性(長サイクル特性)および良好な初期活性
の三大特性さらには大電流放電特性を共に満足させるこ
とが可能な電池用水素吸蔵合金,その製造方法およびニ
ッケル水素電池に関する。
【0002】
【従来の技術】近年の電子技術の進歩による省電力化、
実装技術の進歩により従来では予想し得なかった電子機
器が小型化およびポータブル化されてきている。それに
伴い、前記電子機器の電源である二次電池に対する高容
量化,長寿命化,放電電流の安定化が特に要求されてい
る。例えばパーソナル化、ポータブル化が進むOA機
器,電話機,AV機器においては、特に小型軽量化,お
よびコードレスでの機器使用時間の延伸などの目的で高
性能電池の開発が所望されている。このような要求に対
応する電池として、従来の焼結式ニッケルカドミウム電
池の電極基板を三次元構造体とした非焼結式ニッケルカ
ドミウム電池が開発されたが、顕著な容量増加は達成さ
れていない。
【0003】そこで、近年、負極として水素吸蔵合金粉
末を集電体に固定した構造のものを使用したアルカリ二
次電池(ニッケル水素電池)が提案され、脚光を浴びて
いる。このニッケル水素電池に使用される負極は、一般
に、下記の手順で製造される。すなわち、高周波溶解法
やアーク溶解法などによって水素吸蔵合金を溶解した後
に、冷却・粉砕し、得られた粉砕粉に導電剤や結合剤を
添加して混練物を形成し、この混練物を集電体に塗布ま
たは圧着して製造される。この水素吸蔵合金を使用した
負極は、従来の代表的なアルカリ二次電池用負極材料で
あるカドミウムに比較し、単位重量当りまたは容積当り
のエネルギ密度を大きくすることができ、電池の高容量
化を可能とする他、毒性が少なく環境汚染のおそれが少
ないという特徴を持っている。
【0004】しかしながら、水素吸蔵合金を含む負極
は、二次電池に組み込まれた状態において電解液である
濃厚なアルカリ水溶液に浸漬される他、過充電時には正
極より発生する酸素に曝されるため、水素吸蔵合金が腐
食して劣化し易い。さらに、充放電時において前記水素
吸蔵合金中への水素の吸蔵、放出に伴って体積が膨張、
収縮するため、水素吸蔵合金に割れを生じ、水素吸蔵合
金粉末の微粉化が進行する。水素吸蔵合金の微粉化が進
行すると、水素吸蔵合金の比表面積が加速度的に増加す
るため、水素吸蔵合金表面のアルカリ性電解液による劣
化面積の割合が増加する。しかも、水素吸蔵合金粉末と
集電体との間の導電性も劣化するため、サイクル寿命が
低下する上に電極特性も劣化する。
【0005】そこで、上述した問題を解決するために水
素吸蔵合金粉末表面または水素吸蔵合金を含む負極表面
にニッケル薄膜をめっき法、蒸着法等により付着させ機
械的強度を増加させて割れを防止したり、あるいはアル
カリ溶液中へ浸漬後、乾燥させることにより水素吸蔵合
金表面の劣化を抑制したりという方法が提案されている
が、必ずしも十分な改善を図ることができなかった。
【0006】上記アルカリ二次電池に用いられる他の水
素吸蔵合金として、LaNi5 で代表されるAB5 系合
金がある。この六方晶構造を有する合金系を使用した負
極は、従来の代表的なアルカリ二次電池用負電極材料で
あるカドミウムを使用した場合と比較して、電池の単位
重量または単位容積当りのエネルギ密度を大きくするこ
とが可能であり、電池の高容量化を可能とする上に、カ
ドミウム公害等の環境汚染を発生するおそれも少なく、
電池特性も良好であるという特徴を有している。ちなみ
にLm−Ni−Co−Al系合金(LmはLa富化ミッ
シュメタル)から成るAB5 系水素吸蔵合金を含む負極
を使用した電池の電極容量は200mAh/g未満とい
う低い状態であり、また電池の充放電によるサイクル寿
命は400サイクル程度である。また上記AB5 系合金
を使用した電池では放電電流を高く設定できる長所があ
る。しかしながら、昨今の技術的要求水準である電極容
量およびサイクル寿命を共に満足する段階には到達して
いない。
【0007】そこで上記AB5 系水素吸蔵合金を使用し
た電池の電極容量を増加するために、Aサイトの含有比
率を相対的に高める手法も採用されている。この手法に
よれば電極容量を3割程度増加させることができる反
面、充放電のサイクル寿命が短縮される欠点がある。
【0008】またAサイトの構成材となるミッシュメタ
ル(Mm:Laを10〜50wt%,Ceを30〜60
wt%,Prを2〜10wt%,Ndを10〜45wt
%等を含有する希土類元素の混合体)中のLa含有量を
高める手法も採用されている。すなわちミッシュメタル
中のCe元素を除去してLa含有量を相対的に高めたミ
ッシュメタルを使用することにより、電極容量を3割程
度増大することも可能である。しかしながら、この場合
もサイクル寿命を長期化することは困難であった。
【0009】このように従来から二次電池を評価する基
準特性として、放電容量,サイクル寿命および放電電圧
が特に重視されていた。これらの特性のうち、放電電圧
は、ニッケル・水素二次電池の場合、正極のニッケル酸
化物の酸化還元反応および負極の水素反応により、ほぼ
決定されてしまうため、水素吸蔵合金を改良しても放電
電圧が大きく変化することは少ない。一方、実際に水素
吸蔵合金を改良して大きく改善される容量電池特性とし
ては、放電容量およびサイクル寿命の2大特性がある。
【0010】またこれらの特性以外に、水素吸蔵合金を
改良することにより改善される電池特性として、容量立
上り性(活性の容易さ)がある。すなわち電池組立後に
おいて僅かな回数の活性化操作(充放電操作)のみで高
い電極容量が得られるという特性である。この容量立上
り性は製品としての電池をユーザが使用する上では注目
する必要がない特性であるが、この容量立上り性が不良
であると電池の製造工数が増大し、電池の製造コストを
大きく引き上げることになるため、メーカーサイドで電
池設計を行なう場合に、重視される特性の1つとなる。
【0011】従来の主たる使用用途となっているハンデ
ィカムコーダやセルラーホンに装着する電池において
は、上記の放電容量,サイクル寿命および容量立上り性
の3大特性に注目して改善することにより、最終ユーザ
の要求を充分に満足する電池とすることが可能となると
ともに、電池自体の製造コストも低減することが可能と
なった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら近年、各
種電子機器のアナログ方式からデジタル方式への転換が
急速に進展していることから、上記3大特性のみを改善
した電池では、実稼動時間を延長することが困難になっ
てきた。すなわち従来のアナログ方式の電子機器におい
ては、電池からの放電電流はほぼ一定の値であったのに
対して、デジタル方式の電子機器においては、放電電流
がパルス的に大幅に変化し、しかもそのパルス電流のピ
ーク値が大きくなる特徴がある。したがって、放電容量
の放電電流依存性が高い電池の場合、換言すれば放電電
流が大きくなるに従って放電容量が急激に低下するよう
な特性を有する従来の電池では、アナログ方式の電子機
器において長時間稼動が可能であっても、デジタル方式
の電子機器では短時間の稼動しかできない問題点があっ
た。したがって、アナログ方式は勿論のこと、電子機器
のデジタル化に対応するためには、上記3大特性に加え
て大電流放電特性とを考え併せて電池設計を行なうこと
が極めて重要になってきている。
【0013】しかしながら昨今の技術的要求水準とする
電極容量、サイクル寿命および初期立上り特性に加えて
上記大電流放電特性を共に満足するニッケル・水素電池
に好適な電池用水素吸蔵合金は未だ実用化されていない
現状である。
【0014】本発明は上記問題点を解決するためになさ
れたものであり、高い電極容量、長寿命特性および良好
な立上り特性の三大特性に加えて大電流放電特性を共に
満足させることが可能な電池用水素吸蔵合金,その製造
方法およびニッケル水素電池を提供することを目的とす
る。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本願発明者らは電極容量の増加が容易である点およ
び常温常圧付近で水素を吸蔵および放出できる点に着目
してAB5 系水素吸蔵合金を研究対象に選択した。そし
てこのAB5 系合金成分を種々の元素で置換し、また種
々製法を換えて各種組成の水素吸蔵合金を試作し、その
組成、製法、熱処理条件等が大電流放電特性などの電池
特性に及ぼす効果を比較研究した。その結果、以下のよ
うな知見が段階的に得られた。
【0016】まず第1に、水素吸蔵合金の粒界量をある
一定の範囲に設定したときに大電流放電特性に優れ、か
つ放電容量,サイクル寿命および容量立上り性の3大特
性をバランス良く満足する水素吸蔵合金が得られること
を見出した。
【0017】上記比較研究過程で得られた知見から粒界
量に最適範囲が存在する理由は、次のように考えられ
る。すなわち、水素吸蔵合金は、その表面での電気化学
反応の結果生じる水素を、合金内部に吸脱蔵することで
電極として作用している。この電極が大電流で高容量を
維持するためには、合金内部から表面まで、または表面
から合金内部までの水素の拡散が速かに進行することが
必要である。この拡散速度は合金粒子内部より、粒界の
方が大きい。そのため拡散の経路となる粒界が多い方が
大電流放電特性に優れた電極とすることができる。しか
し、粒界は水素拡散の経路となると同時に電解液による
水素吸蔵合金腐食の開始点ともなるため、粒界量が多過
ぎると大電流放電特性は優れる反面、サイクル寿命が短
かい電極となってしまう。したがって、粒界量をある特
定の範囲に調整制御することにより初めて上記4大特性
を満足する電極を形成することが可能になるという知見
を得たのである。
【0018】また第2に、AB5 系水素吸蔵合金の一部
をMnで置換したときに、電極容量280mAh/g程
度まで大幅に改善されることが判明した。しかしなが
ら、Mnの置換量が一定量を超えると、当該合金を使用し
た電池の寿命特性は却って低下してしまう事実が発見さ
れた。
【0019】そこで本願発明者らは上記Mnの添加によ
って電池の寿命特性が低下する原因を究明した。そして
Mnを添加した各種AB5 系合金組織の構成元素をX線
マイクロアナライザ(EPMA)によって分析したとこ
ろ、Mn添加量の増加とともに各合金組織におけるMn
の偏析量が増加するという傾向が確認された。この傾向
から推察するところ、Mn添加量の増加とともに進行す
る電池の寿命低下の原因は主としてMnの偏析によるこ
とが判明した。
【0020】つまり、従来の水素吸蔵合金の製造技術で
ある、冷却の能力が低い鋳込み法では冷却過程におい
て、結晶の成長が等方的に起きるため、水素吸蔵合金の
粒子内で粒界が不規則となり易く、粒界部への偏析が生
じ易くなる。また冷却能力が高い鋳込み法を用いて部分
的に柱状晶を形成した場合においても、柱状晶の短径が
極めて大きくなり、偏析が大きく、合金の耐食性も低下
し易い。またMnは他の合金構成元素よりも脆い特徴が
ある。その結果、前記粒界部への偏析が腐食の開始点と
なったり、機械的強度を低下させるため、水素の吸蔵,
放出に伴う合金の微粉化が顕著になる。
【0021】また吸蔵合金内の偏析は、局部電池を形成
し易く、その電食作用によってMnがアルカリ電解液中
に溶出したり、合金表面のMnがMn(OH)2 に変化
したりして合金の腐食が加速され、水素吸蔵合金自体の
水素吸蔵量が減少したり、または腐食により水素吸蔵合
金が電極集電体から剥離することにより電池の容量低下
が起こると考えられる。さらに上記偏析による粒界強度
の低下に起因する合金の微粉化が進行して電池特性の経
時劣化も進行すると考えられる。
【0022】これらのことからMnの偏析を少なくすれ
ば高容量でかつ長寿命の水素吸蔵合金電極を得ることが
できることが期待される。
【0023】そこで、Mnの偏析を少なくする方法とし
て、次のような手法を試行した。
【0024】(1)合金材料の溶解時に、構成元素をで
きるだけ細かくしてよく混ぜ合せてから溶解坩堝に仕込
んだ。しかしながら、溶融状態では比較的よく混ざり合
っているものの、冷却時に数十μm〜数百μmの大きさ
の偏析が形成された。 (2)溶融時に使用する加熱装置として抵抗発熱体を使
わずに高周波加熱装置を使用し、強制的に溶湯の撹拌を
行なった。この場合、溶融状態では非常に均一に撹拌さ
れているものの、冷却時に数十μm〜数百μmの大きさ
の偏析が形成された。 (3)合金溶湯を鋳込む際に溶湯の温度を可及的に高め
て、合金溶湯の粘性を下げることにより溶湯の均質化を
図った。この場合、冷却時に数十μm〜数百μmの大き
さの偏析が形成された。 (4)キャスト後に熱処理(例えば、1000℃・8
h)を行なうことにより偏析を低減した。この場合、効
果は大きいものの数十μm大きさの偏析は残ってしまっ
た。
【0025】このように、たとえ上記手法の1つ、ある
いは2以上を組み合せて処理を行なっても、偏析は減る
ものの要求特性を充分に満足させることができなかっ
た。
【0026】そこで本発明者らは上記Mnの偏析を充分
に抑制し、さらにMnの溶出を防止するなどの電池特性
の劣化防止を目的として種々の組成の水素吸蔵合金を調
製し、その特性を比較検討した結果、特定の組成を有す
る合金溶湯に対して適切な急冷速度を適用することによ
り、上記の課題を解消できるという知見を得た。
【0027】本発明は上記各種の知見に基づいて完成さ
れたものである。すなわち本発明に係る電池用水素吸蔵
合金は、一般式A Nia Mnb Alc Cod
e(但し、AはY(イットリウム)を含む希土類元素
より選択される少なくとも1種の元素、MはW,Ta,
Mo,Nb,In,Ga,Sn,Zn,Cr,V,Ti,
ZrおよびHfの中から選択される少なくとも1種の元
素、3.5≦a≦5,0.1≦b≦1,0≦c≦1,
0.1≦d≦1,0<e≦0.6,4.5≦a+b+c
+d+e≦6)で表わされる組成を有する合金から成
り、この合金が少なくとも一部に柱状晶組織を有し、こ
の柱状晶の平均短径が5〜30μmであることを特徴と
する。また、柱状晶の短径と長径との比(アスペクト
比)が1:2以上となる柱状晶組織の面積比率を50%
以上に設定するとよい。
【0028】本発明に係る電池用水素吸蔵合金の第1の
製造方法は、一般式A Nia Mnb Alc Cod
e (但し、AはY(イットリウム)を含む希土類元
素より選択される少なくとも1種の元素、MはW,T
a,Mo,Nb,In,Ga,Sn,Zn,Cr,V,T
i,ZrおよびHfの中から選択される少なくとも1種
の元素、3.5≦a≦5,0.1≦b≦1,0≦c≦
1,0.1≦d≦1,0<e≦0.6,4.5≦a+b
+c+d+e≦6)で表わされる組成を有する合金溶湯
を、回転する冷却ロールの走行面に射出して急冷凝固せ
しめ、少なくとも一部に柱状晶組織を有する溶湯急冷合
金を調製して電池用水素吸蔵合金とすることを特徴とす
る。
【0029】また、第2の製造方法は、一般式A Ni
a Mnb Alc Cod e(但し、AはY(イ
ットリウム)を含む希土類元素より選択される少なくと
も1種の元素、MはW,Ta,Mo,Nb,In,G
a,Sn,Zn,Cr,V,Ti,ZrおよびHfの中か
ら選択される少なくとも1種の元素、3.5≦a≦5,
0.1≦b≦1,0≦c≦1,0.1≦d≦1,0<e
≦0.6,4.5≦a+b+c+d+e≦6)で表わさ
れる組成を有する合金溶湯を急冷処理して溶湯急冷合金
を調製し、得られた溶湯急冷合金を、250〜1000
℃の温度範囲で少なくとも10分間熱処理して電池用水
素吸蔵合金を形成することを特徴とする。また上記急冷
処理によって、柱状晶の平均粒径を5〜30μmの範囲
に設定する。さらに合金溶湯の急冷処理は、真空下また
はArなどの不活性ガス雰囲気で実施するとよい。また
熱処理は、不活性ガス雰囲気中で実施するとよい。
【0030】本発明に係るニッケル水素電池は、一般式
A Nia Mnb Alc Code (但し、AはY
(イットリウム)を含む希土類元素より選択される少な
くとも1種の元素、MはW,Ta,Mo,Nb,In,
Ga,Sn,Zn,Cr,V,Ti,ZrおよびHfの
中から選択される少なくとも1種の元素、3.5≦a≦
5,0.1≦b≦1,0≦c≦1,0.1≦d≦1,0
<e≦0.6,4.5≦a+b+c+d+e≦6)で表
わされる組成を有する合金から成り、この合金が少なく
とも一部に柱状晶組織を有し、この柱状晶の平均短径が
5〜30μmである電池用水素吸蔵合金を有する負極
と、ニッケル酸化物から成る正極との間に電気絶縁性を
有するセパレータを介装して密閉容器内に収容し、この
密閉容器内にアルカリ電解液を充填したことを特徴とす
る。また水素吸蔵合金の柱状晶の短径と長径との比(ア
スペクト比)が1:2と以上なる柱状晶組織の面積比率
が50%以上であることを特徴とする。
【0031】すなわち柱状晶の平均短径が5〜30μm
である上記溶湯急冷合金から成る電池用水素吸蔵合金を
有する負極と、ニッケル酸化物から成る正極との間に電
気絶縁性を有するセパレータを介装して密閉容器内に収
容し、この密閉容器内にアルカリ電解液を充填したこと
を特徴とする。
【0032】上記柱状晶の平均短径は、電池特性に大き
な影響を及ぼすものであり、本発明では5〜30μmの
範囲に設定される。平均粒径が5μm未満となり、粒界
量が過多になると、水素の拡散の経路となる粒界が多く
なり大電流放電特性が良好となる反面に合金の電解液に
よる腐食の開始点となる粒界の割合が相対的に高まり耐
食性が低下するため、電池のサイクル寿命が短縮されて
しまう。一方、柱状晶の平均短径が30μmを超える場
合には、粒界量が減少し、耐食性は向上する反面、機械
的強度が低下し易くなる。したがって、電池の4大特性
を共に満足させるために、柱状晶の平均短径は上記5〜
30μmの範囲に設定されるが、より好ましい範囲は1
0〜20μmである。
【0033】本発明に係る電池用水素吸蔵合金は、一般
式A Nia Mnb Alc Cod e なる組成を
有する単一相であることが必要である。Nia Mnb
Alc Cod e の総和をBで表すと本発明に係る
合金組成は、4.5≦a+b+c+d+e≦6よりAB
4.5 〜AB6 となる。溶湯急冷法を使用してAB5系の水
素吸蔵合金を製造すると、非化学量論組成を含むAB
4.5 〜AB6 の範囲でCaCu5 構造の単一相の結晶組
織が得られる。Bの組成比率(すなわちa+b+c+d
+eの値)が上記範囲外になると、合金中にAB4.5
AB6 以外の相(例えばAB,AB2 ,AB3 ,A2
7 等から成る相およびBサイトを構成する元素単体から
成る相[以下第2相という])が生成する。そして水素
吸蔵合金中に上記第2相を含む2種以上の異種組成の合
金相が互いに接する割合が高くなる。このような異種合
金相の界面は、機械的強度が弱く、この界面を起点とし
て、水素の吸蔵・放出に伴い割れが発生し易くなる。
【0034】また上記界面には、偏析が生じ易く、その
偏析物を起点として水素吸蔵合金の腐食が生じ易くなる
など、いずれにしろ水素吸蔵合金を電極材として使用し
た場合において、電極容量および寿命の低下を引き起こ
す。したがって、(a+b+c+d+e)の値は4.5
〜6の範囲に設定される。より好ましい合金組成はAB
4.8 〜AB5.6 の範囲である。
【0035】また本発明に係るA Nia Mnb
c Cod e を構成するA成分は、Yを含む希土
類元素(具体的にはY,La,Ce,Pr,Nd,P
m,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,
Yb,Lu)のうちから選ばれる少なくとも1種を示
す。なお、高純度の希土類元素または単体の希土類元素
は極めて高価である。そこで複数の希土類元素の混合体
であるミッシュメタル(以下MmまたはLmと略記す
る。)を使用することにより水素吸蔵合金の材料コスト
を大幅に低減することが可能である。上記Mmとして
は、通常La10〜50wt%,Ce30〜60wt
%,Pr2〜10wt%,Nd10〜45wt%の組成
のものや、La含有量を高めたLa富化ミッシュメタル
(例えばLa50〜70重量%,Ce0〜10重量%,
残部PrまたはNdなど)が使用される。
【0036】また、Niは本発明合金系の基本となる結
晶構造であるCaCu5 構造の根幹を成す成分であり、
その組成比率aの値を3.5〜5の範囲に限定したのは
次のような理由によるものである。aの値を3.5未満
にすると水素吸蔵量が過少になり、電極の容量が低下す
るため、電池の負極活物質としては好ましくない。一
方、前記aが5を超えると結晶構造を維持しつつ単一相
を得る条件では他の合金成分の配合が困難になり、長寿
命化が困難となる。好ましいaの範囲は3.2〜4.8
であり、さらに好ましくは3.5〜4.5である。
【0037】さらにMnは、水素の吸蔵放出圧力(解離
圧)の低減による高容量化に有効であるため、本発明合
金の必須構成元素とした。Mnはその組成比率bが1以
下となる範囲で添加される。一方組成比率bが1を超え
ると、偏析の制御が困難であり、電池の長寿命化の阻害
要因となるため、組成比率bの上限は1に設定した。さ
らに好ましくは0.2〜0.8である。
【0038】Alは合金表面に比較的多く析出し、Mn
と同様に水素の吸蔵放出圧力(解離圧)の低減による高
容量化に有効であるが、その組成比率cが大き過ぎると
水素吸蔵量の低減をもたらすため、組成比率cは0〜1
の範囲とした。好ましくは、0.1〜0.8の範囲であ
る。
【0039】CoはNiの一部を置換することにより、
電池の長寿命化が達成できるものであり、具体的には水
素の吸収時の格子の膨脹が比較的小さくなるため、微粉
化が進行しにくくなるために添加されるが、多過ぎると
水素吸収量が少なくなってしまう。したがって、この配
合比率dは0.1〜1.0の範囲が好ましく、さらに好
ましくは0.2〜0.8の範囲である。
【0040】また、一般式中のM成分はW,Ta,M
o,Nb,In,Ga,Sn,Zn,Cr,V,Ti,
ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種を示す。上
記M成分はいずれも水素吸蔵合金の電解液に対する化学
安定性を増し、電池の長寿命化に有効な元素であり、そ
の組成比率eが0.01〜0.6の範囲で添加される。
上記組成比率eが0.6を超えると合金により形成した
電極の容量が低下してしまうため、上限は1に設定し
た。好ましくは0.03〜0.5の範囲である。
【0041】上記M成分のうち、特にIn,Ga,S
n,Zn,等の軟質金属は合金にねばりを与えて微粉化
を抑制する効果が高い。またW,Ta,Mo,Nbなど
の硬質金属は、原料溶湯の急冷処理時に一部で組織内に
とり込まれたり、粒界に析出して粒界強度を上昇させる
とともに耐食性を向上させる効果が高く、さらに触媒作
用により合金の活性を高める効果もある。。
【0042】またM成分のうち、Crは、電解液等に対
する合金粒界の耐食性(耐酸化性)を向上させる上で有
効であり、合金の酸化および微粉化は顕著に抑制され
る。
【0043】上記のような組成を有する合金を、アルゴ
ン(Ar)などの不活性雰囲気中、あるいは真空中で適
切な冷却速度で溶融状態から急冷凝固せしめることによ
り、所定の柱状晶組織を有する水素吸蔵合金が得られ
る。そしてこの合金を含有する負極を組み込んで電池を
形成した場合に電池の長寿命化が図れることが判明し
た。
【0044】本発明に係る電池用水素吸蔵合金の製造方
法としては、偏析を防止し強固な結晶組織が得られ、ま
た所定の柱状晶が得られる方法であれば特に限定されな
いが、以下に図面を参照して詳述する単ロール法、双ロ
ール法のような溶湯急冷法を用い、冷却ロールの材質、
冷却ロールの回転数(走行面の周速)、溶湯温度、冷却
チャンバ内のガス種、圧力、溶湯噴射量など冷却速度を
規定する諸条件を最適化することにより大量に製造する
ことが可能になる。
【0045】単ロール法 図1は、単ロール法による水素吸蔵合金製造装置を示
す。この製造装置は、直径300mm程度の冷却ロール
5と、取鍋2から供給された水素吸蔵合金溶湯3を貯留
した後に前記冷却ロール5の走行面に噴射する注湯ノズ
ル4とを備えた構成となっている。前記冷却ロール5等
は不活性ガス雰囲気に調整された冷却チャンバー1内に
収納されている。また、前記冷却ロール5の周速は、冷
却ロール5の濡性と冷却速度および水素吸蔵合金溶湯3
の噴射量に依存するが、概ね1〜10m/sec の範囲に設
定される。
【0046】なお、冷却ロール5としては、CuCr,
CuBeなどの銅基合金ロール,S45C,SUJ2,
ステンレス鋼などのFe基合金ロール,Ni基合金ロー
ル、およびこれらのロール本体にCrめっきしたCuロ
ールまたはFe基ロールが好ましい。
【0047】上述した図1に示す製造装置において、取
鍋2から供給された水素吸蔵合金溶湯3を注湯ノズル4
より冷却ロール5の走行面へ噴射すると、合金溶湯は冷
却ロール5に接する面より固化し、結晶成長が始まり、
冷却ロール5より離脱するまでに完全に固化が終了す
る。その後、冷却チャンバー1内を飛翔する間に更に冷
却が進み、偏析が少なく結晶成長方向が揃った水素吸蔵
合金6が製造される。急冷処理によって得られる水素吸
蔵合金(溶湯急冷合金)6の厚さは、50〜200μm
の範囲が好ましく、さらに好ましくは60〜180μm
の範囲である。
【0048】双ロール法 図2は、双ロール法による水素吸蔵合金製造装置を示
す。この製造装置は、冷却チャンバー1内に各走行面が
対向するように配置された1対以上の冷却ロール5a,
5bと、原料金属を溶解し水素吸蔵合金溶湯3を調製す
る溶解炉7と、この溶解炉7からの水素吸蔵合金溶湯3
をタンディッシュ8を経て前記冷却ロール5a,5bの
間に噴射する注湯ノズル4を備えた構成になっている。
【0049】前記冷却ロール5a,5bは、銅,ニッケ
ル,鉄等の熱導伝性に優れた材質で形成された直径50
mm程度のものであるが、特にFe基合金製ロールが好
ましい。前記冷却ロール5a,5bは0〜0.5mm程
度の微少な間隙dを維持しながら0.5〜10m/sec 程
度のロール周速で高速回転する。なお、冷却ロールとし
ては図2に示すように走行面が平行になっているものの
他、走行面の断面形状をU字型やV字型とした、いわゆ
る型ロールを採用することもできる。また、冷却ロール
5a,5bの間隙dを過大にすると、冷却方向が揃わ
ず、その結果結晶成長方向が揃わない水素吸蔵合金が製
造されるため、0.2mm以下に設定することが好まし
い。
【0050】上述した図2に示す製造装置において、注
湯ノズル4から水素吸蔵合金溶湯3を冷却ロール5a,
5bの間隙方向へ噴射すると、水素吸蔵合金溶湯が両側
の冷却ロール5a,5bに接する側より固化、結晶成長
が始まり、冷却ロール5a,5bより離脱するまでに完
全に固化が終了する。その後、冷却チャンバー1内を飛
翔する間に更に冷却が進み、偏析が少なく結晶成長方向
が揃った水素吸蔵合金6が製造される。合金6の厚さは
50〜200μm程度が好ましい。
【0051】上記のような溶湯急冷法を使用して、リボ
ン状またはフレーク状の水素吸蔵合金を製造する場合、
冷却ロールの材質、合金溶湯の冷却速度等の条件により
等軸晶や柱状晶が合金組織内に形成される。本発明に係
る電池用水素吸蔵合金では、特に上記柱状晶組織を発達
させたものを使用する。
【0052】図3は上記溶湯急冷法によって調製した電
池用水素吸蔵合金の金属組織を部分的に示す電子顕微鏡
写真である。図3に示すように、短径に対する長径の比
が大きな柱状晶が充分に発達した合金が望ましい。柱状
晶の短径と長径との比は、1:2以上が望ましく、さら
に好ましくは1:3以上である。また得られた柱状晶組
織の平均短径は5〜30μmが好ましい。
【0053】なお、前記溶湯急冷法において調製した溶
湯急冷合金では、平均短径が2〜3μm程度の微細な柱
状晶が形成される場合がある。この場合、溶湯急冷合金
をさらに熱処理することにより粒成長させて、柱状晶の
平均短径を5〜30μmの範囲に調整することもでき
る。上記熱処理は、温度250〜1000℃で10分か
ら100時間の時間で行なうことができる。なお熱処理
時の雰囲気としては、真空中でも不活性ガス雰囲気中で
もよいが、特に高温度で熱処理を実施する場合には、M
nなどの比較的に蒸気圧が高い元素の揮散を防止するた
めに、アルゴンなどを封入した加熱炉で実施することが
望ましい。
【0054】上記柱状晶組織においては、等軸晶組織と
は異なり、結晶方位が揃っているため、粒界の乱れが少
なく、水素の吸蔵量が増し、電極容量を増大化できるこ
とが本発明者らの実験により確認された。すなわち柱状
晶組織においては、その界面に沿って、水素分子または
水素原子の通路が形成されるため、合金内への水素の吸
蔵あるいは放出が容易になり、電極容量が増加する。ま
た柱状晶組織における偏析は、EPMAによる検出限界
値以下と極めて少なくなる。従って偏析による局部電池
の形成が少なく、合金の微細化による寿命低下も効果的
に防止できる。
【0055】また溶湯急冷処理して水素吸蔵合金を製造
しているため、合金を構成する各結晶粒径が微細化し、
合金強度が高まるとともに、粒界の乱れが減少するた
め、水素の吸蔵量が増大し、電極容量を高めることがで
きる。
【0056】上記溶湯急冷処理によって製造した水素吸
蔵合金の結晶組織は、水素吸蔵合金電極として電池に組
み込んだ際に、電池特性を向上させる観点から、水素吸
蔵合金の厚さ方向の断面における柱状結晶組織の面積率
を50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ま
しくは80%以上にする必要がある。柱状晶の面積率が
50%以上となる場合には、この合金を用いた負電極の
サイクル寿命が、鋳造法により製造された水素吸蔵合金
を用いた負電極のサイクル寿命と比較して長くなる。特
に溶湯急冷合金の全体を柱状晶で形成した場合、特に偏
析が少なくなり、合金電極の容量および寿命をさらに改
善することができる。一方上記面積率が50%未満の場
合には、鋳造合金を使用した負電極と比較してサイクル
寿命に顕著な差異が現われない。すなわち上記溶湯急冷
処理によって製造し、厚さ方向の断面における柱状結晶
組織の面積率が50%以上となる本発明の水素吸蔵合金
を用いることにより、電極容量が240mAh/g以上
でサイクル寿命が600回以上という優れた電池特性が
同時に得られる。電極容量のより好ましい値は250m
Ah/g以上、さらに好ましくは260mAh/g以上
である。またサイクル寿命のより好ましい値は650回
以上、さらに好ましくは700回以上である。
【0057】ここで柱状晶とは、短径と長径との比(ア
スペクト比)が1:2以上である柱状結晶粒をいう。
【0058】次に、本発明に係るニッケル水素電池(円
筒形ニッケル水素二次電池)について図4を参照して説
明する。
【0059】水素吸蔵合金を含む水素吸蔵合金電極(負
極)11は、非焼結式ニッケル電極(正極)12との間
にセパレータ13を介在して渦巻状に捲回され、有底円
筒状の容器14内に収納されている。アルカリ電解液
は、前記容器14内に収容されている。中央に穴15を
有する円形の封口板16は、前記容器14の上部開口部
に配置されている。リング状の絶縁性ガスケット17
は、前記封口板16の周縁と前記容器14の上部開口部
内面との間に配置され、前記上部開口部を内側に縮径す
るカシメ加工により前記容器14に前記封口板16を前
記ガスケット17を介して気密に固定している。正極リ
ード18は、一端が前記正極12に接続され、他端が前
記封口板16の下面に接続されている。帽子形状をなす
正極端子19は、前記封口板16上に前記穴15を覆う
ように取り付けられている。ゴム製の安全弁20は、前
記封口板16と前記正極端子19で囲まれた空間内に前
記穴15を塞ぐように配置されている。封口リング21
は、前記正極端子19および前記容器14の上端に載置
される鍔紙22を固定するように前記容器14の上端付
近に嵌合して取り付けられている。
【0060】前記水素吸蔵合金電極11は、以下に説明
するペースト式および非ペースト式のものが用いられ
る。
【0061】(1)ペースト式水素吸蔵合金電極は、上
記溶湯急冷合金を粉砕することにより得た水素吸蔵合金
粉末と高分子結着剤と必要に応じて添加される導電性粉
末とを混合してペースト状とし、このペーストを集電体
である導電性基板に塗布、充填、乾燥した後、ローラー
プレス等を施すことにより作製される。 (2)非ペースト式水素吸蔵合金電極は上記水素吸蔵合
金粉末と高分子結着剤と必要に応じて添加される導電性
粉末とを撹拌し、集電体である導電性基板に散布した後
ローラープレス等を施すことにより作製される。
【0062】前記水素吸蔵合金の粉砕方法としては、例
えばボールミル、パルペライザー、ジェットミル等の機
械的粉砕方法、または高圧の水素を吸蔵・放出させ、そ
の際の体積膨張により粉砕する方法が採用される。
【0063】前記高分子結着剤としては、例えばポリア
クリル酸ソーダ、ポリテトラフルオロエチレン(PTF
E)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を挙げ
ることができる。このような高分子結着剤は、前記水素
吸蔵合金100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲
で配合することが好ましい。ただし、前記(2)の非ペ
ースト式水素吸蔵合金電極を作製する場合には撹拌によ
り繊維化して前記水素吸蔵合金粉末および必要に応じて
添加される導電性粉末を三次元状(網目状)に固定する
ことが可能なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
を高分子結着剤として用いることが好適である。
【0064】前記導電性粉末としては、例えば黒鉛粉
末、ケッチェンブラックなどのカーボン粉末、またはニ
ッケル、銅、コバルトなどの金属粉末を挙げることがで
きる。このような導電性粉末は、前記水素吸蔵合金10
0重量部に対して0.1〜5重量部の範囲で配合するこ
とが好ましい。
【0065】前記導電性基板としては、例えばパンチド
メタル、エキスパンドメタル、金網等の二次元基板、ま
たは発泡メタル基板、網状焼結繊維基板、不織布へ金属
をめっきしたフェルトめっき基板等の三次元基板を挙げ
ることができる。ただし、前記(2)の非ペースト式水
素吸蔵合金電極を作製する場合には水素吸蔵合金粉末を
含む合剤が散布されることから二次元基板を導電性基板
として用いることが好適である。
【0066】前記非焼結式ニッケル電極12は、例えば
水酸化ニッケルと必要に応じて添加される水酸化コバル
ト(Co(OH)2 )、一酸化コバルト(CoO)、金
属コバルト等との混合物にカルボキシメチルセルロース
(CMC)、ポリアクリル酸ソーダなどのポリアクリル
酸塩を適宜配合してペーストとし、このペーストを発泡
メタル基板、網状焼結繊維基板、不織布へ金属をめっき
したフェルトめっき基板などの三次元構造の基板に充填
し、乾燥した後、ローラープレス等を施すことにより作
製される。
【0067】前記セパレータ13に使用される高分子繊
維不織布としては、例えばナイロン、ポリプロピレン、
ポリエチレンなどの単体高分子繊維、またはこれら高分
子繊維を混紡した複合高分子繊維を挙げることができ
る。
【0068】アルカリ電解液としては、例えば6規定か
ら9規定の濃度を有する水酸化カリウム溶液または前記
水酸化カリウム溶液に水酸化リチウム、水酸化ナトリウ
ムなどを混合したものが使用される。
【0069】
【作用】上記構成に係る電池用水素吸蔵合金によればM
n,Coを必須元素とするAB5型合金であり、構成成分
の偏析が少なく、さらに耐食性が良好であるため、高容
量でかつサイクル寿命および初期特性が優れ、さらに放
電電位が安定したニッケル水素電池用の負極材料を提供
することができる。特に従来の電池特性を改善した上
に、大電流放電特性に優れた電池を形成することができ
るため、アナログ方式は勿論のこと、大電流放電を多用
するデジタル方式の各種電子機器の電源として極めて有
用である。
【0070】
【実施例】以下本発明の実施例についてより具体的に説
明する。
【0071】実施例1〜31 溶湯急冷法による冷却を行って得られる溶湯急冷合金が
表1に示す組成となるように、溶解時の減耗を見込んで
各種の原料混合体を調製した。なおミッシュメタル(L
m)としては、Ce3重量%,La50重量%,Nd4
0重量%,Pr5重量%,その他希土類元素2重量%か
ら成るLa富化ミッシュメタルを使用した。次に各原料
混合体をAl2 3 製るつぼに投入し、高周波誘導加熱
法により溶解して各種合金溶湯を調製した。次に得られ
た各合金溶湯を図1に示す単ロール法装置の冷却ロール
表面に射出することにより厚さ50〜150μmのフレ
ーク状の溶湯急冷合金を調製した。ここで冷却ロールと
しては直径300mmのCuCr製ロールを用い、射出ノズ
ルと冷却ロールとの間隙幅は20mmに設定するととも
に射出圧力は0.5kgf/cm2 に設定した。また急
冷処理はAr雰囲気中で実施し、冷却ロールの回転数
は、100〜300rpmに設定した。
【0072】次に得られた各溶湯急冷合金を粉砕して2
00メッシュ以下に分級して電池用水素吸蔵合金粉末を
調製した。次に調製した電池用水素吸蔵合金粉末と、P
TFE粉末と、カーボン粉末とをそれぞれ重量%で9
5.5%、4.0%、0.5%になるように秤量後、混
練圧延して各電極シートを作成した。電極シートを所定
の大きさに切り出してニッケル製集電帯に圧着し、水素
吸蔵合金電極をそれぞれ作成した。
【0073】一方、水酸化ニッケル90重量%と一酸化
コバルト10重量%とに少量のCMC(カルボキシメチ
ルセルロース)と水とを添加し撹拌混合してペーストを
調製した。このペーストを、三次元構造を有するニッケ
ル多孔体に充填乾燥後、ローラプレスによって圧延する
ことによりニッケル極を製造した。
【0074】そして上記各水素吸蔵合金電極とニッケル
極とを組み合わせて各実施例のAA型(単三型)ニッケ
ル水素電池を組み立てた。ここで各電池の容量はニッケ
ル極の理論容量である650mAhとなるように設定
し、電解液としては、7規定の水酸化カリウムと1規定
の水酸化リチウムとの混合水溶液を使用した。
【0075】そして、各水素吸蔵合金電極について、合
金1g当り220mAの電流値(220mA/g)で3
00mAh/gまで充電した後に、上記電流値でHg/
HgO参照電極に対して−0.5Vの電位になるまで放
電させたときの最大電極容量を測定して表1に示す結果
を得た。また各電極の活性回数を測定した。ここで活性
回数は、製造した電極が最大容量を示すまでに必要な充
放電サイクル数であり、電池特性の立上りの良否を判定
する指標となる。
【0076】次に各電池について、650mAで1.5
時間充電後、電池電圧が1Vになるまで1Aの電流で放
電する充放電サイクルを繰り返し、電池容量が初期容量
の80%になるまでのサイクル数を電池寿命として測定
した。
【0077】さらに各電池について大電流放電特性の良
否を測定した。この大電流放電特性を規定する方法とし
て、ここでは2つの電流値で放電した際に得られる各放
電容量の比で規定する方法を採用した。すなわち電池の
公称容量である650mAhを1時間で放電する650
mAの電流を1Cとし、1Cで放電した時の放電容量を
Cap(1C)、その5倍の電流である5Cで放電した
時の放電容量をCap(5C)としてそれぞれ測定し、
2つの放電容量の比であるCap(1C)/Cap(5
C)の値を大電流放電特性とし、以下、本文中で使用す
ることとする。各電池の大電流放電特性の測定値を表1
に併せて示す。
【0078】また各電池を組み立て、10サイクル充放
電した後、電池を分解して負電極に使用した水素吸蔵合
金の金属組織の分析を行った。なお一旦電池に組み込ま
れた水素吸蔵合金粉末は高分子結着剤などと一体化して
おり、また電解液や,微細構造観察時に使用するエッチ
ング液により部分的に腐食されているため、そのままで
は金属組織を観察することは困難である。そこで以下に
示すような(1)〜(3)項の手順で分析試料を作成
し、さらに(4)項に示す方法で金属組織の分析を実施
した。
【0079】(1)負極の取出し 完全に放電させない状態で電池を分解すると、負極に含
有される水素吸蔵合金が発火する危険性があるため、ニ
ッケル水素電池を完全に放電させた後に電池を分解し負
極を取り出す。発火を防止するため、電池から取り出し
た負極はすぐに水洗し乾燥させる。水洗や乾燥が不十分
であると次工程の樹脂埋めの際に樹脂とのなじみが悪く
剥離するおそれがある。
【0080】(2)樹脂による負極の埋め込み 乾燥させた負極から10mm×5mmの試料片を10枚
切り出し、1〜10の試料番号を付する。これらの試料
片を成形用型の中に長辺が下になるように垂直に立て、
その間隙部に樹脂を流し込み硬化させ複合体を形成す
る。この埋め込み用の樹脂としては、エポキシ樹脂等の
粘性が低い樹脂を用いる。また試料片と樹脂との密着度
を高めるため、樹脂の温度を高めて粘性を下げた状態で
成形型中に流し込むとよい。
【0081】(3)複合体の研摩 硬化した複合体の表面を耐水研摩紙(#600)〜(#
1500)を順次使用して研摩し、水素吸蔵合金の断面
を露出させる。この研摩操作は研摩機械によって実施し
てもよいが、衝撃力が大きいため、電極内の水素吸蔵合
金が剥離し易くなる。従って上記研摩は手作業で実施す
ることが好ましい。
【0082】(4)合金組織の観察 上記試料片に含有される水素吸蔵合金の金属組織をSE
M(走査型電子顕微鏡)で観察する場合、水素吸蔵合金
が高分子結着剤などと一体化しており、部分的に金属組
織を明確に確認できないものもある。従って金属組織を
確認できる合金のみを観察の対象とする。
【0083】上記観察は、金属組織が最も多く写真撮影
できるように視野を選択して、電極断面に露出した水素
吸蔵合金の金属組織を、SEMを用いて300〜200
0倍程度の倍率で写真撮影したときに、図5,図10お
よび図15に示すように、結晶粒が視認できる不定形な
全結晶組織のうち、その結晶組織の内接する最大長方形
で区画される領域Rの範囲内で行なった。このとき、負
極に含有される本発明の水素吸蔵合金の一個一個につい
て、確認できる金属組織内において、アスペクト比が
1:2以上の結晶粒子が占める割合は、50%以上が好
ましい。より好ましくは70%以上、さらに好ましくは
80%以上である。上記割合が50%未満の場合には、
結晶粒界が増え、その結果、偏析も増加して合金粒子の
劣化が顕著になるからである。かつ、上記アスペクト比
が1:2以上の結晶粒子数の割合が、確認できる金属組
織に含まれる全粒子数に対して30%以上、より好まし
くは50%以上、さらに好ましくは70%以上であるこ
とが必要である。上記結晶粒子数の割合が30%未満の
場合には、劣化し易い結晶粒子数が相対的に多くなり、
電池を形成した場合に寿命が顕著に短縮してしまうから
である。
【0084】ここでアスペクト比とは、結晶粒の短径と
長径との比であり、長径とは結晶粒の軸方向の最大長さ
であり、短径とは、その軸直角方向の最大長さをいう。
【0085】次に水素吸蔵合金の金属組織を構成する柱
状晶のアスペクト比を求める方法を具体的に説明する。
【0086】図5は実施例に係る水素吸蔵合金の金属組
織例を示す模写図であり、単ロール装置の冷却ロールに
接した溶湯急冷合金の厚さ方向の破断面を示している。
上記水素吸蔵合金は粉砕する前のフレーク状の溶湯急冷
合金である。図5において、破断面の左側が冷却ロール
に当接していた冷却面であり、右側が自由面側である。
溶湯急冷処理により、冷却面側から垂直方向に種々のア
スペクト比を有する柱状晶が成長している状態が明瞭に
識別できる。
【0087】しかしながら実際の電池の負極には、上記
フレーク状の溶湯急冷合金を粉砕したものが使用されて
おり、またその粉砕粉も電解液によって侵食されている
場合もあるため、SEMにより観察を行った場合に必ず
しも鮮明な柱状晶が観察できるとは限らない。例えば柱
状晶の短径に相当する端面のみが観察されるため、あた
かも等軸晶のように観察される場合や、柱状晶が部分的
に観察されるが、それ以外の部分は、電解液に侵食され
ているため、全体として金属組織を明瞭に識別すること
が困難な場合や、水素吸蔵合金の一部が、SEM観察時
に使用するエッチング液によって侵食されているため、
金属組織全体が明瞭に識別できない場合などがある。
【0088】そこで負電極に含有される水素吸蔵合金の
金属組織を分析する場合には、対象面を鏡面研摩した後
に、その金属組織の結晶粒界を露出させるために、エッ
チング処理を行なう。しかしながら、このエッチング液
が水素吸蔵合金の組成に適合していない場合には、エッ
チング液が合金全体を過度に侵食してしまうため、結晶
粒界を鮮明に露出させることは不可能になる。したがっ
て、たとえ柱状晶が形成されていても、侵食度が大きい
場合には、金属組織全体を識別することが困難になる。
一方、侵食度が小さい場合でも、柱状晶の形態は、かろ
うじて視認できるが、結晶粒界を鮮明に識別することは
困難である。なお上記以外に冷却ロール面に対して斜め
の破断面が観察される場合には、冷却ロール面と破断面
とのなす角度によっては柱状晶があたかも等軸晶のよう
に観察される場合がある。したがってこの場合には、柱
状晶の面積率を測定する場合には注意を要する。
【0089】図5,図10および図15は実際に使用し
た電池から取り出した負極に含有される水素吸蔵合金粒
子の模写図である。
【0090】次に上記模写図やSEM写真に基づいて、
アスペクト比が1:2以上である結晶粒が、全結晶粒に
占める割合を算定する方法について述べる。まず研摩さ
れた1個の負極片の断面に観察される全水素吸蔵合金粒
子のうち、金属組織が鮮明に表われている合金粒子数を
計数し、その値をN1 とする。このとき、合金粒子が水
素吸蔵合金であることを確認するために、X線マイクロ
アナライザ(EPMA)または、エネルギ分散型X線ア
ナライザ(EDX)などを使用して、希土類元素からの
特有な信号を検出する。この特有な信号が検出されない
場合には、粉砕片のような付着物と推定され、水素吸蔵
合金粒子ではないと判定し、合金粒子数から除外する。
【0091】次に上記N1 個の合金粒子のうち、アスペ
クト比が1:2以上の結晶粒が、金属組織面積の50%
以上を占める合金粒子数N1 ′を計数する。以下、負極
の各試料片1〜10について同様に計数する。
【0092】こうして求めたN1 〜N10およびN1 ′〜
10′の値を下記式に代入して柱状晶組織の割合が算出
される。
【0093】
【数1】
【0094】次に上記柱状晶組織が金属組織において占
める割合の算定法について述べる。なお、上記柱状晶と
してはアスペクト比が1:2以上の長尺の結晶粒を調査
の対象とした。またアスペクト比が1:2未満の結晶粒
には、等軸晶のみならず、チル晶や各種付着物にも含ん
でいる。上記柱状晶の占有面積はイメージアナライザ
(LUZEX500型,日本レギュレータK.K.製)
を使用して測定した。すなわち図3に示すような金属組
織を撮影したSEM写真上に薄いトレーシングペーパ
(坪量:40g/m2 程度)を載せ、結晶粒界をペーパ
ー上に写し取り、例えば図5に示すような模写図を作成
する。図5に示す水素吸蔵合金粒子において、柱状晶3
1の左側には、電解液によって侵食された侵食部30が
形成されている。また領域R内の中央には、粉砕物のか
けら等の付着物33が介在している。
【0095】次に作成した模写図においてアスペクト比
が1:5以上の柱状晶に相当する部分を黒く塗りつぶ
し、図6を得る。同様にアスペクト比が1:4以上の柱
状晶部分を塗りつぶし、図7を得る。以下同様にアスペ
クト比が1:3の場合、1:2以上の場合について塗り
つぶしてそれぞれ図8および図9を得る。次に図6〜9
について、イメージアナライザを使用して画像処理を行
い、当該アスペクト比に該当する柱状晶の面積割合を光
学的に解析し演算する。すなわちイメージアナライザは
対象範囲R内の柱状晶の有無を色の濃淡で識別し、柱状
晶に相当する黒部分の面積割合を算出する。
【0096】図10〜14、および図15〜19は他の
合金組織について上記面積割合を累積的に算出した例を
示している。すなわち他の実施例に係る水素吸蔵合金粒
子を示すSEM写真に写る合金粒子のうち、結晶組織が
鮮明に識別できる特定の合金粒子の結晶組織をトレース
して図10に示す模写図が得られる。図10において、
上縁の直線部は冷却ロールに対する当接面34であり、
この当接面34に沿って、冷却ロールの超急冷作用によ
って生じた微細なチル晶35が生成している。なおチル
晶35は微細であるため、結晶粒界は図示していない。
また領域Rの右側に付着物33が介在している。
【0097】以下、前記実施例の場合と同様にしてアス
ペクト比が1:5以上、1:4以上、1:3以上、1:
2以上の柱状晶部分を黒く塗りつぶしてそれぞれ図11
〜14の模写図が得られる。
【0098】その他の実施例に係る水素吸蔵合金につい
ても、同様に、SEM写真から結晶組織を示す図15の
模写図を作成し、以下各アスペクト比の範囲毎に該当す
る柱状晶を塗りつぶし、図16〜19を作成し、各図に
ついてイメージアナライザによって解析し、柱状晶部分
の面積割合が求められる。
【0099】図5〜図19から明らかなように、いずれ
の結晶組織においても、柱状晶31が充分に成長してい
る一方、組織内に部分的に等軸晶32も存在することが
確認された。
【0100】なお上記解析を行う範囲は、図5,図10
および図15に示すように、結晶粒が視認できる不定形
な全結晶組織のうち、その結晶組織に内接する最大長方
形で区画される領域Rの範囲内とした。なお上記領域R
の境界上に存在する柱状晶は領域R内のみの面積を採用
する一方、アスペクト比は領域外に存在する部分を含め
た柱状晶全体の形状から算定した。
【0101】このようにして実施例1〜31に係る各水
素吸蔵合金の柱状晶の面積割合、柱状晶の短径、その水
素吸蔵合金を使用した電池の最大電極容量、充放電サイ
クル数(寿命)、活性回数および大電流放電特性をまと
めて下記表1および表2に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】表1〜2に示す結果から明らかなように、
Mn,Al,Coを添加した所定組成の合金溶湯を急冷
処理して調製した実施例1〜31に係る電池用水素吸蔵
合金によれば、いずれも結晶組織に十分に柱状晶が成長
するとともに構成元素の偏析が極めて少ないため、負電
極材料として使用した場合に寿命を損うことなく電極容
量を大幅に改善することができた。
【0105】また最大電極容量に達するまでに必要な充
放電サイクル数、すなわち活性回数が2サイクルと少な
いため、電池特性の初期の立上りが迅速であり、電池製
造コストを削減できる上に電池の機動性を向上させるこ
とができた。
【0106】なお、実施例1〜31において作成した各
水素吸蔵合金粉末について、電極を作成する前に下記
(A),(B)項および前記(4)項に示す手順で金属
組織の分析を行なった。
【0107】(A)樹脂埋め込み 合金試料約100mgを採取し、直径20mmのSEM試
料用樹脂埋め込み枠(ポリプロピレン製)中央部に散布
する。次いで、SEM試料埋め込み用樹脂として市販さ
れているエポキシ樹脂(ビューラー社製EPO−MI
X)と硬化剤とを良く混合した後、混合体を上記埋め込
み枠に注入し硬化させる。この際、試料と樹脂との密着
性を向上させるため、樹脂を予め60℃程度まで加温し
て粘度を低下させたり、樹脂注入後、真空デシケータ中
で真空引きして脱泡を行なうことが望ましい。
【0108】(B)研磨 上記手順により埋め込みを行なった試料を、次いで研磨
機で鏡面仕上げとなるまで研磨する。水素吸蔵合金試料
は水と反応し易いため、研磨はメチルアルコールを滴下
しながら耐水研磨紙の目の荒さを180番,400番,
800番と順に細かくしながら200rpmで回転する
回転式研磨機により研磨した後、同じく回転研磨機にフ
ェルトをセットしダイアモンドペーストの粒度を15ミ
クロン,3ミクロン,0.25ミクロンの順に細かくし
ながら研磨し鏡面仕上げした。
【0109】以上の手順で得られた各試料片について、
前記(4)項に示される方法で、水素吸蔵合金の柱状晶
の面積割合および柱状晶の短径を測定した。その結果、
実施例1〜31に係る水素吸蔵合金は、10サイクル充
放電を行なったニッケル水素電池から取り出した負極に
含有された合金の柱状晶についての各測定値(表1〜
2)とほぼ同じ値を示すことを確認した。
【0110】実施例32 溶湯急冷法による冷却を行って得られる溶湯急冷合金の
組成が、LmNi3.7Co0.3 Mn0.5 Al0.2 Zr
0.1 Nb0.1 Ga0.1 (LmはLa富化ミッシュメタル
であり、Ce:3重量%,La:50重量%,Nd:4
0重量%,Pr:5重量%,他の希土類元素:2重量%
から成る。)となるように、溶解時の減耗を予め見込ん
で組成を調整したAB5 型水素吸蔵合金インゴット20
0gを高周波誘導加熱炉にて溶解して合金溶湯を調製し
た。次に得られた合金溶湯を図1に示す単ロール法装置
の冷却ロール表面に滴下することにより厚さ80μmの
フレーク状溶湯急冷合金を調製した。
【0111】この溶湯急冷合金をアルゴン雰囲気中で表
3に示すように温度200〜1200℃で4時間熱処理
した後に、または熱処理せずに溶湯急冷したままで(as
quenched )粉砕し、200メッシュ以下に分級した各
合金粉末を電池用水素吸蔵合金とした。
【0112】次に熱処理しない合金粉末または熱処理を
行なった各合金粉のいずれかと、PTFE粉末と、カー
ボン粉末とをそれぞれ重量%で95.5%、4.0%、
0.5%になるように秤量後、混練して各電極シートを
作成した。電極シートを所定の大きさに切り出してニッ
ケル製集電帯に圧着し、水素吸蔵合金電極を作成した。
【0113】一方、水酸化ニッケル90重量%と一酸化
コバルト10重量%とに少量のCMC(カルボキシメチ
ルセルロース)と水とを添加し撹拌混合してペーストを
調製した。このペーストを、三次元構造を有するニッケ
ル多孔体に充填乾燥後、ローラプレスによって圧延する
ことによりニッケル極を製造した。
【0114】そして上記各水素吸蔵合金電極とニッケル
極とを組み合わせてAA型(単三型)ニッケル水素電池
を組み立てた。ここで各電池の容量はニッケル極の理論
容量である650mAhとなるように設定し、電解液と
しては、7規定の水酸化カリウムと1規定の水酸化リチ
ウムとの混合水溶液を使用した。
【0115】そして、各水素吸蔵合金電極について、合
金1g当り220mAの電流値(220mA/g)で3
00mAh/gまで充電した後に、上記電流値でHg/
HgO参照電極に対して−0.5Vの電位差になるまで
放電させたときの最大電極容量を測定して図20に示す
結果を得た。
【0116】次に各電池について、650mAで1.5
時間充電後、電池電圧が1Vになるまで1Aの電流で放
電する充放電サイクルを繰り返し、電池容量が初期容量
の80%になるまでのサイクル数を電池寿命として測定
し、下記表3に示す結果を得た。
【0117】
【表3】
【0118】図20および表3に示す結果から明らかな
ように、熱処理を実施した合金粉を使用すると、いずれ
もより高い電極容量が得られた。また寿命特性において
も、熱処理を実施した合金粉を使用した電池はほぼ80
0サイクルと,より特性を向上できることが確認され
た。さらに大電流特性についても良好な結果が得られ
た。
【0119】実施例33 実施例32と同様の溶湯急冷法により、Mn添加量xを
変化させた各種溶湯急冷合金を調製した。溶湯急冷合金
の組成式はLmNi4.4-x Co0.3 Mnx Al0.1Mo0.2
あり、Mn添加量xを0,0.1,0.3,0.5,
0.8,1.2と変化させた。またLmはLa富化ミッ
シュメタルであり、実施例32と同一のものを使用し
た。得られた溶湯急冷合金を熱処理せずに、そのまま使
用し、合金電極を形成し、さらにこの合金電極とニッケ
ル電極と組み合わせて電池を調製し、その電極容量およ
び電池寿命を測定した。
【0120】一方比較例として溶湯急冷法ではなく溶解
鋳造法によって調製し、LmNi4.0 Co0.4 Mn0.3
Al0.1 Mo0.2 の組成を有する水素吸蔵合金インゴッ
トを使用して同一仕様の電極および電池を製作して、同
様に電極容量および電池寿命を測定して下記表4に示す
結果を得た。
【0121】
【表4】
【0122】表4に示す結果から明らかなように、Mn
を含有しない合金組成では、電極容量の改善効果は小さ
い。一方Mnを含有した合金組成では、電極容量および
電池寿命ともに大幅な改善効果が得られた。しかしなが
らMnの添加比率が1を超え1.2になると、電池寿命
が急激に低下し、従来の溶解鋳造合金インゴットと溶湯
急冷合金との特性上の有意差がなくなってしまった。
【0123】一方、溶解鋳造合金インゴットにおいて
は、構成成分の偏析が結晶組織の広い範囲に発生してお
り、また柱状晶の発達が少ないため、電池特性の改善は
困難であった。
【0124】実施例34 実施例33と同様な溶湯急冷処理法により、Zr添加量
xを変化させた5種類の溶湯急冷合金を調製した。溶湯
急冷合金の組成は、LmNi4.3-x Co0.3Mn0.5
0.1 Zrx であり、Zr添加量xは、それぞれ0,
0.3,0.5,0.8,1.2とした。
【0125】一方比較例として溶解鋳造法によって調製
した組成LmNi4.2 Mn0.5Co0.3 Al0.1 Zr
0.3 の水素吸蔵合金インゴットを用意した。
【0126】そして上記各種溶湯急冷合金および水素吸
蔵合金インゴットを使用して実施例11と同様に合金電
極およびAA型ニッケル水素電池を製作し、その電極容
量および電池寿命を測定した。
【0127】なお、上記溶湯急冷合金および水素吸蔵合
金インゴットについて、Arガス雰囲気中で温度600
℃で4時間熱処理している。そして熱処理した各種合金
を使用して水素吸蔵合金電極およびAA型ニッケル水素
電池を製作し、実施例33と同様な測定方法によって、
電極容量および電池寿命を測定して、下記表5に示す結
果を得た。
【0128】
【表5】
【0129】表5に示す結果において、Zrの添加量の
増加に伴って電極容量が低下し、特に添加量が1以上に
なると急激な容量低下が発生する傾向が確認された。ま
た添加量が1を超えると急激に短寿命になることも確認
された。
【0130】以上の実施例32〜34に係る電池用水素
吸蔵合金によれば、所定組成の合金溶湯を急冷処理して
調製しているため、偏析が少なく、高電極容量で長寿命
の合金電極および電池を形成することができる。
【0131】実施例35〜45 直径300mmのFe基合金材(SUJ−2)製の冷却ロ
ール2個を対向配置した図2に示すような双ロール装置
を使用して、Ar雰囲気中で合金溶湯を急冷処理するこ
とにより、最終的に表6に示す組成を有する実施例35
〜45に係る水素吸蔵合金フレークをそれぞれ調製し
た。なお、冷間ロール間のギャップはゼロとし、冷却ロ
ールの回転数は30〜100rpmの範囲に設定した。
【0132】次に得られた各水素吸蔵合金フレークを実
施例1〜31と同一条件で処理して、それぞれ対応する
水素吸蔵合金電極を調製した。さらに各水素吸蔵合金電
極(負極)とニッケル電極(正極)とを組み合わせてA
A型ニッケル水素電池を製造した。
【0133】以下実施例1等と同一条件で水素吸蔵合金
の柱状晶の面積割合、柱状晶の平均短径、最大電極容
量、寿命(充放電サイクル数)、初期電池特性の立上り
(活性回数)および大電流放電特性を測定して下記表6
に示す結果を得た。
【0134】
【表6】
【0135】表6に示す結果から明らかなように各実施
例における水素吸蔵合金はいずれも柱状晶の面積割合が
高く、かつ柱状晶の平均粒径も20〜28μmと最適化
されているため、この水素吸蔵合金を負極活物質として
含有するニッケル水素電池は、いずれも電極容量,充放
電サイクル数,活性回数および大電流放電特性の4大特
性がバランス良く改善されていことが判明した。
【0136】比較例1 実施例1で使用した直径300mmの銅製の冷却ロールを
有する単ロール装置を使用して、合金溶湯を急冷処理し
て最終的にMm Ni4.0 Co0.4 Al0.3Mn0.3
なる組成を有する比較例1に係る水素吸蔵合金を調製し
た。また冷却ロールの回転数は600rpmに設定し
た。なお、急冷処理は、真空中で実施し、合金溶湯を射
出する射出ノズル先端と冷却ロールとの間隔は50mmと
した。
【0137】比較例2 一方、実施例35において使用した直径100mmのFe
基合金製冷却ロールを2個対向配置した双ロール装置を
使用して、合金溶湯を急冷処理し、最終的にMmNi3.2
Co1.0 Mn0.6 Al0.2 の組成を有する比較例
2に係る水素吸蔵合金をそれぞれ調製した。なお上記急
冷処理は、1気圧のArガス雰囲気中で実施し、合金溶
湯の射出ノズル先端と冷却ロールとの間隙は50mm、射
出圧力は0.1kgf/cm2 に設定した。また冷却ロールの
回転数は、1000rpmに設定した。またMmは、L
a30重量%,Nd15重量%,Ce50重量%,Pr
5重量%から成るミッシュメタルである。
【0138】比較例3 合金インゴットの組成がMm Ni3.0 Co1.4
0.6 となるように調製した水素吸蔵合金粉末原料をア
ルミナ製坩堝内に投入し、坩堝外周に配設した高周波誘
導加熱コイルにより1400℃に加熱して溶解し、合金
溶湯を調製した。次に得られた合金溶湯を銅製の水冷鋳
型へ鋳込み、鋳型面間隔55mm、鋳造速度3kg/秒/m
2 で合金インゴットを調製し、比較例3に係る水素吸蔵
合金を調製した。
【0139】こうして得られた比較例1〜3に係る溶湯
急冷合金または水素吸蔵合金をスタンプミルを用いて粉
砕し、200メッシュ以下に分級したものを電池用水素
吸蔵合金粉末として用意した。以下、各電池用水素吸蔵
合金粉末を使用して実施例1と同様な手順で水素吸蔵合
金電極(負極)を作成し、ニッケル極(正極)と組み合
せてAA型ニッケル水素電池を組み立てた。そして実施
例1と同様な測定方法に従って電極容量、充放電サイク
ル数(寿命)、活性回数および大電流放電特性を測定し
て、下記の表7に示す結果を得た。
【0140】
【表7】
【0141】表7に示す結果から明らかなように比較例
1〜3に示す水素吸蔵合金においては、いずれも金属組
織における柱状晶の面積割合が、表1〜2および表6に
示す実施例のものと比較して小さく、偏析量も多くなっ
ている。したがって、この合金を使用した電池の電極容
量および大電流放電特性も低く、充放電サイクル数で示
す電池寿命も低いことが確認できた。
【0142】また比較例の電極において、最大電極容量
を得るまでに必要な充放電サイクル数(活性回数)は3
〜8回であり、実施例の2回と比較して大きくなってお
り、電池の初期立上り性も低いことが確認された。
【0143】特に実施例と同様にMn,Co,Alを添
加した比較例1に係る水素吸蔵合金においては、柱状晶
の成長が充分ではなく、等軸晶組織の割合が多くなるも
のがあり、表1〜2および表6に示す実施例と比較して
電池特性は低下した。また柱状晶の平均粒径が2〜3μ
mと小さい場合には、粒界量の増加に伴う耐食性の低下
が顕著であり、電池寿命も低下し易いことが判明した。
【0144】
【発明の効果】以上説明の通り、本発明に係る電池用水
素吸蔵合金によれば、Mn,Al,Coを必須元素とする
AB5 型合金であり、構成成分の偏析が少なく、さらに
耐食性が良好であるため、高容量でかつサイクル寿命お
よび初期特性が優れ、さらに放電電位が安定したニッケ
ル水素電池用の負極材料を提供することができる。特に
従来の電池特性を改善した上に、大電流放電特性に優れ
た電池を形成することができるため、アナログ方式は勿
論のこと、大電流放電を多用するデジタル方式の各種電
子機器の電源としても極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】単ロール法による溶湯急冷装置を示す概略図。
【図2】双ロール法による溶湯急冷装置を示す概略図。
【図3】溶湯急冷処理したフレーク状の水素吸蔵合金の
金属組織を示す電子顕微鏡写真。
【図4】本発明に係るニッケル水素電池の構成例を示す
斜視図。
【図5】水素吸蔵合金の金属組織の柱状晶を模写した模
写図。
【図6】図5に示す金属組織においてアスペクト比が
1:5以上の柱状晶組織を示す模写図。
【図7】図5に示す金属組織においてアスペクト比が
1:4以上の柱状晶組織を示す模写図。
【図8】図5に示す金属組織においてアスペクト比が
1:3以上の柱状晶組織を示す模写図。
【図9】図5に示す金属組織においてアスペクト比が
1:2以上の柱状晶組織を示す模写図。
【図10】他の実施例に係る水素吸蔵合金の金属組織の
柱状晶を模写した模写図。
【図11】図10に示す金属組織においてアスペクト比
が1:5以上の柱状晶組織を示す模写図。
【図12】図10に示す金属組織においてアスペクト比
が1:4以上の柱状晶組織を示す模写図。
【図13】図10に示す金属組織においてアスペクト比
が1:3以上の柱状晶組織を示す模写図。
【図14】図10に示す金属組織においてアスペクト比
が1:2以上の柱状晶組織を示す模写図。
【図15】その他の実施例に係る水素吸蔵合金の金属組
織の柱状晶を模写した模写図。
【図16】図15に示す金属組織においてアスペクト比
が1:5以上の柱状晶組織を示す模写図。
【図17】図15に示す金属組織においてアスペクト比
が1:4以上の柱状晶組織を示す模写図。
【図18】図15に示す金属組織においてアスペクト比
が1:3以上の柱状晶組織を示す模写図。
【図19】図15に示す金属組織においてアスペクト比
が1:2以上の柱状晶組織を示す模写図。
【図20】熱処理温度と放電容量と充放電サイクル数と
の関係を示す特性図。
【符号の説明】 1 冷却チャンバ 2 取鍋 3 合金溶湯 4 注湯ノズル(射出ノズル) 5,5a,5b 冷却ロール 6 水素吸蔵合金 7 溶解炉 8 タンディシュ 11 水素吸蔵合金電極(負極) 12 非焼結式ニッケル電極(正極) 13 セパレータ 14 容器 15 穴 16 封口板 17 絶縁性ガスケット 18 正極リード 19 正極端子 20 安全弁 21 封口リング 22 鍔紙 30 侵食部 31 柱状晶 32 等軸晶 33 付着物 34 冷却ロールに対する当接面 35 チル晶
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01M 10/30 Z (72)発明者 佐藤 典昭 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内 (72)発明者 堀江 宏道 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内 (72)発明者 長谷部 裕之 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内 (72)発明者 五十崎 義之 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式A Nia Mnb Alc
    d e (但し、AはY(イットリウム)を含む希土
    類元素より選択される少なくとも1種の元素、MはW,
    Ta,Mo,Nb,In,Ga,Sn,Zn,Cr,
    V,Ti,ZrおよびHfの中から選択される少なくと
    も1種の元素、3.5≦a≦5,0.1≦b≦1,0≦
    c≦1,0.1≦d≦1,0<e≦0.6,4.5≦a
    +b+c+d+e≦6)で表わされる組成を有する合金
    から成り、この合金が少なくとも一部に柱状晶組織を有
    し、この柱状晶の平均短径が5〜30μmであることを
    特徴とする電池用水素吸蔵合金。
  2. 【請求項2】 柱状晶の短径と長径との比(アスペクト
    比)が1:2以上となる柱状晶組織の面積比率が50%
    以上であることを特徴とする請求項1記載の電池用水素
    吸蔵合金。
  3. 【請求項3】 一般式A Nia Mnb Alc
    d e (但し、AはY(イットリウム)を含む希土
    類元素より選択される少なくとも1種の元素、MはW,
    Ta,Mo,Nb,In,Ga,Sn,Zn,Cr,
    V,Ti,ZrおよびHfの中から選択される少なくと
    も1種の元素、3.5≦a≦5,0.1≦b≦1,0≦
    c≦1,0.1≦d≦1,0<e≦0.6,4.5≦a
    +b+c+d+e≦6)で表わされる組成を有する合金
    溶湯を、回転する冷却ロールの走行面に射出して急冷凝
    固せしめ、少なくとも一部に柱状晶組織を有する溶湯急
    冷合金を調製して電池用水素吸蔵合金とすることを特徴
    とする電池用水素吸蔵合金の製造方法。
  4. 【請求項4】 一般式A Nia Mnb Alc
    d e (但し、AはY(イットリウム)を含む希土
    類元素より選択される少なくとも1種の元素、MはW,
    Ta,Mo,Nb,In,Ga,Sn,Zn,Cr,
    V,Ti,ZrおよびHfの中から選択される少なくと
    も1種の元素、3.5≦a≦5,0.1≦b≦1,0≦
    c≦1,0.1≦d≦1,0<e≦0.6,4.5≦a
    +b+c+d+e≦6)で表わされる組成を有する合金
    溶湯を急冷処理して溶湯急冷合金を調製し、得られた溶
    湯急冷合金を、250〜1000℃の温度範囲で少なく
    とも10分間熱処理して電池用水素吸蔵合金を形成する
    ことを特徴とする電池用水素吸蔵合金の製造方法。
  5. 【請求項5】 柱状晶の平均粒径を5〜30μmの範囲
    に設定することを特徴とする請求項3または4記載の電
    池用水素吸蔵合金の製造方法。
  6. 【請求項6】 合金溶湯の急冷処理を、真空中または不
    活性ガス雰囲気中で実施することを特徴とする請求項3
    または4記載の電池用水素吸蔵合金の製造方法。
  7. 【請求項7】 熱処理は、真空中または不活性ガス雰囲
    気中で実施することを特徴とする請求項4記載の電池用
    水素吸蔵合金の製造方法。
  8. 【請求項8】 一般式A Nia Mnb Alc
    d e (但し、AはY(イットリウム)を含む希土
    類元素より選択される少なくとも1種の元素、MはW,
    Ta,Mo,Nb,In,Ga,Sn,Zn,Cr,
    V,Ti,ZrおよびHfの中から選択される少なくと
    も1種の元素、3.5≦a≦5,0.1≦b≦1,0≦
    c≦1,0.1≦d≦1,0<e≦0.6,4.5≦a
    +b+c+d+e≦6)で表わされる組成を有する合金
    から成り、この合金が少なくとも一部に柱状晶組織を有
    し、この柱状晶の平均短径が5〜30μmである電池用
    水素吸蔵合金を有する負極と、ニッケル酸化物から成る
    正極との間に電気絶縁性を有するセパレータを介装して
    密閉容器内に収容し、この密閉容器内にアルカリ電解液
    を充填したことを特徴とするニッケル水素電池。
  9. 【請求項9】 水素吸蔵合金の柱状晶の短径と長径との
    比(アスペクト比)が1:2以上となる柱状晶組織の面
    積比率が50%以上であることを特徴とする請求項8記
    載のニッケル水素電池。
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