JPH07216743A - 消臭性アクリル系繊維及びその製造方法 - Google Patents

消臭性アクリル系繊維及びその製造方法

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JPH07216743A
JPH07216743A JP6028820A JP2882094A JPH07216743A JP H07216743 A JPH07216743 A JP H07216743A JP 6028820 A JP6028820 A JP 6028820A JP 2882094 A JP2882094 A JP 2882094A JP H07216743 A JPH07216743 A JP H07216743A
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acrylic fiber
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deodorant
acrylic
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JP6028820A
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English (en)
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Nobuyasu Sakai
信康 坂井
Tetsuo Shigei
哲郎 繁井
Hiroyoshi Shirai
汪芳 白井
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Teijin Ltd
Original Assignee
Toho Rayon Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 可紡性が良好で、アクリル系繊維に対して、
その繊維性能、風合いをそのまま保持しつつ、且つ消臭
性能の優れた、消臭性アクリル系繊維及びその製造方法
を提供する。 【構成】 モノマー成分として40重量%以上のアクリ
ロニトリルに由来するポリマーであって、アミド基を
2.5〜4重量%且つ酸性基を2.0×10-2〜1.0
×10-1meq/g含有するポリマーを、該ポリマーを
溶解しうる溶媒に溶解して紡糸原液となし、該紡糸原液
を凝固浴中に紡糸し、前記工程で得られた繊維形状物に
下記の式(1)で示された金属フタロシアニン誘導体を
担持させることにより消臭性アクリル系繊維を得る。 【化1】 (式中、Mは配位金属、−Xは水素又は置換基を表
す。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、優れた消臭性能を有す
ると同時にアクリル系繊維の風合いを保持した消臭性ア
クリル系繊維、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、消臭、除臭機能を持った繊維製品
に関しては、特開昭59−21777号公報に開示さ
れているように繊維に抗菌剤を含有させ、菌の繁殖を防
止することによって悪臭を防止する衛生加工が知られて
いる。また、特開昭58−137443号公報には活
性炭のような吸着物質を用いて臭気を吸着除去する方法
が開示されている。
【0003】しかしながら、前記の方法は、始めから
臭気性化合物を含む物質、例えばし尿などに対しては有
効ではないという問題があり、前記の方法は、吸着物
質が飽和状態に達するともはや消臭性能が消失し、また
温度などの周囲の状況が変化すると再び臭気が発生する
という問題があった。
【0004】近年、消臭剤に生体酵素類似物質である金
属フタロシアニンを用いることにより、上記技術のよう
な欠点を補うことができることが注目されている。この
ような消臭技術として、特開昭55−82519号公報
には酸化還元能を有する金属フタロシアニンを担持させ
た高分子物質が、また、特開平2−300309号公報
にはジメチルアミノエチルメタアクリレート等とアクリ
ロニトリルとのコポリマーに金属フタロシアニンを担持
させた消臭繊維が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記特
開昭55−82519号公報に記載の消臭剤を紡糸原液
に混合して紡糸すると、可紡性が不良の上に消臭性能が
不十分であるという欠点を有していた。また、樹脂と混
ぜて樹脂繊維に加工すると、合成繊維本来の風合いが損
なわれる上に消臭性能も十分に発揮できないという欠点
を有していた。
【0006】また、前記特開平2−300309号公報
に記載の消臭繊維は、繊維本来の風合いは保持している
ものの悪臭を消臭化する効力は不十分であった。
【0007】そこで本発明は、可紡性が良好で、アクリ
ル系繊維に対して、その繊維性能、風合いをそのまま保
持しつつ、且つ消臭性能の優れた、消臭性アクリル系繊
維及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記した問題点を解決す
るために本発明の消臭性アクリル系繊維は、モノマー成
分として40重量%以上のアクリロニトリルに由来する
ポリマーから製造されたアクリル系繊維であって、且つ
アミド基を2.5〜4重量%、酸性基を2.0×10-2
〜1.0×10-1meq/g含有しているアクリル系繊
維に、下記の式(1)で示された金属フタロシアニン誘
導体が担持されていることを特徴とするものである。
【0009】
【化4】 (式中、Mは配位金属、−Xは水素又は置換基を表
す。) また、本発明の消臭性アクリル系繊維の製造方法は、モ
ノマー成分として40重量%以上のアクリロニトリルに
由来するポリマーであって、アミド基を2.5〜4重量
%且つ酸性基を2.0×10-2〜1.0×10-1meq
/g含有するアクリル系ポリマーを、該ポリマーを溶解
しうる溶媒に溶解して紡糸原液となし、該紡糸原液を凝
固浴中に紡糸し、前記工程で得られた繊維形状物に前記
の式(1)で示された金属フタロシアニン誘導体を担持
させることにより消臭性アクリル系繊維を得ることを特
徴とするものである。
【0010】また、本発明の消臭性アクリル系繊維のさ
らに別の製造方法は、モノマー成分として40重量%以
上のアクリロニトリルに由来するポリマーが塩化亜鉛系
水溶液に溶解されてなる紡糸原液を熱処理することによ
りアクリル系ポリマー中にアミド基を導入し、前記工程
で得られたアミド基が導入された紡糸原液を凝固浴中に
紡糸して繊維形状物を得、該繊維形状物をアルカリ処理
することにより繊維中にさらにアミド基と酸性基を導入
し、前記工程で得られた繊維形状物に前記の式(1)で
示された金属フタロシアニン誘導体を担持させることに
より消臭性アクリル系繊維を得ることを特徴とするもの
である。
【0011】前記「アクリロニトリルに由来するポリマ
ーが塩化亜鉛系水溶液に溶解されてなる紡糸原液」に
は、アクリロニトリルに由来するポリマーが、直接、塩
化亜鉛系水溶液に溶解されてなる溶解法による紡糸原液
や、アクリロニトリルを塩化亜鉛系水溶液中で重合させ
てなる溶液重合法による紡糸原液等が使用できる。
【0012】本発明の消臭性アクリル系繊維を構成する
アクリロニトリルと共重合することのできる他のモノマ
ーは、上記の条件、即ち、アクリロニトリルを40重量
%以上含有しているポリマーからなる繊維であって、ア
ミド基を2.5〜4重量%を含有し、かつ酸性基を2.
0×10-2〜1.0×10-1meq/g含有する繊維と
することができるモノマーであれば何でもよいが、例え
ば、ビニル系モノマーに関しては、アクリル酸、メタク
リル酸、あるいはこれらのエステル類、アクリルアミ
ド、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリル
スルホン酸ソーダ、メタアリルスルホン酸ソーダ、ビニ
ルスルホン酸ソーダ、スチレンスルホン酸ソーダなどを
適宜組み合わせたものを60重量%未満の割合で共重合
せしめたものが挙げられる。
【0013】本発明において、特に、アクリロニトリル
が80重量%以上からなるいわゆるアクリル系繊維を対
象とした場合に、アクリル系繊維本来の風合いを損ねる
ことなくその風合いが保持され、また熱的特性が優れる
ので好ましい。
【0014】このようなポリマーを溶媒に溶解し、紡糸
原液を得る溶媒としては、例えば、塩化亜鉛、ロダン塩
等の無機塩類濃厚水溶液、ジメチルホルムアミド、ジメ
チルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げら
れるが、前記ポリマーを溶解しうるポリマーであれば特
に限定されない。
【0015】本発明において「アミド基の導入」とは、
アクリルアミドのようにアミド基を有するビニル系モノ
マーとの共重合によってコポリマー中にアミド基を導入
することのみならず、アクリロニトリルコポリマーを溶
媒に溶解した紡糸原液(別名、ドープ)の熱処理、紡糸
された繊維形状物のアルカリ処理、又は後処理等によっ
てポリマー中に導入することも意味する。特に、ドープ
の熱処理は、新たなモノマーを導入しなくても目的のア
ミド基及び酸性基の含有量を有するポリマー組成にする
ことができ、この場合の溶媒としては、通常のドープの
溶媒として使用されているいわゆる濃厚塩化亜鉛系水溶
液(即ち、塩化亜鉛を主体とした無機塩類を50〜60
%含む溶液)が好ましい。アクリロニトリルコポリマー
の溶媒として濃厚塩化亜鉛系水溶液が用いられた場合、
そのドープに熱をかけることによりポリマーのCN基の
加水分解に塩化亜鉛が触媒作用するので、容易にアミド
基及びカルボキシル基に変換させることができ、目的と
する量のアミド基とカルボキシル基を容易に達成するこ
とができる。
【0016】本発明において「アミド基の含量」とは、
アミド基含有モノマーを用いた場合にはポリマー中のア
ミド基含有モノマー量をいい、また後処理によってポリ
マー内に導入した場合にはIR測定により得られたアミ
ド基とニトリル基の吸収強度比を算出し、あらかじめ得
られた検量線よりアクリルアミド換算として求められた
値をいう。このアミド基の含量は2.5〜4重量%であ
ることが好ましい。アミド基含量が2.5重量%未満で
あると金属フタロシアニン誘導体の消臭物質の付着量が
少なく、また4重量%より多すぎるとアクリル系繊維の
持つ風合いが損なわれ好ましくないからである。
【0017】本発明において「酸性基」には、カルボキ
シル基、スルホン基等が挙げられるが、水酸化ナトリウ
ムと中和反応を起こし得る酸性基であれば何でもよい。
最終的にアクリル系繊維中に2.0×10-2〜1.0×
10-1meq/gの範囲で含有していればよく、その導
入方法には、共重合によってアクリル系繊維中に導入さ
せるほか、アクリル系繊維のアルカリ水溶液による後処
理等で繊維中に導入してもなんら問題はない。特に、ア
クリル系繊維のアルカリ水溶液による後処理は、その濃
度、温度、時間を制御するだけで目的とするポリマー組
成にすることができるので、特に好ましい処理である。
【0018】アクリル系繊維中に酸性基の含有量が少な
すぎると消臭に必要な消臭物質である金属フタロシアニ
ン誘導体の付着量が少なく、実用性のある消臭性能を得
ることはできない。逆に酸性基の含有量が多すぎるとア
クリル系繊維本来の風合いが著しく損なわれるだけでな
く、アクリル系繊維中のアニオンサイトが増え、臭気ガ
スが活性中心に接近できず、満足な消臭性能を得ること
はできない。仮に臭気ガスが活性中心に接近できても、
金属フタロシアニン誘導体が付着しすぎて多量体を形成
するので、消臭性能がむしろ低下する傾向にあり経済的
にも好ましくない。
【0019】上記アミド基と酸性基が、アクリル系繊維
中にそれぞれ2.5〜4重量%、2.0×10-2〜1.
0×10-1meq/g存在する場合、そのアクリル系繊
維は、アクリル系繊維本来の風合いを保ちつつ、且つ金
属フタロシアニンの消臭性能自体が大幅に向上するとい
う新しい効果が発現されるため、これら上記範囲を共に
満たすことは本発明において必須条件である。
【0020】本発明に用いられる金属フタロシアニン誘
導体とは前記式(1)の基本骨格構造を有し、基本骨格
中のMで示される配位金属には、Fe、Co、Mn、T
i、Ni、Cu、Zn、Mo等が挙げられ、特に、その
消臭性能の高さからFe又はCoの単独、或いはFeと
Coを混合したものが好ましい。
【0021】前記式(1)中のXは、水素又は置換基を
表し、その置換基としては、例えば、アルキル基、置換
アルキル基(例えばクロロメチル基)、ハロゲン基、ニ
トロ基、アミノ基、アゾ基、カルボキシル基、カルボニ
ルクロリド基、カルボキシルアミド基、ニトリル基、水
酸基、スルホン基、スルホニルクロリド基、スルホンア
ミド基、ビニル基等のほか、カルボキシル基やスルホン
酸基のアルカリ塩類などが挙げられるが、これら1種類
の基には限られず、各々別な基が置換されていてもよ
い。上記の置換基の中でもカルボキシル基、スルホン
基、これらのアルカリ塩類、ハロゲン基、アミノ基、又
は水酸基が2〜8置換されている金属フタロシアニン誘
導体は、その溶解時に置換基同士が反発し多量体を形成
しにくくなるため好ましい。
【0022】本発明の消臭性アクリル系繊維において、
金属フタロシアニン誘導体の含有量は0.05〜10重
量%が好ましい。0.05重量%以下であると含有量が
少ないため消臭性能が不良であり、また、10重量%を
越えると金属フタロシアニン誘導体が多量体を形成しや
すくなり、性能は向上せず、むしろ低下するからであ
る。さらにに好ましくは、0.1〜5重量%であり、こ
の範囲内では消臭性能が特に良好であり、コスト的にも
有利であるので好ましい。
【0023】金属フタロシアニン誘導体のアクリル系繊
維への担持方法としては、湿潤、塗布、散布などが挙げ
られるが特に限定されるものではない。その担持の際の
pHは特に限定されないが、好ましくはpH7以下の中
性又は酸性で行なうと、アクリル系繊維への担持が容易
となる。この時、金属フタロシアニン誘導体の溶液の中
和又は、酸性化に用いる酸としては硫酸、塩酸、硝酸、
酢酸、蟻酸、リン酸等の水溶液等が挙げられるが、蟻酸
は金属フタロシアニン誘導体の担持量を増加させる効果
があるため特に好ましい。なお金属フタロシアニン誘導
体の溶液を製造する場合pHを12とする必要があり、
このような高pHでそのまま金属フタロシアニン誘導体
の担持処理を行なってもよい。
【0024】本発明の金属フタロシアニン誘導体のアク
リル系繊維への担持の際の温度は、特に限定されるもの
ではないが、45℃〜100℃の温度で担持を行うこと
は装置の設計が容易にでき、担持処理も容易に行うこと
ができるので好ましい。担持のための処理時間も特に限
定はされないが、あまり長時間行うと繊維特性が低下
し、風合いを損なうため30分〜120分間で行うこと
が好ましい。
【0025】本発明において、金属フタロシアニン誘導
体をアクリル系繊維へ担持処理した後、該繊維に硫酸、
塩酸、硝酸、酢酸、蟻酸、リン酸等の水溶液及び/又は
一価及び/又は二価の銅、亜鉛、コバルト等の金属塩等
の水溶液にて処理することは消臭性能を更に向上させる
ことができるので特に好ましい。
【0026】本発明において得られた消臭性アクリル系
繊維を25℃における相対湿度70%以上の環境で使用
することは消臭反応中に必要な水分が豊富に存在するた
め消臭性能をさらに向上させることができるので特に、
好ましい。このような湿度環境は、例えば、衣料、毛
布、カーペット、マット、靴下、シーツ、布団綿等を使
用している環境が該当し、これらの製品に消臭性能を付
与することができる。さらに、消臭フィルターなど幅広
い用途に使用することができる。
【0027】本発明の消臭性アクリル系繊維は、通常の
アクリル系合成繊維、ポリエステル、ナイロン、木綿、
レーヨン、羊毛等のほかの繊維と混合して使用すること
も可能である。
【0028】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明
する。なお、実施例中(%)とあるのは「重量%」を意
味する。実施例において、アミド基測定法、繊維表面官
能基滴定法及び硫化水素除去率は次の方法で行なった。
【0029】アミド基測定法:あらかじめ、アクリロニ
トリル(略語:AN)/メチルアクリレート(略語:M
A)/アクリルアミド(略語:AAm)の三成分系ポリ
マーを重合する。未反応モノマーをガスクロマトグラフ
ィを用いて定量分析することにより、前記のポリマー組
成を決定する。このポリマーをIRにて測定して、得ら
れたスペクトルのCN、NHの吸収強度比を縦軸に、ポ
リマー中のAAm存在量を横軸に検量線を作成する。
【0030】次に、サンプルポリマーのIR測定を行
い、同様にベースラインを引き、CN及びNHのピーク
強度を求め、強度比を算出して、先の検量線よりアクリ
ルアミド換算量を求める。
【0031】繊維表面官能基滴定法:100ml容ビー
カーに約5cmにカットした繊維試料1gを入れ、N/
100塩酸を約100ml入れ、真空ポンプで 30 分脱
泡を行った後、一昼夜放置する。その後、純水で十分に
洗浄した後、乾燥させ、重量を測定する。この繊維サン
プルを再び100ml容の三角フラスコに入れ、純水を
80ml加え、真空ポンプで30分脱泡を行った後、N
/100水酸化ナトリウムを20ml加え、窒素置換の
後、密封し、一昼夜放置する。この液を200ml容ビ
ーカーに移し、滴定を行い、ブランクとの差より酸性基
の存在量を求める。得られた値を繊維試料重量で除する
ことにより単位重量当たりの酸性基を求める。
【0032】硫化水素除去率:3リットル容の臭い袋に
繊維試料0.1gを入れておく。次いで、硫化水素濃度
が10ppmとなるように調製した25℃における相対
湿度が80%の空気3リットルを前記臭い袋にに注入し
密封する。2時間後に臭い袋内の硫化水素濃度を検知管
で測定する。これを初濃度と比較し、除去率(%)を算
出する。
【0033】〔実施例1〕アクリロニトリル(略語:A
N)/メチルアクリレート(略語:MA)/メタアリル
スルホン酸ソーダ(略語:SMS)=89.6/9.5
/0.9(%)なるアクリル系ポリマーの塩化亜鉛水溶
液を、105℃で15分間熱処理することにより熱変性
を行ない、アクリル系ポリマー内にアミド基を導入した
紡糸原液(ドープ)とした。
【0034】このドープをノズル孔から押し出して紡糸
し、繊維形状物を得た。この繊維形状物の繊維の形状を
表す走査型電子顕微鏡写真を図1に示す。この繊維形状
物を45℃、15重量%水酸化ナトリウム水溶液中に2
0時間浸漬させてアルカリ加水分解を行い、繊維中にア
ミド基3.8重量%、酸性基5.1×10-2meq/g
を含有するアクリル系繊維を得た。このアルカリ処理さ
れた繊維形状物の繊維の形状を示す走査型電子顕微鏡写
真を図2に示す。
【0035】このアクリル系繊維を2.5×10-4M鉄
フタロシアニンオクタカルボン酸溶液(pH=3)に浸
漬し、100℃にて30分保持した後、水洗し、乾燥す
ることにより、該アクリル系繊維に鉄フタロシアニンを
付与した。鉄フタロシアニンの付与されたアクリル系繊
維の形状を表す走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。得
られたアクリル系繊維の鉄フタロシアニン担持量は0.
35重量%であった。このアクリル系繊維試料の硫化水
素除去率は100%であった。このアクリル系繊維の風
合いは消臭処理を行う前のアクリル系繊維と比較して遜
色の無いものであった。その結果を下記の表1に示す。
【0036】〔実施例2〕前記実施例1と同様にして繊
維形状物を得た。このアクリル系繊維を2.5×10-3
M鉄フタロシアニンオクタカルボン酸溶液(pH=1
2)に浸漬し、45℃にて2時間保持した後、0.1M
酢酸水溶液で中和し、水洗し、乾燥することにより、ア
クリル系繊維に鉄フタロシアニンを付与した。得られた
アクリル系繊維の鉄フタロシアニン担持量は0.24重
量%であった。このアクリル系繊維試料の硫化水素除去
率は63%であった。このアクリル系繊維の風合いは消
臭処理を行う前のアクリル系繊維と比較して遜色の無い
ものであった。その結果を下記の表1に示す。
【0037】〔実施例3〕前記実施例1と同様にして繊
維形状物を得た。このアクリル系繊維を2.5×10-4
Mコバルトフタロシアニンテトラカルボン酸溶液(pH
=3)に浸漬し、100℃にて30分保持した後、水洗
し、乾燥することにより、該アクリル系繊維にコバルト
フタロシアニンを付与した。得られたアクリル系繊維の
コバルトフタロシアニン担持量は0.35重量%であっ
た。このアクリル系繊維試料の硫化水素除去率は70%
であった。このアクリル系繊維の風合いは消臭処理を行
う前のアクリル系繊維と比較して遜色の無いものであっ
た。その結果を下記の表1に示す。
【0038】〔実施例4〕AN)/MA/アクリルアミ
ド(略語:AAm)/アクリル酸(略語:AA)/メタ
アリルスルホン酸ソーダ(略語:SMS)=87/4/
3/3/1(%)からなる仕込み割合のモノマーから得
られた、アミド基3重量%、酸性基2.5×10-2me
q/gを有するアクリル系ポリマーをジメチルホルムア
ミドに溶解してドープとし、このドープをノズル孔から
押し出して紡糸してアクリル系繊維を得た。得られたア
クリル系繊維は、アミド基含有量が3.0重量%、酸性
基含有量が2.5×10-2meq/gであった。
【0039】このアクリル系繊維に対して前記実施例2
と同様に鉄フタロシアニンオクタカルボン酸を付与した
後、乾燥した。このアクリル系繊維の鉄フタロシアニン
担持量は0.30重量%であった。このアクリル系繊維
試料の硫化水素除去率は65%であった。その結果を下
記の表1に示す。
【0040】〔比較例1〕AN/MA/SMS=89.
6/9.5/0.9(%)からなるモノマーから得られ
たアクリル系ポリマーを紡糸した。繊維中に酸性基5.
54×10-3meq/gを含有する比較例1の繊維形状
物を得た。このアクリル系繊維の形状を表す走査型電子
顕微鏡写真を図4に示す。このアクリル系繊維について
IR測定を行なったが、アミド基の存在は確認できなか
った。
【0041】このアクリル系繊維に対して前記実施例2
と同様に鉄フタロシアニンオクタカルボン酸を付与した
後、乾燥した。このアクリル系繊維の形状を表す走査型
電子顕微鏡写真を図5に示す。得られたアクリル系繊維
の鉄フタロシアニン担持量は、0.02重量%であっ
た。このアクリル系繊維試料の硫化水素除去率は0であ
った。その結果を下記の表1に示す。
【0042】〔比較例2〕AN/MA/SMS=89.
6/9.5/0.9(%)なるアクリル系ポリマーを紡
糸し、繊維形状物を得た。これを前記実施例1と同様に
45℃、15重量%水酸化ナトリウム水溶液中に20時
間浸漬させ、アルカリ加水分解を行うことによって、繊
維中に酸性基2.25×10-2meq/gを含有する比
較例2のアクリル系繊維を得た。
【0043】該繊維についてアミド基の存在についてI
R測定したが、確認できなかった。このアクリル系繊維
に対して前記実施例2と同様に鉄フタロシアニンオクタ
カルボン酸を付与した後、乾燥した。このアクリル系繊
維の鉄フタロシアニン担持量は0.08重量%であっ
た。この試料の硫化水素除去率は20%と低かった。そ
の結果を下記の表1に示す。
【0044】〔比較例3〕アクリロニトリル(AN)/
メリルアクリレート(MA)/メタアクリルスルホン酸
ソーダ(SMS)=89.6/9.5/0.9(%)な
るアクリルポリマーの塩化亜鉛水溶液を105℃で、5
分間熱処理し、熱変性を行いアミド基を導入させた後紡
糸し繊維形状物を得た。これを45℃、5重量%水酸化
ナトリウム水溶液中に4時間浸漬させ、アルカリ加水分
解を行ない繊維中にアミド基4重量%、酸性基1.28
×10-2meqを含有する繊維形状物を得た。この繊維
を2.5×10-4M鉄フタロシアニンオクタカルボン酸
溶液(pH=3)に浸漬し、100℃にて30分間保持
した後、水洗し、乾燥することにより、繊維に鉄フタロ
シアニンオクタカルボン酸を付与した。この繊維の鉄フ
タロシアニンの担持量は0.08重量%であった。この
試料の硫化水素除去率は20%であった。
【0045】
【表1】
【0046】
【発明の効果】本発明によって得られた消臭性アクリル
系繊維は、通常のアクリル系繊維が持つ本来の繊維性
能、風合いをそのまま保持するとともに、且つ消臭性能
が優れており、特に、相対湿度70%以上においては消
臭性能が優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における、アルカリ処理する前のアク
リル系繊維について、その「繊維の形状」を表した走査
型電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例1における、アルカリ処理した後のアク
リル系繊維について、その「繊維の形状」を表した走査
型電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例1で得られた消臭性アクリル系繊維につ
いて、その「繊維の形状」を表した走査型電子顕微鏡写
真である。
【図4】比較例1で使用するアクリル系繊維について、
その「繊維の形状」を表した走査型電子顕微鏡写真であ
る。
【図5】比較例1で得られたアクリル系繊維について、
その「繊維の形状」を表した走査型電子顕微鏡写真であ
る。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年3月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正内容】
【0044】
【比較例3】アクリロニトリル(AN)/メリルアクリ
レート(MA)/メタアクリルスルホン酸ソーダ(SM
S)=89.6/9.5/0.9(%)なるアクリルポ
リマーの塩化亜鉛水溶液を105℃で、5分間熱処理
し、熱変性を行いアミド基を導入させた後紡糸し繊維形
状物を得た。これを45℃、5重量%水酸化ナトリウム
水溶液中に4時間浸漬させ、アルカリ加水分解を行ない
繊維中にアミド基4重量%、酸性基1.28×10 −2
meq/gを含有する繊維形状物を得た。この繊維を
2.5×10−4M鉄フタロシアニンオクタカルボン酸
溶液(pH=3)に浸漬し、100℃にて30分間保持
した後、水洗し、乾燥することにより、繊維に鉄フタロ
シアニンオクタカルボン酸を付与した。この繊維の鉄フ
タロシアニンの担持量は0.08重量%であった。この
試料の硫化水素除去率は20%であっ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D01F 6/18 Z D06M 11/38 // D06M 101:28 (72)発明者 白井 汪芳 長野県小県郡丸子町長瀬2496

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 モノマー成分として40重量%以上のア
    クリロニトリルに由来するポリマーから製造されたアク
    リル系繊維であって、且つアミド基を2.5〜4重量
    %、酸性基を2.0×10-2〜1.0×10-1meq/
    g含有しているアクリル系繊維に、下記の一般式で示さ
    れる金属フタロシアニン誘導体が担持されていることを
    特徴とする消臭性アクリル系繊維。 【化1】 (式中、Mは配位金属、−Xは水素又は置換基を表
    す。)
  2. 【請求項2】 前記ポリマーがアクリロニトリル80重
    量%以上からなる請求項1記載の消臭性アクリル系繊
    維。
  3. 【請求項3】 前記金属フタロシアニン誘導体が、金属
    フタロシアニンのカルボン酸誘導体である請求項1又は
    2記載の消臭性アクリル系繊維。
  4. 【請求項4】 前記金属フタロシアニン誘導体の担持量
    が、0.05〜10重量%の範囲である請求項1、2又
    は3記載の消臭性アクリル系繊維。
  5. 【請求項5】 前記金属フタロシアニン誘導体の担持量
    が、0.1〜5重量%の範囲である請求項4記載の消臭
    性アクリル系繊維。
  6. 【請求項6】 前記金属フタロシアニン誘導体中の金属
    が、Fe及び/又はCoである請求項1、2、3、4又
    は5記載の消臭性アクリル系繊維。
  7. 【請求項7】 (1)モノマー成分として40重量%以
    上のアクリロニトリルに由来するポリマーであって、ア
    ミド基を2.5〜4重量%且つ酸性基を2.0×10-2
    〜1.0×10-1meq/g含有するアクリル系ポリマ
    ーを、該アクリル系ポリマーを溶解しうる溶媒に溶解し
    て紡糸原液となし、 (2)該紡糸原液を凝固浴中に紡糸し、 (3)前記工程で得られた繊維形状物に下記の一般式で
    示される金属フタロシアニン誘導体を担持させることに
    より請求項1、2、3、4、5又は6記載の消臭性アク
    リル系繊維を得ることを特徴とする消臭性アクリル系繊
    維の製造方法。 【化2】 (式中、Mは配位金属、−Xは水素又は置換基を表
    す。)
  8. 【請求項8】 (1)モノマー成分として40重量%以
    上のアクリロニトリルに由来するポリマーが塩化亜鉛系
    水溶液に溶解されてなる紡糸原液を熱処理することによ
    りアクリル系ポリマー中にアミド基を導入し、 (2)前記工程で得られたアミド基が導入された紡糸原
    液を凝固浴中に紡糸して繊維形状物を得、 (3)該繊維形状物をアルカリ処理することにより繊維
    中にさらにアミド基と酸性基を導入し、 (4)前記工程で得られた繊維形状物に下記の一般式で
    示される金属フタロシアニン誘導体を担持させることに
    より請求項1、2、3、4、5又は6記載の消臭性アク
    リル系繊維を得ることを特徴とする消臭性アクリル系繊
    維の製造方法。 【化3】 (式中、Mは配位金属、−Xは水素又は置換基を表
    す。)
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113106752A (zh) * 2021-01-26 2021-07-13 青岛尼希米生物科技有限公司 一种改性羊毛纤维及其制备方法

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