JP3474599B2 - 超高珪素電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
超高珪素電磁鋼板の製造方法Info
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Description
機器の鉄心に用いられる超高珪素電磁鋼板のスラブ加熱
方法に関するもので、特に加熱炉の雰囲気を制御するこ
とにより、表面酸化物(以下スケールという)を改質し
付着したままで圧延を行えるようにし、かつ得られた製
品の占積率と磁性が優れている超高珪素電磁鋼板を安定
して製造する方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】Siを含有する鋼板は優れた軟磁気特性
を有するため、電力用変圧器あるいは回転機の鉄心とし
て用いられている。この種軟磁性材料においては、Si
含有量が増加すると鉄損特性が向上する(鉄損値が低く
なる)。特に、Si含有量が6.5%近傍では鉄損特性
が良好である上に磁歪が零に近づくところから、透磁率
も一段と向上し、従来にない新しい機能をもつ磁性材料
となり得る。最近、省エネルギーを目的として、鉄損値
が低くかつ電気機器の多様な磁気特性上の要求を満足せ
しめ得る新しい材料として、Siを6.5%あるいはそ
の近傍含有する超高珪素電磁鋼板が見直され始めた。 【0003】しかしながら、超高珪素電磁鋼板は極めて
脆いため、工業的に量産する上で多くの問題があり、い
まだ実用されるに至っていない。超高珪素電磁鋼板をス
トリップの状態で処理し工業的量産を行うには、通常の
電磁鋼板製造プロセスのように、熱間圧延板を酸洗によ
ってスケールを除去後冷間圧延することが望ましいが、
超高珪素電磁鋼板は室温での伸びが0.5%程度しかな
く、2.0mm前後の熱延板をライン破断することなく安
定的に酸洗ラインを通板することはかなり難しい。 【0004】また、板温度が150℃以上あれば伸びは
15%程度あるが、酸洗ライン全長にわたり板温度15
0℃に保つことは不可能である。そこでスケールが付着
したままで圧延を行いある程度板厚が薄く(酸洗ライン
が常温で通板できる板厚に)なったところで酸洗を行う
ことが、工業的に量産する上で必須となる。 【0005】従来の知見によれば、例えば特公昭59−
289号公報、特公昭60−40921号公報に開示さ
れているように、表面にスケールが付着したままの熱間
圧延板を直接的に圧延するとスケールが破砕、剥離して
問題となりこれまで工業的量産規模でかかる冷間圧延は
行われていない。 【0006】スケールについて提案された技術として
は、特開昭60−145318号、特開昭61−699
27号、特開昭61−69924号および特開昭62−
130219号各公報に開示の技術がある。これらの技
術はいずれも高温スラブ加熱時の炉内の酸素濃度を低く
することによって酸化減量を少なくすること、あるいは
高温酸化に伴う疵の発生防止を目的としている。 【0007】例えば特開昭60−145318号公報に
は、高温加熱時にはスラブ表面に大量のノロが生成し、
加熱炉の操業性を損なうばかりでなく表面疵発生をもた
らすことから、それを防止する方法として、スラブ表面
温度が1250℃以上において、加熱雰囲気中のO2 濃
度を1%以下にすること、またガス燃焼型炉での加熱温
度の上限を1230℃にすべきことが提案されている。
また、特開昭61−69927号公報では、ノロの大量
発生による炉壁熔損や歩留まり低下、高温加熱中のスラ
ブ表面の粒界酸化によるホットコイル耳割れ、スラブ表
面の脱炭に基因する最終製品の磁性劣化、さらにはスラ
ブ柱状晶の粗大化などの防止を目的として、電気的加熱
炉での加熱は、温度を1310〜1350℃、雰囲気は
非酸化性に限定すること、そして燃料燃焼炉での均熱温
度の上限は1250℃にすべきことが提案されている。 【0008】さらに特公昭61−69924号公報で
は、誘導加熱方式でスラブを高温に加熱した場合スラブ
表面温度が1325℃を超えると熔損が始まるので、1
325℃以上ではO2 濃度を10%以下に制御すべきで
あることを提案している。そしてその実施例には、加熱
温度:1350℃でO2 濃度:10%以下および加熱温
度:1370℃でO2 濃度:1%以下の例が示されてい
る。また、さらに特開昭62−130219号公報で
は、歩留まり低下や加熱炉操業に重大な支障をきたす熔
融状態のスラグの発生を防止するために、雰囲気中のO
2 濃度を次式、O2 (%)=36.4−5.01nT
(℃)以下にすることを提案している。そしてその具体
的な値としては1300℃で0.55%以下、1350
℃で0.36%以下、1400℃で0.18%以下の範
囲が示されているが、これはO2 濃度を下げればこの成
分で熔融スラグが発生しにくくなるという熱力学的事項
を数式化したものである。 【0009】これらの技術は、スラブ加熱時の炉内の酸
素濃度を低くすることによって酸化減少量を少なくする
こと、あるいは高温酸化に伴う疵の発生防止を目的とし
たものであり、加熱炉内の雰囲気制御により、冷間圧延
しても破砕、剥離しないでかつその後の酸洗で除去しや
すいスケールを生成させることを目的としたものではな
い。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、極めて脆い
超高珪素電磁鋼板をスケールが付着したままで冷間圧延
を可能ならしめ、工業的量産を可能ならしめると同時
に、優れた占積率と磁性が得られる製造方法を提供する
ことを目的とするものである。 【0011】 【課題を解決するための手段】本発明の要旨は次の通り
である。 (1)重量比でSi:4.5〜7.1%、残部Feおよ
び不可避的不純物からなる材料を、O 2 濃度が3%以下
の雰囲気中で1100℃を超え1250℃以下の温度域
に10分〜120分加熱して熱間圧延を施した後、表面
酸化物が付着したままの状態で板温度:150℃〜75
0℃の温度域で圧延し、次いで酸洗により表面酸化物を
除去し、焼鈍し、4〜58%の圧下率で酸洗前の圧延に
おける圧延温度が高い程高圧下率になる冷間圧延を行
い、しかる後に再結晶および粒成長のための焼鈍を施す
ことを特徴とする超高珪素電磁鋼板の製造方法。 【0012】以下本発明を詳細に説明する。極めて脆い
超高珪素電磁鋼板を工業的に量産するに際して解決され
ねばならない技術的課題は、スケールが付着したままで
圧延を可能とすることである。そのためには地鉄と密着
性が良くかつ圧延後の酸洗で落ち易いスケール構造とす
ることである。 【0013】通常の電磁鋼板製造プロセスにおいては、
熱間圧延板は酸洗によって表面スケールを除去された後
冷間圧延される。発明者等は、例えば酸洗ラインに安定
してストリップを通板できるようにすべく熱間圧延板を
直接的に冷間圧延することを考えた。そこで、発明者等
は、表面にスケールが付着したままの熱間圧延板を直接
的に圧延してみた。材料(ストリップ)温度をわずか1
50℃程度まで高めることによって、Siを6.5%前
後含有する超高珪素電磁鋼の場合、スケールの破砕、剥
離を全く生じることなく冷間圧延することができた。本
発明者等は、超高珪素電磁鋼板ストリップを150℃〜
450℃の温度域で圧延すると、熱間圧延表面のスケー
ルが全く剥離することなく圧延できるという画期的な現
象を発見した。 【0014】以下、この知見について詳細に説明する。
重量比で、Si:6.5%、C:0.003%、Mn:
0.16%、P:0.005%、S:0.001%、to
tal N:0.0013%、残部:実質的にFeからなる
50kg鋼塊を加熱炉O2 濃度2%、1200℃で加熱し
た後熱間圧延し、10パスで1.8mm厚さとした(Aコ
イル)。比較のため加熱炉O2 濃度15%、1200℃
で加熱した後熱間圧延し10パスで1.8mm厚さに仕上
げた(Bコイル)。 【0015】このA,B2コイルについてスケールが付
着したままで材料温度:1)室温(約23℃)、2)1
50℃、3)270℃、4)440℃で圧延した。この
ときの材料(ストリップ)のスケールの剥離程度を表1
に示す。 【0016】Aコイルは、室温で圧延したものはスケー
ルの破砕、剥離が甚だしく、剥落したスケールが圧延油
を混入したり圧延ロールに付着したりして、圧延材表面
に疵を発生するなどの問題を生じた。しかし、圧延温度
を150℃,270℃,440℃と高めていくと、スケ
ールの破砕、剥離は全くなく、圧延は順調に行われた。 【0017】Bコイルは、室温で圧延したものは、スケ
ールの破砕、剥離が甚だしく、スケール層が厚い分温度
を上げても一部剥離が見られる。このように、加熱炉の
O2濃度を制御することにより材料にスケールが付着し
たままで、スケールを破砕、剥離せしめることなく圧延
することができるという知見は、全く知られておらず新
規な知見である。以上のように通常行われている程度の
温度域の150℃〜450℃で圧延を行えば、スケール
付き状態でもスケール破砕もなく圧延できることがわか
った。 【0018】 【表1】 【0019】Siは、本発明の目的が製品の磁歪が最小
となる略6.5%Si鋼の薄板厚製品を工業的に製造し
得るプロセスの確立にあることに鑑み、Si含有量は
6.5%を中心に若干の上下幅をもつ範囲内であればよ
い。しかして、Si含有量の下限は、従来市販されてい
ない珪素鋼板の範囲である4.5%とし、可及的に6.
5%に近い値が好ましい。 【0020】一方、Si含有量が7.1%を超えると、
材料の加工性が急激に劣化するにも拘らず、得られる製
品の磁気特性はそれ以上は向上しない。上記以外の成分
は、特に限定しない。溶鋼は鋳造され、熱間圧延され
る。鋳造に関して、本発明においては特に限定はなく、
一般的な方法を用いることができる。 【0021】ところで、このように温間圧延で伸びるス
ケール生成および構造について説明する。鉄が高温で酸
素、空気などのガスに接触する際、その表面に反応生成
物の皮膜(スケール)が生成する。まず酸素が鉄表面に
活性化吸着し、鉄表面は正に、酸素は負にイオン化し、
この結果生じる電場の作用により極めて薄い酸化皮膜を
形成する。そこで発明者等は、高温で形成されるスケー
ル構造がどのようになるか調査した。大部分はウスタイ
ト(FeO)となり、そのうえにマグネタイト(Fe3
O4 )、ヘマタイト(Fe2 O3 )の組成となる。ほぼ
600℃よりウスタイトが形成され、スケールの厚さの
大部分がウスタイトである。 【0022】高珪素含有鋼は、700〜900℃の加熱
では、非晶質のSiO2 薄層が、1000℃以上では2
FeO・SiO2 (ファイアライト)が形成され、これ
らが耐酸化保護膜として作用する。Siが6.5%含有
したところでは、1000℃における酸化量は、Siが
含まれないものと比較すると約1/100に減少する。
しかし、ファイアライトとウスタイトの共晶温度110
0℃超の高温では溶融相が生じ、イオンの移動度が極め
て大きくなるため耐酸化性は、甚だしく劣化する。 【0023】さらに、その機械特性を調査した。スケー
ルの機械的性質は、厚さの影響を強く受け、一般的に
は、厚さが薄い方が強固となることが知られている。金
属が酸化物を生成する場合、その酸化物の容積とその酸
化物に含まれる金属原子の容積の比が1に近いほど生じ
る応力は小さくなり、密着性が増すということが知られ
ている。鉄の酸化物の場合には、この比は1以上とな
り、したがって圧縮応力が働いていることが予測され
る。一方、温度変化に起因する熱応力についても、一般
的には、金属とその酸化物の熱膨張係数の比が1に近い
ほど密着性に対して有利になると考えられている。鉄の
スケールではこの比がFe−FeO間では0.84とそ
の条件をかなり満たしている。 【0024】親和力がFeより大きい元素の場合は元素
の方が優先的に酸化を受け、その元素の外方拡散が酸素
の内方拡散より速い場合には選択酸化が、逆の場合に
は、内部酸化が生じる。このような選択酸化、内部酸化
は結晶粒界で生じやすく、そのためSiを多量に含む鋼
においては、サブスケールが粒界にそって深く侵入して
いる組織を呈する。 【0025】このように機械的特性と密着性に及ぼす影
響を整理すると高Si含有鋼は、特にSiは、酸素との
親和力が大きいため選択酸化あるいは内部酸化によっ
て、スケールと素地の界面が複雑に入り組んだ構造とな
り、スケールの密着性が良好となる。さらに高Si含有
鋼においてファイアライトが生成した場合である。ファ
イアライトは低温においては、非常に脆いため、常温に
おける固着力を低下させるが、ウスタイトとの共晶温度
以上の高温で溶融相が生じた場合には極めて剥離しにく
くなる。その理由は、溶融相が機械的な剥離応力を分
散、緩和させるためであると考える。 【0026】そこでこれらの改善条件を明確にするため
の詳細な実験を続け最終的に以下の条件を得た。加熱に
おいてO2 濃度を低くしてスケール厚みを薄くすること
が重要である。O2 濃度に関してはスラブ表面のガス流
速にも依存するが、O2 濃度を変えて、1200℃×3
0分加熱したときのスケール厚さを図1に示す。O2 濃
度が3%以下であるとスケールが極端に薄くなることが
判明した。 【0027】すなわち、圧延が可能となるスケールとす
るためには、1000℃〜1250℃までの加熱で薄い
ファイアライトを生成させることが重要である。そのた
めに加熱炉雰囲気をO2 濃度3%以下とすることを見い
出した。図1に示すようにO2 濃度3%以下とするとス
ケール厚さが極端に薄くなり耐酸化保護膜となることが
わかる。さらにウスタイトとの共晶温度(1100℃)
以上にして溶融相を形成し、剥離しにくいスケールをつ
くることが重要である。 【0028】溶融相が生じるとイオンの移動度が極めて
大きくなるためそのときの加熱炉のO2 濃度を極力低減
することが望ましい。この発明では、スラブの加熱にお
いては、誘導加熱炉や電気抵抗炉などの電気的加熱炉で
行うのが好ましい。通常誘導加熱炉や電気抵抗炉などの
電気的加熱炉の雰囲気は、O2 濃度0.3%以下となっ
ている。すなわちO2 濃度を低める理由は、前掲図1に
も示したとおり、1100℃以上に加熱したときの酸素
濃度が高くなるとスケール層が厚くなり、スケールが付
着したままでの圧延がしにくくなるためである。 【0029】スラブの最終的な中心加熱温度は、110
0℃を超え1250℃以下である。加熱温度が1100
℃未満では、熱間圧延が不可能となる。一方加熱温度が
1250℃を超えると材料に過大な粒成長を生じる。ま
た、均熱時間については、ファイアライトの生成に必要
な下限が10分であり、長すぎるとファイアライトが厚
くなりすぎて密着性が劣化するので上限を120分と規
定した。 【0030】次に酸洗性であるが、一般熱延鋼板の酸洗
液は、硫酸に代わって塩酸が主に用いられている。これ
は、塩酸の方が硫酸に比べて約1.5倍の酸洗能力があ
り、また酸洗仕上げ面がきれいであるなどの利点がある
ためである。ファイアライトは、成瀬,杉村:窯業協会
誌,61(1953),P.247にあるように塩酸に
溶けやすいことが明記されており、超高珪素鋼板ででき
たスケールは、ファイアライトであるため容易に塩酸酸
洗ができ、板厚が薄くなったところで通常酸洗ラインを
通板することが可能である。 【0031】ところで、このスケールの厚みであるが、
2,3mm厚の熱延板で25μm超であり、0.3mm厚の
製品にすると3.3μmにもなる。このままで絶縁性確
保の点からは特に問題ではないが、磁気特性の点からは
問題である。すなわち、鋼板を積層してコアーとなした
場合に実質的に磁束の通る鉄分の割合(占積率)が減少
し、磁気特性として問題である。 【0032】そこで、このスケールを除去し、その後に
塗布量を制御した薄い絶縁被膜を塗布することが占積率
を上げ、磁性を向上させるために有効である。スケール
を除去する方法として酸洗法が一般的であり、本発明で
もこの酸洗法を採用することができる。そこで、スケー
ル付き冷間圧延した後に、酸洗を行ったところ、その表
面粗度が冷間圧延時の温度に対応して粗くなることを見
い出した。 【0033】図2は2.0mm厚の熱延板を各種温度でス
ケール付きで0.3mmに圧延した後に、フッ酸でスケー
ルを除去した後の表面粗度(Ra ,Rmax )に及ぼす圧
延温度の影響を示す。この図から、酸洗前の圧延におけ
る圧延温度が高くなると表面粗度が大きくなり、特に7
50℃を超える温度から急激に粗くなることが分かる。
この圧延温度と鋼板表面粗度との関係は、圧延温度下で
の硬度変化がスケールと鋼板母材との間で異なるためと
思われる。 【0034】図3は、スケールを除去した状態と、スケ
ールの付いた状態との鋼板母材の表面から測定した硬度
の温度による変化を示す。750℃までは母材の硬度は
スケールより大きく、750℃を超えると母材の硬度は
スケールと同じ程度に急激に小さくなる。このため、7
50℃程度までは圧延によってスケールが鋼板母材中に
食い込むことはないが、この温度を超えると母材中にス
ケールが食い込み、酸洗後の表面粗度が粗くなったもの
と考えられる。 【0035】ところで、鋼板表面粗度が大きくなると、
容易に予想できるように鋼板を積層してコアーを作成し
た時に鋼板間に隙間が生じ、実質的な鉄分の割合が急激
に大きくなるまでの、750℃以内の圧延温度を本発明
の必須な構成条件とした。特に、450℃以内である
と、一般的な冷間圧延技術の範囲で略圧延が行えるので
有利である。 【0036】上述のように、150℃以上であれば圧延
破断もなく、スケール破砕もなく圧延可能であり、そし
て750℃以下であればその酸洗後の表面粗度の小さい
ことが明らかになった。しかし、その表面粗度は通常、
#1000程度の砥石で研磨した圧延ロールを用いて圧
延した鋼板表面粗度である1μ以下のRa に比べ大き
い。 【0037】そこで、本発明者等はこの酸洗後の鋼板を
通常の冷間圧延を行い、さらに良い占積率を得ることに
成功した。しかも、この圧延時の圧下率をできるだけ小
さく選ぶこと、すなわち150℃〜750℃での圧延を
最終板厚近くまですることが、この表面粗度改善のため
の圧延時の生産効率アップと圧延の破断防止、さらに酸
洗時の板通板の安定性に有効である。これは、板破断の
ない温間で薄くまで圧延しておけば、曲げに強いので、
室温でも圧延時の割れが少なく、また酸洗時の板破断が
なく、高速での通板が可能になるためである。 【0038】図4は種々の温度で圧延した鋼板を、酸洗
後に圧下量を変えて#1000の砥石で研磨した圧延ロ
ールを用いて室温で圧延した時の表面粗度(Ra ,R
max )を示した。酸洗前の圧延における圧延温度が15
0℃の場合は4%、450℃の場合は25%、750℃
の場合は58%の圧下量で圧延を行えば、Ra が1μm
以下の平滑な圧延ロールと同等な表面粗度状態が得られ
る。750℃を超えた場合にはその後の冷間圧延を行っ
ても、Rmax は中々下がらず、線状の疵の模様が残存す
る。 【0039】したがって、本発明では圧延ロールの表面
の仕上がり状態に対応した表面が得られ、結果として最
高の占積率が達成できる、酸洗前の圧延における圧延温
度が150℃〜750℃では4〜58%の圧下率を構成
条件とした。なお、酸洗後の鋼板は再結晶を目的とした
焼鈍を行うことにより、鋼板を軟かくしておくと、その
後の冷間圧延で表面粗さを平滑にし易い。この焼鈍条件
としては780℃〜1000℃で、低温度では長時間、
高温度では短時間行う必要がある。 【0040】この時に、酸洗前の圧延における圧延温度
が高い程、すなわち、酸洗後の表面粗度が大きくなる
程、その後の圧延で圧下量を大きくする必要がある。圧
延温度は鋼板が薄くなっているので、特に高くする必要
はない。傾向として温度を上げた程、圧延歩留まりは良
くなるが、その差は僅かである。このように表面粗度改
善を狙った圧延をした後に、800℃〜1020℃の温
度域で焼鈍し、再結晶と粒成長を行って製品とする。焼
鈍時間は温度が低い時は長く、温度が高い時は短くな
り、30秒間〜3時間程度が採用される。また、通常は
表面に絶縁抵抗を持たせるために、この焼鈍過程の前、
あるいは後に薄い絶縁コーティングが施される。 【0041】 【実施例】(実施例1) C:0.004%、Si:6.53%、Mn:0.19
%、S:0.001%、N:0.0017%を含有し残
部Feおよび不可避的不純物を含む50kgインゴットを
作成し、雰囲気中のO2 濃度を変化させたガス燃焼型の
スラブ加熱炉で均熱温度を種々に変化させた条件下に加
熱し、10パスの熱間圧延により1.8mm厚の鋼板とし
た。この鋼板から幅8cm×長さ12cm、45枚を準備し
各5枚ずつについてスケールを付けたまま室温,150
℃,270℃,300℃,450℃の板温で0.5mmま
で圧延した。そのときのスケール剥離状況とスケール付
き圧延時の割れ状況を表2に示した。 【0042】加熱炉のO2 濃度が3%以下とウスタイト
とファイアライトの共晶温度1100℃超で溶融相がで
き冷延時の圧延温度が150℃以上のものは、圧延時の
スケール剥離かつ冷延割れもなく安定した圧延が可能で
あった。 【0043】 【表2】【0044】(実施例2) C:0.004%、Si:6.53%、Mn:0.13
%、S:0.001%、N:0.0017%を含有し残
部Feおよび不可避的不純物を含む50kgインゴットを
作成し、雰囲気中のO2 濃度2%,1200℃で加熱し
10パスの熱間加工により1.8mm厚の鋼板とした。こ
の鋼板から幅8cm×長さ12cm、40枚を準備し各5枚
ずつについてスケールを付けたまま室温−0.309
mm、150℃−0.316mm、150℃−0.32
5mm、440℃−0.325mm、440℃−0.4
09mm、750℃−0.342mm、750℃−0.
615mm、800℃−0.615mmの板厚で、各板厚
に圧延した。 【0045】そのときのスケール剥離状況とスケール付
き圧延時の割れ状況を表3に示した。なお、〜につ
いては酸洗減厚を9μm、,は15μm見込んだ。
その後、(フッ酸+硫酸)で酸洗し、さらに室温(約2
5℃)で#1000砥石で研磨した圧延ロールで0.3
0mm厚まで圧延した。このときのスケール剥離状況とス
ケール付き圧延時の冷間圧延割れ、および酸洗後の表面
粗度と酸洗後の圧延板粗度を表3に示した。 【0046】板温度が150℃以上であればスケール付
き圧延時の冷間割れもなく、かつスケール剥離もなく安
定した圧延が可能であった。酸洗後の粗い表面も、本発
明範囲の圧下率で冷延することにより、Ra ,Rmax も
小さく、良好な占積率が得られた。なお800℃でスケ
ール付き圧延したものは酸洗後のRmax が大きく、その
後の冷間圧延でもなかなか平滑にはならずRmax が大き
かった。 【0047】 【表3】【0048】 【発明の効果】本発明によれば、極めて脆い超高珪素電
磁鋼板を冷間圧延における材料割れ、処理ラインに通板
するときの曲げ部の割れを惹起するため工業的量産が困
難であった略6.5%Si含有鋼を、熱間圧延条件に厳
しい条件を付けることなく材料破断、割れを生じること
なくスケール付きで冷間圧延可能にするとともに、従
来、電磁鋼板製造のために一般的に用いられている処理
ラインで工業的に量産できる。また、得られた製品は占
積率に優れているため磁気特性が良好である。
を示した図表である。 【図2】熱延板をスケール付きで圧延した後に、酸洗し
た鋼板表面粗度(Ra ,Rmax)に及ぼす圧延温度の影
響を示す図表である。 【図3】熱延板について、スケールを除去した状態をス
ケールの付いた状態との鋼板母材の表面から測定した硬
度の温度での変化を示す図表である。 【図4】種々の温度で圧延した鋼板を、酸洗後に圧下を
変えて#1000の砥石で研磨した圧延ロールを用いて
室温で圧延したときの表面粗度(Ra ,Rmax )を示す
図表である。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 重量比でSi:4.5〜7.1%、残部
Feおよび不可避的不純物からなる材料を、O 2 濃度が
3%以下の雰囲気中で1100℃を超え1250℃以下
の温度域に10分〜120分加熱して熱間圧延を施した
後、表面酸化物が付着したままの状態で板温度:150
℃〜750℃の温度域で圧延し、次いで酸洗により表面
酸化物を除去し、焼鈍し、4〜58%の圧下率で酸洗前
の圧延における圧延温度が高い程高圧下率になる冷間圧
延を行い、しかる後に再結晶および粒成長のための焼鈍
を施すことを特徴とする超高珪素電磁鋼板の製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP08094993A JP3474599B2 (ja) | 1993-04-07 | 1993-04-07 | 超高珪素電磁鋼板の製造方法 |
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JP08094993A JP3474599B2 (ja) | 1993-04-07 | 1993-04-07 | 超高珪素電磁鋼板の製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH06293921A JPH06293921A (ja) | 1994-10-21 |
JP3474599B2 true JP3474599B2 (ja) | 2003-12-08 |
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---|---|---|---|---|
JP6593097B2 (ja) * | 2015-10-27 | 2019-10-23 | 日本製鉄株式会社 | 無方向性電磁鋼板およびその製造方法 |
-
1993
- 1993-04-07 JP JP08094993A patent/JP3474599B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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JPH06293921A (ja) | 1994-10-21 |
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