JPH07246364A - 無機・有機融合体被覆鋼板およびその製造方法 - Google Patents

無機・有機融合体被覆鋼板およびその製造方法

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JPH07246364A JP6444094A JP6444094A JPH07246364A JP H07246364 A JPH07246364 A JP H07246364A JP 6444094 A JP6444094 A JP 6444094A JP 6444094 A JP6444094 A JP 6444094A JP H07246364 A JPH07246364 A JP H07246364A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 加工性に優れかつ高硬度の被覆を施した耐熱
性鋼板を得る。 【構成】 アルコキシドもしくはアルコキシド誘導体ま
たは加水分解したアルコキシドもしくはアルコキシド誘
導体にジアルキルジアルコキシシランを加える。加水分
解した溶液に無機粒子を分散し、溶液を鋼板に塗布して
100〜600℃で熱処理する。有機成分となるジアル
キルジアルコキシシランAと無機成分となるアルコキシ
ド、アルコキシド誘導体Bとの割合はA/Bのモル比で
8.0〜0.1の範囲とするのが好ましい。これによ
り、M−O−M結合(Mは金属、半金属原子)から成る
無機ポリマーの骨格を−O−Si(R)2−O−基(R
はアルキル基)で置換した無機・有機融合体中に無機粒
子を5〜95体積%の割合で分散した膜を被覆した鋼板
を得る。 【効果】 従来ポストコートされていた用途にも使用で
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、可撓性(加工性)を有
しかつ高硬度の被覆を施した耐熱性鋼板およびその製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鋼板は塗装されて使用されるのが一般的
である。塗装を行う目的は、大きくは素地の鋼板を保護
すると同時に耐久力を増加し、これを美化することであ
る。塗装された鋼板は、建築物、船舶、橋梁等の大きな
ものから各種機械・自動車、家具、電気製品の小物や生
活用品まで使用されている。
【0003】これら鋼板の塗装は、一般にポストコート
といって加工・組立後に行われている。しかしながら、
近年、特に家電分野などでは既に塗装されているプレコ
ート鋼板をそのまま加工・組立する方式に移行しつつあ
る。プレコート鋼板には、従来の防食等の機能に加えて
加工性が要求される。そして、前記機能を満たすため
に、ポリエステル系樹脂等の有機高分子が塗料として使
用されている。
【0004】一方、耐熱性、耐食性等に優れた被覆とし
ては、鋼板にガラスを被覆した琺瑯がある。琺瑯は、所
望の形状に鋼板を加工した後ガラスをコーティングする
ポストコートで製造されている。
【0005】プレコート鋼板は加工・組立ラインから塗
装工程を省略できるため、現在ポストコートに頼ってい
る例えば、高硬度、高耐熱性等の分野にもプレコート化
が要求されるようになってきた。しかしながら、従来の
プレコート鋼板は基本的には有機高分子で塗装されてい
るために、表面硬度、耐熱性等には限界があった。これ
に対して、ガラスやセラミックスをコーティングして鋼
板の表面硬度、耐熱性を向上させることは可能である
が、加工性が損なわれ、プレコート鋼板としては使用で
きない。例えばガラスを鋼板に被覆した琺瑯は加工出来
ず、もし折り曲げ等の加工を行えば、コーティングされ
たガラスは簡単に剥がれてしまう。
【0006】近年、可撓性を有しかつ高硬度・耐熱性の
塗装鋼板として、無機ポリマー骨格の一部を有機基で置
換した無機・有機融合体を被覆した鋼板が考えられてき
た。この被覆鋼板は有機塗装鋼板に比べて硬度、耐熱性
が高く、琺瑯等の無機塗装鋼板に比べて加工性が高い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、無機・有機融
合体被覆鋼板は有機塗装鋼板に比べれば硬度、耐熱性が
改善されるが、ガラス・セラミックス等の無機塗装鋼板
と比べるとはかるかに劣る。そして、有機成分の割合を
減少し硬度、耐熱性を上げていくと、曲げ等の加工性が
急激に失われる。
【0008】そこで本発明は、上記課題を解決するため
に、加工性を有しかつ高硬度の被覆を施した高耐熱性鋼
板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の無機・有機融合
体被覆鋼板は、M−O−M結合(Mは金属、半金属原
子)から成る無機ポリマーの骨格を−O−Si(R)2
−O−基(Rはアルキル基)で置換した無機・有機融合
体中に無機粒子を5〜95体積%の割合で分散した膜を
被覆したことを特徴とする無機・有機融合体被覆鋼板で
ある。−Si(R)2−(有機成分)とアルキル基の結
合していないM(無機成分)の割合は有機成分/無機成
分のモル比で8.0〜0.1とすること、分散した無機
粒子のサイズは0.05〜20μmとすること、被覆厚
は0.5〜100μmとすることが好ましい。
【0010】また、本発明の無機・有機融合体被覆鋼板
の製造方法は、アルコキシドもしくはアルコキシド誘導
体または加水分解したアルコキシドもしくはアルコキシ
ド誘導体にジアルキルジアルコキシシランを加える第1
工程、加水分解した溶液に無機粒子を分散するか、
アルコキシド溶液に無機粒子を分散し、加水分解する
か、アルコキシド溶液に含水無機粒子を分散し、分散
溶液を加熱して無機粒子から放出される水で加水分解す
るか、またはアルコキシド溶液に含水無機粒子を分散
し、分散溶液を加熱して無機粒子から放出される水およ
び追添加した水で加水分解する第2工程、溶液を鋼板に
塗布する第3工程、および100〜600℃で熱処理す
る第4工程の4つの工程からなることを特徴とする前記
無機・有機融合体被覆鋼板の製造方法である。この際、
有機成分となるジアルキルジアルコキシシランAと無機
成分となるアルコキシド、アルコキシド誘導体Bとの割
合はA/Bのモル比で8.0〜0.1とすることが好ま
しい。
【0011】なお、無機・有機融合体とは、炭素、水
素、酸素、窒素等からなる有機物に、金属、半金属が化
学結合して重合することにより、原子・分子レベルで融
合した材料である。また、無機ポリマーとは、M−O−
M結合を骨格として重合した高分子であり、M−O−M
結合は無機成分を表すものである。そして、−O−Si
(R)2−O−基におけるアルキル基(R)とは、例え
ば、−CH3 、−C2 5 、−C3 7 、−C4 9
−C6 5 等の有機成分を表すものである。
【0012】
【作用】本発明の無機・有機融合体被覆鋼板は、耐熱性
の高い無機・有機融合体中に硬度・耐熱性の高い無機粒
子を分散させた膜を塗布しているため、加工性・耐熱性
を有し、かつ硬度をさらに上げることができる。すなわ
ち、無機・有機融合体の部分が加工時に発生する応力を
緩和し、高硬度の無機粒子部分が耐傷性を発揮する。
【0013】この無機・有機融合体は、0.5〜100
μmの厚さで被覆するのが好ましい。被覆の厚さが0.
5μm未満では、充分な耐熱性や耐食性が得られない。
一方、100μmを越える厚さになると塗装過程の熱処
理時にクラック等が発生する。
【0014】無機粒子としては、例えば、シリカ、アル
ミナ、珪酸塩、チタニア、マグネシア、フェライト、粘
土鉱物、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化マンガン、イット
リア等の酸化物、窒化珪素、窒化硼素、窒化アルミ等の
窒化物、炭化珪素等の炭化物などのセラミックスが採用
できる。これらは1種類あるいは2種類以上使用でき
る。
【0015】無機粒子は、無機・有機融合体中に5〜9
5体積%の割合で含ませる。5%未満では鋼板被膜に十
分な硬度をもたせることができない。一方、95%を越
えるとすべての無機粒子間に十分な無機・有機融合体を
含ませることが困難になり、鋼板被膜の強度が大きく低
下する。
【0016】分散する無機粒子のサイズは0.05〜2
0μmの範囲が好ましい。0.05μm未満の粒子は非
常に微細であるために均一に分散するのが困難である。
20μmを越える粒子は溶液中での沈降がはやいため、
被膜中に均一に分散するように塗布するのが困難であ
る。
【0017】本発明の無機・有機融合体被覆鋼板は、前
記4つの工程からなる製造方法で製造することができ
る。ここで、含水無機粒子とは、多孔性あるいは高比表
面積の粒子に水を吸着させたもの、ゼオライトや層状化
合物の層間に水をインターカレートしたものである。
【0018】本発明で使用するアルコキシドは特に限定
しないが、例えば、メトキシド、エトキシド、プロポキ
シド、ブトキシド等が挙げられる。また、アルコキシド
誘導体とは、アルコキシ基の一部をβ−ジケトン、β−
ケトエステル、アルカノールアミン、アルキルアルカノ
ールアミン、有機酸等で置換したものである。したがっ
て、本発明において無機成分を構成する金属、半金属
は、アルコキシドを形成することができるものに限定さ
れる。例えば、Si、Al、Ti、Zr、Ta、Nb、
Y、Co等である。
【0019】本発明においてアルコキシド、アルコキシ
ド誘導体の加水分解とは、アルコキシド、アルコキシド
誘導体に対して10モル倍までの水を添加して加水分解
することである。この際、無機酸、有機酸あるいはそれ
らの両方を触媒として使用してもよい。添加する水は、
アルコール等の有機溶媒で希釈してもよい。10モル倍
以上の水を使用するとすぐにゲル化するために、好まし
くない。
【0020】本発明で使用するジアルキルジアルコキシ
シランとしては、例えば、ジメチルジモトキシシラン、
ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラ
ン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシ
ラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキ
シシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジプロピルジメ
トキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピ
ルジプロポキシシラン、ジプロピルジブトキシシラン、
ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシ
ラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジフェニルジブ
トキシシラン等が挙げられる。
【0021】本発明法における加水分解では、未加水分
解のアルコキシ基に対して0.5〜10.0モル倍の水
を添加する。この際、無機酸、有機酸あるいはそれらの
両方を触媒として使用してもよい。添加する水は、アル
コール等の有機溶媒で希釈してもよい。0.5モル倍未
満の水では重合度が低く、熱処理の際に揮発するために
塗布できない。一方、10.0モル倍を越えると、すぐ
にゲル化して塗布できない。
【0022】部分加水分解、加水分解においては、ジア
ルキルジアルコキシシランおよびアルコキシドを均一に
分散、溶解できる有機溶媒を使用する。例えば、メタノ
ール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の各種
アルコール、アセトン、トルエン、キシレン等である。
【0023】無機成分となるアルコキシド、アルコキシ
ド誘導体と有機成分となるジアルキルジアルコキシシラ
ンの割合は、有機成分/無機成分のモル比で8.0〜
0.1の範囲とするのが好ましい。0.1未満になる
と、加工性が損なわれるために加工時に皮膜が剥離した
り、クラックが生じる。一方、8.0を越えると、加工
性には問題ないが、耐熱性が著しく低下する。
【0024】加水分解後、溶媒、加水分解で生成したア
ルコール等を常圧あるいは減圧下で留去して塗布しても
よい。
【0025】本発明で使用する鋼板は特に限定しない
が、例えば、ステンレス鋼板、アルミ・亜鉛等の各種メ
ッキ用鋼板およびこれらのメッキを施した鋼板等が挙げ
られる。
【0026】鋼板への塗布は、スプレーコート法、ディ
ップコート法、ロールコート法、スピンコート法等で行
う。
【0027】塗布後の熱処理は100〜600℃で行
う。100℃未満であると、溶媒等が十分蒸発せず、固
化できない。600℃を越えると、溶媒等が急激に蒸発
して、皮膜にピンホールやクラックが発生する。
【0028】
【実施例】本発明の無機・有機融合体被覆鋼板およびそ
の製造方法を以下の実施例によって具体的に説明する。
ただし、本発明は、これらの実施例のみに限定されるも
のではない。
【0029】表1および表2に示す条件で、鋼板に無機
・有機融合体を塗布し、熱処理した。作製した無機・有
機融合体被覆鋼板の加工性、表面硬度、耐熱性を評価し
た。表3にこれらの結果をまとめて示す。加工性は、J
IS G 3312 180°折り曲げ後の塗膜クラッ
クの限界で評価した。表面硬度は、鉛筆硬度試験法で評
価した。耐熱性は、200℃〜900℃で48時間加熱
した後、塩水噴霧試験で錆が発生しない温度を調べた。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】実施例は加工性(0〜1T)、耐熱性(7
00〜900℃)を有し、かつ高い硬度(8〜9H)の
塗装鋼板が得られた。一方、比較例ではすべての特性を
兼ね備えたものは得られなかった。例えば、No.8は
無機粒子の割合が少ないために表面硬度が低かった。N
o.9は無機粒子の割合が多すぎ、無機・有機融合体が
少ないために、膜の密着性が弱く、容易に剥がれた。N
o.10は熱処理温度が低すぎるために膜が固化せず、
塗布できなかった。No.11は熱処理温度が高すぎる
ために被膜にクラックが発生した。No.12は有機成
分が多い(A/B比が大きい)ために耐熱性が不十分で
あった。No.13は無機成分が多い(A/B比が小さ
い)ために、熱処理時にクラックが発生した。
【0034】
【発明の効果】本発明の無機・有機融合体被覆鋼板は塗
膜の無機・有機融合体中に硬度耐熱性の高い無機粒子を
分散しているために、可撓性、耐熱性を有し、かつ高い
硬度を持つ。したがって、従来の有機高分子を塗布した
プレコート鋼板では対応できないためにポストコートさ
れている用途にも使用できる。本発明の無機・有機融合
体被覆鋼板は、従来の有機高分子塗布のプレコート鋼板
に比べ、高い硬度を有するため、傷が着きにくく取り扱
いが容易である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B05D 5/00 B 7717−4D E 7717−4D 7/24 302 Y 7717−4D C09D 183/04 PMT

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 M−O−M結合(Mは金属、半金属原
    子)から成る無機ポリマーの骨格を−O−Si(R)2
    −O−基(Rはアルキル基)で置換した無機・有機融合
    体中に無機粒子を5〜95体積%の割合で分散した膜を
    被覆したことを特徴とする無機・有機融合体被覆鋼板。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の無機・有機融合体被覆鋼
    板において、−Si(R)2−(有機成分)とアルキル
    基の結合していないM(無機成分)の割合が有機成分/
    無機成分のモル比で8.0〜0.1であり、分散した無
    機粒子のサイズが0.05〜20μmであり、被覆厚が
    0.5〜100μmであることを特徴とする無機・有機
    融合体被覆鋼板。
  3. 【請求項3】 アルコキシドもしくはアルコキシド誘導
    体または加水分解したアルコキシドもしくはアルコキシ
    ド誘導体にジアルキルジアルコキシシランを加える第1
    工程、加水分解した溶液に無機粒子を分散する第2工
    程、溶液を鋼板に塗布する第3工程、100〜600℃
    で熱処理する第4工程の4つの工程からなることを特徴
    とする請求項1記載の無機・有機融合体被覆鋼板の製造
    方法。
  4. 【請求項4】 アルコキシドもしくはアルコキシド誘導
    体または加水分解したアルコキシドもしくはアルコキシ
    ド誘導体にジアルキルジアルコキシシランを加える第1
    工程、アルコキシド溶液に無機粒子を分散し、加水分解
    する第2工程、溶液を鋼板に塗布する第3工程、100
    〜600℃で熱処理する第4工程の4つの工程からなる
    ことを特徴とする請求項1記載の無機・有機融合体被覆
    鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】 アルコキシドもしくはアルコキシド誘導
    体または加水分解したアルコキシドもしくはアルコキシ
    ド誘導体にジアルキルジアルコキシシランを加える第1
    工程、アルコキシド溶液に含水無機粒子を分散し、分散
    溶液を加熱して無機粒子から放出される水で加水分解す
    る第2工程、溶液を鋼板に塗布する第3工程、100〜
    600℃で熱処理する第4工程の4つの工程からなるこ
    とを特徴とする請求項1記載の無機・有機融合体被覆鋼
    板の製造方法。
  6. 【請求項6】 アルコキシドもしくはアルコキシド誘導
    体または加水分解したアルコキシドもしくはアルコキシ
    ド誘導体にジアルキルジアルコキシシランを加える第1
    工程、アルコキシド溶液に含水無機粒子を分散し、分散
    溶液を加熱して無機粒子から放出される水および追添加
    した水で加水分解する第2工程、溶液を鋼板に塗布する
    第3工程、100〜600℃で熱処理する第4工程の4
    つの工程からなることを特徴とする請求項1記載の無機
    ・有機融合体被覆鋼板の製造方法。
  7. 【請求項7】 有機成分となるジアルキルジアルコキシ
    シランAと無機成分となるアルコキシド、アルコキシド
    誘導体Bとの割合がA/Bのモル比で8.0〜0.1の
    範囲であることを特徴とする請求項3〜6のいずれか記
    載の無機・有機融合体被覆鋼板の製造方法。
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