JPH07184641A - 6ホスホグルコン酸脱水素酵素を産生する細菌株と、その大量増殖方法 - Google Patents

6ホスホグルコン酸脱水素酵素を産生する細菌株と、その大量増殖方法

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JPH07184641A
JPH07184641A JP32933193A JP32933193A JPH07184641A JP H07184641 A JPH07184641 A JP H07184641A JP 32933193 A JP32933193 A JP 32933193A JP 32933193 A JP32933193 A JP 32933193A JP H07184641 A JPH07184641 A JP H07184641A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド
(NAD)に特異的に作用する6ホスホグルコン酸脱水
素酵素(6PGDH)を産生するロイコノストック・ラ
クティスSHO47とロイコノストック・ラクティス
HO54、およびこれら細菌株の大量増殖方法。 【効果】 NADに特異性が高く、かつ安定性にも優
れ、各種測定用試薬に利用可能な6PGDHを効率よく
得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ニコチンアミド・ア
デニン・ジヌクレオチド(以下NADと略記する)に特
異的に作用する6ホスホグルコン酸脱水素酵素(以下6
PGDHと略記する)を産生する新規な細菌株と、これ
ら細菌株の大量増殖方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、酵素は、その反応の安定性、基質
との特異的結合性、および光学的定量化の容易性などの
優れた特性が注目され、医療分野や食品の成分分析など
に広く触媒として利用されている。なかでも6PGDH
は、とくにグルコース6リン酸脱水素酵素(以下G6P
DHと略記する)との共存下でグルコース6リン酸(以
下G6Pと略記する)を定量する場合に、高い測定感度
が得られるという点においてその有用性が指摘されてい
る。すなわち、そのようなG6P測定の場合、一般的に
はG6PDHまたは6PGDHの反応により生成した還
元型NAD(以下NADHと略記する)または還元型ニ
コチンアミド・アデニン・ジヌクレオチドリン酸(以
下、NADPHと略記する)の340nmにおける吸光
度を分光学的に測定するが、さらにジアホラーゼやフェ
ナジンメトサルフェート(以下PMSと略記する)およ
びその誘導体により、生成したNAD(P)Hを基質と
してニトロブルーテトラゾリウム(以下NBTと略記す
る)などのテトラゾリウム塩や2,6−ジクロロフェノ
ールインドフェノール(以下DCPIPと略記する)な
どを還元発色させ、可視部で測定することもできる。
【0003】この様なG6Pまたは6PGを経由する各
種分析対象を可視部域で測定する場合、ジアホラーゼは
NADHに特異性が高く、またPMSにも適用できるた
め、NADに対して特異的に作用する6PGDHを利用
することが望ましい。6PGDHには、補酵素として、
ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチドリン酸(以
下、NADPと略記する)に特異的に反応するもの(ヨ
ーロピアン・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー
(European Journal of Biochemistry)、130巻、3
91頁(1983年))、NADとNADP両方に作用
するもの(アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカ
ル・ケミストリー(Agricultural and Biological Chem
istry )、51巻、1257頁(1983年))、NA
Dのみに作用するもの(エフエムビーエス・マイクロバ
イオロジー・レターズ(FMBS Microbiology Letters
)、52巻、199頁(1988年))が知られてい
る。このNADのみに作用する6PGDHはメタノール
資化性菌であるメチロバチルス・フラゲラタム(Methyr
obacillus flagellatum )由来のものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】メタノール資化性菌で
あるメチロバチルス・フラゲラタム(Methyrobacillus f
lagellatum )KT1株はNADに特異性の高い6PG
DHを微量生産することが知られているが、その6PG
DHは、4℃で3日間保存しただけで90%失活するよ
うな非常に不安定なものであり実用的でなかった。その
ため、この酵素を実際に各種測定用試薬中へ適用するこ
とは不可能であった。また、菌体中の酵素含有量も非常
に微量であるため、酵素を効率よく得ることはできなか
った。
【0005】このような理由から、NADに特異的に作
用し、安定性に優れた6PGDHを効率よく得るための
手段が強く要望されていた。この発明は、以上の通りの
事情に鑑みてなされたものであり、NADに特異的に作
用し、安定性にも優れた6PGDHを産生する新しい細
菌株と、これら細菌株の大量増殖方法を提供することを
目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題
を解決するものとして、NADに特異的に反応する6P
GDHを産生するストレプトコッカス・ラフィノラクテ
ィスSHO47(FERM P−13970)と、スト
レプトコッカス・ラクティスSHO54(FERM P
−13971)を提供する。
【0007】またこの発明は、上記細菌株を、酵母エキ
ス1重量%以上含有の栄養培地にて培養することを特徴
とする上記細菌株の大量増殖方法をも提供する。以下、
この発明について詳しく説明する。まず、この発明の細
菌株ストレプトコッカス・ラフィノラクティスSHO4
7(以下、SHO47株と記載することがある)と、同
じくストレプトコッカス・ラクティスSHO54株(以
下、SHO54株と記載することがある)について、そ
れぞれの菌学的性質を表1〜表4に示す。
【0008】
【表1】
【0009】
【表2】
【0010】
【表3】
【0011】
【表4】
【0012】表1に示した菌学的性質から、バージィの
マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジ
ー(Bargey's Mannual of Systematic Bacteriology )
に基づき検索した結果、SHO47株はストレプトコッ
カス・ラフィノラクティス(Streptococcus raffinol
actis )に属する細菌と判明したが、既存菌株とは異な
っており、新菌株と判断できるので、ストレプトコッカ
ス・ラフィノラクティスSHO47と命名し、平成5年
11月17日付で通産省工業技術院生命工学工業技術研
究所に寄託してFERM P−13970なる受託番号
を得た。
【0013】また同様に検索した結果、SHO54株は
ストレプトコッカス・ラクティス(Streptococcus la
ctis)に属する新菌株と判明したため、ストレプトコッ
カス・ラクティスSHO54と命名し、平成5年11月
17日付で上記寄託機関に寄託し、FERM P−13
971なる受託番号を得た。SHO47株およびSHO
54株を各々培養する際の栄養培地に添加する窒素源と
しては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、ペプト
ン、肉エキス、酵母エキスなどの無機物または有機物が
使用できる。
【0014】また、炭素源としては、グルコース、シュ
ークロース、ラクトース、ガラクトースなどが使用でき
る。さらに、無機塩類としては、カリウム、ナトリウ
ム、亜鉛、鉄、マグネシウム、マンガンなどの各塩類、
ビタミン類などを使用してもよい。ただし、これらの細
菌株を短時間に効率よく大量増殖させる場合には、後記
試験例にも示した通り、培地中に酵母エキスを1重量%
以上添加する。
【0015】培養は、嫌気的あるいは微好気的な条件で
行う。培養温度は20℃から42℃、好ましくは30℃
〜42℃、最適には35℃〜42℃で行う。培地のpH
は5.8〜7.2、好ましくは6.0〜7.0、最適に
は6.4〜6.7である。このような条件下で3〜20
時間、好ましくは6〜12時間培養することにより、6
PGDH産生能を有する菌体を得ることができる。
【0016】実際に6PGDHを単離・精製するには、
例えば上記のごとくSHO47株またはSHO54株を
培養し、培養終了後、遠心分離や濾過などの操作で培養
液から菌体を回収し、菌体から粗酵素液を抽出し、精製
すればよい。抽出法には、超音波破砕、フレンチプレ
ス、界面活性剤処理、リゾチーム処理などいずれを用い
てもよく、こうした処理後、遠心分離により細胞片を除
去し、粗酵素液を得る。粗酵素液については、イオン交
換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフ
ィー、疎水クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラ
フィー等のクロマトグラフィーを組み合わせることによ
り、目的とする6PGDHを単離、精製することができ
る。イオン交換クロマトグラフィーにはQ−セファロー
スFF(ファルマシア社製)、DEAE−セファロース
カラム(ファルマシア社製)など、アフィニティークロ
マトグラフィーには、プロシオンブルーH−ERD(I
CI製)、ブルーセファロースCL−6Bカラム(ファ
ルマシア社製)など、疎水クロマトグラフィーには、オ
クチル−セファロースCL−4Bカラム(ファルマシア
社製)など、ゲル濾過クロマトグラフィーには、セファ
デックスカラムなどが挙げられる。また、これらのカラ
ムクロマトグラフィーに加え、硫酸ストレプトマイシン
や硫酸プロタミン処理による除核酸、硫酸アンモニウム
処理によるタンパク質の塩析を行ってもよい。
【0017】次にこの発明のSHO47株およびSHO
54株から得られる6PGDHの理化学的性質を以下に
示す。 (1)作用:下記の反応式の反応を触媒する。
【0018】
【化1】
【0019】(2)基質特異性:NADを補酵素とした
ときの活性値を100とすると、NADPを用いた場合
は、1以下である。 (3)至適pH:6.5〜8.5(温度30℃) (4)安定pH:5〜9 (5)作用適温の範囲:20℃から50℃までの範囲。
(MES緩衝液pH7.2) (6)安定性:50mM MES緩衝液(pH7.2)
中、2mMのエチレン
【0020】ジアミン4酢酸(以下EDTAと略記す
る。)の存在下、室温で30日放置後90%以上の残存
活性を有する。 (7)分子量:約13万〜26万(セファクリルS−3
00ゲルクロマトグラフィー法による測定において、p
H6.0で行った場合約13万。pH8.0で行った場
合約26万) (8)活性の測定法:1.7mMの6PG、2.0mM
のNADおよび8.0mMの塩化マグネシウム(MgC
2 )を含むグリシル・グリシン緩衝液(pH7.5)
に酵素溶液を加え、緩やかに混和した後、分光光度計で
340nmにおける吸光度変化を測定した。なお測定
は、30℃で行った。1分間に1マイクロモルのNAD
Hを生成させる酵素量を1単位(U)とした。
【0021】次に試験例を示して、この発明の大量増殖
方法における酵母エキスの効果について詳しく説明す
る。 試験例 DIFCO社製MRS培地400ml(500ml三角
フラスコ中)にSHO47株およびSHO54株を各々
接種し、40℃で12時間培養した。
【0022】一方、酵母エキス含量を0.5%、1%ま
たは2%とした以外は実施例1と同一の組成からなる培
地1〜3を各々600ml調製し、これらの培地に上記
SHO47株およびSHO54株の培養液30mlずつ
を接種し、40℃で10時間、200rpmで攪拌しな
がら非通気条件下、4NのNaOHでpHを6.4に調
整しながら培養した。培養終了後、各培養液200ml
を実施例1と同様に遠心分離し、菌体収量を算出した。
また、集めた菌体から粗抽出液を調製し、6PGDH活
性を測定した。結果を表5に示す。
【0023】
【表5】
【0024】表5の結果から明らかなように、いずれの
培養菌体もその湿菌体1kg当たりの6PGDH活性は
同程度であったが、酵母エキスが1%以上の培地を用い
た場合では、酵母エキスが0.5%の培地の場合の約4
〜8倍の菌体収量を示した。このことから、6PGDH
を大量に得る場合、すなわち、細菌株を大量増殖させる
場合には、SHO47株またはSHO54株の培養培地
中の酵母エキス含量は1%以上とすることが確認され
た。
【0025】
【実施例】次に、実施例を示してこの発明の細菌株をさ
らに詳細かつ具体的に説明するが、この発明は以下の例
に限定されるものではない。 実施例1 グルコース3.0%(重量%を表す。以下同様)、酵母
エキス1.0%、ペプトン0.5%、クエン酸三ナトリ
ウム・二水和物0.5%、酢酸ナトリウム0.2%、硫
酸マグネシウム・七水和物0.02%、硫酸マンガン・
四〜五水和物0.005%、ツイン80 0.1%(容
量%)、pH6.4よりなる培地25リットルを30リ
ットル容のジャーファーメンターに仕込み、121℃で
15分間オートクレーブ滅菌した後、ストレプトコッカ
ス・ラフィノラクティス(Streptococcus raffinolac
tis )SHO47株(FERM P−13970)を接
種し、40℃で7時間、100rpmで攪拌し、通気し
ない条件下、4NのNaOHでpHを6.4に調整しな
がら培養した。遠心分離により菌体を採取して約160
gの菌体を得た。得られた菌体を凍結状態で保存した。
【0026】次に、凍結菌体約100gをEDTAおよ
び2−メルカプトエタノールを2mMずつ含む20mM
リン酸緩衝液(pH7.0)1リットルに懸濁し、これ
にTriton X−100を0.01%、リゾチーム
を0.2mg/ml、DNase Iを0.2mg/m
lになるように添加し、2時間室温で攪拌後、遠心分離
により細胞片を除去し、6PGDHを含む粗酵素液を
得、菌体中の6PGDH含量を測定したところ18万U
/kg湿菌体の値を示した。
【0027】この粗酵素液に酢酸を加えpH5.8に調
整し、予め20mMリン酸同緩衝液(pH5.75)で
平衡化したプロシオンブルーH−BRDカラム(プロシ
オンブルーH−BRDはICI社より購入)に通じ、1
00mMのリン酸緩衝液(pH6.8)で溶出した。濃
縮後、予め20mMのトリス−塩酸緩衝液(pH8.
0)で平衡化したQ−セファロースFFカラム(ファル
マシア社製)に通じ、KClを平衡液に加えた溶液で溶
出させたところ、KCl濃度0.40〜0.45Mの近
くに活性画分が溶出した。この溶出画分を濃縮後、硫酸
アンモニウムを0.5Mになるように加え、予め1Mの
硫酸アンモニウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH
5.5)で平衡化されたオクチルセファロースカラムC
L−4B(ファルマシア社製)に通じ、同緩衝液で溶出
した。活性画分を集めて濃縮後、脱塩した。このように
して得られた6PGDHは、ポリアクリルアミドゲル電
気泳動において単一なバンドとして検出され、精製酵素
標品を得ることができた。また、活性の収率は約55%
で、酵素1mg当たり約110単位の比活性を示し、そ
の精製度は粗酵素液を1とすると約33倍であった。 実施例2 実施例1と同様の培地、条件により、ストレプトコッカ
ス・ラクティスSHO54(FERM P−1397
1)を培養し、約180gの菌体を得た。得られた菌体
は同様に凍結状態で保存した。
【0028】次に、これらの菌体から実施例1と同様に
して粗抽出液を得、菌体中の6PGDH含量を測定した
ところ、15万U/kg湿菌体の値を示した。さらに、
実施例1と同様にして粗抽出液から精製酵素標品を得
た。活性の収率は約55%で、酵素1mg当り約130
単位の比活性を示し、その精製度は粗酵素液を1とする
と約25倍であった。
【0029】
【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明の新
規な細菌株およびその大量増殖方法により、NADに対
して特異的に作用し、かつ安定性に優れた6PGDHを
効率よく得ることが可能となる。このようにして得られ
た6PGDHは、その優れた安定性により各種測定用試
薬に広く利用することができる。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成7年3月15日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 6ホスホグルコン酸脱水素酵素を産生
する細菌株と、その大量増殖方法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ニコチンアミド・ア
デニン・ジヌクレオチド(以下NADと略記する)に特
異的に作用する6ホスホグルコン酸脱水素酵素(以下6
PGDHと略記する)を産生する新規な細菌株と、これ
ら細菌株の大量増殖方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、酵素は、その反応の安定性、基質
との特異的結合性、および光学的定量化の容易性などの
優れた特性が注目され、医療分野や食品の成分分析など
に広く触媒として利用されている。なかでも6PGDH
は、とくにグルコース6リン酸脱水素酵素(以下G6P
DHと略記する)との共存下でグルコース6リン酸(以
下G6Pと略記する)を定量する場合に、高い測定感度
が得られるという点においてその有用性が指摘されてい
る。すなわち、そのようなG6P測定の場合、一般的に
はG6PDHまたは6PGDHの反応により生成した還
元型NAD(以下NADHと略記する)または還元型ニ
コチンアミド・アデニン・ジヌクレオチドリン酸(以
下、NADPHと略記する)の340nmにおける吸光
度を分光学的に測定するが、さらにジアホラーゼやフェ
ナジンメトサルフェート(以下PMSと略記する)およ
びその誘導体により、生成したNAD(P)Hを基質と
してニトロブルーテトラゾリウム(以下NBTと略記す
る)などのテトラゾリウム塩や2,6−ジクロロフェノ
ールインドフェノール(以下DCPIPと略記する)な
どを還元発色させ、可視部で測定することもできる。
【0003】この様なG6Pまたは6PGを経由する各
種分析対象を可視部域で測定する場合、ジアホラーゼは
NADHに特異性が高く、またPMSにも適用できるた
め、NADに対して特異的に作用する6PGDHを利用
することが望ましい。6PGDHには、補酵素として、
ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチドリン酸(以
下、NADPと略記する)に特異的に反応するもの(ヨ
ーロピアン・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー
(European Journal of Biochemistry)、1巻、170
頁(1967年))、NADとNADP両方に作用する
もの(アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・
ケミストリー(Agricultural and Biological Chemistr
y )、46巻、391頁(1982年))、NADのみ
に作用するもの(エフエムビーエス・マイクロバイオロ
ジー・レターズ(FMBS Microbiology Letters )、52
巻、199頁(1988年))が知られている。このN
ADのみに作用する6PGDHはメタノール資化性菌で
あるメチロバチルス・フラゲラタム(Methyrobacillus
flagellatum )由来のものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】メタノール資化性菌で
あるメチロバチルス・フラゲラタム(Methyrobacillus f
lagellatum )KT1株はNADに特異性の高い6PG
DHを微量生産することが知られているが、その6PG
DHは、4℃で3日間保存しただけで90%失活するよ
うな非常に不安定なものであり実用的でなかった。その
ため、この酵素を実際に各種測定用試薬中へ適用するこ
とは不可能であった。また、菌体中の酵素含有量も非常
に微量であるため、酵素を効率よく得ることはできなか
った。
【0005】このような理由から、NADに特異的に作
用し、安定性に優れた6PGDHを効率よく得るための
手段が強く要望されていた。この発明は、以上の通りの
事情に鑑みてなされたものであり、NADに特異的に作
用し、安定性にも優れた6PGDHを産生する新しい細
菌株と、これら細菌株の大量増殖方法を提供することを
目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題
を解決するものとして、NADに特異的に反応する6P
GDHを産生するロイコノストック・ラクティスSHO
47(FERM P−13970)と、ロイコノストッ
ク・ラクティスSHO54(FERM P−1397
1)を提供する。
【0007】またこの発明は、上記細菌株を、酵母エキ
ス1重量%以上含有の栄養培地にて培養することを特徴
とする上記細菌株の大量増殖方法をも提供する。以下、
この発明について詳しく説明する。まず、この発明の細
菌株ロイコノストック・ラクティスSHO47(以下、
SHO47株と記載することがある)と、同じくロイコ
ノストック・ラクティスSHO54株(以下、SHO5
4株と記載することがある)について、それぞれの菌学
的性質を表1〜表4に示す。
【0008】
【表1】
【0009】
【表2】
【0010】
【表3】
【0011】
【表4】
【0012】表1に示した菌学的性質から、バージィの
マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジ
ー(Bargey's Mannual of Systematic Bacteriology )
およびメソッズ・イン・マイクロバイオロジー(METHODS
IN MICROBIOLOGY) 第16巻、第147〜178頁に基
づき検索した結果、SHO47株はロイコノストック・
ラクティス( Leuconostoc lactis )に属する細菌と
判明したが、既存菌株とは異なっており、新菌株と判断
できるので、ロイコノストック・ラクティスSHO47
と命名し、平成5年11月17日付で通産省工業技術院
生命工学工業技術研究所に寄託してFERM P−13
970なる受託番号を得た。
【0013】また同様に検索した結果、SHO54株は
ロイコノストック・ラクティスLeuconostoc lacti
s)に属する新菌株と判明したため、ロイコノストック
・ラクティスSHO54と命名し、平成5年11月17
日付で上記寄託機関に寄託し、FERM P−1397
1なる受託番号を得た。このSHO47株およびSHO
54株を各々培養する際の栄養培地に添加する窒素源と
しては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、ペプト
ン、肉エキス、酵母エキスなどの無機物または有機物が
使用できる。
【0014】また、炭素源としては、グルコース、シュ
ークロース、ラクトース、ガラクトースなどが使用でき
る。さらに、無機塩類としては、カリウム、ナトリウ
ム、亜鉛、鉄、マグネシウム、マンガンなどの各塩類、
ビタミン類などを使用してもよい。ただし、これらの細
菌株を短時間に効率よく大量増殖させる場合には、後記
試験例にも示した通り、培地中に酵母エキスを1重量%
以上添加する。
【0015】培養は、嫌気的あるいは微好気的な条件で
行う。培養温度は20℃から42℃、好ましくは30℃
〜42℃、最適には35℃〜42℃で行う。培地のpH
は5.8〜7.2、好ましくは6.0〜7.0、最適に
は6.4〜6.7である。このような条件下で3〜20
時間、好ましくは6〜12時間培養することにより、6
PGDH産生能を有する菌体を得ることができる。
【0016】実際に6PGDHを単離・精製するには、
例えば上記のごとくSHO47株またはSHO54株を
培養し、培養終了後、遠心分離や濾過などの操作で培養
液から菌体を回収し、菌体から粗酵素液を抽出し、精製
すればよい。抽出法には、超音波破砕、フレンチプレ
ス、界面活性剤処理、リゾチーム処理などいずれを用い
てもよく、こうした処理後、遠心分離により細胞片を除
去し、粗酵素液を得る。粗酵素液については、イオン交
換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフ
ィー、疎水クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラ
フィー等のクロマトグラフィーを組み合わせることによ
り、目的とする6PGDHを単離、精製することができ
る。イオン交換クロマトグラフィーにはQ−セファロー
スFF(ファルマシア社製)、DEAE−セファロース
カラム(ファルマシア社製)など、アフィニティークロ
マトグラフィーには、プロシオンブルーH−ERD(I
CI製)、ブルーセファロースCL−6Bカラム(ファ
ルマシア社製)など、疎水クロマトグラフィーには、オ
クチル−セファロースCL−4Bカラム(ファルマシア
社製)など、ゲル濾過クロマトグラフィーには、セファ
デックスカラムなどが挙げられる。また、これらのカラ
ムクロマトグラフィーに加え、硫酸ストレプトマイシン
や硫酸プロタミン処理による除核酸、硫酸アンモニウム
処理によるタンパク質の塩析を行ってもよい。
【0017】次にこの発明のSHO47株およびSHO
54株から得られる6PGDHの理化学的性質を以下に
示す。 (1)作用:下記の反応式の反応を触媒する。
【0018】
【化1】
【0019】(2)基質特異性:NADを補酵素とした
ときの活性値を100とすると、NADPを用いた場合
は、1以下である。 (3)至適pH:6.5〜8.5(温度30℃) (4)安定pH:5〜9 (5)作用適温の範囲:20℃から50℃までの範囲。
(MES緩衝液pH7.2) (6)安定性:50mM MES緩衝液(pH7.2)
中、2mMのエチレン
【0020】ジアミン4酢酸(以下EDTAと略記す
る。)の存在下、室温で30日放置後90%以上の残存
活性を有する。 (7)分子量:約13万〜26万(セファクリルS−3
00ゲルクロマトグラフィー法による測定において、p
H6.0で行った場合約13万。pH8.0で行った場
合約26万) (8)活性の測定法:1.7mMの6PG、2.0mM
のNADおよび8.0mMの塩化マグネシウム(MgC
2 )を含むグリシル・グリシン緩衝液(pH7.5)
に酵素溶液を加え、緩やかに混和した後、分光光度計で
340nmにおける吸光度変化を測定した。なお測定
は、30℃で行った。1分間に1マイクロモルのNAD
Hを生成させる酵素量を1単位(U)とした。
【0021】次に試験例を示して、この発明の大量増殖
方法における酵母エキスの効果について詳しく説明す
る。 試験例 DIFCO社製MRS培地400ml(500ml三角
フラスコ中)にSHO47株およびSHO54株を各々
接種し、40℃で12時間培養した。
【0022】一方、酵母エキス含量を0.5%、1%ま
たは2%とした以外は実施例1と同一の組成からなる培
地1〜3を各々600ml調製し、これらの培地に上記
SHO47株およびSHO54株の培養液30mlずつ
を接種し、40℃で10時間、200rpmで攪拌しな
がら非通気条件下、4NのNaOHでpHを6.4に調
整しながら培養した。培養終了後、各培養液200ml
を実施例1と同様に遠心分離し、菌体収量を算出した。
また、集めた菌体から粗抽出液を調製し、6PGDH活
性を測定した。結果を表5に示す。
【0023】
【表5】
【0024】表5の結果から明らかなように、いずれの
培養菌体もその湿菌体1kg当たりの6PGDH活性は
同程度であったが、酵母エキスが1%以上の培地を用い
た場合では、酵母エキスが0.5%の培地の場合の約4
〜8倍の菌体収量を示した。このことから、6PGDH
を大量に得る場合、すなわち、細菌株を大量増殖させる
場合には、SHO47株またはSHO54株の培養培地
中の酵母エキス含量は1%以上とすることが確認され
た。
【0025】
【実施例】次に、実施例を示してこの発明の細菌株をさ
らに詳細かつ具体的に説明するが、この発明は以下の例
に限定されるものではない。実施例1 グルコース3.0%(重量%を表す。以下同様)、酵母
エキス1.0%、ペプトン0.5%、クエン酸三ナトリ
ウム・二水和物0.5%、酢酸ナトリウム0.2%、硫
酸マグネシウム・七水和物0.02%、硫酸マンガン・
四〜五水和物0.005%、ツイン80 0.1%(容
量%)、pH6.4よりなる培地25リットルを30リ
ットル容のジャーファーメンターに仕込み、121℃で
15分間オートクレーブ滅菌した後、ロイコノストック
・ラクティスLeuconostoc lactis)SHO47株
(FERM P−13970)を接種し、40℃で7時
間、100rpmで攪拌し、通気しない条件下、4Nの
NaOHでpHを6.4に調整しながら培養した。遠心
分離により菌体を採取して約160gの菌体を得た。得
られた菌体を凍結状態で保存した。
【0026】次に、凍結菌体約100gをEDTAおよ
び2−メルカプトエタノールを2mMずつ含む20mM
リン酸緩衝液(pH7.0)1リットルに懸濁し、これ
にTriton X−100を0.01%、リゾチーム
を0.2mg/ml、DNase Iを0.2mg/m
lになるように添加し、2時間室温で攪拌後、遠心分離
により細胞片を除去し、6PGDHを含む粗酵素液を
得、菌体中の6PGDH含量を測定したところ18万U
/kg湿菌体の値を示した。
【0027】この粗酵素液に酢酸を加えpH5.8に調
整し、予め20mMリン酸同緩衝液(pH5.75)で
平衡化したプロシオンブルーH−BRDカラム(プロシ
オンブルーH−BRDはICI社より購入)に通じ、1
00mMのリン酸緩衝液(pH6.8)で溶出した。濃
縮後、予め20mMのトリス−塩酸緩衝液(pH8.
0)で平衡化したQ−セファロースFFカラム(ファル
マシア社製)に通じ、KClを平衡液に加えた溶液で溶
出させたところ、KCl濃度0.40〜0.45Mの近
くに活性画分が溶出した。この溶出画分を濃縮後、硫酸
アンモニウムを0.5Mになるように加え、予め1Mの
硫酸アンモニウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH
5.5)で平衡化されたオクチルセファロースカラムC
L−4B(ファルマシア社製)に通じ、同緩衝液で溶出
した。活性画分を集めて濃縮後、脱塩した。このように
して得られた6PGDHは、ポリアクリルアミドゲル電
気泳動において単一なバンドとして検出され、精製酵素
標品を得ることができた。また、活性の収率は約55%
で、酵素1mg当たり約110単位の比活性を示し、そ
の精製度は粗酵素液を1とすると約33倍であった。実施例2 実施例1と同様の培地、条件により、ロイコノストック
・ラクティスSHO54(FERM P−13971)
を培養し、約180gの菌体を得た。得られた菌体は同
様に凍結状態で保存した。
【0028】次に、これらの菌体から実施例1と同様に
して粗抽出液を得、菌体中の6PGDH含量を測定した
ところ、15万U/kg湿菌体の値を示した。さらに、
実施例1と同様にして粗抽出液から精製酵素標品を得
た。活性の収率は約55%で、酵素1mg当り約130
単位の比活性を示し、その精製度は粗酵素液を1とする
と約25倍であった。
【0029】
【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明の新
規な細菌株およびその大量増殖方法により、NADに対
して特異的に作用し、かつ安定性に優れた6PGDHを
効率よく得ることが可能となる。このようにして得られ
た6PGDHは、その優れた安定性により各種測定用試
薬に広く利用することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 (C12N 9/04 C12R 1:46) (72)発明者 小原 仁実 京都府京都市中京区西ノ京桑原町1 株式 会社島津製作所三条工場内 (72)発明者 矢幡 雅人 京都府京都市中京区西ノ京桑原町1 株式 会社島津製作所三条工場内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオ
    チドに特異的に作用する6ホスホグルコン酸脱水素酵素
    を産生するストレプトコッカス・ラフィノラクティスS
    HO47(FERM P−13970)。
  2. 【請求項2】 ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオ
    チドに特異的に作用する6ホスホグルコン酸脱水素酵素
    を産生するストレプトコッカス・ラクティスSHO54
    (FERM P−13971)。
  3. 【請求項3】 請求項1のストレプトコッカス・ラフィ
    ノラクティスSHO47(FERM P−13970)
    または請求項2のストレプトコッカス・ラクティスSH
    O54(FERM P−13971)を、酵母エキス1
    重量%以上含有の栄養培地で培養することを特徴とする
    上記細菌株の大量増殖方法。
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