JPH0726229Y2 - 後２輪車両のスイングア−ム - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の目的〕 （産業上の利用分野） この考案は、チェーンまたはベルトによって駆動される
後２輪車両のスイングアームに関する。

（従来の技術） 小型の３輪車、４輪車など、後２輪車両では、その後２
輪をスイングアームで懸架した１本のリヤアクスルに固
定し、チェーンまたはベルトによってリヤアクスルを駆
動して走行するものがある。第３図はその一例として示
した不整地走行４輪車で、操舵可能な一対の前輪１とス
イングアーム３によって懸架される一対の後輪２を配
し、エンジン５により後輪２を駆動して走行する。６は
燃料タンク、７は騎乗型シートを示す。上記スイングア
ーム３は、左右一対のアーム部８を並べて構成され、そ
れぞれの前端のピボット部９にピボット軸10を通して車
体４の後下部に軸支される。後端は軸受ハウジング12を
取着ける後輪支持部11によって一体に結合される。軸受
ハウジング12は左右端に後輪２を固定したリヤアクスル
13を軸支する。スイングアーム３の適所にはサスペンシ
ョンユニット14が接続され、後輪２は安定的に一体にな
って緩衝懸架される。15はリヤアクスル13に固定したド
リブンスプロケットギアで、エンジン出力軸に固定され
たドライブスプロケットギア16からチェーン17を介して
駆動される。

上記アーム部８は、懸架を安定させるために左右一対が
対称的に並設され、ある程度巾の広いスイングアームと
するのが普通である。ところが、チェーン17のラインは
スイングアーム３を側方に外して設定されるので、トル
ク伝達の反力は同側のアーム部８により大きく印加さ
れ、剛性が不足する心配がある。充分な剛性を確保する
ようにすればスイングアーム全体の大型化、重量増加を
招き、過剰品質になるという問題がある。このことは、
サスペンションユニット14のスイングアーム３への枢支
部がオフセットされている場合にも、同様の問題として
提起される。

（考案が解決しようとする問題点） 以上のように、スイングアームが２本のアーム部によっ
て左右対称に構成されると、チェーンラインまたはベル
トラインあるいはサスペンションユニット枢支部のオフ
セットにより片方のアーム部に剛性不足が生じ、対策に
よってはスイングアームの大型化を招くことになる。

この考案は、この問題点を解決するもので、大型化を招
くことなく剛性を確保できるようにした後２輪車両のス
イングアームを得ることを目的とする。

〔考案の構成〕

（問題点を解決するための手段） この考案の後２輪車両のスイングアームでは、中空密閉
構造からなる左右２本配置されたアーム部のうち、チェ
ーンまたはベルトラインあるいはサスペンションユニッ
ト枢支部に近いほうのアーム部を、他のアーム部より剛
性が高くなるように、左右非対象に構成される一方、上
記両アーム部は水平に離間して配置され、これらの両ア
ーム部の長手方向中間領域において両アーム部間に補強
板を架設して一体化される。

（作用） 上記の構成によって、チェーンまたはベルトのテンショ
ンによる応力あるいはサスペンションユニットによる応
力が、剛性の高いアーム部により多く分布する結果、充
分な耐久性が得られ、一方のアーム部を小さい応力に対
応した剛性に設定でき、軽量化、小型化ができる。

（実施例） 以下この考案の実施例を図に就いて説明する。

スイングアーム20は、アーム部21、前端のピボット部2
2、後輪の後輪支持部23によって構成される。

アーム部21は引き抜き成形材を適当長さにカットしたも
ので、第１図の断面Ｓに示すように、両側に角パイプ形
状24a,24bを左右一対のアーム部として水平に離間して
配し、両者間のアーム部の長手方向に跨がって上下の補
強板である平板形状25で一体的に接続した断面形状をな
す。この角パイプ形状24aの左右巾Haは角パイプ形状24b
の巾Hbより大きく、すなわち、剛性を大きく設定されて
いる。平板形状25の前端部は切り取って窓26をあけ、こ
の部分の角パイプ形状24a,24bにピボット軸筒27が横方
向に貫通して溶着される。ピボット軸筒27はサスペンシ
ョンユニットの下端部を軸合する支軸28を支持するため
のものである。窓26によって開口した平板形状25の間に
は、必要に応じ塞板29が被着される。30は角パイプ形状
24b上面に突設したトルクリンク接続用ブラケットであ
る。

ピボット部22は鍛造により成形され、左右一体型になっ
ている。後面は平板に形成され、上記アーム部21の前端
面と接合して溶着される。フレーム31に締着されたピボ
ット軸32を軸支する軸孔33は、加工しやすいように左右
分離している。34はブッシュ、35はローラベアリングを
示す。

後輪支持部23は、角パイプ状断面の引き抜き成形材を適
当長さにカットしたもので、横向きにしてアーム部21の
後端に溶着される。両側が開放された形状になり、この
中にリヤアクスル36を軸支した軸受ハウジング37を収め
る。軸受ハウジング37は平板な上下面を持つ角形でその
上下面が後輪支持部23の上下内面に摺動可能に収まるよ
う設定される。また後輪支持部23の上下板には、上下同
一位置に複数個の前後方向の長孔38があき、ボルト39が
挿通され、下端に締着ナット40が螺合される。このボル
ト39は軸受ハウジング37に設けたボルト挿通孔41に同時
に挿通される。さらに軸受ハウジング37には後方へ延び
るスタッドボルト42が植設され、その後端は後輪支持部
23の後板を貫通して後方へ突出し、調整ナット43および
ロックナット44が外部から螺合される。調整ナット43を
回わすことにより軸受ハウジング37が後方へ変位し、リ
ヤアクスル36上のドリブンスプロケットギア45に懸架し
たチェーン46が緊張する。適度の緊張に調整したところ
で、ロックナット44を緊締し、さらに締着ナット40を締
めて軸受ハウジング37を後輪支持部23に強固に定着させ
る。

上記ドリブンスプロケットギア45およびチェーンライン
は、剛性の高い角パイプ形状24aの外側に位置する。チ
ェーン46がトルクを伝えるときの引っ張り力の反力は、
主に角パイプ形状24aに集中するが、剛性上問題が生じ
ない。角パイプ形状24bでは、その反力は軽減されてい
て、小さい剛性で充分耐え得る。換言すれば、スイング
アーム全体からみて、単位断面積当りの応力はほぼ均等
に分布する状態が得られ、スイングアームとしての機能
が安定し、耐久性がよく、しかも重量軽減、コンパクト
化ができる。

また、スイングアーム20は、その前後端がピボット部22
および後輪支持部23で塞がれる一方、両角パイプ形状24
a,24b間にアーム部21の長手方向にわたって平板形状25
を架設して一体化した中空密閉構造のため、スイングア
ーム20の剛性が大きくなる。さらに、スイングアーム20
の捩じれ剛性も大きくなる。そして、アーム部21の素材
として、例えば引き抜き成形材を用いることができるた
め、製造コストを低く押さえることができる。

なお、上記実施例における角パイプ形状24a,24bの剛性
の差は、左右巾によらず、上下巾あるいは肉厚によって
求めてもよい。

〔考案の効果〕

上記の通りこの考案に係る後２輪車両のスイングアーム
は、左右に一対を備えたアーム部のうち、リヤアクスル
駆動用チェーンまたはベルトラインあるいはサスペンシ
ョンユニット枢支部に近い方のアーム部を他のアーム部
より剛性を高く設定し、また、両アーム部中間部間に補
強板を架設して一体化したもので、チェーンまたはベル
トラインあるいはサスペンションユニット枢支部のオフ
セットによる不均一な応力分布に対応でき、機能、耐久
性を低下させることなく総体的にコンパクトで軽量なス
イングアームを構成でき、車両の快適な走行安定性を長
く維持する効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案の実施例になるスイングアームの一部
切欠いて示した平面図、第２図は同側面図、第３図は後
２輪車両を例示した不整地走行４輪車の側面図である。 １…前輪、２…後輪、20…スイングアーム、21…アーム
部、24a,24b…角パイプ形状（左右一対のアーム部）、2
5…平板形状（補強板）、36…リヤアクスル、45…ドリ
ブンスプロケットギア、46…チェーン。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】左右２本のアーム部によって構成され、後
   端にチェーンまたはベルトで駆動されるリヤアクスルを
   軸支し、サスペンションユニットによって緩衝されるよ
   うにしたスイングアームにおいて、上記アーム部は中空
   密閉構造からなり、上記チェーンまたはベルトラインあ
   るいはサスペンションユニット枢支部に近い方のアーム
   部を他のアーム部より剛性が高くなるように、左右非対
   象に構成する一方、上記両アーム部は水平に離間して配
   置され、これらの両アーム部の長手方向中間領域におい
   て両アーム部間に補強板を架設して一体化したことを特
   徴とする後２輪車両のスイングアーム。