JPH07252530A - 超高珪素電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

超高珪素電磁鋼板の製造方法

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JPH07252530A
JPH07252530A JP4730694A JP4730694A JPH07252530A JP H07252530 A JPH07252530 A JP H07252530A JP 4730694 A JP4730694 A JP 4730694A JP 4730694 A JP4730694 A JP 4730694A JP H07252530 A JPH07252530 A JP H07252530A
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rolling
temperature
rolled
hot
scale
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JP4730694A
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Shuji Kitahara
修司 北原
Yozo Suga
洋三 菅
Tadatsugu Yoshida
忠継 吉田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 超高珪素鋼板は極めて脆いため、従来からの
電磁鋼板製造に使用される長大連続ラインを通板するこ
とが困難である。本発明は一連の製造工程に沿って長大
ラインの通板を可能にする方法である。 【構成】 超高珪素鋼は、通常の圧延法では表層に等軸
粒、中心部に延伸粒が残りその境目で割れが発生し破断
し易い。そこで材料温度600℃以上で各パス間時間1
0秒を超えて軟化させながら熱間圧延する。更に長大ラ
インが通板可能な板厚まで表面酸化物が付着したままで
圧延するために地鉄と密着性が良く圧延時に剥れないス
ケール構造とする超高珪素電磁鋼板の製造に関するもの
である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、軟磁性材料として電気
機器の鉄心に用いられる超高珪素電磁鋼板のスラブ加熱
方法に関するもので、特に加熱炉の雰囲気を制御するこ
とにより表面酸化物(スケール)を改質し付着したまま
で圧延を行えるようにし、かつ得られた製品の占積率と
磁性が優れている超高珪素電磁鋼板を安定して製造する
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】Siを含有する鋼板は優れた軟磁気特性
を有するため、電力用変圧器あるいは回転機の鉄心とし
て用いられている。この種軟磁性材料においては、Si
含有量が増加すると鉄損特性が向上する(鉄損値が低下
する)。特に、Si含有量が6.5%近傍では、鉄損特
性が良好である上に磁歪が零に近づくところから、透磁
率も一段と向上し、従来にない新しい機能をもつ磁性材
料となり得る。
【0003】最近、省エネルギーを目的として、鉄損値
が低くかつ電気機器の多様な磁気特性上の要求を満足せ
しめ得る新しい材料として、Siを6.5%あるいはそ
の近傍含有する、超高珪素電磁鋼板が見直され始めた。
【0004】しかしながら、この超高珪素電磁鋼板は極
めて脆いため、工業的に量産する上で多くの問題があ
り、いまだ実用されるに至っていない。超高珪素電磁鋼
板をストリップの状態で処理し工業的量産を行うには、
通常の電磁鋼板製造プロセスのように熱間圧延板を酸洗
によって表面酸化物(スケール)を除去後冷間圧延する
ことが望ましいが、超高珪素電磁鋼板は室温での伸びが
0.5%程度しかなく2.0mm前後の熱延板をライン破
断することなく安定的に酸洗ラインを通板することはか
なり難しい。また、板温度が150℃以上となれば伸び
は15%程度となるが、酸洗ライン全長にわたり板温度
を150℃に保つことは不可能である。そこで表面酸化
物(スケール)が付着したままで圧延を行いある程度板
厚が薄く(酸洗ラインが常温で通板できる板厚)になっ
たところで酸洗を行うことが、工業的に量産する上で必
須となる。
【0005】従来の知見によれば、例えば特公昭59−
289号公報、特公昭60−40921号公報に開示さ
れているように、表面にスケールが付着したままの熱間
圧延板を直接的に圧延するとスケールが破砕、剥離して
問題となりこれまで工業的量産規模でかかる冷間圧延は
行われていない。
【0006】表面酸化物(スケール)について提案され
た技術としては、特開昭60−145318号、特開昭
61−69927号、特開昭61−69924号及び特
開昭62−130219号各公報に開示の技術がある。
これらの技術はいずれも高温スラブ加熱時の炉内の酸素
濃度を低くすることによって酸化減量を少なくするこ
と、あるいは高温酸化に伴う疵の発生防止を目的として
いる。
【0007】例えば特開昭60−145318号公報に
は、高温加熱時にはスラブ表面に大量のノロが生成し、
加熱炉の操業性を損なうばかりでなく表面疵発生をもた
らすことから、それを防止する方法として、スラブ表面
温度が1250℃以上において、加熱雰囲気中のO2
度を1%以下にすること、またガス燃焼型炉での加熱温
度の上限を1230℃にすべきことが提案されている。
【0008】また、特開昭61−69927号公報で
は、ノロの大量発生による炉壁熔損や歩留まり低下、高
温加熱中のスラブ表面の粒界酸化によるホットコイルの
耳割れ、スラブ表面の脱炭に起因する最終製品の磁性劣
化、更にはスラブ柱状晶の粗大化等の防止を目的とし
て、電気的加熱炉での加熱は、温度を1310〜135
0℃、雰囲気は非酸化性に限定すること、そして燃料燃
焼炉での均熱温度の上限は1250℃にすべきことが提
案されている。
【0009】更に特公昭61−69924号公報では、
誘導加熱方式でスラブを高温に加熱した場合スラブ表面
温度が1325℃を超えると熔損が始まるので、132
5℃以上ではO2 濃度を10%以下に制御すべきである
ことを提案している。そしてその実施例には、加熱温
度:1350℃でO2 濃度:10%以下及び加熱温度1
370℃でO2 濃度:1%以下の例が示されている。
【0010】また更に特開昭62−130219号公報
では、歩留まり低下や加熱炉操業に重大な支障をきたす
熔融状態のスラグの発生を防止するために、雰囲気中の
2濃度を次式 O2 (%)=36.4−5.0lnT(℃) 以下にすることを提案している。そしてその具体的な値
としては1300℃で0.55%以下、1350℃で
0.36%以下、1400℃で0.18%以下の範囲が
示されているが、これはO2 濃度を下げればこの成分で
熔融スラグが発生しにくくなるという熱力学的事項を数
式化したものである。
【0011】これらの技術は、スラブ加熱時の炉内の酸
素濃度を低くすることによって酸化減量を少なくするこ
と、あるいは高温酸化に伴う疵の発生防止を目的とした
ものであり、加熱炉内の雰囲気制御により、冷間圧延し
ても破砕、剥離しない表面酸化物(スケール)を生成さ
せることを目的としたものではない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、軟磁性材料
として電気機器の鉄心に用いられる超高珪素電磁鋼板の
スラブ加熱方法に関するもので、特に加熱炉の雰囲気を
制御することにより表面酸化物(スケール)を改質し付
着したままで圧延を行えるようにし、かつ得られた製品
の占積率と磁性が優れている超高珪素電磁鋼板を安定し
て製造する方法を提供することを目的とするものであ
る。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明は、重量%でSi:5.0〜7.1%を含有し
残部実質的にFe及び不可避的不純物からなる超高珪素
鋼のインゴットあるいは連続鋳造スラブを1100℃を
超え1200℃以下の温度で加熱し、累積圧下率50%
を超えた圧下率でリバース圧延後1100℃を超え12
00℃以下の温度域で再加熱し熱間圧延する方法におい
て、被圧延材料の温度を600℃以上、各パス間時間を
10秒を超えて圧延し巻取後、表面酸化物(スケール)
が付着したままの状態で板温度150〜750℃の温度
域で圧延し、次いで表面酸化物を除去し、焼鈍後4〜5
8%の圧下率で酸洗前の圧延温度が高い程高圧下率にな
るような冷間圧延を行い、しかる後に最終焼鈍を施すこ
とを特徴とする超高珪素電磁鋼板の製造方法にある。更
に本発明は、重量比でSi:5.0〜7.1%を含有し
残部実質的にFe及び不可避的不純物からなる材料のス
ラブ加熱に際し、まず雰囲気中のO2 濃度が3%以下の
条件下で1100℃を超え1200℃以下の温度域に1
0〜120分加熱することを特徴としている。
【0014】以下本発明を詳細に説明する。極めて脆い
超高珪素電磁鋼板を工業的に量産するに際して解決され
ねばならない技術的課題は、表面酸化物(スケール)が
付着したままで圧延を可能とすることである。そのため
には地鉄と密着性が良くかつ圧延後の酸洗で落ち易いス
ケール構造とすることである。
【0015】通常の電磁鋼板製造プロセスにおいては、
熱間圧延板は酸洗によって表面スケールを除去された後
冷間圧延される。本発明者らは、例えば酸洗ラインに安
定してストリップを通板できるようにすべく熱間圧延板
を直接的に冷間圧延することを考えた。そこで、本発明
者らは、表面にスケールが付着したままの熱間圧延板を
直接的に圧延してみた。材料(ストリップ)温度をわず
か150℃程度まで高めることによって、Siを6.5
%前後含有する超高珪素電磁鋼の場合、スケールの破
砕、剥離を生じることなく冷間圧延することができた。
すなわち本発明者らは、超高珪素電磁鋼板ストリップを
150〜750℃の温度域で圧延すると熱間圧延表面の
スケールが全く剥離することなく圧延できるという画期
的な現象を発見した。
【0016】次に、本発明における成分条件及びプロセ
ス条件の限定理由を説明する。Siは、本発明の目標が
磁歪の最小となる略6.5%Si鉄の薄板厚製品を工業
的に製造し得るプロセスの確立にあることに鑑み、6.
5%Siを中心として若干の上下幅を持つ範囲内であれ
ばよい。Si含有量の下限は、従来市販されていない範
囲で5.0%とし、可及的に6.5%Siに近い量であ
ることが本発明の目的である。一方、Si含有量が7.
1%を超えると材料の加工性が急激に劣化するにもかか
わらず得られる製品の磁気特性はそれ以上向上しない。
よってSi含有量の上限は7.1%とする。上記以外の
成分については特に限定しない。次いで、溶鋼は鋳造さ
れ、熱間圧延される。鋳造に関し、本発明では特に限定
条件はなく、一般的な方法を用いることができる。最
近、鋳造技術として開発されつつある薄板鋳造法、すな
わち2.0mm厚前後に鋳造し、熱間圧延を省略するか、
あるいは形状矯正程度の軽圧下を加えて、直接冷間圧延
への供給素材とする方法で作成された薄板にも本発明は
適用できる。
【0017】ところで、このように温間圧延で伸びるス
ケールの生成及び構造について説明する。鉄が高温で酸
素、空気等のガスに接触する際、その表面に反応生成物
の被膜(スケール)が生成する。まず酸素が鉄表面に活
性化吸着し、鉄表面は正に、酸素は負にイオン化し、こ
の結果生じる電場の作用により極めて薄い酸化被膜を形
成する。
【0018】そこで、本発明者らは、高温で形成される
スケール構造がどのようになるか調査した。大部分はウ
スタイト(FeO)となり、その上にマグネタイト(F
34 )、ヘマタイト(Fe2 3 )の組成となる。
ほぼ600℃よりウスタイトが形成され、スケールの厚
さの大部分がウスタイトである。
【0019】高珪素含有鋼は、700〜900℃の加熱
では、非晶質のSiO2 薄層が、1100℃以上では2
FeO・SiO2 (ファイアライト)が形成され、これ
らが耐酸化保護膜として作用する。Siが6.5%含有
したところでは、1100℃における酸化量は、Siが
含まれないものと比較すると約1/100に減少する。
しかし、ファイアライトとウスタイトの共晶温度110
0℃を超えた高温では溶融相が生じ、イオンの移動度が
極めて大きくなるため耐酸化性は、甚だしく劣化する。
【0020】更に、その機械特性を調査した。スケール
の機械的性質は、厚さの影響を強く受け、一般的には、
厚さが薄い方がメタルとの密着性が強固となることが知
られている。金属が酸化物を生成する場合、その酸化物
の容積とその酸化物に含まれる金属原子の容積の比が1
に近いほどメタルと酸化被膜間で生じる応力は小さくな
り、密着性が増すということが知られている。一方、温
度変化に起因する熱応力についても、一般的には、金属
とその酸化物の熱膨張係数の比が1に近いほど密着性に
対して有利になると考えられている。鉄のスケールでは
この比がFe−FeO間では0.84とその条件をかな
り満たしている。
【0021】親和力がFeより大きい元素の場合は元素
の方が優先的に酸化を受け、その元素の外方拡散が酸素
の内方拡散より速い場合には選択酸化が、逆の場合に
は、内部酸化が生じる。このような選択酸化、内部酸化
は結晶粒界で生じ易く、そのためSiを多量に含む鋼に
おいては、サブスケールが粒界に沿って深く侵入してい
る組織を呈する。
【0022】このように機械的特性と密着性に及ぼす影
響を整理すると高Si含有鋼は、特にSiは、酸素との
親和力が大きいため選択酸化あるいは内部酸化によっ
て、スケールと素地の界面が複雑に入り組んだ構造とな
り、スケールの密着性が良好となる。これは高Si含有
鋼においてファイアライトが生成した場合である。ファ
イアライトは低温においては、非常に脆いため、常温に
おける固着力を低下させるが、ウスタイトとの共晶温度
以上の高温で溶融相が生じた場合には極めて剥離しにく
くなる。その理由は、溶融相が機械的な剥離応力を分
散、緩和させるためであると考える。
【0023】そこでこれらの改善条件を明確にするため
の詳細な実験を続け最終的に以下の条件を得た。加熱に
おいてO2 濃度を低くしてスケール厚みを薄くすること
が重要である。O2 濃度に関してはスラブ表面のガス流
速にも依存するが、O2 濃度を変えて、1200℃×3
0分加熱した時のスケール厚さを図1に示す。O2 濃度
が3%以下であるとスケールが極端に薄くなることが判
明した。すなわち、圧延が可能となるスケールとするた
めには、1100〜1200℃までの加熱で薄いファイ
アライトを生成させることが重要である。そのために加
熱炉雰囲気をO2 濃度3%以下とすることを見いだし
た。図1に示すようにO2 濃度3%以下とするとスケー
ル厚さが極端に薄くなり耐酸化保護膜となることがわか
る。
【0024】更にウスタイトとの共晶温度(1100
℃)以上にして溶融相を形成し、剥離しにくいスケール
をつくることが重要である。溶融相が生じるとイオンの
移動度が極めて大きくなるためその時の加熱炉のO2
度を、極力低減することが望ましい。この発明ではスラ
ブの加熱においては、誘導加熱炉や電気抵抗炉等の電気
的加熱炉で行うのが好ましい。通常誘導加熱炉や電気抵
抗炉等の電気的加熱炉の雰囲気は、O2 濃度0.3%以
下となっている。すなわちO2 濃度を低める理由は、前
掲図1にも示したとおり、1100℃以上加熱した時の
酸素濃度が高くなるとスケール層が厚くなり、スケール
が付着したままでの圧延がしにくくなるためである。
【0025】実際に加熱炉のO2 濃度を変化させた時の
スケール付き圧延状況を調査した。重量比で、Si:
6.5%、C:0.003%、Mn:0.16%、P:
0.005%、S:0.001%、total N:0.00
13%、残部:実質的にFeからなる50kg鋼塊を、加
熱炉O2 濃度2%、1200℃で加熱した後熱間圧延
し、10パスで1.8mm厚さとした(Aコイル)。比較
のため加熱炉O2 濃度15%、1200℃で加熱した後
熱間圧延し10パスで1.8mm厚さに仕上げた(Bコイ
ル)。このA,Bの2コイルについて表面酸化物(スケ
ール)が付着したままで材料温度:1)室温(約23
℃)、2)150℃、3)440℃、4)750℃で圧
延した。この時の材料(ストリップ)の表面酸化物(ス
ケール)の剥離程度を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】Aコイルは、室温で圧延したものは表面酸
化物(スケール)の破砕、剥離が甚だしく、剥落したス
ケールが圧延油に混入したり圧延ロールに付着したりし
て、圧延材表面に疵を発生する等の問題を生じた。しか
し、圧延温度を150℃,440℃,750℃と高めて
いくと、表面酸化物(スケール)の破砕、剥離は全くな
く、圧延は順調に行われた。Bコイルは、室温で圧延し
たものは、表面酸化物の破砕、剥離が甚だしく、スケー
ル層が厚い分温度を上げても一部剥離が見られる。
【0028】このように、加熱炉のO2 濃度を制御する
ことにより材料に表面酸化物(スケール)が付着したま
まで、スケールを破砕、剥離せしめることなく圧延する
ことができるという知見は、全く知られておらず新規な
知見である。以上のように通常行われている程度の温度
域の150〜750℃で圧延を行えば、表面酸化物(ス
ケール)付き状態でもスケール破砕もなく圧延できるこ
とがわかった。
【0029】本発明において材料(スラブ)を1100
℃を超え1200℃以下の温度領域に予備加熱する。1
100℃以下では十分な軟化が進まず1200℃以上で
は過大に粒成長する。更に累積圧下率50%以上の圧下
率を適用する圧延を施して材料に歪を導入した後、11
00℃を超え1200℃以下の温度域に再加熱して結晶
粒を微細均一化させる。こうすることによって次の熱間
圧延段階で材料の破断を防止し得る。十分な軟化を達成
するには、累積圧下率を50%以上とする。スラブの加
熱温度は、1100℃を超え1200℃の温度域とす
る。加熱温度が1100℃に満たないと十分な軟化が行
われず、一方加熱温度が1200℃を超えると材料に過
大な粒成長を生じる。
【0030】図2に圧延温度とパス間時間による軟化状
況を示す。パス間時間が10秒を超えかつ圧延温度が6
00℃以上で熱間圧延を行えばコイル全長、全幅にわた
り耳割れ及び破断なく圧延できることがわかり組織をみ
ると十分軟化しているのがわかった。この圧延は、通常
の連続熱間圧延で行うこともできるが圧延機の前後にフ
ァーネスコイラを配置したステッケルミルで圧延するこ
とが望ましい。均熱時間については、ファイアライトの
生成に必要な下限が10分であり、長すぎるとファイア
ライトが厚くなりすぎて密着性が劣化するので上限を1
20分と規定した。
【0031】ところで、このスケール厚みであるが2.
3mm厚の熱延板で25μm超であり、0.3mm厚の製品
にすると3.3μmにもなる。このままで絶縁性確保の
点からは特に問題ではないが、磁気特性の点からは問題
である。すなわち、鋼板を積層してコアーとなした場合
に実質的に磁束の通る鉄分の割合(占積率)が減少し磁
束密度が低下する。そこで、この表面酸化物を除去し、
その後に塗布量を制御した薄い絶縁被膜を塗布すること
が占積率を上げ、磁性を向上させるために有効である。
表面酸化物を除去する方法として酸洗法が一般的であ
り、本発明でもこの酸洗法を採用することができる。そ
こで、表面酸化物(スケール)付き冷間圧延した後に、
酸洗を行ったところ、その表面粗度が冷間圧延時の温度
に対応して粗くなることを見いだした。
【0032】図3は2.0mm厚の熱延板を各種温度で表
面酸化物(スケール)付きで0.3mmに圧延した後に、
フッ酸で表面酸化物を除去した後の表面粗度(Ra ,R
max)に及ぼす圧延温度の影響を示す。この図から、圧
延温度が高くなると表面粗度が大きくなり、特に750
℃を超える温度から急激に粗くなることがわかる。この
圧延温度と鋼板表面粗度との関係は、圧延温度下での硬
度変化が表面酸化物と鋼板母材との間で、異なるためと
思われる。
【0033】図4は、表面酸化物を除去した状態と、表
面酸化物の付いた状態との鋼板母材の表面から測定した
高度の温度による変化を示す。750℃までは母材の硬
度は表面酸化物より大きく、750℃を超えると母材の
硬度は表面酸化物と同じ程度に急激に小さくなる。この
ため、750℃程度までは圧延によって表面酸化物が鋼
板母材中に食い込むことはないが、この温度を超えると
母材中に表面酸化物が食い込み、酸洗後の表面粗度が粗
くなったものと考えられる。
【0034】ところで、鋼板表面粗度が大きくなると、
容易に予想できるように鋼板を積層してコアーを作成し
た時に鋼板間に隙間が生じ、実質的な鉄分の割合が急激
に大きくなるまでの、750℃以内の圧延温度を本発明
の必須な構成条件とした。特に、450℃以内である
と、一般的な冷間圧延技術の範囲で略圧延が行えるので
有利である。
【0035】上述のように、150℃以上であれば圧延
破断もなく、スケール破砕もなく圧延可能であり、そし
て750℃以下であればその酸洗後の表面粗度の小さい
ことが明らかになった。しかし、その表面粗度は通常、
#1000程度の砥石で研磨した圧延ロールを用いて圧
延した鋼板表面粗度である1μ以下のRa に比べ大き
い。
【0036】そこで、本発明者らはこの酸洗後の鋼板を
通常の冷間圧延を行い、更に良い占積率を得ることに成
功した。しかも、この圧延時の圧下率をできるだけ小さ
く選ぶこと、すなわち150〜750℃での圧延を最終
板厚近くまですることが、この表面粗度改善のための圧
延時の生産効率アップと圧延の破断防止、更に酸洗時の
板通板の安定性に有効である。これは、板破断のない温
間で薄くまで圧延しておけば、曲げに強いので、室温で
も圧延時の割れが少なく、また酸洗時の板破断がなく、
高速での通板が可能になるためである。
【0037】図5は種々の温度で圧延した鋼板を、酸洗
後に圧下量を変えて#1000の砥石で研磨した圧延ロ
ールを用いて室温で圧延した時の表面粗度(Ra ,R
max )を示した。酸洗前の圧延温度が150℃の場合は
4%、450℃の場合は25%、750℃の場合は58
%の圧下量で圧延を行えば、Ra が1μm以下の平滑な
圧延ロールと同等な表面粗度状態が得られる。750℃
を超えた場合にはその後の冷間圧延を行っても、Rmax
はなかなか下がらず、線状の疵の模様が残存する。
【0038】従って、本発明では圧延ロールの表面の仕
上がり状態に対応した表面が得られ、結果として最高の
占積率が達成できる、酸洗前の圧延温度が150〜75
0℃では4〜58%の圧下率を構成条件とした。
【0039】なお、酸洗後の鋼板は再結晶を目的とした
焼鈍を行うことにより、鋼板を軟らかくしておくと、そ
の後の冷間圧延で表面粗さを平滑にし易い。この焼鈍条
件としては780〜1000℃で、低温度では長時間、
高温度では短時間行う必要がある。
【0040】この時に、酸洗前の圧延温度が高い程、す
なわち、酸洗後の表面粗度が大きくなる程、その後の圧
延で圧下量を大きくする必要がある。圧延温度は鋼板が
薄くなっているので、特に高くする必要はない。傾向と
して温度を上げた程、圧延歩留まりは良くなるが、その
差は僅かである。
【0041】このように表面粗度改善を狙った圧延をし
た後に、800〜1020℃の温度域で焼鈍し、再結晶
と粒成長を行って製品とする。焼鈍時間は温度が低い時
は長く、温度が高い時は短くなり、30秒間〜3時間程
度が採用される。また、通常は表面に絶縁抵抗を持たせ
るために、この焼鈍過程の前、あるいは後に薄い絶縁コ
ーティングが施される。
【0042】
【実施例】
〔実施例1〕Si:6.53%を含有し残部Fe及び不
可避的不純物を含む50kgインゴットを作成し、加熱炉
雰囲気中のO2 濃度を変化させたガス燃焼型のスラブ加
熱炉で均熱温度を種々に変化させた条件下に加熱し、6
00℃以上パス間時間10秒以上の熱間圧延により1.
8mm厚の鋼板とした。この鋼板から幅8cm×長さ12cm
の試料45枚を準備し各5枚ずつについて表面酸化膜を
付けたまま室温,150℃,270℃,300℃,45
0℃の板温で0.23mmまで圧延した。その時のスケー
ル剥離状況とスケール付き圧延時の割れ状況を表2に示
した。
【0043】
【表2】
【0044】加熱炉のO2 温度が3%以下でウスタイト
とファイアライトの共晶温度1100℃以上で溶融相が
でき冷延時の圧延温度が150℃以上のものは、圧延時
のスケール剥離かつ冷延割れもなく安定した圧延が可能
であった。
【0045】〔実施例2〕Si:6.75%を含有し残
部Fe及び不可避的不純物を含む50kgインゴットを作
成し、雰囲気中のO2 濃度2%、1200℃で加熱し1
000℃以上各パス間時間10秒以上の熱間加工により
1.8mm厚の鋼板とした。この鋼板から幅8cm×長さ1
2cmの試料40枚を準備し各5枚ずつについて表面酸化
膜を付けたまま室温−0.509mm、152℃−
0.316mm、152℃−0.325mm、445℃
−0.325mm、445℃−0.409mm、756
℃−0.342mm、756℃−0.615mm、80
0℃−0.615mmの各板厚に圧延した。
【0046】その後、(フッ酸+硫酸)で酸洗しなお、
〜については酸洗減厚を9μm、,は15μm
見込んだ。更に室温(約25℃)で#1000砥石で研
磨した圧延ロールで0.30mm厚まで圧延した。この時
のスケール剥離状況とスケール付き圧延時の冷間圧延割
れ、及び酸洗後の表面粗度と酸洗後の圧延板粗度を表3
に示す。
【0047】板温度が150℃以上であればスケール付
きの圧延時の冷間割れもなく、かつスケール剥離もなく
安定した圧延が可能であった。酸洗後の粗い表面も、本
発明範囲の圧下率で冷延することにより、Ra ,Rmax
も小さく、良好な占積率が得られた。なお800℃でス
ケール付き圧延したものは酸洗後のRmax が大きく、そ
の後の冷間圧延でもなかなか平滑にはならずRmax が大
きかった。
【0048】
【表3】
【0049】
【発明の効果】本発明によれば、極めて脆い超高珪素電
磁鋼板を冷間圧延における材料割れ、処理ラインに通板
する時の曲げ部の割れを惹起するため工業的量産が困難
であった略6.5%Si含有鋼を、熱間圧延条件に厳し
い条件を付けることなく材料破断、割れを生じることな
くスケール付きで冷間圧延可能にするとともに、従来、
電磁鋼板製造のために一般的に用いられている処理ライ
ンで工業的に量産できる。また、得られた製品は占積率
に優れているため磁気特性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【図1】スケール厚さに及ぼす加熱炉内酸素濃度の影響
を示した図である。
【図2】圧延温度とパス間時間で破断しないでコイル作
成可能範囲を示した図である。
【図3】熱延板を表面酸化物(スケール)付きで圧延し
た後に、酸洗した鋼板表面粗度(Ra ,Rmax )に及ぼ
す圧延温度の影響を示す図である。
【図4】熱延板について、表面酸化物を除去した状態と
表面酸化物の付いた状態との鋼板母材の表面から測定し
た硬度の温度での変化を示す図である。
【図5】種々の温度で圧延した鋼板を、酸洗後に圧下を
変えて#1000の砥石で研磨した圧延ロールを用いて
室温で圧延した時の表面粗度(Ra ,Rmax )を示す図
である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%でSi:5.0〜7.1%を含有
    し残部実質的にFe及び不可避的不純物からなる超高珪
    素鋼のインゴットあるいは連続鋳造スラブを、1100
    ℃を超え1200℃以下の温度で加熱し、累積圧下率5
    0%を超えた圧下率でリバース圧延後1100℃を超え
    1200℃以下の温度域で再加熱し熱間圧延する方法に
    おいて、被圧延材料の温度を600℃以上、各パス間時
    間を10秒を超えて圧延し巻取後、表面酸化物(スケー
    ル)が付着したままの状態で板温度150〜750℃の
    温度域で圧延し、次いで表面酸化物を除去し、焼鈍後4
    〜58%の圧下率で酸洗前の圧延温度が高い程高圧下率
    になるような冷間圧延を行い、しかる後に最終焼鈍を施
    すことを特徴とする超高珪素電磁鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 重量%でSi:5.0〜7.1%を含有
    し残部実質的にFe及び不可避的不純物からなる材料の
    スラブ加熱に際し、まず雰囲気中のO2 濃度が3%以下
    の条件下で1100℃を超え1200℃以下の温度域に
    10〜120分加熱することを特徴とする請求項1記載
    の超高珪素電磁鋼板の製造方法。
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