JP3546114B2 - 磁束密度が高い方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

磁束密度が高い方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気機器の鉄心材料として用いられる、磁束密度が高い方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性電磁鋼板は二次再結晶により鋼板の結晶粒を特定方位に高度に配向させた成品であり、圧延面に{110}面、圧延方向に<100>軸を有するゴス方位を持つ結晶粒により構成されている。
【0003】
方向性電磁鋼板は軟磁性材料として主にトランスその他の電気機器の鉄心材料に使用されるもので、近年省エネルギー、省資源への社会的要求がますます厳しくなっていることから、一方向性電磁鋼板の鉄損低減、磁化特性改善への要求も厳しくなってきている。このため磁気特性、特に良好な励磁特性と鉄損特性が求められるようになってきている。
【0004】
方向性電磁鋼板の励磁特性を示す指標としては、通常磁束密度B8(磁場の強さ800A/mにおける磁束密度)が用いられている。また鉄損特性を示す指標としては、W17/50(50Hzで1.7Tまで磁化させたときの単位重量あたりの鉄損)等が用いられている。
【0005】
鉄損は渦電流損とヒステリシス損からなり、渦電流損は鋼板の電気抵抗率、板厚、結晶粒度、磁区の形態、鋼板表面の皮膜張力等の因子により支配されている。一方、ヒステリシス損は磁束密度を支配する鋼板の結晶方位、純度、内部歪等により支配される。
【0006】
これらの因子を制御することによる鉄損低減の試みとして、鋼板の電気抵抗を大きくするためにSi含有量を高めることが行われてきたが、Si含有量を高めると二次再結晶が不安定になるという問題とともに、製造工程および製品での加工性が劣化するため限界にきているのが現状である。
【0007】
一方、鋼板の純度、内部歪については製造工程において検討が重ねられてきており、これらの低減による鉄損の低減については限界近くにまで到達している。板厚を薄くして渦電流損を低減させる試みもなされてきているが、製造の立場からは薄手化に伴い二次再結晶の制御が困難になる問題点があり、需要家サイドでは変圧器製造時のコストが増加するため、鉄損値が同等であれば厚手の材料が好まれて使用されている。
【0008】
特開昭57−9419号公報には、鉄損低減の手段としては二次再結晶粒径を小さくすることも有効であることが記載されている。しかしながら、二次再結晶粒径を小さくすると、その方位集積度が低下して高磁束密度を得にくいという問題点があった。
【0009】
皮膜張力の効果と方向性電磁鋼板の磁束密度の間には、J.Appl.Phys.,vol.41,no.7,p2981−2984(1970)に指摘されているように、磁束密度B8の値が高いほどその鉄損低減効果が大きいことが知られている。また磁区細分化による鉄損低減法は特開昭58−5968号公報、特開昭58−26405号公報に記載されているが、磁区細分化処理前のプレーン材の磁束密度が高いほどその効果が大きいことが知られている。
【0010】
このように鉄損を低減させる試みとしては、その影響因子である電気抵抗率、板厚、結晶粒度、純度、内部歪等の改善が従来技術において限界に近づいてきていることから、二次再結晶方位の集積度を向上させ、磁束密度を高めることにより、皮膜張力の効果、磁区細分化の効果を一層向上させることで鉄損を低減することが重要となってきている。
【0011】
二次再結晶を安定して発現させるとともにその方位集積度を高め、磁束密度を向上させる因子として、インヒビターの役割が重要である。この目的のため、従来はMnS、AlN、MnSe等がインヒビターとして用いられてきている。
【0012】
従来の方向性電磁鋼板の製造方法は、二次再結晶方位制御に用いられるインヒビターの種類により大きく3種類に大別される。
【0013】
まず第一に、M.F.Littmannにより特公昭30−3651号公報に開示されている方法はインヒビターにMnSを用い、二回冷延法で製造する方法である。次に、特公昭40−15644号公報に田口、坂倉らにより開示された、MnSに加えてAlNをインヒビターとする製造方法により、方向性電磁鋼板の磁束密度は1.870T以上に向上し、磁気特性の改善による省エネルギーに多大な貢献を果たした。第三に、特公昭51−13469号公報に今中等により開示されたMnSとSbもしくはMnS、MnSeとSbを用い、二回冷延法により製造する方法がある。
【0014】
これらの従来の製造方法においては、良好な磁束密度を得るためにはインヒビターの析出制御を目的として、高温スラブ加熱により一旦インヒビターを構成する析出物を溶体化し、これを熱延工程であるいは特公昭46−23820号公報に開示されているように熱延板焼鈍時に微細に析出させることが必要である。このように従来法では製鋼段階での成分調整と熱延の段階でほぼ製品の特性が決定されるため、上工程での材質造り込みの安定性確立が重要な課題であった。
【0015】
この目的のために、方向性電磁鋼板の熱延工程においては析出物制御をより安定的に行う観点から、粗圧延後のシートバーへの保熱カバー使用、ランアウトテーブル上での冷却制御等の対策により、コイル長手方向の析出物制御に多大の努力が払われてきた。しかしながら、依然として方向性電磁鋼板の熱延条件の変動が成品の磁気特性に与える影響は大きく、熱延条件の安定性の点で課題を残していた。
【0016】
さらに昨今の省エネルギーに対する市場の要請には厳しいものがあり、エネルギー消費量を節約し、環境改善に役立てるために、鉄心として使用される電磁鋼板に対しては磁束密度の向上、鉄損の低減の要求が増してきている。
【0017】
回転機等に使用される電磁鋼板と異なり、トランス等の用途で使用される方向性電磁鋼板は常に通電した状態で使用されるため、稼働率からみた損失低減の重要性は非常に重大である。このためその磁気特性改善による省エネルギー効果は非常に大きいものがあり、需要家がコストアップを出来るだけ押さえながら鉄心を高効率化するため、より磁束密度の高い成品の供給が求められていた。
【0018】
本発明者はこの様な方向性電磁鋼板の熱延条件の成品の磁気特性に対する影響を緩和し、安定的に方向性電磁鋼板を製造しうる技術を開発するとともに、昨今の省エネルギーに対する需要家の厳しい要請に応えるために、従来技術による改良では行き詰まり状態にある低鉄損到達技術の限界を打破するため、仕上熱延技術に注目して検討を重ねた。
【0019】
方向性電磁鋼板の仕上熱延においては、自動車の外板等のプレス成型や缶等の深絞り成形を行う薄鋼板に比べて、高い成品板厚の精度が要求される。なぜなら、方向性電磁鋼板は鉄心として積層して使用に供されるため、成品板厚のわずかな偏差が鉄心としての寸法精度に大きな影響を及ぼすからである。このため成品の板厚精度には厳しい管理が要求され、この目的のために冷延のみならず熱延板においても厳しい板厚管理を行っている。そのため、仕上熱延最終パス付近では形状調整のために圧下率を下げて軽圧下とし、その歪み速度も小さいのが通常であり、磁気特性向上の観点から仕上熱延の条件を検討する試みは従来ほとんどなされなかった。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような昨今の市場の要請に応え、従来技術における方向性電磁鋼板製造上の熱延条件に対する成品磁気特性の安定性の問題を解決しつつ、さらに磁束密度が高い方向性電磁鋼板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明は、鋼中に重量%で
0.035 %≦ C ≦0.10 %、
2.5 %≦ Si ≦4.5 %、
0.010 %≦ S ≦0.040 %、
0.010 %≦sol−Al≦0.050 %、
0.0030%≦ N ≦0.0150%、
0.020 %≦ Mn ≦0.40 %
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるスラブを、1280℃以上の温度に加熱した後熱延し、冷間圧延前に熱延板焼鈍を施し冷却し、1回または中間焼鈍をはさむ2回以上の圧延で最終圧延率80%以上とし、次いで脱炭焼鈍し焼鈍分離材を塗布し、仕上焼鈍により二次再結晶および純化を行う方向性電磁鋼板の製造方法において、仕上熱間圧延時に、最終パスもしくは最終2パスを歪み速度150s-1 以上でかつ最終2スタンド間の張力が1.5kgf/mm2 以上で仕上熱延を実施することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法である。この際、粗圧延したシートバーを仕上熱延前に先行するシートバーに接合し、当該シートバーを連続して仕上熱延に供することが好ましい。
【0022】
発明者は、インヒビター制御技術以外の製造上の検討課題として、熱延条件を制御する熱延板の造り込みによる磁束密度の高い方向性電磁鋼板の製造方法について検討した。方向性電磁鋼板は前述の通り冷延のみならず熱延板においても厳しい板厚管理が要求されているため、熱延最終パス付近では形状調整のために圧下率を下げて軽圧下とし、その歪み速度も小さいのが通常であった。発明者は従来技術のこのような操業条件について見直しを行った結果、仕上熱間圧延時に、圧延パスの最終側において、歪み速度を注意深く制御しつつ、かつそのスタンド間の張力をも制御することにより、成品における磁束密度が高く鉄損の低い方向性電磁鋼板を製造することが可能であることを見出し、発明に至った。
【0023】
また、操業上の観点からは、本発明のような張力負荷下での高速圧延を安定して実施するために、粗圧延後のシートバーを先行するシートバーに接合し、2本以上のシートバーを連続して仕上熱延に供することが有効であることも見出した。
【0024】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0025】
まず、成分について説明する。
【0026】
Si含有量は電磁鋼板の固有抵抗を介して鉄損特性を大きく左右するが、2.5%未満では固有抵抗が小さく渦電流損が増大する。また、4.5%超では加工性が劣化するので製造、製品加工が困難になる。従って、Si含有量は2.5%以上4.5%以下とする。
【0027】
C含有量が0.035%未満になると二次再結晶が不安定となり、磁束密度が著しく低下するので0.035%以上とする。一方、0.10%を超えると脱炭焼鈍に要する時間が長くなりすぎ、不経済であるので0.10%以下とする。
【0028】
S含有量が0.010%未満であるとインヒビター析出量が不足し、二次再結晶が不安定となるので0.010%以上とする。一方、0.040%超となると析出物が過度に粗大化してインヒビター効果が損なわれ、磁束密度が低下するので、0.040%以下とする。
【0029】
sol.AlはNと化合してインヒビターであるAlNを形成する。含有量が0.010%未満であるとインヒビター析出量が不足し、二次再結晶が不安定となるので0.010%以上とする。一方、0.050%超となると析出状態が粗大化し、インヒビター効果が損なわれ磁束密度が低下するので、0.050%以下とする。
【0030】
Nは0.0030%以上0.0150%以下にする必要がある。0.0150%を超えるとブリスターと呼ばれる鋼板表面の膨れが発生するとともに、一次再結晶組織の調整が困難となるので0.0150%以下とする。一方、0.0030%未満であると二次再結晶の発現が困難になるので、N含有量は0.0030%以上とする。
【0031】
Mn含有量が0.40%を超えると成品の磁束密度が低下し、一方0.020%未満であると二次再結晶が不安定となるので、Mn含有量は0.020%以上0.40%以下とする。
【0032】
なお、二次再結晶の安定化その他の目的のために微量のSn、Cu、P、Tiを鋼中に含有させることは本発明の効果を何ら損なうものではない。
【0033】
次に、以上の成分のスラブの処理について説明する。
【0034】
電磁鋼スラブは、転炉または電気炉等の溶解炉で鋼を溶製し、必要に応じて真空脱ガス処理し、次いで連続鋳造により、あるいは造塊後分塊圧延することによって得られる。
【0035】
その後、熱間圧延に先立ちスラブ加熱が行われる。本発明においては、スラブの加熱温度は1280℃以上として主要インヒビターであるMnS、AlNを鋼中に再固溶させることが肝要である。このスラブを熱延して所定の厚みの熱延板とする。
【0036】
仕上熱延の条件と成品磁束密度との関係について、実験結果に基づき説明する。
【0037】
仕上熱延時の最終パスの歪み速度と最終2パスのスタンド間張力の成品磁気特性に対する影響を調査するため下記の様な実験を行った。
【0038】
C:0.079%、Si:3.24%、Mn:0.09%、S:0.023%、sol−Al:0.028%、N:0.0088%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる電磁鋼スラブを1340℃に加熱後、粗圧延機により75mm厚のシートバーとした。その後、このシートバーを仕上圧延機により2.3mm厚みの熱延板とした。仕上熱延時の最終パスの歪み速度と最終2パスのスタンド間張力を変えるため、パススケジュールを変更して試験を行った。
【0039】
得られた熱延板に1100℃×2分半の熱延板焼鈍を施し、100℃の湯中で冷却し、その後酸洗し0.30mmまで冷延し、次いで830℃120秒の脱炭焼鈍を実施した。その後MgOを主成分とする焼鈍分離材を塗布し、1200℃×20時間の仕上焼鈍を行った。
【0040】
最終2スタンド間の張力を3.1kgf/mm に保って仕上熱延を行った場合の最終パスの歪み速度に対する成品磁束密度の依存性を図1に示す。図1によれば、歪み速度150s−1以上で成品磁束密度B8が上昇することがわかる。
【0041】
なお、歪み速度の計算は下記の式数1によって行う。ここで、rは{圧下率(%)/100}、nはロールの回転数(rpm)、Rは圧延ロール半径(mm)、H0は圧延前の板厚( mm) である。
【0042】
【数1】
歪み速度=(2πn/(60r0.5 ))(R/H0)0.5 ln(1/(1−r))
【0043】
最終パスの歪み速度を320sー1に保って仕上熱延を実施した場合の最終2スタンド間の張力と成品磁束密度の関係を図2に示す。図2に示されるとおり、仕上熱延の最終2スタンド間の張力が1.5kgf/mm 以上で成品磁束密度が上昇する。
【0044】
このように発明者は、最終パスの歪み速度と最終2パスのスタンド間張力を適切な条件に設定することにより、方向性電磁鋼板の磁気特性を向上する手段を開発することに成功した。
【0045】
以上の実験から示されるように、仕上熱延の最終パスの歪み速度は150s−1以上で、最終2パスのスタンド間張力が1.5kgf/mm 以上であればよい。これらの値の上限は特に設けない。これは、熱延機の設備能力および下工程での通板性から、歪み速度の上限は自ずから決まるからである。すなわち、歪み速度は圧延速度、熱延ロール径、圧下量により決まるが、圧延速度、圧下量は熱延機の能力および後工程ラインの熱延板厚に対する制約からその上限が自ずから決まり、この観点からは400s−1程度が限界である。
【0046】
一方、最終の2スタンド間張力についても鋼板を圧下するのに必要な圧延反力と摩擦係数から、通板可能なスタンド間張力が自ずからきまる。
【0047】
本発明のように仕上熱間圧延を高速かつ張力を負荷した状態で行う場合、仕上熱延中にロールと鋼板の間にスリップが生じ、圧延ロールの寿命を著しく縮めるとともに、鋼板表層に深い圧延疵を生じさせる場合がある。この様な問題点を解決し、安定的に操業を行う方法として、粗圧延後のシートバーを仕上熱間圧延前に先行するシートバーに接合し、当該シートバーを連続して仕上熱間圧延に供することが特に有効である。
【0048】
熱延以降の行程については、析出物制御を目的として熱延板焼鈍を行っても良い。酸洗後、高いB8を得るために80%以上の高圧延率の冷延によって最終板厚にするのが好ましい。特性はやや劣るものの、コスト低減のために熱延板焼鈍を省略してもよい。最終製品の結晶粒径を小さくして鉄損を低減するために中間焼鈍を含む2回以上の圧延で最終板厚としてもよい。
【0049】
次に湿水素あるいは湿水素、窒素混合雰囲気ガス中で脱炭焼鈍をする。このときの温度は特に本発明では定めないが、800℃から900℃が好ましい。
【0050】
次いで焼鈍分離材を塗布して仕上焼鈍を行い、二次再結晶および引き続く純化を行う。このため焼鈍温度は通常1100℃から1200℃の高温とする。二次再結晶完了後の純化焼鈍は水素雰囲気中で実施する。
【0051】
【実施例1】
表1の成分を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる電磁鋼スラブを1320℃に加熱後、粗圧延機により70mm厚のシートバーとした。その後、このシートバーを仕上圧延機により2.1mm厚みの熱延板とした。この際、スタンド間の張力制御を容易にするため、シートバーを先行するシートバーに接合して連続して仕上熱間圧延を行った。仕上熱延最終2スタンド間の張力は2.8kgf/mm から3.1kgf/mm に保って圧延を行った。
【0052】
【表1】
Figure 0003546114
【0053】
得られた熱延板に1100℃×2分の熱延板焼鈍を施し、100℃の湯中で冷却し、その後酸洗し0.23mmまで冷延し、次いで830℃90秒の脱炭焼鈍を露点50℃の湿水素、窒素雰囲気中で実施した。その後MgOにTiO を混入した焼鈍分離材を塗布し、1200℃×20時間の仕上焼鈍を行った。
【0054】
仕上熱延時の最終スタンドでの歪速度と仕上焼鈍後の磁気特性との関係を表2に示す。表2より、仕上熱延時の最終スタンドの歪み速度を150s−1以上に高めれば、磁束密度の値が高く、鉄損値の低い磁気特性の優れた方向性電磁鋼板を得ることが可能である。
【0055】
【表2】
Figure 0003546114
【0056】
【実施例2】
表3の成分を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる電磁鋼スラブを1330℃に加熱後、粗圧延機により75mm厚のシートバーとした。その後、このシートバーを仕上圧延機により2.3mm厚みの熱延板とした。その際、仕上熱延最終パスの歪み速度が150s−1以上となるように噛み込み時から注意深く圧延速度、パススケジュールを制御し、コイル全長にわたり最終パスの歪み速度を250〜270s−1にした。また、仕上熱間圧延時に鋼板とワークロール間にスリップが生じて鋼板の表面に疵が形成されることを防止するために、粗圧延後のシートバーを先行するシートバーに溶接し、仕上熱間圧延を連続して行った。
【0057】
【表3】
Figure 0003546114
【0058】
得られた熱延板に1100℃×2分半の熱延板焼鈍を施し、100℃の湯中で冷却し、その後酸洗し0.30mmまで冷延し、次いで830℃120秒の脱炭焼鈍を露点50℃の湿水素、窒素雰囲気中で実施した。その後MgOにTiO を混入した焼鈍分離材を塗布し、1200℃×20時間の仕上焼鈍を行った。表4に本発明と比較例の磁気測定結果をあわせて示す。
【0059】
【表4】
Figure 0003546114
【0060】
このように仕上熱延時の最終2スタンド間の張力を1.5kgf/mm 以上に高めれば、磁束密度の値が高く、鉄損値の低い磁気特性の優れた方向性電磁鋼板を得ることが可能である。
【0061】
【実施例3】
表5の成分を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる電磁鋼スラブを1340℃に加熱後、粗圧延機により70mm厚のシートバーとした。その後、このシートバーを仕上圧延機により2.1mm厚みの熱延板とした。仕上熱延最終2スタンド間の張力は2.7kgf/mm から3.0kgf/mm に保って圧延を行った。
【0062】
【表5】
Figure 0003546114
【0063】
得られた熱延板に1100℃×2分の熱延板焼鈍を施し、100℃の湯中で冷却し、その後酸洗し0.23mmまで冷延し、次いで830℃90秒の脱炭焼鈍を露点50℃の湿水素、窒素雰囲気中で実施した。その後MgOにTiO を混入した焼鈍分離材を塗布し、1200℃×20時間の仕上焼鈍を行った。表6に本発明と比較例の成分と磁気測定結果をあわせて示す。
【0064】
【表6】
Figure 0003546114
【0065】
このように仕上熱延時の最終スタンドの歪み速度を150s−1以上に高めれば、磁束密度の値が高く、鉄損値の低い磁気特性の優れた方向性電磁鋼板を得ることが可能である。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、磁束密度が高く磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】仕上熱延時の最終スタンドの歪み速度と成品磁束密度の関係を示す図である。
【図2】仕上熱延時の最終2スタンド間張力と成品磁束密度の関係を示す図である。

Claims (2)

  1. 鋼中に重量%で
    0.035 %≦ C ≦0.10 %、
    2.5 %≦ Si ≦4.5 %、
    0.010 %≦ S ≦0.040 %、
    0.010 %≦sol−Al≦0.050 %、
    0.0030%≦ N ≦0.0150%、
    0.020 %≦ Mn ≦0.40 %
    を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるスラブを、1280℃以上の温度に加熱した後熱延し、冷間圧延前に熱延板焼鈍を施し冷却し、1回または中間焼鈍をはさむ2回以上の圧延で最終圧延率80%以上とし、次いで脱炭焼鈍し焼鈍分離材を塗布し、仕上焼鈍により二次再結晶および純化を行う方向性電磁鋼板の製造方法において、
    仕上熱間圧延時に、最終パスもしくは最終2パスを歪み速度150s-1 以上でかつ最終2スタンド間の張力が1.5kgf/mm2 以上で仕上熱延を実施することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 粗圧延したシートバーを仕上熱延前に先行するシートバーに接合し、当該シートバーを連続して仕上熱延に供することを特徴とする請求項1記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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