JPH07258280A - リン酸化アミノ酸誘導体及びリン酸化ペプチド合成方法 - Google Patents

リン酸化アミノ酸誘導体及びリン酸化ペプチド合成方法

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JPH07258280A
JPH07258280A JP7423894A JP7423894A JPH07258280A JP H07258280 A JPH07258280 A JP H07258280A JP 7423894 A JP7423894 A JP 7423894A JP 7423894 A JP7423894 A JP 7423894A JP H07258280 A JPH07258280 A JP H07258280A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 短い工程でしかも高い収率でリン酸化ペプチ
ドを取得する方法及びそのために必要なリン酸化アミノ
酸を提供する。 【構成】 下記の一般式(I)で表されるリン酸化アミ
ノ酸誘導体又はその塩及びこれらを用いるリン酸化ペプ
チドの合成方法。 【化1】 式中、Bzlは、ベンジル基を表す。Aは、−CH
2 −、−CH(CH3 )−又は 【化2】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、下記の一般式(I)
【0002】
【化4】
【0003】(式中、Bzlは、ベンジル基を表す。A
は、−CH2 −、−CH(CH3 )−又は
【0004】
【化5】
【0005】を表す。)で表されるリン酸化L−アミノ
酸誘導体及びこれらを使用するリン酸化ペプチドの合成
方法に関する。本発明に係るリン酸化ペプチドは、ガン
遺伝子等の生体内蛋白質の部分構造であり、ガンの診
断、薬理作用の検定等の分野に応用できるので、極めて
有用である。
【0006】
【従来の技術】生体を構成する特定の蛋白質において、
その一次構造上の一定のアミノ酸残基がリン酸化される
ことによって、生体内でのシグナル伝達等の制御が行わ
れることが知られている。
【0007】例えば、Src等のある種のガン遺伝子に
はプロテインキナーゼ活性が発見され、その機能が研究
されており(プロシーディングス・オブ・ナショナル・
アカデミー・オブ・サイエンス・U.S.A.(Pro
c.Natl.Acad.Sci.U.S.A.)、第
75巻、第3021頁以下、1980年)、また、脳内
蛋白質(タウ蛋白質等)(ジャーナル・オブ・バイオロ
ジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、
第267巻、第10897頁以下、1992年)を始め
情報伝達系に関与する様々な蛋白質(ネイチャー(Na
ture)、第296巻、第613頁以下、1982
年)がリン酸化、脱リン酸化の制御下にあることも知ら
れている。
【0008】上記のことから、生体内蛋白質中のリン酸
化基質となる部分を含むペプチドやその生産物であるリ
ン酸化ペプチドを合成し、これをもとに研究を行うこと
が、当該生体内蛋白質の生理機能を解明するための重要
な手法となっている。上記リン酸化ペプチドを得る方法
としては、(1)ペプチドを酵素を用いてリン酸化する
方法、(2)化学的にリン酸化ペプチドを合成する方法
の2つがある。
【0009】酵素を用いてリン酸化する方法(インター
ナショナル・ジャーナル・オブ・ペプチド・アンド・プ
ロテイン・リサーチ(Int.J.Peptide P
rotein Res.)、第33巻、第468頁〜4
76頁、1989年)は、ペプチドが特定のアミノ酸配
列に限られているため適用範囲が狭く、充分な量のペプ
チドを調製することができないという欠点があった。
【0010】化学的にリン酸化ペプチドを合成する方法
には、固相法で用いられているBoc法及びFmoc法
がある。 Boc法(ケミカル・レターズ(Chem.Let
t.)、第1401頁以下、1993年)においては、
O−リン酸化ベンジル基等で保護したリン酸化アミノ酸
を含むペプチド鎖を順次N末端側へ延ばしていくが、伸
長過程でトリフルオロ酢酸(TFA)を用いるので、ベ
ンジル基等の保護基の脱離が部分的におこり、ペプチド
鎖の延長が阻害される欠点があり、また、樹脂からのペ
プチドの回収には、強酸であるトリフルオロメタンスル
ホン酸(TFMA)を用いなければならず、副反応が起
こりやすく収率よくリン酸化ペプチドを回収することが
できない等の欠点がある。
【0011】Fmoc法(インターナショナル・ジャー
ナル・オブ・ペプチド・アンド・プロテイン・リサーチ
(Int.J.Peptide Protein Re
s.)、第40巻、第134頁〜140頁、1992年
等)においては、ホスホセリン、ホスホスレオニンは、
β脱離が起こるため基本的に合成ができず、そのためリ
ン酸化導入部位だけ無保護にしたペプチドを合成後、ジ
ベンジルホスホロアミダイト等を用いてリン酸基を導入
するという複雑な方法を必要とする欠点がある。また、
この方法では立体的な障害やリン酸化の過程で酸化の工
程が含まれるために目的物を高収率で得ることも困難で
ある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】上記現状に鑑み、本発
明は、短い工程でしかも高い収率で、目的とするリン酸
化ペプチドを取得する方法及びそのために必要なリン酸
化アミノ酸を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、リン酸
化L−アミノ酸誘導体を先に取得し、これを用いて、以
下に詳述するNpys法を用いて、固相法又は液相法に
よりリン酸化ペプチドを合成するところにある。上記リ
ン酸化L−アミノ酸誘導体は、本発明者らにより初めて
見いだされたものであり、従って、本発明の要旨は、こ
のリン酸化L−アミノ酸誘導体そのものにもある。以下
に本発明を詳述する。
【0014】本発明に係る上記リン酸化L−アミノ酸誘
導体は、L−アミノ酸であるセリン(Ser)、スレオ
ニン(Thr)及びチロシン(Tyr)の水酸基をリン
酸化し、アミノ基を3−ニトロ−2−ピリジンスルフェ
ニル(本明細書において「Npys」ともいう)基で保
護した誘導体であって、上記一般式(I)で表される。
上記リン酸化アミノ酸誘導体は、下記に示した工程で合
成することができる。
【0015】
【化6】
【0016】式中、A、Bzlは前記と同じ。上記合成
において、出発原料は、Aが−CH2 −の場合はBoc
−Ser(PO3 Bzl2 )、Aが−CH(CH3 )−
の場合はBoc−Thr(PO3 Bzl2 )、Aが−C
2 −C6 4 −の場合はBoc−Tyr(PO3 Bz
2 )である。これらは、市販のものを用いることがで
きる。上記化合物はギ酸で処理してBoc基をはずし
(工程a)、Ser(PO3 Bzl2 )、Thr(PO
3 Bzl2 )、Tyr(PO3 Bzl2 )を得、得られ
た化合物に3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニルクロ
ライドを反応させ、炭酸ナトリウムを加えて(工程
b)、α−アミノ基にNpys基の導入された上記リン
酸化アミノ酸誘導体を得ることができる。上記3つのリ
ン酸化アミノ酸誘導体は、文献未記載の新規化合物であ
り、本発明者らにより初めて取得され、その物性を同定
された物質である。
【0017】本発明の上記リン酸化アミノ酸誘導体は、
後述するリン酸化ペプチドを合成する原料として極めて
重要な化合物である。上記リン酸化ペプチドを合成する
ためには、上記リン酸化アミノ酸誘導体のほか、これら
の塩も利用することができる。上記リン酸化アミノ酸誘
導体の塩は、通常アミノ酸化学上考えられる塩であれば
特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム
塩、ジシクロヘキシルアミン塩、シクロヘキシルアミン
塩等を挙げることができる。
【0018】本発明においては、上記リン酸化アミノ酸
誘導体又はその塩を他のアミノ酸とペプチド結合させ
て、リン酸化ペプチドを合成する。上記リン酸化ペプチ
ドの合成は、公知の方法(例えば、「ペプチド合成の基
礎と実験」、泉屋ら共著、1985年、丸善、「蛋白質
の化学」、生化学実験講座(I)、第4巻、東京化学同
人発行、1977年等)に準じて液相法又は固相法によ
り行うことができる。本発明のリン酸化ペプチドの合成
方法としては、固相法が好ましい。
【0019】上記リン酸化ペプチドを固相法により合成
する場合は、まず、最初に目的とするペプチドのC末端
アミノ酸のα−アミノ基を保護した保護アミノ酸を不溶
性樹脂に結合させる。
【0020】上記アミノ酸のα−アミノ基の保護基は、
Npys基である。本明細書においてNpys法とは、
α−アミノ基の保護基としてNpys基を用いてペプチ
ドを合成する手法をいう(松枝ら。インターナショナル
・ジャーナル・オブ・ペプチド・アンド・プロテイン・
リサーチ(Int.J.Peptide Protei
n Res.)、第16巻、第392〜401頁、19
80年)。
【0021】上記保護アミノ酸とは、官能基が公知の方
法により保護されたアミノ酸であり、各種のものが市販
されている。アルギニンのグアニジル基の保護基として
は、例えば、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベ
ンゼンスルホニル基、2,2,5,7,8−ペンタメチ
ルクロマン−6−スルホニル基等が挙げられる。アスパ
ラギン酸及びグルタミン酸のカルボキシル基の保護基と
しては、例えば、t−ブトキシ基等を挙げることができ
る。システインのメルカプト基の保護基としては、例え
ば、トリフェニルメチル基、S−アセトアミドメチル基
等を挙げることができる。セリン、スレオニン、チロシ
ンの水酸基の保護基としては、例えば、t−ブトキシ基
等を挙げることができる。ヒスチジンのイミダゾリル基
の保護基としては、例えば、トリフェニルメチル基等を
挙げることができる。トリプトファンのインドリル基の
保護基としては、例えば、ホルミル基等を挙げることが
できるが、保護しなくてもよい。
【0022】上記各保護基は、基本的には、最終脱保護
の際、トリフルオロ酢酸(TFA)で切断できるものが
使用される。システイン残基のS−S結合を結ぶ際は、
合成条件に応じ適切なものを選択することができる。
【0023】上記α−アミノ基を保護した保護アミノ酸
を結合させる不溶性樹脂としては、アミノ酸との結合が
TFA等で切断できる樹脂ならば特に制限されず、例え
ば、パラアルコキシベンジルアルコール樹脂、4−ヒド
ロキシメチル−3−メトキシフェノキシ酢酸樹脂等を挙
げることができる。
【0024】上記不溶性樹脂に結合したα−アミノ基を
保護した保護アミノ酸は、α−アミノ基の保護基をはず
した後、ペプチド鎖の一次構造に従い、C末端側から、
α−アミノ基にNpys基を導入した各種アミノ酸(以
下Npys保護アミノ酸ともいう)又は上記リン酸化ア
ミノ酸誘導体を順次結合させる。
【0025】保護アミノ酸の縮合は、Npys法に従っ
て、すべて中性条件で鎖長を延ばすことができる。すな
わち、C末端アミノ酸を不溶性樹脂に結合後、Npys
保護アミノ酸、弱塩基、触媒存在下に縮合剤を用いて鎖
長を伸ばす。上記弱塩基としては、例えば、トリエチル
アミン、N−メチルモルホリン等を挙げることができ
る。触媒としては、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール
等を挙げることができるが、なくてもよい。縮合剤とし
ては、例えば、N,N′−ジシクロヘキシルカルボジイ
ミド(DCC)、カルボニルジイミダゾール(CD
I)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス
−ピロリディノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェ
ート(PyBOP)等を挙げることができる。溶媒とし
ては、Npysアミノ酸、触媒、縮合剤の溶解可能なも
のであればよく、例えば、ジメチルホルムアミド(DM
F)等を挙げることができる。
【0026】上記リン酸化ペプチドの合成は、例えば、
島津製作所製のペプチドシンセサイザーPSSM8型の
ようなFmoc方式の固相ペプチド合成機を使用して行
うこともできる。この方法においては、得られたペプチ
ド鎖と不溶性樹脂の結合、ペプチド鎖N末端側の保護基
との結合、リン酸基の保護基であるベンジル基との結合
等をTFA等を用いて切断して目的のリン酸化ペプチド
を得ることができる。
【0027】本発明においては、その後、溶媒にて洗浄
後Npys基の脱保護を行う。脱保護は、トリフェニル
ホスフィン、2−ピリジンチオール−1−オキサイド等
中性条件下で除去できる物質を用いてすることができ
る。洗浄後、弱塩基で中和洗浄し、再び縮合を行う。中
和は、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン等によ
りすることができる。
【0028】目的とする保護基が結合したペプチド樹脂
を得た後、スカベンジャーの入ったTFAにてペプチド
を脱離する。スカベンジャーとしては、例えば、水、エ
タンジチオール、ジエチルサルファイド、チオアニソー
ル、フェノール、アニソール等を挙げることができる。
得られるペプチドの構成アミノ酸に応じて、上記の幾つ
かを組み合わせて使用することができる。
【0029】得られた粗製ペプチドは、ペプチド製造の
公知の手段、例えば、逆相、ゲル濾過、イオン交換等の
各種クロマトグラフィー、電気泳動等により単離、精製
することができるが、例えば、逆相HPLCによる手段
が最適である。
【0030】本発明により得られるリン酸化ペプチド
は、生理活性物質として利用することができる。ホスホ
セリン含有蛋白質としては、例えば、ヒトとウシのβ−
カゼイン(ムリナックス(Mullinax),T.
R.ら、アーカイブズ・オブ・バイオケミストリー・ア
ンド・バイオフィジクス(Arch.Biochem.
Biophy.)、第243巻、第655〜659頁、
1985年)、グリコーゲン合成酵素(フォイル(Fo
il),C.J.ら、ジャーナル・オブ・バイオロジカ
ル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、第2
62巻、第14042〜14048頁、1987年)、
N−myc蛋白質(ルッシャー(Lusher),B.
ら、ジ・エンボ・ジャーナル(The EMBO Jo
urnal)、第8巻、第1111〜1119頁、19
89年)等を挙げることができる。
【0031】ホスホスレオニン含有蛋白質としては、例
えば、tau蛋白質(K.イシグロ(Ishigur
o)ら、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミスト
リー(J.Biol.Chem.)、第267巻、第1
0897〜10901頁、1992年)、ガン抑制遺伝
子RB蛋白質(Y.タヤ(Taya)ら、バイオケミカ
ル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケ
ーショズ(Biochem.Biophys.Res.
Communications)、第164巻、第58
0〜586頁、1989年)等を挙げることができる。
【0032】ホスホチロシン含有蛋白質としては、例え
ば、ラウス・ザルコーマ・ウイルスの遺伝子産物である
pp60src (ハンター(Hunter),T.ら、プ
ロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オ
ブ・サイエンス・U.S.A.(Pro.Nat.Ac
ad.Sci.U.S.A.)、第77巻、第1311
〜1315頁、1980年)、EGFレセプター(ウシ
ロ(Ushiro),H.ら、ジャーナル・オブ・バイ
オロジカル・ケミストリー(J.Biol.Che
m.)、第254巻、第8083〜8086頁、198
0年)等を挙げることができる。
【0033】本発明により得られるリン酸化ペプチドの
1種であるLeu−pSer−Pro−Ser−Arg
(pSerはホスホセリンを表す)は、N−myc蛋白
質の部分アミノ酸配列であり、N−myc蛋白質は、ヒ
トのガンで発現異常がみられる蛋白質である。
【0034】本発明により得られるリン酸化ペプチドの
1種であるPro−Gly−pThr−Pro−Gly
−Ser−Arg(pThrはホスホスレオニンを表
す)は、リン酸化tau蛋白質の部分アミノ酸配列であ
り、アルツハイマー病患者の脳中には、paired
helical filaments(PHFs)と称
される不溶性の繊維が蓄積することが明らかにされてお
り、このPHFs中にはリン酸化されたtau蛋白質が
存在する。
【0035】本発明により得られるリン酸化ペプチドの
1種であるGlu−pTyr−Thr−Ala−Arg
(pTyrはホスホチロシンを表す)は、pp60src
の部分アミノ酸配列であり、pp60src は代表的なレ
トロウイルスであるラウス・ザルコーマ・ウイルスの遺
伝子産物である。
【0036】本発明により得られるリン酸化ペプチド
は、生体上に発見される上記生理物質又は生理活性物質
の部分アミノ酸配列を構成するので、これらと同じ生理
活性を有する物質又はその物質の構成成分として利用す
ることができる。また、これら物質の同定に利用するこ
とができる。上記同定は、蛋白質から目的とする特定の
アミノ酸配列を検出する方法、例えば、エライザ(EL
ISA)法等の公知の方法を、上記リン酸化ペプチドに
応用することにより、することができる。この方法によ
り、例えば、ヒトのガンの診断及び治療、アルツハイマ
ー病の診断及び治療、ラウス・ザルコーマ・ウイルス感
染の診断及び治療をすることができる。
【0037】
【実施例】以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説
明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、Npys−Ser(PO
3Bzl2 )、Npys−Thr(PO3 Bzl2 )、
Npys−Tyr(PO3Bzl2 )以外のNpys保
護アミノ酸は、国産化学社製のものを使用した。
【0038】実施例1Npys−Ser(PO3 Bzl2 )〔Npys保護セ
リン−O−リン酸化ベンジルエステル〕の合成 Boc−Ser(PO3 Bzl2 )1g(2.1mmo
l、渡辺化学社製)に0℃下、ギ酸20mlを加え、1
時間反応後、溶媒を留去し、真空にて乾燥させた。蒸留
水20mlを加え等電点沈殿を行い沈殿を遠心にて集め
乾燥させ、Ser(PO3 Bzl2 )を得た。収量54
6mg、収率70%。
【0039】Rf値=0.76(ブタノール:酢酸:水
=4:1:1) FAB−MS;m/z=366[M+H]+ (日本電子
社製JMS−DX302型質量分析装置を使用) 上記で得たSer(PO3 Bzl2 )546mg(1.
5mmol)に水3.9ml、DMF4.1ml、炭酸
ナトリウム275mg(2.6mmol)を加えて溶解
後、0℃下、Npys−Clを530mg(2.8mm
ol)加え、1時間後及び2時間後に再び炭酸ナトリウ
ム30mg(0.28mmol)及びNpys−Clを
50mg(0.26mmol)加えた。3時間後、水1
00mlを添加し、エーテル洗浄(100ml×2回)
を行い、0.2Nクエン酸で酸性化後、酢酸エチルにて
Npys−Ser(PO3 Bzl2 )を抽出した。硫酸
ナトリウムにて一夜乾燥後、溶媒を留去し、アセトニト
リル−水にて再結晶を行った。収量400mg、収率5
0%。 Rf値=0.4(クロロホルム:メタノール:酢酸=9
5:5:3) FAB−MS;m/z=520[M+H]+
【0040】融点134〜136℃1 H−NMR(δ CDCl3 ):3.7(1H,m,
CH),4.4(2H,d,J=10Hz,CH
2 O),5.0(4H,m(OCH2 2 ),7.4
(11H,m,(C6 5 2 ,H−5 of pyr
idine),8.6(1H,dd,J=8Hz,J=
1.7Hz, H−4 of pyridine),
8.8(1H,dd,J=5Hz,J=1.5Hz,H
−6 of pyridine) 元素分析値(C22228 3 SP) 理論値 C:50.87 H:4.24 N:8.09 実測値 C:50.66 H:4.08 N:8.28
【0041】実施例2Npys−Thr(PO3 Bzl2 )〔Npys保護ス
レオニン−O−リン酸化ベンジルエステル〕の合成 Boc−Ser(PO3 Bzl2 )の代わりにBoc−
Thr(PO3 Bzl2 )0.5g(2.1mmol、
渡辺化学社製)を使用したこと以外は、実施例1と同様
にしてNpys−Thr(PO3 Bzl2 )を合成し
た。Npys−Thr(PO3 Bzl2 )は、再結晶で
きなかったので逆相HPLCにて精製し、凍乾品とし
た。 Thr(PO3 Bzl2 ) 収量546mg、収率70
%。 Rf値=0.7(ブタノール:酢酸:水=4:1:1) FAB−MS;m/z=380[M+H]+ Npys−Thr(PO3 Bzl2 ) 収量75mg、
収率34%。 Rf値=0.25(クロロホルム:メタノール:酢酸=
95:5:3) FAB−MS;m/z=534[M+H]+
【0042】融点64〜67℃1 H−NMR(δ CDCl3 ):1.5(3H,d,
J=7Hz,CH3 ),3.4(1H,m,CH),
5.0(4H,m,(OCH2 2 ),5.2(1H,
m,CH−O),7.3(11H,m,(C
6 5 2 ,H−5 of pyridine),8.
6(1H,dd,J=8Hz,J=1.4Hz,H−4
of pyridine),8.8(1H,dd,J=
4Hz,J=1.4Hz,H−6 of pyridi
ne) 元素分析値(C23248 3 SP) 理論値 C:51.78 H:4.50 N:7.88 実測値 C:51.54 H:4.48 N:7.84
【0043】実施例3Npys−Tyr(PO3 Bzl2 )〔Npys保護チ
ロシン−O−リン酸化ベンジルエステル〕の合成 Boc−Ser(PO3 Bzl2 )の代わりにBoc−
Tyr(PO3 Bzl2 )0.3g(0.55mmo
l、渡辺化学社製)を使用したこと以外は、実施例1と
同様にしてNpys−Tyr(PO3 Bzl2 )を合成
した。但し、Npys−Clを反応させる際、Tyr
(PO3 Bzl2 )の溶解性が悪いためジメチルスルホ
キサイド(DMSO)1mlを加え反応を行った。ま
た、Npys−Tyr(PO3 Bzl2 )は、再結晶で
きなかったので逆相HPLCにて精製し、凍乾品とし
た。
【0044】Tyr(PO3 Bzl2 ) 収量137m
g、収率56%。 Rf値=0.39(ブタノール:酢酸:水=4:1:
1) FAB−MS;m/z=442[M+H]+ Npys−Tyr(PO3 Bzl2 ) 収量62mg、
収率34%。 Rf値=0.29(クロロホルム:メタノール:酢酸=
95:5:3) FAB−MS;m/z=596[M+H]+
【0045】1H−NMR(δ CDCl3 ):2.9
−3.3(2H,m,CH2 ),3.8(1H,m,C
H),5.1(4H,m,(OCH2 2 ),7.3
(15H,m,(C6 5 2 ,C6 4 ,H−5 o
f pyridine),8.5(1H,dd,J=8
Hz,J=1.6Hz,H−4 of pyridin
e),8.8(1H,dd,J=5Hz,J=1.5H
z,H−6 of pyridine) 元素分析値(C28268 3 SP) 理論値 C:56.47 H:4.37 N:7.06 実測値 C:54.84 H:4.30 N:6.76
【0046】実施例4Leu−pSer−Pro−Ser−Argの合成 (pSerはホスホセリン(リン酸化セリン)を表す) Fmoc−Arg(Pmc)アルコキシベンジルアルコ
ール樹脂を30%ピペリジン/ジメチルホルムアミド
(DMF)(10ml×2)で20分間処理後、DM
F、メタノール(各10ml×2回)で洗浄し、真空下
で乾燥させた。このようにして調製した樹脂25mgを
DMFにて膨潤、洗浄後、最初のアミノ酸であるNpy
s−Ser(t−Bu)、及び、N−メチルモルホリン
(NMM)、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HO
BT)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリ
ス−ピロリジノ−ホスホニウム ヘキサフルオロフォス
ヘート(benzotriazol−1−yl−oxy
−tris−pyrrolidino−phospho
nium hexafluorophosphate)
(PyBOP)を、各5当量用い縮合を行った。次いで
DMFで再度樹脂を洗浄、脱保護は、中性条件の3%ト
リフェニル基ホスフィン(Ph3 P)、1.2%ピリジ
ン・塩酸(Pyr・HCl)/DMF溶液を用いて行っ
た。
【0047】DMFで再び樹脂を洗浄後、10%NMM
/DMF溶液で中和を行い、最後にDMFで洗浄した
後、次のアミノ酸の縮合に移った。以下、同様の方法で
鎖長を延ばした。
【0048】各アミノ酸の保護基としては、実施例4〜
6を通して、α−アミノ基の保護基としてはNpys基
を、セリン、スレオニンの水酸基の保護基としてはt−
Bu基を、アルギニンのグアニジノ基の保護基としては
Pmc基を、グルタミン酸のカルボキシル基の保護基と
しては、t−Bu基を用いた。合成機は、島津PSSM
8を使用した。操作条件は表1に示した。
【0049】
【表1】
【0050】合成完了後、樹脂をメタノールで洗浄し、
真空にて乾燥した。樹脂15mgにリージェントK(フ
ェノール62.5mg、水62.5μl、チオアニソー
ル62.5μl、エタンジチオール(EDT)31.3
μl、TFA1ml)を加え、室温8時間で放置した。
これにより樹脂からのペプチドの切断、リン酸基の保護
基であるベンジル基の脱保護、各種保護アミノ酸の脱保
護を行った。フィルターで樹脂を除去後、エーテルを加
え、遠心にてペプチドを集めた。真空にてペプチドを乾
燥後、水1mlに溶解し、以下HPLCにて生成物の分
析を行った。
【0051】ペプチドのHPLCによる分析は以下のよ
うにして行った。HPLC装置として島津LC−6Aシ
ステムを使用し、データ処理は、島津CR−7Aを使用
して行った。カラムは、コスモシル(Cosmosi
l)5C18(4.6×150mm)を使用した。溶出
は、40℃にて、0.05%TFA溶液中のアセトニト
リル濃度を0−50%(50分間で)上昇させることに
より行った。移動相の流速は、1ml/分で、214n
mの吸収を測定することにより、試料の溶出位置をモニ
ターした。合成反応物をHPLCで分析したところ、図
1に示したように一本のメインピークが観測された。こ
の分画を回収してアミノ酸分析、FAB−MS分析を行
った。
【0052】ペプチドの酸加水分解及びアミノ酸組成分
析は、以下のように行った。乾燥試料(ペプチド約2n
mol)の入った試験管を加水分解用バイアルに入れ、
0.1%フェノール含有5.7N塩酸200μlを加
え、減圧密閉後、110℃、24時間加水分解した。試
料を減圧乾燥後、0.02N塩酸に溶解し、日立L−8
500にてアミノ酸分析を行った。表2にその結果を示
した。なお、表2の実測値は、Argとのモル相対比で
表した。
【0053】
【表2】
【0054】FAB−MSは、日本電子社製JMS−D
X302型質量分析装置を使用し、グリセリン又はm−
ニトロベンジルアルコールをマトリックスとし、試料に
混入することにより測定した。理論質量638、m/z
=639[M+H]+ 。上記の結果から、HPLC溶出
のメインピークの分画として回収されたペプチドが目的
物であることが判明した。なお、アミノ酸分析の結果よ
り、保護ペプチド樹脂13.8mgから目的ペプチド
は、255μg得られた。収率は45%であった。
【0055】実施例5Pro−Gly−pThr−Pro−Gly−Ser−
Argの合成 (pThrはホスホスレオニン(リン酸化スレオニン)
を表す) 実施例4と同様の手順を用いて合成し、合成完了後、H
PLC分析を行った。図2にそのクロマトグラムを示し
た。
【0056】主成分として1、2、3の3本のピーク分
画を分取し、各々に対してアミノ酸組成分析、FAB−
MS分析を行った。アミノ酸分析の結果を表3に示し
た。なお、表3の実測値は、Argとのモル相対比で表
した。
【0057】
【表3】
【0058】表3から目的ペプチドは、ピーク1の分画
に含まれることが判明した。ピーク1の分画のFAB−
MS分析は、理論質量750、m/z=750[M+
H]+であった。アミノ酸分析の結果より、保護ペプチ
ド樹脂10mgから目的ペプチドは、214μg(28
6nmol)得られた。収率は36%であった。なお、
アミノ酸分析の結果から、ピーク2はThr(PO3
zl2 )以降のアミノ酸が縮合せずペプチド鎖の伸長が
止まってしまったペプチドであることがわかった。ピー
ク3は、Npys−Thr(PO3 Bzl2 )だけ縮合
せず、そのまま伸長が進んだペプチドと判断された。N
pys−Thr(PO3 Bzl2)のダブルカップリン
グを行う等すれば、目的ペプチドの収率は、さらに向上
する。
【0059】実施例6Glu−pTyr−Thr−Ala−Argの合成 (pTyrはホスホチロシン(リン酸化チロシン)を表
す) 実施例4と同様の手順で合成し、合成完了後、HPLC
分析を行った。図3にそのクロマトグラムを示した。主
成分として1本のメインピークが観測され、この分画を
分取し、アミノ酸組成分析、FAB−MS分析を行っ
た。アミノ酸分析の結果を表4に示した。なお、表4の
実測値は、Alaとのモル相対比で表した。
【0060】
【表4】
【0061】表4から目的ペプチドは、メインピークの
分画に含まれることが判明した。また、この分画のFA
B−MS分析では、理論質量718に対し、m/z=7
19[M+H]+ であった。アミノ酸分析の結果より、
保護ペプチド樹脂9.2mgから目的ペプチドは、63
0μg(878nmol)得られた。収率は69%であ
った。従来、Boc法を使用する方式のペプチド合成機
でしかリン酸化ペプチドを直接合成することができなか
ったが、本発明の方法を使用することにより、Fmoc
法を使用する方式のペプチド合成機でもリン酸化ペプチ
ドの合成が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例4で得たペプチドのクロマトグラム。縦
軸は214nmでの吸光度を、横軸は保持時間(分)を
表す。
【図2】実施例5で得たペプチドのクロマトグラム。縦
軸は214nmでの吸光度を、横軸は保持時間(分)を
表す。
【図3】実施例6で得たペプチドクロマトグラム。縦軸
は214nmでの吸光度を、横軸は保持時間(分)を表
す。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の一般式(I)で表されるリン酸化
    L−アミノ酸誘導体又はその塩。 【化1】 式中、Bzlは、ベンジル基を表す。Aは、−CH
    2 −、−CH(CH3 )−又は 【化2】 を表す。
  2. 【請求項2】 Aが−CH2 −である請求項1記載のリ
    ン酸化L−アミノ酸誘導体又はその塩。
  3. 【請求項3】 Aが−CH(CH3 )−である請求項1
    記載のリン酸化L−アミノ酸誘導体又はその塩。
  4. 【請求項4】 Aが 【化3】 である請求項1記載のリン酸化L−アミノ酸誘導体又は
    その塩。
  5. 【請求項5】 請求項1、2、3又は4記載のリン酸化
    L−アミノ酸誘導体又はその塩を用いることを特徴とす
    るリン酸化ペプチドの合成方法。
  6. 【請求項6】 合成方法が、Npys法を用いて、固相
    法又は液相法によりするものである請求項5記載のリン
    酸化ペプチドの合成方法。
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