JPH07177895A - ビオチンの製造法 - Google Patents

ビオチンの製造法

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JPH07177895A
JPH07177895A JP32379293A JP32379293A JPH07177895A JP H07177895 A JPH07177895 A JP H07177895A JP 32379293 A JP32379293 A JP 32379293A JP 32379293 A JP32379293 A JP 32379293A JP H07177895 A JPH07177895 A JP H07177895A
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JP
Japan
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biotin
pimelic acid
medium
coryneform bacterium
producing
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JP32379293A
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English (en)
Inventor
Kazuhisa Hatakeyama
和久 畠山
Shoichi Nara
昭一 奈良
Masato Terasawa
真人 寺沢
Hideaki Yugawa
英明 湯川
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Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 効率的なビオチン製造法の提供 【構成】 ピメリン酸からビオチンを産生する能力を有
するコリネ型細菌に属する微生物をピメリン酸を含有す
る栄養培地で培養し培地中にビオチンを生成せしめるに
際し、有機窒素源を窒素原子重量に換算して少なくとも
0.003重量%以上になるように添加した培地を用い
て該コリネ型細菌に属する微生物を培養し、培養物から
ビオチンを採取するビオチンの製造法。 【効果】 本発明の方法によれば、ピメリン酸からビオ
チンを効率的に著量産生することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はコリネ型細菌に属する微
生物を用いるビオチンの製造法に関する。ビオチンはヒ
ト、動物、植物及びある種の微生物の生育に必要とされ
るビタミンの1種であり、特に皮膚代謝の調整剤とし
て、あるいはヒトの脱毛防止養毛剤として、あるいは家
畜飼料の添加剤として用いられる有用な物質である。
【0002】
【従来の技術】ビオチンは卵黄から分離され、またビー
ル酵母、穀類、様々な動物の器官等の中に遊離型もしく
は蛋白質に結合した型で見出されている。微生物を用い
たビオチンの製造法としては、バチルス(Bacill
us)属、エシェリヒア(Escherichia
属、アグロバクテリウム(Agrobacteriu
)属、クロモバクテリウム(Chromobacte
rium)属、シュードモナス(Pseudomona
)属、アースロバクター(Arthrobacte
)属、セラチア(Serratia)属等の微生物を
用いる方法が知られている。
【0003】また、工業的利用上多くの利点及びアミノ
酸、核酸発酵などに実績のあるコリネ型細菌のある種の
菌株はビオチンを生産しないが、本発明者らは先に、こ
のビオチン要求性コリネ型細菌に、エシェリヒア・コリ
由来のビオチン生合成酵素遺伝子群を含有するプラスミ
ドを導入し、この菌株を用いてビオチンを著量産生させ
ることに成功し、提案した(特開平3−24048
9)。
【0004】しかしながら、これら微生物を用いるビオ
チンの製造法において、その生成量は必ずしも満足しう
るものではなく、より効率的な製造法が求められてい
る。一方、ビオチン生合成酵素遺伝子としてbioA、
bioB、bioC、bioD、bioF、bioH、
bioW、bioX、bioY等が各種の微生物から単
離されている。このうち、bioAは7,8−ジアミノ
ペラルゴン酸アミノトランスフェラーゼ、bioBはデ
スチオビオチンからビオチンへの変換に関与する酵素、
bioDはデスチオビオチンシンテターゼ、bioFは
7−ケト−8−アミノペラルゴン酸シンテターゼ、bi
oWはピメリルCoAシンテターゼをコードすることが
知られているが、bioC、bioH、bioX、bi
oYについて、その働きはいまだ明らかとなっていな
い。また、大腸菌(エシェリヒア・コリ)においては、
これらビオチン生合成酵素遺伝子群のうち、bioA、
bioB、bioC、bioD、bioF遺伝子はbi
oABFCDなるオペロンを形成している。これらビオ
チン生合成酵素遺伝子群の詳細は、次の文献に開示され
ている。A.J.Otsuka etal.,J.B
iol.Chem.,263,p19577−1958
5(1988)、特開平2−27980、O.Plou
xet.al.,Biochem.J.,287,p6
85−690(1992)、R.Gloeckler
etal.,Gene,87(1990)、特開平4
−330284、特開平4−278088等。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、ビオチ
ンの生成・蓄積量が多くより効率的な微生物を用いるビ
オチンの製造法を開発すべく鋭意検討を行った。その結
果、ピメリン酸からビオチンを産生する能力を有するコ
リネ型細菌に属する微生物を、特定濃度の有機窒素源を
含有する栄養培地で培養すれば効率的に著量のビオチン
が製造可能であることを見い出し、本発明を完成するに
至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】かくして、本発明によれ
ば、ピメリン酸からビオチンを産生する能力を有するコ
リネ型細菌に属する微生物をピメリン酸を含有する栄養
培地で培養し培地中にビオチンを生成せしめるに際し、
有機窒素源を窒素原子重量に換算して少くとも0.00
3重量%以上になるように添加した培地を用いて該コリ
ネ型細菌に属する微生物を培養することを特徴とするビ
オチンの製造法が提供される。
【0007】以下、本発明についてさらに詳細に説明す
る。本発明において用いられるピメリン酸からビオチン
を産生する能力を有するコリネ型細菌に属する微生物
(以下これを「ピメリン酸要求性コリネ型細菌」という
ことがある。)とは、コリネ型細菌に属し、ピメリン酸
からビオチンを産生する能力を有する微生物であれば特
に制限はないが、通常、宿主ビオチン要求性のコリネ型
細菌に前記したビオチン生合成に関与する酵素をコード
する遺伝子群の少くとも1つの遺伝子を含有するプラス
ミドが導入された菌株であって、該プラスミドの導入に
よりピメリン酸からビオチンの産生能が付与された菌株
を意味する。
【0008】ここで、宿主ビオチン要求性コリネ型細菌
としては、例えば、ブレビバクテリウム・ラクトファー
メンタム(Brevibacterium lacto
fermentum)ATCC13869、コリネバク
テリウム・グルタミカム(Corynebacteri
um glutamicum)ATCC31830並び
にブレビバクテリウム・フラバム(Brevibact
erium flavum)MJ−233(FERM
BP−1497)およびその由来株を挙げることができ
る。また、ビオチン生合成に関与する酵素をコードする
遺伝子群の少くとも1つの遺伝子が導入されたプラスミ
ドとしては、例えば、エシェリヒア・コリ由来のビオチ
ンオペロン(bioABFCD)DNA断片、エシェリ
ヒア・コリ由来のbioHを含有するDNA断片、コリ
ネ型細菌細胞内で複製増殖能を有するDNA断片及びプ
ラスミド安定化機能を有するDNA断片を保有するプラ
スミドpCRY30−BIO1(特開平3−24048
9)およびエシェリヒア・コリ由来のビオチンオペロン
(bioABFCD)DNA断片、コリネ型細菌細胞内
で複製増殖能を有するDNA断片及びプラスミド安定化
機能を有するDNA断片を保有するプラスミドpCRY
30−BIO(特開平3−240489)を挙げること
ができる。
【0009】上記した本発明で用いるピメリン酸要求性
コリネ型細菌としては、例えば、プラスミドpCRY3
0−BIO1を保持するブレビバクテリウム・フラバム
MJ233−BIO1(FERM P−11121)お
よびプラスミドpCRY30−BIOを保持するブレビ
バクテリウム・フラバムMJ233−BIO(FERM
P−13765)を挙げることができる。
【0010】さらに好適には、ビオチン生合成酵素遺伝
子群を含有するプラスミドで形質転換されたピメリン酸
からビオチン産生能を有するコリネ型細菌、例えばブレ
ビバクテリウム・フラバムMJ233−BIO(FER
M P−13765)をグルコースを単一炭素源として
含有し且つピメリン酸を含有したビオチンを含有しない
平板培地上で培養し、該培地上に生育したコロニーの大
きさによって選別して得られるビオチン高産生能コリネ
型細菌、例えばブレビバクテリウム・フラバムMJ23
3−709(FERM P−13764)およびかくし
て得られたビオチン高産生能コリネ型細菌を、さらに有
機酸を単一炭素源として含有し且つピメリン酸を含有し
ビオチンを含有しない寒天培地上で培養し、該培地上に
生育したコロニーの大きさによって選別して得られるビ
オチン高産生能コリネ型細菌、例えばブレビバクテリウ
ム・フラバムMJ233−SL2(FERM P−13
791)等を挙げることができる。
【0011】上記したビオチン高産生能コリネ型細菌は
次のとおり育種することができる。先ず、前記ピメリン
酸要求性コリネ型細菌、例えばブレビバクテリウム・フ
ラバムMJ233−BIO(FERM P−1376
5)を、窒素源、無機塩、ビタミンを含み、単一炭素源
としてグルコースを含み、且つピメリン酸を含みビオチ
ンを含まない培地(以下これを「ピメリン酸/グルコー
ス最小培地」ということがある。)に寒天を加えた平板
培地上に塗沫して培養する。培養後、コロニーの大きさ
を指標として生育の速いコロニー(大きなコロニー)を
採取し、各々のコロニーから得られた菌体を再度ピメリ
ン酸/グルコース最小培地(平板培地あるいは液体培
地)で培養し、生育速度が速く、且つビオチン産生能の
増加した菌株を採取する。次に、このようにして得られ
る生育速度が速く、ビオチン産生能の増大した菌株を、
窒素源、無機塩、ビタミンを含み、単一炭素源として有
機酸のみを含み、且つピメリン酸を含みビオチンを含ま
ない培地(以下これを「ピメリン酸/有機酸最小培地」
ということがある。)に寒天を加えた平板培地上に塗沫
し培養する。培養後、コロニーの大きさを指標として生
育の速いコロニー(大きなコロニー)を採取し、各々の
コロニーから得られた菌体を再度ピメリン酸/有機酸最
小培地(平板培地あるいは液体培地)で培養し、生育速
度が速く、且つビオチン産生能の増加した菌株を採取す
る。
【0012】育種に用いるピメリン酸/グルコース最小
培地およびピメリン酸/有機酸最小培地の窒素源として
は、例えばアンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモ
ニウム、硝酸アンモニウム、尿素等がそれぞれ単独もし
くは混合して用いられる。また無機塩としては、例えば
リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸マ
グネシウム等が単独もしくは混合して用いられ、ビタミ
ンとしては、チアミンが用いられる。
【0013】また、炭素源として用いる有機酸として
は、例えばコハク酸もしくはそのナトリウム塩、リンゴ
酸もしくはそのナトリウム塩、クエン酸もしくはそのナ
トリウム塩等が挙げられるが、それらの中でコハク酸ナ
トリウムを用いるのが最も好ましい。前記最小培地中の
これら窒素源、無機塩、ビタミン、炭素源の濃度に特別
な制限はなく、微生物の培養に通常用いる濃度を用いる
ことができる。
【0014】最小培地中のピメリン酸濃度にも特別な制
限はなく、通常0.1mg/l〜20g/l、好ましく
は10mg/l〜1g/lが適当である。平板培地上で
の培養は、通常、約1〜10日間、温度約20〜40℃
で行うことができ、また必要に応じて液体培地で培養す
る場合は、通常、通気撹拌、振盪等の好気的条件下に、
温度約20〜40℃、約1〜5日間行うことができる。
【0015】液体培養における菌体の生育速度は濁度
計、例えばスペクトロニック20A(島津製作所社製)
を用いて濁度を測定して求めることができ、培養物中の
ビオチンは、サッカロミセス・セレビシエ(Sacch
aromyces cerevisiae)ATCC7
754による微生物定量法(ビタミン学実験法〔II〕、
日本ビタミン学会(1985)p486−492)で測
定することができる。
【0016】これらビオチン高産生能変異株の菌学的性
質は、ピメリン酸/グルコース最小培地又はピメリン酸
/有機酸最小培地での生育速度の増加およびビオチン産
生能のちがいを除いては、プラスミドpCRY30−B
IO導入の宿主として用いたブレビバクテリウムフラバ
ムMJ233と同様であった(菌学的性質の詳細につい
ては、特開昭51−130592参照)。
【0017】前記した3種のビオチン要求性コリネ型細
菌は同様にピメリルCoAの合成に関与する酵素をコー
ドする遺伝子(bioH、bioC等)および7−ケト
−8−アミノペラルゴン酸シンテターゼをコードする遺
伝子(bioF)が欠損あるいはその発現が欠如してお
り、また少くとも7,8−ジアミノペラルゴン酸アミノ
トランスフェラーゼをコードする遺伝子(bioA)、
デスチオビオチンシンセターゼをコードする遺伝子(b
ioD)およびデスチオビオチンからビオチンへの変換
に関与する酵素をコードする遺伝子(bioB)を保有
しており(特開平4−278088参照)、前記したブ
レビバクテリウム・ラクトファーメンタム、コリネバク
テリウム・グルタミカムに前記プラスミド、例えばpC
RY30−BIOが導入された菌株もまたピメリン酸要
求性コリネ型細菌として用いることができる。
【0018】これらビオチン高産生能コリネ型細菌の育
種法の詳細は特願平5−199391号明細書に開示さ
れている。かくして得られるビオチン高産生能コリネ型
細菌は、ピメリン酸からビオチンを高産生する能力を有
しており、以下に述べる本発明のビオチン製造法に好適
に用いることができる。
【0019】本発明の方法においては、栄養培地とし
て、合成培地(最小栄養培地)と異なり、有機窒素源を
多量に含有する、いわゆる天然培地を使用する。すなわ
ち、本発明では有機窒素源を窒素原子重量に換算して、
通常少くとも0.003重量%、好ましくは0.006
〜0.030重量%になるように添加した栄養培地を使
用する。かかる栄養培地における有機窒素源としては、
従来からコリネ型細菌に属する微生物の培養のために使
用されている栄養培地において窒素源として配合されて
いるものが同様に用いられ、例えば、ポリペプトン、ト
リプトン、ペプトンなどのペプトン類、肉エキス、酵母
エキス、麦芽エキス、コーンステイープリカー、カザミ
ノ酸等の有機窒素化合物(アミノ酸、ペプチド、ビタミ
ン、未知生育促進因子など)をそれぞれ単独で又は2種
もしくはそれ以上混合して用いることができる。本発明
の方法に使用する培地には、窒素源として上記の有機窒
素源に加えて、無機窒素源、例えば、(NH4 2 SO
4 、NH4 Cl、(NH4 2 PO4 、(NH4 )NO
3 等を含ませることも可能である。
【0020】また、本発明の方法に使用する培地は、栄
養源として、上記の窒素源の他に、炭素源、ミネラル
分、ビタミン等を含有することができる。炭素源として
は、例えば、グルコース、グリセロール、フルクトー
ス、シュクロース、廃糖蜜などの種々の炭水化物を利用
できる。本発明の方法においては、上記した培地にピメ
リン酸を適量添加して培養することにより、効率的にビ
オチンを製造することができる。
【0021】培地中に添加するピメリン酸濃度に特に制
限はないが、通常10mg/l〜50g/l、好ましく
は100mg/l〜5g/lが適当である。培養は、通
常、通気撹拌、振盪等の好気的条件下に、約20〜40
℃、好ましくは25〜35℃の温度で行うことができ
る。培養途中のpHは5〜10、好ましくは7〜8付近
で行い、培養中のpHの調整は酸又はアルカリを添加し
て行うことができる。
【0022】培養開始時の炭素源濃度に特に制限はない
が、好ましくは1〜5容量%、更に好ましくは2〜3容
量%である。また、培養期間は通常1〜7日間とするこ
とができ、最適期間は3日間である。培養を終了した
後、培養液からのビオチンの抽出精製にあたっては、ビ
オチンの諸性質を利用して、一般の天然物からの抽出精
製法が応用できる。すなわち、培養物から菌体を除き活
性炭に吸着させ、その後溶出させ、イオン交換樹脂で精
製するか、あるいは培養濾液を直接イオン交換樹脂で処
理して精製し、水またはアルコールより再結晶すること
により、ビオチンを取得することができる。
【0023】
【実施例】以上に本発明を説明してきたが、下記の実施
例によりさらに具体的に説明する。しかしながら、実施
例は本発明の具体的に認識を得る一助とみなすべきもの
であり、本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0024】参考例1 プラスミドpCRY30−BI
Oの作製及びコリネ型細菌への導入 ビオチン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子とし
ては、特開平3−240489の実施例1に記載の方法
で調製されたプラスミドpHSG398−bioに含有
されるエシェリヒア・コリ由来のビオチンオペロン(b
ioABFCD)DNA断片を用い、コリネ型細菌細胞
内で複製増殖能を有するDNA断片及びプラスミド安定
化機能を有するDNA断片としては、特開平3−240
489の実施例2に記載の方法で調製されたプラスミド
ベクターpCRY30を用いた。
【0025】プラスミドpHSG398−bio 5μ
g及びプラスミドベクターpCRY30 1μgを各々
制限酵素EcoRI 5unitsを用い、37℃で1
時間反応させ分解した。両分解DNAを混合し、T4D
NAリガーゼにて結合させ、常法に従いエシェリヒア・
コリCV530C Gal−UvrB3株〔F- :le
uA371 Δ(lac−pro) thi Δ(ga
l−bio−uvrB);国立遺伝学研究所遺伝実験生
物保存センターより分譲〕を形質転換し、カナマイシン
50mgを含む選択培地〔K2 HPO4 7g、KH2
4 2g、(NH4 2 SO4 1g、MgSO4 ・7H
2 O 0.1g、カザミノ酸10g、グルコース2g及
び寒天16gを蒸留水1lに溶解〕に塗沫した。
【0026】この培地上の生育株を常法により液体培養
し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、該プラスミ
ドを制限酵素により切断し、アガロースゲル電気泳動を
用いて調べたところ、プラスミドベクターpCRY30
の長さ8.6kbのDNA断片に加え、長さ6.0kb
の挿入DNA断片が認められた。上記の如く調製された
プラスミドDNAを、コリネ型細菌へ形質転換した。
【0027】形質転換は、電気パルス法を用いて行っ
た。ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233(FE
RM BP−1497)プラスミドpBY502除去株
を100mlの半合成A培地(尿素2g/l、硫安7g
/l、KH2 PO4 0.5g/l、K2 HPO4 0.5
g/l、MgSO4 ・7H2 O 0.5g/l、FeS
4 ・7H2 O 6mg/l、MnSO4 ・4〜5H2
O 6mg/l、塩酸チアミン100μg/l、ビオチ
ン200μg/l、カザミノ酸1g/l、酵母エキス1
g/l;NaOHにてpHを7.2に調節)で対数増殖
期初期まで培養し、ペニシリンGを1ユニット/mlに
なるように添加して、さらに2時間振盪培養し、遠心分
離により菌体を集め、菌体を20mlのパルス用溶液
(272mMSucrose、7mM KH2 PO4
1mM MgCl2 :pH7.4)にて洗浄した。さら
に菌体を遠心分離して集め、5mlのパルス用溶液に懸
濁し、0.75mlの細胞と、前記で得られたプラスミ
ドDNA溶液50μlとを混合し、水中にて20分間静
置した。ジーンパルサー(バイオラド社製)を用いて、
2500ボルト、25μFDに設定し、パルスを印加後
氷中に20分間静置した。全量を3mlの前記A培地に
移し30℃にて1時間培養後、カナマイシン15μg/
ml(最終濃度)を含む前記A寒天培地に植菌し30℃
で2〜3日間培養した。出現したカナマイシン耐性株よ
り、アルカリ−SDS法〔Satoh,Y.et a
l.,Journal of Industrial
Microbiology,,159(1990)〕
によりプラスミドを得た。このプラスミドを各種制限酵
素で切断し、切断片の大きさをアガロースゲル電気泳動
で測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0028】
【表1】表 1 制限酵素 認識部位数 切断片の大きさ(kb) EcoRI 2 8.6,6.0 Kpn I 1 14.6Sal I 2 14.4,0.2 上記制限酵素により特徴づけられるプラスミドをpCR
Y30−BIOと命名した。
【0029】なお、プラスミドpCRY30−BIOに
より形質転換されたブレビバクテリウム・フラバムMJ
233−BIOは、茨城県つくば市東1丁目1番3号の
工業技術院生命工学工業技術研究所に、平成5年7月2
7日付で受託番号:FERMP−13765として寄託
されている。
【0030】参考例2 ピメリン酸/グルコース最小培
地生育速度増大株の選択 前記半合成A培地100mlを容量500mlの振盪フ
ラスコに入れ120℃で15分間殺菌した。この培地に
5mg/mlカナマイシン1ml及び滅菌した50%グ
ルコース4mlを添加した後、ブレビバクテリウム・フ
ラバムMJ233−BIO(FERM P−1376
5)を1白金耳量植菌し、33℃で2日間振盪培養し
た。
【0031】遠心分離により培養物から菌体を回収し、
この菌体を前記半合成A培地からカザミノ酸および酵母
エキスを除いた培地にて2回洗浄したのち、カナマイシ
ン50μg/mlを含むピメリン酸/グルコース最小培
地(尿素2g/l、硫安7g/l、KH2 PO4 0.5
g/l、K2 HPO4 0.5g/l、MgSO4 ・7H
2 O 0.5g/l、FeSO4 ・7H2 O 6mg/
l、MnSO4 ・4〜5H2 O 6mg/l、チアミン
塩酸100μg/l、ピメリン酸0.1g/l、グルコ
ース20g/l;NaOHにてpHを7.2に調節)に
寒天を加えた平板培地上に塗沫した。33℃で3日間培
養することにより出現した生育の速いコロニー(大きな
コロニー)を白金耳で釣り上げ、再度ピメリン酸/グル
コース最小平板培地に塗沫し、33℃で培養した結果、
得られた菌株はピメリン酸/グルコース最小培地上での
生育速度が上昇していることが確認された。
【0032】該菌株をブレビバクテリウム・フラバムM
J233−709と命名した。該菌株は、茨城県つくば
市東1丁目1番3号の工業技術院生命工学工業技術研究
所に、平成5年7月27日付で受託番号:FERM P
−13764として寄託されている。
【0033】参考例3 ピメリン酸/コハク酸最小培地
生育速度増大株の選択 前記半合成A培地100mlを容量500mlの振盪フ
ラスコに入れ120℃で15分間殺菌した。この培地に
5mg/mlカナマイシン1ml及び滅菌した50%コ
ハク酸ナトリウム4mlを添加した後、参考例2で得ら
れたブレビバクテリウム・フラバムMJ233−709
(FERM P−13764)を1白金耳量植菌し、3
3℃で2日間振盪培養した。
【0034】遠心分離により培養物から菌体を回収し、
この菌体を前記半合成A培地からカザミノ酸および酵母
エキスを除いた培地にて2回洗浄したのち、カナマイシ
ン50μg/mlを含むピメリン酸/コハク酸最小培地
(尿素2g/l、硫安7g/l、KH2 PO4 0.5g
/l、K2 HPO4 0.5g/l、MgSO4 ・7H 2
O 0.5g/l、FeSO4 ・7H2 O 6mg/
l、MnSO4 ・4〜5H2 O 6mg/l、チアミン
塩酸100μg/l、ピメリン酸0.1g/l、コハク
酸ナトリウム20g/l;NaOHにてpHを7.2に
調節)に寒天を加えた平板培地上に塗沫した。33℃で
3日間培養することにより出現した生育の速いコロニー
を白金耳で釣り上げ、再度ピメリン酸/コハク酸最小平
板培地に塗沫し、33℃で培養した結果、得られた菌株
はピメリン酸/コハク酸最小培地上での生育速度が上昇
していることが確認された。
【0035】該菌株をブレビバクテリウム・フラバムM
J233−SL2と命名した。該菌株は、茨城県つくば
市東1丁目1番3号の工業技術院生命工学工業技術研究
所に、平成5年8月6日付で受託番号:FERM P−
13791として寄託されている。
【0036】参考例4 ビオチンの製造 合成CP培地(尿素2g/l、硫安7g/l、KH2
4 0.5g/l、K 2 HPO4 0.5g/l、MgS
4 ・7H2 O 0.5g/l、FeSO4 ・7H2
6mg/l、MnSO4 ・4〜5H2 O 6mg/
l、チアミン塩酸塩100μg/l、ピメリン酸1g/
l;NaOHにてpHを7.2に調節)5mlを直径1
8mmの試験管に分注し120℃で15分間殺菌した。
この培地に5mg/mlカナマイシン0.05mlと滅
菌した50%グルコース0.2mlを添加した後、ブレ
ビバクテリウム・フラバムMJ233−709(FER
MP−13764)、ブレビバクテリウム・フラバムM
J233−SL2(FERM P−13791)、また
対照としてブレビバクテリウム・フラバムMJ233−
BIO(FERM P−13765)を1白金耳量それ
ぞれ植菌し、33℃で24時間振盪培養した。
【0037】次に、上記CP培地100mlを容量50
0mlの振盪フラスコに入れ120℃で15分間殺菌し
た。この培地に5mg/mlカナマイシン1.0mlと
滅菌した50%グルコース4mlを添加した後、上記の
前培養物1mlをそれぞれ植菌し、33℃で3日間振盪
培養した。
【0038】培養終了後、遠心分離(4000rpm、
15分間、4℃)にて培養物から菌体を除去し、上清中
のビオチンを定量した。その結果を表2に示す。なお、
表中のビオチン生成量は、サッカロミセス・セレビシエ
Saccharomyces cerevisia
)ATCC7754による微生物定量法(ビタミン学
実験法〔II〕日本ビタミン学会(1985)p486−
492)により定量した値である。
【0039】
【表2】表 2 菌 株 ビオチン生成量 MJ233−709 15μg/l MJ233−SL2 50μg/lMJ233−BIO 5μg/l
【0040】実施例1 参考例4の合成CP培地にブレビバクテリウム・フラバ
ムMJ233−SL2(FERM P−13791)を
植菌し、参考例4と同様に振盪培養(前培養)した。
【0041】次に、合成CP培地100mlを容量50
0mlの振盪フラスコに入れ120℃で15分間殺菌し
た培養液に、滅菌した50%グルコース4mlを添加し
た後、上記の前培養物1mlを植菌し、33℃で24時
間振盪培養した。次に、本培養培地〔(NH4 2 SO
4 23g、KH2 PO4 0.5g、K2 HPO4
0.5g、MgSO4 ・7H2 O 0.5g、FeSO
4 ・7H 2 O 20mg、MnSO4 ・4〜5H2
20mg、チアミン塩酸100μg、ピメリン酸1g、
脱イオン水1L〕に表1に示した各試験区の有機窒素源
を加えた各組成の培地1.5Lを2L容通気撹拌槽に仕
込み、滅菌(120℃、20分間)後、滅菌済み50%
グルコース100mlと上記培養物の30mlを添加し
て、回転数1000rpm、温度33℃、pH7.7
(25%アンモニア水にてpHを7.2に調節)、通気
量1.0vvmにて72時間培養を行った。
【0042】培養終了後、遠心分離(4000rpm、
15分間、4℃)にて除去した上清中のビオチン定量し
た。その結果を表3に示す。なお、表中のビオチン生成
量は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharo
myces cerevisiae)ATCC7754
による微生物定量法〔ビタミン学実験法〔II〕日本ビタ
ミン学会(1985)p486−492〕により定量し
た値である。
【0043】
【表3】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 //(C12P 17/18 C12R 1:15) (72)発明者 湯川 英明 茨城県稲敷郡阿見町中央8丁目3番1号 三菱油化株式会社筑波総合研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ピメリン酸からビオチンを産生する能力
    を有するコリネ型細菌に属する微生物をピメリン酸を含
    有する栄養培地で培養し培地中にビオチンを生成せしめ
    るに際し、有機窒素源を窒素原子重量に換算して少くと
    も0.003重量%以上になるように添加した培地を用
    いて該コリネ型細菌に属する微生物を培養し、培養物か
    らビオチンを採取することを特徴とするビオチンの製造
    法。
  2. 【請求項2】 ピメリン酸からビオチンを産生する能力
    を有するコリネ型細菌に属する微生物が、ビオチン生合
    成に関与する酵素をコードする遺伝子群の少なくとも一
    つの遺伝子が導入されたプラスミドで形質転換されたピ
    メリン酸からビオチン産生能を有するコリネ型細菌であ
    って、該コリネ型細菌をグルコースを単一炭素源として
    含有し且つピメリン酸を含有しビオチンを含有しない平
    板培地上で培養し、該培地上に生育したコロニーの大き
    さによって選別して得られるビオチン高産生能コリネ型
    細菌である請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 ピメリン酸からビオチンを産生する能力
    を有するコリネ型細菌に属する微生物が、ビオチン生合
    成に関与する酵素をコードする遺伝子群の少なくとも一
    つの遺伝子が導入されたプラスミドで形質転換されたピ
    メリン酸からビオチン産生能を有するコリネ型細菌であ
    って、該コリネ型細菌をグルコースを単一炭素源として
    含有し且つピメリン酸を含有しビオチンを含有しない平
    板培地上で培養し、該培地上に生育したコロニーの大き
    さによって選別して得られるビオチン高産生能コリネ型
    細菌を、さらに有機酸を単一炭素源として含有し且つピ
    メリン酸を含有しビオチンを含有しない寒天培地上で培
    養し、該培地上に生育したコロニーの大きさによって選
    別して得られるビオチン高産生能コリネ型細菌である請
    求項1記載の方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008054606A (ja) * 2006-08-31 2008-03-13 Oriental Yeast Co Ltd ビオチン高含有酵母及びその製造方法
CN112176010A (zh) * 2019-07-01 2021-01-05 浙江圣达生物药业股份有限公司 一种促进生物素合成的方法、促进生物素合成的重组细胞和基因工程菌

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