JP3587390B2 - リン酸化アミノ酸誘導体及びリン酸化ペプチド合成方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、下記の一般式(I)
【0002】
【化4】
【0003】
(式中、Bzlは、ベンジル基を表す。Aは、−CH2 −、−CH(CH3 )−又は
【0004】
【化5】
【0005】
を表す。)で表されるリン酸化L−アミノ酸誘導体及びこれらを使用するリン酸化ペプチドの合成方法に関する。本発明に係るリン酸化ペプチドは、ガン遺伝子等の生体内蛋白質の部分構造であり、ガンの診断、薬理作用の検定等の分野に応用できるので、極めて有用である。
【0006】
【従来の技術】
生体を構成する特定の蛋白質において、その一次構造上の一定のアミノ酸残基がリン酸化されることによって、生体内でのシグナル伝達等の制御が行われることが知られている。
【0007】
例えば、Src等のある種のガン遺伝子にはプロテインキナーゼ活性が発見され、その機能が研究されており(プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・U.S.A.(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.)、第75巻、第3021頁以下、1980年)、また、脳内蛋白質(タウ蛋白質等)(ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、第267巻、第10897頁以下、1992年)を始め情報伝達系に関与する様々な蛋白質(ネイチャー(Nature)、第296巻、第613頁以下、1982年)がリン酸化、脱リン酸化の制御下にあることも知られている。
【0008】
上記のことから、生体内蛋白質中のリン酸化基質となる部分を含むペプチドやその生産物であるリン酸化ペプチドを合成し、これをもとに研究を行うことが、当該生体内蛋白質の生理機能を解明するための重要な手法となっている。
上記リン酸化ペプチドを得る方法としては、(1)ペプチドを酵素を用いてリン酸化する方法、(2)化学的にリン酸化ペプチドを合成する方法の2つがある。
【0009】
酵素を用いてリン酸化する方法(インターナショナル・ジャーナル・オブ・ペプチド・アンド・プロテイン・リサーチ(Int.J.Peptide Protein Res.)、第33巻、第468頁〜476頁、1989年)は、ペプチドが特定のアミノ酸配列に限られているため適用範囲が狭く、充分な量のペプチドを調製することができないという欠点があった。
【0010】
化学的にリン酸化ペプチドを合成する方法には、固相法で用いられているBoc法及びFmoc法がある。
Boc法(ケミカル・レターズ(Chem.Lett.)、第1401頁以下、1993年)においては、O−リン酸化ベンジル基等で保護したリン酸化アミノ酸を含むペプチド鎖を順次N末端側へ延ばしていくが、伸長過程でトリフルオロ酢酸(TFA)を用いるので、ベンジル基等の保護基の脱離が部分的におこり、ペプチド鎖の延長が阻害される欠点があり、また、樹脂からのペプチドの回収には、強酸であるトリフルオロメタンスルホン酸(TFMA)を用いなければならず、副反応が起こりやすく収率よくリン酸化ペプチドを回収することができない等の欠点がある。
【0011】
Fmoc法(インターナショナル・ジャーナル・オブ・ペプチド・アンド・プロテイン・リサーチ(Int.J.Peptide Protein Res.)、第40巻、第134頁〜140頁、1992年等)においては、ホスホセリン、ホスホスレオニンは、β脱離が起こるため基本的に合成ができず、そのためリン酸化導入部位だけ無保護にしたペプチドを合成後、ジベンジルホスホロアミダイト等を用いてリン酸基を導入するという複雑な方法を必要とする欠点がある。また、この方法では立体的な障害やリン酸化の過程で酸化の工程が含まれるために目的物を高収率で得ることも困難である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記現状に鑑み、本発明は、短い工程でしかも高い収率で、目的とするリン酸化ペプチドを取得する方法及びそのために必要なリン酸化アミノ酸を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、リン酸化L−アミノ酸誘導体を先に取得し、これを用いて、以下に詳述するNpys法を用いて、固相法又は液相法によりリン酸化ペプチドを合成するところにある。上記リン酸化L−アミノ酸誘導体は、本発明者らにより初めて見いだされたものであり、従って、本発明の要旨は、このリン酸化L−アミノ酸誘導体そのものにもある。
以下に本発明を詳述する。
【0014】
本発明に係る上記リン酸化L−アミノ酸誘導体は、L−アミノ酸であるセリン(Ser)、スレオニン(Thr)及びチロシン(Tyr)の水酸基をリン酸化し、アミノ基を3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル(本明細書において「Npys」ともいう)基で保護した誘導体であって、上記一般式(I)で表される。上記リン酸化アミノ酸誘導体は、下記に示した工程で合成することができる。
【0015】
【化6】
【0016】
式中、A、Bzlは前記と同じ。
上記合成において、出発原料は、Aが−CH2 −の場合はBoc−Ser(PO3 Bzl2 )、Aが−CH(CH3 )−の場合はBoc−Thr(PO3 Bzl2 )、Aが−CH2 −C6 H4 −の場合はBoc−Tyr(PO3 Bzl2 )である。これらは、市販のものを用いることができる。
上記化合物はギ酸で処理してBoc基をはずし(工程a)、Ser(PO3 Bzl2 )、Thr(PO3 Bzl2 )、Tyr(PO3 Bzl2 )を得、得られた化合物に3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニルクロライドを反応させ、炭酸ナトリウムを加えて(工程b)、α−アミノ基にNpys基の導入された上記リン酸化アミノ酸誘導体を得ることができる。
上記3つのリン酸化アミノ酸誘導体は、文献未記載の新規化合物であり、本発明者らにより初めて取得され、その物性を同定された物質である。
【0017】
本発明の上記リン酸化アミノ酸誘導体は、後述するリン酸化ペプチドを合成する原料として極めて重要な化合物である。上記リン酸化ペプチドを合成するためには、上記リン酸化アミノ酸誘導体のほか、これらの塩も利用することができる。上記リン酸化アミノ酸誘導体の塩は、通常アミノ酸化学上考えられる塩であれば特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、ジシクロヘキシルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩等を挙げることができる。
【0018】
本発明においては、上記リン酸化アミノ酸誘導体又はその塩を他のアミノ酸とペプチド結合させて、リン酸化ペプチドを合成する。
上記リン酸化ペプチドの合成は、公知の方法(例えば、「ペプチド合成の基礎と実験」、泉屋ら共著、1985年、丸善、「蛋白質の化学」、生化学実験講座(I)、第4巻、東京化学同人発行、1977年等)に準じて液相法又は固相法により行うことができる。本発明のリン酸化ペプチドの合成方法としては、固相法が好ましい。
【0019】
上記リン酸化ペプチドを固相法により合成する場合は、まず、最初に目的とするペプチドのC末端アミノ酸のα−アミノ基を保護した保護アミノ酸を不溶性樹脂に結合させる。
【0020】
上記アミノ酸のα−アミノ基の保護基は、Npys基である。本明細書においてNpys法とは、α−アミノ基の保護基としてNpys基を用いてペプチドを合成する手法をいう(松枝ら。インターナショナル・ジャーナル・オブ・ペプチド・アンド・プロテイン・リサーチ(Int.J.Peptide Protein Res.)、第16巻、第392〜401頁、1980年)。
【0021】
上記保護アミノ酸とは、官能基が公知の方法により保護されたアミノ酸であり、各種のものが市販されている。アルギニンのグアニジル基の保護基としては、例えば、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル基、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル基等が挙げられる。アスパラギン酸及びグルタミン酸のカルボキシル基の保護基としては、例えば、t−ブトキシ基等を挙げることができる。システインのメルカプト基の保護基としては、例えば、トリフェニルメチル基、S−アセトアミドメチル基等を挙げることができる。セリン、スレオニン、チロシンの水酸基の保護基としては、例えば、t−ブトキシ基等を挙げることができる。ヒスチジンのイミダゾリル基の保護基としては、例えば、トリフェニルメチル基等を挙げることができる。トリプトファンのインドリル基の保護基としては、例えば、ホルミル基等を挙げることができるが、保護しなくてもよい。
【0022】
上記各保護基は、基本的には、最終脱保護の際、トリフルオロ酢酸(TFA)で切断できるものが使用される。システイン残基のS−S結合を結ぶ際は、合成条件に応じ適切なものを選択することができる。
【0023】
上記α−アミノ基を保護した保護アミノ酸を結合させる不溶性樹脂としては、アミノ酸との結合がTFA等で切断できる樹脂ならば特に制限されず、例えば、パラアルコキシベンジルアルコール樹脂、4−ヒドロキシメチル−3−メトキシフェノキシ酢酸樹脂等を挙げることができる。
【0024】
上記不溶性樹脂に結合したα−アミノ基を保護した保護アミノ酸は、α−アミノ基の保護基をはずした後、ペプチド鎖の一次構造に従い、C末端側から、α−アミノ基にNpys基を導入した各種アミノ酸(以下Npys保護アミノ酸ともいう)又は上記リン酸化アミノ酸誘導体を順次結合させる。
【0025】
保護アミノ酸の縮合は、Npys法に従って、すべて中性条件で鎖長を延ばすことができる。すなわち、C末端アミノ酸を不溶性樹脂に結合後、Npys保護アミノ酸、弱塩基、触媒存在下に縮合剤を用いて鎖長を伸ばす。
上記弱塩基としては、例えば、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン等を挙げることができる。触媒としては、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール等を挙げることができるが、なくてもよい。縮合剤としては、例えば、N,N′−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリディノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)等を挙げることができる。溶媒としては、Npysアミノ酸、触媒、縮合剤の溶解可能なものであればよく、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)等を挙げることができる。
【0026】
上記リン酸化ペプチドの合成は、例えば、島津製作所製のペプチドシンセサイザーPSSM8型のようなFmoc方式の固相ペプチド合成機を使用して行うこともできる。この方法においては、得られたペプチド鎖と不溶性樹脂の結合、ペプチド鎖N末端側の保護基との結合、リン酸基の保護基であるベンジル基との結合等をTFA等を用いて切断して目的のリン酸化ペプチドを得ることができる。
【0027】
本発明においては、その後、溶媒にて洗浄後Npys基の脱保護を行う。脱保護は、トリフェニルホスフィン、2−ピリジンチオール−1−オキサイド等中性条件下で除去できる物質を用いてすることができる。洗浄後、弱塩基で中和洗浄し、再び縮合を行う。中和は、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン等によりすることができる。
【0028】
目的とする保護基が結合したペプチド樹脂を得た後、スカベンジャーの入ったTFAにてペプチドを脱離する。スカベンジャーとしては、例えば、水、エタンジチオール、ジエチルサルファイド、チオアニソール、フェノール、アニソール等を挙げることができる。得られるペプチドの構成アミノ酸に応じて、上記の幾つかを組み合わせて使用することができる。
【0029】
得られた粗製ペプチドは、ペプチド製造の公知の手段、例えば、逆相、ゲル濾過、イオン交換等の各種クロマトグラフィー、電気泳動等により単離、精製することができるが、例えば、逆相HPLCによる手段が最適である。
【0030】
本発明により得られるリン酸化ペプチドは、生理活性物質として利用することができる。
ホスホセリン含有蛋白質としては、例えば、ヒトとウシのβ−カゼイン(ムリナックス(Mullinax),T.R.ら、アーカイブズ・オブ・バイオケミストリー・アンド・バイオフィジクス(Arch.Biochem.Biophy.)、第243巻、第655〜659頁、1985年)、グリコーゲン合成酵素(フォイル(Foil),C.J.ら、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、第262巻、第14042〜14048頁、1987年)、N−myc蛋白質(ルッシャー(Lusher),B.ら、ジ・エンボ・ジャーナル(The EMBO Journal)、第8巻、第1111〜1119頁、1989年)等を挙げることができる。
【0031】
ホスホスレオニン含有蛋白質としては、例えば、tau蛋白質(K.イシグロ(Ishiguro)ら、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、第267巻、第10897〜10901頁、1992年)、ガン抑制遺伝子RB蛋白質(Y.タヤ(Taya)ら、バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーショズ(Biochem.Biophys.Res.Communications)、第164巻、第580〜586頁、1989年)等を挙げることができる。
【0032】
ホスホチロシン含有蛋白質としては、例えば、ラウス・ザルコーマ・ウイルスの遺伝子産物であるpp60src (ハンター(Hunter),T.ら、プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・U.S.A.(Pro.Nat.Acad.Sci.U.S.A.)、第77巻、第1311〜1315頁、1980年)、EGFレセプター(ウシロ(Ushiro),H.ら、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、第254巻、第8083〜8086頁、1980年)等を挙げることができる。
【0033】
本発明により得られるリン酸化ペプチドの1種であるLeu−pSer−Pro−Ser−Arg(pSerはホスホセリンを表す)は、N−myc蛋白質の部分アミノ酸配列であり、N−myc蛋白質は、ヒトのガンで発現異常がみられる蛋白質である。
【0034】
本発明により得られるリン酸化ペプチドの1種であるPro−Gly−pThr−Pro−Gly−Ser−Arg(pThrはホスホスレオニンを表す)は、リン酸化tau蛋白質の部分アミノ酸配列であり、アルツハイマー病患者の脳中には、paired helical filaments(PHFs)と称される不溶性の繊維が蓄積することが明らかにされており、このPHFs中にはリン酸化されたtau蛋白質が存在する。
【0035】
本発明により得られるリン酸化ペプチドの1種であるGlu−pTyr−Thr−Ala−Arg(pTyrはホスホチロシンを表す)は、pp60src の部分アミノ酸配列であり、pp60src は代表的なレトロウイルスであるラウス・ザルコーマ・ウイルスの遺伝子産物である。
【0036】
本発明により得られるリン酸化ペプチドは、生体上に発見される上記生理物質又は生理活性物質の部分アミノ酸配列を構成するので、これらと同じ生理活性を有する物質又はその物質の構成成分として利用することができる。また、これら物質の同定に利用することができる。上記同定は、蛋白質から目的とする特定のアミノ酸配列を検出する方法、例えば、エライザ(ELISA)法等の公知の方法を、上記リン酸化ペプチドに応用することにより、することができる。この方法により、例えば、ヒトのガンの診断及び治療、アルツハイマー病の診断及び治療、ラウス・ザルコーマ・ウイルス感染の診断及び治療をすることができる。
【0037】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、Npys−Ser(PO3 Bzl2 )、Npys−Thr(PO3 Bzl2 )、Npys−Tyr(PO3 Bzl2 )以外のNpys保護アミノ酸は、国産化学社製のものを使用した。
【0038】
実施例1
Npys−Ser(PO 3 Bzl 2 )〔Npys保護セリン−O−リン酸化ベンジルエステル〕の合成
Boc−Ser(PO3 Bzl2 )1g(2.1mmol、渡辺化学社製)に0℃下、ギ酸20mlを加え、1時間反応後、溶媒を留去し、真空にて乾燥させた。蒸留水20mlを加え等電点沈殿を行い沈殿を遠心にて集め乾燥させ、Ser(PO3 Bzl2 )を得た。収量546mg、収率70%。
【0039】
Rf値=0.76(ブタノール:酢酸:水=4:1:1)
FAB−MS;m/z=366[M+H]+ (日本電子社製JMS−DX302型質量分析装置を使用)
上記で得たSer(PO3 Bzl2 )546mg(1.5mmol)に水3.9ml、DMF4.1ml、炭酸ナトリウム275mg(2.6mmol)を加えて溶解後、0℃下、Npys−Clを530mg(2.8mmol)加え、1時間後及び2時間後に再び炭酸ナトリウム30mg(0.28mmol)及びNpys−Clを50mg(0.26mmol)加えた。
3時間後、水100mlを添加し、エーテル洗浄(100ml×2回)を行い、0.2Nクエン酸で酸性化後、酢酸エチルにてNpys−Ser(PO3 Bzl2 )を抽出した。硫酸ナトリウムにて一夜乾燥後、溶媒を留去し、アセトニトリル−水にて再結晶を行った。収量400mg、収率50%。
Rf値=0.4(クロロホルム:メタノール:酢酸=95:5:3)
FAB−MS;m/z=520[M+H]+
【0040】
融点134〜136℃
1H−NMR(δ CDCl3 ):3.7(1H,m,CH),4.4(2H,d,J=10Hz,CH2 O),5.0(4H,m(OCH2 )2 ),7.4(11H,m,(C6 H5 )2 ,H−5 of pyridine),8.6(1H,dd,J=8Hz,J=1.7Hz, H−4 of pyridine),8.8(1H,dd,J=5Hz,J=1.5Hz,H−6 of pyridine)
元素分析値(C22H22O8 N3 SP)
理論値 C:50.87 H:4.24 N:8.09
実測値 C:50.66 H:4.08 N:8.28
【0041】
実施例2
Npys−Thr(PO 3 Bzl 2 )〔Npys保護スレオニン−O−リン酸化ベンジルエステル〕の合成
Boc−Ser(PO3 Bzl2 )の代わりにBoc−Thr(PO3 Bzl2 )0.5g(2.1mmol、渡辺化学社製)を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてNpys−Thr(PO3 Bzl2 )を合成した。Npys−Thr(PO3 Bzl2 )は、再結晶できなかったので逆相HPLCにて精製し、凍乾品とした。
Thr(PO3 Bzl2 ) 収量546mg、収率70%。
Rf値=0.7(ブタノール:酢酸:水=4:1:1)
FAB−MS;m/z=380[M+H]+
Npys−Thr(PO3 Bzl2 ) 収量75mg、収率34%。
Rf値=0.25(クロロホルム:メタノール:酢酸=95:5:3)
FAB−MS;m/z=534[M+H]+
【0042】
融点64〜67℃
1H−NMR(δ CDCl3 ):1.5(3H,d,J=7Hz,CH3 ),3.4(1H,m,CH),5.0(4H,m,(OCH2 )2 ),5.2(1H,m,CH−O),7.3(11H,m,(C6 H5 )2 ,H−5 of pyridine),8.6(1H,dd,J=8Hz,J=1.4Hz,H−4of pyridine),8.8(1H,dd,J=4Hz,J=1.4Hz,H−6 of pyridine)
元素分析値(C23H24O8 N3 SP)
理論値 C:51.78 H:4.50 N:7.88
実測値 C:51.54 H:4.48 N:7.84
【0043】
実施例3
Npys−Tyr(PO 3 Bzl 2 )〔Npys保護チロシン−O−リン酸化ベンジルエステル〕の合成
Boc−Ser(PO3 Bzl2 )の代わりにBoc−Tyr(PO3 Bzl2 )0.3g(0.55mmol、渡辺化学社製)を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてNpys−Tyr(PO3 Bzl2 )を合成した。但し、Npys−Clを反応させる際、Tyr(PO3 Bzl2 )の溶解性が悪いためジメチルスルホキサイド(DMSO)1mlを加え反応を行った。また、Npys−Tyr(PO3 Bzl2 )は、再結晶できなかったので逆相HPLCにて精製し、凍乾品とした。
【0044】
Tyr(PO3 Bzl2 ) 収量137mg、収率56%。
Rf値=0.39(ブタノール:酢酸:水=4:1:1)
FAB−MS;m/z=442[M+H]+
Npys−Tyr(PO3 Bzl2 ) 収量62mg、収率34%。
Rf値=0.29(クロロホルム:メタノール:酢酸=95:5:3)
FAB−MS;m/z=596[M+H]+
【0045】
1H−NMR(δ CDCl3 ):2.9−3.3(2H,m,CH2 ),3.8(1H,m,CH),5.1(4H,m,(OCH2 )2 ),7.3(15H,m,(C6 H5 )2 ,C6 H4 ,H−5 of pyridine),8.5(1H,dd,J=8Hz,J=1.6Hz,H−4 of pyridine),8.8(1H,dd,J=5Hz,J=1.5Hz,H−6 of pyridine)
元素分析値(C28H26O8 N3 SP)
理論値 C:56.47 H:4.37 N:7.06
実測値 C:54.84 H:4.30 N:6.76
【0046】
実施例4
Leu−pSer−Pro−Ser−Argの合成
(pSerはホスホセリン(リン酸化セリン)を表す)
Fmoc−Arg(Pmc)アルコキシベンジルアルコール樹脂を30%ピペリジン/ジメチルホルムアミド(DMF)(10ml×2)で20分間処理後、DMF、メタノール(各10ml×2回)で洗浄し、真空下で乾燥させた。このようにして調製した樹脂25mgをDMFにて膨潤、洗浄後、最初のアミノ酸であるNpys−Ser(t−Bu)、及び、N−メチルモルホリン(NMM)、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム ヘキサフルオロフォスヘート(benzotriazol−1−yl−oxy−tris−pyrrolidino−phosphonium hexafluorophosphate)(PyBOP)を、各5当量用い縮合を行った。次いでDMFで再度樹脂を洗浄、脱保護は、中性条件の3%トリフェニル基ホスフィン(Ph3 P)、1.2%ピリジン・塩酸(Pyr・HCl)/DMF溶液を用いて行った。
【0047】
DMFで再び樹脂を洗浄後、10%NMM/DMF溶液で中和を行い、最後にDMFで洗浄した後、次のアミノ酸の縮合に移った。以下、同様の方法で鎖長を延ばした。
【0048】
各アミノ酸の保護基としては、実施例4〜6を通して、α−アミノ基の保護基としてはNpys基を、セリン、スレオニンの水酸基の保護基としてはt−Bu基を、アルギニンのグアニジノ基の保護基としてはPmc基を、グルタミン酸のカルボキシル基の保護基としては、t−Bu基を用いた。
合成機は、島津PSSM8を使用した。操作条件は表1に示した。
【0049】
【表1】
【0050】
合成完了後、樹脂をメタノールで洗浄し、真空にて乾燥した。樹脂15mgにリージェントK(フェノール62.5mg、水62.5μl、チオアニソール62.5μl、エタンジチオール(EDT)31.3μl、TFA1ml)を加え、室温8時間で放置した。これにより樹脂からのペプチドの切断、リン酸基の保護基であるベンジル基の脱保護、各種保護アミノ酸の脱保護を行った。フィルターで樹脂を除去後、エーテルを加え、遠心にてペプチドを集めた。真空にてペプチドを乾燥後、水1mlに溶解し、以下HPLCにて生成物の分析を行った。
【0051】
ペプチドのHPLCによる分析は以下のようにして行った。
HPLC装置として島津LC−6Aシステムを使用し、データ処理は、島津CR−7Aを使用して行った。カラムは、コスモシル(Cosmosil)5C18(4.6×150mm)を使用した。溶出は、40℃にて、0.05%TFA溶液中のアセトニトリル濃度を0−50%(50分間で)上昇させることにより行った。移動相の流速は、1ml/分で、214nmの吸収を測定することにより、試料の溶出位置をモニターした。
合成反応物をHPLCで分析したところ、図1に示したように一本のメインピークが観測された。この分画を回収してアミノ酸分析、FAB−MS分析を行った。
【0052】
ペプチドの酸加水分解及びアミノ酸組成分析は、以下のように行った。
乾燥試料(ペプチド約2nmol)の入った試験管を加水分解用バイアルに入れ、0.1%フェノール含有5.7N塩酸200μlを加え、減圧密閉後、110℃、24時間加水分解した。試料を減圧乾燥後、0.02N塩酸に溶解し、日立L−8500にてアミノ酸分析を行った。表2にその結果を示した。なお、表2の実測値は、Argとのモル相対比で表した。
【0053】
【表2】
【0054】
FAB−MSは、日本電子社製JMS−DX302型質量分析装置を使用し、グリセリン又はm−ニトロベンジルアルコールをマトリックスとし、試料に混入することにより測定した。理論質量638、m/z=639[M+H]+ 。
上記の結果から、HPLC溶出のメインピークの分画として回収されたペプチドが目的物であることが判明した。なお、アミノ酸分析の結果より、保護ペプチド樹脂13.8mgから目的ペプチドは、255μg得られた。収率は45%であった。
【0055】
実施例5
Pro−Gly−pThr−Pro−Gly−Ser−Argの合成
(pThrはホスホスレオニン(リン酸化スレオニン)を表す)
実施例4と同様の手順を用いて合成し、合成完了後、HPLC分析を行った。図2にそのクロマトグラムを示した。
【0056】
主成分として1、2、3の3本のピーク分画を分取し、各々に対してアミノ酸組成分析、FAB−MS分析を行った。アミノ酸分析の結果を表3に示した。なお、表3の実測値は、Argとのモル相対比で表した。
【0057】
【表3】
【0058】
表3から目的ペプチドは、ピーク1の分画に含まれることが判明した。ピーク1の分画のFAB−MS分析は、理論質量750、m/z=750[M+H]+ であった。
アミノ酸分析の結果より、保護ペプチド樹脂10mgから目的ペプチドは、214μg(286nmol)得られた。収率は36%であった。
なお、アミノ酸分析の結果から、ピーク2はThr(PO3 Bzl2 )以降のアミノ酸が縮合せずペプチド鎖の伸長が止まってしまったペプチドであることがわかった。ピーク3は、Npys−Thr(PO3 Bzl2 )だけ縮合せず、そのまま伸長が進んだペプチドと判断された。Npys−Thr(PO3 Bzl2 )のダブルカップリングを行う等すれば、目的ペプチドの収率は、さらに向上する。
【0059】
実施例6
Glu−pTyr−Thr−Ala−Argの合成
(pTyrはホスホチロシン(リン酸化チロシン)を表す)
実施例4と同様の手順で合成し、合成完了後、HPLC分析を行った。図3にそのクロマトグラムを示した。
主成分として1本のメインピークが観測され、この分画を分取し、アミノ酸組成分析、FAB−MS分析を行った。アミノ酸分析の結果を表4に示した。なお、表4の実測値は、Alaとのモル相対比で表した。
【0060】
【表4】
【0061】
表4から目的ペプチドは、メインピークの分画に含まれることが判明した。また、この分画のFAB−MS分析では、理論質量718に対し、m/z=719[M+H]+ であった。
アミノ酸分析の結果より、保護ペプチド樹脂9.2mgから目的ペプチドは、630μg(878nmol)得られた。収率は69%であった。
従来、Boc法を使用する方式のペプチド合成機でしかリン酸化ペプチドを直接合成することができなかったが、本発明の方法を使用することにより、Fmoc法を使用する方式のペプチド合成機でもリン酸化ペプチドの合成が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例4で得たペプチドのクロマトグラム。縦軸は214nmでの吸光度を、横軸は保持時間(分)を表す。
【図2】実施例5で得たペプチドのクロマトグラム。縦軸は214nmでの吸光度を、横軸は保持時間(分)を表す。
【図3】実施例6で得たペプチドクロマトグラム。縦軸は214nmでの吸光度を、横軸は保持時間(分)を表す。
【産業上の利用分野】
本発明は、下記の一般式(I)
【0002】
【化4】
【0003】
(式中、Bzlは、ベンジル基を表す。Aは、−CH2 −、−CH(CH3 )−又は
【0004】
【化5】
【0005】
を表す。)で表されるリン酸化L−アミノ酸誘導体及びこれらを使用するリン酸化ペプチドの合成方法に関する。本発明に係るリン酸化ペプチドは、ガン遺伝子等の生体内蛋白質の部分構造であり、ガンの診断、薬理作用の検定等の分野に応用できるので、極めて有用である。
【0006】
【従来の技術】
生体を構成する特定の蛋白質において、その一次構造上の一定のアミノ酸残基がリン酸化されることによって、生体内でのシグナル伝達等の制御が行われることが知られている。
【0007】
例えば、Src等のある種のガン遺伝子にはプロテインキナーゼ活性が発見され、その機能が研究されており(プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・U.S.A.(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.)、第75巻、第3021頁以下、1980年)、また、脳内蛋白質(タウ蛋白質等)(ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、第267巻、第10897頁以下、1992年)を始め情報伝達系に関与する様々な蛋白質(ネイチャー(Nature)、第296巻、第613頁以下、1982年)がリン酸化、脱リン酸化の制御下にあることも知られている。
【0008】
上記のことから、生体内蛋白質中のリン酸化基質となる部分を含むペプチドやその生産物であるリン酸化ペプチドを合成し、これをもとに研究を行うことが、当該生体内蛋白質の生理機能を解明するための重要な手法となっている。
上記リン酸化ペプチドを得る方法としては、(1)ペプチドを酵素を用いてリン酸化する方法、(2)化学的にリン酸化ペプチドを合成する方法の2つがある。
【0009】
酵素を用いてリン酸化する方法(インターナショナル・ジャーナル・オブ・ペプチド・アンド・プロテイン・リサーチ(Int.J.Peptide Protein Res.)、第33巻、第468頁〜476頁、1989年)は、ペプチドが特定のアミノ酸配列に限られているため適用範囲が狭く、充分な量のペプチドを調製することができないという欠点があった。
【0010】
化学的にリン酸化ペプチドを合成する方法には、固相法で用いられているBoc法及びFmoc法がある。
Boc法(ケミカル・レターズ(Chem.Lett.)、第1401頁以下、1993年)においては、O−リン酸化ベンジル基等で保護したリン酸化アミノ酸を含むペプチド鎖を順次N末端側へ延ばしていくが、伸長過程でトリフルオロ酢酸(TFA)を用いるので、ベンジル基等の保護基の脱離が部分的におこり、ペプチド鎖の延長が阻害される欠点があり、また、樹脂からのペプチドの回収には、強酸であるトリフルオロメタンスルホン酸(TFMA)を用いなければならず、副反応が起こりやすく収率よくリン酸化ペプチドを回収することができない等の欠点がある。
【0011】
Fmoc法(インターナショナル・ジャーナル・オブ・ペプチド・アンド・プロテイン・リサーチ(Int.J.Peptide Protein Res.)、第40巻、第134頁〜140頁、1992年等)においては、ホスホセリン、ホスホスレオニンは、β脱離が起こるため基本的に合成ができず、そのためリン酸化導入部位だけ無保護にしたペプチドを合成後、ジベンジルホスホロアミダイト等を用いてリン酸基を導入するという複雑な方法を必要とする欠点がある。また、この方法では立体的な障害やリン酸化の過程で酸化の工程が含まれるために目的物を高収率で得ることも困難である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記現状に鑑み、本発明は、短い工程でしかも高い収率で、目的とするリン酸化ペプチドを取得する方法及びそのために必要なリン酸化アミノ酸を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、リン酸化L−アミノ酸誘導体を先に取得し、これを用いて、以下に詳述するNpys法を用いて、固相法又は液相法によりリン酸化ペプチドを合成するところにある。上記リン酸化L−アミノ酸誘導体は、本発明者らにより初めて見いだされたものであり、従って、本発明の要旨は、このリン酸化L−アミノ酸誘導体そのものにもある。
以下に本発明を詳述する。
【0014】
本発明に係る上記リン酸化L−アミノ酸誘導体は、L−アミノ酸であるセリン(Ser)、スレオニン(Thr)及びチロシン(Tyr)の水酸基をリン酸化し、アミノ基を3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル(本明細書において「Npys」ともいう)基で保護した誘導体であって、上記一般式(I)で表される。上記リン酸化アミノ酸誘導体は、下記に示した工程で合成することができる。
【0015】
【化6】
【0016】
式中、A、Bzlは前記と同じ。
上記合成において、出発原料は、Aが−CH2 −の場合はBoc−Ser(PO3 Bzl2 )、Aが−CH(CH3 )−の場合はBoc−Thr(PO3 Bzl2 )、Aが−CH2 −C6 H4 −の場合はBoc−Tyr(PO3 Bzl2 )である。これらは、市販のものを用いることができる。
上記化合物はギ酸で処理してBoc基をはずし(工程a)、Ser(PO3 Bzl2 )、Thr(PO3 Bzl2 )、Tyr(PO3 Bzl2 )を得、得られた化合物に3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニルクロライドを反応させ、炭酸ナトリウムを加えて(工程b)、α−アミノ基にNpys基の導入された上記リン酸化アミノ酸誘導体を得ることができる。
上記3つのリン酸化アミノ酸誘導体は、文献未記載の新規化合物であり、本発明者らにより初めて取得され、その物性を同定された物質である。
【0017】
本発明の上記リン酸化アミノ酸誘導体は、後述するリン酸化ペプチドを合成する原料として極めて重要な化合物である。上記リン酸化ペプチドを合成するためには、上記リン酸化アミノ酸誘導体のほか、これらの塩も利用することができる。上記リン酸化アミノ酸誘導体の塩は、通常アミノ酸化学上考えられる塩であれば特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、ジシクロヘキシルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩等を挙げることができる。
【0018】
本発明においては、上記リン酸化アミノ酸誘導体又はその塩を他のアミノ酸とペプチド結合させて、リン酸化ペプチドを合成する。
上記リン酸化ペプチドの合成は、公知の方法(例えば、「ペプチド合成の基礎と実験」、泉屋ら共著、1985年、丸善、「蛋白質の化学」、生化学実験講座(I)、第4巻、東京化学同人発行、1977年等)に準じて液相法又は固相法により行うことができる。本発明のリン酸化ペプチドの合成方法としては、固相法が好ましい。
【0019】
上記リン酸化ペプチドを固相法により合成する場合は、まず、最初に目的とするペプチドのC末端アミノ酸のα−アミノ基を保護した保護アミノ酸を不溶性樹脂に結合させる。
【0020】
上記アミノ酸のα−アミノ基の保護基は、Npys基である。本明細書においてNpys法とは、α−アミノ基の保護基としてNpys基を用いてペプチドを合成する手法をいう(松枝ら。インターナショナル・ジャーナル・オブ・ペプチド・アンド・プロテイン・リサーチ(Int.J.Peptide Protein Res.)、第16巻、第392〜401頁、1980年)。
【0021】
上記保護アミノ酸とは、官能基が公知の方法により保護されたアミノ酸であり、各種のものが市販されている。アルギニンのグアニジル基の保護基としては、例えば、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル基、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル基等が挙げられる。アスパラギン酸及びグルタミン酸のカルボキシル基の保護基としては、例えば、t−ブトキシ基等を挙げることができる。システインのメルカプト基の保護基としては、例えば、トリフェニルメチル基、S−アセトアミドメチル基等を挙げることができる。セリン、スレオニン、チロシンの水酸基の保護基としては、例えば、t−ブトキシ基等を挙げることができる。ヒスチジンのイミダゾリル基の保護基としては、例えば、トリフェニルメチル基等を挙げることができる。トリプトファンのインドリル基の保護基としては、例えば、ホルミル基等を挙げることができるが、保護しなくてもよい。
【0022】
上記各保護基は、基本的には、最終脱保護の際、トリフルオロ酢酸(TFA)で切断できるものが使用される。システイン残基のS−S結合を結ぶ際は、合成条件に応じ適切なものを選択することができる。
【0023】
上記α−アミノ基を保護した保護アミノ酸を結合させる不溶性樹脂としては、アミノ酸との結合がTFA等で切断できる樹脂ならば特に制限されず、例えば、パラアルコキシベンジルアルコール樹脂、4−ヒドロキシメチル−3−メトキシフェノキシ酢酸樹脂等を挙げることができる。
【0024】
上記不溶性樹脂に結合したα−アミノ基を保護した保護アミノ酸は、α−アミノ基の保護基をはずした後、ペプチド鎖の一次構造に従い、C末端側から、α−アミノ基にNpys基を導入した各種アミノ酸(以下Npys保護アミノ酸ともいう)又は上記リン酸化アミノ酸誘導体を順次結合させる。
【0025】
保護アミノ酸の縮合は、Npys法に従って、すべて中性条件で鎖長を延ばすことができる。すなわち、C末端アミノ酸を不溶性樹脂に結合後、Npys保護アミノ酸、弱塩基、触媒存在下に縮合剤を用いて鎖長を伸ばす。
上記弱塩基としては、例えば、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン等を挙げることができる。触媒としては、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール等を挙げることができるが、なくてもよい。縮合剤としては、例えば、N,N′−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリディノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)等を挙げることができる。溶媒としては、Npysアミノ酸、触媒、縮合剤の溶解可能なものであればよく、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)等を挙げることができる。
【0026】
上記リン酸化ペプチドの合成は、例えば、島津製作所製のペプチドシンセサイザーPSSM8型のようなFmoc方式の固相ペプチド合成機を使用して行うこともできる。この方法においては、得られたペプチド鎖と不溶性樹脂の結合、ペプチド鎖N末端側の保護基との結合、リン酸基の保護基であるベンジル基との結合等をTFA等を用いて切断して目的のリン酸化ペプチドを得ることができる。
【0027】
本発明においては、その後、溶媒にて洗浄後Npys基の脱保護を行う。脱保護は、トリフェニルホスフィン、2−ピリジンチオール−1−オキサイド等中性条件下で除去できる物質を用いてすることができる。洗浄後、弱塩基で中和洗浄し、再び縮合を行う。中和は、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン等によりすることができる。
【0028】
目的とする保護基が結合したペプチド樹脂を得た後、スカベンジャーの入ったTFAにてペプチドを脱離する。スカベンジャーとしては、例えば、水、エタンジチオール、ジエチルサルファイド、チオアニソール、フェノール、アニソール等を挙げることができる。得られるペプチドの構成アミノ酸に応じて、上記の幾つかを組み合わせて使用することができる。
【0029】
得られた粗製ペプチドは、ペプチド製造の公知の手段、例えば、逆相、ゲル濾過、イオン交換等の各種クロマトグラフィー、電気泳動等により単離、精製することができるが、例えば、逆相HPLCによる手段が最適である。
【0030】
本発明により得られるリン酸化ペプチドは、生理活性物質として利用することができる。
ホスホセリン含有蛋白質としては、例えば、ヒトとウシのβ−カゼイン(ムリナックス(Mullinax),T.R.ら、アーカイブズ・オブ・バイオケミストリー・アンド・バイオフィジクス(Arch.Biochem.Biophy.)、第243巻、第655〜659頁、1985年)、グリコーゲン合成酵素(フォイル(Foil),C.J.ら、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、第262巻、第14042〜14048頁、1987年)、N−myc蛋白質(ルッシャー(Lusher),B.ら、ジ・エンボ・ジャーナル(The EMBO Journal)、第8巻、第1111〜1119頁、1989年)等を挙げることができる。
【0031】
ホスホスレオニン含有蛋白質としては、例えば、tau蛋白質(K.イシグロ(Ishiguro)ら、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、第267巻、第10897〜10901頁、1992年)、ガン抑制遺伝子RB蛋白質(Y.タヤ(Taya)ら、バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーショズ(Biochem.Biophys.Res.Communications)、第164巻、第580〜586頁、1989年)等を挙げることができる。
【0032】
ホスホチロシン含有蛋白質としては、例えば、ラウス・ザルコーマ・ウイルスの遺伝子産物であるpp60src (ハンター(Hunter),T.ら、プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・U.S.A.(Pro.Nat.Acad.Sci.U.S.A.)、第77巻、第1311〜1315頁、1980年)、EGFレセプター(ウシロ(Ushiro),H.ら、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、第254巻、第8083〜8086頁、1980年)等を挙げることができる。
【0033】
本発明により得られるリン酸化ペプチドの1種であるLeu−pSer−Pro−Ser−Arg(pSerはホスホセリンを表す)は、N−myc蛋白質の部分アミノ酸配列であり、N−myc蛋白質は、ヒトのガンで発現異常がみられる蛋白質である。
【0034】
本発明により得られるリン酸化ペプチドの1種であるPro−Gly−pThr−Pro−Gly−Ser−Arg(pThrはホスホスレオニンを表す)は、リン酸化tau蛋白質の部分アミノ酸配列であり、アルツハイマー病患者の脳中には、paired helical filaments(PHFs)と称される不溶性の繊維が蓄積することが明らかにされており、このPHFs中にはリン酸化されたtau蛋白質が存在する。
【0035】
本発明により得られるリン酸化ペプチドの1種であるGlu−pTyr−Thr−Ala−Arg(pTyrはホスホチロシンを表す)は、pp60src の部分アミノ酸配列であり、pp60src は代表的なレトロウイルスであるラウス・ザルコーマ・ウイルスの遺伝子産物である。
【0036】
本発明により得られるリン酸化ペプチドは、生体上に発見される上記生理物質又は生理活性物質の部分アミノ酸配列を構成するので、これらと同じ生理活性を有する物質又はその物質の構成成分として利用することができる。また、これら物質の同定に利用することができる。上記同定は、蛋白質から目的とする特定のアミノ酸配列を検出する方法、例えば、エライザ(ELISA)法等の公知の方法を、上記リン酸化ペプチドに応用することにより、することができる。この方法により、例えば、ヒトのガンの診断及び治療、アルツハイマー病の診断及び治療、ラウス・ザルコーマ・ウイルス感染の診断及び治療をすることができる。
【0037】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、Npys−Ser(PO3 Bzl2 )、Npys−Thr(PO3 Bzl2 )、Npys−Tyr(PO3 Bzl2 )以外のNpys保護アミノ酸は、国産化学社製のものを使用した。
【0038】
実施例1
Npys−Ser(PO 3 Bzl 2 )〔Npys保護セリン−O−リン酸化ベンジルエステル〕の合成
Boc−Ser(PO3 Bzl2 )1g(2.1mmol、渡辺化学社製)に0℃下、ギ酸20mlを加え、1時間反応後、溶媒を留去し、真空にて乾燥させた。蒸留水20mlを加え等電点沈殿を行い沈殿を遠心にて集め乾燥させ、Ser(PO3 Bzl2 )を得た。収量546mg、収率70%。
【0039】
Rf値=0.76(ブタノール:酢酸:水=4:1:1)
FAB−MS;m/z=366[M+H]+ (日本電子社製JMS−DX302型質量分析装置を使用)
上記で得たSer(PO3 Bzl2 )546mg(1.5mmol)に水3.9ml、DMF4.1ml、炭酸ナトリウム275mg(2.6mmol)を加えて溶解後、0℃下、Npys−Clを530mg(2.8mmol)加え、1時間後及び2時間後に再び炭酸ナトリウム30mg(0.28mmol)及びNpys−Clを50mg(0.26mmol)加えた。
3時間後、水100mlを添加し、エーテル洗浄(100ml×2回)を行い、0.2Nクエン酸で酸性化後、酢酸エチルにてNpys−Ser(PO3 Bzl2 )を抽出した。硫酸ナトリウムにて一夜乾燥後、溶媒を留去し、アセトニトリル−水にて再結晶を行った。収量400mg、収率50%。
Rf値=0.4(クロロホルム:メタノール:酢酸=95:5:3)
FAB−MS;m/z=520[M+H]+
【0040】
融点134〜136℃
1H−NMR(δ CDCl3 ):3.7(1H,m,CH),4.4(2H,d,J=10Hz,CH2 O),5.0(4H,m(OCH2 )2 ),7.4(11H,m,(C6 H5 )2 ,H−5 of pyridine),8.6(1H,dd,J=8Hz,J=1.7Hz, H−4 of pyridine),8.8(1H,dd,J=5Hz,J=1.5Hz,H−6 of pyridine)
元素分析値(C22H22O8 N3 SP)
理論値 C:50.87 H:4.24 N:8.09
実測値 C:50.66 H:4.08 N:8.28
【0041】
実施例2
Npys−Thr(PO 3 Bzl 2 )〔Npys保護スレオニン−O−リン酸化ベンジルエステル〕の合成
Boc−Ser(PO3 Bzl2 )の代わりにBoc−Thr(PO3 Bzl2 )0.5g(2.1mmol、渡辺化学社製)を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてNpys−Thr(PO3 Bzl2 )を合成した。Npys−Thr(PO3 Bzl2 )は、再結晶できなかったので逆相HPLCにて精製し、凍乾品とした。
Thr(PO3 Bzl2 ) 収量546mg、収率70%。
Rf値=0.7(ブタノール:酢酸:水=4:1:1)
FAB−MS;m/z=380[M+H]+
Npys−Thr(PO3 Bzl2 ) 収量75mg、収率34%。
Rf値=0.25(クロロホルム:メタノール:酢酸=95:5:3)
FAB−MS;m/z=534[M+H]+
【0042】
融点64〜67℃
1H−NMR(δ CDCl3 ):1.5(3H,d,J=7Hz,CH3 ),3.4(1H,m,CH),5.0(4H,m,(OCH2 )2 ),5.2(1H,m,CH−O),7.3(11H,m,(C6 H5 )2 ,H−5 of pyridine),8.6(1H,dd,J=8Hz,J=1.4Hz,H−4of pyridine),8.8(1H,dd,J=4Hz,J=1.4Hz,H−6 of pyridine)
元素分析値(C23H24O8 N3 SP)
理論値 C:51.78 H:4.50 N:7.88
実測値 C:51.54 H:4.48 N:7.84
【0043】
実施例3
Npys−Tyr(PO 3 Bzl 2 )〔Npys保護チロシン−O−リン酸化ベンジルエステル〕の合成
Boc−Ser(PO3 Bzl2 )の代わりにBoc−Tyr(PO3 Bzl2 )0.3g(0.55mmol、渡辺化学社製)を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてNpys−Tyr(PO3 Bzl2 )を合成した。但し、Npys−Clを反応させる際、Tyr(PO3 Bzl2 )の溶解性が悪いためジメチルスルホキサイド(DMSO)1mlを加え反応を行った。また、Npys−Tyr(PO3 Bzl2 )は、再結晶できなかったので逆相HPLCにて精製し、凍乾品とした。
【0044】
Tyr(PO3 Bzl2 ) 収量137mg、収率56%。
Rf値=0.39(ブタノール:酢酸:水=4:1:1)
FAB−MS;m/z=442[M+H]+
Npys−Tyr(PO3 Bzl2 ) 収量62mg、収率34%。
Rf値=0.29(クロロホルム:メタノール:酢酸=95:5:3)
FAB−MS;m/z=596[M+H]+
【0045】
1H−NMR(δ CDCl3 ):2.9−3.3(2H,m,CH2 ),3.8(1H,m,CH),5.1(4H,m,(OCH2 )2 ),7.3(15H,m,(C6 H5 )2 ,C6 H4 ,H−5 of pyridine),8.5(1H,dd,J=8Hz,J=1.6Hz,H−4 of pyridine),8.8(1H,dd,J=5Hz,J=1.5Hz,H−6 of pyridine)
元素分析値(C28H26O8 N3 SP)
理論値 C:56.47 H:4.37 N:7.06
実測値 C:54.84 H:4.30 N:6.76
【0046】
実施例4
Leu−pSer−Pro−Ser−Argの合成
(pSerはホスホセリン(リン酸化セリン)を表す)
Fmoc−Arg(Pmc)アルコキシベンジルアルコール樹脂を30%ピペリジン/ジメチルホルムアミド(DMF)(10ml×2)で20分間処理後、DMF、メタノール(各10ml×2回)で洗浄し、真空下で乾燥させた。このようにして調製した樹脂25mgをDMFにて膨潤、洗浄後、最初のアミノ酸であるNpys−Ser(t−Bu)、及び、N−メチルモルホリン(NMM)、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム ヘキサフルオロフォスヘート(benzotriazol−1−yl−oxy−tris−pyrrolidino−phosphonium hexafluorophosphate)(PyBOP)を、各5当量用い縮合を行った。次いでDMFで再度樹脂を洗浄、脱保護は、中性条件の3%トリフェニル基ホスフィン(Ph3 P)、1.2%ピリジン・塩酸(Pyr・HCl)/DMF溶液を用いて行った。
【0047】
DMFで再び樹脂を洗浄後、10%NMM/DMF溶液で中和を行い、最後にDMFで洗浄した後、次のアミノ酸の縮合に移った。以下、同様の方法で鎖長を延ばした。
【0048】
各アミノ酸の保護基としては、実施例4〜6を通して、α−アミノ基の保護基としてはNpys基を、セリン、スレオニンの水酸基の保護基としてはt−Bu基を、アルギニンのグアニジノ基の保護基としてはPmc基を、グルタミン酸のカルボキシル基の保護基としては、t−Bu基を用いた。
合成機は、島津PSSM8を使用した。操作条件は表1に示した。
【0049】
【表1】
【0050】
合成完了後、樹脂をメタノールで洗浄し、真空にて乾燥した。樹脂15mgにリージェントK(フェノール62.5mg、水62.5μl、チオアニソール62.5μl、エタンジチオール(EDT)31.3μl、TFA1ml)を加え、室温8時間で放置した。これにより樹脂からのペプチドの切断、リン酸基の保護基であるベンジル基の脱保護、各種保護アミノ酸の脱保護を行った。フィルターで樹脂を除去後、エーテルを加え、遠心にてペプチドを集めた。真空にてペプチドを乾燥後、水1mlに溶解し、以下HPLCにて生成物の分析を行った。
【0051】
ペプチドのHPLCによる分析は以下のようにして行った。
HPLC装置として島津LC−6Aシステムを使用し、データ処理は、島津CR−7Aを使用して行った。カラムは、コスモシル(Cosmosil)5C18(4.6×150mm)を使用した。溶出は、40℃にて、0.05%TFA溶液中のアセトニトリル濃度を0−50%(50分間で)上昇させることにより行った。移動相の流速は、1ml/分で、214nmの吸収を測定することにより、試料の溶出位置をモニターした。
合成反応物をHPLCで分析したところ、図1に示したように一本のメインピークが観測された。この分画を回収してアミノ酸分析、FAB−MS分析を行った。
【0052】
ペプチドの酸加水分解及びアミノ酸組成分析は、以下のように行った。
乾燥試料(ペプチド約2nmol)の入った試験管を加水分解用バイアルに入れ、0.1%フェノール含有5.7N塩酸200μlを加え、減圧密閉後、110℃、24時間加水分解した。試料を減圧乾燥後、0.02N塩酸に溶解し、日立L−8500にてアミノ酸分析を行った。表2にその結果を示した。なお、表2の実測値は、Argとのモル相対比で表した。
【0053】
【表2】
【0054】
FAB−MSは、日本電子社製JMS−DX302型質量分析装置を使用し、グリセリン又はm−ニトロベンジルアルコールをマトリックスとし、試料に混入することにより測定した。理論質量638、m/z=639[M+H]+ 。
上記の結果から、HPLC溶出のメインピークの分画として回収されたペプチドが目的物であることが判明した。なお、アミノ酸分析の結果より、保護ペプチド樹脂13.8mgから目的ペプチドは、255μg得られた。収率は45%であった。
【0055】
実施例5
Pro−Gly−pThr−Pro−Gly−Ser−Argの合成
(pThrはホスホスレオニン(リン酸化スレオニン)を表す)
実施例4と同様の手順を用いて合成し、合成完了後、HPLC分析を行った。図2にそのクロマトグラムを示した。
【0056】
主成分として1、2、3の3本のピーク分画を分取し、各々に対してアミノ酸組成分析、FAB−MS分析を行った。アミノ酸分析の結果を表3に示した。なお、表3の実測値は、Argとのモル相対比で表した。
【0057】
【表3】
【0058】
表3から目的ペプチドは、ピーク1の分画に含まれることが判明した。ピーク1の分画のFAB−MS分析は、理論質量750、m/z=750[M+H]+ であった。
アミノ酸分析の結果より、保護ペプチド樹脂10mgから目的ペプチドは、214μg(286nmol)得られた。収率は36%であった。
なお、アミノ酸分析の結果から、ピーク2はThr(PO3 Bzl2 )以降のアミノ酸が縮合せずペプチド鎖の伸長が止まってしまったペプチドであることがわかった。ピーク3は、Npys−Thr(PO3 Bzl2 )だけ縮合せず、そのまま伸長が進んだペプチドと判断された。Npys−Thr(PO3 Bzl2 )のダブルカップリングを行う等すれば、目的ペプチドの収率は、さらに向上する。
【0059】
実施例6
Glu−pTyr−Thr−Ala−Argの合成
(pTyrはホスホチロシン(リン酸化チロシン)を表す)
実施例4と同様の手順で合成し、合成完了後、HPLC分析を行った。図3にそのクロマトグラムを示した。
主成分として1本のメインピークが観測され、この分画を分取し、アミノ酸組成分析、FAB−MS分析を行った。アミノ酸分析の結果を表4に示した。なお、表4の実測値は、Alaとのモル相対比で表した。
【0060】
【表4】
【0061】
表4から目的ペプチドは、メインピークの分画に含まれることが判明した。また、この分画のFAB−MS分析では、理論質量718に対し、m/z=719[M+H]+ であった。
アミノ酸分析の結果より、保護ペプチド樹脂9.2mgから目的ペプチドは、630μg(878nmol)得られた。収率は69%であった。
従来、Boc法を使用する方式のペプチド合成機でしかリン酸化ペプチドを直接合成することができなかったが、本発明の方法を使用することにより、Fmoc法を使用する方式のペプチド合成機でもリン酸化ペプチドの合成が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例4で得たペプチドのクロマトグラム。縦軸は214nmでの吸光度を、横軸は保持時間(分)を表す。
【図2】実施例5で得たペプチドのクロマトグラム。縦軸は214nmでの吸光度を、横軸は保持時間(分)を表す。
【図3】実施例6で得たペプチドクロマトグラム。縦軸は214nmでの吸光度を、横軸は保持時間(分)を表す。
Claims (6)
- Aが−CH2 −である請求項1記載のリン酸化L−アミノ酸誘導体又はその塩。
- Aが−CH(CH3 )−である請求項1記載のリン酸化L−アミノ酸誘導体又はその塩。
- 請求項1、2、3又は4記載のリン酸化L−アミノ酸誘導体又はその塩を用いることを特徴とするリン酸化ペプチドの合成方法。
- 合成方法が、Npys法を用いて、固相法又は液相法によりするものである請求項5記載のリン酸化ペプチドの合成方法。
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WO2013180238A1 (ja) | 2012-05-31 | 2013-12-05 | 公立大学法人大阪市立大学 | 認知症治療剤又は予防剤 |
WO2018154390A1 (en) | 2017-02-27 | 2018-08-30 | Teijin Pharma Limited | Humanized antibody for treating or preventing cognitive disorders, process for producing the same, and agent for treating or preventing cognitive disorders using the same |
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- 1994-03-17 JP JP7423894A patent/JP3587390B2/ja not_active Expired - Fee Related
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