JPH07197150A - 耐蝕性銅基合金材 - Google Patents

耐蝕性銅基合金材

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JPH07197150A
JPH07197150A JP35255693A JP35255693A JPH07197150A JP H07197150 A JPH07197150 A JP H07197150A JP 35255693 A JP35255693 A JP 35255693A JP 35255693 A JP35255693 A JP 35255693A JP H07197150 A JPH07197150 A JP H07197150A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 熱間加工性,冷間加工性及び耐蝕性に優れた
銅基合金材を提供する。 【構成】 銅62.0〜69.0重量%及びアンチモン
0.02〜0.15重量を含有し且つ残部が亜鉛及び不
可避同伴不純物からなる金属組成をなす、管状,板状,
棒状の押出材,抽伸材,圧延材を、470〜600℃で
30分〜2時間加熱した後、その加熱温度より50℃以
上降温されるまで又は450℃となるまで、3℃/分以
下の冷却速度で冷却させることを条件として熱処理す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱間で押出若しくは圧
延され又はその後に冷間で抽伸若しくは圧延された管
状,板状,棒状の耐蝕性銅基合金材に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】この種の銅基合金材としては、亜鉛を3
0〜40重量%含有する一般的な黄銅(JIS C26
00,JIS C2680,JIS C2700,JI
S C2720,JIS C2801が該当し、以下
「一般黄銅」という)からなるものや耐蝕性黄銅である
アドミラルティ黄銅(JIS C4430,CDA C
44300,CDA C44400,CDA C445
00等が該当する),ネーバル黄銅(JIS C462
1,JIS C4640,CDA C46500,CD
A C46600,CDA C46700等が該当す
る)からなるものがよく知られている。なお、アドミラ
ルティ黄銅やネーバル黄銅は、基本的に、錫を多量に添
加させることによって、或いは砒素,燐,アンチモンの
何れかを更に添加して、これと錫との相乗効果によっ
て、脱亜鉛腐食を防止せんとするものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの黄銅
は、何れも、熱間及び冷間での加工性と耐蝕性とを共に
満足させるものではなく、充分な耐蝕性を有する薄肉管
状の抽伸材等を得ることが極めて困難であった。
【0004】すなわち、一般黄銅(特に、JIS C2
680,JIS C2700,JIS C2720)
は、熱間・冷間での加工性に優れるものの、耐蝕性に問
題があり、例えば温水,汚染水,海水中で著しい脱亜鉛
腐食を生じるため、これを原材料とする押出材,抽伸材
等は、かかる液体を扱う機器(弁等)の構成素材として
使用できない。
【0005】また、ネーバル黄銅では、多量(0.5重
量%以上)の錫が添加されており、砒素,アンチモン,
燐との相乗効果とも相俟って、或る程度の耐蝕性を有す
るが、一般黄銅と同様に、温水,汚染水,海水中では脱
亜鉛腐食を生じ易く、これを原材料とする押出材,抽伸
材等は、かかる液体を扱う機器の構成素材として使用で
きない。また、熱間での加工性は比較的良好であるが、
錫が多量に含有されているため、冷間での加工性が悪
く、例えば薄肉管状の抽伸材を製造する場合等にあって
は、極めて不経済である。すなわち、銅濃度が低い場
合、錫を0.5重量%以上添加すると、錫の固溶硬化及
び錫濃度の高いβ相の存在によって、冷間加工性が低下
し、硬く且つ脆い錫リッチなγ相(Cu−Zn−Sn系
の金属間化合物)が存在して、その濃度が増すに従っ
て、γ相も増加するため、冷間での加工性も急速に悪く
なり、薄肉管の冷間抽伸性等に重大な悪影響を及ぼし、
歩留りの悪化及び製造工程数の増加による大幅なコスト
アップにつながる。
【0006】これに対して、アドミラルティ黄銅では、
特に砒素,燐,アンチモンの何れかを添加したもので
は、上記した液体に対しても良好な耐脱亜鉛腐食性を示
す。しかし、錫を極めて多量(0.8重量%以上)に含
有し且つ銅含有量が多いため、熱間での加工性に劣り、
つまり熱間変形能に乏しいため、所定の材形状に熱間加
工する際にクラックを生じ易く、熱間での変形抵抗も高
い。すなわち、錫を多量に添加すると、α単相組織をな
すアドミラルティ黄銅では、熱間変形能を著しく阻害す
ることになり、且つ熱間変形抵抗を高める。したがっ
て、例えば薄肉管状の押出材を製造する場合に、所定の
薄肉寸法にまで押出成形することができず、極めて歩留
りが悪く、製造工程も増加して、コストアップにつなが
る。しかも、高価な錫を多量に含有することから材料コ
ストが高く、また多量の錫含有による固溶硬化に起因し
て冷間加工性も悪い。
【0007】本発明は、このような点に鑑みてなされた
もので、熱間及び冷間での加工性を高めて、薄肉管状等
の所定の材形状に安価に製造でき、耐蝕性を要求される
機器の構成材としても好適に使用することができる耐蝕
性銅基合金材を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】この課題を解決した本発
明の耐蝕性銅基合金材は、熱間で押出若しくは圧延され
又はその後に冷間で抽伸若しくは圧延された管状,板
状,棒状のもので、特に、原材料として、銅62.0
〜69.0重量%及びアンチモン0.02〜0.15重
量%を含有し且つ残部が亜鉛及び不可避同伴不純物から
なる金属組成をなす銅基合金、銅62.0〜69.0
重量%、アンチモン0.02〜0.15重量%及び錫
0.1〜0.5重量%未満を含有し且つ残部が亜鉛及び
不可避同伴不純物からなる金属組成をなす銅基合金、
銅61.0〜69.0重量%、アンチモン0.02〜
0.15重量%、錫0.1〜0.5重量%及びニッケル
0.1〜0.8重量%を含有し且つ残部が亜鉛及び不可
避同伴不純物からなる金属組成をなす銅基合金、又は
銅62.0〜69.0重量%、アンチモン0.02〜
0.15重量%、錫0.1〜0.5重量%及び燐0.0
2〜0.1重量%を含有し且つ残部が亜鉛及び不可避同
伴不純物からなる金属組成をなす銅基合金を使用するこ
とを提案するものである。
【0009】銅の含有量を、原材料合金において
62.0〜69.0重量%とし、原材料合金において
61.0〜69.0重量%とした理由は次の通りであ
る。すなわち、黄銅の熱間押出材又は熱間圧延材におい
てα相が多くなるのは、一般に、銅含有量が62重量%
以上の場合である。但し、後述する如く、ニッケルを含
有する場合は、これとの相乗効果により、銅含有量が6
2.0重量%未満であっても、61.0重量%以上であ
れば、安定したα単相組織を得ることが可能である。一
方、銅含有量を必要以上に多くすると、α相を容易に得
ることができるため、耐蝕性及び冷間加工性を向上させ
ることができる反面、熱間変形能が低下する。この熱間
変形能の低下は、特に、錫,アンチモンの含有量が増す
に従って顕著となる。また、熱間での変形抵抗は、銅含
有量が増大するに従って高くなり、熱間での加工に大き
な制約を受けることになる。これらの点から、銅の含有
量は62.0〜69.0重量%とし、ニッケルを含有す
る場合には61.0〜69.0重量%とした。特に、安
定した且つ優れた耐蝕性が得られ、熱間加工性,冷間加
工性,経済性を更に向上させるためには、銅含有量を6
2.5〜65.5重量%としておくことが好ましい。
【0010】アンチモンは、耐蝕性、特に耐脱亜鉛腐食
性を向上させるために添加される。本発明者が実験,研
究したところによれば、熱処理により安定したα相組織
が得られ且つアンチモンの偏析(アンチモンの局部的な
偏在)が解消される場合、アンチモンによって、充分良
好な(耐粒界腐食性も含めた)耐蝕性が得られることが
判明した。しかし、アンチモンの含有量が0.02重量
%未満では顕著な耐蝕性向上が認められず、逆に、含有
量が0.15重量%を超えると、熱間での変形能が著し
く低下する。このような点から、アンチモンの含有量は
0.02〜0.15重量%とした。
【0011】錫は、耐蝕性を向上させ、より安定した耐
蝕性銅基合金材とするために添加される。冒頭で述べた
アドミラルティ黄銅では錫を0.8重量%以上であり、
ネーバル黄銅では0.5重量%以上添加しているが、本
発明者が実験,研究したところによれば、錫の含有量が
0.5重量%未満であっても、0.1重量%以上添加す
ると、アンチモン或いはニッケル,燐の添加との相乗作
用と熱処理によって低融点金属である錫,アンチモンの
偏在(偏析)を解消すれば、耐蝕性に充分効果があり、
安定且つ優れた耐蝕性材料となり得ることが判明した。
逆に、錫を0.5重量%以上添加すると、錫による固溶
硬化と同時に非平衡であるが、実際の熱間押出材等に非
常に脆く硬い錫濃度の高いCu−Zn−Sn系の金属間
化合物であるγ相がマトリックスに析出し、冷間加工性
を阻害する。かかる冷間加工性の悪化は、錫濃度が高く
なればなる程、顕著となる。また、γ相の析出、特にそ
の析出形態(例えば、押出方向に長く連続して析出した
場合等)によっては、耐蝕性を大きく低下させる。さら
に、低融点金属である錫,アンチモンを含有する合金に
ついては、鋳造段階で錫,アンチモンの偏析或いは局部
的な偏在が生じ易いため、銅濃度との兼ね合いもある
が、錫を0.5重量%以上添加させると、熱間での変形
能が低下し(特に銅濃度が64重量%以上となると著し
く低下する)、熱間加工での歩留りが悪化する。また、
熱間での変形抵抗も高める。また、錫は非常に高価であ
るので、その経済的効果も含めて、錫の含有量は0.1
〜0.5重量%未満とした。
【0012】ニッケルは、アンチモンないし錫との相乗
効果によって、耐蝕性を向上させ、より安定した耐蝕性
材とすることができ、且つ機械的性質を改善するために
添加される。ニッケルの作用は、亜鉛当量が負であるた
め、その添加量を増すに従ってα相組織が多くなる。し
たがって、ニッケルを添加することによって、銅含有量
を61.0重量%程度にまで少なくしても、β相の増加
を阻止しうると共に、低融点金属であるアンチモン,錫
の偏析を緩和し、アンチモン,錫をより有効に耐蝕性に
活用させる役目をする。さらに、安定したα単相組織で
あるにも拘わらず、機械的強度の高い合金材が得られ
る。このような効果は、ニッケルの添加量が0.1重量
%未満ではさほど期待できないし、かといって、0.8
重量%を超えて添加しても、耐蝕性,機械的強度の面で
さほど向上する訳でもなく、寧ろ、経済性からすれば問
題がある。このような理由から、ニッケルの含有量は
0.1〜0.8重量%とした。
【0013】燐は、アンチモン,錫の添加と相俟って、
耐脱亜鉛腐食性の更なる向上を図るために添加する。か
かる耐蝕性の向上は、燐の添加量が0.02重量%未満
ではさほど期待できない。逆に、燐を0.1重量%を超
えて添加すると、燐が粒界へ偏析し易くなり、粒界腐
食,応力腐食,クラックを生じる虞れがあり、感受性が
高くなる。ところで、燐をニッケルと共に添加すると、
燐とニッケルとの金属間化合物を形成する。このため、
燐又はニッケルの一方を添加した場合に比して、耐蝕性
向上への寄与率が極めて低くなる。しかも、上記金属間
化合物の形成によって、冷間加工性が阻害される。この
ような点から、燐の含有量を0.02〜0.1重量%と
し、燐とニッケルとを共添させないようにした。
【0014】ところで、熱間押出又は熱間圧延は、通
常、700〜800℃の高温条件下で行われるため、そ
の押出材,圧延材(又は、熱間押出,圧延後に、更に、
冷間抽伸若しくは冷間圧延した抽伸材,圧延材)は、非
平衡状の組織となり、耐蝕性に悪影響を与えるβ相が残
留する虞れがある。同時に、低融点金属であるアンチモ
ン,錫,燐は、結晶粒界で偏析し易く、局部的な偏在を
生じる。その結果、耐蝕性が低下することになる。
【0015】そこで、本発明では、かかる点に鑑み、上
記銅基合金〜を原材料とする熱間押出材,熱間圧延
材,冷間抽伸材,冷間圧延材に、更に適当な熱処理を施
しておくことによって、銅基合金材の耐蝕性を向上させ
ることを提案する。
【0016】すなわち、押出材等を熱処理することによ
って、残留するβ相を消滅させ、粒界での元素の局部的
な偏在を解消し、粒内及び粒界での各元素の濃度分布を
均一化させることにより、飛躍的に耐粒界腐蝕性を含め
た耐蝕性を高めることができ、同時に、粒界でアンチモ
ン,錫,燐の濃度が高くなることによる延性の低下を防
止することができるようにしたのである。
【0017】而して、この熱処理は、以下の理由から、
熱間,冷間加工後に、470〜600℃で30分〜2時
間加熱した後、その加熱温度より50℃以上降温される
まで又は450℃となるまで、3℃/分以下の冷却速度
で冷却させる条件で行うことが好ましく、かかる条件で
熱処理することによって、銅基合金材の耐蝕性を飛躍的
に向上させ得る。
【0018】すなわち、本発明者が実験,研究したとこ
ろによると、加熱温度が600℃を超えるとβ相の消滅
は却って困難となり、且つエネルギ的にも無駄であり、
逆に、470℃未満であると、粒界での元素の局部的な
偏在の解消及びβ相消滅に多くの時間を要することが判
明した。さらに、加熱時間が30分未満では上記した熱
処理効果が然程発揮されない。逆に、加熱時間が2時間
を超えても上記した熱処理効果は殆ど変わらず、経済的
に無駄である。また、加熱後の冷却条件次第では、より
安定したα単相材を得ることができること、及びアンチ
モン,錫,燐の各元素をより安定した結晶粒界,粒内に
均一に分布させ得ることも判明し、種々の実験データ等
から、加熱後、材料温度が加熱温度より50℃以上降温
されるまで又は450℃となるまでは、その冷却速度を
3℃/分以下としておくことが最適であると結論した。
【0019】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0020】実施例として、表1に示す組成の鋳造塊
(外径220mm,長さ420mmの円柱形状のもの)
を熱間(750℃)で押出加工して、外径60mm,肉
厚3mmの管状押出材A〜H(各2本)を得た。また、
A〜H(各2本のうちの1本)を更に得て冷間抽伸し
て、外径50mm,肉厚2mmの管状抽伸材a〜hを得
た。そして、A〜Gについては押出後、又a〜gについ
ては抽伸後、30分間550℃に保持し、その後、2℃
/分の冷却速度で450℃まで徐冷した上、空冷した。
H,hはE,eと同一の合金組成をなすものであるが、
これらについては上記と異なる条件で熱処理した。すな
わち、Hについては押出後、hについては抽伸後、30
分間550℃に保持し、その後、4℃/分の冷却速度で
450℃まで徐冷した上、空冷した。なお、鋳塊つまり
原材料合金の組成上、A,B,a,bは前記に該当
し、C,D,c,dは前記に該当し、E,F,H,
e,f,hは前記に該当し、G,gは前記に該当す
る。
【0021】また、比較例として、表2に示す組成の鋳
塊(外径220mm,長さ420mmの円柱形状のも
の)を熱間(750℃)で押出加工して、管状押出材I
〜O(各2本)を得た。この押出形状は上記実施例と同
一(外径60mm,肉厚3mm)であるが、I,Jにつ
いては、上記寸法に熱間で押し出したところ、その途中
で押出不能となり且つクラックが生じたので、押出条件
を緩和した(外径75mm,肉厚5mm)。しかし、こ
の場合にも一部にクラックを生じた。また、K〜O(各
2本のうちの1本)を更に冷間抽伸して、上記実施例と
同一(外径50mm,肉厚2mm)の管状抽伸材k〜o
を得た。l〜nについては、抽伸時にクラックを生じ
た。さらに、I,J(各2本のうちの1本)を、これら
については上記した如くクラックが生じていたが、その
まま冷間抽伸して、外径60mm,肉圧3.5mmの管
状抽伸材i,jを得た。そして、O,oについては、上
記実施例と同一条件で熱処理した。すなわち、Oについ
ては押出後、oについては抽伸後、30分間550℃に
保持し、その後、2℃/分の冷却速度で450℃まで徐
冷した上、空冷した。また、i〜nについては、抽伸
後、470℃,2時間の条件で一般的な焼鈍を行い、空
冷した。なお、原材料合金の組成上、I,iは「CDA
C44400」にいうアンチモン含有のアドミラルテ
ィ黄銅に相当し、J,jは「CDA C44500」に
いう燐含有のアドミラルティ黄銅に相当し、K,kは
「JIS C2700」又は「JIS C2680」に
いう一般黄銅に相当し、L,lは「JIS C462
1」にいうネーバル黄銅に相当し、M,mは「CDA
C46500」にいう砒素含有のネーバル黄銅に相当
し、N,nは「CDA C46600」にいうアンチモ
ン含有のネーバル黄銅に相当する。
【0022】次に、上記各押出材及び抽伸材について、
「ISO 6509」に定める方法により脱亜鉛腐蝕試
験を行ったところ、表3及び表4に示す如き結果(最大
脱亜鉛腐蝕深さ)が得られた。なお、この脱亜鉛腐蝕試
験にあっては、A〜O,a〜oから採取した各試料を、
暴露試料表面が押出材,抽伸材の押出し方向に対して直
角となるようにしてフェノール樹脂材に埋込み、試料表
面をエメリー紙により1200番まで研磨した後、これ
を純水中で超音波洗浄して乾燥した。かくして得られた
被腐蝕試験試料を、1.0%の塩化第2銅2水和塩(C
uCl2 ・2H2O)の水溶液(12.7g/l)中に
浸漬し、75℃の温度条件下で24時間保持した後、水
溶液中から取出して、その脱亜鉛腐蝕深さの最大値を測
定した。
【0023】さらに、前記した各鋳塊から高さ25mm
の正方形柱状(20mm×20mm)の試験片を切出し
て、各試験片について750℃で熱間圧縮試験(圧縮率
60%)を行い、その変形能を目視判断すると共に、圧
縮率20%での変形抵抗を測定した。その結果は、表3
及び表4に示す通りである。なお、変形能は、試験片の
側面におけるクラックの状態から目視により判断したも
ので、クラックが全く生じなかったものを○、小さなク
ラックが生じたものを△、大きなクラックが生じたもの
を×とした。
【0024】以上の加工経過及び試験結果から理解され
るように、本発明に係るA〜H,a〜hは、熱間加工性
についてはアドミラルティ黄銅I,Jより優れ、一般黄
銅Kと同等の加工性を有するものであり、冷間加工性に
ついても、ネーバル黄銅l〜nよりも優れたものであ
る。しかも、適当な熱処理を施しておくことにより、比
較例において最も耐蝕性に優れるアドミラルティ黄銅
I,J,i,jと同等若しくはそれ以上の耐脱亜鉛腐食
性を有するものである。特に、組成が同一であるE,e
とH,hとを比較してみれば分かるように、冒頭で述べ
た条件で熱処理することによって、耐蝕性を飛躍的に向
上させ得ることが理解される。また、表3からも理解さ
れるように、熱間での変形能,変形抵抗についての良好
性も担保されている。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【0029】
【発明の効果】以上の説明からも容易に理解されるよう
に、本発明によれば、薄肉管等の所望形状の熱間押出
材,熱間圧延材,冷間抽伸材,冷間圧延材を、歩留りが
悪くならず且つ製造工程が徒に増加することなく、容易
に且つ安価に提供することができる。しかも、適当な熱
処理を施しておくことによって、耐蝕性を飛躍的に向上
させることができる。したがって、本発明の耐蝕性銅基
合金材によれば、従来の黄銅系合金材では使用できなか
った(或いは、使用させた場合に、耐蝕性の点で大きな
問題を生じていた)温水,汚染水,海水等を扱う分野に
まで、その用途を拡大することができる。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 銅62.0〜69.0重量%及びアンチ
    モン0.02〜0.15重量%を含有し且つ残部が亜鉛
    及び不可避同伴不純物からなる金属組成をなし、熱間で
    押出若しくは圧延され又はその後に冷間で抽伸若しくは
    圧延された耐蝕性銅基合金材。
  2. 【請求項2】 銅62.0〜69.0重量%、アンチモ
    ン0.02〜0.15重量%及び錫0.1〜0.5重量
    %未満を含有し且つ残部が亜鉛及び不可避同伴不純物か
    らなる金属組成をなし、熱間で押出若しくは圧延され又
    はその後に冷間で抽伸若しくは圧延された耐蝕性銅基合
    金材。
  3. 【請求項3】 銅61.0〜69.0重量%、アンチモ
    ン0.02〜0.15重量%、錫0.1〜0.5重量%
    及びニッケル0.1〜0.8重量%を含有し且つ残部が
    亜鉛及び不可避同伴不純物からなる金属組成をなし、熱
    間で押出若しくは圧延され又はその後に冷間で抽伸若し
    くは圧延された耐蝕性銅基合金材。
  4. 【請求項4】 銅62.0〜69.0重量%、アンチモ
    ン0.02〜0.15重量%、錫0.1〜0.5重量%
    及び燐0.02〜0.1重量%を含有し且つ残部が亜鉛
    及び不可避同伴不純物からなる金属組成をなし、熱間で
    押出若しくは圧延され又はその後に冷間で抽伸若しくは
    圧延された耐蝕性銅基合金材。
  5. 【請求項5】 470〜600℃で30分〜2時間加熱
    した後、その加熱温度より50℃以上降温されるまで又
    は450℃となるまで、3℃/分以下の冷却速度で冷却
    させることを条件として熱処理した、請求項1、請求項
    2、請求項3又は請求項4に記載する耐蝕性銅基合金
    材。
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Cited By (4)

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